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―六―

 『あおいーっっ!!!!』
 『・・・はい?ってなんだ 戒斗か・・・』
 『あおいっきいてきいて!!』
 『いちいちうるさいやつ・・なんだよ?』
 『おれなっおおきくなったらちちうえみたいに、りっぱなみかどになるんだ!!』
 『・・・ふぅん?』
 『りっぱなみかどになってみんなをしあわせにするの!!それでっあおいやちちうえははうえっとーやおじ
さんとずーっといっしょにいるの!!』
 『・・・・・・おれも?』
 『うんっ!!おれっあおいがだいすきだからっずーっとずーっといっしょにいるの!!』
 『は?』
 『だーかーらー・・――――――――』


 「―――――――・・ん・・・」

白。
うっすらと瞳を開き、ぼんやりとその先を見つめる。その先に見ゆるのは清潔感溢れる真っ白な天井。
 「ここ、は・・」
 「・・・気がついたか」
ふいに、聞きなれている耳に心地よい声音が・・耳朶を打った。ぼんやりと霞む視界に静かに佇む・・落ち着いた紅。
 「・・・葵依・・・?」
 「大丈夫、ではなさそうだな」
そっと俺の額に触れる・・・ひんやりとした冷たい温度。・・・なんだろう?頭が、重しを乗っけたかのように重く鈍く頭痛と吐き気がする。



 「戒斗」



ふいに頭上から降り注ぐ、真剣な声色。なんだよ?と薄く微笑いながら、俺はいつも一緒にいる幼馴染を見上げる。一瞬、その端正な顔に過ぎった暗い影。俺はその影を見逃すことはなかった。
 「・・・何か、あったの か・・・?」
 「・・・・大した事じゃない、お前の気にするとこじゃねぇよ」
お前は心配せずに寝ていろ。そう言って幼馴染は溜息を吐く。その細く吐かれた溜息と、不愉快そうに顰められた眉。
 「何か、あったんだな・・」
 「・・・。」
何も答えない揺らぐことを知らないであろう深紅。その気だるそうな幼馴染の態度が、起こっていたことの重大さを物語っている気がした。

  「葵依、」

何の反応も示さない目の前の漆黒がもどかしくて、俺は思わず身を起こす――――――が、
 「っっ・・・!!!!」
 「戒斗!?」
今までになったことのない激痛が身体を襲う。次いで激しい吐き気、眩暈。霞みゆく視界。
 「おいっ戒斗!!しっかりしろ!!!!」
 「・・っ大丈、夫・・・だ」
葵依の声が遠くに聞こえる。再び布団に倒れ込み、俺はまたぼんやりと葵依を見つめた。
 「・・なんつー顔、してんだよ?」
 「・・・それはこっちの台詞だ戯け。そんな真っ青で弱々しげな顔しといて、何が大丈夫だ・・」
 「人の事言えねぇのはお互い様だろー?」
まだ微かに痛みの残る額に手を当て、俺は力無く微笑む。はっきり言って自分の身体に残る苦痛よりも、いつも俺を殴り飛ばす幼馴染の弱々しい表情を見る方がずっと堪える。
 「・・・・・。」
 「・・・・・。」
ふいにお互いが黙り込む。じっと俺と視線を合わせようとしない幼馴染の態度に、俺はなんとなく葵依が何かを言おうとしている事が判った。
 「・・・・・・言いたい事、あるんじゃねぇのか?」
単刀直入に先を促す。束の間の沈黙の後、微かに「あぁ」という落ち着きのある声音。
 「・・・お前に、告げないといけない事がある」
少しだけ言いにくそうに呟き、葵依は俺を真っ直ぐに見つめる。・・・なんだろう、嫌に胸騒ぎがする。
 「葵依?」
 「・・・・悪い」
口篭もる幼馴染は再び俺から視線を逸らし「でも、」と付け足した。
 「おい?」
 「―――――今度話す」
そしてそのまま背を向ける。
 「ってちょっ葵依!!?」
 「・・・精々、それまで体調を整えておくんだな」
最後に肩越しに一瞬視線を寄越し、葵依は少し笑って部屋を出た。


 「―――――おやすみ」


そして一人残された・・・真白な寝室。俺は幼馴染のいつもの冷静さに欠けた行動に、漠然とした不安を覚える。



 「なんなんだよ・・」



意味わかんねぇと一人ごちて俺は再び瞳を閉じた。俺の意識が無かったときに起きた事が何なのか、ただひたすらに考えながら・・・