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<p>1999年</p>
<p>3/30<br>
笠井「バイバイ、エンジェル」読み終える。<br>
本格ミステリと思想小説の奇蹟的な融合を、笠井はこのデビュー長編において既に達成している。しかも、その思想性は単なるペダントリイではなく、この作品のテーマそのものとして必然的に結合している。そして、その思想性は極めて切実で重い深刻なものであるがゆえに、強烈な説得力をもって読者の胸に迫ってくる。その意味で、笠井の作品はこれ以上ないほどの究極的な社会派ミステリとなっている。ただ、その思想性の媒体として本格ミステリの形式を必然に要求するところに、笠井の独創性があり、社会派と敵対するとみなされてきた本格の器を通じて初めて究極の「社会派」たりうることを示したというパラドックスにある種の小気味良さを感じずにはいられない。<br>
人物造形は類型的で魅力に乏しく、ストーリーも抑揚に乏しいことから、小説としての魅力は今一つかもしれないが、謎解きについては、手堅くミステリとしての及第点に達しているし、何といっても犯人の犯行動機と、これに対する主人公の思想的糾弾の場面の迫力において、この作品はじゅうぶん傑作たりえているといえよう。<br>
次はいよいよ、「哲学者の密室」である。<br></p>
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