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魚氷に上り 耀よひて

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魚氷(うおひ)に上り 耀(かが)よひて / あさき


嵶やかに泳ぐ
あさひに焦がれ

あまりにも深く
いとましき

その口より曰く 虹を吹いては

「昇るものよ 沈むものよ これが現実だ!」

と還り散る

欲しいままに生貪る
緋色の珊瑚礁
そそり歌をのせて 狭霧
深く遠く鳴り

ああ 誰か光をくれ
さまよう 人
そぞろ泳ぐ

手を取り合い 泡と詠み
明日をつなぐ輪をくぐって

あまひに舞ふ赤い雲に問ふ

「一天の深きよ」

答えはない

泣き響むか 浮き沈むか

もうわかっているのだろう
もう気がついているのだろう

そうだ
もう光はこない
永遠に だ





Long ver.



(たお)やかに泳ぐ
あさひに焦がれ

あまりにも深く
いとましき

ざわめき
あたもろとも
波にさらわれ

笑うものよ
(いた)むものよ
皆等しく
ひいわりと

断崖(だんがい)に沿って
だんぶと落ちて
(たま)に似た飛沫(しぶき)
かこちをり

その口より曰く
虹を吹いては

「昇るものよ 沈むものよ これが現実だ!」


(かえ)り散る

なんと つらいことだ
あまりにも つらいことだ

欲しいままに(せい)(むさぼ)
緋色(ひいろ)珊瑚礁(さんごしょう)
そそり歌をのせて 狭霧(さぎり)
深く遠く鳴り
ああ 誰か光をくれ

彷徨(さまよ)うひと そぞろ泳ぐ
手を取り合い 泡と(なが)
明日をつなぐ輪をくぐって

あまひに舞う 赤い雲に問う

一天の深きよ!

(こた)えはない

泣き(とよ)むか 浮き沈むか

もうわかっているのだろう
もう気がついているのだろう

そうだ ここに光は来ない
永遠に だ

光は幻想だ

まやかしだ

なんと 馬鹿馬鹿しいことだ

夢を見てはいけない
夢を見るのは愚か者だ

ひとりで泳いでいけ
たったひとりで泳いでいくのだ
そしてひとりで果てるのがよい

ああ ささくれては
(ぎょう)(しの)
地を削り流れを変える


そうだ
その通り
結局のところ

ここに在らず
そこに在らず
(ゆえ)
道もなく

くるしい
くるしくない
許せない
許してやろう
くるしい
くるしくはない
たすけてほしい
たすけてやろう
ここは寒い
ここは熱い
地獄だ
そうだここは天国だ

孤独だ

くるしい
くるしいな
助けてくれ
助けてやるよ
憎い
憎いかな
愛している
愛してはいない

つかれたか
そうか

ふと見上げると
水面(みなも)が割れていた
その割れ目から
真っ白な いや 琥珀色(こはくいろ)
泥のようなものが降ってくる
おそろしいことだ
これは 大変に 本当に おそろしいことだ

尻の穴を見せあっている醜い魚たちが
「我こそが我こそが」
とつぶやいている
早口で
早口で!
早口で早口で早口で!

は や く ち で!

(あえ)ぎながら(せい)(むさぼ)
白い珊瑚礁
息ができぬと任せては
深く深く 慰め合い
ああ (かしま)しく鳴り
跡形もなく

溶けて

波にさらわれ

この素晴らしい世界を隅々まで
あますところなく巡った後

また

堂々巡り

未来永劫(えいごう)

同じことの繰り返し

ひとりで泳ぐ
そびらに春を
(あさひ)を浴びて
泡に消える

そんな夢

なあ
いやになっちゃうよ
毎日毎日いやになっちゃうよ

彷徨(さまよ)うひと (せん)に昇る
信じたもの 愛したひと
碧落(へきらく)にあるべくとして

昇る ひと
それに続き
また 昇る ひと

千は百になり
百は十になり
十は一になり
一が(つも)り千となる

(これ)まさに 堂々巡り

あぶれ(いと)ふ 深海と(まが)
波折(なお)りの深さよ

深くて 暗い 泥の海の おはなし

天井(あまい)はない
そして 底もない

故に

光差す道理など無く

ああ
並み居ている
見ろ あの長雨(ながめ)

深海で降り続く琥珀色(こはくいろ)
日影にも似た()の雨を

(あまね)し日よ
光をくれ 誰か

曰く
「幼いころ 子守唄に 母が歌ってくれた歌があって
かわいらしい 迷い子の歌なのだけれど
今は自分で 自分のために歌ってる」

毎日毎日 業火(ごうか)で焼かれていやになっちゃうよ

眺め()る 迷い子
泡沫(うたかた)の消えては()

思い出
もう今は思い出

昔の思い出
大切な思い出

──後日談──

足下(あしもと)が燃えている
熱くて 痛い 熱くて 息が出来ない

どうしようもない

空が凍っている
寒くて 痛い 寒くて 息が出来ない

どうしようもない

誰もが どうしようも! ない!
と ただ泣いている

ここは地獄だ
ここは天国だ
ここは天国さ
ここは地獄さ

信じたものの 虹の先には何もなく
振り返っても何もない

それでも

今日も明日も明後日も
来週も来月も来年も
十年先も
そして

尽きた その後も

ひとはきっと

泳いで泳いで泳いで泳いで泳いで泳いで
泳いで泳いで泳いで泳いで泳いで泳いで
泳いで泳いで泳いで泳いで泳いで泳いで
泳いで泳いで泳いで泳いで泳いで泳いで

(たお)やかに

わらえる

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