SF百科図鑑

北原尚彦『SF万国博覧会』寺子屋ブックス

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2000年

3/13
「狂骨の夢」読み終える。★★★★。前半は手慣れてきて、どんどん読めるし、雰囲気の盛り上げ方も相変わらずうまい。ただ、解決編がややまとまりが良すぎる。前二作にあった「過剰な部分」が後退して、普通のミステリになってしまったという感じ。叙述トリックの扱いもやや類型的で意外性は少ない。但し、宗教と精神分析、夢判断をからめたスペキュレーションはとても興味深く、凡百のミステリの追随を許さない。ただ、前二作があまりに凄かっただけに、もはやこの程度で読者が誰も納得しないのは気の毒というか。
「SF万国博覧会」★★★★はSFマガジンに連載されていたコラムを纏めたもの。とにかく、前半の「SFブーム時代の書肆紹介」部分の面白さが圧巻で、古本購入者の視点から書かれており、どの本が面白いか、買いか、またどのぐらいの値段なら買いかといった素直な評価が書かれていて大変重宝する。「こんな出版社からこんな本が!」と発見した部分も多い。データ部分が少なく網羅性のないのは難点だが、その分、読み物として大変面白いものになっている。特に、SFにはまり出した年代が私とそう変わらないので(図書館の少年物と、文庫ジュヴナイルから、いわゆる古典的名作、そしてサンリオ、という流れ)、共感させられる部分も多かった。例えば、「「ザンジバーに立つ」が出るときは、おそらく海外SFノヴェルスとして出るんでしょうね、早川書房さん」などと、出す出すといいながら翻訳権だけ独占してお蔵入りにされている古典名作群への手酷い仕打ちを糾弾するような静かな怒りが溢れている表現の端々に、果てしないシンパシーを感じたりして(笑)。
さて、「鉄鼠の檻」と「順列都市」を並行して読みはじめる。「鉄」は更に分厚くなってとても持ち歩けないので、もっぱら家で読むことになりそうだ。

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