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イタロ・カルヴィーノ『柔かい月』ハヤカワ文庫SF

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August 06, 2005

イタロ・カルヴィーノ『柔かい月』ハヤカワ文庫SF

第一部だけ中学生のころ読んでいたが、第二部第三部を読んだ。
面白かった。超越的絶対者の観点から人物の置かれている状況を巨視的・科学的・分析的に描出するという実験小説。第二部「ぷりしっら」は生物の発祥、単細胞から両性生殖の人間となって死に至るまでの歴史を細胞レベル、DNAレベルでの自我の観点にまで遡って描出した作品。超越的ミクロ視点から突然、恋愛やセックスをしている人間の視点に遷移するのが面白い。第三部「ティ・ゼロ」は、ライオンと対峙する人間、車で暗殺者に終われ逃走する人間、恋人の元へ車で向う人間、脱獄を試みるモンテ・クリスト伯及びそれを小説に描こうとするデュマ、というそれぞれの視点から各自の状況の空間的・時間的分析を科学的・論理的文体で描出した作品。
とにかく文体が独創的で新鮮である。科学的・分析的視点、文体をもろもろの文学的事情に適用すればこうなる、という実験的作品。
第一部は読んだのが何十年も昔なので忘れた。
テーマ性  ★★★★★
奇想性   ★★★★★
物語性   ─
大衆性   ─
平均    2.5
文体    ★★★★★
意外な結末 ★★★★
感情移入力 ★★★
主観評価  ★★★1/2(39/50)
silvering at 14:24 │Comments(0)読書
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