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ジェフリー・フォード「白い果実」」(2005/12/03 (土) 19:36:03) の最新版変更点

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<div class="datebody"> <h2 class="date">August 27, 2004</h2> </div> <div class="blogbodytop"></div> <div class="blogbody"> <div class="titlebody"> <h3 class="title">ジェフリー・フォード「白い果実」</h3> </div> <div class="main"><a href="http://blog.livedoor.jp/silvering/3912f578.jpg" target="_blank"><img class="pict" height="225" alt="白い果実" hspace="5" src="http://blog.livedoor.jp/silvering/3912f578-s.jpg" width="160" align="left" border="0"></a>世界幻想文学大賞受賞作、ついに翻訳!<br clear= "all"></div> <a name="more" id="more"></a> <div class="mainmore"> 昨日買ったのだが、面白くて一気読みしてしまった。<br> ビロウという独裁者が自分のない宇宙を模して作り上げた人工都市。この都市の治安維持のためにビロウが利用するのが、人間の顔相によって犯罪捜査を行う「観相官」である。主人公は第1級観相官としてビロウに重用されている人物。<br> この主人公が、ある都市で起こった「白い果実」盗難事件捜査のために派遣されるところから本書は幕を開ける。捜査の最中に、主人公は町の娘に一目ぼれをする。この娘は観相学に興味を示したので、主人公は下心満々に助手として採用する。ところが、被害者の司祭が観相を依頼した〈旅人〉と称される「固まった古代人の死体」の観相をしている最中、主人公は観相学の知識を喪失してしまう。主人公は助手の娘に観相を任せつつ、難局を乗り切ろうとするが、娘に能力の喪失を気づかれてしまう。男が取った手は&&という第一部。<br> 主人公は観相の失敗により裁判にかけられ、島の硫黄採掘場で強制労働をさせられる。そこでは、鬼のように厳しい昼間の監視官と、フレンドリーな夜の監視官、知性を持った猿などに取り巻かれ、毎日過酷な穴掘りの労働を課せられる。主人公は娘が自分に宛てた「祖父が楽園を見つけた旅の話」に関する手紙を読み、それを夢に見る。その話にはかの〈旅人〉が白い果実を持って人間界に行くというくだりが含まれていた。やがて主人公は、島からの脱出を試みるが&&という第二部。<br> 特赦で理想形態市に呼び戻された主人公は、治安悪化に悩むビロウから新たな任務を与えられる。しかし主人公は、自分のメスで「見た者を即死させる人相」を与えてしまった娘に責任を感じ、救い出そうと考えていた。主人公は表向き命令に従うふりをしながら、情報を集める。他方、ビロウは、入手した「白い果実」を食べたことから、自己の内宇宙と理想形態市という実体の区別がつかなくなり、毎晩苦痛にさいなまれ始める&&という第三部。<br> 最終的に、主人公は娘と〈旅人〉を救い出すことに成功する。だが、「楽園」とは何なのか? それは第二作、第三作への持ち越しということで本作は幕を閉じる。<br> <br> とにかく、ディテールの造型や世界設定が、魔術的に美しく、魅力的である。そして、観相学、ネジや歯車でサイボーグ化された人間、狼少女、ドーム型小宇宙、魔物、鉱物化する人間、不死をもたらすと信じられる果実、人を秒殺する人相、などなど細かいガジェットやアイデアがいずれも、奇想の見本市ともいいたくなるほどに強烈だ。<br> <br> しかも強烈なイマジネーションの魔法に、ストーリーが負けていない。魅力的な(判りやすい)キャラクター設定、興味を引きやすい適度に分かりやすい課題設定とその克服、アクションとユーモアの絶妙な連打と、エンターテインメントの基本をおさえていて飽きさせない。<br> <br> 本書唯一の欠点は、あまりに読み易すぎることだろう。面白すぎるがために早くページをめくりすぎてしまい、随所の美しいイメージをともすると十分に味わいつくせないままに読み終わってしまいかねないのだ。<br> <br> 本作品は続編が2冊出ており、3部作完結だそうである。まだ結論の出ていない「楽園」の謎は非常に気になるところであり、続編の翻訳を超期待したい。<br> <br> そして何より、本作のツボは、日本SF・幻想文学界きっての美文家・山尾悠子が訳文を全面的に自己の文体にリライトするという画期的手法をとっていることである。<br> これによって本書は、「原作を超えた」。<br> こういう文章を読んでいると、「日本人でよかった、日本語が母国語でよかった」とつくづく幸せに感じる。<br> <br> テーマ性 ★★<br> 奇想性  ★★★★★<br> 物語性  ★★★★<br> 一般性  ★<br> 平均   3点<br clear="all"></div> <div class="posted">silvering at 04:38 │<a href= "http://blog.livedoor.jp/silvering/archives/6199280.html#comments"><font color= "#87614C">Comments(4)</font></a> │<a href= "http://blog.livedoor.jp/silvering/archives/6199280.html#trackback"><font color="#87614C">TrackBack(0)</font></a> │<a href= "http://blog.livedoor.jp/silvering/archives/cat_70845.html"><font color= "#87614C">読書</font></a></div> <div class="menu"><a href="http://blog.livedoor.jp/silvering/"><font color= "#87614C">このBlogのトップへ</font></a> │<a href= "http://blog.livedoor.jp/silvering/archives/6065130.html"><font color= "#87614C">前の記事</font></a> │<a href= "http://blog.livedoor.jp/silvering/archives/6471186.html"><font color= "#87614C">次の記事</font></a></div> <div id="ad"></div> </div> <div class="comblogbodybottom"></div> <div class="trackbackurltop"></div> <div class="trackbackurlbody"> <h3 class="trackbackurlttl">トラックバックURL</h3> <div class="trackbackurl"> <table cellspacing="0" border="0"> <tbody> <tr> <td width="99%"><input class="trackbackbox" value= "http://app.blog.livedoor.jp/silvering/tb.cgi/6199280"></td> <td align="right" width="1%"><input onclick= "quickTrackBack('http://blog.livedoor.jp/silvering/archives/6199280.html'); return false;" type="button" value="クイック"></td> </tr> </tbody> </table> </div> </div> <div class="trackbackurlbottom"></div> <a name="trackback" id="trackback"></a><a name="comments" id="comments"></a> <div id="commenttop"></div> <div id="comment"> <h3 class="commenthead">この記事へのコメント</h3> <div id="commentbody"> <div class="commentttl">1. Posted by silvering   <span>August 27, 2004 04:50</span></div> <div class="commenttext"> ちなみに私は原書を持っているんですが、原書では「第1部」「第2部」「第3部」に分かれていないし、各章に見出しもついていない。しかし、内容的には、「泥棒捜査の話」「強制収容所の話」「都市からの救出作戦の話」はそれぞれ完結しているので、3部に分けたことで読む側もメリハリを持って読むことが出来る。また、山尾がつけたと思われる各章の小見出しがなんとも幻想的なイメージをかき立てるすばらしいものばかり。<br> とにかくこの、「英文読解の得意な翻訳家が下訳をし、日本語の得意な美文作家が内容を変えずに自己の文体にリライトする」という手法はまさにコロンブスの卵である。せっかくの名作が「日本語のへたくそな」語感痴の翻訳家によってとんでもない駄作に変貌する例は枚挙に暇がない。火星三部作とか&&。この手法、もっともっと広めて欲しいものである。翻訳で重要なのは英文読解力ではなく日本語の文章力だということを再認識した次第である。なぜならわれわれは出来上がった日本語を読むのであって、それが原文に忠実であるか否かは読む者の快楽に直接影響しない瑣末な問題に過ぎないからだ。</div> <div class="commentttl">2. Posted by ひねもす   <span>August 27, 2004 13:49</span></div> <div class="commenttext">&gt; なぜならわれわれは出来上がった日本語を読むのであって、それが原文に忠実であるか否かは読む者の快楽に直接影響しない瑣末な問題に過ぎないからだ。<br> <br> なるほど、翻訳物の読みづらさはそれも一因だったのか。<br> こころから納得。</div> <div class="commentttl">3. Posted by <a class="posttitle" href= "http://nego10.exblog.jp/"><font color="#6D4126">nego10</font></a>   <span>September 04, 2004 08:26</span></div> <div class="commenttext"> はじめまして。『ザ・スタンド』で検索していたんですが、こちらの記事で興味を持ちまして、『白い果実』を読んでみました。ご紹介通り、抜群に面白かったです。<br> 続編の二冊も気になるのですが、この方法だと、翻訳にも時間がかかりそうですね。気長に待ちたいと思ってます。</div> <div class="commentttl">4. Posted by silvering   <span>September 05, 2004 01:03</span></div> <div class="commenttext">気に入っていただけて嬉しいです。<br> せっかくですから、続編も同じメンバーでやってほしいですよね。</div> </div> </div>

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