SF百科図鑑

安部公房『密会』

最終更新:

匿名ユーザー

- view
管理者のみ編集可

1998年

1/20
(略)のあと、風邪で体調をこわして(略)。その間、安部作品読みは着々と進んでいる。
長編では、まず「第四間氷期」を読み、今日「密会」を読み終えた。いずれも筋金入りのSFだ。特に「密会」における異化による現実の相対化は秀逸であり、連続するきらびやかなイメージのスライドショーには目も眩まんばかりだ。恐らく、日本において真の意味でSF作家だった者は、安部しかいないのではなかろうか。けだし、安部作品の核はそのアイデアにあり、SF的手法なくしては描けない内容のものばかりだからである。それに比し、日本でSF作家の名を騙る者たちの作品の、何とSF的でないことか。それらはSF的手法を用いることの必然性がなく、普通の冒険小説やホラーにSF的道具立てを与えて味付けしただけに過ぎないものばかりだ。これでは、衰退したのも当然といえよう。
短編では「水中都市」「デンドロカカリヤ」「無関係な死」「R62号の発明」「鉛の卵」などの名作群を読む。
これらのいくつかは中学生のころ読んでいるのだが、あのころいかに内容を理解せずに読んでいたか痛いほど判る。単なるファンタジーやSF的アイデアストーリーではない。まぎれもない価値転倒の思想小説なのである。卑俗な日常的連続性への絶望と殺意に裏打ちされた、積極的な個/内面への逃避行。登場人物たちは失踪したり、病気になったり、犯罪者になったり、植物や魚になったり、魂になったり、箱男になったり、他人になったり、壁になったり、ロボットになったりする。しかしそこには何らの否定的価値判断もありはしない。連続する日常性を地獄と捉える感性が前提にあり、むしろそれらへの殺意が必然として非日常への逃避、逸脱を惹起するが、作者の視点にはむしろそれらの人物への激しい共感が読み取れさえするのだ。むしろ、逃避する自由、逸脱する自由への積極的共感こそが安部作品における共通的心性だといってよかろう。正常には異常を、健康には病気を、正義には悪を、生物には無生物を、全体には個を置き換えることにより、価値の偏在という絶対悪を除去し、全体的価値バランスを調整することによって真の価値相対主義を実現する。逸脱を許容してこそ真の中立、公正は実現されるはずだ。押し付けられる公正ほど不公正なものはなく、あらゆるいびつなもの、不公正なものを許容するという自己矛盾によってしか総体的な公正は図りえないということは、経験則上明らかであろう(政治や裁判の場を見れば自明である)。
自分が安部作品に共感を覚える理由が何となく判った気がする。今後も日常生活の中で、安部的価値転倒(=相対)主義を実践し、自己の思想的基盤をより強固なものにしていきたいと考えている。例えば仕事そっちのけでゲーム&競馬にはまるとか(笑)。仕事には遊びを対置させることで価値の転倒を図るという、左翼的行為なんだよね、実は。

ちなみに競馬の結果は、シンザン記念の900円をとった以外またも全敗。万券狙いに徹すると、やはり滅多に当たらなくなる。これでは、東スポの和田の予想通りに買っているほうがはるかにましである。来週は、少し和田を信じて買ってみよう。早くもマーベラスサンデーやドーベル、ブライトが始動するらしいのだ。そして翌週はもうG1フェブラリーステークスである。南部杯でタイキシャーロックに完敗したために人気を下げるであろうバトルラインが、やはり狙い目だ。去年のこのレース以後は馬が変わったように勝ちまくっているのに、帝王賞と南部杯だけで、しかもいずれも3、2着とそれほど悪い成績ではなく、勝ちに行って足元をすくわれたという形の敗戦に過ぎないのに、不当に評価を下げるようなら、これは狙い目である。去年の2着馬ストーンステッパーも、今年はあまり人気にならないだろう。むしろ、低レベルの平安ステークスを勝ったぐらいでエムアイブランなどが人気をかぶるようなら高配当必至だ。にわか人気を集めるB級馬が沢山いればいるほど、馬券的妙味は増すのだ。今から楽しみでしようがない。
それにしても、川崎記念が平日の昼間開催で、前日の夜間発売すらないのは、返す返すも残念この上ない。地方競馬全国協会&川崎市は、何を考えているのだろう。平日の昼間に、まともな人間が馬券を買えるわけがない。公営競馬の大衆化を自ら忌み嫌っているとしか解釈のしようがない番組編成である。これでは、どんなに公営競馬が好きでも、しまいには愛想が尽きてしまう。川崎記念を統一G1にした意味を、じっくり考えてもらいたい。全国統一グレード制を施行した以上、これは川崎記念の格だけにかかわる問題ではない。他の統一G1すべての格にかかわってくる問題なのだ。自治体エゴを超えた連帯の中にしか公営競馬復興の道はないことをよく自覚してもらいたいものである。
予想としては、距離短縮でキョウトシチーがトーヨーシアトルを逆転する可能性も皆無ではない。問題は地方勢だ。アブクマポーロは出てくるのか?
出走予定メンバーを見ていない現時点では、何とも言えない。

記事メニュー
目安箱バナー