SF百科図鑑

John Sladek "Roderick or the Education of a Young Machine"

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May 13, 2005

John Sladek "Roderick or the Education of a Young Machine"

ロデリックプリングル100冊、いよいよロデリック二部作。「チックタック」が面白かったスラデックだけに、ちょっと期待。私は合本と、第二部のみの本を持ってるんだが、第一部のみ合本で読み第2部は単独の本で読もうかな。ということで項目を分けてここは第一部のほうのみのスレッド。
はぁ~、疲れた。
正直、ディテールをかなりいい加減に読んだのでストーリーの把握も正確ではないんだが、だいたい以下のような流れではないかと思う。
ロデリックというロボット、はじめは体を持たない存在として、ナサの一職員の独断で大学に研究依頼がされたことから開発されるが、この男の不正がばれ、ナサの支援が打ち切られ、大学でも予算カットの雲行きとなり、何とか切り抜けたものの、主任教授が連続殺人事件で逮捕され、計画頓挫するまでが第一の書。ロデリックというロボットがどういうものかの描写はほとんど出てこない。
第二の書は、オールブライトという学生がロデリックをある夫婦に譲る。が、この夫婦は夫がメカマニアで妻が愛想を尽かし不倫相手と家出、旦那が発狂しロデリックを壊そうとする。切り抜けたロデリックは、パ&マ(ポール&マリー)夫妻の養子になる。ロデリックは一度問題を起こしジプシーに預けられるが、まもなくパ&マに取り戻される。そして、学校に入れられるが、いじめにあい、ミッションスクールに転校する。ミッションスクールでは教師と折り合わず、いろいろと悶着を起こす。特にワレン神父とはいろいろな議論をする。ワレン神父はロデリックに触発され、仕事そっちのけで哲学的研究に没頭し始める。更には、ロボット破壊運動、パの死と葬儀、マが交霊術で手に入れたといって渡した暗号メッセージ、水銀クッキー中毒事件、神学校の神父やシスターの死、ロボットテーマパーク、などがめちゃくちゃに絡み合いながら、最終的にロデリックはつるしあげをくらい頭部を破壊されるが、救い出され、修理されて逃がされる、というラスト。
以上要するに、ロボットの生い立ちと成長物語、この極めて純粋無垢なロボットの視点を通じて反射的にあぶりだされる滑稽で薄汚れた人間たちの行動の描写である。
とにかく、プロットが複雑すぎて(特に後半)、わけが分らなかった。もう一回読んだほうがいいとは思うが、今のところその気にはならない。やたらと人間の行動がキチガイじみたコミカルなものに描写されている。しかも、駄洒落だのめちゃくちゃな暗号だのがやたら出てきて、読みにくい。ただ、疲れた、という感想。やたら躁病的で、心理描写がほとんどなく、場面の展開が速いので、入り込みにくい。難しかった。これを楽しむのは相当努力を要する。こういうのはやっぱり天才的な訳者の日本語訳で楽して読みたい。
楽しめなかったのは、内容の高度さもさることながら、ロボットものに飽き飽きしているということもある。同じ作者の「チックタック」はロボットが周囲の人間の悪をそのまま学習して極悪非道の悪人ロボットになるというブラックコメディで非常に読みやすく面白かったが、それを先に読んでしまったために、テーマ的に酷似する本書の内容に今ひとつ興味がもてなかったということもある。
とにかく、ロボットものは当分うんざりという気分。第2部は後回しにします。
テーマ性   ★★★
奇想性    ★
物語性    ★★
一般性    ★
平均     1.75
文体     ★
意外な結末 ★
感情移入力 ★
主観評価  ★(13/50点)

いかにわたしがへぼい読み手であるかを自戒の意味を込めて示すために、粗雑なメモを以下そのまま晒す。いやあ、これはひどい。

<要旨メモ>
ロデリック二部作 ジョン・スラデック

第一部 ロデリック、または若き機械の教育
第一の書

ミネトンカ大学のイブセンクラブでは冷凍精液で牝馬に人工授精する実験の報告が行われていた。自宅にいるヘレン・ボーグは妙な物音をきいて、第二夫、第三夫を呼んだ。風の強い日だった。構内のカークの塔のそばには、手足切断死体が転がっていた。フォング博士は風に抗してドアを開けようと頑張っていた。
***
リー・フォング博士は、友人の社会学者ロジャースの訪問を受け、NASAから請け負っている金星探査ロボットの開発(ローバー計画)にかこつけて行われている計画について説明を求められた。フォングは、依頼を受けた経緯から語り始めた。
***
NASAのアブレル・ストーンクラフトは、ローバー計画の名目で「本物のロボット」の開発をフォングに依頼する。ソ連との間で諜報合戦が進行している状況下で、極秘で進めて欲しい、材料の購入は必ずNASAの窓口を通すこと、といって、彼は担当職員の名簿を手渡した。彼は軍用機のコレクションの写真を見せて自慢していた。
***
フォングは、ダン・ソネンシャイン、メアリ・メンデス、レオ・バンスキ、ベン・フランクリンと共に、真の知性を持ったロボットの開発を初め、ロデリック計画と呼んだ。ダンが製作した「深層構造」は、少しずつ言葉を覚え、意識を持った。フォングは、ロボットが書いたもの(?)と思われる拙い手記を、ロジャースに見せた。
そこへ、R・マタースンから、即刻ストーンクラフトとの接触や材料の購入を止めるよう要求するファックスが入った。ある容疑がかかっていることから、このロデリック計画は窮地に立たされている。ロジャースは僕は無実を信じるよといい、弁護士の依頼を薦めるが、フォングは、弁護士のあてはなかった。
フォングは、研究室を見ないか、とロジャースを誘った。
***
四人の会計士がマタースンと共に、ストーンクラフトの事務所を捜索していた。目的不明の請求書が多数。軍用機のコレクションや、修理の勘定書。そして、極秘の判が押された、ロボット研究開発の書類。ミネソタ大学のために特定の会社から物資を購入し、その請求は二重になされていた。
ことが発覚するやストーンクラフトは自殺をほのめかし、失踪していた。
このスキャンダルはNASAにとってダメージになる。内密かつ穏便に処理を進めようということになった。
***
「三つのシナリオを八つのモードで進めてきた、計画変更の必要はない、エージェンシーから誰かを派遣しなければならない」と話す、何者かの会話。話者特定なし。
***
フォングは、先ほどの手記を機械精神が書いたこと、機械精神にはまだ筐体を与えていないことを説明する。そして、基本的なことを説明した本をロジャースに渡そうとするが、ロジャースは、本はダンに借りた、だからここへ来たのだ、私が知りたいのはロボットがどういうものかではなく、フォングがなぜそんなにそれに興味を持つのか、目的は何なのかだという。NASAの方針変更で計画中止の瀬戸際に立たされ、大学の24人委員会のメンバーであるロジャースに計画の支持を求めようというフォングの目論見だったが、ロジャースは「機械精神」を幽霊と呼ぶなど研究内容には冷淡で、フォングは思わず冷静を失い、いかにメンバーたちがこの研究に心身をすり減らしてきたか、レオは疲れ果てて引退、メアリは精神を病み保険センターに入院、ダンも計画中止になる前に進められるだけ進めようと必死なのだ、と叫び、「神のように振舞うのはどういう気分なのか? 冷静に教えて欲しい、僕は君の味方なんだ」というロジャースと話が噛みあわない。ロジャースは、いずれ委員会前の落ちついたときにまた話したいといい、去る。
***
夜明け前に嵐は去り、空に星が見えた。コンピュータは船を操り、見えない星図を描き続けた。


49 GOROD-RESET.55 GOROD
(ロボットの一人語りと思われる台詞。ダンが見せた筐体の顔に意見する。ダンからの答えはない。)
3939INTROSP(ECT?) TEST SW    END
***
天文学者のフレッド・マガフェイは、春の天体の動きについて講義していた。学生に質問するが、全く手が挙がらない。こいつらは計算機がないと足し算すらろくにできないのだ。フレッドはコンピュータ嫌いで、いつも紙と鉛筆で計算をする。
ライル・テイトという学生が、プトレマイオスは南半球の星座になぜ言及しないのかときくので、フレッドは、重要でないからだと答えた。フレッドは文明が北半球にのみ起こるのは磁気の影響だと考えていた。そのことをいおうかと思っていると、チャイムが鳴った。
フレッドは学生の宿題の天球図を採点したものを机上に置き、ロボットに興味を示しているというロジャースとの待ち合わせに向かった。このロジャースは大学の研究者の中でも最も浅薄な低脳だ。人間の精神を金属の箱に入れるだと、笑わせるな!
***
宿題の誕生月の天球図で普通はパソコンを使ってやるからCはいくのに、一人だけFというひどい点をとった零点野郎ことビル・ハナーは、思うように単位がとれないと級友のドラにぼやいていた。こんなにひどい点をとるのは他には、ハンサムだが故郷の政治犯について演説ばかりうっていて勉強をしないムザぐらいのものだ。だがドラもフレッドの天文学入門の講義は外れだと思っていた。星の数字と位置の話ばかりで糞の役にも立たない。講師もゴミレベル。自分は人間に興味があるのだ、とぼやいた。二人が「指輪物語」の話をしていると、オールブライトという女学生が通りかかる。ビルの知人だ。ビルは話しかけようとするが、オールブライトはそのまま素通りし人込みに消えてしまった。
***
ベン・フランクリンとフォングの会話。ベンは様々な委員会メンバーをあげ、頑張って説得すべきだと語るが、フォングは昨夜徹夜気味で眠いので後にしてくれという。
***
ロジャースが委員会の各メンバーに電話をかける。ヘレン・ボーグ学長に電話をかけ終えると、ガウンと話す。ガウンは姉妹を前年、通り魔に殺されたこと、この通り魔が新たな被害者を襲ったことを告げる。
***
ベン・フランクリンがロジャー計画の表示のある部屋を訪問する場面。
***
ヘレン・ボーグがジムにカリブー紙の記事を見せる場面。「大学キャンパス通り魔殺人事件」とコンピュータによるチェスのいかさまの記事など。
***
食堂で学生が昼食をしながらだべっている場面。オールブライトやドラが同じ記事を見ながら、通り魔の犯人がロボットか、野獣か、あるいはコンピュータがチェスでいかさまをできるか? といった議論をする。別の席では、ダンの人工知性に関するノートを見たベンが感嘆し、学会誌に発表すべきだと叫ぶ。ダンは、ロデリックは生きているんだ、体のないプログラムに過ぎないが、既におれも操られているんだという。


エージェンシーから派遣された?オスミスという人物が、飛行機でミネトンカに行き、ゲームセンターでシューティングゲームをする。
***
「いうまでもなく私には、自分自身のアイデアがある」ターはパイプにタバコを詰めつづけた。「渡り鳥の飛翔の方向づけに関する心理的特性の調査計画は、二人ともご存知だろう」
エイキンとドルズリイは機械的にうなずいた。知ってるとも、知ってるとも。
「だが、君たちに一言の相談もなくそれを委員会に上程するのは、民主的ではなかろう?」
うなずく。
「で、君のアイデアはどうなんだね? バド?」
バド・エイキンは、今日はいつになく見事にどもり癖を抑えて、振り子を利用した犯罪抑止のプランを説明した。この心理療法器具については、エイキンが既に権威であることをターは知っていた。このアイデアにいまだに膨大な時間をこやつが費やしているのは実に残念だ。
エイキンは地図を広げた。「見てください、ここが私のいたところ、それからこことこことここが、通り魔が出た三つの場所、殺し屋が被害者を置き去りにした場所です。これらの場所は、地図の上でも、振動が極めて顕著でした。P-P-P──一種の振り子──を使って、私は正確に場所を特定できたのです」
「すばらしいな!」ターはパイプに火をつけた。「むろん懐疑主義者どもは、君が新聞で場所を見たのだろうというだろうが」
「いいや、だが待ってください。私は地図を裏返して、目をつぶりながらでもできるんです。P-P-Pが──またの名をペン・ペン──このガリレイの道具が、心理的ホットスポットを通過するとき、激しく揺れ始めるのです。しかもそれだけじゃない。私は第四の場所を見つけ出したんです。次に死体が発見される場所。ほらここ、学生組合の近くです。だからもし今度本当にそこで死体が見つかったら、完璧ですよね? 犯罪予防が飛躍的進歩を遂げるのです。このP──時計の等時間隔的に振動する部品を使って──」
ターは大きな煙の塊を吐きだした。「すまんが、率直にいわせてもらうと、ビジョンに欠けると思うな、バド。それに、大した助成金も要らないんじゃないか──だがいちおう、バイロンも意見もきいてみようかな、どうだね?」
バイロン・ドルズリーはにやっと笑って、ずっしりと大きな手でテーブルを叩いた。「ビジョンですって? はっ! 私のアイデアにはビジョンは十分ありますよ、ジョージ&&」
ドルズリーのアイデアは、生命と意識を車輪と車軸になぞらえるタイルハードの説を発展させ、創造的知性はそのネジであり、神とはそのベクトルの和であると論じるものであった。
彼らは心理学部で超能力、幽霊などのオカルト現象を研究していたが世界的には全く無名だし、コンピュータ学部に比べ、大学の予算も遥かに少なかった。ジョージ・ターは助手の反対を押しきって、「渡り鳥のテレパシー研究」で予算委員会を乗りきろうとしていた。彼は口述筆記マシンに向かって、自己の理論をしゃべり始めた。「渡り鳥が集団で高速で同一方向に飛びながらも衝突しないのは、テレパシーの証拠である&&」云々。
***
顔に似あったハンチングをかぶった男が、バーテンに話しかけていた。「よお、おれは大学出てねえけど、だからって酔っ払っちゃいねえぞ」
「ジャック、まあ落ちつけ」
「大学なんかじゃ教えられねえことは、ぎょうさんあるんだ、な、だろ?」
「とにかく、落ちつくんだ。なあ&&」
その後方のブースでは、一五年間一度も痒くなったことのないにきびをロジャース教授が掻いていた。「むろん、あなた次第ですよ。ただ全ての事実を知りたいだろうと思っただけです。会議の前にね」
ジェーン・ハナ博士の顔は無表情で、シェイアンの勇士を思わせた──人類学を学び始めた頃の顔に戻っていた。「事実とおっしゃいますが、私は意見を聴いているだけです」
「いいでしょう、私の意見を申し上げますが、却下すべきですね。これだけ悪い噂が広まっている以上、フォングのスタッフに特別待遇を与えるわけにはいきません」
ハナはマティーニを手にとり何かもごもご言った後、一口すすった。「なぜ特別待遇を与えられないのですか。彼らがこれまで大学からどれだけ盗んだにしろ、それ以上に価値のあるものをもたらすかもしれません。本物の英雄は、常に規則を破るものです。プロメテウスが神から盗んだものを考えてごらんなさい」
「プロメテ──でもこれは現実の問題です、本物の横領ですよ。おそらく、数百万ドルはくだらない。肩をすくめて見逃すというわけには──」
「しかし、NASAは、空気を司る火神と同じで、数百万ドルの金を無駄に使うことはありません。今更、些細な部族内の倫理問題に足をとられている場合ではないのです。真の問題は、フォングは本物の英雄なのかということですよ。フォングが人類への贈り物として造っているというロボットが、いいものなのか悪いものなのか。もしいいものなら、フォングを助けねばなりません。たとえ蜘蛛女が、父の小屋へ向かう戦争の双子を助けるような形でも、太陽の──」
「わかってます、わかってます。ですが、フォングは自分が神のように振舞っているのですよ。フランケンシュタイン男爵のように、誰の言葉にも、自分に都合の悪いいかなる規則にも耳を貸さないのです」
「新プロメテウス」ハナの目は焦点が定まらない。ロジャースを通りすぎて、ブースのビニールのカバーを見ているようだ。「プロメテウスは粘土から人間を造りましたよね。それをあざけりの女神モムスが批判し、胸に窓をつけるべきだったと言いました。胸の中で何を考えているかが分かるようにと。でも、それはわれわれの側の問題じゃありませんこと? このロボットがいいか悪いかなんて、私たちに分かるわけがありますか? 胸の中で何を考えてるかなんて」
ロジャースはオールドファッションドのグラスを持ち上げ、その底の小さな紙のコースターを小指で支えた。「私の意見を求められたから申し上げるだけですが、あのコンピュータおたくどもは、あまりにも長い間、身勝手なやりたい放題をしすぎたのです。これだけ多様な動機づけが考えられる状況に、罪悪のレッテルを貼る気は毛頭ないのですが、キャンパスの周りを見まわしてご覧なさい! 人間疎外を助長するプロセスが不可逆的に進行しています。コンピュータ化された試験や単位制度、教育機械、入試制度、まるで人間性を粉砕したいだけみたいじゃないですか。人間性を壊して、ただ置きかえるだけ、ロボットの支配に。ロボットなんて、単なる人間性の破壊です、私の意見を言わせてもらえば」
ハナの視点は相変わらずロジャースを素通りして、ビニールのパッド、いやむしろ、隣のブースのドラに注がれていた。ドラはオールブライトにこう力説していた。「フレッド博士ってもう、ぼけたかどうかしたんじゃないの。学生全員の星図のチェックをことごとく間違えてんのよ。わたし、自分のをコンピュータでチェックしたのよ、そしたら博士の書いた土星の位置が完全に間違っていたわ」
「ああそうだな、コンピュータなら正しいに決まってる。トランジスターの詰まった糞ったれの鉄のキャビネットを頼れるというのに、ちびの爺さんをなぜ信用しなきゃならない」オールブライトは薬を口に含み、アイリッシュウイスキーで飲み下した。
「私が言いたいのは、そういうことじゃないのよ。土星の位置が違ってたってところ! それにね、私のクラスに、ビル何とかって子がいるんだけど、その子の星図はもっと悲惨よ。フレッド博士は冥王星と海王星の間に書いたんだけど、それだとビルは一八八八年から二三八一年の間に生まれたことになる。だから間違ってるわよってビルに言ったのよ、そしたらかれ、『分かってるよ、また間違えたよ。おれはいつも間違えるんだ』──つまり、自分の失敗だという言い方でね」
「そうさ、糞ったれの鉄のキャビネットにかかれば、俺たちはみんな間違いだらけさ。誰も生き残れないよ、一部の技師以外はさ」汚れた指で、合成樹脂ごしにもう一服の薬を探った。
「君の話し方、かれにそっくりだわ。陰気で悲観的で! 二人ともサソリ座か何かじゃないの、いらつきすぎ」両肩をすくめると、オレンジのコートが半分ずり落ちた。それからタバコに火をつけた。「わたしはとにかく、この場所が嫌なの。つまり、根本的にね」
「&&数人のいまいましい技師だけ。あいつら自身が半分機械みたいなもんだ&&なあ、おれは生まれつきのコンピュータの天才と学校に行ったんだ。あいつは四六時中、学校のパソコン端末をいじってた。自分専用のゲームか何か.詳しいことは誰も知らなかった。特に先生はね。要するに、おれたちみんなたった一一歳だったのに、かれはもう自分の世界を持っていたんだ。それからウザイFBIの連中が学校に来て、数日あいつを連れ去った。&&」
そしてブライトオールは、同級生のパソコンオタクがスーパーマーケットのコンピュータにハッキングして、発売中止になった漫画キャラクターの大量の偽注文を自動的に行うアルゴリズムをアップロードしたのがばれた話をした。この話の落ちは、この少年がスーパーに雇われた、というものだった。
一方、ハナとロジャースは、世界中の伝説や歴史を例にあげながら、ロボットの功罪についてとりとめのない議論を長々と交わす。が、結論としてハナは、ロボット計画に反対票を投じると言った。
息子と夕食の約束があるからハナは居残って時間をつぶす必要があったが、ロジャースは、ビーニーズバーを出た。入れ替わりに見知らぬ男が座った。男はショービジネスをしているらしい。ハナは雑談につきあうことにした。
一方、ブライトオールは、パソコンオタクの級友ダニーと再会した話をしていた。
ハナはオスミス氏を見送った。オスミスは二人の短髪男に迎えられた。
オールブライトは居眠りしながらダニーの話の続きを語った。かれがロデリックという名の子供を手に入れたことを。そして、手に持った人形を示し、ロデリックの実験に使うといった。パターン認識の実験らしい。
そこへ、警官が現れた。かれはハナに近づき、息子の死を告げた。そしてハナを連れ去った。
オールブライトはダニーの話を続けた。かれにアドレスを渡したこと。その子ロデリックは人間ですらなく、機械の中の幽霊に過ぎないこと&&。次第にろれつが回らなくなり、バロウズの「ソフトマシーン」を「アディングマシーン(加算器)」と言い間違えたりした。女子学生に支えられて立ちながら、「思考機械を学ぶことで内観法以上に人間は自己を理解できる」という趣旨の文を引用した。「『Cチャージの頭脳は、殺し屋のピンボールマシンだ。電子的オーガズムの中で、青やピンクのランプを光らせる』。知ってるか?」そして壁を拳で殴る。荒れまくる。


某国国王(シャー)が大学視察に訪れ、ジムに迎えられた。
***
ESP研究計画の提案は委員会に却下され、ターはバド・エイカンに毒づいた。エイカンは、カリブー紙のビル・ハナ自殺の記事を見せ、自分の予言が当たった、場所が的中したと自慢した。ビル・ハナは成績の悪さを母になじられていたらしい。
***
ドビン警察署長が自室に入り、「うるせえ、そんなくだらねえ自殺事件なんか興味ねえ!」と怒鳴りながら、たまった書類も無視し、小説を書き始める。警官に嫁いだことを詰る妻の話だった。題して「おれを豚と呼べ」。だが、大学を訪問中の男の警備の件で混乱が生じているらしい、と部下からの報告で遮られる。この男は大学の入ってならない場所をやたらと訪ね、足取りがつかみづらいとのこと。またハナの息子の遺体に関しては、既に返還し火葬に回されたようだ。今日は執筆は進みそうになかった。
***
シャーはボーグや秘書らに車で農学部の厩舎へ案内される。この大学に将来、息子イドリス(六ヶ月)を入れたいといい、学費の話などをする。
***
歴史学教授は腕時計を見た。進行が自分に委ねられてから、もう一分が過ぎていた。「みんなそろったようじゃの。では開会を宣言するぞ。ボーク博士がこられないのは残念だ。先約があるそうだ。それからロジャース教授──病気。ハナ博士。息子さんの先日の訃報はご存知の通り。だが定足数は満たしておる。そこで二つの提案を審議したい──質問かな、マガフィー博士?」
「ウーパ。ビル・ハナの自殺に関して、私は何の関係もないことを議事録にとどめていただきたい」
「なんじゃと? わからんな」
フレッド博士が立ちあがり、テーブルの上下に視線をさまよわせた。「ああ、おっしゃりたいことは分かりますとも。彼が私のクラスだったからじゃ。彼の誕生月の星図に、私がちょっとした間違いを犯したからじゃ」
「ああ、そうですな。ではエヘン、さっそく二つの議題に移り──」
「だが私だけが間違ったんじゃない。機械がやったのじゃ! 磁気の影響じゃよ。地上の電流じゃ。先日の夜、空飛ぶ円盤を見たものがおる。信頼できる目撃情報じゃ。考えて見られたかの?」
「はい、もうおしまい。さあ、本題に──」
「私はまだおしまいじゃないぞ。爺さんかも知れんし、病気かも知れんが、終わってはおらん。とんでもない&&ウーパ!」
そのぎらぎらした目に気付いて、議長は言った。「もし具合が悪いなら、マガフィー博士がきっと──」
フレッドは相変わらず一人がってにしゃべりつづけた後、ハッと気付いて、テーブルの書類を読み始めた。
***
「小さなチップに、何百万ビットの情報が詰まっているのだな」シャー(イラン国王)が言った。「光速で回答するのだな。次に何を考えるのか? ああ、ヘレン、私はコンピュータを早く見たくてたまらない」
「ええ、今すぐに──あら、あれは何かしら?」
細長いベンツが構内に入ってくると、群集がたちまち立ちふさがって侵入を阻んだ。窓という窓に怒りの顔がのぞき、防爆パネルに拳を叩きつけているようだった。
「人殺し! 子供殺しめ!」
「陛下、なぜこうなったのか分かりませんわ。これは──お詫びさせてください。セキュリティに問題があったのでしょう、ちょっとした漏れが──」
国王は肩をすくめた。「こんなことには慣れておる」
車がスピードを緩めてとまる合間に、ボディガードたちはジャケットの中を手さぐりした。「ファシズム撲滅!」という看板を持った学生が何事か古代の言葉で叫んでいる。国王は不快な顔をした。
「彼らは私を殺人で糾弾しておる──二チャンネルもあるカラーテレビを与えたのは、私だというのに! 共産主義的なアナーキストだけが、あんなひどい嘘を信じられるのだ。前に進め!」マイクに向かって叫んだ。「轢き殺せ!」
「お待ちください。そんなことはちょっと──」
「赤のアナーキストのニヒリストめが! 彼らは私が子供たちを殺したといっておる─そんなことはしておらん」
「ええもちろんです、ですが」
「あの子供と呼ばれる者たちは、法の下に処刑されたのだ。公正な裁判を経て──一〇歳を超えていたものも多いぞ!」
マイクに向かって怒鳴りつづけ、車は徐々に前進した。
***
FBIのレポートがやっと届くと、オスミスはお先に失礼といって田舎者の警官たちを残し、仕事に直行した。今は細かいことを気にしている場合ではない、すばやく大々的にやるのだ。大学通りの薬屋に寄り、コットンウールとライターの油数缶を買った。それからコンピュータ科学ビルに入った。
たくさんの人が同じ方向に急いでいるように見えた。一人二人看板を持っているものもいた。通りの彼方に、黒いリムジンが群集に取り囲まれ立ち往生していた。学生デモ? ちょうどいい。
だが近づいていくと、車が突然彼のほうに向かってきた。彼は逃げ惑ったが、はねられて倒れ、気を失う。


研究室だった部屋は、今やほとんど空っぽで、グレイの床材には青白い正方形や長方形が描かれていた。その一角に管理部門のオレンジのユニフォームを着た二人の男が、最後の大きなキャビネットを持ち上げようと頑張り、その下から最後の青じろい長方形が姿を現した。反対側の隅には、ダンがテーブルに座り、書類を二山に仕分けていた。フランクリンは行ったり来たりしながら、注意深く青白い部分を踏んでいた。とうとうしゃがみこんで、タバコに火をつけた。
彼らは研究室を引越しするのだ。 
ダンは角の折れた書類の山を片付けた。「うむ、おれたちは今すぐ何もかもやめるべきなのかもな。今やロデリックは安全だし&&」
「やめる? だが何も始まっていないぞ。安全ってどういう意味だ? もちろん安全だとも、青信号になった。そしてこれから前進すべきときだ──」
ダンは廃棄書類を別のシュートに捨てるように指示した。
***
一位の投票数はフォングより多かったのに二位の票数で負けたため、結局フォングの計画が緊急財務特別委員会を通ってしまい、敗れたターは弁護士を雇ってあらそう旨をフォングに告げた。
***
フォングはダンやベンと、もしターがいなければ否決されていたと話す。訴訟は致し方ない。
が、ダンはこの研究から手を引くことになったと告げた。4年間考えた結論だ。フォングが引きとめてもきかない。
***
オスミスは右手の義手を失い病院で目覚める。そっくりの名前の医師が二人いた。黒人、疫学専攻のデアス博士と、白人、心臓外科のドゥアース博士。ドゥアースは人工心臓の権威らしい。
***
警察署長ドビンが記者会見。被害者の手に持っていた本にフォングの指紋があったことを公表し、重要参考人として重点捜査する旨を発表。
***
オスミスは病室で記者会見の中継テレビを見る。被害者の持っていた本は「学習システム」という人工知性の本で、指紋のあったフォングが、事件当日大学にいたことも判明した。またフォングが書類を廃棄していたことも判明。空港にて拘束したという内容。フォングの写真がアップになった。

第二の書

ロデリックはロボットの肉体を得て、ハンク&インディカ夫妻の家に引き取られていた。ハンクは、ポンコツ機械のマニアで、「環境主義」者だったが、現実の環境には無頓着だった。インディカはそんな夫に嫌気がさし、不倫相手のバクスを家に入れ愚痴っていた。ロデリックをバクスに見せた後、二階に上がり、バクスと情事をする。一階に残ったロデリックはその様子を窺っていた。
***
インディカは階下で物音をきき、怯えていた。バクスは、ロボットが花瓶でも倒したのだろうといい、階下に降りる。ロデリックは猫のアニメを見ていた。面白いのでバクスも見始めた。インディカはこのロボットが嫌いで、こんなものを造るのに100万ドルもかかったと夫は言うの、二足三文で処分したいとバクスに愚痴る。ロデリックはいったんインディカに連れ出されるが、また戻ってきてテレビを覗きこんだ。バクスが、頭が邪魔で見えないからどいてくれというとどいた。
***
アボガドをだめにしたロデリックをインディカはしこたま殴り、頭部が凹んでいた。ハンクは修理するには宝くじを当てないといけない、このロボットをくれたオールブライトに会わせる顔がない、と言う。インディカは、安くで挨拶のできるロボットが売ってるのに、このロボットはおはよう一つ言えないじゃないと怒り、様々なポンコツを持ちこんではろくに修理もせず積み上げるハンクを、難詰しまくった。ハンクは、こういうものを自分で修理して使えるようにしてこそ、人は自分の住環境と調和して生きられるのだと説くが、効果はない。
と、ロデリックが「バブ、バブブブブ」と言った。
***
ロデリックはスペアルームで電源につながれ充電中だった。ハンクとインディカはテレビのジャック・クーストーの番組を見ていた。インディカは元バレリーナで、テレビのバレエを批評的に見ていた。ハンクは元世界環境問題の論客として健筆を振るっていたが、最近は先細り気味だった。
「昔みたい」
「一種のデジャヴュ-だな」
「そのとおりね」


ハンクはダンから電話をもらい、ウッド社にロデリックを引き渡してはどうだと言われる。ハンクは赤のペディキュアを塗っているインディカとロデリックの処遇について話した後、飛行場に向かう。ロデリックはインディカの爪を見て「赤。赤」、あるいは二人の言葉を真似て「ジス
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