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その花は、どこにでも咲いているような 野の花の如く。



【失ってはじめて、】



『泰衡さん』
初めて会った当初は ただの普通の娘に見えた。何故 このようなどこにでもいそうな娘
が、龍神の神子なのかと。自問自答を繰り返した。…だが、

『私は、絶対に皆を死なせたりなんかしない』

私の命に代えても。
その為にここにいると言い切った 凛と張った声音。真剣な面差し。そして…――――



『神子様は、野に咲く花のようなお方です』



何かを 慈し むよ う な……






「…野の花、か…」
静寂。ふと瞼を持ち上げれば 何もない真っ暗な闇の中。床から起き、外へと出れば見上
げる二対の丸い瞳。

「……何故、そこにいる」
「わふっ」

尾を振り、俺の足下へとすり寄って来る金。
…一体、お前も俺に何を言いたいのか。俺にそんな事は関係ないし、知る筈もない。……
けれど、




『泰衡さんっ』




…また、聞こえた。



「…神子殿、」



貴女の名を紡ぐ俺は なんて愚かしいことか。


自らを嘲るように笑い、ひっそりと夜明け前の空を一人眺めて。



俺が気付いたこと。それは――――




【失ってはじめて、】