想風月華
【失ってはじめて、】
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benhino3
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その花は、どこにでも咲いているような
野の花の如く。
【失ってはじめて、】
『泰衡さん』
初めて会った当初は ただの普通の娘に見えた。何故 このようなどこにでもいそうな娘
が、龍神の神子なのかと。自問自答を繰り返した。…だが、
『私は、絶対に皆を死なせたりなんかしない』
私の命に代えても。
その為にここにいると言い切った 凛と張った声音。真剣な面差し。そして…――――
『神子様は、野に咲く花のようなお方です』
何かを 慈し むよ う な……
「…野の花、か…」
静寂。ふと瞼を持ち上げれば 何もない真っ暗な闇の中。床から起き、外へと出れば見上
げる二対の丸い瞳。
「……何故、そこにいる」
「わふっ」
尾を振り、俺の足下へとすり寄って来る金。
…一体、お前も俺に何を言いたいのか。俺にそんな事は関係ないし、知る筈もない。……
けれど、
『泰衡さんっ』
…また、聞こえた。
「…神子殿、」
貴女の名を紡ぐ俺は なんて愚かしいことか。
自らを嘲るように笑い、ひっそりと夜明け前の空を一人眺めて。
俺が気付いたこと。それは――――
【失ってはじめて、】
【失ってはじめて、】
『泰衡さん』
初めて会った当初は ただの普通の娘に見えた。何故 このようなどこにでもいそうな娘
が、龍神の神子なのかと。自問自答を繰り返した。…だが、
『私は、絶対に皆を死なせたりなんかしない』
私の命に代えても。
その為にここにいると言い切った 凛と張った声音。真剣な面差し。そして…――――
『神子様は、野に咲く花のようなお方です』
何かを 慈し むよ う な……
「…野の花、か…」
静寂。ふと瞼を持ち上げれば 何もない真っ暗な闇の中。床から起き、外へと出れば見上
げる二対の丸い瞳。
「……何故、そこにいる」
「わふっ」
尾を振り、俺の足下へとすり寄って来る金。
…一体、お前も俺に何を言いたいのか。俺にそんな事は関係ないし、知る筈もない。……
けれど、
『泰衡さんっ』
…また、聞こえた。
「…神子殿、」
貴女の名を紡ぐ俺は なんて愚かしいことか。
自らを嘲るように笑い、ひっそりと夜明け前の空を一人眺めて。
俺が気付いたこと。それは――――
【失ってはじめて、】