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<h2 class="date">2005年12月27日</h2>
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荒巻義雄『白き日旅立てば不死』ハヤカワ文庫JA</h3>
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名作中編「ある晴れた日のウイーンは森の中にたたずむ」をもとにした長編。<br clear="all"></div>
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もとの中編はSFというよりも幻想小説であったが、本編は、異なった欧州(特にウイーン)の間を行き来する主人公の青年の特異な体験に対して、メビウスの環状に表裏一体となり断続した宇宙、ルーレットの赤と黒の目のように不連続的に交互につながった宇宙というユニークな疑似科学的説明を行っており、SF色が増している。一方で、主人公の体験を狂気による幻覚と見た場合の精神分析学的説明も併用し、<現実なのか幻覚なのか>という一つの現象に対する複数の説明を最後まで輻輳させており、最終的に明確な結論は出ない。主人公の体験の原因には、主人公自身の高校時代のあこがれの女性(自害した)をめぐるトラウマがあるようなのだが、その真相は最後まで伏せられている。主人公がヨーロッパでどのような経路で体験を経たのかも、主人公自身の記憶の欠落が著しいため、霧に包まれたように不明確だ。要するにヨーロッパの風景や主人公の出会うある時実在したかと思えば存在しなくなった離別の名前、別の人間に入れ替わったりしている人々(特に女性)は、主人公自身の心象風景であり、内面の旅である。極めて理知的でありながら、情緒的で魅力的な世界を現出した作品である。ただし、結末であまりにつじつまを合わせた具体的な説明をしすぎてしまったがために、せっかくの幻想世界がやや矮小な印象に落ちてしまっているのが残念な点だ。あとは人物描写、心理描写も少し深みが足りない。とはいえ佳編である。</p>
<p>テーマ性 ★★★★</p>
<p>奇想性 ★★★★</p>
<p>物語性 ★★</p>
<p>一般性 ★★</p>
<p>平均 3</p>
<p>文体 ★★★</p>
<p>意外な結末★★★</p>
<p>感情移入 ★★★</p>
<p>主観評価 ★★★(32/50)</p>
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