SF百科図鑑 E・R・バローズ『火星の女神イサス』


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July 31, 2005

E・R・バローズ『火星の女神イサス』

イサス 『火星のプリンセス』が入手できず、待ちきれずに第2巻のこれから読んだ。
主人公ジョン・カーターの二度目?の火星への旅が語られる。ただ、この火星がリアルの火星であるのかジョンの見た幻の中の火星であるのかは明確に書いていない(恐らくは後者だろうが)。
ストーリーは、異世界ヒロイック・ファンタシイの王道である。自由と正義を愛する武芸に長けた主人公が、邪悪な暴漢や暴君と戦い、囚われた人民を解放し、愛する妻や友人を救出する、一種の革命物語になっている。仲間は魅力的に、敵・悪役は邪悪に描かれ、キャラクターの描きわけも過不足なくなされている。女性の描写がやや類型的で古い点、ストーリーがやや都合よく進みすぎる点は指摘できるものの、いずれも、ジョン・カーターの見た夢物語という基本設定があることを考慮し、かつ、書かれた当時の時代背景が当然反映されるべきであるところから、さほど気にはならない。難点といえば、中盤から後半にかけて、同じような戦闘描写が繰り返されて退屈する箇所が、若干見受けられることぐらいか(ただし、冒険小説オンチの私だからこそそう感じられるに過ぎず、冒険小説好きの読者にとっては、たぶん難点ではないだろう)。
最後まで読んで、デジャー・ソリスが結局救出されなかったことを知ったとき、この作者のしたたかさを思い知らされた。肝心のソリスを救出できないのではだめではないか、続きを読まないわけにいかない。参った。
あと指摘しておきたいのは、異世界のディテール構築や描写が実に巧緻で美しいこと。たとえストーリーがダメでも、その世界描写だけで一定ファンをつかめそうなほどだ。加えてストーリーもうまいのだから、爆発的にヒットしたのも当然という気がする。SF要素はヒロイックファンタシイという基本構造の味付け程度にしかないものの、120ページあたりで説明される<生命の木>のアイデアは極めて強烈である。このあたりが、ファンタシイのみならずSFの始祖の一人としてもバローズがリスペクトされるゆえんなのだろう(もっとも、あくまでも味付けであって、それを掘り下げないところがやはりファンタシイであるし、だからこそマニアに留まらず、爆発的に大衆の人気を得たのだろう)。
もう一点、後半に出てくる回転する牢獄のアイデアは、ブライアン・オールディスの『ヘリコニアの冬』でまるまるパクられていた。ヘリコニア三部作の内容自体も、本書で触れたバローズの物語世界とよく似ている気がする。それぐらい影響力の巨大な作家ということだろうか。
テーマ性 ★★★
奇想性  ★★★
物語性  ★★★★★
一般性  ★★★★
平均   3.25
文体   ★★★★
意外な結末★
感情移入力★★★
主観評価 ★★★(30/50点)


silvering at 12:18 │Comments(2)読書

この記事へのコメント

1. Posted by slg   July 31, 2005 12:51
平均は3.75の間違いでした。
2. Posted by 手下X22   August 02, 2005 23:24
意外に高得点で驚いた。かなり古い作品なので物語構成の基本をしっかり押さえ独り善がりなひねりがないのが幸いしたか。また、世界設定等も楽しませることを前提においた作りなので、後の非商業性を芸術性と偽る悪しき意味不明幻覚世界と一線を画しているのもよかったのかも。