SF百科図鑑 Harlan Ellison "Angry Candy"


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November 18, 2005

Harlan Ellison "Angry Candy"

1988年短編集。
我が国では1冊しか短編集が出ていないエリスンだが、未収録短編にも傑作が多い。特に、「プリティマギーマネーアイズ」「ジェフティは5つ」といったメロウ路線の作品に傑作が多く、俺の好みもこの路線の作品に集中する。ヴァイオレントでアヴァンギャルドな作品も悪くはないけどね。暴力と感傷の同居がエリスンの魅力。それは最高傑作の「少年と犬」を想起すればすぐに分るだろう。
で、本短編集は、まさにそのメロウ路線の作品を多く収録しているだけに満足度が高かった。「少年と犬」級の名作こそ入っていないが、収録作の平均レベルは高く、全体的な満足度は『世界の中心出会いを叫んだけもの』を上回っていると思う。
以下、短編リストと点数。備忘用に適宜コメントをつけた。
Paladin Of the LostHour ★★★ ネビュラ賞受賞作。ユリウス暦からグレゴリウス暦に移行するにあたって暦の上から失われた10日間。この失われた時間を守り続ける男がいた&&という奇想ファンタジー。ttp://www.ffortune.net/social/seso/seiyo-kin/gregorian-calendar.htm 改暦に際して10日間が暦上飛ばされたという事実についてなじみが薄いせいか、今ひとつ面白さが伝わらず、ネビュラ賞を受賞するほどの作品なのかはよく分らない。
Footsteps ★★★ ヨーロッパを放浪するモンスターの生き残りの女が、別の系統の生き残りモンスターの男と出会う。なかなかの佳作。
Escapegoat★★1/2 タイムマシンで過去に遡り、タイタニック号を沈める男たちの話。ショートショート。
When Aulds Acquaintance Is Forgot ★★ 
BrokenGlass ★★★1/2 バスに乗った女がエロティックな悪夢に襲われるが、悪夢の主である同じバスの乗客の男を倒す。不気味な傑作。
On The Slab★★★1/2 ある場所に突然現われた生きた巨人の男。かれは神なのだろうか。しかし、鳥たちが現れ巨人の心臓を食い荒らす。
Prince Myshkin, And Hold TheRelish ★★ ドストエフスキーの女性の扱いのひどさを批判する男が語る、悲劇的な女性遍歴。
The RegionBetween ★★★★1/2 集中最も長く、最も前衛的で、内容もベストだろう。処刑された男が体験する生死の境の世界は、サキュバスという邪神が様々な世界の生き物の魂を集めては何度も転生させて楽しんでいる世界であった。男は様々な生を転生したあげく、この邪神を倒し、自ら神になり、全ての世界を抹消する。文章が縦横に交錯したり、文字が螺旋状に配置されたりするなど、視覚効果を狙った前衛スタイルが新鮮。ジャック・ゴーギャンの挿絵も不気味だ。翻訳は難しそう。「世界の中心で愛を叫んだけもの」路線の作品といえようが、ディテール描写においてはあれを上回っている。
LaughTrack ★★★ 魅力的な笑い声を持つ伯母は、主人公が小さい頃に亡くなった。しかし、テレビ番組の中で主人公は死後も何度も伯母の笑い声を耳にする。謎の怪物が伯母の人格を機械的に記録し、それを用いていたことをテレビ業界に入った主人公は突き止める。そして、再生された伯母の人格と語る&&。
Eidolons ★★1/2 ある男を訪ね兵士の人形コレクションを見せられた主人公が幻視する兵士の経験。
SoftMonkey ★★★ 白人男の集団に追われながら赤ちゃんの人形を抱いて逃げ続ける黒人女の恐怖の体験。
Stuffing ★★1/2 惨めな生活を送りながらも、自分の投票が世界を動かしていると信じる男の話。
With Virgil Oddum At The EastPole ★★★★ 集中唯一の本格的なSF。二重星系の惑星の極寒の地に滞在する男の前に、他の地球人が現れる。かれは現地人に神と崇められていた。この男が準備を進める秘儀に、主人公も否応なく引きずり込まれていく&&。
Quicktime ★★1/2 革命を逃れた国王がタイムマシンで恐竜時代へ。そこには草食恐竜しかいないはずだった。ところが&&という単純なショートショート。
The Avenger OfDeath ★★★ 死神の手下がFBIの姿をしてターゲットを殺して回っている。主人公は、離反したその一人の遺志を受けて、復讐をして回るが、やがて現れた死神は実の父親だった&&という奇想ファンタジー。
Chained To The Fast Lane In The Red QueensRace ★★★★ これは面白い。「膜」を超えて様々な男の人生を次々と経験する男。ところが、新たに入った世界で自分にあたる男が、その場所にいついてしまい次の世界に行くのを渋っていた。だが、同じ空間に同種の男が二人いることは許されなかった&&。という奇想小説。
The Function Of DreamSleep ★★★★ これも傑作。肉親を次々と亡くし、体に巨大な口がある悪夢を見るようになった男。カウンセリングを受けたあげく、「悪夢を集団で吸収する<レム睡眠>グループ」を頼るが、男の悪夢が強烈すぎて死者を出してしまう。最後に頼った医者は、男の夢の中の口が、死への入り口、「タナトス」そのものであることを指摘する。そして医者は自らの悲しい体験を語り始める&&。メロウ路線の傑作。
(総合)
テーマ性 ★★★
奇想性  ★★★★
物語性  ★★★
一般性  ★★
平均   3
文体   ★★★
意外な結末★★★
感情移入 ★★★
主観評価 ★★★(32/50)
エリスン。かなり気に入ったので、Slippage DeathbirdStoriesなどの他の短編集もできる限り手に入れて読んでみたい。しかし、扶桑社が出そうとしていたはずの短編集は、どうなったのだろうか。

silvering at 00:12 │Comments(10)読書

この記事へのコメント

1. Posted by slg   November 18, 200515:28
辞書作成作業 a終了、bに入った。
2. Posted by slg   November 24, 200502:36
chicまで入力。
3. Posted by slg   November 24, 200514:46
clubwomanまで。
ここ数年口は災いの元と感じることが増えている。言うこと言うこと裏目に出るので、大殺界に突入してるかも。早く過ぎますように。当分口を慎もう。迷ったら沈黙。
4. Posted by slg   November 24, 200515:01
訂正、cobraまでいった。
5. Posted by slg   November 26, 200521:31
delegationまで入力した。
6. Posted by slg   November 27, 200504:13
Dubrovnikまで。
7. Posted by slg   November 27, 200513:52
Eleanorまで入れた。
8. Posted by slg   November 27, 200516:42
eleemosynary
9. Posted by slg   November 28, 200513:51
evensong
10. Posted by slg   November 28, 200515:27
Fagin
*****
2001年日記より
2/14
Stilling, Still Dreaming / The Blue Herb★★★★★
アンダーグラウンドvs.アマチュア/The Blue Herb★★★★★
コンクリートリバー/Harvest Moon★★★★★
超かっこいい。凄すぎます。
「Stilling~」は1、2枚目のシングルとファーストアルバムのカップリング。シングルの方はまだ手探りというか習作の印象だが、ライムの凄さの芽は十分に感じられる。しかし何と言っても凄いのはアルバムの方。特に「孤憤」以下の2枚目のアジテーションの凄さは、江戸アケミを超えているかも(笑)。もちろん、超好み。日本語をナイフのように使うという意味では、江戸以外では三上寛(笑)、遠藤ミチロウ、町田町蔵、初期ブランキージェットシティー(後期は全然ダメ(笑))といったあたりが思い浮かぶが、日本語の解像度、構築度、リアリティ、SF度(巨視性)とどれをとっても、多分1位。大抵の日本のラッパーは、下らない中身のないライムを「これしかないんだから仕方がない」と我慢して聞き流してしまうことが多いが、こいつの場合は聴くまいとしても意味を聞き取らずにいられないインパクトがある。しかも曲の方も単純なハードコア一辺倒ではなく例えば「あの夜だけが」のような毛色の違ったものも入っていたりして、懐の深さを感じさせる。
「アンダーグラウンド~」はアルバム発表後のシングル。表題作ももちろん良いが、何と言ってもカップリングの「未来世紀日本」の詩が凄い。完全にSFです。それも表面だけでなく骨の随までSF。ジョージ・オーウェル+ポール・ディ・フィリポ+ギブスン+ディックという感じ。多分、このまま「SFマガジンコンテスト」に応募しても上位入賞するんではなかろうか(笑)。頭にチップを埋め込まれて自分が誰だか分からなくなるというくだりは、とにかくもう、完全にディックがサイバーパンクしている感じ。
「コンクリート~」はボスザMCとWACHALLなる人物のユニットの1ストシングル。ヴァ-ジョン1の最初の語りも良いが、ヴァ-ジョン2がとにかく強烈。ラップの間に入る「ブルースに体をゆだねながら~」のファンキーなコーラスが最後にだんだんに盛り上がって行くところが圧巻。
このとおり、詩が凄いだけではなく、サウンド的にもキャパシティの広いところがこいつらの強みだ。全面支持したい。
エリスン「失われた一時間の守護者」★★★★
う~ん、何これ? という感じだ。エリスンのヴァイオレンスとペーソスの両方が程よく調和した作品だが、肝心の「ギャスパー」という「失われた1時間」の守護者の存在が今一つ説明不足で物足りない。読後感は「ジェフティは5つ」あたりに近いかも。「失われた1時間」のアイデアがグレゴリー8世のジュリアン暦廃止のネタから出ているとの説明はあるが、とはいえ、それと「ギャスパー」やギャスパーが持っている「特殊な時間を刻む懐中時計」の存在との関連性についてはほとんど言及のないまま、ただひたすら「失われた1時間」を惜しむ老人の悲哀が語られるというのもやや空回りの感がある。「SF」というよりは「ファンタジー」寄りで、ファンタジーとしてはこれでよいのかも知れないが、SFとしてはやや物足りない気もする。ヒルトンの「失われた地平線」への言及もあるからあるいは何かのパスティーシュになっているのかも知れないが、1回目はぴんとこなかった。エリスンのことだから、あるいは再読して物凄い仕掛けを見落としていたことに気づく可能性はある。しかし、とりあえず1回目は、あまりぴんとこなかったというのが正直なところ。この作品を読む限り、エリスンのピークはやっぱり60年代後半だったかなという感じ。