SF百科図鑑 Alastair Reynolds "Chasm City"


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

August 06, 2004

Alastair Reynolds "Chasm City"

chasmcity英国ニュースペオペ御三家の雄レナルズの英国協会賞受賞作。
とりあえず、アッシュが生殺しの状態で気持ち悪いのだが、本がくるまでは他の作品を読むほかないので、長いものを優先で読むことにする。というわけで、これ。大き目の判に小さめの活字で616ページある。とはいえアッシュ合本は1200ページで、恐らくまだ300ページしか読んでない計算になるから残り900ページもあるのに比べるとかわいいもんだが(笑)。アッシュ合本ってヘリコニア3部作よりも長いかもしれんしなあ。でもあれだけ面白ければ読む価値はあるが。
閑話休題、しばらくレナルズの宇宙SFを堪能しよう。
silvering at 05:25 │Comments(21)TrackBack(0)読書

トラックバックURL

この記事へのコメント

1. Posted by silvering   August 06, 2004 15:33
読み始めた。
エプシロン・エリダニ星系のイエローストーン星が舞台。人と機械の両方を汚染するウイルスが大流行し、生存者が隔離された都市に逃げ込んで生きてるというような設定のようだが、今んとこあんまおもんない。ガジェット類もサイバーパンク系でありがちな陳腐なものだし。上司を殺されたスナイパーが犯人を追って、仲間とヌエババルパライソという都市にやってくるのだが、見つけたと思った犯人が囮だったことが分かり、現地の男の案内で教団のアジトらしき地下迷路に入って行く&&といった感じの紋切り型のストーリーだ。こんなストーリーが616ページも続くのだとすると地獄そのものだが、どこかで面白くなるのか?

今迷路でうろうろして教団の儀式が行われている場所まで来た感じだが、犯人が囮だと分かったならとっとと別の場所に行けばいいのに何でこんな場所をうろうろしているのかがさっぱり意味不明。もしかして馬鹿な主人公をあざ笑うギャグSFなのか? 一見そうは見えないほど真面目なタッチなんだが(キャラの行動は狂ってるけど)。
2. Posted by silvering   August 07, 2004 01:04
100ページまで来た。
ハウスマンという教団が敬う伝説の人物の世代宇宙船での話と、ボスを殺した男を執拗に追うスナイパーの話が並行する。このスナイパーが死にかけてコールドスリープでイエローストーンに送られてきた(15年経っている)今も敵を見つけて追跡を開始するというのが凄い。あと、世代宇宙船の話はありがちだが、個人的にはこの手の話には弱い。今のところ手堅い作品という印象だ。
3. Posted by silvering   August 08, 2004 01:20
150ページ。読み始めるのが遅く、進みが遅いが今日中に200はいく見通し。割と読みやすいので。
内容も面白くなってきた。はっきりいって語り手の復讐の話はどうでもいいのだが、ハウスマンのウイルスが見せる夢の内容=世代宇宙船の謎は興味を引かれる。半分ほど読んだら、粗筋をアップ予定。
4. Posted by silvering   August 09, 2004 00:50
体調不良で読み始めたのが昼からで、やっと250ページ。今から残り50ページを根ながら読んで今日のノルマ。やはり1日100ページぐらいが適正値かも。その計算だと水曜に読み終わることになるが、果たして&&。
5. Posted by silvering   August 09, 2004 00:55
あ、内容はなかなかいい感じ。夢の中の世代宇宙船の話がだんだん先が読めるような感じになってきて、「ちょっと早すぎないか?」と危惧したが、現実の中の復讐の話のほうがようやくエンジンがかかってきた。というよりもはや、復讐などそっちのけで、クレーターの亀裂の縁に集まったドーム都市(=ケイズムシティ)や軌道を回る居住体などの宇宙都市の壮大な景観を楽しませる感じになってきた。特に、機械に感染するウイルスで病んだ樹木のように枝分かれして都市の空を覆うビルってのが強烈すぎ。ストーリーはあまり練れてない気がするが、こういった景観を楽しませるだけでも本作の醍醐味は十分にあると思う。さあ、あとはストーリーだよ!
6. Posted by silvering   August 09, 2004 17:45
体調が悪くやや遅れ気味、今やっと300ページ。
とりあえずほぼ前半読了したので、後でメモを上げます。
7. Posted by silvering   August 09, 2004 22:51
だめだ、絶不調、私生活でもふってわいたような災難続きで、心配事が多くて落ち着かない。まだ318頁だ。ヤバイ。今日は諦めて寝るか。読めないときは読めないからな。
8. Posted by silvering   August 09, 2004 22:55
何でこんな厚い本ばかり受賞させるんだろうな、全く&&。迷惑だよ(受賞作読もうと思わなきゃいいだけのことだが&&)。読みたくても読みきれねえじゃん。英国協会賞の今年のなんか、4部作の第4巻らしいよ。ふざけんなもう。アッシュの1200頁全体で受賞よりはましかも知れんが。まああれは面白いからいいけど。

あと祈るのは、二度とハリーポッターが受賞しませんように、だな。あんな金太郎飴本、これ以上読まされるのは地獄。
9. Posted by silvering   August 09, 2004 22:57
あ、誤解なきように。この本は良質のスペースオペラ(ピカレスク宇宙SF)で、面白いと思うよ。でもいかんせん長すぎる。正直、この半分の長さのをいっぱい読みたい。
10. Posted by silvering   August 09, 2004 23:00
こういうときは蒸発するに限るな。
どっかだれも知り合いのいない場所に2週間ほど旅行に行ってくるか、だれにも言わずに。きっと読書もはかどるだろう。あと8冊ぐらいでコンプリートなのに、諸事に追われて、ここで断念するのは惜しすぎるからな。つうかその心理状態では、きっと何をやっても駄目だろう。
11. Posted by silvering   August 10, 2004 02:34
前半あらすじ(序章~21章まで)

裂溝都市<ケイズム・シティ> アレステア・レナルズ
舞台:エプシロン・エリダニ系 の主星イエロウストーンが中心。この200年はベルエポックと呼ばれた黄金時代だった。他の太陽系に植民地を複数作った。また人間空域の限界を旅した。ところが7年前の〈融合病〉で社会は多大なダメージを受けた。何億という人々が死に、コンピュータや機械はいかれて制御不能になった。人々は都市や衛星にこもり、肉体を捨てたり、脳のインプラントを外して汚染を防止したり、薬で眠ったり、システムから脱出したりしたが、中にはケイズムシティに逃げ込む何億という難民がいた&&。2521年

私タナー・ミラベルとディータリングはライヴィッチという男を追ってヌエヴァ・バルパライソに向かう。バスケスによるとまだやつは町で資産を長期の口座に移しているところらしい。我々はコートを着てホイーラーから降りる。そして銃を装備。ダイヤモンドの小片を撃つ「時計仕掛け」銃だ。我々が橋を越え町に入るとバスケスがいた。既にライヴィッチの動きを捕捉したらしい。われわれは死んだカヒューラの話をする。私が彼の護衛をしていた。私がバスケスに「赤手」と呼びかけるとバスケスが怒り、互いにいやな話題は口にしないことにしようという。我々は酒屋に入る。兵士らでごった返しているが、DMZ軍がパトロールしている。おれ達28歳。おれは白目。バスケスの行きつけにはいる。そこでコックに酒を注文。更に奥のカジノに入る。壁にスカイ・ハウスマンの絵がある。おれがバスケスにここをハウスマン一味から手にいれたのかきくがはっきりいわない。バスケスは監視ドローンをおれたちにつけた。システムオフにしない限りおれたちは合図一つで撃たれるらしい。わかったといい、ドローンをオフにしてもらう。バスケスは右手を出し血を流してみせる。それがあだ名の由来だ。そういえばハウスマン教団の連中はスカイの右手に釘を打ち込んだらしい、聖痕として。教団はこの1世紀で多くのセクトに分かれ、自らを傷つけ十字架にかけるなどの試練を課し、死ぬものもいた。一番過激な連中がヴィルスをまいた。バスケスの右手も感染したことによるものだ。今は感染力が弱まっているらしい。そこへライヴィッチから連絡が入る、どうやらおれらを出しぬいたらしい。

バスケスはおれたちを迷宮に導く。ライヴィッチのはおとりだったらしい。おれはカヒューラの件で脚にレーザーを食らったがまた生やしてもらった。そのために闇マーケットにかかわって、カヒューラと妻はライヴィッチに殺されたのだ。おれたちは迷宮の奥深く入っていく。教団がわけの分からない儀式をやっていたりする。
(つまらんので訳してみる。おれが訳をするのは内容に興味が持てないときに言語に対する興味に切りかえることによって興味を持続するためであることが多い)

〈スカイ・エッジ〉への宇宙船の到着は、いつも結構な一大イベントだった。他の多くの植民世界と比べると、貧乏で突出したところのない時代遅れの星だったから、絶えず移り変わる恒星間貿易のスペクトルにおいて、おれたちは正確な意味で重要な役目をになう存在ではなかった。戦争の経験と、ジャングルからかき集めたわずかなくそ面白くもない生物加工品以外には、輸出するものもたいしてなかったのだ。〈変節主義者〉の世界のあらゆるエキゾチックなテクノロジー製品やらサービスやらを買いたいのはやまやまだったが、〈スカイ・エッジ〉でそれを買えるのは超のつく大金持ち連中だけだった。船が来るとたいていは、もっと景気のいい市場──〈イエローストーン・ソル〉の管轄か、〈ファンド・イエローストーン・グランド・テトン〉の管轄かを問わず──から締めだされ、流れ流れてきたのだろうとか、修理のために立ち寄れる場所ならどこでもよかったのだ、といった憶測が流れた。それは平均すると一〇標準年に一回の割合で、いつもやつらはおれたちをうまく利用した。
「ほんとうにここでハウスマンは死んだのか?」おれはディータリンにきいた。
「どこかこの近くさ」コンコースのだだっ広く音のよく響く床を渡りながら、ディータリンは言った。「正確にどこだったかは特定できないよ。当時は正確なマップがなかったんだから。だがここから半径数キロメーターの範囲内だったことは間違いない。間違いなく、ヌエヴァ・ヴァルパライソの郊外のどこかだ。最初、連中は遺体を焼こうとしたんだが、途中で防腐処置に切り替えた。他の連中に見せるサンプルとして、彼の遺体を取っておくほうが都合がいいと思ったのさ」
「でもそのころは、カルト信仰はなかったんだろ?」
「なかった。もちろん、何人かは頭のいかれたシンパもいたようだが──教会崇拝的な要素は皆無だった。それは後になってつけ加わったんだ。〈サンティアゴ〉は広く世俗化していたものの、人間の狂気から宗教をつむぎだすのは容易じゃなかった。連中は、スカイの行った業績をとりあげ、それと、自分たちが故郷から選び取ってきた記憶の数々を融合した。合うか合わないかをその都度考え、あっちを省き、こっちを除きした。すべてのディテールができあがるのに数世代を要した。だが、連中を止めるものはなかった」
「で、ブリッジが完成すると?」
「ハウスマン教の宗派の一つが、遺体を手にいれた。〈スカイ教会〉と彼らは自称した。そして──これといった理由がなければ、単なる方便だろうが──連中は、スカイがただブリッジの近くというのではなく、まさにその下で死んだことにしたのだ。そして、ブリッジもただの宇宙エレベーターじゃないんだと──仮にそうだとしてもそれは表面的な機能に過ぎない──むしろ、実は神の啓示なんだと。スカイ・ハウスマンの罪と栄光を称える、レディメイドの神殿なのだと」
「だが、ブリッジをデザインして建てたのはただの人間じゃないか」
「それ自体が神の意志だということさ。覚えていないのか? タナー、議論の余地はないだろう。もうやめよう」
おれたちは、反対側から歩いてくる数名の教徒とすれ違った。二人の男と一人の女。彼らを見たとき、突然よく見知っているような気分にとらわれたが、実際に実物を前に見たことがあるかどうかはよく思い出せない。彼らは灰色のスモックを着て、男も女もことさらに髪を伸ばしていた。
(飽きた、戻す)

おれたちはブリッジのターミナルにあたる円形の部屋に出た。エレベーターのスレッドがあり、乗客でごった返している。受付嬢にきくと1つ前のリフトで上がったようだ。おれはチケットを買い、戦犯でお尋ね者のディータリンと別れ、リフトに乗る。

リフトで上がり、怪しませないように客と会食。展望台にいるとバスケスから連絡、ディータリンが車で待ち伏せした男に射殺された。更にブリッジが原爆で襲われ、リフトが切断される。おれは宇宙服を着るよう他の客に指示し、次の衝撃波をやり過ごす。従わなかった男は死んだ。しかし、リフトは止まり、下からのリフトとの衝突は必至。おれは窓ガラスを割り跳び出した。他の客も放り出される。おれが脱出し落ちるのと同時にリフトは衝突炎上し、リフトもスレッドも消失した。

スカイの生い立ち。サンティアゴ号の上で生まれコンスタンツァという娘に連れられてイルカのタンクを見た。イルカはメロンという装置をつけ会話するように訓練されているが、大人たちは奴等は狂っていると考え放置している。スカイはスリークという名の古株のイルカを含むイルカが気に入る。また来ると誓う。しかし親父タイタスにばれコンスタと遊ぶなといわれ託児所に預けられる。クラウンというサイボーグ?に面倒を見られイルカの水槽ホログラムを見せられ、いろいろ教えられる。この船は太陽系の戦争終期に、最後に一旗上げたいともくろむキメリック人が飛ばした船で、イルカも軍事目的があったかもしれないこと、しかしイルカを訓練しても装置をつけないとコミュニケーションができず、やがてはみな発狂してしまうことなどを聞く。スカイは狭い槽に閉じ込めるからだというがクラウンは取りあわない。と、突然閃光が走りホログラムが消え、クラウンが沈黙する。やがて父らに助けだされる。船に何か起こったらしい?

という夢からおれはベッドで目覚める(ありえねえ生きてるなんて)。壁の凹みを見て恐怖を覚え、出口に向かう。辺りは人工環境の草地。ロボットがいて、女が話しかけ(シスターアメリア)、おれはウルトラ人の船でこのホスピスに冷凍で連れてこられたらしい。おれは解凍時の記憶喪失状態にあるそうだ。家に戻って休むようにいわれる。ここは〈氷の物乞いの聖なる秩序〉にある〈アイドルワイルドホスピス〉らしい。アメリアとの会話で自分がスカイズエッジにいたこと、太陽がスワンと呼ばれていたことを思い出すが、ここは知らない。ここは薬物睡眠から目覚めたが不具合のあった人をリハビリする施設でイエローストーンにある寄付で設立され成り立っているホスピスらしい。また、おれはスカイズエッジから運ばれるとき、英雄扱いされたとか。おれはリフトの客を何人か助けたらしいが、覚えていない。おれは15年かけてオーヴィートという船で運ばれてきた。おれの星は戦争中だったらしい。おれは兵士だった気がする。アメリアは鏡で自分の姿を見ろという。が、行く途中で船を見せるといわれ、森の中に入っていく。途中で事故の説明を受けながら思い出す。残り一〇分で客をジャンプさせたらしいが、残って救援を待つという手もあったはずと思う。やがて、洞窟のような部屋につき、床が透明で星が世界が見えている。そこへアレクセイが「ひとりか?」といいながらアメリアに迫る。おれはアレクセイを撃退する。だいぶ前からこういうことをしているらしい。おれがいる間は大丈夫だという。ここで目覚めたが行く当てのない連中はここで手伝ったり「秩序」の仲間入りしたりもするという。おれは記憶が戻るまではいるという。床のガラスが暗くなったときに顔を照らしてもらい見た顔は40がらみの俳優でもとおる美男子だった。

10歳のスカイ。父と一緒に初めてタクシーで船外に出て船を見る。スワンを目指す世代宇宙船で950人のコールドスリープの客と150人のスタッフ。船長はバルカツァ老、父のタイタスもその知恵で結構偉かった。船尾に反物質を積んで動力にしている。遠くに他の船、ブラジリア、パレスティン、バグダッドも見えるようだ。イスラマバード号は7年前爆発して今は4隻。スリープ中の死者も初期はいたが最近はよくなった。エンジン技術改善について話しあった後1年後にイスラマは爆発した。わが船もダメージを食らったが何とか回復した。母ルクレティアはその船外活動中に死んだ。そして父は、将来も同じことが起こる、最後は1隻かも知れん、それはこの船ではなかろうなどという。船体に7つの人型の焼け焦げがついている。そのうちの一つが母のものなのだ。父はどれがそれだか知っているというが、スカイはきけなかった。
(この章イイ! 泣ける。世代宇宙船というおれにとって手放しではまれる設定に泣かせるネタ。メインの話よりこっちのがイイ!)

おれの持ちものはかばん一つ。なぜかイエローストーンの紙幣などが入っている。貨幣価値は20年で下がっているが、ケイズム市にいくのには十分らしい。後はIDカードなど。ギッタという女性の写真。ディーテリンの写真。もう1枚知っている男の写真。おれはアメリアに護身術を授ける。アメリアからいろいろ思いだしたかときかれちょっとというが実は結構思いだしていた。我々は水星を出発した時点で一枚岩だったが到着するまでいろいろなことがあり、戦争状態になったのだ。ヌエバ・イキケという海岸におれは南部軍の領域に住んでいた。北部同盟が敵だった。大人になっておれは軍に入った。そして敵兵を短期間に全員射殺しスナイパーとしての腕を認められた。おれはその腕で前線に行かなくて済むのではと思った。教官か何かで重宝されるのではと。しかしある日接近戦を経験し獣が目覚めてしまった。おれは後方を希望しリハビリした。そして遠距離狙撃兵になった後、傭兵になり、カフーラを知った。
おれがケイズムにいくというと、アメリアは上司ダスチャの診察を受けさせた。おれの記憶喪失を薬品で調べるらしい。で、おれはハウスマンのウイルスにやられているそうだ。おれが望めば駆除するらしい。夢はそれが原因とか。しかしおれは急ぐ理由があった。同じ船にライヴィッチが乗っていたのだ。アメリアもホスピスにその名前の男がきたことを認めた。

アージェント・レイヴィッチの名を知ったのは、ギッタに銃の使い方を教えているときだった。つまりカフーラの妻にだ。

「そうです」おれはいった。「だが、ほんとに腕のいい奴は、あなたがたが何が起こったか気づく前にあなたがたをさらうぐらいわけないことですよ」
「タナー、きみぐらい腕がよければ?」
おれは〈爬虫類の館〉の中や周りに備えた防衛設備のことを考えた。「いや」おれは答えた。「やつらはおれなんかより、はるかにいい腕前が必要ですよ、カフーラ」
「そういう連中が、外にはうじゃうじゃいると?」
「あなたより腕のいい男はいつでもいますよ。問題は、連中を雇うに十分な給料を払える人間がいるかどうかです」
カフーラは空の両生類水槽のひとつに手をかけた。「なら、女房はもっと練習が必要だな。自己防衛の機会は、何もないよりはましだ」
それに一理あることはおれも認めざるを得なかった。「おれが教えましょう&&どうしてもとおっしゃるなら」
「なぜ、気が進まんのかね?」
「銃は危険なものだからです」
空の水槽に備え付けられたチューブから漏れる気味の悪い黄色い光を浴びながら、カフーラは笑った。
「それはそうだな」
おれたちはすぐに練習を始めた。ギッタは非常にやる気のある生徒だったが、アメリアのように飲みこみが早くはなかった。それは彼女の知的能力とは関係がない。基礎的な運動神経が欠けているだけだ。

おれはギッタに銃を教えた。ある日途中でカフーラが割りこんで話があるという。アフーラは夜人と会うので同行してほしいというのだ。おれはアフーラに連れられて、ジャングルの空き地でウルトラ人の船に乗る。そして、コールドスリープで客を運ぶオーヴィート号につれていかれる(なお、アフーラの家はもと動物園だったが今は狩った獲物の標本が集められている)。船長オーカグナと会う。カフーラは船長から武器を買い、闇マーケットで売り、治安悪化に荷担しているらしい。その冷血さゆえ、爬虫類に共感を覚え、「爬虫類の館」に住んでいるという。実はカフーラは前回の取引相手として合法的政党に武器を売ったが、相手が帰途に別の党派に襲われ武器を奪われた事件が一月前あった。この被害者がライヴィッチでカフーラに逆恨みして復讐を誓ったらしい。だがカフーラは取引相手の前で強がり、助力を断った。その結果、おれたちは館で護衛に失敗し、カフーラ夫妻を死なせたのだ。おれの失敗だった。おれはギッタに惚れかけていたこともあり、ライヴィッチへの復讐を誓った。
ライヴィッチは自らケイズム市に移ったらしい。おれは友人ということにして後を追うことになったが、助力は断った。アメリアも移民の子でここで処置を受け、働くようになったらしいが、ここが故郷なので出る気はしないという。おれはアメリアにダイヤモンド銃を渡して、ケイズム市に発つ。

おれは空港に行き、出発する。途中のリフト内で、二人組に痛めつけられる。血を吐きながらおれはストレルニコフ号でケイズムに行く。
10
スカイ、船の背骨の列車で睡眠客を起こしに行く。船には第6の幽霊船カリューシェが後を追っているとか、船内にも多数の未踏の血があり、伝説がある。スカイは、エンジンに詳しいごメスと、凝り性でコンピュータの神経組織に凝ってるノーキンコのトリオで行動している。ノーキンコは太古の地球の幽霊船の伝説を語る。

「ものは言いようだな。だが、何もかもに飽きたとある世代のクルーが、張りのない生活を謎のヴェールで微に入り細に入り、飾り立てたものだとみることもできる。何とでもいえるのさ」列車がカーブして別のトンネルに入ると、スカイは話しやめた。列車は導入レールの上でがたごと音を立て、その震動がより直に肌に感じられる分、重力が増したように思えた。
「ああ、君の問題点は分かっている」薄く笑いながら、ノーキンコはいった。「君んとこの御大だろ。親父さんがああいう人だと、こんな話、信じる気にならないだろう。親父さんみたいな偉い人が、こんな重要な事実を知らないなんて、考えたくはないよなあ」
「知っているだろうよ、君ですら思いついたんなら」
「では、その船が実在すると認めるんだな」
「いや、実をいうと&&」
だが、ゴメツがさえぎった。この話題に明らかに夢中になっていた。「実際のところ、六番目の船が存在したと信じるのがそれほど難しいこととは思えない。船を五隻飛ばすのも六隻飛ばすのも手間は大して変わらないだろう? その後──つまり、船が就航速度に達した後に──何らかの悲劇が起こったのだ&&悲劇的な事件が。人為か事故かはともかく、それが六番目の船を根本的な死に追いやった。惰性で運行を続けているが、クルーは全員死亡し、無人の状態で。多分、冬眠体(モモワ)もな。むろん、反物質の残りを確保するに足る余剰動力はあったのだろう、だがそれは大したことはない」
「何ともはや」スカイはいった。「で、われわれはそれを忘れてしまったと?」
「もし他の船が第六の船の破壊に一役買ったなら、フロティラ船団のデータを操作して、犯罪の事実や、被害船の存在自体を抹消するのは難しくなかっただろう。その世代のクルーが口裏を合わせて、子供たち、つまりうちらの親の世代にその事実を伝えなかったとしても不思議はない」
ゴメツは熱心にうなずいた。「だから、今我々に伝わっているのは、いくつかの噂だけなのさ。神話と混合して半ば忘れ去られた真実」
「まさしく、おれたちはそれを手にいれたんだ」ノーキンコがいった。
スカイは、これ以上議論しても始まらんとばかりに、頭を振った。

で、冬眠槽の場所まで行くと、いつもは忙しく働いているクルーの動きが見えない。スカイは怪訝に思った。しかもそこにいるのは技術員ではなく、父だったのだ。父はスカイに「作業の間は関係ない奴には出てもらう。荷物降ろしを手伝ったらすぐ出ていけ」という。冬眠体の一つが生き返ったらしいのだ。父は祖父のアドバイスを思いだし、この地域を立入り禁止にするらしい。やがて反対から列車がきて兵が降りてきて、父の指示を受ける。コンスタンツァもいる。二人とも真相を教えたがらない。初めから各船に破壊工作の種が仕込まれていてそれが発動した可能性がある、イスラマバードのように、というのがコンスタの解釈。そのとき、下のほうから銃声。スカイはコンスタから銃を取り上げ、ヘルメットを無理やり借りて父のほうへ行き、コンスタもついてくる。開いている冬眠室の一つに入ると、父と警備員がいる。スカイはコンスタから銃を奪ったのは自分でコンスタは悪くないと断って近づく。床で胸から血を流して父が倒れている。冬眠槽の一つが壊れ、傷口から機械ののぞいた「乗客」が倒れている。これがコンスタのいった、水星出発前から仕込まれていた破壊工作の種だろうか。やがて、救援隊が来ると、突然「乗客」が刃物を持って襲い始める。銃撃が始まり、「乗客」はスカイに気づくと向かってきて、胸にナイフを刺し、スカイは倒れる。コンスタの叫びで、スカイは銃を打ち、外れたのだがなぜか「乗客」は倒れる。遅れてクルーが到着し、負傷者を運ぶ。スカイは「乗客」も手当てするようにという&&。
11
おれはスカイの生々しい夢から目覚め、ウイルスを除いてもらえばよかったかもとちょっと思った。だが敵に逃げられてはまずい。おれはゼロG酔いで気分が悪かったが腹が減ったので食事に行くことにした。
そして夢について考えた。スカイズエッジの誰もが否が応でも知っているスカイの話。他の船の爆破事故で船が停電したとき、母のルクレチアが死んだこと。睡眠槽に紛れ込んだ破壊工作員がタイタスに重症を負わせ、数ヵ月後とうとう殺害したこと。だが何かおかしい。幽霊船の話など初耳なのだ。これは事実なのか、それともカルト教徒が退屈しのぎに紛れ込ませたフィクションの記憶なのだろうか? 確認する方法はないが、今後もこの夢とつきあわねばならない。どう話が展開するかに興味があった。
〈輝きの帯〉、誰でも知っている場所だ。無限の自由と富と幸運を象徴する場所。ケイズム市の全てといっても過言でない。イエローストーンを軌道状に回る一万もの居住体の帯。政治、経済、文化の繁栄の中心である。だがライヴィッチは長居することなく、地表のケイズム市に身を隠したに違いない。どのみち、おれもすぐに後を追うつもりだが。
食堂で他の乗客を見ていると、突然変な太った男に話しかけられた。おれは給仕ロボットに船酔い止めの注射を注文して打つ。例の男はそれを見て「やけに慣れてますな、あんたはプロ!」などと話しかけてくる。おれは遠まわしに、話したくないんだと伝えるがいっこうに通じない。男がヴァディムと名乗るのでおれも本名をいい、悪いが話したくないというと、男は商談があるという。そして、この星には危険があるから警備契約を結ぼうという。おれは追い払い、ヴァディムはいったん去った後また姿を現した。他の男をぶちのめしているところだった。おれはヴァディムをぼこぼこにし、更に何か盗んだだろうと問い詰めるが、否定するので、むかついて肋骨が折れるまで殴りつづけ、半殺しにしてやった。ざまあ見ろ。そこへクイレンバッハという客がやりすぎだと止めに入った。そしてその客から、輝きの帯は既に存在せず、おれたちは別のところに向かっていると知らされた。
12
クイレンによると疫病の流行でこの星は廃れたらしい。おれはヴォディムの部屋近くに盗品を探しに行く。 そこで品々を没収し、おれは現地時計と現金を失敬した。この地の疫病とは機械を停止させるものだったらしい。困ったのは人間の脳にまでチップが埋められていたためだ。クレインバッハはグランドティトンからきたらしい。作曲家で、ケイズムの疫病をテーマにしたいらしい。おれは引き出しから変な液体薬と注射器を発見する。クレインは非合法な「夢の燃料」でないかという。新婚夫婦が使うらしいが、疫病以後廃れたそうだ。端末で調べると〈融解病〉という名称が分かった。〈天蓋〉〈多重〉〈遊戯〉といった名称の詳細は分からなかった。おれはヘッドセットをかぶり、自分のかばんに入っていた経験チップ(エクスペリメンタル)を差し込む。1つ目、戦場の映像。他はカーレースゲーム、ハウスマンのドラマ、恋愛ドラマ、狩猟ドラマだった。おれはがっかりした。ヴォディムから没収したチップを差してみるとヴォディムの部屋で何も映っておらず、強烈な閉所恐怖を起こすものだった。
回答がきて〈錆びた帯〉の衰退の原因となった疫病の詳細をおれは読んだ。そのうち船は帯についた。帯はシルベスタ一族の尽力で栄え、病気で衰退。人は死に、居住体は次々衝突事故、古いもの200のみ残った。6年前。おれらはハビタットの一つについた。〈ニューバンクーバーの回転木馬〉。おれはすぐにケイズムに降りるつもりだ。金も少ない。
このハビタットは月の〈マルコ目〉から拾った氷で気温を下げている。おれはクイレンに身の上を話す(やばくねえか?)。アメリアらが客の脳のチップを外すことも。クレインがおれと同行したがるので何とか逃れようとしていると突然おれはヴォディムと仲間に襲われた。ヴォディムはおれから時計を取り返すが、おれは経験チップでヴォディムの残った目をつぶし、時計を取り返す。
(この主人公に感情移入する奴はキチガイだろう。とんでもねえ悪ジャン)
13
もしニューヴァンクーバーの配管のはりめぐらされた隙間に何らかの統治機構があったとしても、巧妙に視界から隠れていた。ヴァディムと仲間は怪しまれることもなく、その場からよろめき去った。おれは経緯を説明しなければならないというほとんど自尊心から、その場に残っていた──だが、何も起こらなかった。数分前までおれとクイレンバッハがコーヒーを飲んでいたテーブルはとんでもない有様だったが、おれは何をすればよかったろう? 確実に短い周期でやってくる給仕ロボットにチップを置いていけばいいのか? そうすれば、やつらはおつむがトロいから、コーヒーの染みを落とすのと同じぐらい考えなしに如才なく、血と粘液とガラスのかけらの海を掃除してしまうだろうが。
おれが立ち去っても、誰も止めなかった。
おれは洗面所に入り、冷水で顔をたたき、拳の血のりを洗い落とした。ゆっくり、そして音を立てないよう注意しながら中に入る。部屋は無人、個室洗面所の長い列が連なっている。一つ一つのドアに複雑なダイアグラムの表示がされ、各室の使用目的が示されている。
おれは胸を押したりたたいたりして、青あざ以上の怪我はないことを確認すると、出発エリアまで歩いていった。〈巨獣ベヘモス〉──イトマキエイのような形をした宇宙船──が、ハビタットの表面の回転層にヤツメウナギのごとくへばりついていた。近くまで上がって見ると、それは遠くから見るほど滑らかでもなければ、航空力学的でもなかった。船体は凹みやすり傷だらけで、黒くすすけて色落ちした縞模様がついていた。
二列の人の流れが、反対側から船の中に流れ込んでいた。おれのいる流れは、足取りも重く、さながら意気消沈した焦げ茶色の懸濁液だった。人々は螺旋状の搭乗トンネルを、死刑台に向かうごとくとぼとぼ歩いている。もう一つの流れはちょっとだけ元気があるようにも見えたが、透明の接続チューブ越しに見てみると、人々は給仕ロボットや奇妙に機能強化されたペットを伴っており、自らもまた動物の一形態であるかのように見えた。その間を密閉者の籠が漂っていた。メトロノームのごとく、暗くまっすぐに立てられた箱。
後方が騒がしかった。誰かが割りこみをしているようだ。
「タナー!」その男がしゃがれ声で言った。「君もきたのかね! 君がいなくなったとき、ヴァディムの残党に見つかったんじゃないかと心配したよ!」
「そいつは割りこんできたんだ」誰かが後ろでぶつぶつ言うのが聞こえた。「見ただろ? あまりとやかく言うつもりはないが&&」
おれは振り返り、多分しゃべったのはこいつだろうと本能的に見当をつけて、そいつに言った。「彼はおれの連れだ。文句があるなら、おれにも言ってくれ。それがいやなら、黙って並んでな」
クイレンバッハは、おれの横の列に滑りこんできた。「すまない&&」
「いや、いい。もうちょっと声を落としてくれ。それとヴァディムの話は、もうやめてくれ」
「すると君は、この辺りじゅうにやつの仲間がいると思うのかね?」
「わからない。だが、当分の間、これ以上のトラブルはごめんだ」
「わかるよ、あんなことがあった後では&&」クレインバッハは青ざめた。「あそこで起こったことは、もう思いだしたくもない」
「なら、考えるな。運がよければ二度と考えなくてすむさ」
列は進み、螺旋の最後の角を曲がると、ベヘモスのてっぺんに着いた。

おれらはベヘモスに乗り、出発した。そしてイエローストーンに近づく。ここはタイタンに似たメタンやアンモニアの大気で、地表は冷たく原生動物しかいない。首都ケイズム市以外はその10分の1以下の町がぽつぽつとあるだけだ。クレインは、ケイズムにはまだ不死に憧れる金持ちがいて、音楽の需要はあるから帰りの運賃は稼げるという。町はクレーターの底の割れ目の周辺にあるいくつかのドームの集合体である。〈融合病〉では自己修築能力のある建物類が狂って無計画な自己改築を行ったため、多くの人が巻きこまれて死んだ。ベヘモスは上空200メートルで客をカプセルで湖に落とす。カプセルは拾い集められ回収ゲートに運ばれ、客は降ろされる。おれたちは、移動用の〈ケイズム市の風〉に運ばれる。それは四方にシリンダーが対称的に出た奇妙な蒸気機関車だった。おれたちは時速100キロでトンネルを通ってドームに向かい、着く。その周りは行商人のテントがひしめき、さっそくチップ除去の少年が声をかけてくる。おれはクイレンをなだめて手術を受けさせ、自分は没収した経験チップを売ってくるといいテントを出る。クイレンは自分の経験チップも売ってくれと渡す。
14
おれは業者に経験チップを売り(兵士の奴と、没収したキショい裏ものは高価で売れたが、他のは安かった)、人力車に乗ろうかと考えたがとりあえずテントに戻り、客引きの少年に金を払い、クレインが手術中なのを確認すると、少年にチップを払い人力車の手配をさせる。少年は友人の少年を紹介し、おれは人力車(能力強化された猿が引く)を借り、〈天蓋〉に行きたいというと、見せるのはできるが中には入れられないといわれ、連れていかれる。何でも、巨大なビルが疫病で自己改築を始めたが、高い部分から改築を始める習性があるため、病が1階に達する時点で下にはそれなりの措置が施されていた。しかし、病は人々の予想を超えていたというのだ&&今からそれを見せるという。おれはそれを見て、理由を納得した。
15
おれらはクレーターの底を走った。最底辺のことを〈マルチ(多重)〉というらしい。〈天蓋〉と呼ばれるビルを見て、おれはびびった。ビルの上方がめちゃくちゃな方向に枝を伸ばし互いに蜘蛛の巣のように融合しあっているのだ。船の上から見てあれは何だろうと思ったのは、これだったのだ。こういうビルが町じゅうに広がっており、ビルの上のほうには真の金持ちだけがウイルスから安全な居住空間を作って、真の金持ちだけのコミュニティを形成しているらしい。おれはどうやったら上に行けるかときくが、上の連中とコネがあってめちゃくちゃな金持ちでないと無理らしい。上下の移動手段はケーブルカー。連中は時々夜に〈狩り〉に降りてくることもあるらしかった。おれらはケーブルカーを見つけ、おれは〈夢の燃料〉で近づき上につれていけという。やつらは後で別のケーブルカーをよこすといい上がって行った。この乗りものは腕を長く伸ばしてビルの枝をつかみ、車を上下させる仕組みだ。おれはマルチの人力車と別れ雨の中を待つ。暗くなってビルに電気がつき、提灯をつけた木の枝という感じで気味悪くも美しくもあった。やがてケーブルカーが降りてきて、おれは撃たれて失神する。

スカイの夢。父は瀕死の状態で寝ていた。父は打ち明けた。戦争末期に延命技術が発明され、乗客のほぼ全員が措置を受けたこと。スカイ自身もそうであること。つまり、母が流産したとき父が代わりにスカイを冬眠から蘇らせたこと。破壊工作員サイボーグもはじめから何らかの目的で乗せられていたこと。やがて父の容態は悪化。スカイはサイボーグの病室に行く。眠っているように見えるが身体の状態を偽る機能があるから安心できない。スカイはナイフを持って近づく&&。

16
おれはカノピーの上に引っかかった宇宙船の中のベッドで目覚めた。迎えた男女(ウェイバリーとシビリン)がおれに謝った。スタンガンで撃ったらしい。やはり慎重にならざるを得なかったという。この宇宙船はここに落ちてすぐ、感染したビルに絡まれ動けなくなったようだ。おれはディナーに招待され、ケーブルカーで景色を見ながらドームの縁まで連れていかれる。男女は薬を撃つ。おれたちはロボットとフィスチェッティという運転手に連れられ、堀道を通ってドーム型レストランに入る。ここは裂け目の縁に茎状に設置されている。おれらはテーブルに案内され高価な料理のもてなしを受ける。割れ目でグライダーで飛ぶ人々もいる。やがてヴェロノフというリーダー格のカリスマ男が男女二人と立ちあがり、外に出てバンジージャンプを始める。一人目の女は壁にぶつかって死に、三人目の男は下まで降りすぎて焼け死んだが、ヴェロノフは見事に生還した。おれは男の死体を見て吐いた。帰り道、おれは銃で脅されて宇宙船に戻され、イスに固定される。ライヴィッチの手先ときいても反応はない。おれの記憶を手に入れたいと言って、ウェイバリーはおれの頭に器具を使う&&。

17
スカイの夢。隔離された病室で頭にコードをつながれ、宗教的体験をすりこまれているサイボーグ。スカイはこのサイボーグの頭に神をインストールしようとしている。スカイはサイボーグに、お前は父を殺そうとしたといい、サイボーグは、違う、誰かがあそこにナイフを置いたと反論し、父に騙されたことをうらむスカイ自身でないかなどと言う。が、宗教体験が脳に入り始めると話せないと言う。後ろでイルカのスリークが見ている。おれがサイボーグに、生かしておいたのは慈悲だが、もう一つ理由があるなどと語りかけていると、バルカツァ船長から非常召集がかかる。パレスティン号まで護衛しろと言うのだ。スカイはスリークにつないだ機械を調整し部屋を出る。船長は既に老境で健康を害し、タイタスの助言で地位を保持していたが、その権勢にもさすがに陰りが見える。医療要員二人が同行を申し出るが、スカイは、二人乗り以外は時間がかかると嘘をつき、二人用シャトルで船長と出発する。船長によると、パレスティン号に地球から方らしいエンジン推進法の設計図が届いたため秘密会議をするらしい。かつてはそれが仲間の船の実験失敗による爆発をもたらしたのだが&&。車中の会話で、スカイは、第6の船が実在するらしいことを聞かされる。しかし、噂以上のことは分かっていないらしい。
18
おれはマルチに降ろされ、ケーブルカーでウェイヴァリーと目覚める。耳の後ろに何か埋め込まれたようだ。何かときくと、それは狩りである、ゲームである、と言う。公式には存在しない連中がそれを行っているらしい。

「誰なんだ?」おれは何か言わねばと思い、言った。
「死後人、不死人、何とでも呼びたまえ。全員がプレイするわけじゃないし、プレイしたがるわけですらない。だが、誰もがプレイしたことのある人を知っているか、もともと〈ゲーム(遊戯)〉を可能にしたネットワークに何らかのコネがある」
「長い間続いているのか?」
「ここ七年ぐらいだな。崩壊の後、イエローストーンに蔓延した高尚気取りに嫌気のさした人間が、野性による反撃手段として考案したものだろう」
「野性?」
「ああ、この上なく野性的だよ。だからこそ、われわれは憧れるのだ。〈ゲーム〉には、方法論的に見ても心理学的に見ても、細かくて小賢しい細工など微塵もない。都市のいかなる場所においても、短期間の告知によって速やかに組織される必要があるのだ。もちろん、ルールはある、だがそれを理解するために、テクニックの講釈師に頼るまでもない」
「なら、ルールを教えてくれないか、ウェイヴァリー」
「ああ、君に関する限りは何も必要ないよ、ミラベル。君はただ走ればいい」
「それから?」
「死ぬのだ。うまく死ぬことだ」甥っ子に甘い伯父さんのようにやさしい口調で、ウェイヴァリーは言った。「君に望むのはそれだけだ」
「なぜそんなことを?」
「他人の命を奪うことは、特殊なスリルがあるからだよ、ミラベル。不死でありながらもそうすることで、全く違った次元の荘厳の高みに昇ることができるのだ」考えを整理するかのように言葉を止める。「われわれは、死の本質を理解していない。この困難な時代にあってもな。だが命を奪えば──特に、不死でない人間、それゆえに既に死というものを強く意識している人間の命を奪えば──われわれは、死の意味するものを擬似体験できるではないかね」
「ということは、あんたがたが狩る人間は、不死ではないんだな?」
「一般的に、違うといえる。われわれはたいてい、〈マルチ〉から標的を選ぶ。申し分なく健康な人間をね。無論、彼らにはわれわれの財産にちゃんと食らいついてもらいたい。だからまず最初に、うまいものを食わせずにはいられないのさ」
ウェイヴァリーは語りつづけた。〈ゲーム〉は、契約者の極秘ネットワークによって資金を与えられていること。大半は〈カノピー〉住人だが、〈錆びたベルト〉にまだ住んでいるよりリベラルな回転居住体の住人、あるいはロレアンヴィルのようなイエローストーンの他の入植地の住人にも好事家がいて、契約者は増えているらしいこと。とはいえ、どの契約者も他の契約者を片手の指ほどしか知らず、一人一人の氏素性は、偽装情報によってシステム上巧妙にカモフラージュされているから、未だに退廃的市民性の仮面をかぶった〈カノピー〉生活の表舞台で、暴露されることはないこと。狩りは、短期間の告知により、アトランダムで選ばれた少数の契約者によって組織され、〈カノピー〉の使われていない場所で打ち合わせが行われること。その同じ夜──もしくは一日前に──〈マルチ〉から獲物が選ばれ、準備されること。

で、例のプローブは、狩りの過程を契約者に実況中継し、資金を集めるために最近始めたものだとか。おれが部外者であることから、ハンターよりも先にスタートできるというアドバンテージを与えるらしい。おれは、ウェイヴァリーに「戻ってきたらお前を殺してやる」というが、「みんなそういったさ」と平然としている。ケーブルカーは地面につき、おれは外に出された。おれは水の中に入りとあるビルに逃げ込んだ。やつらは追ってきた。また、豚人間がクロスボウを持って上がってきたので、おれは先頭の奴をけりクロウボウを奪って撃ち、転がした後上に逃げた。しかし光線銃らしきものを脚に食らい、おれは動けなくなる。すると上から女の声がして照らされる。観念したところ、女は予期に反しおれを助け去る。女はケーブルカーでおれを運ぶ。ディナー時におれのことをきき、調べたらしい。女は破壊活動員で、〈ゲーム〉には嫌気がさしていて助けたとか。おれは途中で意識を失いスカイの夢を見ていた。スカイのシャトルが目的の船に着いた。

19
おれはゼブラという女のアジトに連れていかれる。カノピーの見晴らしのよい場所だ。女は姉が当地に不用意な詮索をして命を亡くしたらしい。おれは今度はカフーラの夢を見る。ハマドリアドという巨大な蛇を捕り、手なづけて、罠を張り、ライヴィッチに対抗しようというのだ。おれたちは罠をしかけ、テントをはって待機する。おれはジッタに、カフーラの悪行を指摘するが、ジッタは、カフーラは以前よりまともになった、だから一緒にいるのだという。今ですらまともに感じられるようなどんな悪いことをしていたというのだろう?

20
おれらはハマドリアドの研究を続ける。ハマドリアドが絡みついて融合する「ハマドリアドの木」の組織をスキャンしたところ動物組織と植物組織が両方あることが分かる。大人になる寸前のハマドリアドが木に絡みついて日光をさえぎって枯らした上で一体化し植物化する。その胎内で子供のハマドリアドが母を食い、脳を食って地中から生まれてくるというサイクルである。すると同行していたヴィクナ博士が突然銃をおれの同僚のロドリゲスに向けた。ロドリゲスが武器に手を伸ばしたというのだ。博士はロドリゲスが偽者だというメッセージを館から受けたらしい。おれがロドリゲスに手を出せと命じると、ロドリゲスは銃を出した。博士は発砲しロドリゲスの肩にあたったが、ロドリゲスは反撃して発砲し博士は倒れた。ロドリゲスは離れたところでライフルを構えようとしているカフーラにねらいを定めたが、おれはサイス(鎌)を振り間一髪でロドリゲスの偽者を殺した。カフーラは、ロドリゲスをスクーリングしたおれの責任だと詰る。おれは館に通信を試みる。

だが、今度はリンクはつながった。
「タナー? 大丈夫か?」
「まあ何とか」損失に関しては後で詳しく報告するつもりだった。目下のところは、ヴィクナ博士が何を聞いたのかを知る必要があった。「ロドリゲスに関して、われわれに伝えられた警告の内容を知りたいんだが」
おれと話している男はサウジーと呼ばれていた。何年も前から知っている男だ。だが、今ほど落ちつきのない彼を見たことがなかった。「タナー、神にも祈りたい気分だよ&&われわれ自身が警告を受け取ったんだ。カフーラの仲間の一人から。ロドリゲスに関する密告だ」
「続けてくれ」
「ロドリゲスは死んだ! ヌエヴァ・サンティアゴで死体が見つかった。殺されて遺棄された」
「間違いなくロドリゲスなのか?」
「われわれはロドリゲスのDNAパターンを記録している。サンティアゴの提携先が遺体を調べたんだ──細部までぴったり一致した」
「それじゃ、サンティアゴから帰ってきたロドリゲスは別人だったということになるな。そういいたいんだろ?」
「そうだ。クローンではないと思うが、暗殺者だ。外科措置を受けて、ロドリゲスそっくりにしたんだろう。声紋や体臭まで変えたに違いない」
おれはしばらく考えてから答えた。「スカイズエッジには、そんな技術を持った医者はいない。しかも、ロドリゲスが爬虫類館を離れた、たった数日の間でな」
「ああ、おれもそう思う。だが、ウルトラ人ならできる」
それはおれも知っていた。オーカグナから実際に、卓越した科学技術を見せつけられた今となっては。「もしやつらなら、ただ化粧直ししただけではないだろう」おれは言った。
「どういう意味だ?」
「ロドリゲス──の偽者は──まだ、本人らしく振舞っていた。つまり、ロドリゲス本人しか知りえないはずのことを知っていたんだ。おれは知ってる──この二、三日の間に、彼と何度も話したんだから」おれはロドリゲスとの会話の内容を思いだしてみたが、ロドリゲスはときどき言葉を濁したりすることはあったものの、おれがはっきり疑いを持つに足るだけの明らかに致命的な発言は見当たらなかった。むしろ彼は、自ら多くの話題を持ちだして、本気で議論していたのだ。
「なら、記憶も利用したってことだな」
「ロドリゲスがトロールされたっていうのか?」
サウジーはうなずいた。「熟練したエキスパートがやったに違いない。トロールされたのが死の原因だという痕跡はなかったからな。だが忘れるな、やつらはウルトラ人なんだ」
「で、やつらは記憶を暗殺者に埋め込む技術があると思うのか?」
「聞いたことがあるよ」サウジーはいった。「多数の小さな機械が被験者の精神の中に入り込み、新しい神経接続を形成する。〈直観刷り込み〉というそうだ。NCも訓練目的で試みたことがあるが、とうとう一度も成功しなかった。だが、ウルトラ人がからんでいるとなるとな&&」
「なら、子供のお遊び程度だっただろうな。あの男はロドリゲスの記憶に通じているだけでなく──更に深くまで入りこんでいた。その過程で、ロドリゲス本人になったといってもいい」
「だから、彼は自身満々だったのだろう。そういう新しい記憶構造は意外にもろい──遅かれ早かれ、暗殺者本人のパーソナリティが表面に表れる。だが、そのときまでにはロドリゲスは、君の信用を得ている」
サウジーは正しい。ロドリゲスが以前よりも言葉を濁すことが多くなったのは、ここ数日かそこらのことなのだ。あれこそ、暗殺者の埋もれた精神が、カモフラージュされた記憶のヴェールの中から姿をかいま見せた時だったのだろうか?

おれは、顛末を報告する。敵は依然、近づいているらしい。カフーラはほかにもいないかと疑うが、他に爬虫類館を離れたものはいないから考えられない、とおれはいう。またロドリゲスと敵本人は体格が違いすぎる。おれらは探検行を続ける。前方に成熟前のハマドリアドが顔を出している。

「大きさはどれぐらいだ?」おれはきいた。
「三〇から三五メートル。今まで見た中でいちばん大きいわけじゃないな──七一年に見た蛇は、六〇メートルはあったよ──だが、こいつは子供じゃない。もし、てっぺんまで届く程度の高さで、自分より長すぎもしない木があれば、融合を始めるだろう」
その頭は道の反対側にまで達していた。ゆっくりと動きながら、おれたちに向かって這ってきた。
「もっと近くに行こう」カフーラがいった。
「待ってください」おれはいった。「本気ですか? ここのほうが安全です。すぐに通りすぎますよ。やつらはそれほど強固な防衛本能は持っていませんが、われわれを見れば食べ物だと判断するかもしれません。そんな危険を冒すつもりですか?」
「近くに行くんだ」

カフーラが麻酔銃で蛇に近づきおれがライフルで後を追うと間に15メートルの蛇が現れ、おれはライフルで頭を撃ち、カフーラが大蛇用の麻酔銃を撃って殺した。すると、苦痛の叫びを聞きつけた大蛇が気づいて近づいてきた。後ろからディータリンがバズーカでやってきた。カフートの武器と交換し、カフートはバズーカを空になるまで撃ち、蛇を殺し、生けどりには失敗する。カフーラは相当がっかりしているようだ。夜、おれらはテントを張る。おれはカフーラとチェスをする。次にカフーラは射撃練習をする。

「片輪にする? やつをさっぱり殺すつもりだとばかり思っていましたが」