SF百科図鑑 Iain M. Banks "Excession"


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

September 08, 2004

Iain M. Banks "Excession"

Excession<カルチャー>シリーズの1作、英国SF協会賞受賞作が次の課題図書です。
今週後半は仕事が忙しいので少し控え、土日以降に一気に読むつもりです。

裏表紙の紹介文によると、自分たちの世界の何十倍の歴史を持つ太陽が忽然と消え、主人公がその調査を命じられるというような話らしい。これだけでは何がなんだかわからないが&&。
で、プロローグの第1段落だけ読んだんだけど、某惑星の上の塔に40年近く拘禁されている女が、船からアヴァターの訪問を受けるという冒頭。情景描写の文体が凝ってて独特。後は仕事が一段落後に読みます。

同じシリーズの「ゲーム・プレイヤー」が既に角川文庫から出ていて持っているが、未読なのであとで読むつもり。
silvering at 18:10 │Comments(31)TrackBack(0)読書

トラックバックURL

この記事へのコメント

1. Posted by silvering   September 08, 2004 21:36
プロローグ読み終わる。この星だか人工惑星だかに自発的に40年妊娠して住んでいる女の下に船の代表者の生物が訪れ、そこの環境を変えざるを得なくなった、やることがある、と告げる。大体この女が40年も妊娠しているとか自分でここに住んだとかいうところから意味不明だし、世界設定がさっぱり説明されない。全然説明もせず淡々と異常な世界を舞台の細切れ的なストーリーを進める、相変わらずのバンクス節炸裂である。
2. Posted by silvering   September 11, 2004 17:21
いま29ページあたりまで来ているが、やはりバンクスの文章は難しいね。文体だけでなく、書かれている内容にあまり説明がないのが難しい理由だろう。第1章1はコンピュータの画面でいきなりわけが分からない。同章2は戦闘中の船内を潜行する飛行偵察機の視点からの描写で、訳の分からない機械が説明もなく次々と出て来るので、全然分からない。この船がエレンチ人の船で、偵察機はこの船によって作られたようだが、どんな敵とどういう理由で戦っているのか、プロローグの女や船とどういう関係があるのかの説明もさっぱりないまま、機械同士の会話が始まる。注意深く読まないと何が書いてあるのかすら分からなくなる。ここ数日仕事などで睡眠不足気味のせいか余計に頭がぼーっとして、注意を持続するのが難しい。
で、いま、3に入ったところなのだが、また変な鳥のようなエイリアン外交官が人間らしき防護スーツを着たビア・ゲナー=ホフェンという男に抱きついてくちばしでつつきながら挨拶する場面が始まった。

この作者、さすが「読者のレベルを高く想定し過ぎている」といわれるだけあって、全く読みやすくはない。「フィアサム・エンジン」は日本語で読んだにかかわらず非常に読みにくくてストーリーが途中まで全然理解できなかったから、英語で読んでいる本作はなおのこと読みやすいわけはないのだが。最後に多分サプライズが用意されているはずなので頑張ってついていこう。小さい版で500ページのペーパーバックだから、普通の読みやすい内容なら2、3日で読み終われる程度の分量なのだが、凝り性のバンクスが相手では見くびれない。本作は結構長期戦になるかも知れないが、時々ググリながらも頑張ってついていこう。
3. Posted by silvering   September 11, 2004 17:25
飛行機械ないし飛行ロボット(ドローン)は、「ゲームプレイヤー」をいまざっと見たところ出てきたし、このシリーズでは結構一般的なキャラクターのようだ。
あるいは「ゲームプレイヤー」を先に読んで世界設定になじんでからの方が効率がいいかも知れない。
4. Posted by silvering   September 11, 2004 17:35
今評論サイトhttp://www.richmondreview.co.uk/books/excess.htmlでちょっとカンニング。ゲナーホフェンはプロローグで出てきた女の元不倫相手らしい。それと、このカルチャーという宇宙は不老不死で人びとが遊びに命をかけているという世界設定らしい。ビッグバンはたくさんあるうちの一つに過ぎず宇宙は我々が考えているより大きいとか、結構な大ネタが使われている感じだ。少しイメージがつかめたのでまた本文読んでみる。
5. Posted by silvering   September 11, 2004 17:42
http://www.sandm.co.uk/mary/sfjournm/Excession/excession.html

ここにも詳しい解説があった。

人間キャラが軽視され船同士の会話が結構な部分を占めるが終盤で「騙り」の真相が明らかになるといった感じのことが書いてあった。
6. Posted by SILVERING   September 11, 2004 19:00
エイリアン描写キターーー!
この<アフロンター>というエイリアンが強烈。肉塊が気嚢にぶら下がって浮いており、前後にくちばしがあって、前の方は口、後ろの方は性器。目と耳は上の方に伸びた2本の茎についている。肛門は身体の下にある。身体には多数の触手がついていて、一部の手は先が水かきになっている。
7. Posted by silvering   September 12, 2004 02:09
ディテールに凝り過ぎてなかなか話が進まない。カルチャーと対等な勢力であるアフロントがブラックホールの周囲にもうけた居住体でのパーティーの模様が蜿蜒と続く。奇抜なディテールで読者を喜ばせようという魂胆のようだが、だから何って感じ。ストーリー進行上重要性のある話の動きが全然始まらないから、要約のしようがない。「パーティーは続き、彼らはゲームに興じた」「また別のゲームに興じた」この程度しか書きようがないじゃん。
8. Posted by silvering   September 12, 2004 03:20
50ページでやっと話が動いた。どこかへ80日旅行して1日の仕事をしてくるという話で、その間に主人公(カルチャー人外交官 ホフォエン)がアフロント人ファイブタイドとした闘犬の賭けで自分が勝ちそうになり慌ててスーツに八百長工作を命じ何とか切り抜ける。主人公はとりあえず仕事を受けるかどうか保留にする。正直昔こき使われたから働きたくないのだ。
9. Posted by silvering   September 12, 2004 03:25
だんだん面白くなってきた。
並行して「ゲームプレイヤー」も読むことにした。別スレ参照。
10. Posted by silvering   September 12, 2004 23:41
これ、面白いよ&&
100ページまできたが、話が全部つながってきた。某星域で発見された謎の物体の正体とは&&。どうも異次元の宇宙から来てる物体なんじゃないかという推測は立つんだが、その謎解きの面白さもさることながら、こちらの宇宙の様々に分かれた(人類もいればエイリアンも、船もドローンもいる)文化圏のディテール構築が面白い。われわれの文化に一番近いと思われる〈カルチャー〉を中心に(「ゲームプレイヤー」でも中心に出てくる)、頭上に袋を浮かべてぷかぷか浮くエイリアンから成る〈アフロント〉、〈カルチャー〉から分かれて好奇心と変化を追及する集団などが出てきて、各利害がダイナミックに入り乱れる。

今日のノルマはいちおう終わってるんだが、150ぐらいまで行っちゃおうかな。
11. Posted by silvering   September 14, 2004 00:19
とりあえず、プロローグから3章までのメモ。

過剰(エクセション) イアン・バンクス

ジョン・ウッズの思い出に

プロローグ
抑留四〇年目まであと一〇〇日と少しというとき、ダジェイル・ゲリアンは、海を見下ろすうら淋しい塔で、故郷である船のアヴァターの訪問を受けた。
灰色の大波のさなか遠く、漂う霧の崖の下、小さな海の大きな住民たちの巨大でのろい体が、背中を丸めて動いた。動物たちの呼吸孔からは蒸気流が、幽霊のように非実体的な間欠泉のごとき呼気の噴流の中をたちのぼって、群につき従う一群の鳥たちに吹き上げ、鳥たちは上昇したり反転したり鳴いたりしながら、寒気の中を横滑りしてはばたいた。上空高く、それ自体が小さくのろい体を持つかのようなピンクに縁取られた雲の層を出入りしている別の生き物が動いた。その上の層では、飛行体やカイトが羽根と天蓋を伸ばして飛び、新しい一日の水っぽい光にぬくもりを加えていた。
光は空の一点ではなく、線として訪れた。なぜなら、ダジェイル・ゲリアンの住処は惑星ではないからだ。ほのかに白熱する一本の拠り糸が、遠い水平線に始まり、天に向かって伸び、浜と一つしかない塔の一キロメートル背後にある高さ二〇〇〇メートルの崖の樹葉に縁取られた頂に消えている。この線状太陽は、夜明けには地平線から右舷側に現れ、正午には塔の真上に位置し、日没時には左舷側の海に消えるように見えた。今は午前の半ばで、線は空の途中まで上がり、天蓋を取り巻く光の弧を描いていた。永遠に昼の空を回転しながらゆっくりと軽やかに動く巨大なロープのようだった。
黄白色の光の棒の両脇に空──真の空、雲の上にある空──が見えた。

(&&といった情景描写が続く。上空の雲の空間は、毒性物質を持っているらしい)

女は妊娠していたが、この訪問を予期していた。黒鳥グラヴィウスから予告を受けていたのだ。この40年、船の代理人のみが客で、32日おきに訪問を受けている。スケジュールではあと五日は訪問はないはずだった。代理人アモルフィアはダジェイルの安否を尋ね、塔に入った。船は常にダジェイルの健康状態を綿密にチェックしているはずであった。
二人は塔に入りホロスクリーンのある部屋に入り、飲み物を取る。ホロには、海中、空中、擬似大気(ガスジャイアント)内の映像。擬似大気内の生物たちが食い争っている。アモルフィアは中性的な人間の外観だが人間以外の生物だった。
アモルフィアは語る、この星を石に変えざるを得ないかもしれない、ダジェイルらを置き去りにして、船は行かねばならないかもしれないと。ダジェイルは私の許可を得るまでもない、自分で判断せよと答え、40年の妊娠期間(自ら課した拘禁期間)中面倒を見てくれたことには感謝する。アモルフィアは早速、環境変更の準備を始めるようだ。数十日かかるらしい。
アモルフィアが帰ったあと、グラヴィウスにどんな変化があるかときかれるが、自分で船にきけと答える。

1部 外的コンテクストの問題

コンピュータ上の対話、ある船に生じた危機に関して最後のメッセージに嘘がのっていたから、〈外部コンテクストの問題〉があるのか、続報せよと相手に言うが、これ以上の情報はなくできないと回答される。


戦闘中とおぼしき宇宙船内のシセラ・イゼリウスというドローン(偵察機)の視点。船が戦闘体制に入る。その後、戦闘が突然中断するが、敵がこれで攻撃終了とは思えない。ドローンは敵の様子を慎重に窺いながら思考する。(エレンチ人というのが言及されるが現段階で敵か味方か不明なので省く。そもそもこの機械が何者かも不明)

ドローンは、現在の苦境の背景をしばらくの間できるだけ冷静かつ超然と思案しながら、気持ちを落ちつけた。それは準備万端かついかなる状況にも即応した非凡な機械であった。当該文明の技術の最先端であった。最も性能の優れた装置による探知を免れうるように設計されていた。ほとんど想像を絶する敵対的環境下でも生き残るよう設計されていた。事実上どんな相手とも戦え、同心円状に取り巻かれて抵抗を受けいかなる損傷を受けても大丈夫なようにできていた。それ自身以上にそれのことをよく知っている唯一の存在、それ自身の製造者である船は、今や明らかに堕落し、たぶらかされ、敵の軍門に下っていたが、その事実も、それの判断や信念に影響することはなかった。
濾過装置だ、とそれは考えた。私は濾過ポッドに近づきさえすればよい、それだけだ&&
次にそれは船のAIの核近くにある点源によってボディスキャンされるのを感じ、その時が来たのを知った。攻撃は過酷かつエレガントで、乗っ取りはほとんど一瞬に近いほど突然で、侵略エイリアンの意識の中の戦闘メモは、現状では明らかに敵に圧倒されている船の思考経路と共有知識に助けられていた。
過ちの入りこむ隙も全く与えぬ間に、ドローンは自己のAIの核からパーソナリティを一部切り離し、バックアップの小泡体へ送りこむと同時に、最も重要な概念やプログラムや指示を伝える情報流を準備して、まず電子微小回路に、次に原子機械基盤に、最後に──完全なる最後の手段として──生の小さな(とはいえ数立方センチメートルほど無駄に大きくもある)半生体頭脳に送りこんだ。ドローンは自ら真の精神と呼びうる部分を切り離してシャットダウンした。それが生涯を通じて唯一存在しえたその場所を。そして、そこに根を張る意識のパターンすべてをエネルギー欠如ゆえに滅ぼし、薄れゆく意識が微かで情報に乏しいニュートリノの噴出のように、機械の新しい精神にぶつかるに任せた。
ドローンは既に動いていた。壁の格納穴から、昇降口スペースへと。

ドローンは先に進み監視カメラの攻撃をかわす。そして次の昇降口に進む。素早く非常ドアが閉まる前に入りこむ。空の宇宙服が撃ってくる。ドローンは進路を観測しながら進む。前方に現れた人影がガスを巻き、爆発が起こる。五年船にいた人物だ。ドローンの進みは遅れる。フィールドの作用で銃が爆発しスーツと人はずたずたになる。
ドローンは置換ポッドに近づく途中で、自分と同じくエレンチ人の作った機械に出くわす。置換ポッド作動。
メンテナンスユニット登場。
ユニットとドローンがディスプレイスメント・ポッドなどの話をする。


ビア・ゲナーオフォエンは冬狩り族の異星友好官(第1級)ファイブタイド・ヒュミドイヤー(五潮湿年)七世と会う。

ゲナー=ホフェンは遠くの三つの頭に皮肉っぽく笑いかける自分に気づき、ファイブタイドも気づけばよいのにと半ば期待した。
ファイブタイドの目茎がぐるぐる回った。「そこのくずウェイター!」飛んでいる去勢少年にどなった。「ほら、このタコ!」
ウェイターは大きな男性の半分のサイズで、この生物の後ろのくちばしを数えないとすると、髭一つ生えていない子供っぽさだった。少年は漂いながら近づき、必要な丁重さの限度を超えて震えながら、触手の届く範囲に入った。「これが」ファイブタイドは肢先をふるわせてゲナーホフェンを示しながら叫んだ。「お前のチーフが雑音を避けたいのなら、当然お前も既に聞いているはずだが、あのエイリアンの獣人だ。一見、生贄のように見えるだろうが、実は誇り高く貴重なお客で、われわれと同じくたくさんの食事を必要とする。動物と外人用の供膳テーブルまで急いで、用意された食事をもって来るんだ。すぐ!」ファイブタイドは絶叫し、その声が、大部分が窒素の空気に、目に見えて小さな衝撃波を起こした。去勢少年ウェイターは、好ましい元気さで走り去った。
ファイブタイドは人間を振り返った。「あなたへの特別なもてなしとして」叫んだ。「われわれはあなたが食物と呼ぶあの気色悪いゲテモノと、あの水とかという毒液から抽出したドリンク瓶をお出ししますよ。神の糞、われらはあなたをどこまで甘やかすことか、えい!」触手で人間の腹をたたいた。ゲルフィールド(軟体場)スーツは硬化して衝撃を吸収した。ゲナーホフエンはちょっと片方によろけながら笑った。
「あなたの気前のよさにはくらくらするほどですよ」
「けっこう! 私の新しいスーツは気に入りましたか?」〈冒涜者〉の役人が人間の匂いを少し吸って、背筋をいっぱいまで伸ばしながらきいた。ゲナーホフエンは相手の体をこれ見よがしに上下にじろじろ見た。
平均的な十分成熟した冒涜者は、胴回り二メートル、高さ一・五メートルの少し扁平な球形のかたまりで、血管とひだのついた空気嚢にぶら下がっている。その空気嚢の直径は冒涜者の望む浮揚の態様に応じて、一メートルから五メートルまで変化する。てっぺんには小さなセンサーのこぶがあるのだ。冒涜者が攻撃/防御モードに入ると、嚢全体が萎んで、からだの本体上部からでて来る防御プレートで守られる。主要な目と耳は二本の目茎でこの生物の口を覆う前くちばしの上に運ばれる。後くちばしは生殖器を守る。肛門/放屁孔は、本体下部中央に位置する。
本体には先天的に、六ないし一一本の太さも長さも多様な触手がついている。少なくとも四本は通常、先端が平らな葉型の水かきになっている。ある特定の成人男性アフロンター人の実際の足の数は、参加した戦闘及び/又は狩りの数と、そこでどれぐらい貢献したかに依存する。印象深い多くの傷、足より多い切り株を持ったアフロンターは、賞賛すべき献身的スポーツマンか、勇敢だが愚かで恐らくは危険なほど無能とみなされるかのいずれかで、それは個人の名声に完璧に依存していた。
ファイブタイドは九本の足を持ってうまれた──それは一流家系では最も幸運の数字と呼ばれ、戦闘や狩りで最低一本を失うのが礼儀であり──実際、フェンシングの師匠の本妻をめぐる軍事大学での決闘で、一本を否応なしにフェンシングの師匠に捧げていた。
「とても印象深いユニフォームですな、ファイブタイド」ゲナーホフエンが言った。
「だろう、けっこういいだろう?」アフロンターは体をリラックスさせながら言った。

アフロンターは自分の制服を示して浮き上がって誇示する。
(その後彼らの服装の説明が3ページほどあるが、うざいので省略する)

「旦那様!」去勢少年ウェイターが叫びながら、ファイブタイドの脇の巣空間の表面に滑ってきて停止した。三本の触手の中に様々な大きさの透明で多くの壁にしきられたフラスコがたくさん入った巨大なトレイをゆらめかせていた。
「何だ?」ファイブタイドが叫ぶ。
「エイリアン客の食事です、サー!」
ファイブタイドは触手を伸ばしてトレイの周りを掻き回し、物を倒した。ウェイターは容器がぐらついて倒れ、自分の手に持ったトレーの上で転がるのを恐怖に目をまん丸くして見ていた。その表情を見分けるのにゲナー-ホフォエンは外交官としての訓練を要しなかった。ウェイターが容器を割ってしまう純粋な危険は小さかった──内破がうみだす破片は比較的小さく、アフロンターにとって毒性のある内容物はあまりにすぐ凍結してしまうため大した危険をもたらすことはなかった──が、公衆の面前でそこまで明白に無能を示したウェイターを待つ罰は、おそらくその失敗の酷さに比例するので、生き物は心配せざるを得なかったのだ。「何だ、これは?」ファイブタイドは促し、四分の三まで液体の入った丸いフラスコを掲げ、去勢少年のくちばしの前に勢いよく振って見せた。「飲み物なのか? これは? どうだね?」
「わかりません、サー!」ウェイターは泣くように言った。「その──そのように見えますが」
「低能が」ファイブタイドはつぶやき、優雅にフラスコをゲナーホフォエンに渡した。「お客様」彼は言った。「どうぞ。お気に召されましたか」
ゲナーホフォエンはうなずいてフラスコを受け取った。
ファイブタイドはウェイターを振り返った。「何だ?」彼は怒鳴った。「このスットコドッコイが、いつまでぷかぷか浮いてるつもりだ。残りを〈原人語り〉バタリオンのテーブルに持っていかんか!」触手をウェイターに向かって動かすと、ウェイターは面白いほど震えあがった。気嚢を萎めて床膜を横切り、巣空間のパーティーエリアに行き、アフロンターたちとぶつかりながら少しずつ道をこじ開けて進んでいった。
ファイブタイドは仲間の外務士官に挨拶でたたかれたのに気づき一瞬振り返り、それから体を回し、ユニフォームのポケットの一つから液体入りの球を取りだすと、注意深くゲナーホフォエンが持っているフラスコにカチンとあてた。「アフロントとカルチャーの未来に乾杯」がらがら声で入った。「われらの友情が長く、戦争がすぐ終わることを祈って!」ファイブタイドは液体を前くちばしの中に押しこんだ。
「あまりすぐ終わるとかえって恋しくなるでしょうな」ゲナーホフォエンはつかれた様子で言った。そう思ったからというよりもむしろ、カルチャーの外交官はその種の発言をすべきとされていたから。

雄アフロント人のパーティで、みないつもよりはめをはずし、ホフォエンはノズルをスーツに接触させてスーツのAIに認識された上でノズルを取りこませ、それを飲んだ。

~5:5の水とアルコール、プラス、微かな部分的に有毒な草に似た化学物質。ライセツィカーの魂にもっとも近い~
とゲナーホフォエンの頭の声が言った。~もし私があなたならパスしますよ~
~スーツよ、もし君が私ならば、最も近しい者の抱擁に耐えねばならない気分を緩和するだけのために、酩酊を歓迎するだろう~ とゲナーホフォエンは飲みながらそいつに言った。
~おお、私たちは怒りっぽくなっていますね?~ 声が言った。
~私は君の良心のためにそうしているんだ~ とホフォエンは言った。

「あなたの風変わりな評論家の連れもいいと言いましたか?」目茎をフラスコにうなずかせながら、ファイブタイドがきいた。

ホフォとファイブは酒を飲み終え食い物のテーブルに向かった。

「違う違う違う、こういう風に振るんだよ、馬鹿な人間さん。さもないとスクラッチハウンドに取られるよ。見るんだ&&」
アフロントの公式ディナーは巨大な円卓を幅一五メートル分ほども集めたところで行われていた。それぞれのテーブルは餌穴を見下ろすことができ、穴の中では通路のはざまや中で動物たちの戦いが起こっていた。

(要するにエイリアンを使った闘犬のようなこと。特殊なガスを使うので爆発事故が起こったこともあり客への危険もあった。)

実際、これに心底関心を持つ人々の中から、最も頻繁に異なる宙域に住む異種族間の非公式同盟のメンバーにアフロント人を加えることへの明示的な反対論の一つが起こった。すなわち、他のより劣った種族に優しくしなければならないことは──野蛮人どもにアフロント軍の偉大な兵力に対する敵がい心を証明する機会を与えるよりむしろ──平均的な社交ディナーをよそよそしく退屈なものにしてしまう、と。
今なお真に特別な場では、適度に下らない争いをしているアフロント人同士あるいは罪人同士の戦闘が行われる。

この闘人パーティはホフォエン的にあまり見たいものではなかったが、その権利をめぐって熾烈な争いがあるほどの人気だった。今日は第一に闘魚が行われ、ファイブは嬉々として参加する魚の紹介を行った。第2コースはキュートな生き物だった。同じ生き物の料理を食べながら客はこの生き物の競走に熱中した。メインコースが「スクラッチハウンド」だった。8本足、太った人間ぐらいの大きさ。これがハイライト。
彼らは犬をくいながら闘犬を眺める。ファイブの反対側にクイックテンパーが座っている。アフロントの旧防衛庁は、外交サービスを行ったことを少し後悔し、最も攻撃的で外人嫌いなものを配置して、アフロント人軟化のイメージを払拭しようとしているらしかった。

ホフォエンは皿の料理に手を出したことを詰られる。ファイブは闘犬のプレイに興奮する。ここはブラックホールの周りを回るガス球の中で、ホフォエンはひどく場違いなき持ちになった。

そこへ、モジュールのスコペル・アフランキから、「すぐに戻れ」と緊急連絡&&。

ホフォエンは犬への賭け金を争って吊り上げ、ファイブは600サカーを宣言し、ホフォエンは1000をベットし終了。モジュールは、「ファイブには1000なんて払えないよ」という。モジュールとスーツが〈加速剤〉を飲ませる飲ませないで言い争いを始め、ホフォエンはファイブの話を聞き漏らし、適当に答えて逃れる。
ようやくモジュールのメッセージをきく。GSV死と重力、からのメッセージ。すごく長いらしい。しかも質問に答える機能もあるらしい。ホフォエンはメッセージをきかせてもらうことにする。ゼネラルシステムズヴィーイクルの〈死と重力〉の声は変わっていなかった。ホフォエンは加速剤で周囲の動きを遅く感じた。
GSVはホフォエンに80日他の場所での仕事が必要になったと言う。だがホフォエンはかつてスペシャル・サーカムスタンスにこき使われてうんざりしていたので難色を示した。またホフォエンは当地で大委員会の新たな客の前で演説する仕事もある。
GSVは執拗にデリケートな仕事で今の今まで秘密にせざるを得なかったともったいをつける。また依頼主がSCでもないという。しかしGSVはSCの代理である以上そんなことはありえないと言ってやった。そうしながら闘犬を見ていたがどうも出来レースらしいと言うまずい思いに駆られていた。
GSVの提示した仕事は、80日の99-99・9%を旅してすごすこと、アフロントの船から途中でカルチャーに乗り換え、目的地での仕事は一日で終わるということだった。
闘犬は青犬が赤に対し優勢になる。ホフォエンはマズイと思い、スーツにエフェクショナイズを要求する。スーツのエフェクショナイズによって赤が優勢に転じる。
ホフォエンはGSVに考えさせてくれといい加速器を止め、「賭けに勝った」ファイブを祝福した。


軍の雪の中のキャンプで目覚める司令官がいる。彼らは氷河に穴を開け掘っている。穴の底で人や機械が立ち働き、列車が物資を運んでいく。司令官はがらがらという音と震動を感じる。鉄の鋸綱が切れ、伏せた司令官らの頭上を横殴りに走り、多数の人間を切り裂くという事故が発生する。そして司令官は足に物(古い死体)がぶつかり骨折した。それは少女の顔だった。雪の中、薄れゆく意識の中で考える。裁くなら焼き払ってしまうが、氷河の中なら長期間保存されること。記録を残したい。俺たちは体のみでなく心も病んだ。気を失う。
やがて生き残ってベッドで目覚める。そして頭に埋め込まれた声が&&。声は言う。
「真実をつかんだ、きみたちのしたことの。なぜ突然人々が消えたのか。種族皆殺しがあった! それは男たちのしたこと」と指摘される。
男は列車に轢かれ死ぬなどの夢を見る。やがて死ぬ。


船のマインド同士の会話。船同士がミートファッカー(肉と寝た野郎)と罵ったりする。(会話の内容は今のところよくわからない)


ホフォエンはティシュリン伯父のホログラムから、任務が死んだ女の魂を盗むことと知らされる。

第2章 ここで発明されたにあらず

ドローンは、恒星間を漂いながら目覚め、自己のメモリを調査しながら原因を究明する。まず位置を確認し、日付を確認し、適度な速度で進みながら「過去」のメモリを調査する。


ホフォエンがシャワーを浴びるシーン。
***
伯父ティシュリンのホログラム。一晩寝てから、ホフォエンはメッセージを再生し、伯父のホログラムと対話していた。SCは今度はいったいどんな難題を課するつもりだろう? 
ホフォエンはアフロント人になりたいといって伯父を驚かす。伯父も外交官になったのはエイリアンに興味があったからだったが、なりたいとまでは思わなかった。お前は変わってると伯父は言う。伯父の話。2500年昔、アサティエル星群近く、銀河平原の外の二重太陽に〈汎用コンタクトユニット〉略称GCUの〈プロブレムチャイルド(問題児)〉が派遣され、調査を行った。伯父はホフォエンが小さいころよく物語をきかせ、特に〈コンタクト〉での自分の冒険をきかせたものだった。伯父によるとGCUは2つの異状を発見した。一つは、死んだ太陽の年齢を調査したところ一兆歳だということが分かった。宇宙の五〇倍以上の年齢&&。GCUのAIコアの記録は送られたが、報告は不完全で、年齢に関するデータが大きな部分を占めていた。乗組員も口が堅かった。第2は山のような大きさの黒い不活性の物体で、センサーにも反応しない。GCUはエンジントラブルでその場を去ったが、三年後調査隊が着くとすべて消滅していた。またGCUのエンジントラブルは攻撃されたものだった。理由について昔の高度文明の創造物でハイパースペースに消えたといった憶測が流れるも、謎のまま話題から消えた。PC号はコンタクトを去り、カルチャーすら離れてウルテリアに加わり、乗員は長寿治療〈非凡生命選択措置〉ULCを受けた。だが大半は不適応で死亡し、ドローンもグループマインドに参加してしまい、船の話をきかなくなっていた。ウルテリア人もSCもあらゆるつてを失った。唯一の生き残り、旧船長の女性の人格がGSV〈スリーパーサービス〉号に生き残っていることが偶然判明した。またエスペリ星近くに同様の物体が出現したため、急遽調査の必要が生じた。
任務の内容はSS号から船長の人格を生き返らせること。船を説得できなければハッキングでもよい。その技術はティアーでランデブーする前にアフロント船で教えてもらえるだろう。〈グレイエリア〉号で。この船はSS号の人格情報を盗むのに適した船だった。もっとも盗んだ後、戻るのに防御が必要だ。いわゆる〈外的コンテクストの問題〉(OCP)の一つだ。OCPとはある文明内で最高の技術を達成し覇権を得たとしてもそれを外部の覇権に利用されてしまいかねないという問題の総称である。いかなる文明にもつきものの悩みだ。そのためにこそ、GA号を守ることが必要なのだった。そして〈ここで発明されたのではない〉NIHというGSVがインシデント調整者を務めるらしい。
で、ホフォエンが選ばれたのは、排他的になっているSS号も彼なら受け入れるだろうからということだった。あの女がまだいるというのだ&&。


特使が携えたメッセージはアフロントがカルチャーや銀河を支配することを可能にすると言う。ファイブタイドはメッセージを見る。そこには奇妙な物体〈エクセション~過剰体~〉の調査データが記されていた。ファイブイタイドは〈アティテュードアジャスタ〉号(戦艦)の特使に説明を請う&&。

三章 招かれざる客

13000年昔、列島戦争の終結を決定づけたブートラゴの戦いが、レフィア・プライムで勃発した。キャノンと地上戦で多数の死傷者がでた。アモルフィアは第四の丘、死傷者の間をさまよっていた。&&この光景は、SS号がデータを収集して〈ジェネラルベイ第三インナー〉に構築したモデル場面である。レフィア・プライムという星はカルチャーの母世界の一つとされていた。GSVは様々な船や人々の記録、記憶からこの模型セットを作り上げたのだ。

それは80年前に小さな規模で起こった。カルチャーのすべての居住地(小さい順にオービタル=軌道コロニー~船~ロック=岩塊=小惑星~惑星)にストレージ施設があった。一定年齢に達したり人生に飽きたりした連中が、若年化治療、グループマインドへの参加、カルチャー外優越(長老)文明への移住、死、そしてストレージ行きを希望する。一種のコールドスリープの場所である。カルチャーは長老種族入りを永年延期していた。審判の日をこの目で見たいという人々が日々の退屈を避けるために行くのがストレージだった。ストレージ技術は次第に進歩し、棺桶型からスーツ型に進歩した。SS号はストレージ技術を本格的に採用した最初の船だった。当時は〈静かな自信〉QC号と呼ばれていた。この船は3つのマインドを搭載していた。その後マインド同士で意見が割れ、あるいは反乱によって、一つのマインドのみが残り、自らをSS号と呼ぶにいたったという噂があった。カルチャーは探査船で追跡させたが、SS号は意に介さず、乗員を追いだした。ストレージの人しか残らなかった。このような船は〈エクセントリック〉と呼ばれ悪名が高まった。アモルフィアはこの船が戦場のモデル場面に設置した擬似人格サブルーティンだった。彼はダジェイル・ゲリアンのことを考えた。と、黒鳥グラヴィウスが飛び去り、戦場に横たわるストレージから冷めた女が動いた。シクレイヤ-ナヤサ・クレオピス・インス・スタハル・ダ・メイピン、31年前に386歳でストレージされていた女性だった。女性はやがて起きあがった。模型のそこだけ穴が出来た。


ゼテティック・エレンチの第5艦隊、スターゲイザー族の船、探査船〈平和は実り多し〉PMP号は〈情報の羽根の回転〉宙域を探査した。他の7隻とともにn4・28年725日500時にティアーを出発し、途中で分散したのだった。これまでのところ目を引くものはなかった。
エレンチ人はもとカルチャーの一部だったが、1500年昔に分岐した。カルチャーは現状維持を旨とし、銀河の覇権ゲームを続ける他種族のブローカーをしていた。エレンチは自己変革を求めて分岐した。新し物好きで、新文化に接するときは必ず変化し違う存在になることが彼らの理想だった。そうして最終的に関係相互の上位の真理に到達するのが理想であり、それは使命、天職だった。その結果彼らは分散し、失踪し、他の文化に同化され続けた。中には〈攻撃的覇権集合物〉AHSOに変ずる物もあった。遭遇するすべてを自らに同化させてしまうのだ。通常は〈教化的覇権集合物〉EHSOにとどまるのだが、単精神的な船にあってはAHSOとなってしまうのだ。
今やエレンチとはカルチャー以上に、特定の人、船や場所でなく、態度を指す概念だった。様々な種族の人が出入りし、昇華し、同化し、失踪していた。だが母なる文化から、不断の変化の中で同一性を保つ能力を受け継いでいた。そしてエレンチ人は興味を引くものを発見することに長けていた。
更に二箇月、何も起こらなかった。そして78日後、エスペリ星の近くに人工物(エクセション)を発見したのである。直径五〇キロ以上、黒いボディ、周辺環境は異常(アンビエント・アノマリイ)、遠くから観測困難。はじめそれは質量のない影と思われた。異常な点が多く、PMPは興味を引かれ調査を開始した。極秘で調査を進めるため他の船には連絡せず、調査船をハイパースペース経由で物体の中に送りこむことにした。ただの影ならすぐ分かるし、物体(船)ならば、排除されるか受けいれられるかいずれかだろう。プローブはPMPと密に連絡を取りながら、HSからエクセションに近づく、そして&&

ドローンのシセラ・イセリウス1/2のAIの記録はそこで終わっていた。船が襲われたのだろうか? ドローンは船の苦境に関する記録を引きだす最後のチャレンジをする。記録を壊しても、片われのイセリウス2/2を失ってもかまわない。コアへの侵入を試みる。オリジナルを失い2/2の名で自分のコアにバックアップされた部分に。破壊したいと一瞬考えたが、物体の調査の証拠として保持せねばならない。乗っ取られたかもしれないPMPからは探知できまい。シセラ1/2はそれをエクセションの例だと考えた。過剰に攻撃的、強力、拡張主義的なものに対するカルチャーの呼称だった。

そして2/2に何が起こったかは分かった。さてどうするべきか? 外部に連絡を取りたいが、時空の網を超え光速を超える連絡手段がない。池に撃ち落とされ表面張力で動けない蝿のようだった。船が乗っ取られていなければ連絡を取れるが、その誘惑に乗るわけにいかない。自己修復プログラムは1月かかり、終身刑に等しく耐えがたい。だがともかく内部の反物質などを使ってのルーティン作業に取りかかった。その後、HSの時空の網に波動を観測し、その正体を探った。シグナルが戻ってきてしばらくして止まる。何かが近づいてくる&&池に落ちた獲物の蝿に近づくように&&。


(やべえ、エゴラッピンのCDを調べてたらもう2時間たってる。明日買うぞ。デターミネーションズってのもイイ!)
ここは〈羊歯の剣〉=ファーンブレード空域にあるわい星を回るドーナツ型居住体(中央にミニブラックホール)〈神の穴〉。ホフォエンはモノレールに乗って移動する。居住体の中は40区画に区切られている。中にはアフロント人が好みそうなメタンの大気の環境に合わせた区域もあった(アフロント人はそこで狩りをした)。しかし今、狩りをする姿は見当たらなかった。
ホフォエンはモジュールと話す。アフロントは船を三隻も用意したらしい。金がかかるとモジュールはぼやく。金は力だ、こうしているうちにアフロントの勢力下に入ってしまうと。
モノレールカーは落下して船のあるハンガースペースに降りる。中央に三隻の巨大な建造中の船、車はそこに向かう。〈サックスライサー(袋切り裂き)2号〉〈キスザブレード(剣に口づけ)号〉〈フライトスペア(恐怖の槍)号〉、とスーツが言う。自己修理機能はあるが、戦跡の証しを残したいというアフロント人の配慮でわざと不完全になっている。ファイブタイドと海軍司令官キンドラマ-六世にエスコートされ、ホフォエンは車外の通路にでる。


ここでウルバー・ザイチが登場する。彼女は22歳、フェイジ・ロックで三歳から学者の才能を発揮、ひいひいひいばあさんの代以後では並ぶ者のないほどイイ女として名高い。ウルバーは今、卒業パーティ会場からドローンのチャート・ラインに引っ張られて出て来た。ウルバーはイイ男と踊っているところをチャートに引っ張り出され怒った。ウルバーは会場に戻るというが、チャートは通信内容を見てほしいという。〈コンタクト〉からの招待状らしい。チャートは、〈コンタクト〉に入れば、イイ男のたくさん乗った船がいくらも手に入るよという。ウルバーはチャートの説得、〈SC〉の言葉にようやく納得する。

フェイジロックは太陽系の小惑星を居住地にし、9000年来銀河系を飛び、カルチャー最古の一要素となっている。もともとは工業と貿易を行ったが次第に技術研究の要としての地位を確立した。そして次第に巨大化し人口も増えた。その発明した技術はカルチャー発展の礎である。航行速度も増し、今ではワープ航法やハイパースペースに道を掘る航法も可能となっているのだ。ウルバーはその建造者一族の末裔で44代続いている。その間に人々の肉体は様々に変化したが、元の人間の姿に戻すのが最近の風潮だった。全く整形をせずに美を備えることをウルバーは誇っていた。

(魅力的なヒロイン登場だ。この後どこかのセンターにいきコンピュータで対話するがそのシーンは明日読む。今日は116pまで。あとは「ゲームプレイヤー」いく)

ウルバーはチャートに連れられて、〈緊急中央コマンド空間〉ECCSに行き、コンピュータ画面を見せられる。そこには一見退屈なGCS(汎用コンタクトユニット)〈変化しやすい宿命〉FATC号からの通信内容が表示されていた。ウルバーは読み進む。略号が多く、いちいち訳がカッコ書きされている。FATC号からGSVの〈倫理の傾き〉EG号へのエクセションに関する報告。エスペリ星から見て静止、コンタクトサインを送ってみてもかえって来るのは「私(I)」のみ。観測結果によると反物質、球形、直径53・34キロ、質量不詳(推定1・45*8の13乗トン)、黒色、点描風ざらつき、12-1mm以内はフラクタル状。HSトポロジー及びエネルギーグリッドの観点からするとK7カテゴリーに属する。周辺に奇妙な物体あり。28光分内に石くずの雲。その中に近等価テクノロジー物体の残骸1、ミニドローンタイプの戦闘ミサイル1、高級(酸素充満タイプ)戦艦の内容物1あり。後者はエクセションより遠ざかりつつある。この雲は52・5日前に発生したと推認される。発生場所はエクセションの現在位置より948光ミリ秒隔たった位置。他に30光年の範囲内に物質はない。メッセージの最後にGULPの署名。
ウルバーはチャートに解説を求める。チャートによると、GCUはGSVよりエクセション発見の報を受けた。古いエレンチ流の挨拶や銀河共通語などでシグナルを送った。周辺には23日前の小戦闘の跡があり、それが存在を脅かされれば自爆ないし攻撃をしかねないことを示しているため、対処をしかねている、とのことだった。最も驚くべきなのはHS上のあらゆる方角のエネルギーグリッドにリンクされている点で、あらゆるパラメーターや前例の枠外にある。GCUが恐れるのも無理はない。ウルバーの役目は、その物体がカルチャー外の危険な存在でエクセションそのものであるのか、それとも通常の〈ヘゲモナイジングスウォーム(占有群)〉HSに過ぎずコミュニケーション可能なのかの判定である。後者であれば、カルチャーは当該HS技術を学ぶ、あるいは利用することができる可能性がある。つまり、「別の宇宙」に行けるのではないか、というのだ。船が同じ宇宙の時空の目を縫って移動するがごとく、上位HSを通って年老いた宇宙へ、下位HSを通ってより若い宇宙へ行けるのではないか? それは時間旅行とは違うが、行き先の宇宙を自由に選別できるという点では時間や年齢から自由であるとも言える。より若い(熱死、大崩壊がこの宇宙より遅く訪れる)宇宙に行けば、この宇宙でどれだけ寿命を伸ばそうとも避け得ない宇宙の熱死から逃れられるのだ。むろん、宇宙を製造する大本である火の玉エンジン自体に寿命がなければの話だが。それはちょうどエスカレータの階層を登って下の階層の消滅を免れるのと似ている、とチャートは語る。また発生初期の宇宙へこの宇宙の技術を持ち込んで征服したり、自由にカスタマイズしたりも可能になるのだ。これは初めての発見であり、その可能性は否定できなかった。
興味を引かれたウルバーは、この報告に対するコメントを読むことにする。
まずはGSV〈沈黙のような叡智〉WLS号のコメント。しかしほとんど中身がない。重大問題でありあらゆる手を尽くして究明せねばならないといった類のコメントばかりだ。コンティネントの主語が複数形になっているが、これは三人一組のグループマインドであることを示すようだ。あらゆる議論はM32基準に適合するよう極秘裡に行われるべきである。この秘密保持基準は最大nから128日で、〈ミーン・エンヴィサージド(標準予備調査)期間〉96日と、32時間の小委員会審議期間を要する。近隣にエスペリ星があることに配慮し、〈タウシグ〉語を用いる。
次にプレート級GSV〈新しい恋人の出現を期待〉ANLA号が機密扱いに反対するコメント。
次がGCU〈華麗なる戦術〉TG号。秘密重要事項扱いには同意するが、武力沙汰は避けたいという内容。
ウトラ号(軌道コロニーのハブ)。今回の件は汎科学的な恐るべき事実を示唆しているという恐怖の表明。
(以下コメントの主の名は省く)
>どうせ明るみに出て文化間の競争になるのなら今のうちに〈付加価値研究〉を続けよという意見。
>ついに知恵の光が灯るというような内容の詩。
>もっと焦点を絞れないか?

(以下、マインド同士で2ちゃんねるのような会話が続く。STL号がSG号のコメントに文句をつけ、WLS号がSG号を荒らし、基地外扱いし、コアグループからの追放を要求する。罵りあいが始まり、NIH号のコメントが入る。WLS号が2・31に壊れたはずだが? 偽者か? 本人だと証明してみろと文句をいう。WLSはめちゃくちゃだ、秘密にする意味がないと怒ったため、荒らし認定されメンバーから除外される。その後ようやく落ちつく。)

NFA:M32は無理だよ。M16がちょうどいい。物体発見したが調査中、危険なので近寄るなと告知すれば誰も近寄らないだろ? で、SGさんが軍隊を準備すればいい。
TG:で、キャノンも準備。
SG:いいよ。
SCO:発表に関してはWLSに頼めばいいんじゃないか?
STL:だな。でも怒ってないかな?
ANLA:今すぐ発表したほうがいいと思うけど。
NFA:少し時間を置いたほうがいいんじゃない? どうせ他の連中が鼻を突っ込んでくるんだから、その前に少しでも調査をしといたほうが。
DT:NIHがすぐ近くにいるから大丈夫だ。僕もそんなに遠くないから、NIHに会いに行ってもいいよ。
NIH:僕はいいよ。
DT:EGとFACにいざというときはITGに参加してもらえばいい。
W:お互いの友と呼ぼうよ。
NFA:以上で異論はない?
ANLA,TG,W,SG:賛成
SCO:反対&&嘘、賛成!
STL,L,NIH,FR,DT,EIT,NFA:賛成
L:おつかれさん。じゃあしばらく待とう。
SCO:様子を見ましょう。
(これが最後のコメントです。)

コメントを読み終わった二人は驚く。会話をしているのは五世紀の間表に現れなかったマインドたちだった。〈ヘビークルー〉〈ゴースト〉と呼ばれ、自らを〈面白い時代のギャング〉ITGと読んでいる連中だ。ドローンの説明によると、最初は通常レベルの強力マインド・インシデント・グループで会話が行われていたが、途中で、最もハイレベルだがイディラン戦争以来集まったことのなかったITGグループに乗っ取られたという状況らしかった。NIH号は500年前に廃船となり修理を待ちながら話をきかなくなったが、この事件で出番が回ってきたというらしい。この会話は12日前で、エクセション発見のニュースが流れたのは一昨日だったが、ブリテリングー紛争解決のニュースで持ちきりだったこの日は、ウルバーはそのニュースを見落としていたのだった。「お互いの友と呼ぼう」は新たにマインドをグループに迎える表現らしいが、あるいは秘密の暗号とも取れる。最高の秘密であるM32ですら不足だというのか。ともかくマインドたちのたくらみは分からないが、危険なことを含んでいるらしかった。
で、ウルバーの役目は、ある男の昔の恋の相手である女性と似ているので、その女性になりすまして男をおびき寄せることだった。女性の映像を見せられ、あたしのほうが若いしきれいだとウルバーは言う。そして、どこの馬の骨とも知れぬ男と寝ろって言うの?と呆れるが、ドローンはその必要はないといい男の映像を見せる。男を見てウルバーは「結構かっこいい」といいやる気になる。出発は今夜らしい。ウルバーはダダをこねて翌朝遅くまで延ばす。目的地はティアー。ロックはそこに向かっているものの途中の惑星の祭りのため止まっており、着くのは200日後。船で急いでも二箇月はかかるはずだ。しかし、SC特製の船なら10日で着く、しかも自分の船になるらしい。ウルバーは大喜びで承諾する。
12. Posted by silvering   September 14, 2004 00:42