「第二章―四―」(2007/03/25 (日) 09:35:35) の最新版変更点
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<p>―四―</p>
<p> 「んでもって入ったら入ったで
とっても素敵なお出迎えがあるってわけだ☆」<br>
「・・・つべこべ言わずにさっさと掃除しろ・・」<br>
『まったくだ』<br>
「はいはい」<br>
森に入ってすぐだった。目の前には
二十匹程の図体のでかい鬼の群れ。<br>
一人最低何匹倒せばいいんだ?そう苦笑気味に漏らした幼馴染の背を蹴り、俺は宙を舞った。</p>
<p> 「・・・一気に片付けるぞ」</p>
<p>
先手必勝だ。ずるいと頬を膨らませて構える戒斗へと不敵に笑って
俺は封珠を鬼へと一斉に投げつけた。</p>
<p> 「―――――“縛”」</p>
<p>馬鹿正直に一体一体倒していって
雑魚ばかりに体力を取られても仕方ない。まとめて倒したほうが効率的だろう。<br>
「うしっ行くか!!」<br>
『・・・面倒だな』<br>
「はあああああああああああっっ!!!!」<br>
俺が動きを封じて動けない奴らに殴りかかる戒斗と、面倒だと言いながら一体ずつ確実に砂へと変えていく銀麗。次々と鬼を倒していく戒斗に、修行はさぼっていなかったんだなと素直に感心してしまう。</p>
<p> 『ああああああああああああああああっっ!!!!』<br>
「っ葵依!!」</p>
<p>
雑魚の中でも多少力のある鬼数匹が、弱めにかけた金縛りを破って
俺へと突進してくる。少しも頭を使わないその捨て身の攻撃に、俺は思わず唇を歪めて口を開いた。</p>
<p> 「―――――“滅”」</p>
<p>少し頭足りねぇんじゃねぇのか?
ついでにそう呟いたときには
既に全ての鬼が砂と化していて。<br>
「悪いっ大丈夫だったか?」<br>
「・・・あれくらいの事で焦ってるようなら
まだまだ修行が足りないな・・」<br>
『そうだな』<br>
「うっ!!」<br>
俺があれしきの鬼にやられるわけないだろう。お前も少しは頭を使えと軽く戒斗の額を小突き、俺は砂の山を踏みつけて先へと進み始める。<br>
「でもさっ師走の者の廃墟って
此処からだと結構近かったよな?」<br>
小走りに俺の隣りに並んで 戒斗が言う。<br>
「ああ、もうあそこに見えてるだろう・・?」<br>
「あーあれかっ」<br>
『・・・。』<br>
歩き始めて少ししたときの事だった。目の前が開け
視界が一気に広くなり、目の前には朽ちた屋敷の跡。<br>
「・・・・すげ・・」<br>
『・・・懐かしいな・・』<br>
「あ?」<br>
『・・・なんでもない・・』<br>
さわりと吹いた風は透明で、流れた空は
とても青く。一歩この敷地に入ったときから感じた
大きな力。</p>
<p> 「・・・・千年前の鬼刻の力、か・・」</p>
<p>
庭の隅々まで見渡せば、季節に関係なく咲き乱れる花々。この敷地内を見れば
此処にどんな人物が住んでいたのかがわかる。なんて強い力。この美しい土地を誰かが今も尚
少しずつ手入れをしているのではないかと感じさせられる。<br>
そして―――――</p>
<p><br>
「そこにいるのは、誰だ?」</p>
<p><br>
さくり、と急に聞こえた、柔らかく散った花の上を歩く音。<br>
振り返ればそこに、風に散らばった夜の闇と錯覚させる程の漆黒と、訝しげに向けられた
暖かな紅い瞳。<br>
『っ陸・・!!?』<br>
「うおっすげーなその犬っ喋れるのか!!?」<br>
「いや、一応狼なんだけどな」<br>
「・・・つっこむべきはそこなのか・・?」<br>
いや違うだろう。よしよしと銀麗の頭を撫で始めるその少年に、俺は思わず溜息を吐いた。<br>
「つかお前、陸を知ってんのか? 陸は2年前に失踪した
オレの兄貴の名前なんだけど?」<br>
『・・・・二年前、だと・・?』<br>
「・・・銀麗・・?」<br>
らしくもなく動揺を隠せずにいる銀麗。どうしたんだとばかりに戒斗が心配そうに名前を呼ぶ。<br>
『・・・いや、なんでもない』<br>
「なんでもないっておま」<br>
「戒斗、今は関係ないだろう。そこのお前に聞きたいんだが」<br>
「は?」<br>
なんでもなくないだろ。そう紡ごうとしたらしい戒斗の言葉を遮り、俺はずっと銀麗の頭を撫でつづけている少年へと目を向けた。<br>
「お前は『要』か?」<br>
「・・・・・・・・・・・・あー・・なるほど、な。お前ら、もしかして『彗』を知ってて『要』を探してるって奴か?」<br>
くすりと唇に笑みを浮かべて言う、二対の紅。銀麗から放れ、一定の間合いを取るその姿に
俺はもう一度だけ言葉を紡ぐ。<br>
「答えろ、お前は『要』なのか?」<br>
「人に物を聞くときは
それなりの礼儀ってもんがあるんじゃねぇのか?」<br>
『―――――その通りだ、葵依。今緊急事態だったとしても
まず自分から名乗らなくてはな・・』<br>
「おっよく分かってんじゃんその犬っ」<br>
『犬ではない、狼だ』<br>
「・・・葵依・・」<br>
「・・・わかった」<br>
俺はそう呟いて
その少年の前へと進み出る。そして片膝をつき
頭を垂れた。<br>
「―――――私は 樹那国神官・一ノ瀬神社神主の一ノ瀬
葵依。諸事情により、私は今『要』という名をも<br>
つ方を探しております。今日は貴方様が私の探している『要』様なのかを伺いたく
参上いたしました」<br>
「・・・じゃあやっぱりお前らが・・」<br>
あの話は嘘じゃなかったんだな。そう紡がれた言葉に
俺は静かに顔を上げる。</p>
<p> 「あっ悪い、自己紹介が遅れたな。オレは美月
要。正真正銘、お前らのお探しの『要』だ」</p>
<p>
俺の腕を掴んで立たせ、要と名乗った少年は言う。人懐っこい笑みを浮かべ、要はそれでそっちは?と戒斗と銀麗の方へと向いた。<br>
「俺は砂名宮 戒斗。よろしくなっ要!!」<br>
『私は銀麗だ・・・宜しく頼む』<br>
「ああ、宜しくな!! っと、葵依っていったっけ?
そういや彗は何処いるんだ?」<br>
「・・・。」<br>
「えっとー・・・要、お前は落ち着いて聞いてくれるよな?」<br>
「は?」<br>
戒斗の言葉に目を丸くする要。言いづらそうに言葉を濁す戒斗に、落ち着いて聞くからと少年が詰め寄る。<br>
その様子に困りきった幼馴染の代わりに、俺は静かに口を開いた。<br>
「――――――彗は、いなくなった」<br>
「え・・」<br>
「ちょっあお」<br>
「今言わなくても、どちらにしろ後で言わないといけねぇだろ。なら早めに言っておくべきだ」<br>
それに、まだそうとは決まっていない事もあるんだ。早とちりするなと付け加え、俺は幼馴染から呆然とする少年へと視線を向けて大まかに説明をした。</p>
<p> 「・・・じゃあ 彗はその・・刹那って奴に・・」<br>
「ああ、その可能性が高い。だから俺たちは
お前を先に探す事にした」<br>
『――――――お前がいれば、彗も安心するであろうからな・・』<br>
「・・・・。」</p>
<p>
一人考えるようにして黙り込む要。そして何かを言おうとして躊躇うその姿に、俺は静かに先を促した。<br>
「・・・話は分かった。オレは彗を探す為・・お前たちに協力する」<br>
「――――感謝する」<br>
「ったく・・兄貴といい夏穂姉といい彗といい、なんでオレの周りにはオレに心配かけるような奴しかいない<br>
んだろうな・・・」<br>
『・・・さあな』<br>
「宿命って奴じゃん?」<br>
「うわーすっげえ説得力あって嫌だ・・」<br>
戒斗の言葉に脱力する要は、苦笑しながら俺を振り返り
右手を差し出した。</p>
<p> 「これから宜しく」<br>
「―――――ああ、」</p>
<p>
その右手を掴み、俺はほっと息を吐いて笑みを零した。<br>
これで少しは
目の前に立ちふさがっている問題の数々の解決に一歩近づいただろうか?<br>
そんな事は今はまだ分からないけれど、とりあえず最優先事項を解決できそうな気がしている。<br>
また、忙しくなるな・・。そう心の中だけで呟いて、俺たちは今いる廃墟を後にした――――――</p>
<br>
<p>あとがきという名の言い訳。<br>
や、やっと要が出てきた・・・ってか仲間になったッッ!!(爆)これで宝捜し・・もとい彗探しがやっとこさスタートですね。あー長かった・・orz
まぁ、次はもう少し早くUPできるといいと思います(涙<br></p>
<p>―四―</p>
<p> 「んでもって入ったら入ったで
とっても素敵なお出迎えがあるってわけだ☆」<br>
「・・・つべこべ言わずにさっさと掃除しろ・・」<br>
『まったくだ』<br>
「はいはい」<br>
森に入ってすぐだった。目の前には
二十匹程の図体のでかい鬼の群れ。<br>
一人最低何匹倒せばいいんだ?そう苦笑気味に漏らした幼馴染の背を蹴り、俺は宙を舞った。</p>
<p> 「・・・一気に片付けるぞ」</p>
<p>
先手必勝だ。ずるいと頬を膨らませて構える戒斗へと不敵に笑って
俺は封珠を鬼へと一斉に投げつけた。</p>
<p> 「―――――“縛”」</p>
<p>馬鹿正直に一体一体倒していって
雑魚ばかりに体力を取られても仕方ない。まとめて倒したほうが効率的だろう。<br>
「うしっ行くか!!」<br>
『・・・面倒だな』<br>
「はあああああああああああっっ!!!!」<br>
俺が動きを封じて動けない奴らに殴りかかる戒斗と、面倒だと言いながら一体ずつ確実に砂へと変えていく銀麗。次々と鬼を倒していく戒斗に、修行はさぼっていなかったんだなと素直に感心してしまう。</p>
<p>
<em>『ああああああああああああああああっっ!!!!』<br></em> 「っ葵依!!」</p>
<p>
雑魚の中でも多少力のある鬼数匹が、弱めにかけた金縛りを破って
俺へと突進してくる。少しも頭を使わないその捨て身の攻撃に、俺は思わず唇を歪めて口を開いた。</p>
<p> 「―――――“滅”」</p>
<p>少し頭足りねぇんじゃねぇのか?
ついでにそう呟いたときには
既に全ての鬼が砂と化していて。<br>
「悪いっ大丈夫だったか?」<br>
「・・・あれくらいの事で焦ってるようなら
まだまだ修行が足りないな・・」<br>
『そうだな』<br>
「うっ!!」<br>
俺があれしきの鬼にやられるわけないだろう。お前も少しは頭を使えと軽く戒斗の額を小突き、俺は砂の山を踏みつけて先へと進み始める。<br>
「でもさっ師走の者の廃墟って
此処からだと結構近かったよな?」<br>
小走りに俺の隣りに並んで 戒斗が言う。<br>
「ああ、もうあそこに見えてるだろう・・?」<br>
「あーあれかっ」<br>
『・・・。』<br>
歩き始めて少ししたときの事だった。目の前が開け
視界が一気に広くなり、目の前には朽ちた屋敷の跡。<br>
「・・・・すげ・・」<br>
『・・・懐かしいな・・』<br>
「あ?」<br>
『・・・なんでもない・・』<br>
さわりと吹いた風は透明で、流れた空は
とても青く。一歩この敷地に入ったときから感じた
大きな力。</p>
<p> 「・・・・千年前の鬼刻の力、か・・」</p>
<p>
庭の隅々まで見渡せば、季節に関係なく咲き乱れる花々。この敷地内を見れば
此処にどんな人物が住んでいたのかがわかる。なんて強い力。この美しい土地を誰かが今も尚
少しずつ手入れをしているのではないかと感じさせられる。<br>
そして―――――</p>
<p><br>
「そこにいるのは、誰だ?」</p>
<p><br>
さくり、と急に聞こえた、柔らかく散った花の上を歩く音。<br>
振り返ればそこに、風に散らばった夜の闇と錯覚させる程の漆黒と、訝しげに向けられた
暖かな紅い瞳。<br>
『っ陸・・!!?』<br>
「うおっすげーなその犬っ喋れるのか!!?」<br>
「いや、一応狼なんだけどな」<br>
「・・・つっこむべきはそこなのか・・?」<br>
いや違うだろう。よしよしと銀麗の頭を撫で始めるその少年に、俺は思わず溜息を吐いた。<br>
「つかお前、陸を知ってんのか? 陸は2年前に失踪した
オレの兄貴の名前なんだけど?」<br>
『・・・・二年前、だと・・?』<br>
「・・・銀麗・・?」<br>
らしくもなく動揺を隠せずにいる銀麗。どうしたんだとばかりに戒斗が心配そうに名前を呼ぶ。<br>
『・・・いや、なんでもない』<br>
「なんでもないっておま」<br>
「戒斗、今は関係ないだろう。そこのお前に聞きたいんだが」<br>
「は?」<br>
なんでもなくないだろ。そう紡ごうとしたらしい戒斗の言葉を遮り、俺はずっと銀麗の頭を撫でつづけている少年へと目を向けた。<br>
「お前は『要』か?」<br>
「・・・・・・・・・・・・あー・・なるほど、な。お前ら、もしかして『彗』を知ってて『要』を探してるって奴か?」<br>
くすりと唇に笑みを浮かべて言う、二対の紅。銀麗から放れ、一定の間合いを取るその姿に
俺はもう一度だけ言葉を紡ぐ。<br>
「答えろ、お前は『要』なのか?」<br>
「人に物を聞くときは
それなりの礼儀ってもんがあるんじゃねぇのか?」<br>
『―――――その通りだ、葵依。今緊急事態だったとしても
まず自分から名乗らなくてはな・・』<br>
「おっよく分かってんじゃんその犬っ」<br>
『犬ではない、狼だ』<br>
「・・・葵依・・」<br>
「・・・わかった」<br>
俺はそう呟いて
その少年の前へと進み出る。そして片膝をつき
頭を垂れた。<br>
「―――――私は 樹那国神官・一ノ瀬神社神主の一ノ瀬
葵依。諸事情により、私は今『要』という名をも<br>
つ方を探しております。今日は貴方様が私の探している『要』様なのかを伺いたく
参上いたしました」<br>
「・・・じゃあやっぱりお前らが・・」<br>
あの話は嘘じゃなかったんだな。そう紡がれた言葉に
俺は静かに顔を上げる。</p>
<p> 「あっ悪い、自己紹介が遅れたな。オレは美月
要。正真正銘、お前らのお探しの『要』だ」</p>
<p>
俺の腕を掴んで立たせ、要と名乗った少年は言う。人懐っこい笑みを浮かべ、要はそれでそっちは?と戒斗と銀麗の方へと向いた。<br>
「俺は砂名宮 戒斗。よろしくなっ要!!」<br>
『私は銀麗だ・・・宜しく頼む』<br>
「ああ、宜しくな!! っと、葵依っていったっけ?
そういや彗は何処いるんだ?」<br>
「・・・。」<br>
「えっとー・・・要、お前は落ち着いて聞いてくれるよな?」<br>
「は?」<br>
戒斗の言葉に目を丸くする要。言いづらそうに言葉を濁す戒斗に、落ち着いて聞くからと少年が詰め寄る。<br>
その様子に困りきった幼馴染の代わりに、俺は静かに口を開いた。<br>
「――――――彗は、いなくなった」<br>
「え・・」<br>
「ちょっあお」<br>
「今言わなくても、どちらにしろ後で言わないといけねぇだろ。なら早めに言っておくべきだ」<br>
それに、まだそうとは決まっていない事もあるんだ。早とちりするなと付け加え、俺は幼馴染から呆然とする少年へと視線を向けて大まかに説明をした。</p>
<p> 「・・・じゃあ 彗はその・・刹那って奴に・・」<br>
「ああ、その可能性が高い。だから俺たちは
お前を先に探す事にした」<br>
『――――――お前がいれば、彗も安心するであろうからな・・』<br>
「・・・・。」</p>
<p>
一人考えるようにして黙り込む要。そして何かを言おうとして躊躇うその姿に、俺は静かに先を促した。<br>
「・・・話は分かった。オレは彗を探す為・・お前たちに協力する」<br>
「――――感謝する」<br>
「ったく・・兄貴といい夏穂姉といい彗といい、なんでオレの周りにはオレに心配かけるような奴しかいない<br>
んだろうな・・・」<br>
『・・・さあな』<br>
「宿命って奴じゃん?」<br>
「うわーすっげえ説得力あって嫌だ・・」<br>
戒斗の言葉に脱力する要は、苦笑しながら俺を振り返り
右手を差し出した。</p>
<p> 「これから宜しく」<br>
「―――――ああ、」</p>
<p>
その右手を掴み、俺はほっと息を吐いて笑みを零した。<br>
これで少しは
目の前に立ちふさがっている問題の数々の解決に一歩近づいただろうか?<br>
そんな事は今はまだ分からないけれど、とりあえず最優先事項を解決できそうな気がしている。<br>
また、忙しくなるな・・。そう心の中だけで呟いて、俺たちは今いる廃墟を後にした――――――</p>
<br>
<p>あとがきという名の言い訳。<br>
や、やっと要が出てきた・・・ってか仲間になったッッ!!(爆)これで宝捜し・・もとい彗探しがやっとこさスタートですね。あー長かった・・orz
まぁ、次はもう少し早くUPできるといいと思います(涙<br></p>
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