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ウィリアム・ギブスン『カウント・ゼロ』ハヤカワ文庫SF

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August 23, 2005

ウィリアム・ギブスン『カウント・ゼロ』ハヤカワ文庫SF

サイバーパンクの始祖の80年代三部作、第2部
『ニューロマンサー』の続編であるが、前作を読んだのはかなり昔なので内容はほとんど忘れている。ただ、不良っぽい若者が電脳空間に<ジャックイン>して、仮想人格と渡り合いながら秘密のデータやプログラムを探り、究極的に強力なAI人格と遭遇するというような大まかな話だったことはうろ覚えしている。お洒落っぽい造語を多用してエキゾチックでサイバーな近未来空間の映像描写をする個性的な文体(特に黒丸氏の強烈な訳文に負うところがかなり大)のインパクトも彩りを添え、強烈な眩暈感を起こさせる作品だった。
本作も基本的に内容・文体とも前作を踏襲しているが、文体は訳者が読みやすい文体に変えたのかそれとも頭が文体に慣れたためか、特に抵抗なくすんなり読める。
相変わらず近未来の日本の千葉近郊が舞台の中心となっている。ターナー、マルリイ、ボビイという3人の視点人物が交互に動き回りながら、電脳空間にある謎の<箱>へと次第に迫っていくというような話。それぞれの人物が電脳空間で危険な目にあったり、仲間の命を失ったり、脳に奇妙な細工の施された少女を拾ったりしながら、最終的に一箇所に集まっていく。この<箱>をめぐる電脳空間内の場面がクライマックス。最後に、ボビイとアンジイが俳優となった後日譚を置いて終わる。
アイデアそのものは『ニューロマンサー』と大差ない陳腐なものでどうということはない。スタイリッシュな文体と電脳空間で繰り広げられるごく普通のアクション・エンターテインメント、といえる。類似作品が多数出尽くした感のある今読むと、その衝撃力はかなり薄れて、普通のエンターテインメント小説になってしまっているのが面白い。
テーマ性  ★
奇想性   ★★
物語性   ★★
一般性   ★★
平均    1.75
文体    ★★
意外な結末 ★
感情移入力 ★
主観評価  ★1/2(15/50)
silvering at 23:40 │Comments(0)読書
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