想風月華
九
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benhino3
―九―
――――始まった。私は儀式に参加する事はなく 屋敷からその光景を見ていた。これは・・・そう。昔、あの方が編み出し 実際にやってのけた儀式。あの子が成功させる事が出来るのかという不安と あの子なら出来るという確信が 未だ私の胸を巣くっている。
「あなたに・・できるのかしら?」
改めて口にしてみて
更なる不安が募り眉を顰める。そんな不安を振り払うかのように
私は何度も深呼吸を繰り返した。
ふいに懐かしくも二度と感じたくなかった気を察して庭の向こう側を見やれば、忘れたくても忘れられない
脳裏に鮮烈に刻み込まれた・・・忌まわしい色が
そこにあった。
「・・・今度こそは、」
必ず。私は髪に挿した簪に触れ、もう一度 それに誓った。今度こそ。
今度こそは――――――逃さない。
「―――――――嘘、」
私は一人、そこにいた。遠くから儀式を見守り
無事終わるようにと祈って。ただ・・祈っていただけなのに。
「・・・っまた、わたくしに枷を嵌めようというのですか・・?」
嵐。見覚えのある・・久しく見なかった美しい光が
私の頭上へと降り注ぐ。昔、私を混沌へと導いた・・・あの
罪で汚した光が。
もう二度と、あんな想いはしたくない。もう二度と、あんな事はしない。そう、誓って・・願って止まなかった筈なのに。
「意地悪、ですね」
貴女の頼みなら 私が断れない事を知っているでしょうに。瞳を細めて見ゆるその先、ふと 懐かしく禍々しい気が立ち込めている事に気付く。
「――――――刹那、」
貴方だけは私が、いつか必ず。手折る枝を握りつぶし、私は再び天を仰いだ。
「どうか、無事で」
そして私はまた、静寂に身を委ねる・・
あとがきという名の言い訳。
はい、今回は妙に短くて
ちょっと意味深なお話にしてみました(笑)まぁこの二人、いろいろとあるわけなんですけども、この二人についてはまたそのうち出てきますので待っていてください(苦笑)
次の回で
やっと第一章である鬼刻召喚編が終了する・・・筈です♪(ぇ)ではでは今回はこの辺で・・・