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天庭 おとこのこ編

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大宇宙の法典 / 天庭 おとこのこ編 / あさき


ふらりふらり
そ知らぬ顔して紫雲より垂れる

ひと

口唇をしづめて跳ねまわり
あうらや追い越せと果てる

ひと

あかときは終にいく
もう帰してはくれぬ

爆ぜて

あ!

天ぐらり!


あをみ 延びて 推し量る
行き会う星の間の深さ
追いかけていたはずの光に追われ
迷子になる

寂滅を待つ
凍みた灯火を抱き
過ぐ明日を雲に託し流る

日輪にあくがれ
歪にうねる影絵
互いの肝を抉り合い
悦に浸る

神火はいつでも貴様らの背中を焼いている




天庭 / あさき

※「天庭 おとこのこ編」 Long Ver. (アルバム「天庭」収録)

──太陽の下で──

さあさ 皆様!
あすこをご覧あれ!

暗澹(あんたん)たる中天(ちゅうてん)へと延びたる光の梯子(はしご)
(むら)がる星屑(ほしくず)たちが口々に叫んでいる

心を殺せ

──春のひと──

ふらりふらり
素知(そし)らぬ顔して紫雲(しうん)より垂れる

ひと

口唇(くちびる)をしづめて跳ねまわり
あうらや追い越せと果てる

ひと

四本足の動物たち
満目(まんもく)の枯れ明かり!」

あなた 召しませ とこしなえ

──夏のひと──

女性の形を模した仏様
「さあさあ ごゆるりとご覧あれ」と(ひさ)
梅が()を突き刺して笑みなさり

男性の形を模した仏様
「ほらほら ここで()り」

様々な動物の顔を模した帽子をかぶる かわいらしい人々
「ふむふむ ここか」

ここに在り!

神仏が(わか)五臓(ごぞう)六腑(ろっぷ)
舐めつ くくみつつ 眼下に広がる
濁流の岸を洗ひて安着

幸せかい

そうだろう

何も知らない

という幸せがそこにはある

──太陽の下で──

あかときは(つい)に行く
もう帰してはくれぬ
()ぜて

あ!

あっ!

天ぐらり!

絶景だ

あをみ 延びて ()(はか)
行き会う星の(あい)の深さ
追いかけていたはずの光華(ひかり)に追われ
迷子になる

寂滅(じゃくめつ)を待つ ()みた灯火を抱き
過ぐ明日(あす)を雲に託し流る
日輪(にちりん)にあくがれ
(いびつ)にうねる影絵
互いの(はら)(えぐ)り合い(えつ)に浸る

──秋のひと──

光の梯子(はしご)に群がり
矯声(きょうせい)をあげる星屑たちの間を
黒い点滅がすり抜けていく
やがて無数の大きな線状の糸遊(ゆうし)になったそれは
(うすもの)を羽織りながら羽化をとげ
あはあはと大虚(たいきょ)を縛り付ける
天日の(おもり)に絡みつきながら
その速度を上げ
灼熱の顔を覆い尽したのち
さらばえた影を引きずりながら
夜空と同化し 消えた

(すす)り泣くひと」

ひゅ ひゅ ひゅるる~

──冬のひと──

朔風(さくふう)は見え得ぬものを鳴らし
呼吸合わせをり

──「神は懈怠(けたい)ないのです!」とほざくひと──

鉛色(なまりいろ)の霧をまといながら
濁液(だくえき)を垂らして連なるきららは
(あご)念珠(ねんじゅ)をこすりつけ

今か!今か!

とまつさらの闇に
(はらえ)へと打ち込む!

かなしいな かなしいね
かなしいな かなしいね
かなしいな かなしいね

肩に降る銀のささやき

──子供たちへ──

猿ども
「あらあら こんなところに面映(おもはゆ)い源が!」

仏様
「おとこのこ おんなのこの秘め事さ」

世界中の動物たち
「あいやー あいやいやー」

満面で笑う
不揃いの虹は
多岐茫洋(たきぼうよう)

──月の下で──

見ているか

ひととして
在りたくて
月見船(つきみぶね)に乗って
湖心(こしん)へ向かうひとよ
見えるか 見えているか
天心の月はあまりにも遠すぎる

焼かれた(まぶた)で見る漁火(いさりび)

──太陽の下で──

ひらひらと舞い落ちた
空の欠片(かけら)(てのひら)で燃えて
汚れた灰になり
風にのって
又 空へと昇る

光 あくがれの光
(いびつ)物憂(ものう)く見つめ合う
その火柱 よじれよじれて
夕陽(ゆうひ)(いろ)()りぬ

()すべきを為し
(えぐ)り身()らし
迷子の(もぬけ)(かか)げて笑う

どす黒く広がり
吹き溜まる(ゆかり)
何を聞き 何を伝えて 我行けり

貴様ら見えるか
あの天道の先で在り
妬心(としん)業火(ごうか)に焼かれた手を
希望のたばしり落としては拾って
脇目もふらず 内臓(わた)舐め合う様を

ほら (ひらめ)きよ
垣間(かいま)見て其の(かみ)
時代(ひび)見届けぬ
消え残る星ひとつ置き

誰か教えておくれ
幸せは何処にある
光背(こうはい)くづるるごとく
空が割れている

ひと思ふ故 (いわ)くを踏む
星 泳ぎ 行く その先に

幸あれ

暗澹(あんたん)たる中天(ちゅうてん)へと延びたる光の梯子(はしご)
群がる星屑(ほしくず)たちが口々に叫ぶ

神火(しんか)はいつでも貴様らの背中を焼いている

──ひとへ──

ねえみて 春がやってきて
草も木も花も歌っている
ねえみて 春がやってきて
みんな ここにいる

みんな赤い背中をしている

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