SF百科図鑑 Ellen Klages "Basement Magic"


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June 21, 2005

Ellen Klages "Basement Magic"

2005年ネビュラ賞ノヴェレット(中篇)部門受賞作。ネビュラ賞発表後すぐ、掲載誌のサイトで全文入手したが、既にそのページはなくなっているようです。
継母にいじめられる女の子を、家政婦の女が魔法で助けようとする話。完全なホームドラマとファンタジーの融合。SFではありません。作者については不詳。
つまらなくはないが、とりたてて面白くもないといった感想。特に語るべきことも無いので、内容は粗筋参照。この作者の他の作品を読む気は無い。
テーマ性   ★★★
奇想性    ★
物語性    ★★★
一般性    ★★★
平均      2.5
文体     ★★★
意外な結末 ★
感情移入力 ★★★
主観評価  ★★(22/50)

<あらすじ>
地下室の魔法 エレン・クレイグス

メアリ・ルイズ・ウィットテイカーは、魔法を信じている。どこか、ほかのどこかに、龍と王子様がいて、魔法の杖と願い事が通じる場所があるに違いない、と知っている。なかんずく、願い事については。それ以来ずっと、楽しい気持ちでいる。それ以来ずっとというのは、今ではない。
メアリがまだよちよち歩きのころ、母親は交通事故で亡くなった。メアリは母親を激しく悼むけれど、それは抽象的な悲しみだ。メアリの記憶は、辻褄の合った一枚の肖像画というよりは、バラバラの断片のモザイクだ。ラベンダーの香りのする柔らかい肌。夜闇の中、<スウィート&ロウ>を歌う、晴れやかな声。お風呂の泡。黒い巻き毛。ツビーバック。
メアリの子供時代は、父親が世話役として雇った、気のいい中年女性たちによってこねあげられたが、まだ形が整っていない。父親は社内の出世争いで忙しく、家にいるときもうわの空だ。メアリは父親がいなくても悲しくない。メアリが五歳のとき、父親は後妻をもらい、デトロイト郊外の二階建てのチューダー朝風の家に引っ越した。新たなミセス・テッド・ウィットテイカーのキティは、前ミス・ブルームフィールド・ヒルであり、他人の傘の下、塔のようなブロンドの巻き毛のかたまりをひけらかす離婚経験者だった。ほうっておくとこのタイプは、若い者を食い物にしてしまうことが多い。
もしメアリが、スリック雑誌の天使が抜け出したように可憐で愛らしかったならば、キティはこの義理の娘に我慢が出来たかもしれない。だが、六歳のメアリは、奇妙で孤独な子供だ。
ある春の日、メアリは客用の寝室で本を読んでいたが、キティがルビーという新しいお手伝いを案内してきた。
キティは夜まで出かける、後でバンクス夫人も来るといって出かけた。
その後、ルビーはチーズサンドを作ってくれたが、とてもおいしかった。料理がとてもうまい上に、メアリの話し相手にもなってくれた。
キティは地下室に秘密の空間を見つけ、そこが気に入った。
ある夜、家族そろってディナーをとった。メアリの料理はとてもおいしく、父親も誉めていた。ただ、グレイピーが足りないことは不満そうだった。
父親はキティに、明日フロリダの宇宙基地に仕事に行くことになったので、テイラー一家を呼ぶ件はキャンセルするようにいう。5~7日はかかりそうだ。
***
メアリは地下室に行く。7時過ぎに、ルビーがおりてきた。メアリは、着替えているルビーのわきの下に奇妙な緑の紐を見て興味を引かれ、それは何かときく。
ロビイは自分の胸を見下ろす。「ああ。それね。伯母さんに、魔法のお守りをつけてもらったの」
「見てもいい?」メアリ・ルイズは椅子から降り、ルビイの立っているところへ歩いて行く。
ルビイはしばらくメアリ・ルイズをじっと見る。「それを動かすには、秘密にしておく必要があるの。でもあなたは口が堅いから、見てもいいと思うわ。だけど触らないで。わたし以外は触っちゃいけないの。魔力が漏れ出して、取り返しがつかなくなるから」そして、わきの下に手を伸ばし、くるみ大の小さな緑のフランネルバッグを出し、片手で持つ。
メアリ・ルイズは、絶対に触らないように、両手を強く握って背中に隠し、じっとバッグを見る。魔法を持っているようには見えない。魔法というものは、金の指輪とか、月光と銀で織られたガウンに宿るもので、白い木綿の制服とか、小さなしみのついた布バッグに宿るはずはない。「これが魔法を? 本当に? どんな魔法?」
「そうね、ちょっと変わったタイプの魔法だわ。魔法のバッグには、好運をもたらすものもある。身を守ってくれるものもある。これはね、このバッグは、わたしにお金をもたらしてくれるの。だから緑なのよ、緑はお金の色。中にはダイムの銀貨一枚。だからお金は、自分がこの中に帰属していると分かるの。それから、お金を吸い寄せるように磁石も。あとは、二ドル札に包んだ植物の根。毎朝水をやると、九日後には好運が訪れるの」ルビイはいかにも気に入っている様子で、小さなバッグを見下ろし、再びわきの下に入れる。
メアリ・ルイズはルビイの顔を見上げ、大人の顔に見たことのない何かを見つける。ルビイは信じている。魔法を。たとえそれが、<脇の下の魔法>にすぎなくても。
「すごーい。どうやって&&」
「マウスちゃん。わたしはお家に帰らないと。旦那様に晩ごはんを作らないといけないの」ルビイは制服を脱ぎ、ハンガーに掛ける。それから、青いスカートと木綿のブラウスを着る。
メアリ・ルイズは床を見下ろす。「わかった」と言う。
「世界の終わりじゃないのよ、お嬢ちゃん」ルビイはメアリの頭の後ろをポンと叩いて、腰を掛け、黒い平底靴を穿く。「また明日来るわ。とにかく洗濯物がたくさん残ってるから。わたしと会いたくなったら、ここに降りてくるわね? わたしも話ができるし、洗濯物の仕分けができるわ」ルビイは、欠けた金ボタンと大きく四角いポケットのついた、節玉のある、濃いオレンジ色の外着用ウールコートを羽織り、顎の周りにスカーフを巻く。
「魔法のバックのお話をきかせてくれる?」メアリはきく。今度はルビイを見て微笑む。
「たぶんできると思うわ。お互い、何か先の楽しみがあったほうがいいからね。さあ、急いでここを出ないと。電気を消すわよ」ルビイは茶色の紙包みを取ると、アイロン台の上にぶら下がる紐を引く。電球が消える。一つだけある高窓から差し込む夕映えを除くと、地下室は暗闇だ。ルビイは車道に通じるコンクリートの階段へと出るドアを開く。外気は地下室よりも暖かい。
「おやすみ、マウスちゃん」ルビイはそう言って、出ていく。
「おやすみ、ルビイ」マリイ・ルイズは答えて、上に行く。
***
木曜の朝、来客用寝室のじゅうたんに掃除機をかけているとき、ルビイは、メアリ・ルイズが窓際の椅子に座って外を見ているのに気付く。
「おはよう、マウスちゃん。今日は降りてきて、挨拶しなかったのね」
メアリ・ルイズは答えない。振り向きもしない。
ルビイは掃除機のレバーを押し、掃除機をまっすぐ立て、手に巻きつけた灰色の布コードを落とす。そして、黙りこんだ子供のところへ歩いていく。「マウスちゃん? どうかした?」
メアリ・ルイズは顔を上げる。その眼は冷たい。「ゆうべ、ベッドで本を読んでたら、キティが来たの。ものすごく機嫌が悪そうだった。わたしが本を読み過ぎだって、これ以上読むと眼がつぶれるっていうの。わたしから本をとり上げて、焼却炉に投げ込んで燃やすわよって」断続的に怒りをこめて、くいしばった歯の間から、言葉を吐き出す。
「ただ、あなたに意地悪しようとしてるだけよ、お嬢ちゃん」ルビイは首を振る。「あなたを怖がらせようとしてる。でも、本気じゃないわ」
「でも、ほんとに焼いたの!」メアリ・ルイズは後ろに手を伸ばし、おとぎ話の本を取る。表紙の絵がすすで汚れ、てかてかのコーティングに火ぶくれができている。金箔で縁取られたページは焦げ、角の部分はなくなっている。
「あらまあ、どこで見つけたの?」
「裏にある焼却炉の中。キティが言った通りのところ。たいていのお話はまだ読めるけど、手が汚れるから」両手を上げ、炭で汚れた両掌を見せる。
ルビイはまた、首を振る。そして、メアリにというより自分に向かって、言う。「昨日のお昼の後、ゴミを焼いたわ。もしあれが昨日の夜だったら、真っ黒焦げになっていたわね」
メアリ・ルイズはひざの上の焦げた本を見、それからルビイを見上げた。「これ、お気に入りだったの。なぜキティはこんなことをしたの?」涙が頬を伝う。
ルビイは、窓辺の椅子に座る。「わからないわ、マウスちゃん」ルビイは言う。「ほんとうにわからない。きっと、お父さんが自分を置いてフロリダに行ったから、怒ってるんじゃないかしら。人間の中には、怒ると、他人に八つ当たりする人もいるのよ。たとえ六歳の小さな子供でもね。誰でもいいから八つ当たりするの。そうしている間だけ、自分の痛みを忘れていられるから」
「あなたは、ルビイよりも大きい」鼻をひくひくさせながら、メアリ・ルイズがいう。「あなたなら、ルビイに仕返しができる。ルビイのしたことは悪くて、間違ったことだと、教えてあげられる」
ルビイは首を振る。「ほんとうにごめんね、マウスちゃん」静かに言う。「でも、できないの、それは」
「どうして?」
「それはね、キティがこの家の主人だからよ。もしわたしがミズ・キティに口応えをして、女王様のプライドを傷つけたりすれば、わたしはすぐに首になるわ。今まで首になった、肌の黒い女の人たちと同じように。それに、わたしにはこの仕事が必要なの。わたしの夫は、スノコでパートタイムの仕事をしているだけ。フォード農場に就職を希望しているんだけど、今のところ採用の見込みはない。ここでのお給料のおかげで、わたしたちはやっと野菜を買えるのよ」
「でも、でもっ」メアリ・ルイズは音も立てずに泣きだす。ルビイはメアリが信用できるただ一人の大人だ。そのルビイも、メアリを助けられない。
ルビイは長い間、自分の膝を見ている、そして、ため息をつく。「わたしは、ミズ・キティには何も言えない。でも、キティは、あなたに意地悪をしている。それは正しいことじゃない」ルビイは、震える子供を片手で抱く。
「あの小さな袋は?」メアリ・ルイズは、手の甲で鼻水をぬぐい、頬に小さなすすの縞が残る。
「それがどうかして?」
「身を守る魔法もあるんでしょ?」
「そういう魔法もあるわ」ルビイはゆっくり言う。「そういうのもある。でもね、わたしの母が言っていたわ、<卵は石には勝てない>って。それは本当なのよ。ミズ・キティが、この家では力を持っている。あなたよりも、わたしよりも。それはどうすることもできないものなの。でも、魔法は──」少し考えて、深いため息をつく。
「あなたの周りを守って、ミズ・キティがこれ以上、あなたを惨めにさせないようにすることは、できると思う」ルビイは、ちょっと眉をしかめて、言う。「でもね、やり方にはあまり自信がないの。ね、もしここがあなたの家だったら、正面玄関の真下に<グーファー(まぬけだまし)>を仕掛けることはできる。でもそうじゃないでしょ。ここはあなたのお父さんの家だし、キティは、法律上、あなたのお父さんと結婚している。だから、キティを家に入れないようにすることは、出来ないのよ。たとえどんなにひどい人でもね」
「わたしの部屋は?」メアリ・ルイズはきく。
「あなたの部屋? うーん&&そうねえ。それはまた別の話だわ。あなたの部屋で、キティがあなたに意地悪できないように<グーファー>を仕掛けることは、できると思う」
メアリ・ルイズは鼻に皺を寄せる。「<グーファー>って、なに?」
ルビイは微笑む。「わたしの家族は、南キャロライナ出身なんだけど、そこでは呪文のことをそう呼ぶの。呪いというか。一種の、根の仕掛け」
「根──?」
ルビイは首を振る。「何と呼んだって構わないのよ、正しくやりさえすれば。さあ、もう泣きやんだのなら、とりかかりましょ。ガレージに行って、お父さんの道具箱を持ってきてくれる? あと、釘を九本。大きい釘よ、同じ大きさで。それに、できるだけきれいで光っているもの。数は数えられる?」
メアリ・ルイズは鼻で笑う。「わたし、五十まで数えられるもん」
「いいわ。じゃあ、きれいな釘を九本、できるだけ早くね。広間の向こう、あなたの部屋の前で待ち合わせましょう」
メアリ・ルイスが片手に九本のきれいな釘を握りしめて上に行くと、ルビイが、裁縫箱から持ちだした紙に刺したピンと、パイプ洗浄剤の缶を持って、メアリの寝室のドアの前にしゃがんでいる。メアリ・ルイズは釘を渡す。
「完璧だわ」ルビイは言う。洗剤のキャップを逆さにして、洗剤を注ぎ、釘を一本取ってその先を浸すと、メアリ・ルイズの寝室のドアの左端の辺り、広間の絨毯の端っこ付近の裏側に、その釘を突き立て、釘の頭が見えなくなるほど深く突き刺す。
「どうして釘を洗剤につけるの?」メアリ・ルイズはきく。流し台の下に入れる毒液が、どうして魔法になるのか、さっぱりわからない。
「いい、触っちゃいけないわよ。ひどいやけどをするわよ。中に洗剤が入っているから。でもこの洗剤は、この場所に住みついている邪気を払いのけるには、いちばんいいの。&&。釘とピンは鉄で出来ていて、鉄はあなたのドアに新しい邪気が入ってくるのを防ぐわ」ルビイは話しながらピンを洗剤につけ、釘とピンを交互に突き刺す作業を繰り返し、最後の一本をドアの右端付近に刺し終える。
「これでうまくいくわ」ルビイは言う。洗剤のわずかな残りを缶に戻し、蓋をきつく締め、立ち上がる。「さあ、あとは、守りの呪文を唱えるだけよ。お祈りの仕方は知ってる?」ルビイはメアリ・ルイズにきく。
「眠るとき、横になってするお祈りなら」
「それでいいわ。部屋に入ったら、広間に向かって膝まづき、廊下に向かって祈りの言葉を言いなさい。できるだけ、大きな声で。わたしは下に行って、乾燥機からシーツを取ってくる。終わったら、ミズ・キティの部屋で会いましょう」
メアリ・ルイズは、大きなはっきりした声で祈りの言葉を言う。この種の魔法がどんな風に働くのかは知らないし、<&&に神の祝福がありますように>と言うべきなのかどうかも自信はないが、ともかくそう言う、ただし、キティを省き、ルビイを加える。「そして、わたしがいい女の子になれますように。アーメン」祈りを終え、ルビイが他にどんな種類の魔法を知っているのか知りたくて、下の父の部屋に急ぐ。
特大サイズのマットレスがむきだしだ。メアリ・ルイズは、その上に横になり、三回転がって、もう少しで絨毯の上に落ちる寸前で止まる。そして、立ち上がり、青い綿パンツの両膝の埃を払っていると、ルビイが両手いっぱいにきれいなシーツを抱えて入ってくる。ルビイはシーツをベッドの上にどすんと落とす。メアリ・ルイズは、シーツの山の真中に顔を埋める。まだ温かく、焼けた綿のような匂いがする。メアリは深く息を吸いこむ。
「一日中、洗濯室で寝ているか、そうでないなら、ベッドメイクを手伝ってくれる?」ルビイは、笑いながらそうきく。
メアリは、大きな花柄シーツの端を持つと、ベッド越しにルビイがそれを伸ばし、伸縮自在な四隅を引っ張って、全体を平らにならすのを手伝う。
メアリはルビイに言われ、キティの髪の毛を見つけて渡す。ルビイは針に髪の毛と糸を巻きつけ、メアリに握らせ、キティに本を焼かれたときのことを思いださせると、絨毯の下に埋めさせ、<キティが悪さをすればキティに帰っていく>ように念ずる。
それからベッドを整え、昼食を取り、別々に別れてキティの帰りを待つ。キティは四時三〇分に帰り、ルビイは六時にミセス・バンクスと交替する。メアリは部屋に篭り、実母の高貴な写真を見つめる。
***
翌朝、金曜日9時ごろ、メアリが食事中、キティは悲鳴をあげ、美容院に電話している。メアリが行くとキティは髪の大半失い、その跡は腫れている。キティがでかけたあと、一〇時にルビイが来る。メアリは状況を教える。やがてキティ帰宅、小部屋で酒を飲む。日曜までメアリも部屋に篭る。日曜夜七時半にメアリは部屋から出、テレビでシンデレラを見る。
***
月曜にルビイが地下室で洗濯物の仕分けをしていると、泣いているメアリを見つける。キティがディスニーのハンカチを幼稚だといって引き裂いて捨てたらしい。その切れ端を持っている。
ルビイはメアリにガムを与え、南ジョージアのネズミ少女の話をする。メアリと同じように継母にいじめられ、地下室に隠れたが、足音に怯え、ネズミの姿に戻ってしまった。来たのは、洗濯女で、少女のネズミにセーターを作るから布切れをくれと話しかけた。そのセーターのおかげでネズミ少女は継母から見えなくなった、という。
ルビイは、おばのナンシーにメアリのことを相談し、<平和な家庭>のお守りを作ればいいと言われたらしい。ルビイは、メアリに手伝わせてこのお守りを作る。キティとメアリの髪の毛、家の埃、ローズマリー、ガムの包み紙、縁起のいいもの(硬貨)、四角いフランネルの布。それで作った袋に3日続けて、強いアルコールなどのドリンクを垂らす。
メアリは、火曜、水曜と、わきの下に隠した袋にジンジャーエールを垂らすが、気が抜けてしまったので、木曜に、キティが出かけたすきに、父親の書斎の酒棚の鍵を開け、ウイスキーを袋に垂らし、ビンを棚に戻すが、このとき鍵を掛け忘れる。それから、キティが夜戻って二人で夕食を食べるといっていたのを思いだし、食堂に、釘と洗剤を使った魔除けの魔法を施す。残っていた五本の釘を台所と食堂の間のカーペット下に刺す。そして祈る。
やがてルビーが来て、台所に行く。キティが帰ってきて、書斎に入り、酒棚が開いているのを見つけ、ルビーを呼ぶ。メアリは地下室の入り口に隠れて聞き耳を立てる。キティはルビーに酒棚を開けたことを理由に首を告げ、二人分の夕食を作ったらもう来るな、と言う。ルビイは従う。
ルビイは、メアリに何か言うことがあるのではときく。メアリは、自分が酒棚をあけたことをいうからやめないでというが、ルビイは、自分の金運のお守りがあるから大丈夫、夫が農場に採用になりそうだ、という。そして、メアリは大きくなったら心の仲間を見つける、それまでは天使が守ってくれるから大丈夫、という。キティと夕食を食べたくないなら、具合が悪くて寝ているといっておくから。
***
メアリは世界が崩壊したのを感じる。こんなはずはない。ルビイの話ではあの少女は地下室に隠れてネズミの姿を取り戻した。自分も念じればそうなるはず。ひたすら念じてネズミになる。そして、壁にかけてあるコートの温かいポケットに入るのだ。
***
キティはテーブルに座っている。ルビイを呼ぼうと足もとのブザーを何度も足で押す。だが、台所へ通じる線が釘で断絶されており、すべての電流が足に流れ込む。キティは痙攣し、皿を落として倒れる。
***
地下室でルビイはブザーと皿の割れる音をきく。だが行きかけて肩をすくめ、制服を脱いで壁のコートを羽織る。メアリの名を呼ぶが、誰もいない。地下室は真っ暗だ。ルビイは外の春の黄昏の中に出ていく。
~完~


silvering at 22:36 │Comments(0)読書