SF百科図鑑 Charles Harness "The Paradox Men"


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April 22, 2005

Charles Harness "The Paradox Men"

プリングル100冊より、ハーネスの古典を。パラドックス人間

感想・粗筋2005.4.23


前半はつまらなくて、外れだと思ったが、途中から突然論理の飛躍が激しくなるとともに物語が加速し、一気にエンディングまで突っ走った。一言で言えば、「形而上アクション馬鹿SF」ということになる。
一見、論理的に緻密なように見えるが、破綻は多い、というか、ゆるい。
例えば(表面的筋書き通りならば)ムアーという男は最終的に超光速宇宙船で過去に遡って記憶を失ってアラーに変身し、過去の自分であるムアー(ザ・マインドに成りすましている)の手で追い込まれて超能力を発揮し「非アリストテレス的超人」に転生し、この宇宙での死後ネアンデルタール人に転生して人類の運命を変えるわけであるが、そもそもムアーがどの時点でこういう超人になったのか、よく分らない。超光速飛行によって、アリストテレス的存在空間を飛び出したことにより、それを超越した自己の時空連続体を認識したことを契機に、超人化したとでも考えればいいのだろうか(もともとその素養があった?)。また、超光速飛行をすれば主観的時間は短期間で経過するのだろうか? だから飯を食わなくても生きたまま記憶喪失だけで生還したのか。だからケイリスの死体は、生々しいまま落下地点で発見されたのか(そもそもなぜ死体をロケットに積んだの? 積んだ後もナイフが刺さったままで放置したの?)。ヘイズゴーント(もしそうなら)だけメガネザルに変わったのは何故? なぜ変わったの? 他にも腑に落ちないことや説明不足のところは山ほどある。また登場人物の行動も全然合理的ではなく、「なぜそうするのかなあ?」と疑問符のつくことだらけである。
いろいろ調べたところでは、この作者はヴァン=ヴォークトの俗称「ワイドスクリーン・バロック」の影響が強く、特に本作は、「非A」シリーズのオマージュに近い作品らしい。アリストテレス・非アリストテレスという議論が最後に出てくるが、これはそのまま非A概念そのままらしい。残念ながら非Aも武器店シリーズも未読なので判断はいたしかねる。(ヴォークトは読まねばならない作家だという認識があるのでそのうち読むつもりだが)
いずれにせよ、上記のように緻密さにおいてはかなりゆるゆるで、行動や筋立ても唐突で一見めちゃくちゃなのだが、それが逆にアクロバティックな論理の飛躍と破天荒なアクションの連続という抽象と具象の両レベルにおける振幅の大きさを生み異様な迫力をうむ。これが本作の特徴である。そういう意味であるタイプのSFの面白さを如実に伝える作品の典型といえる。完成度とは別次元のところで凄みを持っている、魅力的な作品である。
ところで本作のメインのネタ、ネアンデルタールのところで円環が開いて因果の軸が螺旋になってしまうのなら、T22号の部分も円環ではなくやはり螺旋ではないのか? 別の時空間断面要するにパラレルワールドから来たT22によって歴史が変化しアラーが超人化、更に遡ってネアンデルタールの歴史を変えた、ということか。このあたりの細かいところは勝手に解釈してね、要するに「非アリストテレス」では何でもありなんですよ、と肝心のところはうっちゃってしまうのが本作のスタイルであるわけだから、どっちでもいいのだろうが。
テーマ性 ★★★
奇想性  ★★★★
物語性  ★★★
一般性  ★
平均   2.75
文体   ★
意外な結末★★★★
感情移入力★★
主観評価 ★★★(30/50点)

<粗筋>

パラドックス・マン チャールズ・ハーネス

男は、自分が何者かまったくわからなかった。
そして、なぜ自分が死に物狂いでつめたく黒い水の中を進んでいるのかもわからなかった。
数ヤード前方の月明かりに照らされた水の中に巨大な叩きつぶされた発光物が入ってこようとしている理由もわからなかった。
頭が痛い。だが何も思いだせない。
突然光が差し込み、難破船を照らす。船上には奇妙な動物。
ここにずっといるわけにはいかない。左手に握ったものを確認し、男は遠い岸辺の灯り目指して進んでゆく&&。

第一章 心理学者に絞め縄を
アラーは心理学者シェイの家に強盗に入り、宝石を奪って窓から逃げ、ヘイヴン博士らの車に助けられる。
彼は完全に記憶喪失の状態で二人の教授に発見された。教授に知識を授けられ、初めは大学で宇宙物理学を教えていたが、ある日使い捨ての奴隷が葬られる納骨堂を肩に銃撃を食らいながらつき止めた。それ以来彼は、泥棒協会への入会を認められ、盗賊の訓練を受け、夜は盗賊稼業を行っている。盗んだ金で協会は奴隷を買い戻している。

第二章 女と眼鏡猿
アメリカ帝国の首相バーン・ヘイズゴーントが、情婦のケイリスと話している。ケイリスはヘイズゴーントの元ライバル、ケニコット・ムアから彼女を奪った。ケニコットはかつてヘイズゴーント首相当選時に太陽エネルギー利用法を発表してトップの座を奪ったことがあった。根に持ったヘイズゴーントはあるとき銃でケニコットの心臓を撃ったが、ケニコットの体は少し目を離すと消えていた。以来、盗賊が増えていた。
彼は肩に猿に似たペットを乗せていた。
そこへ、シェイから盗賊に夕べやられたとの連絡。

第三章 ザ・マインド
ヘイズゴーントはサーモンドらの決闘試合を見物する。サーモンドが相手を殺して勝つ。
***
ヘイズゴーントはケイリス、宇宙問題担当秘密秘書ゲインズ、サーモンド、シェイ、マイクロフィルム・マインドらと話していた。話題は、ムアのドライブのことから、ヘイズゴーントが難破した宇宙船から助けた外宇宙のこのペットのこと、太陽ステーションが送ってきたデータ、そして要注意人物としてアラーのことにまで及んだ。

第四章 襲撃
コリプス、ヘイヴン、アラーのいる部屋へ警察長官サーモンドが現れ、アラーを渡さなければミュータント全員を霊安所送りにすると脅す。

第五章 プロジェクション
サーモンドが「撃て」と部下に言い、コリプスは射殺され、ヘイヴンとアラーは床の秘密通路から逃げる。アラーは最寄の盗賊アジトに逃げろといわれ逃げる。外でも銃撃は始まっており、撃たれそうになるが、自分と同じ顔をした男の陽動作戦で助けてもらった。

第六章 帝国での逃走
アラーはケイリスの部屋に逃げ込む。ケイリスによると、ヘイヴンは逃げおおせたがミュータントは売られたらしい。ケイリスはこれから仮面舞踏会に行くと言った。
***
アラーはケイリスと仮面舞踏会に行くが、そこでケイリスが首相婦人と知り驚く。かれはホ-ルマーック博士と名乗る。ドナン上院議員、パーキンス氏に紹介される。
***
ドナンはふふ、と笑った。「わたしもそう思うな。パークは帝国の権力の八十パーセントを掌握しておる。哀れな連中には数ユニタの月給を払っておしまい──パークはほとんどただで自分という何千ユニタもの価値のある奴隷を手にいれたも同然だ」
投資家の口が引き締まった。「上院議員、誇張が過ぎますな。なぜ訴訟費用だけが&&」ぶつぶついいながら、歩み去った。
ドナンは愉快でたまらない顔だった。「あらゆるタイプの人間が集まりますぞ、教授。おや、面白い人がきました。モーターチェアに乗ったインペラトリクス(皇帝未亡人)のジュアナマリアが、東洋連邦の島津大使、トインビー派歴史学者のタルボットを両脇に従えている」
***
皇帝一家はパークの首相就任を拒否しようとして爆撃され、夫人だけが生き残ったものの車椅子生活だった。
ジュアナマリアは逃走したアラーのことを話題にした。この宮殿もサーモンドが厳重警備し、探しているらしい。
タルボットはアッシリアがあっという間に滅びた例、奴隷制が大国に動乱をもたらした例をあげ、アメリカ帝国もそうなるおそれがあると話し、島津大使も同様の言葉を残して立ち去った。
アラーはタルボットに盗賊協会のことを尋ねた。

第七章 群狼
タルボットは、盗賊協会といえばムアーを私はよく知っていたと話し、もうじき太陽のソラリオン基地を訪問するといった。
そこへサーモンドがアラーを見つけるためにマスクをとれといった。アラーは追い詰められ、サーモンドに斬られそうになるが、ケイリスに助けられる。ケイリスはアラーを見覚えがあるようだった。
アラーはゴミシュートから逃げ、宇宙船T22のありかに行く。アラーは何年も前この宇宙船を見たことがある気がした。

第八章 拷問での発見
アラーはシェイにつかまる。シェイの部下の電話内容でケイリスが逃げたことがわかる。
***
アラーは無重力空間で目覚め、近くの円柱に体が入ることを見つけそこに入る。
***
アラーは再び目覚める。シェイに、「おれを解放しないと協会がケイリスを殺すぞ」と脅す。シェイは、「さっき部屋にいた」ととりあわない。だが先ほどと同じ電話がかかってきて、シェイは青ざめる。そしてアラーは解放され、盗賊協会につかまった。(アラーは、過去へ時間移動して因果律を書き換えたらしい)

第九章 野生の能力
アラーは協会の秘密を売って釈放された容疑で死刑宣告され10分の弁解時間を与えられる。アラーは難破して発見された外宇宙船から、今ゴーントが飼っている動物と一緒に発見された男らしい。死んでいると発表されたが実際には蘇生した。外宇宙の秘密を握っているため、研究材料としてムアーの指示により協会に雇用されたが、今回の件でスパイ疑惑が強まり利用価値もなくなったという。アラーは視覚の知覚過程を反転し脳内の映像を投射する能力を説明するが、受けいれられず、実演してみせ、暗闇を投射し協会の連中を騙して廊下に逃げる。ケイリスが現れ一緒に車で逃げる。ケイリスによると帝国と協会の両方が市内で彼を追いかけているので、偽IDで月に逃げるしかないという。偽IDは協会のシンパであるザ・マイクロフィルム・マインドがゴーントを騙して「宇宙物理学者フィリップ・エイムス」を月へ調査に派遣する許可を得ていた。ザ・マインドは実際に彼が月で何かを発見することも期待しているらしい。アラーはケイリスと別れ月に行く。

第一〇章 尋問
自室に帰ったケイリスは尋問を受ける。嘘発見器をつながれ、アラーをいつ知ったかときかれ、昨日まで知らなかったと答えると嘘表示になった。どこかで会ったことがあるのだろうか? 自分でも驚いた。情報を流したかときかれ、次第にマイクロフィルム・マインドの名前が近づいてい来る。が、ちょうどその前に嘘発見薬の効力が切れた。
だがシェイは尋問を続けるといい、首相も「この女はお前のものだ」と同意した。

第一一章 ケイリス帰還
シェイはケイリスをベッドに縛りつけ、苦痛を与えながら質問を続ける装置をセットする。
***
アラーは月面の部屋で目覚める。いまはいつ? 何時? ここへ来てから数週間の記憶がない。スタープレートの調査は終了したのだろうか。
彼は月面都市に外出し、ケーリスと会う。彼女はシェイに売られ、拷問死したと思われ霊安所送りになった後、変装した協会メンバーに助けられ数週間の治療で生き返り、ヘイヴンと共にここへ来た。帝国はアラーを追いまわしているし、月面にも向かっているが、しばらくは安全だろうという。
アラーはケイリスに、ムアーとザ・マインドが同一人でないかとの推理を話す。ザ・マインドはサーカス芸人を事故で辞めてから強力な記憶力を発揮し、国立資料館で働いているところを首相に見出された人物だが、はじめから協会の回し者であり、体格も似ており、ムアー失踪時期との符合からも同一人でないか。ケイリスは明確に否定できなかった。
アラーはまずスタープレートの問題を解決してから、研究室のヘイヴンに会うことにした。

第一二章 アイデンティティ調査
二人はギャラクトリウムに行き、ゲインズ=協会の裁判官と会う。彼はアラーが死刑の場から脱出したことで超人性を証明し、協会の資格を回復したと語った。
かれらは星図盤=スタープレートを操作し、銀河、宇宙のちょうかん図を見る。アラーはこれを見て、時間1年のマイナス1平方根がユークリッド空間1光年になることに基づいて、時間と空間の互換性を理解したとゲインズに語った。その帰結については、後でヘイヴンにいくつか確認した上で教えよう、と。そこへ、帝国警察の警官が来てアラーを呼んだ。アラーは偽の身元を回答した上、ほかの二人の名は真実を告げ、三人はギャラクトリウムを去る。
***
研究室に戻り、ヘイヴンと会う。ヘイヴンは語る。アラーがエクスタシー状態に達したとき、第三次元(深さ)と時間が逆転し、自分の肉体を連続する円柱として認識した上、異なる時間に戻る超能力があると思われること。
ゲインズは、アラーの乗っていた船で発見された日誌を見せる。それは数日後の日付だった。
「T22号 日誌
2177年7月21日
これが私の最後の記録になるだろう。私には行くべき場所と時間がわかっているから。いうべきことはもうほとんどない。おそらく最後に生き残った人間として、私は今更何を言う気にもなれない。数分内にT22は光速を超える。もう少し愉快な状況ならば仲間たちに起こった信じ難い進化の過程に私も従うことに、非常な興味を駆られるところなのだが」
それだけだった。後は白紙。
そしてその日誌の筆跡は、「間違いなく、ケニコット・ムアーのものだ」と、ゲインズは語った。

第一三章 星ぼしからの客
しかし、アラー自身がムアーである、あるいはザ・マインドがムアーであるという考えはどちらも可能性が低いということで二人から却下された。なら、おれは誰だ?
T-22という船名は、「トインビー22番目の文明」つまり西洋文明が生き残るには宇宙の外に希望を求めるしかないという意味を込めた船名だった。
更に、星図プレートでアラーは超光速で近づいてくる巨大な天体があることを発見していた。それは超光速だからこそ質量が大きく観測されているが減速すれば小さな質量になるだろう。それはまさしく七月二一日に地球に着陸する見込みだった。
五年前に到着した難破船と、その五年後の五月二一日に到着する天体。どう説明すればよいのだろう。
とりあえず、少し仮眠をとることにした。

第一四章 月脱出
目覚めたアラーはケイリスが両腕を失っているのに気付いた。
彼らは出発しようとするが、一足はやく帝国警察が来ていて、ゲインズとヘイヴンは射殺された。アラーはケイリスをかばいながら降参だと叫びつつ、映像投射能力を使おうとするがうまくいかない。逮捕寸前に帝国警官に「アラー一派を船で逃げるに任せろ」という司令が入り、二人は逮捕を免れた。ゲインズとヘイヴンの遺体を宇宙船に積んだ。
アラーは、「光速を超えた宇宙船は過去へ旅する。したがって、数日後に出発する宇宙船は光速を超えると過去へ行き、五年前のこの地球に帰還した。時間を遡りつつ遠ざかっているから近づいているように見えるだけである。要するに二つの宇宙船はいずれもT22である」という推理をケイリスに語る。そして、自分はムアーではないが自分の中にムアーの一部がある気がすると語る。
ケイリスは一緒に地球に戻ろうというが、アラーは、アンドリュース船長が待機するフォボス号で太陽へ行き、自分の正体を探る道を選ぶ。
ケイリスは二度と生きてアラーと会えないことを知っていた。

第一五章 ハットスポットの狂気
アラーはタルボットになりすまして、フォボス号で太陽に向かい、歴史家なので宇宙物理学には疎いふりをしながら、太陽についてアンドリュースにきいた。彼らはソラリオンを活用して黒点の上に27の基地を築いていたが現在残っているのは16。アンドリュースは、当分会えないかもしれないが私と連絡をとりたくなったらムアーの外見の男を探せと言った。

第一六章 エスキモーと太陽人
船はソラリオン・ナインに着き、アラーは交代要員のいる部屋に入り、自己紹介した。11人中、マイルズという次期ステーション長がメンバーを紹介し、10人がインディアン、一人がエスキモーだと言い、チェスをしないかといった。そしてアラーにサイコロを振らせた。3と4で7だった。ソラリオンは一二ヶ月に一つの割合で滅びる。2ヶ月交代の太陽人が死ぬ確率は六分の一だ。この狂った太陽人たちにとって七の目は六のうちの一つの事故を意味していた。彼らは真っ青になって外に出ていった。だいぶたってからアラーは後を追った。

第一七章 太陽近郊の再会
ケイリスは死体保管所に行き、管理人の奴隷に「指名手配の自分を当局に通報すれば奴隷から解放される、その代わり部屋の中を30秒だけ見せてくれ」と頼み、中に入って見た。「未確認、身元引き受けなし 2172年7月21日 ウィーリング近郊 オハイオ川より 帝国河川警察が回収」と書いてある。キムだろうか? 中を見る。キムではない。女だった。両腕がない。心臓にナイフ。しかもそれは、彼女自身が腿に備えているのと同じナイフだった。
警官がやってきた。
***
タラップに四人の警備員がいた。エスキモーの心理学者とはシェイのことだった。気付かれていないだろうか? アラーはタルボットと名乗り、催眠術でシェイをやり過ごして外に出ようとした。シェイは「止まれ!」と叫んだ。万事休すか? だが、「その男に手を出すな! 彼は違う」とシェイは叫んだ。何とか成功したらしい。
***
アラーはシェイと太陽上の防衛機制のための狂気について話す。シェイはここで唯一狂っているのは心理学者かもしれないといい、アラーに何枚ものスライドを見せる。それからロールシャッハテスト。一枚目の絵は正常ならバレリーナか子供か犬に、狂っていればタランチュラや悪魔の顔に見えるらしい。アラーはそれを映像投射能力で笑う骸骨に変えた。「どちらかというと二人の踊り子に見えますな」とアラーは言った。シェイはそれを見てひきつっていた。そして次のものを無言で見せた。「二本の樹あるいは羽根あるいは川」と答え「狂人は何に見えるんです?」ときくと、シェイは死んだように怯えてしばらく黙っていたが、「二本の白い腕」と答えた。
アラーはこっそり部屋を抜け出したが、シェイは動かなかった。途中でマイルズやフロレスがアラーに気付かず何か議論していた。彼らは狂ったまま帰るよりもここで死ぬことを選ぶだろう。
シェイはこの新しい狂気にどう折り合いをつけるつもりだろうとアラーは思った。

第一八章 決闘は終わった
数時間後胸騒ぎがしてアラーは目覚めた。外には誰もいなかった。マイルズらは死を決意し、直ちにステーションの維持業務を止めることにしたらしい。さっきの議論の意味がやっとわかった。
アラーはシェイの部屋に行った。発狂したシェイは首を吊って死んでいた。
サーモンドがいた。両脇の警備員が銃を向けた。サーモンドは自分だけ立ち去ろうとした。
アラーは、ここから逃げるには自分の助けがいること、ここにこのままいたら太陽に飲まれて死ぬことを指摘し、サーモンドを説得した。そしてシェイのナイフをもらった。
出しなに、なぜおれの居場所がわかったかきくと、ザ・マインドからきいたと答えた。理解に苦しむ行動だ。助けたり追い詰めたり、やつは一体何を考えているのだ?
彼らはコントロール室に向かった。
***
一時間後彼らは出てきた。すると、サーモンドはいきなり「死ね」と叫び、アラーを剣で襲ってきた。アラーは肺を刺された。だが、極限状態になると彼は電気を起こすことができるのだ。アラーは精一杯電気を溜めてサーモンドを感電させて倒した。それからコントロール室に戻って調べると、基地は徐々に黒点の中に沈みつつあった。

第一九章 死が迫る
ザ・マインド、ケイリス、首相、太陽で死んだ二人を除く全閣僚、皇帝未亡人が集まっていた。そしてザ・マインドが閣僚たちから以下の質問に答えられなければ死刑であるという質問状を受け取っていた。その質問とは
1)シェイとサーモンドはアラーを殺したか
2)アラーの問題が未決のままでフィニス計画はうまく行くか
3)ケニコット・ムアーは生きているか
ザ・マインドの答えは
1)否定
2)アラーの生死とは関係ない要素にかかるが、それはもうじき明らかになる
だった。
アラーの生死については、アリストテレス的生死二分論では判断できない。そもそもアラーはアリストテレス的意味ではこの宇宙に存在しない、その外側の存在であるため、非アリストテレス的意味においてならば生きている。
最後に3)については、一人の人間とは言えない。非アリストテレス的意味において、ムアーは時間軸に沿って可動な存在である。
「同時に二箇所で存在しうるということね?」とジュアナマリア。
「おおいにありうる」
ここにいるかという問いには、答えられない、非アリストテレス的意味ではいるとしても姿を表さない、と答えた。
「あんたがケニコット・ムアーではないと断言できるかね?」エルドリッジがきいた。
***
アラーはコントロール室にいた。基地は黒点に沈んでいったがある一点で上昇を始めた。U型磁場のせいだろう。うまくいけば爆発を起こして基地ごと宇宙空間に飛びだす。もっとも肺の傷で長くは生きられないだろうし、救援も望めないが。ところが重力がどんどん上昇し耐えられない体重にまで達した。壊れたスイッチが体にめり込み心臓に刺さる。そして爆発! アラーは死んだ。彼は自分が誰か、自分の運命がどこにあるかを知っていた。

第二〇章 ハルマゲドン
ザ・マインドは、自分が顔面を焼いてなり済ましたムアーであることを認める。だが一方、東洋連邦が各戦争を始めたと告げる。閣僚への無線連絡で、事実だと判明した。
彼は、首相に以下の事実を告げた。
1)五年前に来た宇宙船はもうすぐ発射されるT22であり、乗っているのは多分ヘイズゴーント(=アラー)であること。
2)自分たちはアラーの超常能力にその異常な脈拍数の上がり方で気付き、わざと生死の瀬戸際に追いこんでその能力を引き出してやったこと。彼はいわば狼に混じった人間のような、人類より上位の存在であったこと。
3)太陽で死ぬ間際にアラーは神に順ずる存在に高まったこと。だが通常の意味では死んだこと。
アラーが死んだときいてケイリスは泣きだした。
そこへ泡を食ったエルドリッチが飛びこんできた。東洋連邦が大量の各ミサイルを発射したというのだ。あと数分でここは廃墟になる。

第二一章 永遠の循環
ザ・マインド=ムアーとヘイズゴーントは、自分こそアラーだとT22へ先を争う。ヘイズゴーントは猿動物とケイリスを担いでエレベーターに走るが、抵抗され、動物を蹴飛ばし、ケイリスとエレベーターに乗るが、ケイリスは体を投げ出してドアをふさぎ阻止しようとする際、自分の持っていたナイフが心臓に刺さって死ぬ。そこへムアーが乗りこんでエレベーターは動き出す。あとに残された皇帝未亡人は猿動物を安楽死させ、どっちがアラーになるのだろうと考える。ザ・マインドがアラーになる素質があるのなら、ヘイズゴーントのなれのはてはこの動物ということだ。私を殺そうと願いつづけていた男が今私の手で殺されたのだ&&。まもなく核で建物は灰と化した。
***
鹿狩り中のネアンデルタール人の群のリーダーとして実体化したムアー=アラーは、自分の前頭葉に突如芽生えた知性の渦により、「人類みな兄弟」と叫び、群に「戦いよりも平和」を呼びかける。これによって歴史の因果律が全く変わる(将来、クロマニヨン人に滅ぼされずにすむことになる)ことなど知りもせず。かくしてトインビーの第二二文明は誕生したのだ。
「人類みな兄弟!」
~完~

silvering at 04:37 │Comments(8)TrackBack(0)読書

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この記事へのコメント

1. Posted by SLG   April 22, 2005 19:27
体調悪いが少し読んだ。あんまおもんない。
前のワトスンがよ過ぎただけに、比べると余計に。チョと古くさい。
2. Posted by SLG   April 23, 2005 03:40
なんかつまらんわ。50ページぐらい読んだけど。
ぐぐってみたら絶賛してる人はいるんだが、なんか古臭い設定だよなあ&&
3. Posted by slgf   April 23, 2005 14:41
すんげーーーつまらない。ソラリオン? 太陽に基地? ふざけんな。よくもまあそんな中学生レベルのネタを&&。話動かないし。説明だらだら長いし。
おまけ本が古くて黴臭いので、ただでさえ風邪なのに顔を近づけると猛烈な咳と鼻水が出て&&。
だめじゃん、古い。本、内容ともに。
4. Posted by slg   April 23, 2005 15:06
プロットや行動が恐ろしく不自然。何でこれがそんなに評判なの? 私の感覚がおかしいのかなあ?
このアラーっていう記憶喪失の男は多分死んだと思われていたムアーっていう男と同一人物なんじゃないの? T22っていう宇宙船がなんなのかはまだよく解らんけど。
5. Posted by slg   April 23, 2005 16:31
時間移動と映像投射能力を発揮し始めてから面白くなってきた。
6. Posted by SLG   April 23, 2005 22:31
ふーん、超光速でタイムマシンになる宇宙船っていうことか。ついでに主人公も極限状況で時間と空間の一次元を反転させるらしい。で、その一緒に乗ってた猿みたいな動物はエイリアンかな? 
後40ページぐらいで読み終わる。
7. Posted by SLG   April 23, 2005 22:33
しかし、ストーリー展開が変なんだよなあ、これ、わざとやってんのか? 都合よく「解放していい」という指令が下るし、何これ? ザ・マインドの差金?
8. Posted by slg   May 05, 2005 04:41
アイデア   ★★★
ストーリー  ★★
キャラクター ★
文体     ★★
主張     ★
合計     ★1/2(18/50点)