SF百科図鑑 ヴァン・ヴォークト『宇宙船ビーグル号の冒険』創元SF文庫


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August 04, 2005

ヴァン・ヴォークト『宇宙船ビーグル号の冒険』創元SF文庫

読了。
予期に反して、シリアスな、文字通りの意味での「科学小説」だった。ワイドスクリーン・バロックの始祖といわれる作者だけにもっと荒唐無稽なものを想像していたのだが、極めて正統的なサイエンス・フィクションである。
本書は『科学への信頼』を基調としているものの、科学の持つ危険性はそれを操る人間の不完全さに由来することも十分認識している。科学は細かい部門に分かれ、それを統合する視座を失い政治に翻弄されるところから陥穽に陥る。主人公エリオット・グローヴナーが提唱する「総合科学」は、このような科学の持つ限界乗り越え、人類に真の進歩をもたらすための鍵である。この作者の主張を支えるように、グローヴナーは自らの力でビーグル号内の政治闘争に打ち勝ち、銀河系最大の危機である超巨大な怪物エイリアンを退治するための計画を実行に移す。未来への希望に満ちたラストは力強く、かつ、説得力がある。
作品のテーマとは別に、娯楽作品の面から見てもよく出来ている。倒すことがおよそ不可能と思える超常能力を持ったエイリアンが次々と出現し、船の存亡の危機に立たされながらも、人間たちが知恵と情熱の力をあわせて、科学の力で理知的にこれを倒し、問題を解決する。幼児的で説得力に乏しいスミス作品を読んで間もないだけに、質の差を余計に歴然と感じる。書かれた年代もそう違わないだけに、この作者の力量には感服する。
題名のビーグル号はいうまでもなくダーウィンの作品からとられている。循環史観に対するアンチテーゼとして総合科学による進歩・進化を提唱する本書の内容をよく象徴しているといえる。
テーマ性  ★★★★
奇想性   ★★
物語性   ★★★
一般性   ★★
平均    2.75
文体    ★★★
意外な結末 ★★★
感情移入力 ★★★
主観評価  ★★1/2(29/50)
silvering at 21:47 │Comments(0)読書