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Elizabeth Moon "The Speed of Dark"

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September 04, 2004

Elizabeth Moon "The Speed of Dark"

speedofdark今年度ネビュラ賞受賞作。
「アルジャーノンに花束を」と比較する意見もある、自閉症をテーマにした未来小説である。
今50ページまで読んだが、いい感じである。主人公は自閉症の青年でパターン認識能力にすぐれ、この能力を生かして企業に雇われプロジェクトを組んでいるが、自閉症の画期的治療法が開発されたとのニュースが入り、権限者が自社の自閉症のメンバーにこの治療法を受けさせようと動き始める。自閉症仲間の意見は割れる。
他方主人公はフェンシングのクラブに通い、メンバーの女性マージョリーに恋心をいだいているが、センターの知人の女性からの情報で、マージョリーは自閉症治療プロジェクトのメンバーで、研究上の興味から近づいてきたスパイだ、と聞き、懊悩する&&。
確かにアルジャーノンとそっくりだな。
読みやすいので2,3日で読了しそうな感じだ。
silvering at 04:04 │Comments(11)TrackBack(0)読書

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この記事へのコメント

1. Posted by SILVERING   September 05, 2004 03:59
予想通り、定石通りのストーリー展開なので、非常に読みやすい。文章も平易である。今日は150ページまで行きそうだ。今120ページ。

自閉症新治療法の押しつけをめぐるストーリーと、主人公のフェンシングクラブでの恋と試合のストーリーが並行して進む。そして恋の相手であるマージョリーという女性が、どうも新治療法の開発チームと関係があるらしいという話から、二つのストーリーがどこかでつながりそうな予感がある。

話法が一人称と三人称で使い分けられているのが工夫されている点だろうか。主人公の目から見た世界と客観的な世界という二つの視点からの世界像の相違が視差を表現していて興味深い。

主人公の一人称パートは、思考回路が一見、通常人と同じようでありながら、物の置き場所の正確さにこだわったり、通常人の何気ない言葉を逐語的に正確に解釈しようとして困惑し、新治療を受ければ彼らの心理が理解できるのだろうかと悩んだりといった、この主人公特有の指向性の表れている部分が特に興味深い。実際の症例をリサーチした上での描写なのかどうかはわからないが。
2. Posted by silvering   September 05, 2004 23:44
外ではノルマ全然達成できず。165ページまでしかいかなかった。おれ終わってる。今から読むしかない。
3. Posted by silvering   September 06, 2004 01:05
さて、今から気合い入れて読みます。200いった段階で一応メモ上げる予定。
4. Posted by silvering   September 06, 2004 01:17
あ、話はなかなかいい感じで進んでますよ。
主人公の上司のアルドリンという男、最初はただの上役にへいこらした頼りない男だったんですが、150ページ過ぎ辺りから、自閉症社員を一掃して出世しようとする権力志向のいやなやつ=クレンショー(日本の企業では多分、外部から経営不振の企業に入って改革を断行し、マスメディアから英雄としてもてはやされそうなタイプ)に対する反発を募らせる心理の動きなどが結構リアルに語られて、主人公の一人称語りとの対比が結構面白い。主人公の方はといえば、やはり仔細に読むと自閉症者特有の真っ四角な思考方法が徐々に強く印象に残り始めました。この主人公、新治療法の半強制的な人体実験を前に、頭で対抗してやろうと、必死で脳の機能、構造についてインターネットなどで猛勉強を始めます。
果たして、この新治療法はどんなものなのか? 実際に主人公たちはその実験台となってしまうのか? クレンショーとアルドリンの確執や如何に? 主人公の車に傷を付けるのはやはり嫉妬したドンなのか、それとも他にいるのか? マージョリーの気持ちは本物か、それともやはりスパイなのか? などなど、興味の焦点が非常に一般小説的であるので、本作の一般小説としてのリーダビリティはかなり高いと思われます。そういう意味で確かに「アルジャーノン」と勝負できる作品かも知れない。
5. Posted by silvering   September 06, 2004 04:34
予定より進まずようやく200ページだが、今日はここまで。明日300までいき、明後日読了か。
内容は面白くなってきた。どうも主人公は天才らしい。車の悪戯はエスカレートし、遂に爆弾が仕掛けられ警察が本格的に動き出し、ドンは失踪する。人体実験も予備検査が行われ、アルドリンはクレンショーの指示に従うふりをして労務管理や経理の各部署に必要な手配をしながら、早いうちに重役連中の耳に入りクレンショーの試みが明るみになるようにと願っている。
最大の謎はやはりマージョリーの素性、真意であろう。車損壊の犯人にもどんでん返しがありそうな気がする。
6. Posted by silvering   September 06, 2004 23:06
今日は仕事を優先したので、一段落してから夕方に少し読み進めた。といっても1章(224ページまで)読んだだけだけど。

自動車いたずら犯はやはりドンだった! 健常人だが、絵に描いたようなDQN男という設定どおりの人物だった。なんと、スーパーに買い物に行った主人公をストーキングし、挙句襲い掛かるという暴挙に出て御用。
健常人DQN=ドン
自閉症の天才=主人公
という対比で、作者のやろうとしていることはかなり明白になった。
主人公の思考回路が面白い。最初は「しゃちこばったカマトト野郎だなあ」ぐらいの印象だったんだが、畳み掛けるように同じ思考回路を繰り返されているうちに、次第に洗脳されてきた。三人称部分での描写と、一人称部分での特異ながら独自の論理に基づいた思考回路の部分との対比が効果を上げていると思う。
7. Posted by silvering   September 08, 2004 05:03
読了。
「アルジャーノンに花束を」よりも、むしろグレッグ・イーガンに近い、思弁的な名作である。ハッピーエンドともバッドエンドとも立場によってとりうるラストが象徴するように、明快な答えの存在しない様々な哲学的、倫理的問題を提起した作品。最初は異質に見えた主人公の思考方法が次第に自己の一部のように感じられてくる筆力はただ者ではない。それもそのはず、作者自身が自閉症の息子を持っており、自己の体験に基づく部分も大きいようだ。
主人公が新治療を受けたあとのリハビリの部分の描写は凄いの一言。訪問してくるトムのくだりでは、ちょっとほろりとさせる。結局主人公は、自閉症の天才である昔の自我をうちに秘めたまま、新しい自分として自己実現し、宇宙への野望を実現する。新しい自分はマージョリーへの恋心を感じず、結局、恋は「自分が冷める」という形で実らずに終わるというほろ苦さもたたえて。
ハッピーエンドなのかバッドエンドなのか? これをバッドエンドだとする評もあるらしい。しかし私はハッピーエンドだと思いたい。「光がつく前にそこにある暗闇は常に光より速い」という主人公の疑問は、最後に生まれ変わった主人公が「常に照らすべき暗闇があるのは喜ばしいことだ、問いかけ解明すべき謎が尽きないということだからだ!」という知的好奇心の観点からの歓びを表明することで解決されている。その過程でもちろん失ったものもあるとしても、主人公はそれを無視しているのではない、missしているではないか。惜しみつつもより強い興味、野望、好奇心のために置き去りにせざるを得なかったのだ。それが人間というものである。どちらの人生がいい悪いと他人が優劣をつけることはできない。ルーは自らの野望のために治療を受けることを選び、そしてその夢を実現した。それを自ら拒否したチューイは、自ら今の自分で幸せだといっている。不幸なのは自ら治療を選んで失敗したベイリーだけだ、しかし彼とて、最終的に失敗の可能性を知りながら治療を選んだのだった。そういう観点からするといずれが幸福かは他人が云々する問題でもない。主人公を含む全てが自己の意志で選択をし、多くの者が自己の主観における幸福を得た/守った。それで十分なハッピーエンドだと思う。本作は自閉症を含む障害をあるがままに受け入れよという主張、それを医学的に治療することの是非に関して単純な一方的偏見に基づく立場に立っている作品ではない。ただ、「障害」の有無を問わず人は等しく人であり、その各人の主観における幸福こそが重要であるという主張だけが一貫している、その観点からすればこの結論は何ら悲しいものではないのだ。
本作には映画化の打診もあると巻末のインタビュー記事で触れられているが、映像で見てみたいと思わせるに足る作品である。日本の連ドラ化すれば、「アルジャーノン」のようなキャスティングや演出の失敗がない限り当たりそうな内容だと思う。
巻末には、本書を授業で用いる場合に備えて、たくさんの設問がもうけられており、いずれも様々な倫理的、哲学的思索を喚起するいい設問ばかりだ。読んだあとも楽しめかつ考えさせられる、深みのあるすばらしい本だった。

テーマ性 ★★★★★
奇想性  ★★★
物語性  ★★★
一般性  ★★★★★

8. Posted by silvering   September 08, 2004 05:16
暗闇の速度 エリザベス・ムーン

第1章
僕は自閉症。下らない質問ばかりされるが興味がないので答えない。答えない理由を言わないぐらいの知恵はある。フォーナム博士がジェスチュアをする。その意味が自閉症者には分からないと本に書いてあるが、僕はその本を読んでいるので知っている。博士は僕が本を読めること、言葉を知っていること、ただ自閉症だなけだということを知らず、幼児に話しかけるように話しかけ、ビッグワードを使うと「おうむ返し」はやめろといい、自分の持っているイメージ通りに振舞うよう要求する。
僕はフォーナム医師と別れ大学に戻り、ジムでトランポリンをして集中を高めた後、デスクでパターン把握の仕事にかかる。その後レストランに行く。暗闇の速度は光より速いかという話題が出る。
ジョー・リーという治療で自閉症が治った男が来て、研究が進んで治療もすぐだということを言うが、僕は彼にあんたは仲間じゃないという。僕はジョーの食事の誘いを断り、夜の会議に出る。会議ではジーン・クレンショウが自分をリーダーにしろと主張し、自閉症者の雇用環境を確保するためできないというピート・アルドリンと対立。アルドリンはセクションの生産力が特に優れていることを指摘するが、ジーンは聞く耳を持たず、株主の利益のために無駄を省こうと強弁、ついにはアルドリンの兄が自閉症であることまで指摘し、ここは知恵の輪教室じゃないんだぞと侮辱する。アルドリンの兄は自閉症のままデイケアセンターに収容されている。ジーンはヨーロッパで開発されている自閉症治療の被験者を打診されている話をする。アルドリンは、セクションAのメンバーが健常者になればパターン分析の能力が落ちるというが、ジーンは、それはいいことだ、能力を保持してジムなどの娯楽設備が不用になりコストをさげるか、それとも能力を喪失してクビになるか二つに一つだ、と宣言する。ジーンは兄ジェレミーも治るかもしれないと餌をちらつかせ、「病気」でいつづけたいものなどいない、いるとしても気違いの価値観だと突き放す。アルドリンはジーンの要求を受けいれざるを得なくなる。

第2章
僕は朝、交通事故にい合わせたが、関係者ではないので助力の義務はないと判断し、職場にきて、ジムで運動した。音楽をかけているとジーンが来てラジオでよくないかときくのでそれではだめだと答えた。ジーンは就業間際に来て僕の机のパターンを指差して何だときくので簡潔に答えてやった。それから遅刻のことを言うので一時間47分遅刻し昼食を抜いたからその差分だけ残業するというと驚いていた。僕はきっかりその時間残業した。
僕はフェンシングクラブに行く。マージョリーという女性とそこで知りあったが、カウンセラーには内緒だ。マージョリーがくるとドンが邪魔に入り、僕に試合を申し込むが僕が勝つ。マージョリーはルシアに旅行の写真を見せられているので、行くと、またドンが割りこむ。ドンがルシアと席を外したので僕はマージョリーに今日のことを話す。そこへトムが来て、もっとうまい人と手合わせしたほうがいいと言う。僕はトムと手あわせし、互角の試合をし、最後にトムの秘密の技を披露される。トムは、このパターンを自分でつかめと言う。僕がマジョリのところに戻ると、ドンを寄せ付けないようにしていたルシアが席を譲る。マジョリは今夜空港に友人をむかえに行くが一緒に来ないかと誘う。
車中、なぜドンが嫌われているかきくとつまらない冗談をいうからだという。僕のジョークを言っているらしい。空港で検問に引っかかり僕はどもりの発作が出てしまい、マジョリーに助けられる。友人の老婦人をアパートに送り、トムの家に戻り、みんなと別れて車で自宅に戻った。

第三章
戻るとラーズからのメッセージ、幼児にしか効果がないとされていた遺伝子治療が一般に効果があるらしいという内容。「フー&デルグラシアの治療法」というらしい。辞書には見つからなかった。
翌朝、このニュースで僕たちの意見は割れるが、僕はただ仕事を続ける。そして、健常人になるのがどう言うことなのかを考えつづけた。自閉症は視覚、音声パターンの認識に通常より時間のかかる場合に起こりやすいことから、特殊言語学習プログラムが用意されるが、それを狂気の一種と考える人も根強くいる。ジーンもそうなのか、と僕は考える。
家にアルドリンが電話してきて、クレンショーと交渉する代理人を見つけようかというので、僕は自分たちで探すと答えた。結局、アルドリンも僕らの職場を良くするために手を尽くしてくれたが、彼をクビにする権限を持つクレンショーには逆らえないということだろう。
翌日、アルドリンは他のメンバー全員に電話をかけていたことが分かった。
土曜に僕はセンターに行き、新治療に関する講演をきいたが、ネット情報以上のことは分からなかった。そこでは自閉症以外のあらゆる障害者が集まっており僕は全部を把握していない。そこで知人のエミーから、マジョリーは大学の自閉症治療法のメンバーでスパイだという話をきく。マジョリーは僕に実験材料としての興味しかないというのだ。僕はそんなことはないと否定するものの、帰ってからもマジョリーのことが頭を離れなかった。

第4章
トムはマジョリーとドンが連れ立ってくるのを見かける。正直彼はクラブメンバー同士の恋愛の相談には辟易していた。ドンはルー(僕)が物をきちんと同じ場所に置かなければ気が済まないことに文句を言っていた。トムはドンに私の決めたルールに従うのはいいことだといい、ドンは肩をすくめて入っていく。ルシアはマジョリーに今日はルーがくるといい、マジョリーは前回空港まで誘ったことで彼が気を悪くしていないかと心配する。ルーが来た。
トムとルーが手合わせし、ルーは善戦した。ルーはトムからフェンシングのトーナメントに出ないかといわれる。
その後、ルーはマジョリーと話し、マジョリーは大学で筋肉神経の研究をしていることなどを話す。彼らが帰った後、ルーはトムに新治療のことを相談する。ルーはトーナメントへの参加を決める。

第5章
ルーは野菜スーパーに買い物に行き、マージョリーと会う。ところが、エミーが来ると、マージョリーは人と会う用事があると帰ってしまった。エミーはマージョリーのことを大声で話すので、周囲の注意を引いてしまい、エミーが帰った後もルーは見知らぬおばさんに話しかけられる。その後に、ドンが来て、あれこれ詮索する。

第6章
僕はトムにトーナメントに出たいといい、猛特訓を受けた。
職場ではクレンショーがついに新治療を受けるように発表し、チューイとリンダが反対した。キャメロンは話しあおうというが、リンダはさっさと帰ってしまう。僕もトーナメントがあるので集会は断った。
トーナメントの日、僕はトムの車で「暗闇の速さ、暗闇が光よりも速いこと」について質問を投げ、トムは面白がって答えたが、ルシアは動揺した。
僕は第一戦を勝利し、ドンにからかわれたが、ドンは、トムからトーナメントで惨敗したことを暴露されると怒ってしまった。マジョリーは職場でドンと似た男性に苦しめられたことからドンを嫌っているらしい。

第7章
僕は次に優勝候補と対戦し善戦したが破れた。ガンサーという男だった。次の初心者同士の敗者復活戦は、1勝1敗だった。僕は初心者ランキング1位でメダルをもらった。
帰ってからメールをチェックすると、キャメロンとベイリーが話しあった結果センターのカウンセラーに相談したとのことだった。
次にクラブに行くと、ドンは怒った様子だった。マージョリーと試合をしたがマージョリーは用事があるというので早く帰った。僕は夕食に誘いたかったが思いとどまり、ルシアに相談したら、別に誘ってもいいのではないかといわれた。
木曜の朝起きると車のタイヤが全部パンクしていた。ダニー・ブライスというマンションに住む警官が通りかかり、警察を呼んでくれた。僕はボスに遅刻のメールを送り、保険請求の手続きをした後、ダニーの車で駅まで送ってもらった。

第8章
オフィスに着くとクレンショーに叱責された。
戻ってからスペアのタイヤを入れ替えようとしているとダニーが来て、自分の車のスペアをつけさせてくれた。その後ダニーの車でタイヤ屋に行き、残るスペアを購入して戻り全部着け換えた。
翌日オフィスに行くとクレンショーに捜査担当の警官は誰かときかれた。(
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