「覚えてますか?」(2006/12/07 (木) 12:47:57) の最新版変更点
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<p>貴方は覚えてますか。</p>
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<p>桜が舞う季節のことを――――</p>
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<p><strong> 【覚えてますか?】</strong></p>
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<p> 「望美さん?どうかしたんですか」</p>
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「・・・・え。あぁ・・ごめんなさい。ぼーっとしちゃって」</p>
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柔らかな声に振り向くと、弁慶さんは笑みを浮かべて言った。</p>
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「僕と一緒にいるというのに。別の人のことを考えていたなんて、妬けてしまいますね」</p>
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いつもこんな調子で。本心なんて見抜かせない。</p>
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「そ、そんな!!ただ・・・今、この瞬間が永遠に続けばいいのに、と思って」</p>
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悲しい事実を思い出したくないから。私は眼を伏せて言う。</p>
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「ふふ、可愛い人ですね。・・・でも、そんな顔をして言うような言葉じゃありませんね」</p>
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過去に彼が犯した過ちを。死という、その結末を。それを変えるために私はここにいる。</p>
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―――運命を捻じ曲げて。</p>
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「・・・弁慶さんは何でもお見通し、なんですね。私は・・・弁慶さんのこと、何にも分からないのに」</p>
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<p>少し拗ねたようにつぶやく。</p>
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私が弁慶さんの本心を見抜けていたら。あんな結末にはならなかったかもしれない。</p>
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<p> 「見てください。桜が綺麗ですよ」</p>
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私の言葉には触れずに、弁慶さんは桜の枝に手を伸ばす。</p>
<p>そして、その枝を手折り、私の髪に挿してくれる。</p>
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<p> 「思った通りです。君にはこの花が似合いますね」</p>
<p> 「弁慶さん?」</p>
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<p>弁慶さんは私の髪に触れたまま、言葉を続ける。</p>
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<p> 「・・・・実は、僕も同じことを思っていました」</p>
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「君は純粋で真っ直ぐな女性です。だから。その眼に見つめられるのが怖いんです。僕の何もかもを見透かされているようで。僕のことを知ったら、君はきっと幻滅してしまうでしょう」</p>
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「そんなことありません!!私は弁慶さんのことを信じて・・・っ」</p>
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「それ以上は言わないでください。僕は君にそんな風に思われていい人間じゃありませんから」</p>
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優しい腕の中に引き込まれて。私は思わず言葉を飲み込んでしまった。</p>
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<p> 「今の君の顔が見れないのが残念だな」</p>
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弁慶さんは悪戯っぽく私の耳に囁いた。そして、ふと真剣な声になり、言った。</p>
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「君はいつか元の時代へ帰ってしまう。君が掴めそうで掴めない女性だと分かって
いながらも、君の事を知りたいと思うこの気持ちは罪なのでしょうか」</p>
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そんなことない、罪なんかじゃない、と叫びたかったけれど。</p>
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声にはならずに、ただ首を振ることしか出来なかった。</p>
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「・・・いや。きっと、僕の存在自体が罪なんでしょうね・・・」</p>
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<p>ボソッとつぶやいた言葉。</p>
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「え?弁慶さん、よく聞こえなかったんですけど・・・」</p>
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すると、弁慶さんはいつもの調子で言った。きっと、微笑んで。</p>
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「いいんです。いずれ分かることですから。それより、もうしばらくこのままでいさせてもらってもいいですか?」</p>
<p> 「はい―――」</p>
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私は弁慶さんの言う、先の運命を知っている。だから、二度と同じ過ちは繰り返さない。</p>
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愛おしい人の最期のときをもう1度なんて見たくはないから。</p>
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この幸福な時間を噛み締めて。心に絡まる景色に眼を閉じて。</p>
<p>さよなら、と言えた時に・・・未来は動き出す。</p>
<p>見えない未来で。</p>
<p>花びらが舞い散る頃のことを。</p>
<p>貴方は覚えてますか。</p>
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・・・はい、千都瀬様からお願いしていただいたSS第一作目。私の配布しているお題を使ってくださっているようで(感涙)</p>
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べ、弁慶さんが・・・っ!!(ぶしゅううううううう/ぇ)</p>
<p>千都瀬様、有難う御座いました☆</p>
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