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 「・・・はぁっ・・・はぁ・・っ」

太陽が燦々と輝き、辺りをじりじりと照りつけていたとある日の午後。

 「皇子っ・・はぁ・・・お待ち、くださ・・・っ・・」
 「やだっ待てと言われて待つ奴はいないっっ!!!!」

俺の後ろには俺のお付きという名のお目付け役の人たちの群れ。ちくしょー・・こんな天気が良すぎてクソ暑い日に部屋でじっとしてるなんて出来るかっての。

 「皇子っまだこれを読み終えておりませぬぞ!?」
 「皇子っ早くこの問題を解いてください!!」
 「皇子っ次の祭典の衣装合わせがまだ・・・」
 「皇子っまだまだお勉強の時間は始まったばかりですよ!!!!」

あーもう煩いっ!!これは新手のいじめか何かなのか!?だいたいっ衣装合わせなんていつでも出来るだろうがっっ!!皇子皇子ってなんなんだよっ!!!!っつーかこれは声を大にして叫びたい。・・・勉強なんて・・勉強なんて・・・

 「勉強なんて大っっ嫌いだ馬鹿やろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!!!!」
 「皇子~~~~~~~~っっ!!?!??!?!?」

というわけで砂名宮戒斗、追っ手を撒く為只今全力疾走中vv



 「――――――で、それでお前はここまで逃げてきたってわけか?」
 『・・・つくづく馬鹿だと思っていたが、ここまで馬鹿だとは・・』
 「うるせー俺だってまさか国中走り回るなんて思わなかったんだよ」
息を切らせて床に突っ伏す幼馴染を横目に、俺は盛大に溜息を吐いてやる。呆れたように俺の隣に寄り添うは、しなやかな体躯の白銀の月。
 『―――――・・・何故決められた時間にやらない・・?』
 「だって天気良いし暑いし面倒だし・・」
 「・・・今やらなかったらその分後に回ってくるのは確実だぞ・・?」
 「うっ・・・!!」
考えなしにも程がある。「最悪だあああああああああっっ!!!!」と再び床に突っ伏して喚く戒斗。それに向かっ
て冷たく白い目を向ける白銀の狼。そしてバタバタと外から騒がしい複数の足音が聞こえ、俺は唇の端を意悪
く歪めた。
 「・・・どうするんだ 戒斗?」
 「は?」

 『―――――――・・来るぞ、』

単調に響く低音。その時、激しく扉は開く。

 「っっ神官殿っこちらに皇子は・・」
 「うげっ」
 「「「「「見つけた―――――――っっ!!!!」」」」」

寸分の違いも無く、何度も練習してきたかのようにぴったりとハモる複数の声。それに対して美しき白銀は
『・・・見事だな』と俺の背後へと避難する己が主人と危険な目つきになりつつある使用人たちを見、ぱたりと
尾を動かした。
 「皇子、今度の今度こそは逃がしませんよ・・?」
 「・・・っはぁ・・さぁ、そろそろ諦めて・・お勉強に、戻りましょう・・?」
 「ずっとずっと・・・私たちは、国中を探し回っていたのです・・から・・・」
じりじりと嫌がる幼馴染に近寄る・・王宮の使用人たち。今にも戒斗に飛び掛りそうなピリピリとした使用人た
ちと、涙目気味に俺に助けてと目で訴えしがみついてくる戒斗。どう見ても両者は共に譲らない・・いや、譲
れない状況。まだまだ俺も甘いなと思いつつ俺は盛大に溜息を吐いて戒斗の付き人の筆頭である男へと向か
って静かに口を開く。

 「・・・霧生」
 「神官殿、何か」
 「・・・申し訳ないが、ここは神を奉る神聖な社。戒斗には・・・俺からきつく言い聞かせておく。だからどうか
この場は丸く治めてくれないか?」
 「っ葵依・・!!」
 「なんですって?」

感動のあまり瞳を潤ませ俺へと感謝の念を募らせる戒斗。だがそれとは対照的に怒りのあまり目尻が徐々に吊りあげていく使用人たち。
 「・・・葵依様、貴方は分かっておられない。いつも土壇場で甘い顔をなされるから皇子が貴方に甘えてしま
うのだ」
 「ほう・・・俺がいつ・・戒斗を甘やかしたと?」
 「そっそうだぞ・・!!!!」
葵依は頼っても後が怖いんだからな!!そう軽く顔を青くさせながら戒斗が俺の後ろから顔を覗かせて言う。そんな態度も、使用人たちの怒りを増長させるだけだとは気付かずに。
 「さぁ葵依様っ皇子のサボりの手助けなんかしないで早く皇子をこちらに・・」
 「・・・霧生、お前・・何か勘違いしてないか・・?」
 「 は? 」
 『―――――葵依は一言も・・「戒斗を遊ばせる」なんて言ってはおらぬぞ・・・?』
銀麗の言葉に、俺は静かに唇の端だけを歪ませて男を見つめた。「ひ・・・っ!!」という微かな悲鳴が後ろから聞こえる。そんな声を無視して、ぱっと見和やかな微笑を交し合う俺と男との交渉が始まる。
 「・・・と言う事は、葵依様が直々に皇子の家庭教師をしてくださると言う事ですか・・?」
 「え」
 「・・・まぁ、必然的にそういう事になるな・・?」
 「ち、ちょっと・・」
 「葵依様は戒斗様よりも年齢は一つ下ですが・・・まぁ、学問においては問題ないでしょうね」
 『・・・葵依が賢すぎるのと・・・あやつは馬鹿なのだから仕方あるまい?』
 「ちょっと待ってってばっっ!!」
あくまでも平和的に、表面上は緩やかに穏やかに進んでいく交渉は突如大きな声で遮ってきた諸悪の根源によって一時中断される。
 「・・・なんだ」
 「ちょっと待って。なんか俺の聞き間違えじゃなければ俺の家庭教師が葵依になる・・・と言っているように
聞こえるんだけど?」
真っ青になっても引きつった笑みを浮かべて俺を見る戒斗。俺はいつも通りに天使のような微笑を浮かべて爽やかに言い放った。

 「・・・良かったなぁ戒斗、土壇場でお前に甘い優しい優しい俺様に家庭教師になってもらえて」

俺の言葉にがっくりと膝をつき、頭を垂れる戒斗。その姿は死刑宣告を受けた囚人にも見えない事も無い。・・いや、寧ろそう見える。そうとしか見えない。
 『――――――戒斗、葵依には感謝しなければならぬな』
 「では葵依様、また後ほど伺いますので宜しくお願い致します」
 「えっちょっと待・・・!!」
 「任せろ」
無情にも何事も無かったかのように扉が閉まる。怒りのあまり己が主へと絶対零度の微笑を向けたあの男は、腹いせとばかりにもう夕方になるまで戻っては来ないだろう。俺は絶望の色を隠し切れない幼馴染の肩にそっと手を乗せる。
 「・・・大丈夫だ、お前なら出来る。戒斗はやれば出来る子だって・・十夜義父様にも言われただろう・・?」
 「葵依・・」
戒斗の肩に置いた手を放す。何かを悟ったかのように潤んだ瞳を向けてくる幼馴染に、俺はにっこりと笑って告げた。

 「さて、では始めるとするか・・・・・・・・・・・・・・・・俺の貴重なる午後の一時を奪った勉強とやらをたっぷりと
 「・・・え?」


 すっっぱああああああああああああああああああああああああああああんっっ!!!!


次の瞬間―――――戒斗は俺が何処からか取り出したハリセンで見事に吹っ飛ばされていた。
 「ってぇ・・何すんだ」
 「黙れ単細胞、お前・・俺がどれだけ忙しかったのか・・・知ってるのか?ああん?
 「しっ知りませ・・」
 「だよなぁ知るわけないよなぁ?お前がぐーぐーぐーぐー気持ちよさそうに寝ている中、俺はずっと化物退
治かお偉いさん方の魔除けの札書きだぜ?んでもって久々の休日でゆっくり出来ると思ったら今度は何処ぞ
の大馬鹿皇子の家庭教師だと?」
なぁーにふざけた事抜かしてんだゴラ。ばきばきと拳を鳴らせる俺に、がくがくと涙目になりながら震える幼馴染。それに対して俺は自画自賛しても許されるであろう綺麗な微笑を浮かべ、一歩一歩戒斗へと近づいていく。

 「もちろん、覚悟は出来てんだろうなぁ・・?」
 「え」
 『―――――葵依、死なぬ程度にしておく事を推奨しておくぞ・・?』
 「大丈夫だ、んなヘマはしねぇよ」
「ちょっと待って何の・・」
 「問答無用だ」

こうして戒斗の地獄の勉強会は始まった。
もちろん、この時神社から何とも言えぬ悲鳴という名の奇声が聞こえてきたと言う事は言うまでもない。


~END~

あとがきという名の言い訳。

・・・はい。とうとう書き終えました1000&2000キリリク・・・!!(涙)
『葵依たちのほのぼのとした日常』がリクエストだったのですがギャグになってしまいました(苦笑)私が思うに戒斗という名のトラブルメーカーがいる限り、葵依に平和な一日をおくらせてあげる事は出来ないのではしょうか。ちなみにこれは本編の約一年前、戒斗が15歳、葵依が14歳の夏のお話です(笑)

 おまけ
戒斗:・・・霧生、
霧生:皇子、如何なさいました?
戒斗:・・・・・・今回は本当に悪かった!!俺っ次からは絶対逃げないからな!!!!(涙)
霧生:・・・本当ですか?
戒斗:葵依に教えてもらうくらいなら霧生に教えてもらったほうがいいっっ!!!!(号泣)
霧生:・・・本当に そうですか・・?
戒斗:ああっもう何があっても絶対逃げねぇ!!!!
霧生:そう・・・・・・・・・・・・今のお言葉、本当ですね・・?(くすり)
戒斗:・・・へ?
霧生:では早速・・今まで溜め込んでいらっしゃった分の問題を全て解いて頂きましょうか?(微笑)
戒斗:!!!!!!!!
霧生:逃げるなんて・・・許しませんよ?(にっこり)

そしてしまりなく終わる。(ぇ)神羅様、リクエストを本当に有難う御座いました。