SF百科図鑑 インターゾーン1999年3月号


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April 14, 2005

Eric Brown "Hunting the Slarque"

スラーク狩り英国SF作家協会賞短編賞受賞作。インターゾーン1999年3月号収録。題名はルイス・キャロルの詩「スナーク狩り」のもじりでしょう。
正統派の異星生物学SFでした。謎めいた発端から、タルタロスという、太陽の超新星化による滅亡を間近に控えた惑星で、滅亡した謎の知的先住種族の生き残り探訪の旅へと、話はミステリアスに進む。そして、(ありがちなオチではあるけど)驚きの結末へ&&。もろ、70年代にポール・アンダースンが相次いで発表してはヒューゴー賞を受賞していたタイプの話で、ちょっと懐かしかった。
死んだ人間を蘇生する技術、赤ん坊を冷凍して成長凍結する技術などを前提の話なので、悲劇的結末でも未来に希望があるのがいい。超新星化ではかなく消えるタルタロスは悲しくも美しく、SF的想像力を刺激する。
エリック・ブラウン、もともとはサイバーパンク風の短編を書いていた記憶があるのだが、「冬の子供たち」といい本作といい、むしろ本領は、こういった古いタイプのアイデアSFにあるのではないかしら。来年ぐらいに古沢氏が初期短編集を訳す予定があるようなので、剋目して待とう。
テーマ性 ★★★
奇想性  ★★★
物語性  ★★★
一般性  ★
平均   2.5
文体   ★★★
意外な結末★★★
感情移入力★★★
主観評価 ★★★(30/50点)

<要約メモ>
スラーク狩り エリック・ブラウン

ハンターは目を開け、頭上にかすかに水晶ドームを認めた。その背後に、王宮の天井の軒縁のごとく空を覆う千もの虹が見えた。その虹の下を支えるように、一マイルもの木々がそびえ立ち、その枝の中に多様なデザインの家が設置されていた。巨大な昆虫(よく見ると、ヴェスプラ・ヴァルガリス・デネビアンであることがハンターには分かった)が木々のあいだを行き来していた。(百万驚異世界(ワールド・オブ・ア・ミリオン・ワンダーズ))のデネブ第一七星にいるらしい。
おれがミリオンに? おれは生きてるのか? 奇跡だった。それとも夢? おれは死にかけてるのか、それとも意識をなくす間際の悪あがきの中で起こる、ちょっとしたたちの悪い冗談だろうか? この幻覚はすぐに消えて、完全な無にとって代わるのか? そう考えると恐ろしい。恐れることはないと言い聞かせても。死。自分が消滅するという恐るべき事実を理解できる意識を持つことはないだろう。
だがともかく、そうなっている。叫ぼうとした。
口が動かない。それどころか、体のいかなる部分も動かないと分かった。それをいうなら、何も感覚がなかった。頭を動かそうとしてみる。目を動かそうとしてみる。だが相変わらず、ドーム越しに虹色の空を見ていた。
***
まもなく、音が聞こえた、はっきりと。死にかけた意識とは思えない、やはり生きているのか? だがあんな過酷な戦闘で生き残ったとは思えない。
一度意識を失い夢に落ち、再び意識を取り戻した、音楽と水音が聞こえる。そして思いだした、おれはタルタロス主星にいた。太陽の超新星化間近と死刑宣告された惑星。おれは動物の生態系を記録しに妻のサムと来たのだ。サムは妊娠していた。銀河動物学センターに登録されていない珍しい動物を撮影するために来たのだった。ところがやつらに襲われ、妻の悲鳴、そしておれもやられ、てっきり死んだと思った&&。
おれは体を失ったのか。脳と目しか生きていないようだ。やつらに生体実験されたのか? 妻はどうなった? 激しい後悔の痛みに胸が張り裂かれる&&。
***
やがて、男が現れる。アルバレスというその男は横にいるもう一人の男、フィッシャー博士と話す。それから、おれに何かの画面を見せる。そこには奇妙な怪物のホログラムが映っている。アルバレスはいう、君はここへきたときよりは快方に向かっていると。そしておれは理解した、その怪物こそ今のおれの姿なのだと&&。
彼は再び眠る。
***
再び彼は目覚める。ドームが少し右に回転移動している。その上にガリオン船。
首が動くようになったので自分の体を見る。裸で再生ポッドに入っていた。いったいなぜ、おれを再生させたのか? 学者としてそれなりの名声はあるにせよ、銀河全体からすれば塵に等しい。自分が生き返らされた理由を考えると不安になった。
***
再び目を開ける。今度は大部屋のベッドに寝ていた。頭上の船の上で働く人々がこちらを見て手を振った。手を振り返す。体が動くようになっている。
アルバレスからフルーツジュースをもらう。あの事故から3年が経っているらしい。妻のサムが野獣を殺し、ハンターの残骸をかき集めて保存し、再生財団を回り、巨額の借金をして彼を再生させた。そのつけを払うため彼女は財団と労働契約をした。むろん彼が生きかえった後、彼が働くことも含めて。
超新星化の予報は修正され、もう1年ほどは大丈夫らしい。
妻は先にタルタロスに行き、準備作業中だった。
アルバレスが求めている動物標本とは、スラークだった。
***
スラークとは、タルタロスをかつて支配していた知的生物だ。人類の16世紀程度のレベルの文明を築いていた。ところが数百年前、突如滅んだ。一説によると、その一変種が少数生き残っているらしいが、確証はない。
アルバレスは、「君を襲った動物を覚えているかね?」ときいた。ハンターは覚えていなかった。
アルバレスは、妻がたまたま撮っていたフィルムを見せた。突然、叢からサソリの尾のようなものを振りながら面妖な動物がハンターに襲いかかる様子が五秒間ほど映っていた。その後、妻が銃撃したため映像は切れていた。
アルバレスはいう、これこそ退化した雌のスラークではないかね? と。
「そんなばかな。ありえない」
「しかし、ここに映っている動物は、解剖学的に、われわれの記録に残っているスラークのそれと酷似しているのだ。この星に、他に似た動物がいるかね?」
ハンターの知る限り、そんな動物はいなかった。
「それに加えて、君の奥さんがこんなレポートを送ってきた。われわれも数日中に出発する。これを聴いておきたまえ」
アルバレスはイヤホンをベッド脇のテーブルに置いて出ていった。
ハンターはイヤホンを耳に入れた。妻の映像が目の前に現れ、報告を始める&&。
***
タルタロス暦一七二〇年聖ジェローム三三月メリー日、アポリネール町
銀河暦でいうと&&よく分からないわ。
アルバレス、夫が意識を取り戻したらこれを聴かせてください。
ハンター、私は今、運河を見下ろすハルベック・ハウス・ホテルにいます。
三日前まで一ヶ月ほど、私は調査旅行に行っていました。最初は、10年前何かをカメラで撮影したという映画監督と、スラークを見たというウラニウム掘りにインタビューする予定だったんだけど、映画監督はとっくにタルタロスを去っていたし、ウラニウム掘りは亡くなっていた。
超新星化による破滅が近づいているせいか、町は退廃して活気がありません。
国立歴史博物館を訪ねたけど、館長が不在だったので取材申込みだけをしておきました。
鳥型ヘリは既に廃用になっています。ガブリエラ財団が施設を売り払って撤退しました。新しい所有者はボードレールに本部を築いています。最近では南部の陸地に興味を持つ学者はほとんどいないから、無理もありません。せいぜい、スラーキストと呼ばれるカルト信者ぐらいです。かれらは生贄まで捧げるらしいわ。どういう生贄かはきかないで。
私はバイソン・トラックとガードマン二人を雇って、内陸に行きました。そして、あの事故の現場に行った。何で今更そんなところにわざわざ、と思ってるでしょうけど、実はあそこに仕掛けたまま放置していたカメラが何台かあったのよ。もしかしたらその後スラークが映っていたかもと思って。
でも、スラークは映っていなかった。
次の日、私は事故現場からサンプルを採取し、カメラを再設置して、映像が自動的にアポリネールの基地に転送されるようにしておいた。
それから、1日おきに周辺のジャングルへ探査に行っては戻る、ということを繰り返した。その作業を繰り返し、かれこれ200平方キロメートルの範囲は探査し尽くしたと思うわ。でもスラークは見つからず。
私たちは1ヶ月足らずで戻ってきました。ホテルに着くと、博物館長のダーニアから取材に応じるというメッセージ。早速会いに行きました。私は、あなたを襲ったけものがスラークに似ているという噂があることを話しました。カルト信者と思われないよう、「私は信じませんけど」と断ったけど。そしたら館長は、自分もスラークがいると信じているといいました。そしてロジャースとコーデイという宇宙飛行士が遭難してこの星の南陸に不時着した話をしました。二人とも死んだと思われていたけど、ロジャースは生還し、スラーク生存説の提唱者であるダーニアに会いに来て、スラークと話したと言った。よほど恐ろしい経験だったのか、それ以上詳しい話はなかったらしいけど。その後出家して、バラバスの教会にいるらしいというので、私はこのロジャースに会いに行った。
教会の入り口にいた僧侶に案内してもらい、出てきたロジャースは、手脚を自ら切断した赤子のような姿で車椅子に固定されて運ばれてきた。 
私は事故のことを話し、スラークのことをきいたわ。彼は思いだしたくなさそうだったけど、話してくれた。彼はコーデイと内陸に不時着し、周囲を探索しているとき、岩の上によつんばいになったスラークを見たの。船に戻ってコーデイに話すと、コーデイは「知ってるよ、おれはもう三日、そいつらと交信している」といった。テレパシーで話しかけてくるということね。今ではスラークは二人しかいないらしい。生存に不可欠だった生物が死に耐えたため、衰退したんですって。彼はしばらくコーデイを避けていたけど、ある日コーデイがやってきて「やつらが僕らのうちどちらかを求めているよ」と言った。彼はコーデイを叩きだした。翌日またコーデイがやってきて、船の倉庫に連れていき、サスペンションユニットを開けた。地球で処刑された捕虜の死体が入っていた。コーデイは彼を見て、「こいつかきみか、どっちかだよ」と言った。彼はそのサスペンションユニットを蓋の開いたまま、表に出して置いた。スラークがいつでもとり出せるように。
彼はコーデイに逃げようと言ったが、コーデイは残ると言い張ったので、仕方なく一人で逃げ出した。町に出るとすぐに教会に入り、生還したことを感謝した。
私は彼から宇宙船の落ちた場所をきき、地図に印をつけた。それが昨日。
そして、牛車と物資を手配し、娘のアラベラも連れて、宇宙船の落ちた地点に行く予定。途中に発信器を落として行くから、後を追うのは簡単よ。
愛してるわ、ハンター。じゃあ元気で。
***
ハンター、アルバレス、フィッシャー、運転手兼ガードマンたちはヘルベック・ハウスにいた。数日前に着いたのだ。太陽が不穏な動きをしたために、避難民が殺到し、町は更に寂れていた。
ホテルの支配人に娘のことをきいたが、サムは一人で、娘など連れていなかったらしい。どういうことだろう。
アルバレスは昨日、教会に行ったらしい。だが、僧侶たちは皆手脚を切断して死にかけており、ロジャースは生きていたものの何ら新しい情報は引きだせなかった。
ハンターたちは明日より墜落現場に向かってサムを追う。現地まではバイソン・トラックで2週間ぐらいかかるだろう。
ハンターは胸の発作を起こし、フィッシャーに注射をしてもらった。急な再生措置を施したので、小さな不具合があるらしい。この件が終わったらきちんとした手術で治したほうがいいと言う。
ハンターは暇ごいをし、自室に下がった。
***
彼らは出発した。7日目に、あの事故の現場の空き地に着いた。当時と何も変わっていなかった。サムからのメッセージはなかった。数時間休憩して、食事をとった。それからまた出発。次第に登り坂になり、ジャングルは後退していった。岩などの障害物をよけて進んだ。草の生えた大地の向こうに海があり、その奥に爆発間近の巨大な太陽があった。6日目にして旅は終わりに近づいていた。時々、あの胸の痛みがぶり返したので、フィッシャーに鎮痛剤を注射してもらった。
***
到着の前夜、ハンターはサムの夢を見た。目覚めると、車は止まっていた。車の2階の座席に上がってみると、他のメンバーは起きていた。墜落地点の谷間の雪は気温の上昇で溶け、宇宙船の周りには草と苔が生い茂っていた。宇宙船の入り口のタラップの前に、サムのトラックが止まっていた。ハンターは真っ先に宇宙船の中に入ったが、誰もいなかった。サムのバンダナが落ちていて、その中にイヤホンが入っていた。他のメンバーが追いついたとき、ハンターはイヤホンを耳にいれてサムのメッセージを聴いているところだった。
***
一七二〇年聖ベーデ月26日 ルカ日 内陸のどこか
これから定期的に記録をつけるようにします。
出発して四日目にフレアがあって、パニックになったけど、大事ではなかった。今日はもう休みます。
(中略)
聖キプロス月 日付不明 コーデイの谷
この一〇日のあいだにいろいろなことがありました。右往左往した挙句、道が分からなくなって、気がついたらトラックが落下してしまった。目が覚めたときトラックが横倒しで、体中を骨折していて動けなかった。すぐに気を失ったわ。
次に目が覚めたとき、トラックはまっすぐになっていて、誰かが運転していた。私は通路に横になって寝ていた。
運転席の男はコーデイだった。
コーデイは私に注射をうち、宇宙船の前に車をつけると、宇宙船の中の再生ポッドに私を運んだ。私の傷はそれでだいぶ治癒したわ。

同月16日 マーク日 コーデイの谷。
コーデイから話を聞いたわ。コーデイは、今でもスラークと交信している。30年前、捕虜の体を捧げたおかげで、彼らに生かしてもらい、時々食料ももらえるらしい。私を見つけたのもスラークで、スラークにテレパシーで指示されて私を見つけたらしい。
私がここへ来た目的、つまりスラークを助けるということをスラークが私の心を読んで知っているはずなので、そのことをコーデイにいうと、コーデイはスラークと交信して、叫び声をあげた。何でもスラークは、ここで死ぬ気らしい。自分たちはタルタロスに所属しているから、ここから出る気はない。太陽と一緒に滅びると。そしてコーデイももう今更人間と暮らすことはできないし、タルタロスに所属しているから、一緒に死ぬと言い張った。かれはもう70歳ぐらいの顔をしていたわ、肉体はその半分ぐらいの年に見えたけど。
***
私は万が一に備え、自分のトラックに戻って鍵をかけ、武装して寝た。
でも、コーデイは夜の間にロックを開けて入っていたわ。きっとスラークを通じて私の心を読んで、開け方を知ったのね。
大変なことになったわ。
私は2年半前、アラベラを生んだけど、すぐに「成長保留コンテナ」にいれておいたの。あなたが生き返ったら、コンテナから出して、一緒に育てようと思っていた。
私は、アラベラの入ったコンテナを持ち歩いて、探検の数々を見せてあげた。
でも、そのコンテナを、コーデイに盗まれたらしいの。
そして、コーデイの車がなくなっていた。隣の谷に向かう方向に轍がついていたわ。きっとスラークに捧げるつもりよ。
ごめんなさい、あなた。私は今からコーデイを追っていきます。絶対にアラベラをとり返す。
許して、お願い、許して&&。
***
ハンターは、アルバレスらとともにトラックを出し、隣の谷へ向かった。
コーデイとサムの車はあったが、誰もいなかった。
そこへ、コーデイの叫び声が聞こえた。「ハンター、前へ出ろ!」
「何のつもりだ、コーデイ? サムと娘をどうした?」
「スラークがお前を欲しがっている。自分たちのものを返せと言っている」
ハンターはアルバレスを見た。
「信じて欲しい」アルバレスが言った。「スラークを釣るには、他に手がなかったんだ&&」
「どういう意味だ? なぜおれなんだ? やつらは何が欲しいんだ?」
「三年前、スラークが君を襲ったとき、君の体に胎児を生みつけた。スラークが胎児を育てるのに使っていた動物が滅びて以来、スラークは子供を殖やせずに、衰退の一途をたどっていた。そこへ植民に来た人間が、代用になることが分かったとき、スラークは人間を使い始めたんだ。サムが君の死体を冷凍保存したとき、当然君の体内のスラークの胎児も冷凍された。君を再生したとき、わしはそれに気付いた。いったん胎児を出してみたがだいぶ弱っていたし、外では長生きしないことが分かったので、やむを得ず君の体に戻したんだ。これは取引の一環だ。君が生きかえるのと引き換えに、君がわれわれをスラークのところへ連れて行くと言う&&」
そのとき、ハンターの胸が痛みだした。何かが中で動いている。ハンターはフィッシャーに鎮痛剤をうってもらった。
コーデイが言う。「前に出るんだ、ハンター! これは取引だ、スラークの子供と引き換えに、サムと娘を助けてやる」
ハンターは前に出る。
アルバレスが言う。「そこで止まれ、ハンター。スラークが来るのを待つんだ。われわれの取引を忘れるな」
胸の痛みは耐えがたいほどになってきた。剃刀で切り裂かれるような&&。
彼は絶叫して、前によろめき出た。
「ハンター!」とアルバレス。
彼は振りかえり、アルバレスがレーザー銃を向けているのを見た。彼はとっさに伏せ、レーザーは外れた。
と、崖の上からレーザーが数回発射され、一発がアルバレスに命中し、アルバレスは即死した。他のメンバーもちりぢりに逃げた。フィッシャーだけがその場に残っていた。
ハンターは崖の上に駆け上がった。そこに2人のスラークがいた。人間より大きく、銀灰色の体で、猫背で、肉食。やつらは、ハンターに近づいてきた。
「サム!」ハンターは叫んだ。
意識が薄れる直前、妻が飛びだしてスラークの前を遮るのが見えた。その後からコーデイが現れた。
ハンターはサムが来る前に倒れた。サムはハンターを抱きしめた。見上げると、妻の顔の背後に膨張した不気味な太陽が光っていた。
「サム?」ハンターは弱弱しく言った。「アラベラは&&?」
サムは泣きながら、大丈夫と言うように微笑んだ。その後ろに、スラークの巨大な頭が近づいてきた。自分の顔をサムの顔に近づけようとしたが、もはや意識が遠のきつつあった。突然、腹部の筋肉が弛緩し、エイリアンの子が外に出ようとしてもがくのを感じた。
ハンターは断末魔の叫びをあげ、絶命した。
***
銀河歴二三二一〇年五月一日、タルタロス主星周回中の(哀れみの天使)号にて
最後のまとめとして、このメッセージを記録します。
フィッシャーは全員の遺体を回収して保存しました。ハンター、あなたも含めて、全員が確実に蘇生できる、と彼は言っています。でも、あんなことがあった後では、アルバレスには生きかえって欲しくないわ。あいつは生きる資格がない。
私はニュース社に、この話を買わないかと交渉しました。ニュース社は、あなたの蘇生に必要なだけの金額を約束してくれた。あなたの蘇生にはあと三年かかるわ。待ちくたびれるし、あなたがいなくて寂しいけど、私に文句を言う資格はないわね。もちろんアラベラはまだ成長保留のままにしてあります。あなたと一緒に、あの子の育つのを見るのがとても楽しみ。
最後の大脱出が始まっています。タルタロスと巨大な太陽の映像を見ました。とても悲しくて醜いと同時に、痛いほど美しい映像。
あなたと今度会えるときには、もうタルタロスは存在しないのよ。でも爆発した星は、夜空にはっきりと、スラークと哀れなコーデイの居場所を教えてくれる。そして、タルタロスと運命を共にすることを選んだ、他の魂たちも。
あの哀れな、退化した野獣、スラークのことは忘れられそうにないわ。ただ、自由に生き、子供を育てることだけを望み、コーデイとあなたのお陰でようやくそれができた、あの哀れな動物を──
~完~