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Keith Roberts "Grainne" - (2005/12/03 (土) 18:53:43) のソース

<p>May 30, 2004<br>
Keith Roberts "Grainne"<br>
新たに読み始める。冒頭部分を訳してみた。</p>
<p>第一セッション アヌロマ<br>
<br>
意識を回復する時点というのは特定できない。いつ眠ったかを特定できないのと同じである。ベッドの中の男はそのことを考える。メタファとしてみれば、その意味するところは明らかだ。生と死は記憶されえないという点で同じである。記憶されえないものは存在し得ない。現実ではない。これほど簡単な事実を今まで気づかなかったのか、と思った。<br>
男は目を軽く閉じ続ける。まぶたの裏の茶色の中に、かすかな色の点々が泳いでいる。すぐに姿を現した。空のように青いがウンを羽織った若い娘。ひげを生やし栗色の巻き毛の医者。好むと好まざるとにかかわらず、回復の瞬間を味わう。ようやく男は頭を動かす。若い男が言う。「もどってきましたね」<br>
男は笑う。そして言う。「ずっとここにいたさ」<br>
「話したいですか?」<br>
男は頭を軽く枕に預ける。「わたしの見るものを話そう」<br>
「いったい何を?」<br>
男は考える。そして言う。「ドアだよ」<br>
「どんなドアです?」<br>
「大きなドアだ。幅が広い。分厚いパネル。薄い灰色に塗られている。ペンキを塗りたてだ」<br>
「それが重要なのですか?」<br>
「閉まっていたんだ」<br>
「どうして?」<br>
「わたしが自分で閉めたからだ」<br>
*************<br>
男はベッドの中で身じろぎする。清潔なベッド、やっと清潔だ。あごに触れるシーツ、ぬくもり。感情が男の中に生まれる。注意深く観察する。幸福ではない。だが幸福などほしくない。幸福は不均衡だ。きっと精霊の気を逆なでするだけだ。精霊は美しい。だが常に悪魔が忍び入る。同じ守る者とてなき門から。あの門が再び開いてほしくない。その必要はないのだ。<br>
では、満足か? だが満足とは、仕事に疲れ果て猫背になった人間のための言葉だ。商店主が夜にドアにかんぬきをかけるときに満足を感じるだろう。満足とは意識しないということだ。テレビの耳あたりのよい言葉、寝る前のココア、不満なく年をとること。意識しないとは真の意味で死だ。<br>
平穏。まさしくそれだ。だがそれはありえない。平穏とは感情ではない。事実状態だ。一瞬の、変化の停止だ。自分は混乱しているのだと思う。今までもずっと混乱していたのだ。時々ほんの一瞬、事態がはっきり見えるような気がすることはあるのだけれど。カーテンの穴。そこから一瞬だけ、向こう側を覗き見ることができる。<br>
*************<br>
「それは見事なメタファですね」<br>
何ということ、自分は声に出して話していたのか?<br>
声の主は微笑む。「ここは言葉を声に出して話す場所です。ドアの話をしてください」<br>
男は目を閉じる。ドア。ドアについて話すことはたくさんある。</p>
<p>(以下次号)</p>
<p>silvering at 14:29 │Comments(14) │TrackBack(1) │読書<br>
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1. 英国SF協会賞 [ 馬とSFの日々 ]  June 11, 2004 15:40<br>
ここらでまとめておく。<br>
この記事へのコメント<br>
1. Posted by silvering  June 04, 2004 19:53<br>
設定がつかみづらく、読むのも訳すのも難航している。どこかの医療施設か研究所に収容されている男が記憶を探りながら見た夢を語る。高校生のころの学校の記憶・・・。美術で表彰されメダルをもらったり、部屋から望遠鏡で学校を覗いて女性の姿を見たりなど、とりとめのないなぞめいた内容。現段階ではまだ筋がよく分かりませんので、コメントは控えます。<br>
2. Posted by silvering  June 06, 2004 00:47<br>
題名はアイルランドの伝説の女神グローニャのことらしい。グローニャというのはケルト語で愛とか恋とかいう意味だとか。<br>
で、いろいろぐぐってみたが、この小説、基本的には、作者ロバーツをモデルにした作家兼絵描きの男が、女神グローニャと同じ名を持つ女性と知り合い、この女性を通じて東洋と西洋をつなぐ一大事件にまみえる──というようなストーリーらしい。</p>
<p>
話は、精神病院らしき病院に収容された主人公の男と、その主治医らしきひげの若い医師の対話で進行する。男は、過去の物語を医師に語る──だが、作家の性か、いろいろと脚色せずにいられず、なかなか話が進まない。この男の高校時代からの生い立ち、そして、女性との出会い、が、少しずつはぐらかしながら語られるのだが、この辺りの語り口が独特で、非常に読みにくく、ストーリーがつかみにくい。何度も前後を読み返して解釈しなければならない。</p>
<p>
ページ数にして180ページだからすぐ読み終わるわい、と多寡をくくっていたが、そうは問屋が卸さなそうである。</p>
<p>ある程度内容を把握してから感想は書きます。<br>
3. Posted by silvering  June 06, 2004 00:50<br>
なんだか、自分の母親のことをThe
Motherと表現し、医師にhismotherといわれてtheMotherと訂正するなど、やけに大文字単語が多い。自分の過去を神話化しようとする男の作為的表現なのだと思われるが、それだけに翻訳は厄介そうで頭が痛い。<br>
4. Posted by silvering  June 06, 2004 01:46<br>
第2セッション アブハサラ<br>
「アブハサラ?」<br>
「ブラーミンの概念だ。輝ける世界。その存在は自らを照らす。喜びを食って生きる」<br>
「あなたはそこへ行ったのですか?」<br>
男は頭を振る。「一時たりとも行ったことはない」ベッドから周囲を見回す。天井の照明は消えている。だが夜は明けきっていない。彼女はこの時間を青い時と呼んだ。夜明けの黄昏。鳥のさえずりを夢想する。だがそれは正しくない。病室の窓は二重ガラスになっている。<br>
「彼女は?」<br>
「グレイン──」<br>
患者は眉をしかめる。彼は言う、「まだ仕事の時間じゃないだろう」<br>
ひげの男は微笑む。「それはどうでもいいですよ。あなたが目を覚まし、私も来たんですから。よく眠りましたか?」<br>
相手は目をそらす。「大きな影たちが動いていた。私は一度やつらに呼びかけた。だが、効果はなかった」見つめ返す。「ひとは時々、道を踏み外すものだ。今もそう」<br>
「彼らの名は?」<br>
「昨日言ったはずだ」沈黙し目をぱちぱちさせる。ついに言う。「私は疑いに屈し、今もその疑いを捨てきれない」<br>
「なぜです?」<br>
男は考える。「くだらない話をしただろう。一部の非常におろかな連中のやったことだよ」<br>
「あなたはある計画のために働いていたといいました」<br>
相手は両手を動かす。「額縁が必要だと感じていたんだ。その文脈でこそ、彼女は奇跡になると思った」<br>
「では、まだ真実を話していないのですね。今までのはただの背景だと」<br>
相手はまた眉をひそめる。「物語は存在する。しかしながらその外側に存在するものがある」<br>
「特異は一般を物語るといいますね」<br>
「それが合理的なアプローチだと思っているのかね? あるいは私が必要以上に野心家だと? それはいつも失敗だった」<br>
ひげの男は考え深い表情になる。まるで、いかなる答えも今すぐする気はないかのようだ。ついに彼はうなずく。「もし百万人が飢えているという話を読んだとしても、われわれには何の意味もありません。腹のふくれた子供の写真こそが、われわれには意味がある。そういうことだと思いますが」<br>
患者は微笑を返す。「その通りだ」彼は言う。「ほかには言いようがないね」<br>
「あなたが美術学校を去ったあと、何が起こったのです?」<br>
**********<br>
母親は彼の部屋をペンキで塗りこめた。卵の黄身の色、戦艦の灰色。それは外側の茶色とクリームの色と調和しなかった。そのむかつく壁の一つに彼は図面を貼った。その上に、こいつは役に立つかもしれないと今まで思った人間の名前を書き連ねていった。それと電話帳から抜粋した会社の住所。手紙が戻ってきたら消した。黒いフェルトペンで丁寧な真四角を描いて塗りつぶした。やがて彼は背をかがめて庭のりんごの木を見つめた。葉が落ちる季節だった。枝にとまる鳥たちが羽をふくらます。そのせいで不自然なほど大きく見える。彼は映画の仕事をやめていた。父親は決して許さなかった。彼は今小さな自動車修理工場で働いている。炭素除去とタイヤ交換、運転代行。結果として収入は増えた。時には週に五百セント稼いだ。<br>
遠くノーザートンでパーティーがあった。招待状が来たが、彼は無視した。天国と地獄が同じように彼に近づいてきていた。<br>
ある日シーラという娘がたずねてきた。だしぬけに。そのすらっとした訪問客に、彼は一瞬息を呑んだ。彼女は看護婦として、死者の脚に名前を書き付けるような仕事を探した。今、彼女は小さな美容院を経営していた。そしてしっかり儲けていた。彼女と駆け落ちしてしまおうか。だが、彼女の母親は皮肉屋だ。破綻した婚姻が、決して修復されることはない。<br>
**********<br>
「もうひとつのラストチャンス、ですか」<br>
「その時がそうだったと思う」<br>
**********<br>
さいしょ、その会社は彼の電話に出なかった。彼は首をかしげた。電話線の断線した雑音に気づかなかったのだ。とうとう彼は面接にこぎつけた。彼の将来の雇い主は、明るいゆったりしたスーツを着た小男だった。訛りがひどく、角ぶちのメガネをかけ、髪にはウェーヴがかかっていた。会社は彼をしごきにしごくだろう、それは間違いない。だが準備万端だ。いいチャンスになるだろう。雇主は饒舌だった。金は街に転がっている、それを理解することが重要だといい、そのフレーズを何度も繰り返した、金は街に転がっている、と。雇い主は、まず彼に週六ポンド一〇を支払った。ちょっとした小金だった。<br>
その工場は、隣の商業都市の裏通りにあるちっぽけな店の経営だった。薄汚れた綿のカーテンが頭上の高さまで窓を隠していた。片側には照明設備のついた写真スタジオがあったが、使用されているのを見たことがなかった。よく販売員がそこでコーヒーを飲んでいる。店長ともどもポーランド人だ。写真家はフリー州出身の男だ。顔に奇妙なあばたがあり、目は強い青色。時々、ベルファスト監獄の虐待行為を暴くビラ配りをしている。店長のフレディ・ランドは彼に、早いところ切り上げろと小言を言う。だが決して怒ることはない。<br>
ときには家に帰るのにヴァンを貸してくれることもあった。贅沢は際限を知らない。昼食時には、彼は小さな動物公園を見晴らす年季の入ったレストランを経営していた。ウェイトレスも年季が入っており、料理はたいてい冷たかった。おれはビジネスマンなんだから、と彼は自分に言い聞かせた。<br>
**********<br>
「どんなビジネスだったのですか?」<br>
**********<br>
彼の最初の仕事はフォトレタッチだった。エアブラシ画家のリチャードは、髪の生え際までつながった黒いひげの辛気臭い男だった。毎日根気強く高いスツールの上に座り、ネガフィルムから作った顔に向かってふぅふぅやった。一〇ץ??サイズの小太りの子供たちの顔が、彼の筆で鮮やかに彩られた。時々気分が乗ってくると、彼は上司にたてついた。その声は、羽目板のパーティション越しにこだました。わけのわからない音節の嵐が。だが週に二日、時に三日は、彼は表に出た。販売員はいま、オックスフォード近郊の不動産に取り組んでいた。たいてい彼らは牛と門商会を代表していると名乗っていた。だがHPの海千山千は、決して騙されなかった。ある朝早く、お宅の上司は誰かと女性に尋ねられ、戸惑ったこともあった。<br>
彼の仕事は配達だった。安っぽい錫のフレームの写真を積んだテムズのヴァンに乗って。仕事は本質的に、極めて単純だった。写真を配達するたびに、受取証をもらうのだ。主婦のサイン、夫のファーストネームと、代理署名。ともかくそれは、常に引きのばされた鋼板だった。</p>
<br>
<br>
<p>──ふぅ、難しい、青息吐息だ。<br>
5. Posted by silvering  June 06, 2004 23:30<br>
精読方式に切り替えた。分からないところを全部余白に書き出す。段落ごとに要約を記入する。</p>
<p>
するととたんに面白くなってきた。文体が回りくどく韜晦だらけで、流し読みすると筋が分からなくなるせいで、面白くなかったことが分かった。</p>
<p>
主人公のが画家くずれで作家になった男が、グラーニアという女子大生と知り合って以後の自分の人生を医師に語る。この男は1冊目の本を出し、2冊目に取りかかる。グラーニアはオックスフォードでジャーナリストの端くれになりながら、主人公とつきあうが、なかなか男女関係にならない。今、この2人がキャンプに出かける辺りまで読んだ。<br>
この調子なら、明日ぐらい読み終わるかも。<br>
6. Posted by silvering  June 07, 2004 04:33<br>
第2セッション読了。<br>
主人公は結局、グラーニャの性の奴隷となり、本の執筆も手につかなくなる。このグラーニャという女性は、自分の名前の由来となったケルト神話のグラーニャの伝説に異常に固執し、それを実践しようとしているらしい。この神話のグラーニャは、ある男をものにしようとするが断られたため、自らを土で汚して再度この男を誘惑し、ものにする。主人公はグラーニャを父にあわせ、グラーニャは父を気に入るが、その2週間後に父は死亡する。主人公はある日、グラーニャの神話再現の実験台にされているという疑念から、遂に同棲していたアパートを後にする。</p>
<p>
ケルト神話へのこだわりがロバーツらしいという気がするが、全然SFにならないんだが──(笑)</p>
<p>
第3セッションは、またモードを変更して速読中。1セッションごとに速読?精読の2回読みでいこうかと思う。</p>
<p>
それと、やはり、己の英語語彙力の低レベルを痛感する。またここらでひとてこ入れせねばなるまい。特にイディオムが、からきしだめである。英語を話せるようになりたいという願望は皆無といってよいのだが(旅行も嫌いだし)、どういうわけか読む方は、日本語と同じように読めるようになりたいという願望が強烈に強い。それもSFを読むことに限定してである。我ながらどういう人間だ。私のSFへの愛はそれぐらい強いのだ。SF以外のジャンルには、全く興味がないのである。</p>
<p>
で、第3セッションを途中まで読んだ。主人公はグラーニャと別れた後(とはいえ、アパートにエージェントの連絡先を書き残すあたり、未練が残っていて笑えるのだが)、芸術家連中のたむろする界隈に間借りし、2作目の小説に取りかかろうとするが、集中できず、食うに困りアルバイトを捜し始める、というところまで。<br>
今から一気に最後まで斜め読み速読予定。わかってもわからなくても、今日中におしまいまで読んでやる。<br>
7. Posted by silvering  June 07, 2004 04:41<br>
この本の読み方を決めた。</p>
<p>
1)わかってもわからなくても速読し、大まかな粗筋を味わう。(今日中)<br>
2)第3セッションから精読し、訳せない部分を余白に抜き出す。<br>
3)単語やイディオムを調べてリスト化し暗記する。<br>
4)全訳する。<br>
5)一太郎ファイル化し、製本サービスに申し込む。(限定2部)<br>
8. Posted by silvering  June 07, 2004 14:34<br>
~106p</p>
<p>
主人公ビウ゛ァンは広告業の男と知り合う。その伝手でくだらない原稿を書いて食いつなぐが、精神的にはどん底に陥る。気分を一新しようと郊外に部屋を借り、そこで自立した生活を送る彫刻家のロリー・ストラトフォードに出会う。</p>
<p>というような話の流れ。</p>
<p>
知らない単語などは引かずに適当に読み飛ばしていることや、夕べ寝ながらいいかげんに斜め読みした部分も含んでいるため不正確ではあるが大体そんなところだと思う。</p>
<p>
正直、話が進まずいらいらする。ロバーツって全部そうなんだけどね。やたら叙情的で、ディテールを詰め込み過ぎ。それも英国の田舎を描き過ぎ。興味のない人間には相当つらい。肝心の頭のいかれた女子大生はどうなったんだ? とっとと書きやがれよ、と腹が立ってしまう。俺、長くて冗長で詰め込み過ぎの割に話の進まない小説、大嫌い。この作家、かなり嫌いかも。それに引き換えボブ・ショウは読みやすくていいなぁ。<br>
おまけにこの本の嫌いなところは、どうでもよいこの語り手の男の内面の葛藤とか生活の疲弊ぶりとかを不必要なまで詳細にもったいぶって書いていること。恐らく作者自身の私小説的部分が多分にあるんだろうから、作者がこれを書く主観的必然性は理解できるのだが、それを人前に出さないでよ、オナニーは独りでやれと苦情を言いたくもなってしまう。文字通り自慰表明じゃん。</p>
<p>
これだけ嫌いなところを書きなぐっておけば、心理的に可愛そうになって少しはこの本の残りを面白く読めるようになるだろう。そんな打算を込めて、貶させてもらった。<br>
9. Posted by silvering  June 08, 2004 01:29<br>
何だか、激しく予想通りな展開なんだが──</p>
<p>~p132<br>
ある日テレビを見てたら、グラーニャがニュース番組のカリスマキャスターとして登場する。歯に衣着せぬ辛辣なコメントとアイドル的容姿で一躍視聴率女王に──。ビウ゛ァンはすっかりグラーニャのマニアに変貌し、雑誌新聞を買いあさり、テレビを録音(録画? 過去の話のようなので、recordとあっても、時代的にどちらか識別できない)しまくる。そしてある日、グラーニャは、テレビでビウ゛ァンの著書を掲げ、暗にビウ゛ァンにメッセージを送る。ビウ゛ァンは再会を予期し、そして遂にある日、グラーニャはお忍びでビウ゛ァンを訪ねてくる。<br>
以上がセッション3の概要。</p>
<p>次がセッション4 アラニャカ(森の教育)</p>
<p>
現在のパートで、男と話していた医師がいなくなり、代わりに看護婦らしき女が話を聴く。(この舞台設定が今ひとつ謎めいたままである)</p>
<p>回想の内容は──<br>
グラーニャはビウ゛ァンにある頼み事があるという。その頼み事は翌日、手紙で送られてきた。ビウ゛ァンは仲間たちをかき集め、あるスタジオでグラーニャの番組制作を行う。ビウ゛ァンの生活に転機が訪れる──</p>
<p>
正直この辺りは、メガネが壊れて視力0.05の状態で読んでいたため細かい部分が心もとないが恐らく上記のような内容だったと思う。</p>
<p>正直言って、</p>
<p>
と て つ も な く が っ か り し た 。</p>
<p>
陳腐過ぎて意外性も何もない。何よりこの女を神話になぞらえて賛美するような書きぶりが気に食わない。ロバーツ、私とは感性も思想もあわないようだ。</p>
<p>
これ作品、これ以上読んでも無駄だろうが、まあ、万に一つ『意外な結末』で大逆転する作品も過去に例がないわけではないし、一応受賞作である以上、仕方なく読むことにしよう。</p>
<p>
確かに偶然読んでいる途中でメガネが壊れたことにより、この作品の印象が半減していることは間違いないが、この作品がほんとうに優れていればメガネが壊れたごときのことで印象が落ちることがないのも事実である。<br>
10. Posted by silvering  June 08, 2004 03:22<br>
第4セッション(p151まで)読了。寝てしまわないように無理矢理音読した。</p>
<p>
展開は予想通りなのだが──飛躍が激しくてちょっと面白くなったかも。</p>
<p>
グラーニャはさんざっぱらセンセーションを巻き起こし金儲けした挙げ句、世界には黒人と白人がいる発言をして不評を買い、引責引退する。名誉毀損等の訴訟沙汰が政府や著名人との間で起こっていたが、引退してくれればいいと思っていた彼らはこれにより沈黙。グラーニャはケルト神話と仏教を融合し、キリスト教なども取り込んでしまった「女性教」ともいうべき自然発生的な新興宗教の教祖然とした存在となってしまう。グラーニャがテレビで活躍した米国ではグラーニャ復活を望む声が起こり、テレビ局は番組再開をオファーするがグラーニャは一貫して拒む。またグラーニャのエージェントとして活動していた主人公ら5人は今やもうけた金でそれぞれの事業を成功させる。<br>
グラーニャの女性教は女性こそ自然な人類の形態であるとするものであるようだが、それを単に事実として発見しただけであって、男性を蔑視するものではない。女性の共同生活が基本であり、婚姻も否定されるので、子供を作るためには男性との間に「交友関係」を結ぶ。<br>
グラーニャはもうけた資財を投入し、ローマ宮殿に模した大邸宅を建造する。そして、5人の彫像を作って運んでほしいと主人公らに依頼する。主人公らは1つ目の彫像を運び込み、この大建築に息を飲む。ひとり残った主人公は、自家製飛行機に乗せられて、魔法の国エイランへと連れ去られる──</p>
<p>どう。やっと話が動いてきたでしょ?<br>
もったいぶった語り口がうざいが、最終章で逆転もあるかも知れんという気がしてきた。<br>
11. Posted by silvering  June 08, 2004 05:17<br>
あああ、読み終わってしまいますた。</p>
<p>
魔法の国エイランとはアイルランドだった(この辺りで男は既に『もう一つの時間流』=より巨視的な神話レベルの歴史の流れの中に入り込んでる)。男は、西南に進み、グラーニャの「母」=空の女の像を目にし、西南の果てにたどり着き、巨大なグラーニャの砦を見る。男の説明によると、グラーニャは『歴史の時計の針を1000年戻した』。かつて女が与え、受け取るものであり、男はその間を漂う種だった。やがて男が自我に目覚め、貨幣や資本主義を発明し、『文明』を築き世界を変えてしまった。その後の歴史はウパニシャッドや神々、教会の戦いの歴史だった。その時計を針を戻そうとしているのだ。グラーニャは、文明は3つ目の世界大戦を予定しているという。グラーニャが行おうとしているのは主に仏教に感化を受けた、宗教ならぬ『進歩』であった。<br>
『シャツウェスター』の運動は世界各国に飛び火し、各国政府が憂慮を始める。ローリーは主人公に『何故グローにアは俺にこだわったのか』ときかれ「規則を演じたからだ」と答える。<br>
やがてグローニアは毒を盛られ暗殺される。主人公は警察の取調べを受け釈放される。男は再びアイルランド行きの飛行機に乗り、機上でグローニアによく似た女(実はこっちが本人?)と乗り合わせる。男の記憶ではその後ダブリン空港で医師らに迎えられたというのだが、これは事実と反していた。医師らによると、男は何年も彷徨い瀕死のところを英国内で保護されていたのであった。男は「二重の時間が流れている、我々は皆同時に両方の時間に存在している」と説明し、医師はそうかも知れないと思い始める。男は「これからの一万年が最も興味深い時代だ」と語り、物語が幕を閉じる。</p>
<p>
結局これはSFなの? グローニアの紡ぎ出した、ケルト神話と仏教をベースにした地母神的思想が引き起こす歴史のうねりを、巨視的時間軸と、男の生い立ちに始まる微視的時間軸の両面から二重写しにした、壮大な幻覚小説というべきか。半分男の妄想も混じっているのではないかと思わせる、『語らない部分』を多く残すラストの余韻は結構深いものがある(悪くいえば『尻切れとんぼ』の印象もある)。何とも奇々怪々な、ロバーツならではの奇妙な味の幻想小説である。韜晦的な語りも非常に読みにくい。またケルト神話や宗教に関する知識も要求されるため、必ずしも分かりやすくもない。</p>
<p>
ある意味で、こんな小説を読んだのは間違いなく初めての経験であるので、好き嫌いは別にして、こんな小説もあるのだという勉強になったのは確かである。</p>
<p>パラメーター<br>
幻覚度    ★★★★★<br>
宗教度    ★★★★<br>
ケルトヲタ度 ★★★★<br>
地味度    ★★★★★<br>
わけわからん度★★★★<br>
女尊男卑度  ★★★★★<br>
12. Posted by silvering  June 08, 2004 12:38<br>
さて、約束通りこの本は、今から再度精読し、わからない単語やイディオムを抜き出して調べ、快楽を味わう。<br>
小説としてよりも、その方が楽しかったりして。苦手な本は、英語のリーディング教材やボキャブラリー教材だと思って、高校生気分で読むととたんにべらぼうに面白くなったりする。この本はぴったりだ。<br>
そして、単語カードにして発売する。いや、それよりもオンライン単語カードを開発した方が売れるかも。ウヒヒヒヒ<br>
それを訳本とセットで売り出す。間違いなく10部は売れるな。ムハハハハ<br>
13. Posted by silvering  June 11, 2004 04:20<br>
この小説、再読したらもっと面白いかも。<br>
今、上の感想をざっと見て、似た作風の作家を思い出した──。荒巻義雄! あのテイストにかなり近いものがある。雰囲気は「ある晴れた日のウィーンは森の中にたたずむ」(超大好き!)とか、「アレキサンドリヤ石」とかに近いかも。幻想というか幻覚というか、現実と狂気がないまぜになった、誇大妄想的な超現実的私小説──。</p>
<p>
うん、そうだ。この作品はやっぱり傑作なんだ。ただレベルが高過ぎて、一筋縄ではいかないだけなんだよ。</p>
<p>
もし訳すとしたら、モロ荒巻文体にしなきゃダメだな。<br>
14. Posted by silvering  September 05, 2004 02:22<br>
採点。</p>
<p>テーマ性 ★★<br>
奇想性  ★★★<br>
物語性  ─<br>
一般性  ─<br>
平均   1.25点</p>
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