想風月華
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想風月華
ja
2007-04-23T03:47:46+09:00
1177267666
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【届かぬ祈りの果て】
https://w.atwiki.jp/benhino3/pages/78.html
<p>明るさは 夜独特の闇に犯され、空には静々と帳が降ろされた。</p>
<p>今宵は満月。庭の澄んだ池には、掴めそうで掴めない月が色鮮やかに舞い降りている。</p>
<p> </p>
<p> 「―――…今宵は望月、なんだ…」</p>
<p> </p>
<p>俺は一人、縁側に腰掛けて夜空を見上げた。</p>
<p>きっと、今の俺はいつも以上に情けない顔をしているだろう。</p>
<p>こんな顔は朔には…ましてや彼女には絶対に見られたくないななどとぼんやりと思う。</p>
<p>こんなこと 俺が言う資格なんてないけど――正直、満月の夜は辛い。元の世界へ帰ってしまった彼女を思い出してしまうから。</p>
<p>苦笑をもらして、俺は自嘲気味に空から視線を逸らした。</p>
<p> </p>
<p> 『 景時さん 』</p>
<p> </p>
<p>あの声が笑顔が、脳裏に甦る。</p>
<p>くるくると目まぐるしく変わる表情は、いつも忙しなく周りへと向けられていた。―――でも、</p>
<p> </p>
<p> 『……ありがとう、ございます…』</p>
<p> </p>
<p>あの…照れたような笑顔は。頬を真っ赤に染め、はにかむように俺を呼ぶ君だけは。</p>
<p>今となっては自惚れかも知れないけれど、</p>
<p> </p>
<p> 「俺だけのものだって…思ってたのに」</p>
<p> </p>
<p>痛いね。今でもこんなにも―――君のことを想ってる。</p>
<p>ぽつりと呟いた言葉は もう誰にも届かない。</p>
<p>焦がれた月は行ってしまった。腕を伸ばしても、届かないものは必ずあるのだ。だから…</p>
<p> </p>
<p> 「――――好きだよ」</p>
<p> </p>
<p>せめてこれだけは、この気持ちだけは 誰にも譲らない。</p>
<p>君に逢えた。</p>
<p>それだけで、十分だった。</p>
<p align="right"><strong>【届かぬ祈りの果て】</strong></p>
<p align="left"> </p>
<p align="left">&#
2007-04-23T03:47:46+09:00
1177267666
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【雨に咲く花】
https://w.atwiki.jp/benhino3/pages/77.html
<div align="left"> </div>
<div align="left">散る花は今にも泣き出しそうな天に溶け消えてしまいそうなほどに白かった。<br />
ぴんと張り詰めた空気に冷ややかともとれるその無垢な白さは、この世界の終焉の中でさえ美しく映えるのだろう。<br />
それを見 ぼんやりと思考を巡らすオレはらしくなく、はたから見れば何を思い詰めているんだと思われる可能性が十分に高い。<br />
その証拠に、今まで何人もの知り合いがオレに声をかけていった。</div>
<div align="left"> (別に思い詰めてなんかねぇんだけど)</div>
<div align="left">思い詰めてるのは寧オレよりもあいつらだろ。<br />
オレは人知れずひっそりと溜息を吐いた。ったく…あかねも詩紋も 一人で抱え込み過ぎだ。隠し事が苦手な分、何かを悩み出すとすぐに顔に出る。…でも、</div>
<div align="left"> 「……んなにオレ、頼りないか…?」</div>
<div align="left">どうしたって聞けば、何でもないよと何事もなかったように笑顔返してくる。<br />
…心配をかけないようにしているのはわかるけど。だけど 少しくらい話してくれたって、</div>
<div align="left"><br />
空に視線を移すと、まるでそれを待っていたかのように雨が降り出す。<br />
この分だと暫く雨は止むことはないだろう。弱ったな…と苦笑気味に呟いてふと、今自分が雨宿りをしている巨木に目を奪われた。</div>
<div align="left">雨にうたれてはらりと散る花。それは何よりも弱く儚く見えて、</div>
<div align="left">「―――あかね、」</div>
<div align="left">優し過ぎて人知れず涙を零してるお前にそっくりだよ。<br />
お前を想ってこんな風に笑うのは 一体何度目になるだろう。<br />
オレも馬鹿な奴だなと自嘲の笑みを零し、未だ止みぬ雨に想いを託した。</div>
<div align="left">
2007-04-05T10:42:14+09:00
1175737334
-
【やさしいよるは】
https://w.atwiki.jp/benhino3/pages/76.html
<p align="left"> </p>
<p align="left"> 『 あか ね 』<br />
「あなた…は、」<br />
<br />
優しかったの。その手のぬくもりは…とても、とても。<br />
すべてのはじまり―――雨空の下、橋の上。<br />
<br />
<br />
<br />
<strong> 【やさしいよるは】</strong><br />
<br />
<br />
<br />
どうして。<br />
あなたはもうここにはいない。<br />
幸福な時間に包まれていたのは、私の人生にとってほんの一瞬でしかない。<br />
<br />
「季史さん」<br />
<br />
愛しい人の名を紡ぐ。<br />
ただ寂しがり屋で、ただ誰かに愛されたかったあの人。<br />
人を愛すことも―――人に愛されることも知らなかった……不器用なあの人。<br />
私の頬を伝う滴を拭ったぬくもりは、確かに私の記憶に肌に刻まれている。<br />
<br />
<br />
「季史…さん」<br />
<br />
<br />
透明が、私の頬を打った。<br />
冷たい温度は、私から確実にあなたの体温を奪おうとする。<br />
冷えた身体を縋るように抱き締めて、私は目を耳を心を塞いだ。<br />
目を閉じれば何も見えない。耳を塞げば何も聞こえない。<br />
心を閉ざせば誰も――――私を傷つけたりなんかしない。<br />
<br />
<br />
<br />
『あかね』<br />
<br />
<br />
<br />
声が、聞こえる。<br />
あの人は…私が何者でも構わないと言った。二人ならば、恐れるものはもう…何もないと。<br />
<br />
「…行かな、いで…」<br />
<br />
掠れた声音で言葉を紡ぐ。<br />
求めなければよかった。ずっと…忘れてしまっていた。<br />
私の幸せは欲しかったものは、全て指の間からすり抜けていくのに。<b
2007-04-01T14:00:44+09:00
1175403644
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【春の夜の】
https://w.atwiki.jp/benhino3/pages/75.html
<p align="left"> </p>
<p align="left">声なんて――――かけられる筈なかった。<br />
<br />
<br />
一瞬、天女が空から舞い降りたのかと思った。満開の、美しい夜桜の下、少女はいた。<br />
通りすがり 微かな嗚咽が耳朶を掠めて、こんな夜中にと思って足を運んだ…この美しい桜並木。<br />
独り人気のない桜の巨木の下、少女は一人泣いていた。<br />
<br />
「……さん…っ」<br />
<br />
年は同じくらいだろうか?<br />
ない人目を憚らず、嗚咽をもらし、どうしてと…少女は髪を振り乱して泣いていた。<br />
<br />
どうせ男にでもフラれたのだろう。<br />
そう思って面倒なことの起きないうちに退散しようとしたオレの目に止まった、少女が手にした変わった形の刀。<br />
…少女の物だろうか?だが、普通の少女がこんなものを持ち歩く筈がない。<br />
長く色鮮やかな髪の隙間から垣間見える美しい二対の翡翠。それから溢れる涙を拭う事もせず、少女は立ち上がって手慣れた様子でそれを掲げる。<br />
<br />
<br />
―――それは一瞬のことだった。<br />
<br />
<br />
息をすることも忘れた。時さえも止まったように思えた。<br />
それは見たことのない剣舞。舞を舞うかのように華やかで、花弁を断ち、風を断ち、己を断つ…鋭い太刀筋。<br />
毅然と上げた面は 息を呑むほどに決意に充ち満ちていて。<br />
<br />
( 驚いたな… )<br />
<br />
視線が逸らせない。<br />
生まれて初めてだった、こんなにも一人の誰かに魅せられたのは。<br />
<br />
声をかけようとは思わなかった。…いや、声なんて―――かけられる筈がなかった。<br />
そのひとつひとつの動作は洗練されていて、邪魔をするのも野暮に思える。<br />
そして何より……少女の瞳に浮かんだ光は、何かに堪えているかのよう
2007-04-01T13:48:07+09:00
1175402887
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第二章―四【半】―
https://w.atwiki.jp/benhino3/pages/74.html
<p>―四【半】―</p>
<p>ねぇ、あんたってどこからきたの?<br>
―――――――ぼく・・?<br>
そう、あんた。<br>
―――――――たぶん・・・きみのしらないとってもとおいところから。<br>
ふぅん・・そこはどんなところなんだい?<br>
―――――――え?<br>
あんたにとって、そこはどんなばしょかってことだよ。<br>
―――――――ぼくにとって・・・<br>
そ。<br>
―――――――んー・・ひとことじゃむずかしいな。きみはどこからきたの?<br>
おれ?おれはどこからもきていないよ。ずっとずっとむかしからこのばしょにいる。<br>
―――――――そうなんだ?じゃあきみにとっての『ここ』はどんなばしょなの?<br>
おれにとって?<br>
―――――――だってぼくだけこたえてるんじゃつまらないでしょ?<br>
なるほど。おれにとって・・か。はじめてきかれたよそんなこと。あんた、おもしろいな。<br>
―――――――そうかな?<br>
そうだねぇ、おれのことなんかきくようなものずきは
あんたいがいでいままでにふたりだけだよ。<br>
―――――――ふたり、だけ?<br>
・・・・・・・ききたいの?おれにとっての『ここ』が。<br>
―――――――うん。<br>
じゃあきかれたてまえ、こたえてあげようか?おれにとっての『ここ』はね・・・</p>
<br>
<br>
<p>『もっともいとしくて
むかしからだいきらいな・・・いまいちばん
こわしたいばしょだよ。』</p>
<p dir="ltr"></p>
<p dir="ltr"><br>
あとがきという名の言い訳。<br>
なんだかよくわからん話。これから大変な事になるぞという感じを出したかったんです(苦笑)ちゃんとでてますかね??<br>
まぁ、次のお話からまた彗くん探しの旅(ぇ)が開始されますので
気長にお待ちください・・・。<br></p>
2007-03-25T09:37:54+09:00
1174783074
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第二章―四―
https://w.atwiki.jp/benhino3/pages/73.html
<p>―四―</p>
<p> 「んでもって入ったら入ったで
とっても素敵なお出迎えがあるってわけだ☆」<br>
「・・・つべこべ言わずにさっさと掃除しろ・・」<br>
『まったくだ』<br>
「はいはい」<br>
森に入ってすぐだった。目の前には
二十匹程の図体のでかい鬼の群れ。<br>
一人最低何匹倒せばいいんだ?そう苦笑気味に漏らした幼馴染の背を蹴り、俺は宙を舞った。</p>
<p> 「・・・一気に片付けるぞ」</p>
<p>
先手必勝だ。ずるいと頬を膨らませて構える戒斗へと不敵に笑って
俺は封珠を鬼へと一斉に投げつけた。</p>
<p> 「―――――“縛”」</p>
<p>馬鹿正直に一体一体倒していって
雑魚ばかりに体力を取られても仕方ない。まとめて倒したほうが効率的だろう。<br>
「うしっ行くか!!」<br>
『・・・面倒だな』<br>
「はあああああああああああっっ!!!!」<br>
俺が動きを封じて動けない奴らに殴りかかる戒斗と、面倒だと言いながら一体ずつ確実に砂へと変えていく銀麗。次々と鬼を倒していく戒斗に、修行はさぼっていなかったんだなと素直に感心してしまう。</p>
<p>
<em>『ああああああああああああああああっっ!!!!』<br></em> 「っ葵依!!」</p>
<p>
雑魚の中でも多少力のある鬼数匹が、弱めにかけた金縛りを破って
俺へと突進してくる。少しも頭を使わないその捨て身の攻撃に、俺は思わず唇を歪めて口を開いた。</p>
<p> 「―――――“滅”」</p>
<p>少し頭足りねぇんじゃねぇのか?
ついでにそう呟いたときには
既に全ての鬼が砂と化していて。<br>
「悪いっ大丈夫だったか?」<br>
「・・・あれくらいの事で焦ってるようなら
まだまだ修行が足りないな・・」<br>
『そうだな』<br>
「うっ!!」<br>
俺があれしきの鬼にやられるわけないだろう。お前も少しは頭を使えと軽く戒斗の額を小突き、俺は砂の山を踏みつけて先へと進み始める。<br>
「でもさっ師走の者の廃墟って
此処からだと結構近かったよな?」<br>
小走りに俺の隣りに並んで 戒斗が言う。<br>
「ああ、もうあそこに見えてるだろう・・?」<br>
「あーあれかっ」<br>
『・・・。』<br>
歩き始めて少ししたとき
2007-03-25T09:35:35+09:00
1174782935
-
【君と僕の間に】
https://w.atwiki.jp/benhino3/pages/72.html
<p><font face="Courier New">絆。<br>
<br>
<br>
<br>
君を守るという使命。<br>
<br>
<br>
<br>
君と僕の間にそれ以外の何があるというのだろう。<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
『君と僕の間に』<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
君の声が空に響いた。<br>
<br>
僕の名前を呼ぶ声が。<br>
<br>
その声は哀しみに満ちていた。<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
君が哀しむ必要なんてないのに。<br>
<br>
僕にも哀しむ理由なんてない。<br>
<br>
だけど。君と僕の眼から流れる涙は何なのだろう。<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
暖かい君の涙。<br>
<br>
君の腕に抱かれて。徐々に体温を失っていく僕の体。<br>
<br>
君は生きるべきで。僕は・・・・生きるべきではなかったんだと思い知らされる。<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
そうだ。僕は生きていたかったんだ。<br>
<br>
君がこの世界に来てから。僕は僕の生きる理由を持った。<br>
<br>
君を守ること。それは使命だった。<br>
<br>
それがいつしか希望になった。<br>
<br>
ずっと一緒にいられたのなら。そんなのただの夢物語だと知っていたけれど。<br>
<br>
君の言葉を信じてもいいのかな。<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
「・・・・弁慶さん。必ず助けるから」<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
震えることなく凛と響く君の決意。<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
君と僕の間には、永遠に続く物語がある。</font><br>
<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
*****</p>
<p>これでお題最後・・・みたいです。</p>
<p>
なんかもう、本当に<strong>BE・N・SA・MA・・・っ!!</strong>と叫びたいです(止めなさい)千都瀬様の文章、本当に好きです。いや、千都瀬様が好きで(強打)</p>
<p>
私のお題でSSを書いてくださり、本当に本当に有難う御座いま
2007-01-23T11:25:13+09:00
1169519113
-
【交わりしは・・・】
https://w.atwiki.jp/benhino3/pages/71.html
<p><font face="Courier New">運命。<br>
<br>
神のみぞ知る道。<br>
<br>
<br>
<br>
『交わりしは・・・』<br>
<br>
<br>
<br>
どうして?何で貴方なの?<br>
<br>
<br>
<br>
貴方でなければいけなかったの?<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
「はぁぁあぁぁっ!」<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
迷いを振り払うかのように、私は剣を振るう。<br>
<br>
<br>
<br>
ただただ、目の前の怨霊に立ち向かっていく。<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
「・・・神子」「望美」<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
リズ先生と九郎さんの声にも気付かない振りをした。<br>
<br>
<br>
<br>
今は何も話したくない。<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
「よしっ!次行こっか」<br>
<br>
<br>
<br>
「神子、剣先が乱れている。何かあったのではないか?」<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
わざと明るく振る舞ったけれど。<br>
<br>
<br>
<br>
さすがリズ先生。誤魔化せないな。<br>
<br>
<br>
<br>
先生はきっと気付いてる。<br>
<br>
<br>
<br>
だけど・・・・言いたくない。<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
「そんなことないですよ?ちょっと疲れてるだけです」<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
笑顔を無理やり作った。<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
「おい。先生に対して、その態度はないだろう」<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
九郎さんが私を嗜める。<br>
<br>
<br>
<br>
いつもだったら、素直に謝る余裕だってあるけど。<br>
<br>
<br>
<br>
今は。そんな一言で余裕をなくす。<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
「・・・からないくせに。私がどんな気持ちでいるかなんて分からないくせに!」<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
2007-01-23T11:20:28+09:00
1169518828
-
【たった一人のあなたへ】
https://w.atwiki.jp/benhino3/pages/70.html
<p>
…っと、これでいいのかしら?使い方は将臣殿から聞いたのだけれど…。<br>
……え?
“ぼたん”を押さないといけない?…ああ、ここを押せばいいのね?わかったわ、有難う。ふふっじゃあ
いくわね…</p>
<br>
<p align="center"><strong>【たった一人のあなたへ】</strong></p>
<br>
<p>これでちゃんと映ってるのかしら…?<br>
…これを見てる貴女は…きっととてもびっくりしているでしょうね。“びでおれたー”…っていうんでしょう?改まってこんな風に貴女へと文のようで文ではないものを残すなんてなんだか照れてしまうけれど…ちゃんと最後まで聞いてちょうだいね。</p>
<p><br>
――――望美、貴女がこれを見ているという事はもう私はそこには…貴女の隣にはいないのね。貴女と共にこの世界にとどまるのならこれを渡すつもりはなかったのだけど。結局…私は元の世界へと帰ってしまったの…。</p>
<p>
…言いたい事、貴女に伝えたい事はたくさんあるわ。だけど全部語り尽くすなんていくら私でもこんなにも短い時間では無理だから…ひとつだけ、最後にひとつだけ貴女に伝えます。今までも、これからも言うつもりだった言葉を……貴女に。</p>
<p><br>
望美。<br>
いつ何処にいたとしても私はいつも貴女を思うから。…私の半身だからというわけではないの、いつも明るくて…いつだって傍にいてくれた貴女だから。<br>
――――有難う。ずっとずっと大好きよ。貴女は私の一番の友達。いつまでも貴女の幸せを祈ってるわ…</p>
<br>
<p><br>
…ふぅ、こんな感じでいいのかしら?本当に緊張してしまったわ。<br>
え?…何かしら兄上?
……本当に帰る場合望美にこれを渡すのか…ですか?―――もちろん渡します。その為に撮ったんですから。</p>
<p>
……でも、こんなもの…出来る事ならあまり渡したくは…ないわね。私だってあの子とは別れたく…ないもの。</p>
<br>
<p align="left">【たった一人のあなたへ】</p>
<p><br>
あとがきという名の言い訳。<br>
なんか…難しかった;;何故か似非☆朔ちゃん的なSSになってしまいましたが、一生懸命頑張りましたよ~(泣)<br>
</p>
2007-01-20T15:57:40+09:00
1169276260
-
【冬の欠片】
https://w.atwiki.jp/benhino3/pages/69.html
<p><br>
「敦盛さんっメリークリスマス!!」</p>
<p>
楽しそうな笑顔。真冬にも負けないその明るい面差しに、私は今まで
何度救われてきたのだろう…</p>
<br>
<p align="center"><strong>【冬の欠片】</strong></p>
<br>
<p> 「くりすます…?」<br>
「はいっ!!…あ、そっかぁ…敦盛さんはクリスマスって初めてなんですよね??」<br>
「ああ…この前神子が話していたものか…」<br>
私の言葉に「そうですよっ」と楽しそうな声音が
耳朶を掠める。</p>
<p>…ここは神子の世界。そこで私は今
この世で一番清らかな人の隣りにいる。<br>
この夢のようで夢でない現実に、私は…言ってしまうと
今でも信じられない気持ちだ。<br>
……でも…<br>
「じゃあ今年は“ホワイトクリスマス”になるといいですね」<br>
「ほ、ほわいと…?」<br>
貴女が私に微笑みかけてくれるから。<br>
優しい面差しを 私に向けてくれるから。その笑顔が
この夢のような時間が嘘ではない事を教えてくれる。<br>
「雪の降るクリスマスの事を“ホワイトクリスマス”っていうんですよ」<br>
「そう、なのか?」<br>
「はいっ」<br>
降ったらすごくロマンチックですよね。<br>
降らないかなぁと空へと視線を投げる少女に倣い、私も一緒に空へと視線を向ける。<br>
「本当に……もう冬なんですね」<br>
何かを懐かしむように
ひとつひとつの言葉を愛しそうに紡ぐ少女。ふと空から視線を外し
そのまま少女へと向ければ、少し寒そうに体を強張らせていた。<br>
「……神子、寒くないか…?」<br>
「え?大丈夫ですけ…っくしゅ!!」<br>
私の問いに大丈夫だと答えつつ、小さくくしゃみをする神子。このままでは風邪を引く事は確実だろう。私は急いで自分の上着を脱いで
少女に羽織らせる。<br>
「ないよりはましだろう…」<br>
「こ、これじゃあ敦盛さんが風邪引いちゃいますよ!!」<br>
「…私はそんなに寒くない」<br>
慌てる少女に小さく笑みを零し、私が言う。それでも神子は徐に私の手を取り<br>
「手もこんなに冷たいじゃないですか!!」<br>
と 困惑気味に私に言う。<br>
「…て
2007-01-20T15:27:02+09:00
1169274422