SF百科図鑑 Susanna Clarke "Johnathan Strange & Mr. Norrell"


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September 17, 2005

Susanna Clarke "Johnathan Strange & Mr. Norrell"

今年のヒューゴー長編賞受賞作
19世紀初頭の英国を中心とするヨーロッパを舞台に、二人の魔法使いの戦いを描く改変歴史ファンタジー巨編。大判のペーパーバックで846ページの大作である。タイム誌が年間ナンバー1に選んだベストセラー小説。
かつてのイギリスは、ジョン・アスクグラスという妖精の国生まれの魔法使いが妖精たちを統べた魔法の王国であったが、この王が冥界に去って久しく、19世紀初頭の現在、魔法に関する書物は多量に残り、それを研究する理論魔法学者の組織は存在するものの、魔法を実践する魔法使いはほとんど残っていなかった。その数少ない魔法使いであるノレル氏は、ヨーク魔法使い協会などと接触して紆余曲折の末、様々な魔法で功績を上げ、政府が認める唯一の魔法使いとなった。そのただ一人の弟子が、ジョナサン・ストレンジという青年だった。ストレンジは、ナポレオン戦争でスペインに赴き、功績を上げた。しかし、魔法を自分たちが独占的に行使すべきだとするノレル氏と、魔法を一般市民にも使えるようにすべきであると考えるストレンジは、次第に対立し始める。ストレンジは魔法啓蒙の本を出版するが、この本はノレル氏の魔法によってすべて消されてしまう。折りしも、ある邪悪な紳士がイギリスに現れ、レイディ・ノールと執事のスティーブン・ブラックに呪いをかける。レディ・ノールは気が違ったと判断され、指を失った挙句、精神病院に入れられる。ブラックは、この邪悪な紳士に付きまとわれ、自分のいうことをきけば英国の王になれるとそそのかされ子分にされてしまう。更に、ストレンジ夫人も呪いをかけられ、死亡してしまう。ストレンジは、妻を見かけたという目撃情報をきき、妖精の国、闇の国にとらわれている妻を見つけ出そうと考える。それには、ジョン・アスクグラスを呼び出すことが必要だと考える。かれはベニスに移動し、闇の国への入り口を見出す。ストレンジが留守の間に、ノエル氏はストレンジの魔法啓蒙運動阻止のため、妻を殺したのはストレンジであるなどとストレンジの誹謗中傷を流布し、英国でのストレンジの評判は凋落。さらに、ストレンジ捕縛のため弟子をベニスに差し向ける。この弟子は、ストレンジに逆に説得され、レディ・ノールの奪われた指を預かり、3つのメッセージを持って英国に戻る。ひとつはレディ・ノールの指の件、ひとつは英国民に向けて誰でも魔法が使えるというメッセージ、もうひとつはノエル氏のもとに戻るというメッセージだった。かれは、ノレル氏が差し向けた男によって殺害されるが、3つのメッセージはその男によって伝わり、英国内では魔法を使う素人市民が増え、レディー・ノールはストレンジの弟子の魔法と戻った指によって正気に戻った。自分の過ちを悟ったノエル氏の下へストレンジは戻り、妻を生き返らせるためにはジョン・アスクグラスを呼び出す必要があるので協力を要請。呼び出されたジョン・アスクグラスはスティーブン・ブラックに宿り、邪悪な紳士(実は邪悪な妖精)を倒し、ストレンジ夫人を解放する。英国では魔法が一般に普及し、それをいかに管理運営するかの試行錯誤が始まる。ストレンジとノレルは、その後行方が知れなかったが、最後に、ストレンジは一度だけ夫人に会いにくる。かれによれば、この世界はたくさんある似たような世界のひとつに過ぎず、彼とノレルは、それらの様々な世界を旅しながら、闇の国をこの地球から後退させる方法を見出すため冥界を旅するという。その方法を見出せば必ず戻ってくると言い残し、別れのキスをして、彼は闇の世界に去っていく。
いま流行の魔法ものであるうえに、19世紀の現実のヨーロッパ史に魔法を絡め、壮大な歴史絵巻をつむぎだした作品であり、師弟の対立、その背後から忍び寄る邪悪な存在と、伝説的な英雄の存在、様々なサブキャラクターが絡み合ったダイナミックなストーリーで、人気が出るのは理解できる。
ただ、特に前半のストーリーはかなり冗長であり、膨大な脚注に示されているような過度のディテールへのこだわりも特に興味のある人以外にはただ鬱陶しいだけである。対立概念の設定は申し分ないとしても、人物の性格描写が類型的であるので今ひとつ入り込みにくいところがある。更に、魔法や研究団体、妖精の国や邪悪な妖精といったがジェットや設定には全くオリジナリティがなく、陳腐である。それだけに、余計に興味のないものにはディテール描写がかえってつまらなく感じる。
読後の感想としては、力作だし好きな人は好きだろうなと理解はできるけど、自分の柄じゃないな、というのが正直なところである。続編などが出ても読みたいとは思わない。

テーマ性  ★★
奇想性   ★★
物語性   ★★★
一般性   ★★★
平均    2.5
文体    ★★
意外な結末 ★★
感情移入  ★
主観評価  ★1/2(19/50)
silvering at 20:31 │Comments(0)読書