想風月華
決してその手を離さない
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benhino3
分かっていたんだ
この闇から抜け出そうとしても
もう遅いということを――――
【決してその手を離さない】
「えへへっ」
隣に座る可憐な少女が僕に微笑みかける。
久々に2人でたくさんの話をした。他愛もない話を。
「どうしたんですか?そんな嬉しそうな顔をして」
「だって、弁慶さんとこうやってお話するの、久しぶりだから」
惜しみない笑顔を向けられて。僕は複雑な気持ちになる。
ああ。僕はいつまでこの笑顔を享受することが許されるのだろうか。
「長い間、留守にしていてすみませんでした。神子を守ることが僕の役目なのに」
「いいんです。他の人もいてくれたし。それに、薬師というのも大切な仕事でしょう?」
「君は本当に純粋で綺麗な心の持ち主なんですね。僕には眩しすぎるくらいです。でも、僕でない人と一緒にいたなんて、妬けてしまうな。僕の気持ちを知っていて言ったんですか?」
君は僕がどんなに汚い人間か知らないから。
綺麗すぎる君を少しでも汚したくて。僕は意地悪を言った。
「えぇええっ!?な、何を言ってるんですか!!そんな・・・っ」
「ふふ、冗談です。何事もなくて本当に良かった」
「もうー。びっくりするじゃないですか」
頬をふくらませて、怒ってる素振りを見せるが、それすら愛らしく見える。
くるくるとめまぐるしく変わる表情が愛おしくて。愛おしすぎて。胸が苦しくなった。
何も疑わないその瞳が痛かった。
「そろそろ日も暮れてきたことですし。部屋に戻りましょうか」
そう言って僕はその場から逃げ出すように立ち上がろうとした。
「えっ・・・・弁慶さん、待って・・っ」
彼女は僕の袖をきゅっと掴んだ。
「・・・望美、さん・・・?」
思ってもみなかった反応に、僕は驚いた表情を隠せない。
ゆっくり振り返ると、目に涙を溜めている君がいた。
「だって、このまま帰ってしまったら。弁慶さんが二度と戻らない気がして。根拠なんてなにもないけど。そんな気がする」
ああ。君は何て愛おしいんだろう。
「僕も君とずっと・・・一緒にいたい。君をここから連れ去りたいくらいです」
君とずっと一緒にいられるなら、どんなにいいか。
「だったら。一緒にいてください。どこにも行かないでください」
涙を流しながら君は言った。袖を握り締めて、もう離さないとでもいうように。
「そんなことを言うと、本当に連れて行ってしまいますよ?・・・ほら、帰りましょう」
黙って首を振る君の手をとった。ほんの少しだけ震えている君の手。
この先、僕は君を悲しませることになる。だけど。君を失うのはもっとつらいから。
君を守るために僕は悪魔にもなろう。
僕は決してその手を離さない。
千都瀬様からの強奪物第二作品目ー!!(どんどんぱふー/ぇ)
・・・ど、どうしたらこんな風に弁望を書けるのかしら・・?(は)弁様素敵ーっ望美が可愛いー!!!!(爆)
千都瀬様、本当に有難う御座います(涙)