SF百科図鑑 イワン・エフレーモフ「星の船」「アンドロメダ星雲」ハヤカワ世界SF全集


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August 13, 2005

イワン・エフレーモフ「星の船」「アンドロメダ星雲」ハヤカワ世界SF全集

SF全集22、エフレーモフの巻。ロシア・ソビエトSFの父。
「星の船」
中篇。古代の地層から発見された大量の恐竜の化石。頭骨に銃で撃たれたような穴があった。銀河系がらせん状に回転し太陽系も銀河の中心に接近した時期があったが、そのときにエイリアンが地球に来ていたのではないかと学者は考え、その証拠を探す。一種の平行進化説をベースにしたアイデアストーリー。古生物学者の作者らしい作品。★★1/2

「アンドロメダ星雲」
エフレーモフ57年発表の遠未来ユートピア&宇宙小説。臆面もない共同体主義的価値観によって統合された未来の人類賛歌。ストーリーは、突然連絡を絶った地球外生命の発信源星系に派遣された探査船が遭難する話と、地球上で資本主義時代の遺跡を発掘する学者、重力と電磁波を移行させゼロ空間を作って地軸を動かす大規模実験を行う学者などの話が交互に進行。世界は共産主義的ユートピアとして統合されている。探査船は鉄の星をめぐる惑星上に不時着、謎の円盤型宇宙船を発見するが、現地の奇妙な生物に襲われる。宇宙船の材質サンプルを採取し、生物を捕獲して何とか地球へ帰還。他方、地軸移動の実験は失敗し人工衛星崩壊。委員会が開かれ、事故の件は<人類の進歩>のための英断であるとして責任不問となったほか、複数の宇宙探査計画が可決される。隣の銀河に発見された人類居住可能で知的生物のいない双子惑星が見つかったというエイリアンからの情報が入ったので1隻はそこへ向かう。もう1隻は円盤型宇宙船の星系へ再調査に向かう。3席の宇宙船出発直後、アンドロメダ星雲からメッセージ受信、その発信源が円盤型宇宙船の送り主であることを示す内容だった。飛び立った探査船にこのメッセージを伝えるところで終了する。
とにかく一貫した社会主義的ユートピアを臆面もなくディテールまで描述しているのがきわめて新鮮である。世界情勢を見ると社会主義は資本主義に敗北したのが歴史的事実だが、マルクスが意図したような理想的社会主義、共産主義体制は未だかつて地球上に存在したことはないから、政治経済システムとして劣っていることが証明されたわけでもなく、単にその体制を運営する人間が不完全な存在だから失敗したに過ぎないとも言える。一般的に、有能な善人>無能な善人>無能な悪人>有能な悪人という不等式(序列)が成り立つので、システムがどれだけ合理的であってもそれを運営する人間のモラルが低ければ逆効果ということになる。崩壊した社会主義体制の大半は運営者のモラルが低かったり内実が専制主義・独裁主義であったりその体制下で働く人々のよって立つべき倫理観・価値観が遅れていたりした(個人主義、利己主義を脱却できない)ために機能しなくだけだったと思われる。逆に言うとその政治・経済機械を運営する人間側の質が、それに見合うレベルになれば、よりすぐれた制度であるのかもしれない。そういう観点からすると、本書で詳しく開陳されるエフレーモフのユートピア理論は興味深く読めるし、資本主義批判も痛烈で面白い。言っていることは社会主義・共産主義というよりも、博愛主義、平和主義、協調主義に近い。そもそも博愛・平和・協調主義が貫かれることのほうが、資本主義・社会主義の選択あるいはその混合という問題よりも重要であるから、このエフレーモフの主張はイデオロギー対立を超えて一般的に妥当するというかそれらを止揚する視点に立っている感じがする。フロムなどが人間の悪性攻撃性を解消する手法として主張していることともあまり差異はない。
この強力なユートピア描写の中に、胸の躍るような宇宙探査と冒険、地球外生命との接触、メタ物理学的アイデアに基づくスケールの大きな実験、古代遺跡の発掘といった魅力的なネタが満載であり、読み応え満点。
テーマ性  ★★★★★
奇想性   ★★★
物語性   ★★★
一般性   ★★
平均    3.25
文体    ★★
意外な結末 ★★★
感情移入力 ★★★
主観評価  ★★★(30/50)

silvering at 00:32 │Comments(0)読書