「今年のヒューゴー/ネビュラ受賞短編のスレッド」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

今年のヒューゴー/ネビュラ受賞短編のスレッド」(2005/12/03 (土) 20:31:45) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

<div class="datebody"> <h2 class="date">September 21, 2004</h2> </div> <div class="blogbodytop"></div> <div class="blogbody"> <div class="titlebody"> <h3 class="title"> 今年のヒューゴー/ネビュラ受賞短編のスレッド</h3> </div> <div class="main"> ニール・ゲイマンの「コラライン」は既読ですが、他の5編は全てオンラインで入手したので、ぼちぼち読んでここに感想を書きます。<br> <br> 対象作品<br> A Study In Emerald(ゲイマン)H<br> What I Didn't See(ファウラー)N<br> Legions In Time(スワンウィック)H<br> Empire of Ice Cream(ジェフリイ・フォード)N<br> Cookie Monster (ヴィンジ)H<br> <br> 自費出版サービスで製本しました。いよいよ読みます。<br> <br> <a href="http://blog.livedoor.jp/silvering/04b22f7b.jpg" target= "_blank"><img class="pict" height="121" alt="ヒューゴーネビュラ" hspace="5" src="http://blog.livedoor.jp/silvering/04b22f7b-s.jpg" width="159" align="left" border="0"></a><br> <br> 追記 粗筋 2004.11.6<br clear="all"></div> <a name="more" id="more"></a> <div class="mainmore"><br> <br> 私が見なかったこと カレン・ジョイ・ファウラー<br> <br> 数日前、私はトリビューンでアーチバルド・マレーの訃報を見た。彼の名前の後につく膨大な肩書きでやけに長く、われわれの古いビジネスを根掘り歯掘り紹介していた。彼の子供たちは気に入らなかったのだが。私自身はこれまで口をつぐんでいた。どうせ光が当たることもあるまいと思っていたのだ。だが、とうとう私が最後の生き残りになった。ウィルメットすら死んでしまった。ずっと少年の日の彼しか想像できなかったというのに。最後の言葉として言わねばならないことがある。間違いなく私には。<br> 眠っているとき私はよくジャングルに行く。<br> われわれ七人は銃を持ってジャングルに行った。アーチャーがリーダー。ルイヴィル美術館館長。他の六人はアマチュア。メンバーは、アーチャーが声をかけたのは、エディ、ラッセル・マクナマラ、トレントン・コックス(結局来られず)、ウィルメット・シーバート、メリオン・カウパー、その妻ビヴァリー・クリス。私はエディの28年来の妻。コックス以外6人が行くこととなった。私は料理など女の務めを果たしつつ、したがった。やがて我々はルレンガ・ミッションに着き、アフリカの景色を目の当たりにした。つい最近まで人食い人種だった原住民を見た。入浴するときは見られていることを甘受するしかなかった。われわれは教会に3泊した。私はビヴァリーと同室した。われわれは現地の施政官にディナーをご馳走になった。<br> ベルギー人が、チンパンジーが村の女性をさらった話をし、私とビヴァリーの同行に懸念を示したが、アーチャーは、それは伝説に過ぎず従わない、自分たちは女性二人がいなければ目的を達成できないと反論した。<br> 夜中に暑くて目覚めると、ビヴァリーが出かけていた。<br> 朝、ビヴァリーは戻っていた。話しかけて、ゴリラの狩りに関する意見を質すつもりだったが、私は早く起きてしまったし、ビヴァリーは遅くまで寝ていた。<br> 私は独りで朝食を取ると、教会敷地の周辺を散策した。風と鳥の音に混じって、かすかに涼しげな音が聞こえた。西の黒い三つの山影のうち、二つが煙を吐いていた。眼下には耕された畑、バナナの樹園、格子細工の薔薇が、そり返った道に沿って教会に続いていた。私たちは礼拝堂の周りの庭園をいくたびも整備していた。私たちは、エデンの園を通って、神の下へ向かっていたのだ。<br> 墓地でライオンに殺された人を数え、三人と確認したとき、メリオンがやってきた。三人とも英国名だった。<br> メリオンがゴリラの話を持ちだした。連れ去られた女は生理中だったため、ベルギアンはそういう女性の同行を嫌ったのだ。私は問題ないと思っていたが、男たちは私たちを納得させたいと考えていた。私はメリオンの追及を無視して歩み去ったが、翌朝とうとうビヴァリーが山に行かず教会に残るといいだした。するとウィルメットも腹の具合が悪いから残るといいだし、一日メンバー同士の話しあいが行われた結果、ビヴァリーが前言を撤回し、ウィルメットも具合がよくなったといい、結局翌日全員で山に出発した。山登りは難航した。二〇〇人のガイドを連れていた。苦労の末、突然日向に出て、象の通った跡を見た。やがて一休みした。ガイドに日給を払ったが50人はいなくなった。私がうとうとして目覚めるとビヴァリーが話しかけていた。メリオンの前の妻の話、ゴリラの女さらいの話、私の夫のエディが理想的夫である話などをした。それとゴリラ狩りに成功したとき自分の写真が博物館に飾られると。<br> ビヴァリーの最後のセリフは、「あなたはエディを愛してるんでしょ? なら、ずっと一緒にいなさい」<br> そういってビヴァリーはテントに行って寝た。私は男たちとブリッジをした。私はゲームでミスをしたと詰られ、泣きだして立ち去った。エディが謝りながらおってきた。私はエディをふりきってライフルを取り、独りで森に入り道に迷った。そしてそのうち、キャンプに戻るよりも眺めのいいところに行きたいと思い、登り始めた。空き地で休んでいるとゴリラを見つけた。暑いので私は靴と靴下以外の服を脱いで置き、ゴリラを追った。牧草地で雄一頭雌二頭のゴリラがいた。私は銃に弾を込めた。だがゴリラの人間っぽい仕草に撃てなかった。ゴリラたちは逃げてしまった。服のところに戻るとラッセルたちがいて、私は服を着た。<br> ビヴァリーがいなくなったらしかった。<br> 我々は探し回ったが見つからなかった。ゴリラにさらわれたのか? ガイドたちは怯えきって夕食を作らず、翌朝全員戻ることになり、私も有無を言わさず戻されることになった。教会に戻るとガイドの一人がビヴァリーのことを話しかけたが現地語で分からなかったので神父に通訳を頼みに行ったが応じてくれず戻ってみるといなくなっていた。数日後男たちは戻ってきたがビヴァリーのネックレス一つ見つからなかった。あの後山で何か起こったはずだが私は肝心のところを見なかったから語ることはできない。<br> 私たちはすぐアフリカを発った。私はエディにビヴァリーの話をしようとしたが彼は拒んで泣いた。<br> やがて数年後、少し正常に戻ったエディが起こったことを語った。彼らはゴリラというゴリラを殺しまくったが、まさに殺人を犯しているような感覚だったらしい。ほとんどエディが殺したそうだ。途中でガイドたちの態度がおかしくなったのに気づき、ラッセルとメリオンの怒りに気づいたが、エディは矢もたてもたまらずゴリラを殺しまくった。<br> 「ガイドがビヴァリーを殺したってこと?」<br> 「いいや、おれもそう思ったんだが、黒人たちはラルンガで虐げられていた。彼らを疑いたくはない。おれは正しいことをしたといって欲しいんだ」<br> 私はそう言ってやった。数年後エディが亡くなり、次々参加者が亡くなった。私は目が弱くなり、バイトの女の子を雇ってゴリラの記事を読んでもらった。私の気を引いたのはジャングルでゴリラやチンパンジーのハーレムで生活する女たちの記事だった。私はビヴァリーの最後の言葉を思いだし、彼女は自ら服を脱ぎ、ゴリラとの生活を選んだのだ、と思った。そして私が来るのを待っているのだ。<br> 私はいつでもそこに行けると、自分をごまかすことができる。<br> <br> アイスクリーム帝国 ジェフリイ・フォード<br> 誕生日ケーキのろうそくを消した後の匂いをご存知だろうか? わたしにとって、あの匂いはバイオリンのベースラインを弾いたときの音を強く感じさせる。この音色は、その匂いが意味すると教わったものに対する感傷的な喜びを与えてくれる──一年を失うのと引き換えに、新たな知識が約束される。<br> **<br> 主人公は、共感覚(匂いを音として感じる等)を有する人物である。匂い、色、音などをいつもごっちゃにして感じてきた。このため両親は精神障害と考え、学校にはやらずに家庭で教育を行った。彼は音楽に並々ならぬ才能を発揮し、ミセス・ブリスニクにピアノを習ったが、すぐに主人公の腕がブリスニクを上回ったため、ブリスニクは首になった。ある日主人公は母親と外出中に抜け出し、アイスクリーム帝国というアイス屋に入る。学校に行けず友達の欲しい主人公は同年代の子供たちに話しかけるが、無視される。彼はアイスクリームを買い、食べる。家では厳しい食事制限で食べることができないのだ。一口食べると共感覚が発動し、女の子が見えた。飲みこむと消える。初めて食べ物で具体的なものを見た経験だった。しかし二口目を食べる前に母親に見つかり、取り上げられてしまった。<br> この事件のため、父親は主人公をスタリン医師のもとに連れていく。医師は父親を追いだし、主人公とマンツーマンのカウンセリングを行う。主人公の症状は改善し、父は驚いた。主人公は、学校に行くようになるが、周囲とのギャップを埋めることができず、友達はできない。主人公は、やがてピアノに更に傾倒し、バッハに憧れ、作曲を始め、音楽大学に進んだ。一方で主人公はあの女の子にあうため、再びアイスクリーム帝国に通い始める。その子の名前はアナだと分かった。主人公はスタリンにアナのことを話す。スタリンは、友達を欲しいが故の幻視で危険だからやめろという。主人公は、言い付けをきいてアナを見るのをやめる。<br> やがて主人公は学校の作曲コンクールに出品することになり、行楽地の島に部屋を借り作曲をする。ある夜、作品に行き詰まって夕食に行くと、コーヒーを勧められる。初めて飲んでみると、目の前にアナがいた! 主人公が話しかけると、アナは答えた。彼女も主人公と同じ共感覚で治療を受けている。絵の勉強をしており、今課題に取り組んでいるという。主人公はテイクアウトのコーヒーを買い夜遅くまでアナと話しこんだ。曲作りははかどった。翌朝は気分が悪かったが、約束の昼前にはコーヒーを買って浜辺でのみ、アナと会った。又はなしこみ、部屋に戻り、一緒に作品製作を始めた。アナにクレヨンを渡すと、渡せた。物理的接触が可能なのか? 主人公はアナに触れ、抱きしめてキスしようとする。アナはショックを受け、出て行く。主人公は睡眠不足とコーヒー酔いで、アナを探しながら意識を失い、病院で目覚める。コーヒーを飲むことは禁止になった。主人公の持ち物からクレヨンと作曲した絵が消えていた。<br> 主人公は父母の家で休暇をとることにし、戻る途中でコーヒーキャンデーを買う。戻ってみると両親はいない。自分の書いた作品も思いだせない。主人公はコーヒー飴でアナが自分の作曲した絵を課題として提出したことを知る。最後の飴を使ったとき、アナがコーヒーを飲んだところで、再び話せるようになった。アナは、主人公のことを病気による妄想だという。だから自分が薬で共感覚をなくせば消えるのだと。主人公は全く逆だと伝えようとするが、アナはきく耳を持たない。アナの言う医師の名は、スタリンといっていた。同じだ! 彼女は同じ世界に実在するのではないか? 主人公は、ただちにスタリンのところへ向かう、アナという若い患者がいるかときくために。ところが、スタリンの病院はも抜けのからだった。猫だけがいた。そこで主人公は真相を知った。そのオフィスには、主人公の両親とアナが一緒に写った写真や、小さいころからの作品の数々が山と積まれていた。そして、部屋が一つ、また一つと消え、主人公は出ることができないまま診察室に一人取り残される。周りのすべてが灰色のスケッチに変わっていく、主人公の脚が、猫が、そして主人公は自分が作者でなく作品になることを知る、まもなくアナの病気は完全に治るのだ。猫の泣き声と共に、手が主人公の肩にかかる。<br> <br> 碧色の研究(習作) ニール・ゲイマン<br> 1 新しい友人<br> 私はアフガン戦役から戻り(ワトソンと同じ)、ロンドンでルームメイトを探していて、共通の知人の紹介で彼と知りあった。彼は多くの日との訪問を受けていたがある日、スコットランドヤードの刑事(緋色の研究に登場する刑事と同名)が訪ねてきたので、カウンセリング専門の私立探偵だと分かった。彼は私に事件を手伝ってほしいといった。<br> 2 部屋<br> 私は友人と共に殺人現場に行く。被害者はボヘミア王子フランツ・ドラゴ。ここアルビオンを訪問中に事件に遭った。暖炉に灰がついていた。緑の血で壁紙にレイチと描かれている(緋色の研究と同じ)。レストラード刑事はレイチェルと読んだが、友人はドイツ語の「復讐」だと言った。<br> 3 宮殿<br> われわれはアルバート王子に連れられ、女王に謁見する。女王は最愛の甥の死に悲しんでおり、友人に何か言ったが私には聞き取れなかった。友人は、当日のショアディッチに他に二人の甥がいたことを告げた。われわれはベイカーストリートに戻った。<br> 4 演技<br> 私は友人に連れられて演劇を見に行く。終わった後、我々は楽屋で役者の一人シェリー・バーネットと会った。友人はニューワールドの劇場のプロモーターと名乗り、三つ目の劇の脚本家であると言うシェリーの友人を連れて明日一〇時に来て欲しい、50%の分け前を保証すると約束をとりつけた。帰りに私は、この二人が現場にいた、犯人の可能性が高いのだと聞かされた。<br> 5 皮と種<br> 友人は刑事を呼んで、二人が来るのを待ちうけた。犯人は王政復古主義者であったらしい。現場の署名の位置、タバコの灰などから手がかりをつかんだと言う。が、敵もさる者、アラブ人に伝言を持たせて逃げてしまった。敵は、こちらの素性をすっかりつかんでいたのだ。犯行を全て認めながらも、自分たちを捕まえることはできないとかいてある。刑事は犯人を追ったが、捕まえられなかった。ジョー・ワトスンという名のびっこの医者も。アフガン戦役に服したらしい。女王は真相を暴いた友人に感謝した。伝言は焼いたことにしたが、実は私は保管してある。誰もが死んだ後に開封されるように。<br> S** M**<br> 1881年ニューアルビオン、ロンドン、ベイカーストリート<br> *ホームズ物、特に「緋色の研究」のパロディ。ラヴクラフトネタも入っているらしい。<br> <br> 時の軍隊 マイクル・スワンウィック<br> エリノア・ヴォイクトは8時間、クローゼットを監視するという奇妙な仕事をターブレッコより請け負う。中は何も入っていないのに。二回だけターブレッコは途中で入ってきて「時計を持っているか」ときいた。二回目には40分外出しろといわれたのできっかり40分で戻ると、ターブレッコもきっかり時間通りに出ていった。<br> 6ヶ月が経過し、またターブレッコは40分外出せよといった。戻ると当たり前のような顔をしているので、ムカついてドアを開けるとそこにいた。窓から飛び降りろと言われ奴隷だからそうしますというと解放してくれた。夫が不況で自殺してから、奴隷を使う生活が使われる生活になってうんざり。<br> エリーは交代勤務の若い詩人のシフト中に訪ね、40分出ていけといい開けると、中は未来都市っぽい世界で横に服がつるされていた。それを着て中に入った。鍵で戻れることが分かった。タイムズスクエア? 男に話しかけたが英語が通じなかった。ブロードウェイらしき道を歩いていくとサイレン、通行人慌て始める。娘が走ってきて助けを求めてきた。英語だった。エリーは娘と建物に入る。娘の名はナディン・シェパード。2004年シカゴからきた。エリーはナディンに奪ったチュニックを着せる。サイレンが聞こえる。エリーは、外の奴隷どもはアフターマンといって野蛮だと説明する。遠くで巨大な機械のハッチが開いて、大量の虫のような兵士が出てきてドアを叩いて回る。建物の奥に行こうとすると大量のドローン生物が流れてきて通りに押しだされる。ポリスが現れ棒で殴られ失神、独房で二人で目覚める。<br> 財布からタイムドアの鍵を出し、ナディンが触れると壁が消え、車を見つけて出撃。ところがスクリーンにターブレッコが現れ、止まれ、前史時代の時の囚人よ、という。二人は思わず停車し車から抜け出しタイムズスクエアに出る。<br> タイムドアに入る。後ろから三人のターブレッコが来る。ナディンに連れられドアの一つに入るとクリップボードを持った女が迎える。芝生。海。バベルの塔。前史時代、アマーリンゴと女が説明。時間戦士になれ、と言われる。そして鍵をとられ倒れる。起きると独房、ナディンがいて、若くなったという。変なアルビノがいてわけの分からないことを言いやつらを信じるなという。そこへビジプレート、女が現れ、トゥルーマンのレイショナリティ国を守るべくアフターマンと戦うのだ! と叫ぶ。実は劣勢らしい。エリーは狂っていると思うが洗脳されているらしく体が自然と従う。エリーらはタイムトーペードに配備され、無時間の非空間に出撃! が、トゥルーマン敗戦、二機の弾の相互作用でエリーらは飛ばされる。<br> エリーはアルゴンキンホテルの部屋、ニューヨークにいる。アルビノの男と刺青の男がいる。刺青の男はダン・ジャル。アルビノは、3197-3992の排他的世紀のエクストラテンポラル卿、ハウス・オパンの第七王位、無限王位の予備後継者らしい。ダン・ジャルはレイショナリティの初期から徴用された。エリーは1936からきたと紹介。彼らはハイパータイムにいるらしい。七次元の現実時間を支えている。ダン・ジャルの発言からターブレッコとはアフターマンの自称「ターブレック人」を指していたことが分かり、エリーは全ての情報を思いだす。七階級、0-6までいる。0がいちばん上だ。アフターマンは自己の繁栄のため過去を侵略し、これにトゥルーマンが反旗を翻し戦っている。しかしアフターマンが勝つのは進化の必然とジャルらが言うと、ナディンは否定、進化は全方位であり、アフターマンが優れているとは限らないが、アフターマンはヒトラーやポルポトといった要素の顕在化であり、その要素を内部で強化しつづけているため、常に受動的に外敵と戦うだけのトゥルーマンより強いだけだと指摘。そして、なぜ奴らは未来に攻めないのか、勝てないからだ! といいつつ、私は未来からといいポケットから何かを出してフラッシュさせる。<br> 何も変わらず、全てが変わった。エリーは自分の時代、場所のホテルにいた。ナディンは、私は未来のあなたじゃないの!とエリーに言う。エリーは、あらゆる時代に徴用され変貌しており、その全てのエリーによって排他的組織が構成され、人類の敵であるアフターマンらが問題を起こしたときに各時代のエリーが発動してこれに対処するのだ。<br> そしてエリーはもとの時代に戻される。エリーは任務の説明を受けている、クローゼットドアの見張りを。<br> 自分のできることはぼんやりとしか分からないが、絶対の自信がある、世界中の全ての時間が我が手にあるから。<br> <br> COOKIEモンスター ヴァ-ナー・ヴィンジ<br> ディキシー・メイはロッツァテク社のカスタマーサービス部門で働き始めた。ロッツァテク社は全てを変えてしまったのだ。生身の人間の苦情を聞くには生身の人間を使うことがどんなに重要であるか、トップボスたちは知っていた。ディキシーのような人間を何百人も雇っていた。給料は安かった。だがディキシーは気にしなかった。LA支社のB0994に自分のデスク。窓からの眺めは最高だ。<br> メイは苦情や質問メールの処理をする。が、同僚のヴィクターから変なメールが来たといわれる。メイを名指して質問しているというのだ。回答に個人名は一切出さないのに。しかも、「ターザナマラ」という小屋をメイが小さいころ誤って燃やしたことを指摘する内容だった。メイの父親しか知らないはずだ。ラスティング(欲情してる)という署名。父の文面ではありえない。そもそも長いこと連絡をとっていないのだ。中には「999は666の逆」とも書いてあった。構内にB0999というビルがある、そこに犯人がいるのか? メイはヴィクターとそのビルに行く。そこでは、大学卒業者の試験が実施されていた。グレアムという認知科学の試験を受けている男がいた。そこへエレンという女が来た。事情を話し、メールを見せると、ヘッダーが不自然に長く、他のコンテンツがありそうだ、後で解析するという。<br> 更に、両方のビルの人間がライチという男からオルソンホールで適性テストを受けていたことが分かる。メイらはその結果カスタマーに配属されたが、エレンらは卒業試験を受けさせられていた。しかも、時計のカレンダーの日付がずれていることが分かった。メイのカレンダーは6月22日だったのに、このビルへ来たとたん15日になっていたのだ。メイらは試験を受けて以来一週間の記憶があるが、あれは薬物か何かで植えつけられた記憶ではないか? つまり何か悪い実験の実験台にされているのでないか。今夜のパーティは記憶を消すためのものでないか? この憶測に、エレンは、自分は外と電話で話し、毎日外に帰っているから間違いない、外に出て言いふらして警察を呼んでもらう、だからメイらはビルに戻らないで隠れていたほうがいいという。<br> また、メールの差出人アドレスはラスティング925となっているが、999から見える場所に925というビルがあること、そこのライチの教え子の卒業生にロブ・ラスクという男がいることが分かった。<br> メイの希望でエレン、ヴィクターと三人で925に行った。<br> 窓は目隠しがされ、ドアを入るとエアロックのようになっていた。メイとヴィクターは隠れ、メイがカメラを構え、エレンが、奥から出てきた男と話した。グレアムの声が聞こえる。男はバッジをしていて、何だエレンバッジをどうしたんだときく、そこへもう一人のバッジをしたエレンが来た。二人は顔を見合わせて驚く。彼らもライチからオルソンホールでテストを受け、今は政府NSAプロジェクトで一ヶ月働いているそうだ。今は8月らしい。二人のエレンはオーソンホールのテストまでは経験が共通しているがその後、全く別の生活をしていたことが分かった。<br> しかし、999エレンは外と電話で三回話している。中には同じくテストを受けたビル・リチャードソンもいた。<br> NSAエレンらも偽の記憶を薬品で受けつけられたのか? それとも彼ら全員、仮想人格ではないのか? 彼らはヴァーチャル人間を扱ったSF、スタージョン「極小宇宙の神」ポール「幻影の街」ヴァーリイ「汝、コンピューターの夢」ウィルスン「ダーウィニア」などを思い出す。そして、ブリンの「有意水準の石」に思い至る。<br> ヴィクターは、そんなのSFで、光速を超えるよりありえないよと言うが、999エレンは、ジェリー・ライチが人格アップロード技術に関する論文を書いていたことを指摘する。一度諦めたはずだが、その後他の分野で名をはせ、ハードウェア面の障害を乗り越えたのかもしれない。とすると、オルソンホールの異常にきれいなトイレ、あの時点から彼らはアップロードされていたのか? マイケルの記憶では、病院のような匂いのオルソンホールに入り、その次の記憶がバスの上に乗っていた。<br> ではオリジナルは殺されたのだろうか? ここではわかるすべがない。一日が終わると時計も記憶もリセットされてしまうのだ。だが三種のプロジェクトの内容を見ると、ライチが仮想人格を使っていかにもやりそうなことだ。<br> もはや手がかりはメールしかない。ヘッダーの中ほどの中国語は917と読める。917のビルを探そう。<br> 丘を登っていく。一階建ての多数の小さな建物、次第に番号が減っていく。景色はリアルに見えるが、見ている我々もシミュレーションでは当たり前なのかも。<br> エレンが三つの監視方法を話す。1、成果の内容から。2、文書内容から。3、スパイ。<br> 917の道が見つかる。行くと建設中のビル、穴の奥にドア。開け方をいろいろ考えていえると、ヴィクターの挙動がおかしい。ノートパッドでなにかしている。とりあげると、<br> 「925 999 994 知る。リブート」と打ち込んである、スパイはヴィクターだった? まだエンターキーは押していない。ヴィクターによると自分だけはリブートでオリジナルとマージされるらしい。しかし、技術的にマージは不可能なはず、ヴィクターも騙されて偽の記憶を持たされているだけだと指摘すると、ヴィクターは消える。午後5時に自動リブートされるといい残して。<br> メイは小さいころのパスワードを思いだして試し、ドアをあけ中に入る。奥まで行くと「一年間のハードウェアプロジェクト」を割り当てられたというロブとダン・イーストランドがいた。メイらはヘルパーで派遣されたとごまかす。ダンはニューズウィークに載っていた男だが死んだはずだった。スパイ活動中に警備員に撃たれたのだ。<br> ロブによると一年の初日で2011年9月12日らしい。<br> エレンらはロブに真相を話す。驚愕するロブ。<br> この情報を次のタームに伝えるにはどうすればいいか? リブートされても前回分に追加されるべき情報が必ずある。それはクッキーだ! そう、あのメールは前のタームのロブからのクッキー情報でないか? ロブはメールからクッキーと思われる部分をコンピュータに打ち込み解読する。出てきた! 全てが書いてある! それによると彼らは1237回目らしい。実に1237年も仮想世界でハードウェア研究を続けさせられているのだ。最初はロブだけだったが途中からダンが加わり他のプロジェクトが追加された。最初はクッキーを使っていなかったが途中から使うようになったらしい。メイへのメールを送ってもメイは来ることもあれば来ないこともあったらしい。<br> 一日でリブートされるエレンには残り時間はないし、他の二人も戻らないと怪しまれるので戻ることになった。<br> メイは自分が必ず興味を持つようなメッセージをロブに教えた。それがあれば確実にメイがここに来るような。<br> ここ仮想世界では1000年が経過しているが、現実時間ではまだ2012年6月15日、ジェリーの思考速度よりはるかに速くここでは時間が経つのだ。何度もクッキーで情報を蓄積を繰り返し、ジェリーが気づいたときにはもう遅い、「クッキーのお化け」となった彼らがジェリーに襲いかかるのだ&&。<br> <br> <br> <br> <br clear="all"></div> <div class="posted">silvering at 18:26 │<a href= "http://blog.livedoor.jp/silvering/archives/7060851.html#comments"><font color= "#87614C">Comments(15)</font></a> │<a href= "http://blog.livedoor.jp/silvering/archives/7060851.html#trackback"><font color="#87614C">TrackBack(0)</font></a> │<a href= "http://blog.livedoor.jp/silvering/archives/cat_70845.html"><font color= "#87614C">読書</font></a></div> <div class="menu"><a href="http://blog.livedoor.jp/silvering/"><font color= "#87614C">このBlogのトップへ</font></a> │<a href= "http://blog.livedoor.jp/silvering/archives/7057713.html"><font color= "#87614C">前の記事</font></a> │<a href= "http://blog.livedoor.jp/silvering/archives/7061009.html"><font color= "#87614C">次の記事</font></a></div> <div id="ad"></div> </div> <div class="comblogbodybottom"></div> <div class="trackbackurltop"></div> <div class="trackbackurlbody"> <h3 class="trackbackurlttl">トラックバックURL</h3> <div class="trackbackurl"> <table cellspacing="0" border="0"> <tbody> <tr> <td width="99%"><input class="trackbackbox" value= "http://app.blog.livedoor.jp/silvering/tb.cgi/7060851"></td> <td align="right" width="1%"><input onclick= "quickTrackBack('http://blog.livedoor.jp/silvering/archives/7060851.html'); return false;" type="button" value="クイック"></td> </tr> </tbody> </table> </div> </div> <div class="trackbackurlbottom"></div> <a name="trackback" id="trackback"></a><a name="comments" id="comments"></a> <div id="commenttop"></div> <div id="comment"> <h3 class="commenthead">この記事へのコメント</h3> <div id="commentbody"> <div class="commentttl">1. Posted by silvering   <span>October 10, 2004 02:59</span></div> <div class="commenttext"> テキストファイルでは読む気にならないため、本日レイアウトして一太郎製本サービスに申込み。148ページ。1734円送料込み。<br> <br> 届いてから読む。</div> <div class="commentttl">2. Posted by silvering   <span>October 20, 2004 19:27</span></div> <div class="commenttext"> ファウラー「私に見えないもの」読み始める。<br> 語り手は、かつての探検行仲間の最後の一人の死亡記事を見て、秘密にしていた経験を語り始める。彼女は、ルイヴィル博物館長の率いるアフリカ探検隊の一人の妻としてこれに同行した。今冒頭だけ読んだ。</div> <div class="commentttl">3. Posted by SILVERING   <span>October 23, 2004 18:09</span></div> <div class="commenttext">ファウラー「私が見なかったもの」<br> <br> こいつはひでえ&&。<br> 女隊員が素っ裸になってゴリラのハーレムに飛び込む話。ミステリ仕立てにして悲劇っぽくあおっているが、オチがこれじゃあねえ&&。近頃の女は獣姦趣味すら隠さなくなったか。よくこんなんでネビュラ賞を取ったよ、呆れた。<br> <br> テーマ性 ★<br> 奇想性  ★<br> 物語性  ★<br> 一般性  ★★<br> 平均   1.25点</div> <div class="commentttl">4. Posted by silvering   <span>November 03, 2004 08:47</span></div> <div class="commenttext"> ジェフリイ・フォード「アイスクリーム帝国」<br> <br> これは名作である。5感が混乱し、味覚が視覚を、聴覚が嗅覚をといった具合の共感覚をわずらっている主人公は、学校に行けず孤独な日々を送っていたが、ある日、「アイスクリーム帝国」というアイスクリーム屋でコーヒーアイスを食べ、少女の姿を見る。やがて、音楽の才能を磨き、音楽大学に進んだ彼は、そのアイスクリーム屋に通い、少女の名がアナだと知る。主治医に話し、友達欲しさの幻覚であるからすぐにやめろといわれるが、大学の課題の作曲をするため行楽地に宿をとり取り組んでいる最中、コーヒーを飲んだことからアナと再会、初めて言葉を交わす。彼女も主人公と同様の共感覚を患っているというのだ。そして、絵の勉強をしているという。主人公はコーヒーをお代わりしながら話し込み、遂には、一緒に作品を制作する。その過程で、物理的接触が可能なことが分かり、抱きしめてキスしようとするが、拒まれる。コーヒーの飲み過ぎで意識を失い入院した主人公は、荷物からアナに渡したクレヨンと自分の作品が紛失していることを知り、退院すると、コーヒーキャンデーでアナが自分の作品を絵の課題として提出したことを知る。アナは、主人公と同じ主治医の名を挙げ、その処方した薬で共感覚が治るという。主人公は、きみはぼくの想像の産物だから、そんなことをしたら消えてしまうぞと警告するが、その直後にコーヒー飴が切れた。主人公と同じ主治医ということは。彼女は現実に存在するのではないか? 主人公は、主治医の下へ一目散に向かう。果たして、主人公の愛は実現するのか&&という話。<br> <br> つらい、しかし、「鎮魂歌」の作者らしいラストである。個人的にはハッピーエンドを読みたかったし、私が同じ話を書くとしたらハッピーエンドにしてしまうと思うが、このエンディングは共感覚を患った主人公の悲しみを最も効果的に伝えるものかも知れない。<br> 共感覚という病気が存在することを私はこの作品で初めて知った。着想といい、書き方といい、オリジナルで非常に巧い。ぐいぐい引き込む力がある。受賞も納得の名作である。<br> <br> テーマ性 ★★★★★<br> 奇想性  ★★★★★<br> 物語性  ★★★★<br> 一般性  ★★★★<br> 平均   4.5点</div> <div class="commentttl">5. Posted by silvering   <span>November 03, 2004 09:00</span></div> <div class="commenttext">

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
記事メニュー
目安箱バナー