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― 一―

 まわるよまわる うぐいすまわる

 めぐるよめぐる きせつはめぐる

いつかいつかのばしょにもきっと・・・



やがてふゆをもとかせし はるがくる。



 『―――――・・・い、・・だから・・・れが・・く・・・・って・・よ――――』
あの時、僕を庇った幼馴染は何を言っていたのだろう・・・?


 「・・・・う、ん・・・」
頭が、痛い。薄く閉じた瞼を押し上げ、僕は静かに体を起こした。
もうだいぶ長くなった前髪をかきあげながら辺りを見渡し、見慣れない部屋で寝かされていた事に気づく。
ふと隣りを見やればそこに、同じように布団に寝かされた少年が一人。
 「ここ、は」
 「・・・気がついたか」
 「え?」
思わず呟いた言葉に返答があり、驚いて声の聞こえた方を向く。
その瞬間かち合った意志の強そうな瞳に、どくりと鼓動が一つ跳ね上がる。・・・よく見知った幼馴染と同じ紅色の瞳。さらりと揺れた漆黒の髪。ただ違うのは、二対である筈の紅の宝玉が大きな三つの傷によって片割れのその美しい輝きを見せる事を阻んでいるところだ。けど・・
 「・・・気分の方はどうだ」
 「はっはい、大丈夫です」
なんて綺麗な人なんだろう。静かに僕の隣りに腰掛けて、そうかとだけ呟いたその人はじっと僕を見つめる。
 「あ、あの・・」
 「・・・ここは神社だ。心配しなくとも誰もお前を襲ったりなんかしない」
 「は、はぁ・・」
うっすらと暖かな光が扉と扉の隙間から差し込んでくる。
・・・なんでこの人、僕の思ったことが分かったんだろう・・?不思議に思って首を捻る僕を知ってか知らずか、彼はそのまま淡々と言葉を続けた。

 な んて 落ち 着 いた  声 、

 「え、えと・・僕は天宮彗といいます。あの、あなたは・・・」
 「俺は一ノ瀬葵依、この神社の神主をしている」
 「葵依、さん・・?」
 「ああ」
何かわからん事があったら聞きに来い。
そう言うその人の声音に僕の脳裏にふと違和感が掠める。・・・この声、何処かで・・・
 「っとに、摩綺羅も面倒な事をしてくれた・・。まさかほとんどの鬼刻がこの国の何処かに吹っ飛ばされるなんてな・・」
 「・・・きこく?」
 「そうだ・・・ってお前、まさか先程の事を覚えてないのか?」
あっさり言い放つ葵依さんから紡がれた耳慣れない言葉。先程の事?一体何の事だろう・・。こくりと頷く僕にその人は静かに細く息を吐いた。
 「――――――どうりで落ち着いていると思った・・」
 「え?」
額を押さえて困ったとばかりに苦笑を漏らす葵依さんは、徐に僕の額に自らの額を押し当てた。
 「あっあああ葵依さ」
 「“美しきもの 哀しきもの 導きし者”」
 「・・・っ!!?」
何事かを美しき紅は静かに言の葉へと乗せて紡ぐ。それと同時に空虚だった内側に満たされる・・・暖かな何か。
 「“我は彼らを召喚、そして統べし者でありそれらの全てを司りし者。
   今、ここにこの者の記憶の扉を開かん”」
 「っつ・・!!」
痛い。言葉が・・幾千もの刃のように容赦なく僕の内側に激痛となって留まろうとする。意識が・・

 「“ ―――――――御月を応えよ”」
 「ぼ、く・・は・・・・」

霞む。視界が意識が全てが。誰かの声が・・聞こえる。



 『なんなんだよ・・これ』
 『分かんない、けど・・皆いるよ、ね?』
聞こえる、聞き覚えのある声。・・・幼馴染の声。
穏やかにゆらりゆらりと何処かへ舞い降りていく僕たち。少し不安そうな顔をした僕と、驚きを隠せていない皆の顔。これは・・さっきの光景?隣りにいた後輩の顔が一気に恐怖に引きつる。
 『っっ!!?先輩っ風が・・・っ!!』
 『っきゃあああああああああああああああああああっっ!!!!』
 『先輩っっ!!』
 『天宮くんっ!!』
突然の突風が手始めとばかりに僕を襲う。大きく傾いだ僕の身体。互いに伸ばした腕も虚しく、空を掴んだだけ。

 『彗っ!!!!』
 『っ要!!?』

ものすごい勢いで掴まれた腕。気がつくと僕は須藤先輩の腕の中。急いで振り返ると僕の代わりに落ちようとしている要が微笑った。


 『――――――彗、いい子だから俺が行くまで大人しく・・待ってろよ』
 『嫌だっ駄目っ・・・っっ要――――――――!!!!』



 「っっ!!!!!!」
そして僕は勢いよく飛び起きた。動悸が 治まらない。

 「・・・思い出したか・・?」
 「っか、なめ・・」

重なった。この時の要の笑い方が・・・あの人に。早く、探さなきゃ・・。
 「要・・・・・要、を・・探さないとっ」
 「おい、彗落ち着け!!お前まだここの事を何も・・」
 「嫌っ放して!!!!」
掴まれた腕を力の限り振り払い、僕は布団から飛び起きると一瞬にして扉の前まで移動する。
 「なっ・・」
 「っ要!!」
どうか無事でいて。あの笑顔が頭から離れなくて、僕はいても立ってもいられずその部屋を飛び出した。


 「・・・また面倒な事になった・・」
 「―――――めーずらしい事もあるもんだな、お前が逃げられちまうなんて」
 「・・・・お前も起きてたなら止めろよ」

くすくすと笑うその声に、俺はいつになく不機嫌に言い放つ。無茶言うなよと苦笑気味に起き上がった海色は、楽しげにその瞳をきらきらと輝かせて

 「あれが・・・お前が俺に言いたかった事の結果か?」

そう、静かに問うた。
 「・・・そうだ。だがまだ何もあいつには告げていない」
 「あっちゃー・・そりゃやばいんじゃねぇの?」
 「だからさっきからそうだと言っている」
このバ戒斗が。そして・・あいつは俺の問いにも応えては いない。
俺は急いで上着を引っ掴み、扉へと急ぐ。
 「行くぞ」
 「うわっちょ、待って・・」
 「待たん」
 「嘘だろ~~~~~~~っっ!!?」
 「・・・嘘言ってどうする」
俺一応病み上がりなんだけどなどとぬかす幼馴染を引きずり、俺はそのまま部屋を出た。
・・・あいつの気は覚えた。きっとあいつは恐らく“要”を見つけるまで・・・闇雲にこの国中を探し回るだろう。摩綺羅に見つかる前にあいつを見つけなければ、あいつが危ない。

 「っ手間かけさせやがって・・・!!!!」
 「いたっちょ・・・葵依痛いって!!」

階段やら段差やらがあろうと俺は引きずっている戒斗を気にも止めずに走り出す。そして―――――


 「・・・無事でいろよ」


俺の愚かな願いも虚しく、闇は確実に光へと迫っていた・・・。



あとがきという名の言い訳。
・・・はい、随分と間が空いてしまいましたが第二章【神無き月の挽歌】第一話、ようやくUPできました(感涙)でも第二章突入と喜び踊りを舞おうとしましたが(止めれ)舞うに舞えない、今度は『彗くん大脱走!!』という問題が大勃発しちゃいましたねぇ・・・。展開がはやいなぁ・・・一体どうなるのでしょうか?
まぁなんだか最後の戒斗が可哀想な感じが否めませんが、今回はこれにて。ではでは・・・