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プロローグ」(2006/02/09 (木) 00:29:05) の最新版変更点

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*プロローグ **ここまでのお話 大陸暦1069年 皇国暦100年 ■■皇国建国100周年という一つの節目を迎えたその国にとって その年は明るい一年になるはずであった。 そう、はずであったのだ。 春、国花が舞い散る季節にその事件は起こった。 共和国との国境近く、辺境部にある■■村との連絡が途絶えたのだ。 不審に思った辺境守備団の一隊が■■村に着いたとき、その惨状に誰もが目を疑った。 (生き残りがいたことと、したいのやまーって情景描写) 山沿いに作られた小さな村は、その日は厚い雲に覆われていた。 周囲の山脈は、本来、残雪が美しく輝き、春の訪れを感じるはずであるというのに、そこだけが取り残されたようにすっぽりと、冬に閉ざされたようにひっそりと静まり返っていた。 野を覆うはずの緑も色褪せたように乾いた音を鳴らし、花は枯れ果て、力尽きたように、ひび割れた大地に横たわっていた。 そして、灰色の泥にまみれたぬかるんだ村の畦道、中心部に向かう道のあちらこちらに、それはあった。 いくつもの部品が転がっている。 赤い平原で満たされつくした村の広場に、守備隊は足を踏み入れ、その情景に知らず、剣に手を置いた。 噴水にへばり付いた血は手を触れるとぬるりと湿り気を帯びていた、まだ事件が起きてから、それほど時間が経っていないことを守備隊は理解すると、陣形を組んだまま村を散策した。 「散開」 だが守備隊の中の一人、ある青年は、仲間から少し離れ、地面に落ちていた何かの人形のようなものを手に取った。 彼はこの村が普通でないことを、直感で感じ取ったのであった。 「まるで、さっきまで生きていたのに・・・あっという間に命そのものがなくなってしまったみたいだ」 人がいなくなっただけにしては、この廃れようは異常としか言いようがない。 青年は人形を懐にしまうと、村の神木と思われる立派な大木に視線を移した。 針葉樹であるはずのその木は、今やすべて葉を落とし、時折山から吹く風に、ごうごうと音を立てながら、左右に大きく揺れていた。 村の協会と思われる建物の前に、大きな剣か何かで真横に薙ぎ払われた上半身が転がっていた。 胸から下は、その片割より数メートル離れた場所で、動くこともない。しかしその上半身に付いた顔は、守備隊の一人を見上げると、弱々しく声を上げた。 横に切られた胸から、収まっていたはずの臓物がぐったりとあふれ出し、雪解けの大地で泥にまみれても、何故かその男は生きていた。 「ああ・・・あああああっ?!」 その声を聞いたのは、先日守備隊に配属された新米の剣士だった。彼は目の前の恐怖に剣を抜き、まだ生きている男の頭に、半ば無意識に剣を突き刺した。 「あああああああああああああああああああああああああああああ!!!」 その若い剣士の恐怖に上げた声と、串刺しにされた男があげる、苦痛とも怒号とも取れる叫び声が、音というものが欠落していた小さな村に、やけに大きく木霊する。 「どうした!」 守備隊長が彼の元に走り出た。 それにその若い剣士は突き刺した剣から手を半ば投げ出すようにして放すと、血の気の引いた青白い表情で、若い剣士は守備隊長を見た。 「僕は・・・人を殺してしまい、ました」 明らかに死んでいるはずの男は、ただ一言こういった。 逃げろ、と。 「大丈夫だ、私に任せなさい。君は人民を殺してなどはいない。これは仕組まれたことなのだ、隣国の、共和国のまやかしなのだ」 確かにこの村は奇妙ではあった。 何故か家畜などに被害は無く殺されていたのが人間だけであったことと 通常焼かれているはずの家などの建築物が無傷であったこと略奪されていたものがなかったこと。 そして一番奇妙だったのは足跡が無かったということである、もし隣国軍が襲撃したのなら馬の蹄の跡や人の足跡の痕跡を残すはずだ。 そのいくつかの疑問点を黙殺し、守備隊長はこれを共和国軍の虐殺と報告する。(当時の共和国との仲は良いとは言えなかった上、その隊長は主戦派のひとりであった) 「良いか、今ここで起こった事は部外秘にせねばならぬ。この者たちの供養も必要だ、穢れてしまわれた彼ら哀れな人民に救いを、そして浄化を。そのために我々はこの村を焼く」 バラバラになって死んでいた、人間の部品を広場に集め火を放ち、同時にすべての家、家畜、畑に火を放った。価値のある遺留品は一所に集め、皇都に戻る途中の滝に、供養と称して投げ捨てた。 こうして事実は、皇国でもっとも残虐と思われる方法で闇に葬られ、その真実が表に再び現れるのは、実につい最近のことである。 後世、■■の惨劇と呼ばれるその事件は皇国史上初めての「魔物」による被害である。 いや、これまででも今まで教会の神父、悪魔祓いが対処していた様な悪霊、悪魔のようなゴースト類の「魔物」は存在していたが、それは実体が無く脆弱でたいした力を持たず身体的、精神的に衰弱している人にとり憑き、金縛りや疾病を起こす程度がせいぜいであった。 (くっそやべー戦争だぜ!って感じで) 皇都に戻った守備隊の一団は、その惨劇を語ることは無かった。 ただ一人、隊長であるエンダタを除いては。 「陛下、村はひどい有様でございました」 「ほう、そうか。して?」 「は、共和国の手によるものかと・・・」 「ふむ、そうか大儀であった」 「いかが致しましょう、陛下」 謁見の間で佇んでいた大臣、■■が恭しくこうべを垂れた。 「フン、元老院の和平派共にこの話をしてやれ。良い機会だ、わしもあの国は好かぬ・・・」 「では・・・」 「良きに計らえ」 「は、」 始終片膝を着いて忠誠を示していた守備隊長エンダタは、鮮やかな緑の外套の下で、心底嬉しそうに口元をゆがめた。 二ヵ月後、調査団を作り、大臣は■■地方に近衛兵を派遣する。 そこで魔獣を統べる圧倒的な力を持つ魔物を確認、これを“魔王”と認定し対処を取る(調査団は二人を除いて全滅 以降小康状態だった魔物の襲撃が増大、ここから各地で人類の敗走が続く 皇国暦112年、隣国の首都が陥落、事実上の共和国滅亡となる それを受け、皇主は勅令による皇都移転を決意。海岸部地方都市のドールズイに皇居その他の機関を移転 各地都市の守備団を撤退させ海岸部手前のシュフィッツェン渓谷にまで防衛線を縮小構築、 わずか二ヶ月で谷の入り口をすべてふさぐほどの城壁を作りあげた。(当時の建築技術からすると奇跡といえる ここを最終防衛地点とし以降約20年、皇国暦133年 眠れるブタ小屋とまで 罵られた「研究所」のシロコモ博士が魔物の視覚化を可能にする第七視神経に作用する魔導結晶が開発されるまで防衛し続け、激戦を繰り広げることになる。 翌年の皇国暦134年、世界で初めての魔導結晶を実験配備された大隊が 投入され、渓谷前に巣食っていた魔物100匹ばかりを駆逐することに成功する。 この戦闘は、戦略的な観点からみれば勝敗には塵ほども影響しなかったが、それでも人類の反撃の狼煙には違いなかった。   ◇◇◇ 時を同じくして、皇国の中枢がシュフィッツェン渓谷に篭ってしまい、内政を省みなかったことで、皇国内は動乱の時代を迎えていた。 村や都市を護っていた守備隊は、皆シュフィッツェン渓谷へと召喚され、警察力は著しく低下し、モラルの崩壊によりどの街もスラムと化していた。 そして、突発的に行われる魔物達の襲撃。 先の見えない毎日と、すぐ隣にある死の恐怖に、人々の生活は荒廃の一途を辿った。 皇国暦113年 共和国の特使と自称する者たちが、皇国の見捨てられた都市や村に次々と現れた。 (彼ら特使に関する記述は、歴史書にほとんど書かれておらず、その起源を辿ることは難しい) 略奪と魔物の襲撃にすっかり疲れ切ってしまっていた人々は、彼らを無感動にむかい入れた。 都市の惨状を見て、自らを特使と名乗ったその男は言った。 「我らは魔族に対抗するものです。この街は我らが護ります、その代償として、我らがこの街に住むことを許してほしい」 その特使たちは皆傷ついていた。 そして、共和国の人間らしく、人間以外の血が流れていることを住民達は理解した。 しかし、混血を嫌う風習のある皇国の民であったが、今となってはもう、それはどうでも良いことでしかなかった。 特使はその都市の広場で、延々と演説を続けた。 だが、それに対し、皇国の民の反応は冷ややかなものであった。 そして数日が過ぎ、うやむやの内に特使たちが居つくことを、住民は許可した。 そもそも許可の申請など必要ないのだ、その許可を出す役人も、それらを統べる領主もこの都市から逃げ出してしまっていたのだから。 皇国暦115年 彼ら特使と称する者たちが街に居つくようになって2年が過ぎた。彼らは野党を難なく追い払い、都市の再生事業にも精力的に参加した。 彼ら特使たちのおかげで、都市の外にも畑を広げ、酪農をも行うことが可能になり、都市の生活は安定した。 ごく稀にやってくる魔物に対しても、彼らは住民達が見たこともないような方法で、彼らを捉え、瞬く間に追い払った。 そして20余年が過ぎた。 彼ら特使に師事し、戦士となったもの達が今、この都市の自警団を形成していた。 組織ははこの皇国の宗教である■■教を媒介として、網の目のように、次々と他の街とを繋げていった。 これが後のハンター協会(仮)へと進展するのだが、それはまたずっと後の話である。 共和国の領土が暗黒に飲まれている一方で、皇国はわずかな光を見出していたが、それが単純なものでないことを知る者は少ない。 皇国は皇国暦134年で成功した作戦を理由に、やっと復興の兆しを見せ始めていた街々に対し、自警団を作戦に参加させるように強要した。 もちろん住民は反対したが、この街出身の若者の自警団を残し、特使と名乗った彼らは、戦場へと足を向けた。 ここから先はある男が語っていたという物語を編集したものなので、真実の如何は分からない。 しかし、その男が再三に渡り語っていたことは、特使と名乗った者たちが例外なく勇敢であったということであった。 魔族との戦争において彼ら特使は常に、皇国軍の囮として使われた。 彼らが独自の方法で魔物をひきつけ、そこに魔導結晶による固定化を行い、不可視の敵の正体を暴き、軍が突撃するという物量作戦が毎日のように行われた。 そのため彼ら特使の損耗は激しく、しかし何も言わず彼らは戦い続けた。 やがて戦いは終局へと向かい。 皇国軍は敵の本拠地へと攻め入った。 特使たちはそのときも先陣を切った。だが、今回は少し状況が違った。彼ら魔物達は知恵をつけ、特使たちが本拠地に侵入したことを見計らい、後方から皇国軍を挟みこんだのだった。 練達度も低く、窮地はすべて特使たちに頼っていた彼ら皇国軍は、その慢心で、護衛すら置かず、最も後方に控えさせていた魔導大隊(魔道結晶を使用し、固定化を図る。または後方から魔法で援護する部隊)が総崩れしたことを機に、軍としてのまとまりを失った。 中には勇敢に戦ったものもいたが、ほとんどは恐れをなして持ち場から逃走したという。 そのことに気づいた特使たちは、人員を半数に分け、半数を救援に、残りの半数だけで魔王討伐に向かった。 それからは本当に地獄であったという。 特使たちは突かれても、斬られても、まるで取り付かれたように魔族に襲い掛かり、人間を護った。 一歩、また一歩と進むうちに、一人、また一人と、特使たちは倒れていった。それでも諦めず、彼らは戦い続けた。 彼らの宿命は魔王の討伐にある。 ぶくぶくと平和に太り続け、共和国よりも繁栄することとなった皇国の裏で、共和国は常に、魔王との戦いに明け暮れていたのだ。 最終的に人間達はその戦いに勝利した。 救援に向かった特使たちは全滅し、本拠地から戻った特使だけが生き残った。人数は、数えるほどに減っていた。 その首領とも言える勇者の名はアランカ。 彼らは魔王の継承性を経験と伝承から理解していた。そのため彼らは魔王をバラバラに砕き、大陸に点在する彼らの聖地にそれらを封印して回る。 その巡業の中でも、何人もの特使が倒れた。 魔王の休止状態には期限があったのだ。一刻も早く封印するために、彼らは傷だらけの身体に鞭を打ち、結果としてさらに数を減らした。 そして核たる心臓のみを持ち帰り、自らの身体に封印した。 最終的に苦肉の策として、血の契約を護る部族として自らに心臓を封印することとなった彼らは、山奥の谷間でひっそりと暮らし、それからさらに、数百年の時が流れた。 ・あとがき 今や魔王の存在はおとぎ話の世界だけの存在となって久しい。 それは私にとっても同じである。 しかし、皇国の歴史書には事の顛末がこと細かく記されていた。過去の偉人に私達は感謝せねばならない。 内容は建国史から始まり、現在に至るまで。 ほとんどが語られていた物語と一致していたが、唯一物語と違っていたことは、特使の存在がその歴史書にほとんど見受けられず、すべての偉業が、皇国軍の成した業績であるとされていることである。 それでは、物語を語っていたという男のことを少し話すとしよう。 当時物語をふれて回った男の名をタンタダ、もしくはエンダタという。 エンダタは敗残兵、または逃走兵であると歴史書には記されている人物であり、この私、アランスフェアがこの偽伝を書くにあたり、行き着いた人物である。 ただの一介の逃走兵が皇国の歴史書に明記されている点に私は着目し、そして歴史書とは異なる、偽伝にたどり着いたという顛末だ。 彼は街々を渡り歩き、壮大な物語を語ったと言うが、真相は分からない。そう時間も経たぬうちに彼が皇国軍に捕らえられ、歴史の表舞台から姿を消してしまったこともあるだろう。 彼がどういう末路を辿ったかは、誰も知るところではない。処刑されたと歴史書には記されているが、何故か歴史書の表記は曖昧である。 ともあれ彼の語ったという物語が、私を強く揺さぶった。とても興味深い話ではある。 ところが、真実性がすでに確立している由緒正しき皇国の歴史書と比べると、タンタダという男が語った物語は、全体としてはやはり偽伝と称されてしまう。 しかし私には、これらがすべて偽者だとは思えないのだ。いや、そう信じたいだけなのかも知れない。 その物語は語り継がれ、おとぎ話に強い影響を与えたと言う。 類似点は多々あるが、神秘性や勇者の存在、大臣の暗躍などおとぎばなしにしては興味深いものがある。 だが、これらは所詮正式な歴史とは言い難い偽伝である。それでも、数百年前の私達の祖先が何を感じ、何を求めていたのかを知る手立てとしては、十分に価値のある我々の財遺産と言うべきものなのではないだろうか。 タンタダ偽伝の最後はこう締め括られている。 「だがしかし、どう伝わろうとも、平和になった事実は変わらない」 「別に良いではないか、構わんさ」 死の淵で勇者アランカはそう呟くと、孫たちにそっと微笑んだという。 (シェリドランド=K・アランスフェア著 『皇国偽伝』より抜粋) ・・・時は大陸暦2006年(これくらい飛ばすか?) 少年は少女と出会う。 おとぎ話が伝説になる第一歩が、 世界の片隅でほんのりと明かりを灯した。 伝説が今、はじまる。(仮 (オープニングテーマ曲を脳内展開) ---- by夢狗 追記:梅村、妙な文章ですまん。 次回予告――、 随時更新していきます。シナリオにあわせて修正するのであしからずorz 意見などはコメント欄に ---- コメント欄↓ - とりあえず王道で占めてみた、燃えるかな?(・・`) -- 梅村 (2005-12-22 16:41:27) - やっぱアランカなのかよΣ(゚д゚lll) -- 荒覇吐 (2005-12-22 18:48:46) - 魔物の大群を足止めしておく弓兵はどこだ(゚∀゚)? -- 夢狗 (2005-12-22 20:26:53) - というかおじいさんの昔話風Σ(゚д゚lll)? -- 夢狗 (2005-12-23 16:34:18) - ・・・やっぱやめたほうがいいか( ´  ∇  `;) -- 梅村 (2005-12-23 22:31:54) - さて・・・これをどれだけ完結にまとめれば良いのだろうか・・・。プロローグが長すぎるのはイクナイと思うのだよ。ん、それとも途中の回想シーンみたいので語られるのかな。 -- dolion (2005-12-24 13:30:17) - 根性・・・か、それとも、イベントで小出しにするか・・・図書館っていう場所の蔵書に、世界の成り立ちとかが書いてあるとかどうかな? -- 梅村 (2006-02-08 22:06:38) - 内容、文構成がおかしいところを修正、相関図は変更の余地ありですな・・・orz -- 梅村 (2006-02-08 22:33:22) #comment
*プロローグ 現状を踏まえた上で考えると・・・継承性のある魔王は、人間をとりあえず憎んでいる。 魔族は魔王を利用する形で、人間と戦うが敗北 共和国は皇国よりも以前から魔王の存在を知っていた。魔王と魔族により共和国は滅ぼされる。 滅ぼされた共和国の敗残兵が皇国に流れ、ハンター協会の基礎を作る。彼らは皇国軍と協力し、魔王と魔族に打ち勝つ。 共和国の敗残兵は魔王をバラバラに封印する。自分がもう継承されないと知ると、魔王は呪いをこの大陸にかけた。それが負の存在。 それから数百年後の世界が舞台。 負の存在の爆発的発生、人間同士の争いのお話か・・・? 大分すっきりしたが、色々捨ててきた感も否めない。意見等は追記でお願いします。 種族の項目に細かいことをいくつか載せました。by梅村 **ここまでのお話 大陸暦1069年 皇国暦100年 ■■皇国建国100周年という一つの節目を迎えたその国にとって その年は明るい一年になるはずであった。 そう、はずであったのだ。 春、国花が舞い散る季節にその事件は起こった。 共和国との国境近く、辺境部にある■■村との連絡が途絶えたのだ。 不審に思った辺境守備団の一隊が■■村に着いたとき、その惨状に誰もが目を疑った。 (生き残りがいたことと、したいのやまーって情景描写) 山沿いに作られた小さな村は、その日は厚い雲に覆われていた。 周囲の山脈は、本来、残雪が美しく輝き、春の訪れを感じるはずであるというのに、そこだけが取り残されたようにすっぽりと、冬に閉ざされたようにひっそりと静まり返っていた。 野を覆うはずの緑も色褪せたように乾いた音を鳴らし、花は枯れ果て、力尽きたように、ひび割れた大地に横たわっていた。 そして、灰色の泥にまみれたぬかるんだ村の畦道、中心部に向かう道のあちらこちらに、それはあった。 いくつもの部品が転がっている。 赤い平原で満たされつくした村の広場に、守備隊は足を踏み入れ、その情景に知らず、剣に手を置いた。 噴水にへばり付いた血は手を触れるとぬるりと湿り気を帯びていた、まだ事件が起きてから、それほど時間が経っていないことを守備隊は理解すると、陣形を組んだまま村を散策した。 「散開」 だが守備隊の中の一人、ある青年は、仲間から少し離れ、地面に落ちていた何かの人形のようなものを手に取った。 彼はこの村が普通でないことを、直感で感じ取ったのであった。 「まるで、さっきまで生きていたのに・・・あっという間に命そのものがなくなってしまったみたいだ」 人がいなくなっただけにしては、この廃れようは異常としか言いようがない。 青年は人形を懐にしまうと、村の神木と思われる立派な大木に視線を移した。 針葉樹であるはずのその木は、今やすべて葉を落とし、時折山から吹く風に、ごうごうと音を立てながら、左右に大きく揺れていた。 村の協会と思われる建物の前に、大きな剣か何かで真横に薙ぎ払われた上半身が転がっていた。 胸から下は、その片割より数メートル離れた場所で、動くこともない。しかしその上半身に付いた顔は、守備隊の一人を見上げると、弱々しく声を上げた。 横に切られた胸から、収まっていたはずの臓物がぐったりとあふれ出し、雪解けの大地で泥にまみれても、何故かその男は生きていた。 「ああ・・・あああああっ?!」 その声を聞いたのは、先日守備隊に配属された新米の剣士だった。彼は目の前の恐怖に剣を抜き、まだ生きている男の頭に、半ば無意識に剣を突き刺した。 「あああああああああああああああああああああああああああああ!!!」 その若い剣士の恐怖に上げた声と、串刺しにされた男があげる、苦痛とも怒号とも取れる叫び声が、音というものが欠落していた小さな村に、やけに大きく木霊する。 「どうした!」 守備隊長が彼の元に走り出た。 それにその若い剣士は突き刺した剣から手を半ば投げ出すようにして放すと、血の気の引いた青白い表情で、若い剣士は守備隊長を見た。 「僕は・・・人を殺してしまい、ました」 明らかに死んでいるはずの男は、ただ一言こういった。 逃げろ、と。 「大丈夫だ、私に任せなさい。君は人民を殺してなどはいない。これは仕組まれたことなのだ、隣国の、共和国のまやかしなのだ」 確かにこの村は奇妙ではあった。 何故か家畜などに被害は無く殺されていたのが人間だけであったことと 通常焼かれているはずの家などの建築物が無傷であったこと略奪されていたものがなかったこと。 そして一番奇妙だったのは足跡が無かったということである、もし隣国軍が襲撃したのなら馬の蹄の跡や人の足跡の痕跡を残すはずだ。 そのいくつかの疑問点を黙殺し、守備隊長はこれを共和国軍の虐殺と報告する。(当時の共和国との仲は良いとは言えなかった上、その隊長は主戦派のひとりであった) 「良いか、今ここで起こった事は部外秘にせねばならぬ。この者たちの供養も必要だ、穢れてしまわれた彼ら哀れな人民に救いを、そして浄化を。そのために我々はこの村を焼く」 バラバラになって死んでいた、人間の部品を広場に集め火を放ち、同時にすべての家、家畜、畑に火を放った。価値のある遺留品は一所に集め、皇都に戻る途中の滝に、供養と称して投げ捨てた。 こうして事実は、皇国でもっとも残虐と思われる方法で闇に葬られ、その真実が表に再び現れるのは、実につい最近のことである。 後世、■■の惨劇と呼ばれるその事件は皇国史上初めての「魔物」による被害である。 いや、これまででも今まで教会の神父、悪魔祓いが対処していた様な悪霊、悪魔のようなゴースト類の「魔物」は存在していたが、それは実体が無く脆弱でたいした力を持たず身体的、精神的に衰弱している人にとり憑き、金縛りや疾病を起こす程度がせいぜいであった。 (くっそやべー戦争だぜ!って感じで) 皇都に戻った守備隊の一団は、その惨劇を語ることは無かった。 ただ一人、隊長であるエンダタを除いては。 「陛下、村はひどい有様でございました」 「ほう、そうか。して?」 「は、共和国の手によるものかと・・・」 「ふむ、そうか大儀であった」 「いかが致しましょう、陛下」 謁見の間で佇んでいた大臣、■■が恭しくこうべを垂れた。 「フン、元老院の和平派共にこの話をしてやれ。良い機会だ、わしもあの国は好かぬ・・・」 「では・・・」 「良きに計らえ」 「は、」 始終片膝を着いて忠誠を示していた守備隊長エンダタは、鮮やかな緑の外套の下で、心底嬉しそうに口元をゆがめた。 二ヵ月後、調査団を作り、大臣は■■地方に近衛兵を派遣する。 そこで魔獣を統べる圧倒的な力を持つ魔物を確認、これを“魔王”と認定し対処を取る(調査団は二人を除いて全滅 以降小康状態だった魔物の襲撃が増大、ここから各地で人類の敗走が続く 皇国暦112年、隣国の首都が陥落、事実上の共和国滅亡となる それを受け、皇主は勅令による皇都移転を決意。海岸部地方都市のドールズイに皇居その他の機関を移転 各地都市の守備団を撤退させ海岸部手前のシュフィッツェン渓谷にまで防衛線を縮小構築、 わずか二ヶ月で谷の入り口をすべてふさぐほどの城壁を作りあげた。(当時の建築技術からすると奇跡といえる ここを最終防衛地点とし以降約20年、皇国暦133年 眠れるブタ小屋とまで 罵られた「研究所」のシロコモ博士が魔物の視覚化を可能にする第七視神経に作用する魔導結晶が開発されるまで防衛し続け、激戦を繰り広げることになる。 翌年の皇国暦134年、世界で初めての魔導結晶を実験配備された大隊が 投入され、渓谷前に巣食っていた魔物100匹ばかりを駆逐することに成功する。 この戦闘は、戦略的な観点からみれば勝敗には塵ほども影響しなかったが、それでも人類の反撃の狼煙には違いなかった。   ◇◇◇ 時を同じくして、皇国の中枢がシュフィッツェン渓谷に篭ってしまい、内政を省みなかったことで、皇国内は動乱の時代を迎えていた。 村や都市を護っていた守備隊は、皆シュフィッツェン渓谷へと召喚され、警察力は著しく低下し、モラルの崩壊によりどの街もスラムと化していた。 そして、突発的に行われる魔物達の襲撃。 先の見えない毎日と、すぐ隣にある死の恐怖に、人々の生活は荒廃の一途を辿った。 皇国暦113年 共和国の特使と自称する者たちが、皇国の見捨てられた都市や村に次々と現れた。 (彼ら特使に関する記述は、歴史書にほとんど書かれておらず、その起源を辿ることは難しい) 略奪と魔物の襲撃にすっかり疲れ切ってしまっていた人々は、彼らを無感動にむかい入れた。 都市の惨状を見て、自らを特使と名乗ったその男は言った。 「我らは魔族に対抗するものです。この街は我らが護ります、その代償として、我らがこの街に住むことを許してほしい」 その特使たちは皆傷ついていた。 そして、共和国の人間らしく、人間以外の血が流れていることを住民達は理解した。 しかし、混血を嫌う風習のある皇国の民であったが、今となってはもう、それはどうでも良いことでしかなかった。 特使はその都市の広場で、延々と演説を続けた。 だが、それに対し、皇国の民の反応は冷ややかなものであった。 そして数日が過ぎ、うやむやの内に特使たちが居つくことを、住民は許可した。 そもそも許可の申請など必要ないのだ、その許可を出す役人も、それらを統べる領主もこの都市から逃げ出してしまっていたのだから。 皇国暦115年 彼ら特使と称する者たちが街に居つくようになって2年が過ぎた。彼らは野党を難なく追い払い、都市の再生事業にも精力的に参加した。 彼ら特使たちのおかげで、都市の外にも畑を広げ、酪農をも行うことが可能になり、都市の生活は安定した。 ごく稀にやってくる魔物に対しても、彼らは住民達が見たこともないような方法で、彼らを捉え、瞬く間に追い払った。 そして20余年が過ぎた。 彼ら特使に師事し、戦士となったもの達が今、この都市の自警団を形成していた。 組織ははこの皇国の宗教である■■教を媒介として、網の目のように、次々と他の街とを繋げていった。 これが後のハンター協会(仮)へと進展するのだが、それはまたずっと後の話である。 共和国の領土が暗黒に飲まれている一方で、皇国はわずかな光を見出していたが、それが単純なものでないことを知る者は少ない。 皇国は皇国暦134年で成功した作戦を理由に、やっと復興の兆しを見せ始めていた街々に対し、自警団を作戦に参加させるように強要した。 もちろん住民は反対したが、この街出身の若者の自警団を残し、特使と名乗った彼らは、戦場へと足を向けた。 ここから先はある男が語っていたという物語を編集したものなので、真実の如何は分からない。 しかし、その男が再三に渡り語っていたことは、特使と名乗った者たちが例外なく勇敢であったということであった。 魔族との戦争において彼ら特使は常に、皇国軍の囮として使われた。 彼らが独自の方法で魔物をひきつけ、そこに魔導結晶による固定化を行い、不可視の敵の正体を暴き、軍が突撃するという物量作戦が毎日のように行われた。 そのため彼ら特使の損耗は激しく、しかし何も言わず彼らは戦い続けた。 やがて戦いは終局へと向かい。 皇国軍は敵の本拠地へと攻め入った。 特使たちはそのときも先陣を切った。だが、今回は少し状況が違った。彼ら魔物達は知恵をつけ、特使たちが本拠地に侵入したことを見計らい、後方から皇国軍を挟みこんだのだった。 練達度も低く、窮地はすべて特使たちに頼っていた彼ら皇国軍は、その慢心で、護衛すら置かず、最も後方に控えさせていた魔導大隊(魔道結晶を使用し、固定化を図る。または後方から魔法で援護する部隊)が総崩れしたことを機に、軍としてのまとまりを失った。 中には勇敢に戦ったものもいたが、ほとんどは恐れをなして持ち場から逃走したという。 そのことに気づいた特使たちは、人員を半数に分け、半数を救援に、残りの半数だけで魔王討伐に向かった。 それからは本当に地獄であったという。 特使たちは突かれても、斬られても、まるで取り付かれたように魔族に襲い掛かり、人間を護った。 一歩、また一歩と進むうちに、一人、また一人と、特使たちは倒れていった。それでも諦めず、彼らは戦い続けた。 彼らの宿命は魔王の討伐にある。 ぶくぶくと平和に太り続け、共和国よりも繁栄することとなった皇国の裏で、共和国は常に、魔王との戦いに明け暮れていたのだ。 最終的に人間達はその戦いに勝利した。 救援に向かった特使たちは全滅し、本拠地から戻った特使だけが生き残った。人数は、数えるほどに減っていた。 その首領とも言える勇者の名はアランカ。 彼らは魔王の継承性を経験と伝承から理解していた。そのため彼らは魔王をバラバラに砕き、大陸に点在する彼らの聖地にそれらを封印して回る。 その巡業の中でも、何人もの特使が倒れた。 魔王の休止状態には期限があったのだ。一刻も早く封印するために、彼らは傷だらけの身体に鞭を打ち、結果としてさらに数を減らした。 そして核たる心臓のみを持ち帰り、自らの身体に封印した。 最終的に苦肉の策として、血の契約を護る部族として自らに心臓を封印することとなった彼らは、山奥の谷間でひっそりと暮らし、それからさらに、数百年の時が流れた。 ・あとがき 今や魔王の存在はおとぎ話の世界だけの存在となって久しい。 それは私にとっても同じである。 しかし、皇国の歴史書には事の顛末がこと細かく記されていた。過去の偉人に私達は感謝せねばならない。 内容は建国史から始まり、現在に至るまで。 ほとんどが語られていた物語と一致していたが、唯一物語と違っていたことは、特使の存在がその歴史書にほとんど見受けられず、すべての偉業が、皇国軍の成した業績であるとされていることである。 それでは、物語を語っていたという男のことを少し話すとしよう。 当時物語をふれて回った男の名をタンタダ、もしくはエンダタという。 エンダタは敗残兵、または逃走兵であると歴史書には記されている人物であり、この私、アランスフェアがこの偽伝を書くにあたり、行き着いた人物である。 ただの一介の逃走兵が皇国の歴史書に明記されている点に私は着目し、そして歴史書とは異なる、偽伝にたどり着いたという顛末だ。 彼は街々を渡り歩き、壮大な物語を語ったと言うが、真相は分からない。そう時間も経たぬうちに彼が皇国軍に捕らえられ、歴史の表舞台から姿を消してしまったこともあるだろう。 彼がどういう末路を辿ったかは、誰も知るところではない。処刑されたと歴史書には記されているが、何故か歴史書の表記は曖昧である。 ともあれ彼の語ったという物語が、私を強く揺さぶった。とても興味深い話ではある。 ところが、真実性がすでに確立している由緒正しき皇国の歴史書と比べると、タンタダという男が語った物語は、全体としてはやはり偽伝と称されてしまう。 しかし私には、これらがすべて偽者だとは思えないのだ。いや、そう信じたいだけなのかも知れない。 その物語は語り継がれ、おとぎ話に強い影響を与えたと言う。 類似点は多々あるが、神秘性や勇者の存在、大臣の暗躍などおとぎばなしにしては興味深いものがある。 だが、これらは所詮正式な歴史とは言い難い偽伝である。それでも、数百年前の私達の祖先が何を感じ、何を求めていたのかを知る手立てとしては、十分に価値のある我々の財遺産と言うべきものなのではないだろうか。 タンタダ偽伝の最後はこう締め括られている。 「だがしかし、どう伝わろうとも、平和になった事実は変わらない」 「別に良いではないか、構わんさ」 死の淵で勇者アランカはそう呟くと、孫たちにそっと微笑んだという。 (シェリドランド=K・アランスフェア著 『皇国偽伝』より抜粋) ・・・時は大陸暦2006年(これくらい飛ばすか?) 少年は少女と出会う。 おとぎ話が伝説になる第一歩が、 世界の片隅でほんのりと明かりを灯した。 伝説が今、はじまる。(仮 (オープニングテーマ曲を脳内展開) ---- by夢狗 追記:梅村、妙な文章ですまん。 次回予告――、 随時更新していきます。シナリオにあわせて修正するのであしからずorz 意見などはコメント欄に ---- コメント欄↓ - とりあえず王道で占めてみた、燃えるかな?(・・`) -- 梅村 (2005-12-22 16:41:27) - やっぱアランカなのかよΣ(゚д゚lll) -- 荒覇吐 (2005-12-22 18:48:46) - 魔物の大群を足止めしておく弓兵はどこだ(゚∀゚)? -- 夢狗 (2005-12-22 20:26:53) - というかおじいさんの昔話風Σ(゚д゚lll)? -- 夢狗 (2005-12-23 16:34:18) - ・・・やっぱやめたほうがいいか( ´  ∇  `;) -- 梅村 (2005-12-23 22:31:54) - さて・・・これをどれだけ完結にまとめれば良いのだろうか・・・。プロローグが長すぎるのはイクナイと思うのだよ。ん、それとも途中の回想シーンみたいので語られるのかな。 -- dolion (2005-12-24 13:30:17) - 根性・・・か、それとも、イベントで小出しにするか・・・図書館っていう場所の蔵書に、世界の成り立ちとかが書いてあるとかどうかな? -- 梅村 (2006-02-08 22:06:38) - 内容、文構成がおかしいところを修正、相関図は変更の余地ありですな・・・orz -- 梅村 (2006-02-08 22:33:22) #comment

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