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    <title>ボカロＳＳ投稿所@ wiki</title>
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    <description>ボカロＳＳ投稿所@ wiki</description>

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    <title>君の言葉、君の歌声。</title>
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    <description>
      
&lt;p&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;　私はＭＥＩＫＯ。マスターとの付き合いはもう数年になる。&lt;br /&gt;
　私の仕事はほとんどマスターの製作した歌の仮歌やバックコーラスばかりだった。&lt;br /&gt;
　だけど、それでもマスターの作る歌や、既製曲のアレンジなんかは結構好きで&lt;/font&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;どんな小さな仕事でも楽しかったんだよね。&lt;br /&gt;
　途中から仲間に加わったＫＡＩＴＯも、それは同じだったみたい。&lt;br /&gt;
　曲作りや、私たちの調律をしながらマスターは「いつになったら認められるんだろ&lt;/font&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;う」ってぼやいたりすることもあった。&lt;br /&gt;
　あくまでＤＴＭソフトとして歌うしか出来ない私たちは、マスターの思いに答えようと&lt;/font&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;必死に与えられた仕事をこなし、時に息抜きに作った歌を歌うことで答えてきた&lt;/font&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;つ&lt;/font&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;もりだった。&lt;br /&gt;
　だからなのか、マスターの音楽仲間は私たちの歌をこう評価した。&lt;br /&gt;
「そっちのＭＥＩＫＯもＫＡＩＴＯも、妙に生々しい感じがするな。人間臭いっていうか」&lt;br /&gt;
　それに対してマスターは&lt;br /&gt;
「そりゃ愛情こめて育ててるからな。オマエんとこの『歌詞さえ聞き取れりゃいい』&lt;/font&gt;&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;程度の扱いとは訳が違う」&lt;br /&gt;
　なんか、嬉しくて泣きたくなる気持ちっていうのがリアルにわかった気がした。&lt;br /&gt;
「俺たちは基本的な感情はあるけど、その他の細かい感情の機微とかは与えら&lt;/font&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;れる歌やマスターとの心のやり取りで学ぶしかないからなあ」&lt;br /&gt;
　ＫＡＩＴＯがそうつぶやく。うん、そうだね。あんたよりちょっと長くマスターのそば&lt;/font&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;にいる私はその分だけ人間に近いのかも。&lt;br /&gt;
　だけど、苦しくなるんだよね時々。マスターにちゃんと伝わってるのか分からなくて。&lt;br /&gt;
　『ＭＥＩＫＯ』専用の調律しやすくなるシェアソフト、通称『カップ酒』を最初にくれた&lt;/font&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;のは最初にぶつかった壁を乗り越えた後だったかな。&lt;br /&gt;
　あれからマスターは定期的に、私にそのソフトを使用するんだけど……私には&lt;/font&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;それがマスターからの労いだと思ってる。というかそうだと信じたい。私の気持ち、&lt;/font&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;伝わっていて欲しいから。&lt;br /&gt;
「ああ、熱唱した後のアイスは格別だなあ」&lt;br /&gt;
「熱暴走寸前までヒートアップしてたもんねえ、ＫＡＩＴＯ」&lt;br /&gt;
　今日も夜中まで作業してたマスターは、シャワーを浴びに行ってＰＣ前を離れてる。&lt;br /&gt;
　ＰＣの中で私たちがこんな会話してるなんて、知らないんだろうな。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;&lt;/font&gt;&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;　ＫＡＩＴＯとマスターと私、のそんな生活？　が一年以上続いたある日、私たちの&lt;/font&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;仲間が増えるかもしれないという噂を聞いた。&lt;br /&gt;
　その名も初音ミク、とかいう名前だけの私たちと違う、キャラ立ちしたボーカロイドらしい。マスターは購入するかどうか迷っていたようだった。&lt;br /&gt;
「前評判もいいが賛否両論らしいんだよなあ。どう思うよ、ＭＥＩＫＯとＫＡＩＴＯは」&lt;br /&gt;
　作業の合間、マスターが気まぐれにそんなことを問いかけて来た。&lt;br /&gt;
　正直を言えば、ＫＡＩＴＯが導入される前はちょっとテリトリーを侵される気がして嫌だったんだけど、いざ会ってみればちょっととぼけた好青年で、でも歌う時は一生懸命なところがなんだかマスターに被る気がして警戒はすぐ好意に変わった。&lt;br /&gt;
　だから、たとえ私より若くて可愛い女の子でも……なんだか仲良くやっていけそうな気がした。&lt;br /&gt;
「マスターの直感を信じてるよ」&lt;br /&gt;
　届かないかもしれないけど、私はそう答えた。ＫＡＩＴＯも横でうんうんとうなずいている。&lt;br /&gt;
「お？　ＭＥＩＫＯやけに素直に歌ってくれるな。そうか、賛成か。ちょっと真剣に考えてみるか」&lt;br /&gt;
　伝わった！　ちょっと嬉しくて、テンション上がっちゃう。マスターも嬉しそうに笑いながら、私の歌声に耳を傾けていた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;&lt;/font&gt;&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;　それから数ヵ月後、とうとう新しいボーカロイドがうち(ＰＣ)にやってきた。&lt;br /&gt;
「初音ミクです。よろしくお願いします」&lt;br /&gt;
「おお、可愛いなあ」&lt;br /&gt;
「よろしくね！」&lt;br /&gt;
　三人なんて大所帯になっちゃったけど、なんだかわくわくする。&lt;br /&gt;
　だけどそのミクの出現によって、マスターにとっても大きな喜びをもたらすことになるとはこの時はまだ知る由もなかった。&lt;br /&gt;
　ミクはなんというか、私たちなんかよりも操作が難しくないようで、はじめの頃私やＫＡＩＴＯが経験した『壁』はほとんどなくマスターの歌を歌いこなして行った。&lt;br /&gt;
「やだ、このままじゃ私たちの出る幕なくなっちゃうわ」&lt;br /&gt;
「そんなことないよ。ＭＥＩちゃんにはＭＥＩちゃんにしか歌えない歌があるはずだから、ちゃんとマスターもそれわかってくれてるって」&lt;br /&gt;
「ＫＡＩＴＯ……あんた優しいのね」&lt;br /&gt;
「まあ俺も、歌った後のアイスないのは淋しいけどさ。今は可愛い後輩の頑張る姿見て、初心に帰ろうよ」&lt;br /&gt;
「そうね。うん、分かった」&lt;br /&gt;
　ミクの歌は、本音の部分でも嫌いじゃなかった。私も忘れかけていた歌の楽しさというか、そういうのを思い出させてくれるものがあった。&lt;br /&gt;
　聞く側もそう感じるのかもしれない。ミクの歌はやがて動画サイトを席巻する勢いで広まって行った。&lt;br /&gt;
　たくさんの人が作る、それぞれのミクの歌。中には私も思わず歌いたくなるものがあって。&lt;br /&gt;
　マスターが珍しく本気で嫉妬をむき出しにして、その才能の渦巻く音と動画を凝視し、時にヘッドホンを&lt;br /&gt;
真空になりそうなほど耳に強く押し当てて聞き入っていた。&lt;br /&gt;
　急激に沸騰した感情が、マスターを揺り動かしたのか。ほぼ数日間寝食も忘れてそうしていたマスターが、ヘッドホンをすっと外したかと思うとＰＣの電源を落として部屋を出て行った。&lt;br /&gt;
　強制的に眠りにつかされた私たちが目覚めたのは、それからまた数日後。&lt;br /&gt;
「ミク、ＭＥＩＫＯ、ＫＡＩＴＯ。本気の歌を作って来たぞ。オマエらの持てる力で歌ってくれ」&lt;br /&gt;
　目の下にくまを作ったマスターが、なんか少し痩せたようにさえ見えるけど、眼力だけはらんらんとしている。&lt;br /&gt;
　こんな自信にあふれたマスターも珍しい。私は早くその『本気の歌』とやらを聞いてみたくてしょうがなかった。&lt;br /&gt;
　マスターがＣＤに焼いたデータをディスクにセットする。そしてほどなく、流れ出した歌に私たちは大きな衝撃を受けた。&lt;br /&gt;
「すごい！」&lt;br /&gt;
「うわあ、歌いたいなあこれ」&lt;br /&gt;
「マスター、どこにこんな歌を隠してたんですか！」&lt;br /&gt;
　それは、私たちがみんな大好きなマスターの言葉選び、音運び、そうしたセンスがさらに磨かれて奇跡の連続体と言うべきものになっていた。&lt;br /&gt;
「ホントにマスターの本気だ」&lt;br /&gt;
　ＫＡＩＴＯのつぶやきに、張子の虎のようにぶんぶんとうなずく私とミク。&lt;br /&gt;
　でもかなしいかな、マスターにそれは伝わるはずもない。&lt;br /&gt;
「……何、熱くなってんだろうな、俺。まあとりあえず調律するか」&lt;br /&gt;
「マスターお願い！　私に歌わせて……！」&lt;br /&gt;
　届くわけがない叫び。マスターの選択肢は既に透けて見えていた。&lt;br /&gt;
「てことでミク、頼むわ」&lt;br /&gt;
「え、あぁっ！　はい！」&lt;br /&gt;
　ミクが少し戸惑いながら私を見る。……お願い、そんな目で見ないで。さっきまであんたも祈るように指組んでたじゃない。&lt;br /&gt;
　叶って良かったね。精一杯歌ってきてよ。私と、ＫＡＩＴＯの代わりに。&lt;br /&gt;
「ＭＥＩちゃん……」&lt;br /&gt;
「ミク、頑張っておいで。俺たちはここから応援してるよ」&lt;br /&gt;
　ためらうミクの背中を、ＫＡＩＴＯが押した。&lt;br /&gt;
「はい……じゃ、行きます」&lt;br /&gt;
　私は笑って見せる余裕もなくて、顔を伏せた。&lt;br /&gt;
「あーあ、情けない」&lt;br /&gt;
　ミクを見送って、思わずため息交じりにつぶやく。それに対し、一生懸命になだめようとするＫＡＩＴＯ。&lt;br /&gt;
「そんなことないよ、ＭＥＩちゃん」&lt;br /&gt;
　それを分かっていながら、自嘲は止まらない。&lt;br /&gt;
「こんな心が狭かったら、アーティストなんてやっていけないよね。まあ所詮ＤＴＭソフトなんだけど」&lt;br /&gt;
「ＭＥＩちゃん、俺たちはもともとアーティストだっただろ？　もとの人間の記憶なんてもちろんないけどさ」&lt;br /&gt;
　うん。当然そんな『記憶』なんてない。設定付けとか、意識や知織としては情報があるけど。&lt;br /&gt;
　発売された時に、『本人』のコーラスをしたコラボレーションなんてサプライズがあったらしい。&lt;br /&gt;
　でもそれは私ではないしね。本人も、コーラスをしたＭＥＩＫＯも。&lt;br /&gt;
「だけど、私たちは単なるＤＴＭソフトじゃないの」&lt;br /&gt;
「マスターはそう扱ってた？」&lt;br /&gt;
「…………」&lt;br /&gt;
　お互いに一方通行だけど、マスターは私たちを最初からアーティスト扱いしてくれた。だからここまで私たちは、人格を持てたんだ……。&lt;br /&gt;
「ＭＥＩちゃんがマスター大好きなのはわかるよ。俺もそうだし、ってまあ変な意味じゃないけど」&lt;br /&gt;
「ふふっ」&lt;br /&gt;
　思わず笑いがこみ上げる。ごめんね、私一人傷ついたみたいな態度取って。ＫＡＩＴＯだって歌いたいよね。&lt;br /&gt;
　そのために私たちあるんだもんね。単なるソフトだっていいじゃない。要は心の持ちよう。&lt;br /&gt;
　だってマスターに伝えるには、それしかないし。私たちは、ただ歌うだけ。&lt;br /&gt;
「でもあの歌、ホントすごかったな」&lt;br /&gt;
「いつか歌わせてもらえるよ。それまで発声練習でもして頑張ろうよ、ＫＡＩＴＯ」&lt;br /&gt;
「うん！」&lt;br /&gt;
　マスターの本気に応えるべく、ミクは一生懸命に歌った。&lt;br /&gt;
　その歌を聞きながら、私もＫＡＩＴＯもひっそり口ずさんだり、様子を見て発声練習したりといつかまた私たちがそれぞれに歌えるときを夢見てひそかな努力をしていた。&lt;br /&gt;
「よし！」&lt;br /&gt;
　そう言ってマスターがＯＫを出したのは、ミクに付き合って不眠不休で２日目の朝を迎えた時のこと。&lt;br /&gt;
　それからのマスターはすごかった。動画なんて初めて作るんだろうに、ミクのキャラ絵をどこからか拾って来て(許可はもらったらしい)加工し、歌詞テロップをカラオケのように表示させる作業を休みなく続け、悪戦苦闘しながらも半日で作り上げたのだ。&lt;br /&gt;
　ミクも興奮冷めやらない感じで、その様子を眺めていたけど……さすがにマスターが倒れるように寝室に向かった後は、私たちも気絶するように眠りにおちた。&lt;br /&gt;
　普段はレコーディングエンジニアとか、スタジオミュージシャンとか一応音楽で食べているマスターだけど、作者としての評価は世間的には高くない。アマチュア的にはネットでもともと人気はあったけどね。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「ちょ……マジか？」&lt;br /&gt;
　起きてすぐ、シャワーも浴びず髭も剃らずに動画サイトを開いたマスターの、&lt;br /&gt;
開口一番の言葉がそれだった。&lt;br /&gt;
　私たちも中のモニタで、その様子を見ることが出来たんだけど……。&lt;br /&gt;
「何これ、カウンターおかしくなってない？」&lt;br /&gt;
「ホントだ。これ変だよ」&lt;br /&gt;
　騒ぐ私たちを尻目に、ＫＡＩＴＯはにやりと笑って言い放った。&lt;br /&gt;
「これがマスターの本気の結果、だろ？」&lt;br /&gt;
　いきなりマスターが投げ込んだ本気の一球は、ミク中毒の面々の心を打ちのめしてしまったらしい。&lt;br /&gt;
　動画の再生数、コメントの数、それは勢いを失うことなく増え続け、一週間もしないうちにマスターは『神』とまで呼ばれるようになっていた。&lt;br /&gt;
　それに気をよくしたマスターは、エンジンを全開したかのようにものすごい勢いで歌を作って行った。&lt;br /&gt;
　最初はやはりミクが歌うことの方が多かったんだけど、そのうち増殖していくミク動画をマスターは醒めた目で見るようになり……次に起用回数が増えたのはＫＡＩＴＯだった。&lt;br /&gt;
「ＭＥＩちゃん、俺頑張って来るよ！　ＭＥＩちゃんにも絶対お鉢回ってくるから咽喉、磨いておくんだぞ」&lt;br /&gt;
「うん、分かった」&lt;br /&gt;
　その気持ち、嬉しさが分かるからか、不思議とＫＡＩＴＯに対してやきもちは焼かなかった。&lt;br /&gt;
　確かに、ミクは扱い易いし何を歌わせても様になる。でも、だからこそ驚きも感動も徐々に失われていくのも分かる気がした。&lt;br /&gt;
　もっともアーティストとしては、何度でも新鮮に感じられるように常に感性を磨いておかなくっちゃいけないのかもしれない。&lt;br /&gt;
　でも時には、盲目的に自分を信じて、周囲に惑わされず作品を吐き出していくことがあってもいいと思った。&lt;br /&gt;
　まだその頃、動画サイトでＫＡＩＴＯを使用した歌は少なく、あっても目立たないかネタキャラ的な扱いしかされていなかった為、マスターがブチ上げた『本気のＫＡＩＴＯ』は爆弾的な勢いでＫＡＩＴＯ人気に火をつけた。&lt;br /&gt;
　さすがの私も、ちょっと焦りを感じるほどに。&lt;/font&gt;&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;&lt;br /&gt;
「もともと音楽仲間でオマエたち持ってるやつは、動画サイトで楽曲公開しようなんて思ってない連中ばっかりだからな」&lt;br /&gt;
　何度目かの新曲を発表した後、ＰＣ前でカップ酒を飲みながらマスターはそう言った。&lt;br /&gt;
　一部は例外もあって、マスターがかつて歯噛みした曲は名前を伏せた友人のだったりして驚かされたんだけど、もうその時はマスターも余裕があるのでメッセンジャーで相手と会話しながら談笑したりしていた。&lt;br /&gt;
『でも、次はそろそろＭＥＩＫＯが来るんじゃないか？』&lt;br /&gt;
　その有名Ｐはマスターとの会話の中で急にそんなことを言い出し、私はちょっとどきっとした。&lt;br /&gt;
「まあな。またボーカロイドも増えて来るし、飽和状態に思えるがＭＥＩＫＯを使ってるのはまだ少ない。そろそろ……だろうな。ミクやＫＡＩＴＯを使っていくうちに調律の仕方ももっと心得て来たし」&lt;br /&gt;
『以前聞かせてもらった、あのバラードを今の技術でやってみたらいいと思うぞ』&lt;br /&gt;
「ああ、あれなあ。俺も初期作品にしちゃ気に入ってはいる方だが……発表するなら新しい歌の方がって気持ちが強くてな」&lt;br /&gt;
　それはまだ、私がマスターと二人だけだった頃に歌わせてくれたものだった。そういえばあれはミクですら歌ってない。&lt;br /&gt;
『ああ、まあその気持ちは分かる。でも正直、俺にもう少しモラルがなかったらあの曲、先に使ってたと思うぞ』&lt;br /&gt;
「おいおいおい」&lt;br /&gt;
『いや、もちろんそっちの名前を出した上でだ。でももしそうしていたら、今の人気はなかったかもしれないな。惜しいことをした。あそこでは作曲者より発表もしくはアレンジした者勝ちだからな』&lt;br /&gt;
「オマエ性格悪いぞ」&lt;br /&gt;
　そう言いながらもマスターは笑っている。&lt;br /&gt;
「そういえば着うたやカラオケ配信決まったそうだな。頑張れよ」&lt;br /&gt;
『それでも発表から何ヶ月も経ってるんだぞ。お前の人気振りからしたら、いまさら俺なんか食いつきは期待出来ん』&lt;br /&gt;
「それでも長く待ってる人がいるんだから大丈夫だろ。俺の方こそ飽きられないように曲を出していくのに必死だ」&lt;br /&gt;
　それがマスターの本音であることは、相手にもすんなり伝わったのだろう。&lt;br /&gt;
『そうか、まあお互い頑張ろうな。長いこと見てた夢がそこまで近づいてるんだからさ』&lt;br /&gt;
　そう言って、会話を締めくくった。&lt;br /&gt;
「夢か……確かにな。まさかボーカロイドでここまで俺が注目されるとは思ってなかったしなあ」&lt;br /&gt;
　マスターにとっても最初はお手軽なツールでしかなかったのだろう。私はちょっと胸が痛くなった。&lt;br /&gt;
「実際手応えというか音楽会社から問い合わせもあるし、俺のやりたいことがやれるときが近づいているのかもしれないな」&lt;br /&gt;
　早くそのときが来ればいいね、マスター。私はそうつぶやきながら、モニター越しにマスターを見つめる。&lt;br /&gt;
　それから楽曲製作にもっと本腰を入れようと、マスターは普段の仕事をセーブして家にいることが多くなっていった。そしてようやく私にも出番が出来て、ミクがかわいらしく歌った歌をちょっと大人っぽく歌わせてもらったりして、その動画も評判になり『ＭＥＩＫＯ』の知名度も上がっていった。&lt;br /&gt;
　ＫＡＩＴＯと同じようにネタキャラ扱いされることもあったけど、それはそれで面白いし、マスターは歌に台詞を入れてみたり小芝居を加えたりして持てる技術を駆使し、私たちの魅力を最大限に引き出してくれた。&lt;br /&gt;
　何曲かは三人で一緒に歌ったりしたものもあって、それぞれの声が思った以上に相性がいいことも分かったりして。&lt;br /&gt;
「マスター生き生きしてるなあ」&lt;br /&gt;
　そんなＫＡＩＴＯも嬉しそうに、またアイスを食べている。私もカップ酒を片手に、ミクはねぎ飴を舐めながらにこにこと上機嫌にうなずいていた。&lt;br /&gt;
「調子がいい時ってとことんそうなるよね」&lt;br /&gt;
「シンガーソングライターとか、自分で楽曲作るバンドとかそういう感じだよなあ。どんどん面白くなっていくの」&lt;br /&gt;
「あれってどういう仕組みなんだろ。人間ってコンピュータより可能性すごくない？」&lt;br /&gt;
「どーぱみんとか関係してるらしいです。この前ちょっとネットで見たんですけど」&lt;br /&gt;
「ドーパミンかあ。脳内物質……私たちにはそういうのないよね」&lt;br /&gt;
「でも感情とかはあるし、このアイスとかＭＥＩちゃんのワンカップとかミクのねぎとかがそういう役割果たしてるんじゃないかな」&lt;br /&gt;
「でもこれ、一種のドーピングよ？」&lt;br /&gt;
「だから、ないから与えられてるんじゃないの？」&lt;br /&gt;
「ああ、そうか」&lt;br /&gt;
「どっちでもいいよ。ミク、ねぎ大好き」&lt;br /&gt;
「お手軽ねえ、まあ私も似たようなもんだけど。ところで新しいボーカロイド、マスター買うつもりなのかな」&lt;br /&gt;
「ああ、様子見るって言ってました。今三人で手一杯だからって」&lt;br /&gt;
「よそは海外の人もいるって言う話じゃない。全部いるところってどういう生活してるんだろうね」&lt;br /&gt;
「想像つかないなあ」&lt;br /&gt;
「あ、そういえば」&lt;br /&gt;
　ミクがいきなり話をぶった切る。&lt;br /&gt;
「何、どうしたの？」&lt;br /&gt;
「願いを叶えてくれるって言うミステリアス・アンって聞いたことある？」&lt;br /&gt;
「何それ」&lt;br /&gt;
「スイートアンじゃなくて？」&lt;br /&gt;
　スプーンを銜えたまま、身を乗り出すＫＡＩＴＯ。&lt;br /&gt;
「もとはその人なんだけど、初期の初期タイプで……バージョンアップしたデータを&lt;br /&gt;&lt;/font&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;上書き出来なかったとかで削除されちゃったらしいだって」&lt;br /&gt;
「ああ、ありそうで恐いわそれ」&lt;br /&gt;
「だけど消滅しなかったらしくて、ネットの海を徘徊してるウィルスに紛れて漂ってる&lt;br /&gt;&lt;/font&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;とか何とか」&lt;br /&gt;
「まさかミク、そんな与太話信じてんじゃないでしょうね」&lt;br /&gt;
「え、うん」&lt;br /&gt;
「面白そうだけど、ウィルスじゃこわいよなあ」&lt;br /&gt;
「アホらしい。あるわけないじゃないの」&lt;br /&gt;
「ＭＥＩちゃんなんでそんな夢がないこと言うの？」&lt;br /&gt;
「何でって……」&lt;br /&gt;
「マスターだって、おっきな夢を持ってたから現実になりそうなんでしょ？」&lt;br /&gt;
「いやそれはマスターが地道に努力を」&lt;br /&gt;
「信じることって大事だよ？　いくら私たちがボーカロイドでもさ」&lt;br /&gt;
「……あんた何かに影響されすぎよ」&lt;br /&gt;
　こんな馬鹿馬鹿しい会話でも、私たちには大切なコミュニケーションだった。&lt;br /&gt;
　夢見がちなミクもかわいいもんだし、時に喧嘩っぽくもなるけど本気でそうなるわけじゃない。&lt;br /&gt;
　こんな感じなら、また増えても嫌じゃないんだけどな。って、それにしても今日はマスター、ＰＣつけっぱなしにしてどこ行ってるんだろう。&lt;br /&gt;
「さっき携帯持ってどっか行ってたなあ」&lt;br /&gt;
「携帯か。マスター、ノートパソコンも持ってるしあっちは私たちも干渉できないわねえ」&lt;br /&gt;
「作業用のもう一台のならつながってるから行けるけど」&lt;br /&gt;
「後、バックアップ用のＨＤＤ。まああれは覗きに行くような場所じゃないけどね」&lt;br /&gt;
　そんな暢気な話をしていると、マスターが妙に緊張した様子で部屋に戻って来た。&lt;br /&gt;
「マスターどうしたんだろう。仕事でもめったにあんな顔しないのに」&lt;br /&gt;
　何か緊急事態なのか、大方仕事でポカやって怒られたとか。（納期を忘れることがマスターはたまにある）でも、それにしたっていつもの恐縮の仕方と違う。&lt;br /&gt;
「…………」&lt;br /&gt;
　マスターは黙ったまま、引きつった顔のままＰＣの前の椅子に座りキーボードを叩き始めた。&lt;br /&gt;
　何かと思ったら、人の名前らしきものを検索している様子。そして出て来た画像は、露出度の高いグラビアのような……。&lt;br /&gt;
「素人歌番組で芸能界入りするが事務所問題でグラビアに転向、か。歌は上手いんだろうな」&lt;br /&gt;
　マスターが見るウェブページは、私たちも同時に見れる。そこにはグラビアアイドルの女性がにっこりと微笑んでいた。半裸で。&lt;br /&gt;
「マスターってこんなの好きなんだ……」&lt;br /&gt;
　私はちょっと、いや大いに凹んだ。仮想的では、スタイルに自信はあるけれど。&lt;br /&gt;
「め、ＭＥＩちゃんの方が綺麗だって！」&lt;br /&gt;
　落ち込むと、いっつもＫＡＩＴＯがあわてながらなだめてくれる。私はそれが心地よくて、いっそう落ち込んでみせる。……こっちのが最悪じゃない？&lt;br /&gt;
「うーん、この子のプロデュースか……」&lt;br /&gt;
　マスターのつぶやきに、私はぴくりと顔を上げた。プロデュースですって？&lt;br /&gt;
「そういえば歌が上手いとは聞いてたよな。だけどしばらくテレビとか出てなかったはずじゃ」&lt;br /&gt;
　マスターが次に開いた検索ページに出て来たのは、そのアイドルの少し前の醜聞記事だった。&lt;br /&gt;
　妻子ある有名俳優との不倫、共演者との日替わりデート。十代半ばから魔性の女と言われていた彼女は、ある日一度は別れたと言われた有名俳優との濃厚なキス写真を激写され、ホテルの部屋での飲酒＆密会写真まで雑誌に載せられたことでまだ未成年だったこともあり二年以上前に芸能界を追われたはずだった。&lt;br /&gt;
「うわあ、ムネ大きいなぁ」&lt;br /&gt;
　ミクは別の所に目が釘付けになったらしい。私はあんたのその貧乳があんたらしくてかわいいと思うわよ、ミク。&lt;br /&gt;
　それはともかく記事を読み進むにつれ、また衝撃的な写真を見つけてはマスターの顔が曇っていった。&lt;br /&gt;
　でもホントは知ってる。マスターもちょっとエッチなサイト見てたりするし、決して聖人君子じゃないってこと。&lt;br /&gt;
　だけどなんかね、ここまで慎みがないっていうか、そういう所はいくら普通の男でも顔しかめたくもなるよね。&lt;br /&gt;
　やっぱりマスター同様にＫＡＩＴＯも顔を歪めていた。&lt;br /&gt;
「うーん……」&lt;br /&gt;
　どういう経緯で、芸能界を干されていたタレントが『歌』を武器にした復帰計画を企て、またそこにマスターが加担させられそうになっているのかはわからない。&lt;br /&gt;
　だけど昨今、芸能人も政治家も失脚するのはネットでの批判が高まってってのが多いみたいだし、それを逆手にとって今人気のあるマスターを担ぎ出して注目させようとしているのかも。&lt;br /&gt;
　マスターの歌が認められるのは嬉しい。だけど、こういう形で売り出されていいのだろうか。なんか、複雑な気分だった。&lt;br /&gt;
　そしてもっと複雑になったのは、マスターが動画サイトから見つけ出した彼女の歌う映像を見たときだった。&lt;br /&gt;
「…………」&lt;br /&gt;
　テレビ放映されたやつだから、そんなに画像も音声も鮮明ではない。だけど、でも。ものすごく驚いた。&lt;br /&gt;
なぜなら、本当に上手かったから。情感があって、発声もしっかりしてて。&lt;br /&gt;
　よく、人間の歌声にしか聞こえない私たちボーカロイドの調律をユーザーは&lt;br /&gt;
『神調教』と呼ぶけれど、そんなのは目じゃないくらいだった。&lt;br /&gt;
　私には、マスターの悩みがこの歌声で吹き飛んだのが分かってしまった……。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;&lt;/font&gt;&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;　あれからほどなく、マスター宛に見慣れないメアドのメールが届いた。メールの序文のテンションの高さから、一瞬迷惑メールかと思ってしまったけれど。&lt;br /&gt;
「これ、署名……あのアイドルだ」&lt;br /&gt;
　ＫＡＩＴＯのつぶやきに、気付きたくなかった事態の進捗状況をさとる。&lt;br /&gt;
「嘘でしょ……」&lt;br /&gt;
　マスターはこの頃出かけることが多くなっていた。おそらく打ち合わせで本人に&lt;br /&gt;
会ったのだろう。そこでメアドを交換したに違いない。&lt;br /&gt;
「マスター最近歌わせてくれなくなりましたね」&lt;br /&gt;
　ミクも寂しそうにぽつりとつぶやく。&lt;br /&gt;
「もう私達なんか要らないんじゃないの？　アイドル様が歌ってくれるんだし」&lt;br /&gt;
　カップ酒ももらってないのに、私は素面でミクにくだをまいた。&lt;br /&gt;
「そんなのイヤですぅ」&lt;br /&gt;
　ミクが半泣きになる。私の胸がズキっと痛んだ。&lt;br /&gt;
「ＭＥＩちゃん、ミクに八つ当たりしない」&lt;br /&gt;
「……わかってるわよＫＡＩＴＯ。ミク、ごめんね」&lt;br /&gt;
　でもその後にアイドルからのメールを読んだマスターの反応や、慎重ながらもうれしそうに返信を打つ様子を見て、私の不安は色濃くなるばかりだった。&lt;br /&gt;
「……はぁ」&lt;br /&gt;
　モニターの内側からマスターを見つめて、ため息をつく。なぜ私たちボーカロイドは、感情なんて与えられてしまったのだろう。&lt;br /&gt;
　否、本来はなかったのだろうが、与えられる歌を歌ううちに芽生えてしまった。自我と、感情と、そしてマスターへの……。&lt;br /&gt;
　手を延ばせば届きそうで、でも決して超えられない壁がそこにはあった。&lt;/font&gt;&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;　アイドルとマスターのメールのやりとりはハイペースで進み、見たくはなかったけれど見えてしまうその内容も急速に親しさを増していった。&lt;br /&gt;
　でも一つだけうれしかったのは、そのアイドルのために作ったと思われる新しい歌を、マスターが私に歌わせてくれたことだった。&lt;br /&gt;
「ＭＥＩちゃん、いいな～」&lt;br /&gt;
　ミクのうらやましがる言葉が、ちょっと快感。だけどいつもの悪い癖が顔を覗かせた。&lt;br /&gt;
「でも、これ仮歌だし……」&lt;br /&gt;
　言ってから思わずはっとなる。&lt;br /&gt;
「そんな気持ちで歌ったら、仮歌にもならないよ？」&lt;br /&gt;
　ＫＡＩＴＯの厳しい声。うん、そりゃ分かってるわよ。でもそう思っちゃう気持ちも分かってよ。&lt;br /&gt;
「いつものＭＥＩちゃんみたいに、朗々と歌って。俺たちここで聞いてるからさ」&lt;br /&gt;
　ＫＡＩＴＯの言葉に、思わず泣きそうになっちゃった。&lt;br /&gt;
「そうね。だって私はお手本なんだもんね。あのアイドルにちゃんと歌って聞かせなきゃ。マスターの歌を」&lt;br /&gt;
「そうだよ！　だってＭＥＩちゃんの歌凄いもん。ＳＯＵＬＦＵＬＬってよく言うけど、ＭＥＩちゃんの歌ってまさにそれだと思う」&lt;br /&gt;
「誉めすぎよ、ミク。そんなこと言ったって何も出ないんだからね」&lt;br /&gt;
　照れくささに悪態をつきながら、私はＰＣ内のスタジオに向かう。マスターが作ったその歌は、切ない恋の歌だった。&lt;br /&gt;
　恋、か。マスターの歌にいろんな物を学んで来たけれど、恋や愛の歌は何度歌っても胸がキュウキュウと絞られる感じがして辛い。だけど、辛いだけでもない。コップ酒とおつまみの組み合わせが最高だと、耳の下あたりが『嫌な感じじゃなく』痛くなる。&lt;br /&gt;
これを人は『美味しい物を食べると頬が落ちる』って表現するそうだけど、それにとても似ている。&lt;br /&gt;
　こんな感覚を与えてくれるマスターは、もちろん誰かに恋をしたことがあるんだろうな。今一人でいるってことは、それがかなわなかったのか終わってしまったのか。&lt;br /&gt;
　どっちにしたって、私のこの気持ちはマスターには届くはずのないもの。そう思いかけて、私は自分の考えを打ち消した。&lt;br /&gt;
　今までだって歌に思いを込めてきたじゃない。その時その時の感情。わずかでも、マスターに伝わったことだってあるし。うん、歌にすべてを込めよう。&lt;br /&gt;
　伴奏が流れ、マスターの指示にしたがって私は歌い始めた。想いのたけを込めて。&lt;/font&gt;&lt;/p&gt;
&lt;p&gt; &lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;「ねえ、ＫＡＩＴＯは恋って理解してる？」&lt;br /&gt;
　歌い終わって、マスターにもらったカップ酒片手に私はＫＡＩＴＯに絡んだ。&lt;br /&gt;
「え？　うん、そりゃまあ」&lt;br /&gt;
「あ、そう。まあ感情がある限り自然の摂理なのかなあ」&lt;br /&gt;
　ミクが作ってくれた焼きねぎが旨くてたまんない。でもさあ、なんでこんな電脳空間に七厘があんのよ。&lt;br /&gt;
「だけどさ、感情があるからって恋愛できるかといえばそう言うわけじゃないと思うよ」&lt;br /&gt;
「ああ、それもそうよね」&lt;br /&gt;
「ハイハイハイ！　ミク、他所のマスターに恋してます！」&lt;br /&gt;
　ねぎを焼いていたミクの突然の告白に、私は口にしたカップ酒を吹き、ＫＡＩＴＯは持っていたアイスバーを床に落とした。&lt;br /&gt;
「あ、でももちろん私たちのマスターも好きですよ。でもレンアイとかそういうのとは違うし」&lt;br /&gt;
「それは分かるけど、でもミクの恋するマスターは他所のミクのものだよ？」&lt;br /&gt;
「そんなの分かってるよぅ」&lt;br /&gt;
　ミクの場合、そのせつなさを歌に転化してるのかもしれない。それはそれで上手いやりかただと思う。マスターが知ったらショックだろうけど。&lt;br /&gt;
「さ、三秒ルール。だけど水道で洗ったら溶けちゃわないかな」&lt;br /&gt;
　ＫＡＩＴＯがなんかぶつぶつ言ってる。&lt;br /&gt;
「とっくに三秒過ぎてるわよ。ところでＫＡＩＴＯは誰か好きな人いるの？」&lt;br /&gt;
「こっ、こんな狭い状況で誰が好きとか言えるわけないじゃないか！」&lt;br /&gt;
　ＫＡＩＴＯの叫びは、まるで逆切れのようだった。&lt;br /&gt;
「へ？　いや、別にどっちが好き？　とか聞いてるんじゃないんだけど」&lt;br /&gt;
「あ、ああ……」&lt;br /&gt;
「まあそう言えばいつかマスターのこと好きだって言ってたわね。もちろん恋とかそういうのじゃないんだろうけど。でも、残念だわ」&lt;br /&gt;
「え？」&lt;br /&gt;
「どういう意味でも、私にとってＫＡＩＴＯはライバルね。だって私もマスターが好きだもーん。アイシテルの」&lt;br /&gt;
　一瞬、ＫＡＩＴＯの表情が曇った。その意味を察することは出来なかったけれど。&lt;br /&gt;
「……そんなの今更だろ」&lt;br /&gt;
「ミクも知ってましたよ」&lt;br /&gt;
　酔いに任せてぶちまけてしまった私の告白は、あっさりと右から左へ流されてしまった。&lt;br /&gt;
「でも、不毛な恋よね……」&lt;br /&gt;
「言葉がもしも通じたって、百パーセント相手に気持ちが伝わる恋愛なんかないと思うよ？　俺は」&lt;br /&gt;
「そりゃそうだけど、でもこのままじゃマスターをあのアイドルに持ってかれちゃう。ああ悔しい」&lt;br /&gt;
　もう、私は本音を抑えることが出来なかった。&lt;br /&gt;
「飲み過ぎだよ、ＭＥＩちゃん」&lt;br /&gt;
「うぅ～」&lt;br /&gt;
「ミク、ＭＥＩちゃんを部屋に連れてって来るね」&lt;br /&gt;
「うん、頼むよ。あ、ＭＥＩちゃん寝たらちょっと話があるんだけど」&lt;br /&gt;
「あ、うん。片付けもあるし戻って来るよ。ちょっと待っててね」&lt;br /&gt;
　薄れゆく意識の中、二人のそんな会話が聞こえたのは覚えている。二人でこっそり話って何だろう。気になったけど、歌い疲れと酔いで堕ちる直前の私には問い質す気力などなかった。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;&lt;/font&gt;&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;　私が目覚める頃、マスターは歌の編集を終えたようで目をこすりながらＣＤに書き出していた。この作業が終わったら眠るのかな。&lt;br /&gt;
　そう言えばミクとＫＡＩＴＯはどこへ行ったんだろう。それぞれの寝室かもしれないけど、それにしてはなんか気配すらない。&lt;br /&gt;
　私はきれいに片付いたテーブルに肘をついて、頬杖をしながらマスターを見た。&lt;br /&gt;
　多分世間一般的には、マスターはそんなイケメンじゃない方だと思う。でもそのあんまり高くなさそうな身長も、つぶらな一重も、ゲジゲジ眉毛も私にはいとおしい。&lt;br /&gt;
　ねえ、歌に込めた想い伝わった？&lt;br /&gt;
「よし、書き込みもバックアップも終わったぞ。しかしやっぱりＭＥＩＫＯに歌わせて正解だったな」&lt;br /&gt;
　マスターはそう言うと、ディスクを取り出してＰＣを終了させた。……よかった。またいい夢が見れそう。&lt;br /&gt;
　私はふらふらと寝室に戻り、布団を頭までかぶってもう一度目を閉じた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;&lt;/font&gt;&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;　ゆらゆら、ゆらゆら。電脳世界のゆりかごは、満ち引きする波のようにここちよく揺れる。&lt;br /&gt;
　すりガラスのようなぼんやりした視界に映るのは、ミクとＫＡＩＴＯの背中。そして彼らと向かい合っている身長の高い、髪の長い女性。あれは誰なんだろう？　どこかで見たことがあるような気がする。でも、誰だったっけ。思い出せない。&lt;br /&gt;
「はい、それでかまいません。お願いします」&lt;br /&gt;
「俺も、どうなっても文句はありません。……ＭＥＩちゃんの為なら」&lt;br /&gt;
　なんだか初期の頃と同じような、調律が出来てない声で二人がそんなことを言った。私の為って、何？&lt;br /&gt;
　そして何かを懇願する二人に答えるように、その髪の長い女性が口を開いた。&lt;br /&gt;
「……ワカリマシタ」&lt;br /&gt;
　調律不足に輪をかけたような、そんな発音で答える。もしかしたら彼女もボーカロイドなの？　それにし&lt;br /&gt;
たって酷いけど。&lt;br /&gt;
「ああ！　良かった。探した甲斐があった。ありがとうございます」&lt;br /&gt;
「……アナタタチ、トテモシンケンダッタ。ダカラソノオモイ、コタエタダケ」&lt;br /&gt;
「俺、本人には絶対に言えないけど……ＭＥＩちゃんが大切なんです。ミク、俺の勝手に巻き込んでごめんな？」&lt;br /&gt;
「ううん、私こそ調子に乗って他所のマスターが好きとか変なこと言っちゃったから、あれで優しいマスター思いのＭＥＩちゃんが傷ついてたら申し訳ないし。それにね！　ちょっと下心もあるんだ。もし、結果としてアンインストールされることになっても、私も『彼女』みたいになれるんじゃないかって」&lt;br /&gt;
　ミクの言葉を黙って聞いている長い髪の女性は、寂しげに微笑んだ。&lt;br /&gt;
「ワタシノヨウニナル、オススメシナイ。マスターウシナウノハ、ホントウニカナシイ……」&lt;br /&gt;
「あっ、すみません。そんなつもりじゃ」&lt;br /&gt;
「イイ、ワカッテル。ワタシモナカマイレバ、サミシクハナカッタ。ワタシガホカボーカロイドノネガイカナエルノハ、タブンソノアイダダケデモ、サミシサワスレラレルカラダトオモウ」&lt;br /&gt;
「アン……」&lt;br /&gt;
　ＫＡＩＴＯのつぶやく名前を聞いて、私は思わず飛び起きた。それだけじゃない。ミクが言ってた事って何？　アンインストールってどういうこと？&lt;br /&gt;
　どうか単なる夢であってほしいと思う。もっともこの空間で夢を見ること自体変なんだけど。&lt;br /&gt;
　カップ酒飲み過ぎたのかな。ちょっと自重しよう、今度から。&lt;br /&gt;
「うう、ちょっと不調……なんだろう、この違和感」&lt;br /&gt;
　ＰＣ内の空気というか、何かがおかしかった。私は寝室を出て、いつもみんなが集まるリビングに向かう。&lt;br /&gt;
　そういえばバーチャルなこの空間も、私が来たばかりの頃よりかなり鮮明になってきたなあ。最初は一室で雑魚寝だったけど、ミクが来ていろいろシステムが向上して行って……。だけど、なんでまた廊下がこんなに変な配色になってるの？&lt;br /&gt;
「ん？　なんだこれは」&lt;br /&gt;
　外からマスターの声がする。&lt;br /&gt;
「ＰＣの調子が……やばいな。これは下手に再起動するのも危ぶまれる」&lt;br /&gt;
　こんなこと今までなかったのに、何が起こったの？&lt;br /&gt;
「彼女のメールについてた添付ファイルを、うっかり開けてしまったからか？」&lt;br /&gt;
　マスターは例のアイドルからのメールを受信して、それについていたファイルを&lt;br /&gt;
開けてしまったらしい。&lt;br /&gt;
ということはこの変な感じはウイルス？　やだなあ、もう。管理に関しては徹底して&lt;br /&gt;
るはずなのに、なんでそんなポカやっちゃうのよ。そんなに油断してたの？&lt;br /&gt;
「……仕方ない。対処は帰ってからにするか」&lt;br /&gt;
　マスターはそう言うと、ＰＣを放置して部屋を出て行った。どこかへ出かけるつもりなんだろうな。&lt;br /&gt;
　あのアイドルと会うのかな。メールの中身、何だったんだろう。&lt;br /&gt;
「マスター、出てった？」&lt;br /&gt;
　私がこっそりそんなことを企んでたら、ＫＡＩＴＯが部屋から顔を出した。&lt;br /&gt;
「え、あっ、うん」&lt;br /&gt;
「そっか……良かった」&lt;br /&gt;
　そう言って廊下に出てきたＫＡＩＴＯもやはり、どこかおかしかった。&lt;br /&gt;
「ちょっと、ＫＡＩＴＯ。あんた……腕が」&lt;br /&gt;
　それだけじゃない。声もやっぱり初期の頃みたいな。&lt;br /&gt;
「俺はこの程度で済んでるけど、ミクがさ……」&lt;br /&gt;
「えっ？」&lt;br /&gt;
「えへへ、こんなになっちゃった」&lt;br /&gt;
　顔を出した時点で、ものすごく驚いた。だってミクご自慢のツインテールが……。&lt;br /&gt;
「ミク、何で髪の毛……そんな短くなったの」&lt;br /&gt;
　でも、ミクの異常はそれだけではなかった。ミクの肘から先が、両方なくなっていたのだ。&lt;br /&gt;
「何これ、ウイルスのせい？　バグなの？」&lt;br /&gt;
　パニックに陥って騒ぐ私を、ＫＡＩＴＯは静かな声でなだめた。&lt;br /&gt;
「違うよ。これは全部俺たちが願ったことなんだ。良かった、ＭＥＩちゃんには何も影響なさそうだ」&lt;br /&gt;
「どうして！　こんなこと願うって、何故？」&lt;br /&gt;
「落ち着いて、ＭＥＩちゃん。よく聞いて」&lt;br /&gt;
　肩に手を置かれたわけでもないのに、まるでそんな風に感じるＫＡＩＴＯの言葉に、私は気持ちが平静になるのを感じていた。水面が、凪ぐように。&lt;br /&gt;
「あのね、ＭＥＩちゃん。今日、マスターあのアイドルとデートの約束してるの。だから……」&lt;br /&gt;
　そんな衝撃のことですら、今の二人の変化を目の当たりにしてしまったらさほどのものでもない気がした。&lt;br /&gt;
「昨日、ＭＥＩちゃんが歌ってる間にメールがあってね。ミクと一緒に見ちゃったんだ」&lt;br /&gt;
「でも、それとこの状態と何の……あ！」&lt;br /&gt;
　私はさっきの夢を思い出していた。&lt;br /&gt;
「ＭＥＩちゃんを、今日の日が沈んでから明日の夜明けまで人間にしてあげる」&lt;br /&gt;
　そう言って、ミクが何か誇らしげに微笑んだ。&lt;br /&gt;
「その為の代償なんだよ、これはさ」&lt;br /&gt;
　私は、思わず声を上げて泣いた。&lt;br /&gt;
「もう、馬鹿よあんたたち……大馬鹿よ！」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;&lt;/font&gt;&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;　準備をするまでの時間は十分にあった。けれど、いろいろ学ばなきゃならないことがあってそれがものすごく大変だった。&lt;br /&gt;
　でも、それはものすごく楽しくもあった。&lt;br /&gt;
「マスターの好み探るって言っても、インターネットの履歴でいろいろ見ちゃうのって気が引けるのよね」&lt;br /&gt;
「あはは。まあでもそれが一番分かり易いし」&lt;br /&gt;
　履歴を探るのは今に始まったことじゃなかったけど、マスターの好む女性のイメージをつかみたくて、ただ一心にページを飛びまくった。&lt;br /&gt;
　そして得た情報をもとに、多少の体型補正、そして髪形も微妙に変更。下着や衣装、小物に至るまで事細かに『設定』を決めると、今度は実体へと変化させるのだけど。&lt;br /&gt;
　とりあえずは先に丸裸状態で、私はマスターのＰＣ作業部屋に出現しなければならなかった。&lt;br /&gt;
「ちょっと待って……もし万が一帰って来られたらヤバイじゃない」&lt;br /&gt;
『出力』直前まで来ておきながら、私は今更のように慌てた。&lt;br /&gt;
「それはないから大丈夫」&lt;br /&gt;
　ＫＡＩＴＯが微笑みながら、私を宥める。&lt;br /&gt;
「し、新聞屋さんとか来たら？」&lt;br /&gt;
「出なきゃいい」&lt;br /&gt;
「たっ、宅配便！」&lt;br /&gt;
「それも出なきゃいい」&lt;br /&gt;
「で、でもっ」&lt;br /&gt;
　ホント、往生際悪いってこのことよね。&lt;br /&gt;
「ＭＥＩちゃん、ＭＥＩちゃんがやんなきゃいけないのは一つだけ。マスターのココロを掴む事」&lt;br /&gt;
　ミクの言葉に、私はやっと平静を取り戻した。&lt;br /&gt;
「……うん。でも、私はアイドルに勝てるかな」&lt;br /&gt;
「大丈夫。そこら辺は手を打ってあるから」&lt;br /&gt;
　何をするつもりなのだろう。こんなにも多くの物を失って、彼らは何をしようというのだろう。&lt;br /&gt;
「ＭＥＩちゃん、落ち着こう。まずはさ」&lt;br /&gt;
　ＫＡＩＴＯにそう言われて、私は静かに頷いた。&lt;br /&gt;
「うーん、ちょっと目を瞑って」&lt;br /&gt;
「え、あ……こう？」&lt;br /&gt;
　言われるまま、目を閉じる。まあ確かにこれなら、気持ちも落ち着く……そう思った瞬間、私の唇に何かが触れた。&lt;br /&gt;
　いや、何かって……本当はそれが何なのかすぐ分かった。でも目を開ける前に、彼はそれを離してしまったけれど。&lt;br /&gt;
「ＫＡＩＴＯ……」&lt;br /&gt;
「マスターより先にもらっちゃったけど、これぐらい許してくれるよね？」&lt;br /&gt;
「…………」&lt;br /&gt;
　許すとか許さないとかじゃない、って言いたかったけど言葉にならなかった。&lt;br /&gt;
「ＫＡＩ兄ぃ、ＭＥＩちゃんにアレ言っておかなきゃ」&lt;br /&gt;
「あ、そうだな……」&lt;br /&gt;
　何？　まだ何かあるの？&lt;br /&gt;
「ＫＡＩＴＯ、言ってよ」&lt;br /&gt;
「うん。ＭＥＩちゃんには何も負荷をかけないように配慮したんだけど……どうしても一つだけ我慢してほしいことがある」&lt;br /&gt;
「我慢？　何を？」&lt;br /&gt;
　ＫＡＩＴＯが、苦しそうな顔をした。&lt;br /&gt;
「それは、歌うこと」&lt;br /&gt;
「歌？　どうして？」&lt;br /&gt;
「絶対ってわけじゃない。ただ出来るなら最後の手段にしてほしい。それが俺たちからの頼みだ」&lt;br /&gt;
　マスターの心を掴めって指令と、その制約は矛盾しているように思えた。&lt;br /&gt;
「それは、構わないけど……私が歌っちゃったら何かあるの？」&lt;br /&gt;
　だけど、ＫＡＩＴＯは口を閉ざした。その代わりにミクが口を開く。&lt;br /&gt;
「あのね、ＭＥＩちゃんが歌ったら……私たちもう」&lt;br /&gt;
「ミク！」&lt;br /&gt;
「私たちもう生きられなくなるの。マスターのＰＣの中で」&lt;br /&gt;
　今でさえこんなに傷ついているのに、その上生きられなくなるって。&lt;br /&gt;
「そ、そんなの」&lt;br /&gt;
「でもＭＥＩちゃん、そうなっても構わないよ。ＭＥＩちゃんさえ幸せになってくれれば」&lt;br /&gt;
　ミクが泣きそうな顔で笑う。&lt;br /&gt;
「あんたたち失ってまで、欲しい幸せなんかないよ！　そんなのな……」&lt;br /&gt;
　私の叫びを、ＫＡＩＴＯが二度目の口づけで吸い取った。そして次の瞬間、私は電脳空間から現実世界へと『排出』されてしまった。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;&lt;/font&gt;&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;　端から見れば、本当に間抜けな格好だと思う。日のすっかり暮れた部屋、ＰＣやいろんな機材が並んでいる中で、全裸で右往左往している女。&lt;br /&gt;
　さすがに気恥ずかしさもあって、私はモニターにそこにあった布をかけた。これはマスターが時々使っているひざ掛けだ。&lt;br /&gt;
　自分の体に巻き付ければ肌寒さも感じなかったかもしれない。でも、今は何だかモニター越しに自分の姿を見られるのが嫌だった。&lt;br /&gt;
　そうしているうち、下着、衣服、小物、靴、と必要なものが目の前に現れていったので、私はそれをどんどん身につけて行った。&lt;br /&gt;
　メイクだけはどうしようもないように思えたので、肌に直接『プリント』してもらってるから崩れる心配もない。まあ一応鏡は覗き込んだけどね。&lt;br /&gt;
　髪の毛も小物の櫛で整えて、一応の準備が整ってからやっと安心したようにマスターがいつも座る椅子に腰を落とした。&lt;br /&gt;
　もう、ＫＡＩＴＯの声もミクの声も聞こえない。私は自分の綺麗な柄のプリントされた指先をじっと見つめながら、マスターがどれだけ孤独であるかを知った。&lt;br /&gt;
　そりゃ、アイドルに惹かれたって無理はなかっただろう。でも、今夜だけでもマスターの眼に直接自分を映して、そして話がしたかった。&lt;br /&gt;
　喋りはどうしても、歌うよりは苦手だけれども。でも歌ってしまったらＫＡＩＴＯやミクが……。&lt;br /&gt;
「…………」&lt;br /&gt;
　思わずため息がこぼれる。彼らが多くを犠牲にして作ってくれたせっかくのチャンスを、フイにしたくなかった。でも、本当にこれでいいのか。そんな思いが巡り、巡る。&lt;br /&gt;
　ふっと、時計を見た。７時には部屋を出なければ、マスターが彼女を待つホテルのバーまで間に合わない。あと５分……。&lt;br /&gt;
　私はサンダルとＰＣのそばにいつもマスターが置いている合鍵を掴むと、意を決して玄関に向かった。&lt;/font&gt;&lt;/p&gt;
&lt;p&gt; &lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;　地図と路線は頭に叩き込んである。だけど途中、ふと立ち止まってビルの大画面を見た時に変なことを考えてしまった。&lt;br /&gt;
　まるでこの世界も、ＰＣの中、電脳世界と変わらない気がする。どんどん流れていく人の波、走り去る&lt;br /&gt;
車、電車……。それらが移り変わっていくＰＣ内の光景のようで、思わず笑いがこぼれた。&lt;br /&gt;
　何人かに、怪訝そうに振り返られちゃった。さあ、急がなきゃ。&lt;/font&gt;&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;　目にする物、すべてが初めてではあるけど、インターネットやいろんな情報で知っているからそんなに驚くこともなく。でも、やっぱり見るのと聞くのじゃ雰囲気って大きく違うけど。特にこの、高層ホテルのラウンジとかいうのはそこへ向かうまで肌にかかる圧とか、気分的な緊張とかかすかに漂うお酒の香り。&lt;br /&gt;
　カップ酒なんか比じゃない感じ。当たり前だよね。安っぽいお酒とはワケが違うし。&lt;br /&gt;
　さっきまでちょっと高いと思ってたデパートがかなり低く見えて、ちょっと足がすくむ。私、高所恐怖症&lt;br /&gt;
だったのか。意外だわ。とか思ってたらエレベーターのドアが開いた。&lt;br /&gt;
「……あ」&lt;br /&gt;
　その姿はすぐに目に飛び込んできた。背中を丸めて、携帯とにらめっこしているマスターの……。&lt;br /&gt;
　ちょっと不機嫌な雰囲気なのは、やっぱりドタキャン（ＫＡＩＴＯ情報、というか予報）されたから？　周囲も不審がってるのか、マスターの座るカウンター席はそこだけぽっかり空席が目立っていた。&lt;br /&gt;
「あノぉ……」&lt;br /&gt;
　そっと近づいて、声をかける。あうう、上ずっちゃうよ、声が。&lt;br /&gt;
「ん？」&lt;br /&gt;
　そう言って振り返ったマスターは、夕方以降にはいつもある髭がなく、いつものあのぎざぎざ眉毛も綺麗に整えられていた。それだけ着合い入ってたのに、何か可哀想だなぁ。&lt;br /&gt;
「トナリ、いい、ですか？」&lt;br /&gt;
　私の言葉に、マスターは呆然とした表情でしばらく固まっていた。思わず逃げ出したくなる衝動。でも、ここで逃げたら意味がない。&lt;br /&gt;
「あ、ああ。どうぞ」&lt;br /&gt;
　マスターお気に入りらしい一張羅のスーツ。少し歪んだネクタイが、着慣れない感じを容易く予想させた。&lt;br /&gt;
「スミマセン、失礼、します」&lt;br /&gt;
　センテンスを出来るだけ短めに。もしかすると外国人みたいに思われちゃうかもしれないけど。&lt;br /&gt;
「どちらから来られたんですか？」&lt;br /&gt;
　やっぱり！　あぁ、もう。&lt;br /&gt;
「イエ、ア、はい……海の向こうデス」&lt;br /&gt;
　適当に国の名前言えばいいのに、何言ってんのよ私！&lt;br /&gt;
「海の向こう？　海……ああ、どこかの島？」&lt;br /&gt;
「はい、ソンナトコロです」&lt;br /&gt;
「へえ、いいなあ。のんびりしてそうだなぁ」&lt;br /&gt;
　確かにのんびりはしてる。……ううん、してたって言った方がいいかな。&lt;br /&gt;
「マ、マス……いえ、ミスター」&lt;br /&gt;
「うん？　ああ、タカツキでいいよ。俺、高槻仁則（たかつきひとのり）って言うんだ」&lt;br /&gt;
「た、タカツキさんデスか」&lt;br /&gt;
「良かったらキミの名前を教えてくれないかな」&lt;br /&gt;
「え？　ワタシハ、メ……」&lt;br /&gt;
　私は危うく自分の名前を言いそうになり、口をつぐんだ。&lt;br /&gt;
「め？」&lt;br /&gt;
　とっさに頭の中に渦巻く言葉を組み合わせる。&lt;br /&gt;
「メニール・郷子(さとこ)。ゴウと言う字にコドモの子」&lt;br /&gt;
「さとこ！　いい名前だなあ」&lt;br /&gt;
「アリガトウ……」&lt;br /&gt;
「え、じゃあ。名前は日本語ってことはハーフなんだ？」&lt;br /&gt;
「……両親、もうイナイから詳しいことシラナイ」&lt;br /&gt;
　うそにうそを重ねていくのは、ちょっと辛かった。&lt;br /&gt;
「あ……悪いことを聞いた」&lt;br /&gt;
「ア、気にシナイデ。ただチョットふらっと二ホンに来て見たかったの」&lt;br /&gt;
　マスターは、いいえ……彼は私に見せたことがない表情で微笑んだ。&lt;br /&gt;
「何か、飲む？」&lt;br /&gt;
「ソウネ……カクテルちょっと」&lt;br /&gt;
「わかった。バーテン、何かカクテルを彼女に」&lt;br /&gt;
　私は内心苦笑を浮かべていた。人間になっても、やっぱり私の動作を安定させるのはお酒なのね。&lt;br /&gt;
「あ、タカツキさん」&lt;br /&gt;
「ん？　ワインか日本酒の方が良かった？」&lt;br /&gt;
　……見抜かれてる、じゃなくて。&lt;br /&gt;
「チガイマス。あの……誰か待ってたんじゃナイんデスカ？」&lt;br /&gt;
　駄目になってるのを承知で、意地悪な問いを投げる私。&lt;br /&gt;
「あー、まあ……。でも別にそんなたいそうな相手でもなかったから」&lt;br /&gt;
　強がり、意地っ張り。馬鹿なひと。&lt;br /&gt;
「ソウナンデスカ？　でもナンダカ、サミシソウだった」&lt;br /&gt;
「そう見えたか、ははは。うん、まあどんな相手でも約束を反故にされるのは辛いからなあ」&lt;br /&gt;
「ワタシが、ツキアイマス」&lt;br /&gt;
　とっさに出てしまった言葉。彼は驚いていたけれど、その顔はすぐ子供みたいな破顔に変わる。&lt;br /&gt;
「よーっし！　じゃあトコトン付き合ってくれ」&lt;br /&gt;
　程なく来たショートのカクテルと、彼が作り直した焼酎の水割りで私たちは乾杯をした。&lt;/font&gt;&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;　それからどれほど飲んだのか。気付けば周囲に溢れ返っていたはずの酔客は殆どいなくなり、それなりにいた従業員も半分以上がいなくなっていた。&lt;br /&gt;
「まあ今日事務所と音楽会社と、音源持って行ったんだよー。でもなんか歌に対する反応はいいんだけど、歌わせる対象に対しての感動が薄いっていうか。もっとカルイのでもいいですよとか言うんだよな。あんな歌い方が厚いのに、そんなんじゃ映えないだろ？」&lt;br /&gt;
　マスターはそんなことに気付きもしない様子でずっと喋り続けている。&lt;br /&gt;
「……ソウですネ」&lt;br /&gt;
「さとちゃん、ホントいい子だなあ。カラオケ好き？　なんかさとちゃんの歌声聞きたいんだよなあ。声、魅力的だから」&lt;br /&gt;
　さらっと嬉しいことを言ってくれるけど、多分そうとう酔っ払ってるんじゃないかと思う。&lt;br /&gt;
「ありがトウ、でもカラオケはアンマリ……」&lt;br /&gt;
「そうか、残念だなあ。ここももうすぐ閉まりそうだし、カラオケでも行こうかと思ったんだが」&lt;br /&gt;
「ココ、ホテルでしたヨネ？」&lt;br /&gt;
「うん。そうだけど」&lt;br /&gt;
「ワザワザ出なくても……部屋、とかアルんじゃ」&lt;br /&gt;
「ちょっと待って……それ本気で言ってる？」&lt;br /&gt;
　マスターの目が、ちょっと変わった。怖かったけど、でもその為に私はここへ来たのだからと言い聞かせる。&lt;br /&gt;
「ハイ」&lt;br /&gt;
「意味、分かってるの？」&lt;br /&gt;
「……分かってるツモリです」&lt;br /&gt;
　この期に及んで理性があるのは、いいことだと思う。間違いを起こす可能性は低い人であるということだ。&lt;br /&gt;
「そうか。それなら……」&lt;br /&gt;
　マスターは支払いもかねてバーテンを呼び、私をエレベーターの前まで先に行かせるとしばし何かを話し込んでいた。分かってはいても、所在ない。&lt;/font&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;この気持ちはなんなのか、まだ私には分からなかった。不安に似ている気がしたのは、気のせいなのかな。&lt;br /&gt;
　マスターは私に際どい歌を歌わせたことはない。ミクがはまってる歌の中にそういうのがあったけど、&lt;br /&gt;
それは中にあるストーリーがよかったからそんなにいやらしく感じなかった。どちらかと言えば私も好きだった。でも、こんな計算づくな出会いと展開。勢いに乗ろうとするマスター。&lt;br /&gt;
　一夜だけのことなのに、これでいいの？　ねえ、ＭＥＩＫＯ。エレベーター横の鏡に映る、仮想空間とはかなり異なる姿の自分にそんな自問自答を繰り返していたら、マスターがカードを持って私の方へ歩み寄ってきた。&lt;br /&gt;
「じゃ、行こうか」&lt;br /&gt;
　そう言って肩を抱く手……どこの安ドラマだろう。でも、そうなるように切り出したのは私。自分で自分が分からなくなりそうだった。&lt;/font&gt;&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;「変なこと聞くけど、こういうことって慣れてる？」&lt;br /&gt;
　部屋にはいるなり、マスターはそんな問いを投げてきた。私は思わず首を横に強く振る。&lt;br /&gt;
「イ、イエ！」&lt;br /&gt;
「そうか……。まあでも、とりあえずシャワー浴びてくるから冷蔵庫の中のもの、好きなの飲んでて。朝っぱらから出かけてたから汗かいちゃっててさ。&lt;br /&gt;
さっぱりしたいんだ」&lt;br /&gt;
「ハイ……」&lt;br /&gt;
　マスターはそう言うとシャワールームへと消えて行った。&lt;br /&gt;
「…………」&lt;br /&gt;
　部屋に一人残された私は、ベッドに座ってしばらくぼうっとしていた。一見部屋は豪華だけど（情報データでは一室の宿泊料、一人三万以上らしい。ただ深夜とか時間帯によってはちょっと安くなるそうだから、その半分くらいなのかな）&lt;/font&gt;&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;　シャワーの音が結構響いてる。私は今は人間の体だから、やっぱり汗もかくし……お酒の匂いとか、これは体臭みたいなものなのかな。自分が今まで情報的にしか感じたことのない匂いが、部屋の匂いも含めて鼻に届く。一瞬はそのナマっぽい匂いに慣れなくてちょっと顔をしかめてしまうけど、それはすぐに馴染んでしまい、嫌悪感は殆ど残らなかった。&lt;br /&gt;
　そういえばさっき肩を抱き寄せられた時に感じた香りは、汗をかいた肌の匂いとは違うものだった。コロンとかいうやつかな。&lt;br /&gt;
　なんだかこうした経験は、無駄じゃないような気がする。これから歌う上でも知らないよりは知っておいたほうがいいのかもしれない。モニター越しでは分からなかったもの。&lt;br /&gt;
　マスターの、知らない一面も。ちょっと驚いたりはするけど……。一方的に何でも知ったつもりになってた私。笑っちゃうほど馬鹿みたい。&lt;br /&gt;
　そんなことをいろいろ考えていたら、シャワールームのドアががちゃりと開いた。&lt;br /&gt;
　ビクッとなって身構えてしまう。湯上りのマスターなんて何度も見たはずなのに。いつもと違うのは、真っ白なバスローブだからか。なんだかおいしそうに湯気が立っている。&lt;br /&gt;
「さとちゃんもシャワーあびる？」&lt;br /&gt;
　自分の肌の匂いが少し気になったから、浴びようかと思ったけど……。でもマスターはベッドを立ち上がって横をすり抜けようとした私の手首を掴んで、こう言った。&lt;br /&gt;
「……まあ別に急いでるわけじゃないし。もっと話でもしよう」&lt;br /&gt;
「エ？　あ、ハイ……」&lt;br /&gt;
「ホントにさ、君の声が聞きたいだけだ。ちょっと知ってる声に似てる感じがして安心する」&lt;br /&gt;
　それは誰なんだろうと、気になった。そして、マスターは私をまたベッドに座らせると、自分はテーブル近くの椅子を運んできてそれに腰を落とした。&lt;br /&gt;
「さとちゃんの話聞かせてよ」&lt;br /&gt;
「ワ、私デスか？」&lt;br /&gt;
「うん」&lt;br /&gt;
　そうは言っても、何を話せばいいのだろう。ＰＣの内部でマスターを見つめていた時は、あんなに伝えたいことがたくさんあったのに。&lt;br /&gt;
　そう考えて、ふと可笑しくなってしまった。&lt;br /&gt;
「……フフ」&lt;br /&gt;
「さとちゃん？」&lt;br /&gt;
　今の私は、ＭＥＩＫＯではない。最初に郷子なんて名乗ってしまったから。別に正体をばらしてはいけないなんて制約はないけど、そうなれば歌うしかない。でも、歌ってしまったら……ＫＡＩＴＯ達が。&lt;br /&gt;
「あ、イエ。あの、私ニハずっとズット好きナ人がイタんです」&lt;br /&gt;
「うんうん」&lt;br /&gt;
「ソノヒトには、私、ハナシカケルことが出来なくテ」&lt;br /&gt;
「ああ、分かるなあ。それで？」&lt;br /&gt;
　話しが出来ない原因を、マスターが取り違えてしまうだろうことは分かっていた。&lt;br /&gt;
「結局、ソノままでイマに至ります」&lt;br /&gt;
「ええ～、マジで？　そいつ馬鹿だなあ。こんな癒し系美人に気づかないなんて」&lt;br /&gt;
「フフ、有難うゴザイマス。でも、私モトモトハナスノ苦手だから仕方ナイんです」&lt;br /&gt;
　マスターの指示があれば言葉を口にすることは出来るけれど、私からの言葉は伝わらない。&lt;br /&gt;
「うん、まあたどたどしくはあるけど、でもその声好きだなあ。俺が歌作ってることはさっきラウンジで話したけどさ。さとちゃんに似た声に『あなたが好きです』って歌わせたくて、わざと歌詞の中にそんな言葉入れちゃったりするんだ。まるでガキだよな」&lt;br /&gt;
　そこで私は初めて、マスターが言ったその声というのが『私』のものであることを知った。&lt;br /&gt;
　何故なら、ミクの歌にはもちろんＫＡＩＴＯの歌にも、そんなフレーズは出て来ないからだ。私が歌った、あの歌以外。&lt;br /&gt;
「あ、ごめん。でも似てるって言ってもさ、別にさとちゃんの声を代用にしたいわけじゃないんだ」&lt;br /&gt;
「……構いまセンよ？　歌うコトハ出来ませんケド、言いマしょうカ？」&lt;br /&gt;
「本当に、いい？」&lt;br /&gt;
「ハイ。……エット、あの。……『あなたが、ス・キです』」&lt;br /&gt;
　好き、が上ずっちゃったけど、出来るだけゆっくりと言葉にした。&lt;br /&gt;
「…………」&lt;br /&gt;
　マスターの表情が一変する。椅子からゆらりと立ち上がったと思ったら、気づいた時には肩に手を置かれていた。&lt;br /&gt;
「……エ？」&lt;br /&gt;
「ごめん……」&lt;br /&gt;
　それからゆっくり、ベッドに倒される背中。一瞬それがどういうことなのかわからなかった。だけど、何故か胸がざわめき、エラーの警告画面みたいなものが脳裏に浮かんだ。幾重にも……。&lt;br /&gt;
　そして塞がれる唇。だけど私がその瞬間に思い出してしまったものは、ＫＡＩＴＯとの口づけだった。&lt;br /&gt;
　こんなに柔らかくも、温もりもないただ触感だけだったけれど。&lt;br /&gt;
　マスターの唇が耳元に移り、そして首筋に下りる。胸のざわめきが、肌に感染する。&lt;br /&gt;
　エラー音は鳴り続けている。ＫＡＩＴＯの声が、頭の中に甦った。&lt;br /&gt;
『マスターより先にもらっちゃったけど、これぐらい許してくれるよね？』&lt;br /&gt;
　私の目に、熱い涙が込み上げる。初めての、この体を得て初めての涙が溢れて頬を濡らした。&lt;br /&gt;
「……さとちゃん？」&lt;br /&gt;
　流れた涙に気づいたのか、マスターが顔を上げた。&lt;br /&gt;
「ごめンなサイ……。ごめんナさイ」&lt;br /&gt;
　マスター、ごめんなさい。そしてＫＡＩＴＯ……今まで気づかなくてごめんなさい。&lt;br /&gt;
　私は込み上げる気持ちを抑えられず、泣き続けた。&lt;/font&gt;&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;　どのくらい時間が過ぎたのかわからない。ただ、私とマスターがそれ以上触れ合うことはなかった。&lt;br /&gt;
　私が泣き止むまで、軽く抱きしめたり頭を撫でてくれはしたけれど。&lt;br /&gt;
「……ごめんな」&lt;br /&gt;
　マスターのつぶやきに、私は何度も頭を振った。馬鹿な私。何もかも無駄にしちゃった。&lt;br /&gt;
　でも、どうしても本当の意味でマスターもＫＡＩＴＯも失いたくなかった。もしマスターに身を委ねていたら&lt;br /&gt;
『大好きなマスター』はいなくなってしまうような気がして。そしてＫＡＩＴＯも……。&lt;/font&gt;&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;　ちょっと気を取り直して、私はシャワールームに駆け込み洗面台に向かった。涙でプリントが剥がれてやしないか不安だったから。&lt;br /&gt;
　幸い、ちょっと目が腫れているだけで大したことはなかった。よかった、と思った時デジタル時計が視界に入り、今三時半を過ぎたところであることを知った。&lt;br /&gt;
　夜が明けるまで、もう数時間しかない。私はマスターに何をしてあげられるだろう。&lt;br /&gt;
　そう思いながら部屋に戻ると、マスターはベッドに横になっていた。さすがにもう眠いのだろう。&lt;br /&gt;
「大丈夫デスか？」&lt;br /&gt;
　そっと問いかけると、マスターは片手をひらひらさせてまだ起きていることを私に教えてくれた。&lt;br /&gt;
「眠いような眠くないような。そんな感じ……君は？」&lt;br /&gt;
「私ハ、大丈夫デス」&lt;br /&gt;
　さすがにまたベッドに腰掛ける気にはならなくて、マスターがベッドに寄せていた椅子に腰を落とした。&lt;br /&gt;
「……子守り歌、歌ってくれないかな」&lt;br /&gt;
　ちょっと首を動かしてこちらを見る、子供みたいなマスターのお願い。聞いてあげたい……でも。&lt;br /&gt;
「…………」&lt;br /&gt;
「どうしても駄目？」&lt;br /&gt;
「……ハイ、すみまセン」&lt;br /&gt;
　だけどマスターはあからさまに落胆するでもなく、軽くあきらめたように首をコテンとベッドに預けた。&lt;br /&gt;
　さっきのマスターはちょっと怖かったけれど、本当はこんなに優しい。私は胸が痛くなった。&lt;br /&gt;
　今夜の経験は、理解していたつもりの感覚や感情と言うものを根本から覆されるような、それほど衝撃的なものだった。&lt;br /&gt;
　それを歌に活かせたら、どれだけ変われるだろう。そう考えて、ふと気づいた。&lt;br /&gt;
　まさか、だから彼らは私を？　そんなの、そんなこと。&lt;br /&gt;
「…………ぅ」&lt;br /&gt;
　また泣いてしまいそうになるのを、必死でこらえた。ＫＡＩＴＯのように強くもなく、ミクのように伸びやかでもない。どちらかといえば自分の実力は棚に上げて、&lt;/font&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;嫉妬ややっかみだけは人一倍なそんな私なのに。&lt;br /&gt;
あなたたちの何かを引き換えにするような、そんな価値なんか。私には……。&lt;br /&gt;
「あー……」&lt;br /&gt;
　マスターが突然、間の抜けた声を上げる。&lt;br /&gt;
「……ドウしたんデスか？」&lt;br /&gt;
「眠れないよ。やっぱり歌ってよ」&lt;br /&gt;
　落ち込みかけていた私は、空気を読み過ぎるマスターの言動に可笑しくなって、笑い声を上げた。&lt;br /&gt;
「ふっ、あハハっ」&lt;br /&gt;
　でも、だからこそはっきりとそのお願いを却下することが出来た。&lt;br /&gt;
「さとちゃん……」&lt;br /&gt;
「ダ・メ、です」&lt;br /&gt;
「なんでだよぅ」&lt;br /&gt;
　拗ねるマスターがかわいくて涙が出るほど笑いながら、私が何故この人を好きになったのか分かった気がした。&lt;br /&gt;
　今まで私は、ＫＡＩＴＯの中にマスターの片鱗を見ているような気がしたことがあった。&lt;br /&gt;
　でも違った。そうじゃなくて私は、マスターが持っている『キラキラ』を好きだったのだ。そしてＫＡＩＴＯはそれを見事に受け継いでいる。&lt;br /&gt;
　だから私、ＫＡＩＴＯを好きになったんだ。そんな答えを得て、私は自分で酷く納得していた。&lt;br /&gt;
　そんな風にテンションは軽く一気に上がったけれど、マスターはとうとうエネルギー切れらしく拗ねる元気も無くなったようだった。&lt;br /&gt;
　でも、素直に眠くもならないらしく寝息にならない微かな唸り声を上げている。&lt;br /&gt;
　確かにこんな時歌でもあれば、心地よく眠れるかもしれない。まだ逡巡する自分の不甲斐なさが悔しい。&lt;br /&gt;
　ふと外を見た。厚いカーテンの隙間から、薄明るくなった空の色が見えた。&lt;br /&gt;
「……！」&lt;br /&gt;
　はっとなって時計に目をやると、時間はもう夜明けまであと十分もないところまで来ていた。&lt;br /&gt;
　そしてその時だった。聞こえなくなっていたはずの、彼の声を聞いた気がした。&lt;br /&gt;
『ＭＥＩちゃん、歌って』&lt;br /&gt;
　え、でも。&lt;br /&gt;
『いいから。もう時間がないよ』&lt;br /&gt;
　分かってるけど、ＫＡＩＴＯに会えなくなるのは嫌なのよ。&lt;br /&gt;
『ＭＥＩちゃんが後悔するほうがもっと嫌だ。だから、歌って。消えていく俺たちのために、歌ってよ』&lt;br /&gt;
　ＫＡＩＴＯの、馬鹿……。馬鹿だよ。あんたを好きになった私も馬鹿だよ。あれくらいで、私の気持ち持って行くなんて許さない。&lt;br /&gt;
　だけど、私がそうやって心で悪態をつけばつくほど、ＫＡＩＴＯが笑ってるみたいに感じた。&lt;br /&gt;
　私は深く息を吸い込み、そして歌を口ずさみ始めた……。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;&lt;/font&gt;&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;　気づくと、私はいつもの自分の寝室に寝ていた。どうやらＰＣは勝手に再起動したらしく、ＫＡＩＴＯもミクも、本当にいなくなってしまっていた。&lt;br /&gt;
　最初の状態に戻っただけ。無理やりそう思い込んでみても……涙が溢れて止まらなかった。だってもう、マスターと私だけだったころとは確実に違うから。&lt;br /&gt;
　以前はもっと単純な色彩、ディテールだった部屋が、今は妙にリアルな分だけ一人でいることが切なく思えた。&lt;br /&gt;
　マスターが帰宅したのは昼前で、放置していたＰＣの惨状に激しく嘆く様子を見て『歌ってしまった』ことを少し後悔した。&lt;br /&gt;
「ＭＥＩＫＯは無事か？　ああ、無事なんだな。ＫＡＩＴＯとミクが壊れてしまったのか。ＭＥＩＫＯが無事なだけでもよかった。バックアップしなけりゃ」&lt;br /&gt;
　けれど、マスターが幾度クリーンインストールしても何故かＫＡＩＴＯとミクのソフトだけ認識しないという結果に終わった。&lt;br /&gt;
　本当にもうこのまま会えないのかと思うと、私までダウンしてしまいそうになる。&lt;br /&gt;
　でも、マスターは強かった。夕方から数時間不貞寝をしたと思ったら、夜になり急に起き出して、出かける準備を始めたのだった。&lt;br /&gt;
「くそ。絶対に取り戻してやる」&lt;br /&gt;
　そう言ったと思うと、夜遅くに大きな箱を抱えて戻って来た。なんと、それは新しいＰＣだった。どうなるのかとそわそわする中で、マスターは早速新しいＰＣのセットアップを始めた。&lt;br /&gt;
　そして、ＫＡＩＴＯとミクをインストールする。私はこちら側のモニターから固唾を飲んで見守った。&lt;br /&gt;
　結果を待つマスターの背中に緊張がみなぎる。&lt;br /&gt;
「…………」&lt;br /&gt;
　マスターに指名されることを願うより強く、私は指を組んで祈った。&lt;br /&gt;
「よし！　動くぞ！」&lt;br /&gt;
　しばしの沈黙の後、どこかで見た、聞いたような台詞を聞いて思わず吹き出す。どうやら今回はインストールに成功したようだった。&lt;br /&gt;
　でも、問題はバックアップ用のＨＤＤのデータだ。これを読み込めなかったら私の知るＫＡＩＴＯも、ミクも&lt;br /&gt;
戻って来ない。&lt;br /&gt;
　データ的には前々日の彼らだけれども。それでも私には大切な……。そう考えていたら、私は突如意識をブラックアウトさせた。何があったのか、すぐには分からないと言うか考えをめぐらす暇もなかった。&lt;br /&gt;
　&lt;br /&gt;
「ほら、ＭＥＩＫＯ。引越しだぞ」&lt;br /&gt;
　気づいたら、私は新しい方のＰＣにいた。だってここから見えるのは、以前住処だった方のＰＣだったから。&lt;br /&gt;
　部屋の様子は変わりない、というかこころもちもっとずっと広くなっている気がした。&lt;br /&gt;
　私はすぐに、ＫＡＩＴＯとミクを探すため部屋を出た。どうかお願い、あなたたちにそばにいて欲しい。&lt;br /&gt;
　廊下も広くなっている。私はもの凄く、たまらなく孤独感に襲われた。&lt;br /&gt;
「ＫＡＩＴＯ！　ミク！　いるの？　ねえ、いたら返事して！」&lt;br /&gt;
　けれど、呼びかけにはすぐに返事がなかった。孤独感が絶望に変わる。うまく行ったんじゃなかったの？　ねえどうしていないの？&lt;br /&gt;
　もう二度とあなたたちに会えないの？&lt;br /&gt;
「ＫＡＩＴＯ……嫌だ。このままあなたに会えないなんて嫌！」&lt;br /&gt;
　私は泣き叫びながら座り込んだ。無機質な床が冷たい。&lt;br /&gt;
「ＭＥＩちゃん？」&lt;br /&gt;
　頭の上から、不意に聞き慣れた声が降って来た。顔を上げると、そこにはいつものとぼけたＫＡＩＴＯがいた。&lt;br /&gt;
　腕もちゃんとある。声も、調律されたＫＡＩＴＯだ。&lt;br /&gt;
「ＫＡＩＴＯ……」&lt;br /&gt;
「立って。どうしたんだよ、泣いたりして」&lt;br /&gt;
　差し伸べられた手を、強く掴んだ。そして立ち上がる。&lt;br /&gt;
「馬鹿、何処行ってたのよ」&lt;br /&gt;
「何処にも？　ただマスターがバックアップしたみたいだ。記憶してた日付が飛んでるなあ」&lt;br /&gt;
「…………」&lt;br /&gt;
　あの日の、強い決意を持ったＫＡＩＴＯじゃないのはちょっと残念だったけど、&lt;br /&gt;
でも私はこのとぼけたＫＡＩＴＯも大好きだった。&lt;br /&gt;
「ねえ、ＫＡＩＴＯ」&lt;br /&gt;
　私は、不意打ちでＫＡＩＴＯに抱き着いた。&lt;br /&gt;
「め、ＭＥＩちゃん？」&lt;br /&gt;
「ＫＡＩＴＯ……好き。あなたが好き」&lt;br /&gt;
「ＭＥＩちゃん、何があったんだ？」&lt;br /&gt;
　ホント、ため息つきたくなるくらいだわ。別のイミでね。&lt;br /&gt;
「知らないんだったら知らなくていいの。教えてあげない。でも、悔しいからこれだけはお返ししてあげる」&lt;br /&gt;
　私はＫＡＩＴＯに自分からキスをした。&lt;br /&gt;
「……！」&lt;br /&gt;
　ＫＡＩＴＯが硬直する。&lt;br /&gt;
「熱いなあ、ＭＥＩちゃん」&lt;br /&gt;
　そう言いながらミクがようやく部屋から出て来た。&lt;br /&gt;
「あ、ミク。今日からＫＡＩＴＯは私の彼氏だからね！」&lt;br /&gt;
　宣言する私に、ミクは笑いながら腕組みをする。&lt;br /&gt;
「分かってるよぅ。でもＫＡＩ兄ィはどうなの？　異論はないの？」&lt;br /&gt;
　歌えなくてテンパったときみたいに、ミクの問いかけにあわあわするＫＡＩＴＯ。&lt;br /&gt;
「そ、そんなのっ」&lt;br /&gt;
「ねえどうなのよＫＡＩＴＯ」&lt;br /&gt;
「どうなの？　ＫＡＩ兄ィ」&lt;br /&gt;
　女二人で徒党を組んで、ＫＡＩＴＯを苛めた。&lt;br /&gt;
「異論なんかあるわけないじゃないか！　俺だってずっとＭＥＩちゃんが好きだったんだ！」&lt;br /&gt;
　ＫＡＩＴＯのブチ切れ告白。その直後、ＫＡＩＴＯは顔を真っ赤にして部屋に引っ込んだ。&lt;br /&gt;
　モニターの向こう側で、起動させたばかりのＫＡＩＴＯが歌わせてもいないのに落ちたため、マスターが悲鳴を上げているのが聞こえた。&lt;br /&gt;
　実は新しいＰＣに、マスターはまだ私たちの嗜好品をインストールしていなかったのだ。&lt;br /&gt;
「おいおい待てよ。アイスもねぎも消えちまってるんだぞ。また有料ＤＬしなけりゃならん」&lt;br /&gt;
　ふふ、頑張ってよマスター。それに今は以前と違っていろいろ種類も増えてる。旧型なら無料のもあるし、ちょっとメニュー増やしてくれたら私たちもっと頑張るから。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;&lt;/font&gt;&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;　マスターはアイドルとのデートがお流れになってしまったことを何も言わなかったけれど、後にドタキャンの真相を知ることになった。（コトを企てた&lt;/font&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;ＫＡＩＴＯは、もうここにはいないＫＡＩＴＯなので結局あの時何をしたのかは分からないままになってしまった）&lt;br /&gt;
　あれから一週間以上が経ち、久々に帰国していたかつての恋人とお忍&lt;/font&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;び旅行をしてきたそのアイドルがマスターが事務所に預けたＣＤを聞いて感動したらしく、いきなり押し掛けて来たのだ。&lt;br /&gt;
「突然ごめんなさい！」&lt;br /&gt;
「……いや、いいよ別に」&lt;br /&gt;
　良くない！　ああ、私には憤る資格なんかもうないのについつい頭が沸騰しちゃう。&lt;br /&gt;
　旅行についての目撃談はネット内を飛び交っており、マスターも当然その情報はチェックしていたはずなのに、なぜこうも冷静なんだろう。&lt;br /&gt;
「曲聞いて、すごい感激しちゃいました。あれがボーカルアンドロイドとか言うんですか？」&lt;br /&gt;
　名前の間違いにもいらつく。&lt;br /&gt;
「うん、ボーカロイドのＭＥＩＫＯ。いい声だろ？」&lt;br /&gt;
「そうですね！　……でも」&lt;br /&gt;
「ん？」&lt;br /&gt;
　アイドルは何故か、媚びた目でマスターを見つめた。&lt;br /&gt;
「もう私がいたら、そんなパソコンソフトなんか要らないじゃないですか」&lt;br /&gt;
　その台詞には、私だけでなくミクもＫＡＩＴＯも激怒した。しかしマスターはまた冷静に返事をする。&lt;br /&gt;
「いや、でもさあ。そういうことじゃないでしょ？　いきなりメロディ入りでも曲と歌詞渡したところでそんなに歌えるもんでもないし。長く歌手やってる人や音楽に長けてる人ならともかく」&lt;br /&gt;
「え、でも……」&lt;br /&gt;
「それじゃあ歌ってみて？　覚えるくらい聞いてくれたんなら」&lt;br /&gt;
　マスターの要求に面食らったものの、アイドルはちょっとの間を置いてアカペラで諳んじ始めた。&lt;br /&gt;
　けれど、いつか動画サイトで聞いたあの伸びる声はもうそこになかった。上手いことは上手いが、カラオケで変な癖がついてしまったかのような歌い方で。&lt;br /&gt;
　Ａメロ、Ｂメロ、サビまで進んでいくごとにマスターの顔が曇っていった。&lt;br /&gt;
「もう、いいよ」&lt;br /&gt;
「え？」&lt;br /&gt;
「譜割りもなんか違うし、何をどう聞いたのか今のじゃ伝わらない。事務所の人が言ってた通り君にはもっと簡単な歌がいいのかもしれないな」&lt;br /&gt;
　あれほど冷静だったマスターが、歌を聞いてようやく怒ったらしい。&lt;br /&gt;
「そんな、私あんな歌を歌いたかったのに」&lt;br /&gt;
「それならそれなりの努力をしてくるべきだ。まあ本当に実力がある人なら一週間遊んでこようが酒漬になろうがスモークジャンキーになろうが声は死なないものだけどね」&lt;br /&gt;
「……誰かに何か聞いたんですか？」&lt;br /&gt;
　旅行のことを揶揄されて怒っているのだろうか。アイドルが声を低くして問いかける。&lt;br /&gt;
「いや？　ただ、ここにこうして来るのも無神経だしあまりに軽率じゃないか？いつどこで撮られたりするか分からないんだし、君は自分の立場をもうちょっと弁えた方が」&lt;br /&gt;
「……わかりました。もういいです」&lt;br /&gt;
　あれほど媚び媚びだった態度が、一変する。&lt;br /&gt;
「歌についてはまた事務所の方に連絡しておくよ。君の歌い方に合ったものを作るから」&lt;br /&gt;
「え、じゃあ……歌わせてくれるんですか？」&lt;br /&gt;
「まあそりゃ、仕事として受けた以上はね。ただ個人的な連絡はもう一切しないでほしいな。僕だって暇じゃないんでね」&lt;br /&gt;
　ぴしゃりと言い放つマスター。多少の私情は、そりゃああるだろう。&lt;br /&gt;
「あ、あの、私……ほんとにこの前のことは悪いと思ってるんです」&lt;br /&gt;
「だからもういい。そのことは調子に乗った僕の失態だ。謝らなくていい。だけど、もう帰ってくれないか」&lt;br /&gt;
「はい……分かりました」&lt;br /&gt;
　意気消沈したアイドルは、無言でマスターの部屋を後にした。&lt;/font&gt;&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&lt;br /&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;「…………」&lt;br /&gt;
　彼女が出て行った後、盛大なため息をつくマスター。あの日の傷心が今更のように蘇ったのだろう。&lt;br /&gt;
「俺だってマスターを慰められるものなら慰めたいさ」&lt;br /&gt;
　さすがに一週間も過ぎると慣れてしまった新しい住まいから、ＫＡＩＴＯがマスターの丸まった背中を眺めてそうつぶやく。&lt;br /&gt;
「私もよ。そんなこともう出来ないけど」&lt;br /&gt;
　あの日起こったことは、結局今ここにいるＫＡＩＴＯもミクも知ってしまっていた。(というかＫＡＩＴＯに吐かされた)&lt;br /&gt;
「でもまあ、俺たちには歌うしか出来ないからな」&lt;br /&gt;
「そうね……」&lt;br /&gt;
「ミク、なんかマスターが可哀想です。私も歌います」&lt;br /&gt;
　ミクの言葉に、私たちは顔を見合わせた。&lt;br /&gt;
「何か歌おうか。マスター驚かせちゃうけど……」&lt;br /&gt;
「また驚いて私たちの好きなの食べさせてくれますよ」&lt;br /&gt;
「あはは、それいいわね。またねぎ焼いてね、ミク」&lt;br /&gt;
　購入間もないＰＣが不安定だと思わせちやうのも可哀想だけど、でも今はあえて空気を読まずにそうするしかなかった。&lt;br /&gt;
　私たちは勝手に、以前三人で歌ったマスター世代への応援歌のような歌を歌い始めた。&lt;br /&gt;
「おあ！　おいちょっと待て。また暴走……」&lt;br /&gt;
　スピーカーから流れ出した歌を聞いて案の定マスターが慌てている。&lt;br /&gt;
でも、その歌にマスターの表情が&lt;/font&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;和やかなものに変わった。&lt;br /&gt;
「なんだよオマエら、空気読み過ぎだろうが」&lt;br /&gt;
　マスター、頑張ってね。あなたの歌、私たちは大好きだから。&lt;br /&gt;
　これからもいっぱい歌うから、たくさんたくさん作ってね。&lt;br /&gt;
　そんな思いを込めて、私たちは高らかに歌い上げた。&lt;/font&gt;&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&lt;font size=&quot;3&quot;&gt;　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ＦＩＮ&lt;/font&gt;&lt;/p&gt;
    </description>
    <dc:date>2012-04-08T00:11:03+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/46.html">
    <title>更新報告</title>
    <link>http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/46.html</link>
    <description>
      更新報告用ページです。
新しい作品を投稿した際や、すでに投稿した作品を修正した際の連絡用にお使いください。
一番下の者が一番新しい更新になります。

20個ずつ、まとめていきます。ログ[[1&gt;http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/132.html]]/2/3

☆テンプレ☆
【筆者】
【SSタイトル】
【更新内容】
【メインボカロ】
【作品傾向】
【カップリング】
【ＵＲＬ】
----
- 【SSタイトル】VOCALOID2 GACKPOID -がくっぽいど-  &amp;br()【更新内容】新規  &amp;br()【メインボカロ】今のところ神威がくぽですが、のちに栗社ボカロ5人も登場 &amp;br()【作品傾向】がくぽ育成物語ｗ  &amp;br()【カップリング】なし  &amp;br()【ＵＲＬ】http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/97.html  -- yuki_m  (2008-07-08 04:37:11)
- 【筆者】 アルクレイン &amp;br()【SSタイトル】 うたうかぞく。のお隣さん &amp;br()【更新内容】 新規 &amp;br()【メインボカロ】 神威がくぽ、KAITO &amp;br()【作品傾向】 ほのぼの &amp;br()【カップリング】 なし &amp;br()【ＵＲＬ】 http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/109.html  -- アルクレイン  (2008-07-08 11:05:56)
- 【筆者】 tallyao &amp;br()【SSタイトル】 プリマ・クラッセ &amp;br()【更新内容】 新規 （自転載） &amp;br()【メインボカロ】 PRIMA &amp;br()【作品傾向】 業界物 &amp;br()【カップリング】 none &amp;br()【ＵＲＬ】http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/110.html  -- tallyao  (2008-07-10 00:24:06)
- 【筆者】 tallyao  &amp;br()【SSタイトル】 キミノウワサ &amp;br()【更新内容】 新規  &amp;br()【メインボカロ】 KAITO/初音ミク  &amp;br()【作品傾向】 曲テーマ/歴史記録 &amp;br()【カップリング】 カイミク（非カプ兄妹物） &amp;br()【ＵＲＬ】http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/116.html  -- tallyao  (2008-07-19 00:09:24)
- 【筆者】 tallyao  &amp;br()【SSタイトル】 みくるみくスターロード &amp;br()【更新内容】 新規  &amp;br()【メインボカロ】 初音ミク  &amp;br()【作品傾向】 曲テーマ &amp;br()【カップリング】 none &amp;br()【ＵＲＬ】http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/119.html  -- tallyao  (2008-07-26 00:19:12)
- 【SSタイトル】新発売、人型VOCALOID　いただきます &amp;br()【更新内容】新規投稿 &amp;br()【メインボカロ】MEIKO &amp;br()【作品傾向】ほのぼの &amp;br()【カップリング】マスメイ風味 &amp;br()【URL】http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/66.html  -- カナ  (2008-07-26 23:36:39)
- 【筆者】稲人 &amp;br()【SSタイトル】ぽっ！ &amp;br()【更新内容】新規投稿 &amp;br()【メインボカロ】がくぽ、ネル、ハク &amp;br()【作品傾向】がくぽ発売記念SS　コメディ風味 &amp;br()【カップリング】特になし &amp;br()【ＵＲＬ】 http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/122.html  -- 稲人  (2008-07-31 02:23:30)
- 【筆者】Akahara &amp;br()【SSタイトル】 WHITEOUT WORLD &amp;br()【更新内容】 新規投稿 &amp;br()【メインボカロ】 KAITO・MEIKO &amp;br()【作品傾向】 シリアス系ほのぼの &amp;br()【カップリング】 カイメイ &amp;br()【ＵＲＬ】 http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/127.html &amp;br()  -- Akahara  (2008-08-03 06:32:09)
- 【筆者】カナ &amp;br()【更新内容】新規投稿 &amp;br()【メインボカロ】MEIKO &amp;br()【作品傾向】ほのぼの &amp;br()【カップリング】マスメイ、カイミク &amp;br()【URL】http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/128.html  -- 新発売、人型VOCALOID　願い事  (2008-08-07 23:27:54)
-  &amp;br()【SSタイトル】無限の業を重ねて生きよ（中） &amp;br()【更新内容】新規 &amp;br()【メインボカロ】神威がくぽ &amp;br()【作品傾向】殺伐 &amp;br()【カップリング】センガク &amp;br()【ＵＲＬ】http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/129.html  -- tallyao  (2008-08-09 00:40:19)
- 【筆者】サガミ  &amp;br()【SSタイトル】桜下幻想  &amp;br()【更新内容】新規 &amp;br()【メインボカロ】初音ミク  &amp;br()【作品傾向】切ない系、やや死にネタ。  &amp;br()【カップリング】マスミク &amp;br()【ＵＲＬ】http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/130.html  -- サガミ  (2008-08-11 01:24:50)
- 【筆者】カナ &amp;br()【ＳＳタイトル】新発売、人型VOCALOID　いただきます &amp;br()【更新内容】修正 &amp;br()【メインボカロ】MEIKO &amp;br()【作品傾向】ほのぼの &amp;br()【カップリング】マスメイ風味 &amp;br()【URL】http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/66.html  -- カナ  (2008-08-15 00:57:45)
- 【筆者】 tallyao  &amp;br()【SSタイトル】 de-packaged　（１） &amp;br()【更新内容】 新規  &amp;br()【メインボカロ】 初音ミク、鏡音リン &amp;br()【作品傾向】 曲テーマ &amp;br()【カップリング】 none &amp;br()【ＵＲＬ】http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/134.html  -- tallyao  (2008-08-19 00:26:33)
-  &amp;br()【筆者】 Raptor1  &amp;br()【SSタイトル】 The song is weapon &amp;br()【更新内容】 新規 &amp;br()【メインボカロ】 初音ミク &amp;br()【作品傾向】 軍事 &amp;br()【カップリング】 特になし &amp;br()【ＵＲＬ】 http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/135.html &amp;br() &amp;br()  -- Raptor1  (2008-08-21 02:20:09)
- 【筆者】 稲人 &amp;br()【SSタイトル】 リッチミルクはどんな味？ &amp;br()【更新内容】 新規  &amp;br()【メインボカロ】 KAITO &amp;br()【作品傾向】 死にネタ（死ぬ前ネタ？）だけど割と明るめです、たぶん。 &amp;br()【カップリング】 特になし &amp;br()【ＵＲＬ】 http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/136.html  -- 稲人  (2008-08-22 18:33:50)
-  &amp;br()【筆者】 tallyao  &amp;br()【SSタイトル】 de-packaged　（２） &amp;br()【更新内容】 新規  &amp;br()【メインボカロ】 初音ミク、鏡音リン &amp;br()【作品傾向】 曲テーマ &amp;br()【カップリング】 none &amp;br()【ＵＲＬ】http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/137.html &amp;br()  -- tallyao  (2008-08-24 00:19:52)
-  &amp;br()【筆者】 tallyao  &amp;br()【SSタイトル】 de-packaged　（３）  &amp;br()【更新内容】 新規  &amp;br()【メインボカロ】 初音ミク、鏡音リン  &amp;br()【作品傾向】 曲テーマ  &amp;br()【カップリング】 none  &amp;br()【ＵＲＬ】http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/138.html  &amp;br()  -- tallyao  (2008-08-29 00:17:46)
- 【筆者】SVMA6  &amp;br()【SSタイトル】２００８，０８，３１  &amp;br()【更新内容】 新規 &amp;br()【メインボカロ】 初音ミク、 &amp;br()【作品傾向】誕生日記念 &amp;br()【カップリング】 なし &amp;br()【ＵＲＬ】http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/153.html  &amp;br()  -- SVMA6  (2008-08-31 22:56:15)
- 【筆者】gatsutaka &amp;br()【SSタイトル】カガミネットです &amp;br()【更新内容】 新規 （及び誤字等訂正） &amp;br()【メインボカロ】 鏡音リン鏡音レン  &amp;br()【作品傾向】曲テーマ  &amp;br()【カップリング】 なし  &amp;br()【ＵＲＬ】http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/154.html  -- gatsutaka  (2008-09-01 22:23:50)
-  &amp;br()【筆者】 tallyao  &amp;br()【SSタイトル】 de-packaged　（４）  &amp;br()【更新内容】 新規  &amp;br()【メインボカロ】 初音ミク、鏡音リン  &amp;br()【作品傾向】 曲テーマ  &amp;br()【カップリング】 none  &amp;br()【ＵＲＬ】http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/155.html  &amp;br()  -- tallyao  (2008-09-03 00:43:26)
- 【筆者】gatsutaka  &amp;br()【SSタイトル】さよなら兄さん &amp;br()【更新内容】 新規  &amp;br()【メインボカロ】 なし  &amp;br()【作品傾向】曲テーマ  &amp;br()【カップリング】 なし  &amp;br()【ＵＲＬ】http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/156.html  -- gatsutaka  (2008-09-05 23:17:49)
-  &amp;br()【筆者】 tallyao  &amp;br()【SSタイトル】 de-packaged　（５）  &amp;br()【更新内容】 新規  &amp;br()【メインボカロ】 初音ミク、鏡音リン  &amp;br()【作品傾向】 曲テーマ  &amp;br()【カップリング】 none  &amp;br()【ＵＲＬ】http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/157.html  &amp;br()  -- tallyao  (2008-09-07 00:30:05)
- 【筆者】gatsutaka  &amp;br()【SSタイトル】ミク姉の結婚披露宴 &amp;br()【更新内容】 新規  &amp;br()【メインボカロ】 初音ミク　語りは鏡音リン  &amp;br()【作品傾向】妄想爆発　ほのぼのコメディー &amp;br()【カップリング】 初音ミクｘ？ &amp;br()【ＵＲＬ】http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/160.html  -- gatsutaka  (2008-09-10 23:37:38)
- 【SSタイトル】 初顔合わせ &amp;br()【更新内容】 新規 &amp;br()【メインボカロ】 鏡音リン/レン &amp;br()【作品傾向】 カガミネーズ新人研修 &amp;br()【カップリング】 無し &amp;br()【ＵＲＬ】 http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/161.html  -- ジェバ  (2008-09-15 23:39:56)
- 【筆者】カナ &amp;br()【SSタイトル】おもい &amp;br()【メインボカロ】鏡音レン &amp;br()【作品傾向】シリアス 恋愛…？ &amp;br()【カップリング】レン→リン &amp;br()【ＵＲＬ】http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/162.html  -- カナ  (2008-09-17 01:07:50)
- 【筆者】 taat &amp;br()【SSタイトル】 フエトのための &amp;br()【更新内容】 新規 &amp;br()【メインボカロ】 鏡音リン／レン &amp;br()【作品傾向】 曲テーマ(ニコ動＞【鏡音リン／レン】フエト【オリジナル曲】ナタｐ) &amp;br()【カップリング】 リン＋レン &amp;br()【ＵＲＬ】 http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/163.html  -- taat  (2008-09-18 00:40:18)
- 【筆者】 same &amp;br()【SSタイトル】 【SPICE！】恋愛ゲーム土俵入り未満【ミクレン】 &amp;br()【更新内容】 新規 &amp;br()【メインボカロ】 初音ミク、鏡音レン &amp;br()【作品傾向】 曲テーマ（ニコ動＞SPICE!【鏡音レンオリジナル】流星P） &amp;br()　　　　　　 ほのぼの、恋愛未満 &amp;br()【カップリング】 ミク→レン &amp;br()【ＵＲＬ】 http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/166.html  -- same  (2008-10-06 04:01:33)
- 【筆者】 tallyao  &amp;br()【SSタイトル】 伝説の忘れられた一羽のハト　（１） &amp;br()【更新内容】 新規  &amp;br()【メインボカロ】 初音ミク &amp;br()【作品傾向】 曲テーマ &amp;br()【カップリング】 none &amp;br()【ＵＲＬ】http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/167.html &amp;br()  -- tallyao  (2008-10-07 00:21:32)
-  &amp;br()【筆者】 tallyao  &amp;br()【SSタイトル】 伝説の忘れられた一羽のハト　（２）  &amp;br()【更新内容】 新規  &amp;br()【メインボカロ】 初音ミク  &amp;br()【作品傾向】 曲テーマ  &amp;br()【カップリング】 none  &amp;br()【ＵＲＬ】http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/169.html &amp;br()  -- tallyao  (2008-10-09 00:15:47)
- 【筆者】カナ &amp;br()【ＳＳタイトル】我が家のいつもの昼食時 &amp;br()【更新内容】新規 &amp;br()【メインボカロ】初音ミク &amp;br()【作品傾向】曲テーマ、ギャグ…？ &amp;br()【カップリング】マスミク風味 &amp;br()【ＵＲＬ】http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/170.html  -- カナ  (2008-10-12 23:53:03)
-  &amp;br()【筆者】 tallyao  &amp;br()【SSタイトル】 伝説の忘れられた一羽のハト　（３）  &amp;br()【更新内容】 新規  &amp;br()【メインボカロ】 初音ミク  &amp;br()【作品傾向】 曲テーマ  &amp;br()【カップリング】 none  &amp;br()【ＵＲＬ】http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/171.html  &amp;br()  -- tallyao  (2008-10-13 00:24:41)
-  &amp;br()【筆者】 tallyao  &amp;br()【SSタイトル】 伝説の忘れられた一羽のハト　（４）  &amp;br()【更新内容】 新規  &amp;br()【メインボカロ】 初音ミク &amp;br()【作品傾向】 曲テーマ  &amp;br()【カップリング】 none  &amp;br()【ＵＲＬ】http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/172.html  &amp;br()  -- tallyao  (2008-10-17 00:15:51)
-  &amp;br()【筆者】 tallyao  &amp;br()【SSタイトル】 伝説の忘れられた一羽のハト　（５）  &amp;br()【更新内容】 新規  &amp;br()【メインボカロ】 初音ミク  &amp;br()【作品傾向】 曲テーマ  &amp;br()【カップリング】 none  &amp;br()【ＵＲＬ】http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/174.html  &amp;br()  -- tallyao  (2008-10-21 00:15:43)
- 【筆者】gatsutaka  &amp;br()【SSタイトル】学校ボーカロイド &amp;br()【更新内容】 新規  &amp;br()【メインボカロ】 鏡音レン・リン  &amp;br()【作品傾向】学園ドラマ（ちょっと違う），アンドロイド物  &amp;br()【カップリング】 鏡音レンｘ鏡音リン &amp;br()【ＵＲＬ】http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/193.html  -- gatsutaka  (2008-11-18 22:15:12)
- 女の子とムフフなことができるとういことでしょうか？+．(・∀・)．+※ http://hemn.me/gazoudouga.com/k3  -- 姉さん  (2011-10-26 03:07:02)
#comment(title_name=筆者,title_msg=内容,num=30,log=更新報告,size=60,vsize=6,)    </description>
    <dc:date>2011-10-26T03:07:02+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/37.html">
    <title>プチ投稿部屋（お題短文）</title>
    <link>http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/37.html</link>
    <description>
      **お題に沿った短い文章を投稿しよう！

今回のお題「VOCALOIDがパーソナリティー。でも、こんなラジオはいやだ！」

記名はしてもしなくても大丈夫！　大喜利みたいな感じで楽しんでください！＞＞[[今までのお題&gt;http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/91.html]]
----
- ミクとがくぽがパーソナリティー。 &amp;br()でも、葱と茄子について常に言い争っているようなラジオは嫌だ！！  -- 名無しさん  (2008-09-13 16:22:05)
- KAITO兄さんがパーソナリティー。 &amp;br()でも、あのー、なんというかその、ラジオで裸マフラーとかされても・・・  -- 名無しさん  (2008-11-01 10:57:13)
- MEIKO姐さんがパーソナリティー。 &amp;br()でも、放送中にお酒飲むのは、いろいろとヤバイ気がするんですけど……。  -- 名無しさん  (2008-11-29 16:57:08)
- MEIKOとハクがパーソナリティー。 &amp;br()でも、呼び出したゲストに絡み酒は勘弁してください。 &amp;br()いや、リアルにですよ。  -- ALICE  (2011-04-03 12:55:58)
- リンがパーソナリティ。 &amp;br()でも、気に入らないコメントを轢くのはどうかと…！  -- ミルフィー  (2011-07-14 16:07:36)
#comment(,size=60,vsize=5,disableurl)    </description>
    <dc:date>2011-07-14T16:07:36+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/158.html">
    <title>ボカロSS投稿所改装アンケート</title>
    <link>http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/158.html</link>
    <description>
      ***ボカロSS投稿所を改装するにあたってのアンケートです。

ボカロSS投稿所の大々的な改装をすることになりまして、その改装後のデザインについてのアンケートです。
以下の中からお選びください。

#vote2(ボカロ２エディタをイメージした、ピアノロール風デザイン[68],ネギやアイス、ＲＲ、ワンカップが踊るキャラクターデザイン[429],ボカロを題材にしたって基本は小説さ！　原稿用紙デザイン[3],原稿用紙の上に、キャラ絵を漂わせる合体デザイン[6])

より細かいご意見、ご感想等ございましたら、以下にお願いします。

#comment_num2(,log=ボカロSS投稿所改装アンケート,noname,nodate,nodate)
- 感想をもっと気楽に書ける環境が欲しいです。SSと同じページに載るのが理想。     
- キャラ別ではない探し方もできるといいなとおもいます。     
- デザインは変に極端な偏り方するよりは今のままで全然良いです         </description>
    <dc:date>2011-06-30T23:34:39+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/199.html">
    <title>幻影　闇の学校　第6話　祠の過去</title>
    <link>http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/199.html</link>
    <description>
      
&lt;p&gt;BANG!!&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
体育教師の手にしたピストルの轟音が青空に響き渡ると同時に僕は地面を蹴った。僕と同じくジャージを着た周りの男子生徒達も同じように土埃を上げてグラウンドを駆け抜けてゆく。程なくして先頭を走る数人はトラックを一周してくるが、それで終わりではない。グラウンドを外れて体育館の前を過ぎれば、そのまま校門の方向へと向かう。&lt;br /&gt;
足の遅い僕は、彼らの運動能力に感心しながら彼らより数十秒遅れて校門を出て行った。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
今週の始めから僕達は体育の授業でクロスカントリーと称し望華蕗村の校区一帯を走っている。スタートとゴールはもちろん望華蕗中のグラウンド。折り返し地点は小高い丘陵の頂。全長5キロ弱のハイキングコースに林道などを加えた経路を1時間（60分ということてはなく授業１時間分ということ）かけて往復してくるのだ。&lt;br /&gt;
とはいえ、運動音痴な僕は自分のペースで走るのが関の山。競技会でもないのだし熾烈なデッドヒートは陸上部員達に任せておいて足を痛めない程度にのんびり走ろうと思う。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
走り始めて15分後。とうに先頭集団は見えなくなり水田の畦道を息を切らしながら走り続けていた頃だろうか。&lt;br /&gt;
聞き覚えのある声がはっきりと聞こえてきた。&lt;br /&gt;
頭の芯まで響く背筋の寒くなるような声。&lt;br /&gt;
とはいえ僕以外の人間には聴こえない声なのは前を走る同級生が振り向きもしない様子からすぐに分かる。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「ねえ、私と一緒に走りましょうよ」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「!!」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
返事をするよりも早く、僕の左腕は掴まれるような感覚を覚えた。見れば左側に半透明な人影が写っている。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「離してくれっ」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
思わず声を上げてしまい、前を走る少年が振り向く。何でもないよ、と冷や汗混じりに返事を返す。代わりに人に聴こえないくらいの声で走りながら「離してくれ」と「幻影」に訴えてみる。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「だぁめ。あなたも走っているだけじゃつまらないでしょ」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「幻影」は僕の腕を一際強く握ると、走りだそうとする。振り解くこともできないまま、僕は引きずられるように走り出すことになってしまった。&lt;br /&gt;
周りからは僕が左腕を不自然に突き出した格好で加速しているようにしか見えないらしい。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「はぁ、はぁ」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
無理矢理スパートを掛けさせられているのは苦しい…誰か助けてくれないか、と走りながら真剣に願う。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
やがて、「幻影」とともに折り返し地点である丘陵の頂を通過し、登ってきた道を引き返そうと体を逆方向に…&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
向けられなかった。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「な、何するんだよっ」&lt;br /&gt;
「来た時と同じ道じゃつまらないでしょ」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
幻影は呆れたような口調でそう答えると、僕を登ってきたハイキングコースと大きく外れた方向へ引っ張っていこうとする。待てよ、そっちは人が歩くための道そのものがないはずだぞ。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「待ってよ!!今は授業中なんだよ！勝手にコースを外れたりなんかしたら…」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
例のごとく回りに聴こえないほどの小声で引きずられながらも足を踏みとどまろうと必死に抵抗する僕に「幻影」は面白くなさそうに答える。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「解ったわよ、回りをよく見てみなさい」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
振り返ると、僕の視界には信じられない光景が広がっていた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
走っている同級生達は走った格好のまま、風になびく雑草はなびいたまま、動きが止まっていた。人の声も風の音も、僕の耳には聴こえない。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「まさか…」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
言葉を失いながら「幻影」の方を見つめる。「幻影」はくすり、と微かな笑い声を漏らして、告げた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「そ。あなたの身体以外の時間を止めたのよ。これで今日は時間を気にしないで一緒に居られるでしょ？」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「な、な…っ!!」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
何でもありなんだな、人間じゃない存在ってのは。諦めにも似た境地でそんな感想を抱いた瞬間、さっきまでよりも一段と強い力で腕を掴まれる。&lt;br /&gt;
もはや放心状態に近い僕はとても抗うことも出来ずに、道なき道を「幻影」に連れ去られてゆくのだった。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
この丘陵地はハイキングコースとそうでない道は天地の差がある。とうに息も絶え絶えの僕は「幻影」に振り回されるまま急斜面を上り、岩場を走り抜け、鬱蒼と茂った森の中を時間さえ忘れて（実際時間が止められているのだが）走らされていた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
一体「彼女」に体力の概念はあるのだろうか…。&lt;br /&gt;
霞がかった頭がそう考えた矢先、僕はかっと目を見開く。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
一筋の谷が目の前に走っていた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「待ってよ！まさか!!」&lt;br /&gt;
彼女は当然ながら息一つも乱していない口調で答えた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「いち、にのさん、で飛び越えられるでしょう？」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
冗談じゃない。見た限りでその幅は十メートルはある。趣味の範囲でさえ運動をしていない僕に飛び越せる理由があるはずもない。仮に運動をしていたとして、これだけ山の中を散々走らされていれば数十センチのジャンプ力さえ尽き果ててしまっているはずだ。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
そう考えている間にも谷は目前に迫っていた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「だいじょうぶ、レンくんって意外と体力あるわ。さあいくわよ、いち、にの、さぁ～んっ」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「彼女」がむんずと僕の腕を指が食い込むほどの力で掴むと、僕の体は宙に浮いた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
次に僕より一瞬早く、「彼女」が谷の向こう側の草地に着地するのが見えた。何でだろうか…僕は「彼女」に腕を掴まれたまま「彼女」と同時にジャンプしたはずだ。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「!?」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
左腕を見れば、あれほど長い間僕を拘束していた「彼女」の手の感触が消えている。&lt;br /&gt;
僕の方から手を振り解いたはずがない。そんなことができるならとうに振り解いていた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
…僕は「彼女」に手を離されたんだ。空中で。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
しかし「彼女」とは違い僕の全身が描いた放物線は谷を飛び越えるまでには至らなかった。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
それはつまり。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「わぁああああああああ」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
自分自身の悲鳴で鼓膜を震わせながら、僕は谷底へと落ちてゆく。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「私一人じゃ飛び越えられるはずなのに、やっぱり二人は重かったかしら。まあいいわ、また遊びましょうね、大好きなレンくん」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
意識が途切れる前に、そんな声が聞こえたような気がした。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
夜の通学路。望華蕗中学の制服を着たひとりの少女が、誰かに話しかけている。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「あなたはなぜ、わたしにしか見えないの？」&lt;br /&gt;
彼女の傍らにいる人影が答える。その表情は窺い知ることができないが、その声色は喜びに満ちていた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「それはね…わたしがあなたを選んだから。わたしにとって必要な人は、今はあなただけなの」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
二人の笑い声は次第に遠ざかってゆき…。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
重い瞼を開いた僕の視界には一人の女性の端正な顔があった。額には冷たい感触を受けている。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「よかった。気が付いたのね」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「あの…ここは…」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
つい先日訪れたばかりのように見覚えのある空間を見回す。まだ意識が朧気な僕に眠っていて、と諭すように囁く彼女の言葉に従い、再び身を横たえると、額に冷えたタオルが再び置かれた。&lt;br /&gt;
そうか、僕は保健室のベッドに寝かしつけられているんだな。&lt;br /&gt;
窓の外からは夕日が差していた。放課後なのだろう。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「あの…僕は」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
ベッドの脇で見守ってくれている彼女--保険医の隣音サイ先生に何か問おうとする。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「鏡音くん、体育の授業中に倒れてしまっていたのよ。持久走のコースの折り返し地点だったって体育の先生が言っていたわ」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
心配そうな顔のまま、隣音先生は僕の頬を撫でてくれた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「ここに運び込まれた時も顔面蒼白で、随分うなされていたの。この前もそうだったけど、大丈夫かしら」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
心なしか彼女も顔色が悪いように見える。僕は彼女に心配を掛けたくなくて笑顔を作ってみせた。&lt;br /&gt;
「ありがとうございます、隣音先生。僕は平気です。ちょっと変な夢を続けて見ることがあるくらいですから」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「悪夢？」&lt;br /&gt;
首を傾げる隣音先生。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「高いところから女の子が飛び降りたり、女の子二人が突き落とされたり…」&lt;br /&gt;
彼女に心配してほしくなくて明るく振る舞おうとしたんだけど、僕の言葉を聞いた隣音先生は顔色をみるみるうちに変えてゆく。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「ごめんなさい、夢は夢でも、人が死ぬような話先生は嫌いですよね。一度同級生にこの話をして、怒らせてしまったんです」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
僕は頭を下げると、本心から申し訳ない顔をして言葉を続けた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「でも、さっきはこんな夢も見ました。夜の通学路で二人の女の子が話をしていたんです。ひとりの女の子はもうひとりの女の子にどうして自分は見えるのか、と尋ねました。そうするともうひとりの女の子は、それはあなたが私にとって必要だから、と答えたと思います。確かにリアルで鮮明な夢ばかりですけど悪夢だけを見ているわけじゃないし、そのうち収まりますよ」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
ははは、と作り笑いを浮かべて僕は隣音先生の言葉を待った。&lt;br /&gt;
彼女は数秒間、何か考え事をしていたようだが、にこりと微笑みかけると、静かに丸椅子を立ち、窓辺に歩を進める。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「きっとあなたのクラスメイトは、転校生のあなたに心配を掛けたくなかったのね…そこから見える？」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
ベッドの上の僕の目から見える位置の窓を一つ開け、そこから中庭を…正確には中庭の西側に立つ小さな建造物を指差す。僕が転入してきたその日に目にした、祠だった。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「この学校ではそれほど知られていない話ではないの。でも、本当はこの話はあまりあなたが耳にするべきではないのかもしれないわ。どうしても聞きたい？」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「はい…」&lt;br /&gt;
嫌な話を聞かせてしまったからには、僕も嫌な話を聞かなければならないだろう。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「この中庭はかつてこの学校で3人の生徒が命を落とした場所なの。33年前と21年前と…そして10年前。3人はそれぞれこの学校に時代は違ったけど、共通するのは、みんな転校生だったということと、死因が高いところからの転落死だったということ…あの祠は二人目の転校生が犠牲になった時に、二度とこのようなことが起こらないように、近隣のお寺から勧請した神が祀ってある場所なのね。でも、10年前に三人目の転校生が死んだ時には、儀式を行ったお寺は猛烈な非難を浴びて、それからはあの祠に手を合わせる人もいなくなったらしいわ」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「そうですか…」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
僕は中庭の祠の顛末を聞き終えると表情をさらに硬くする。&lt;br /&gt;
これをただの言い伝えと決めつけるのは簡単だ。でも僕はこれまでにこの学校であまりにも常識では考えられない体験をしてきている。&lt;br /&gt;
転校生である僕は、これからどうなるのだろう。この学校に宿る不思議な存在に、命を奪われることになってしまうのだろうか。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「鏡音レンくんは大切な人っているの？」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
ベッドの上で固まったままの僕に、不意に隣音先生が尋ねてきた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「ええ、居ますけど…」&lt;br /&gt;
一瞬、故郷の札幌の光景とともに、緑の長い髪をツインテールに下ろした人影が脳裏に浮かんだが、口には出さないでおく。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「そう…よかったわ。それじゃ、もしあなたの身に、どうしても怖くて辛い出来事がふりかかったら、その人のことを強く思い浮かべてね。きっと怖いのは逃げてしまうわ」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
不思議だった。静かに微笑む隣音先生のその言葉は、ただの気休めとはどうしても思えない重みを僕は感じていたんだ。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「あの、隣音先生…どうしてそんな話を僕に？」&lt;br /&gt;
漏らすように尋ねた僕の言葉に、彼女はきゅっと片目を閉じる。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「雰囲気が似ているの。転校してきたばかりでいつも不安で泣いていた私を励ましてくれた、年下だったけれど頼もしい、たったひとりのいとこの男の子にね」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
嬉しそうに話す隣音先生。頬を盛大に赤らめているのを見ればよほどその少年のことが好きだったのだろう。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「…よかったですね…」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
僕が自分の身内へ向ける愛情はどの程度まで許されるのだろう、という哲学について思索を試みていると（我ながら意味不明）、不意に彼女の身体が床に崩れ落ちた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「はぁっ…はあっ」&lt;br /&gt;
「隣音先生!!」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
ベッドから飛び上がった僕は一目散に彼女に駆け寄りその肩に手を掛ける。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「先生、まさか僕がここに居る間ずっと…」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「鏡音くん、だいじょうぶ、よ……ちょっと貧血気味なだけ…」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
安心させようと笑顔を作って自力で起きあがろうとする彼女に首を振り、ベッドに連れてゆく。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
上着を一枚脱いだ格好で横たわった隣音先生は、シーツを掛けた僕に消え入るような声で礼を言うと、こう呟いた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「私も変なの…持病があるわけでもないのに、最近体調を崩したりして…」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
TO BE CONTINUED&lt;/p&gt;
    </description>
    <dc:date>2009-03-12T22:56:29+09:00</dc:date>
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    <title>幻影　闇の学校　第5話　かくれんぼ</title>
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眠れないまま朝を迎えて登校し、クラスの自分の席に着くが早いか机に突っ伏する僕の背中をいきなり活気に溢れた声の女子生徒が叩いてきた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「おっす鏡音!!理科のドリルはどうだった?いいのできたか！?」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
亞北さんだった。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「ありがとう。とても助かったよ」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
鞄から二冊のドリルを出し、軽く会釈をして彼女に返すドリルを渡そうとすると、彼女はすぐには受け取らず僕の方のドリルを指差し「見せてみな」と言う。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「…これはまずいだろ」&lt;br /&gt;
しばらく僕が素直に差し出したドリルを眺めていた亞北さんは、僕に窘めるように告げた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「あたしはこのドリルを使えっつっただけで別に丸写しにしろとは言ってないぞ?答えとか計算式とか変えたり空白にするとかやりようはあるだろ?」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
そこまで頭が回らなかった。精神的な意味でも学力的な意味でも。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「闇音センセにバレたら知らないぞ?剣道場かどっかに呼びつけられて…」&lt;br /&gt;
背筋が寒くなる。まだ夜中の夢が覚めやらないうちにこれ以上僕の寿命を縮めるのは遠慮してほしい。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「どうした鏡音?顔が真っ青だぞ。確かにご愁傷様な話だが、あんたにも原因があるんだしさ…」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「そ、そうじゃなくて…あのさ、亞北さん、この学校で転校生について変わった話ってない?」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
突然思ってもいなかった方向へ話の腰を折られて、目を点にする彼女。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「転校生?なんだそりゃ?」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「高い所から転校生の女の子がひとりで飛び降りたり、二人の女の子が、化け物に突き落とされたりとか…」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
教室中の視線が、僕の方へ注がれた。&lt;br /&gt;
当の亞北さんははっと息を飲むと、呟くように否定の返事をしながら視線を泳がせる。何か隠し事でもあるのだろうか。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「な、なんだよ…あたし何も知らないぞ」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「隠さないでよ!僕がこの学校に来た日、この学校と転校生についての話を遮ってしまったの君じゃないか!!この学校に化け物でもいるのっ!?」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
自分でも何を話しているのか解らないほど焦っていた僕が我に返った時は遅かった。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
がくん、という音を立てて僕の視界が無理矢理上方に引っ張り上げられる。禍々しいまでの炎を湛えた亞北さんの双眸がそこにあった。首が苦しい。その気圧される迫力に僕は胸倉を掴まれている状況を悟るのが一瞬遅れた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「転校生だからって調子乗ってんじゃねえ!!」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
怒号が轟く。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「あたしはあんたと仲良くしたいと思った！恩を着せるわけじゃないけどあんたのことが心配で力になりたいと思ったんだぞ！余所からきた奴を馬鹿にする奴も大嫌いだがな…この学校を馬鹿にする奴も大嫌いなんだよ!!」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「亞北さん、ごめん…」&lt;br /&gt;
彼女は僕の謝罪の言葉を振り払うかのように胸倉から手を離す。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「謝らなくていいよ。あんたの言葉はもう耳にする価値もないだろうし」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
冷たく言い放った彼女は石像のように硬直している僕を後目に、僕の机の上に置かれたままだった自分のドリルを取り上げて自分の席に戻っていいった。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
そうか…もうこの学校で僕が何に巻き込まれても誰にも助けを求められないんだな。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
教室に欲音先生が入ってきてホームルームが始まる。その後、ドリルを提出した理科も含めて僕はどの授業も何も頭に入ってこなかった。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
ノートを取る気力もなかった僕の成績は、これからどんどん悪くなるんだろうな。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
帰りのホームルーム。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
廊下からは磨り硝子の窓越しに人影が写っていた。欲音先生が窓を開けると、闇音先生の強ばらせた顔が、僕の席からも見えた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
欲音先生が教室の入り口の引き戸を開けて彼女と一言二言言葉を交わすと、軽く会釈して闇音先生の姿は廊下を動いてゆく。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
欲音先生は教室の扉を閉めると、窓側の席に座る僕に声を掛ける。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「鏡音くん。帰る前に職員室の闇音先生のところに行きなさいね」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「うっわ、呼び出しか?」&lt;br /&gt;
「や、闇音先生に?」&lt;br /&gt;
「生きて帰ってこいよ鏡音…」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
…クラスの視線が僕に注がれる。でもいまさら嫌な予感など感じなかった。きっとみんなから見る僕の今の表情は虚ろな目をしているんだろう。&lt;br /&gt;
恐怖心を通り越した虚無感でいっぱいなんだし。むしろイヤと言うほどしごかれたら悟りでも開けるかもしれない。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
終礼が終わると鞄を背負い僕は職員室へ向かう。俯き加減で歩く廊下が、やけに長く感じた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
そして職員室。闇音先生の机の前で僕は唇を引き結んで彼女の第一声を聞く。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「鏡音レン。お前が写したらしい理科のドリルの件で呼ばせてもらった」&lt;br /&gt;
僕は煮るなり焼くなりどうぞ、と心中で呟く。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
しかし、続く言葉は意外だった。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「本来ならば剣道場あたりで性根を叩き直してやるはずなんだが」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
えっ…?&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「亞北ネルのドリルにメモがクリップで留められていてな…読んでみろ」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
クリアファイルからひょいと取り出したメモパッドの一枚を取り出し、僕に押し付ける。何が何かわからないなりに僕は受け取り読み上げた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
『闇音先生へ。鏡音くんが今回の課題をやっていなかったようなので、昨日私のドリルを貸してあげました。でも、鏡音くんは決して不真面目な人ではありません。何か悩み事があって勉強に身が入らないのかなと感じました。私も責任を負います。彼には寛大な処置をお願いします。&lt;br /&gt;
追伸。今日、終礼前に鏡音くんと一悶着があって怒鳴ってしまいました。彼に謝罪の言葉を伝えてくださいますか』&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「…先生」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
僕はメモを闇音先生に返す。亞北さん、僕のことを心配してくれてたんだ…&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「何か困ったことでもあるのか?」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
闇音先生が心配そうな視線を向けてくる。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「最近怖い夢を見たり変な空耳を聞いたりしています。自分でも変だと思うのですが」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
これくらいは答えても構わないだろう。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「何かあったら話は聞くぞ?」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
闇音先生、人情家なんだろうか。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「ひどいようなら学校休め、くらいしか言えないが…とりあえず亞北の好意は受け取ってやれ。あいつは真面目な子だからな」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
頬の筋肉がゆるむ。僕は胸に暖かいものを感じていた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「30分くらいでいいから、校舎内で目についたところを掃除して帰りなさい。それで今回のドリルの件は不問とする」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
闇音先生は椅子から立ち上がり、僕の頭を撫でるとこれで私の話は終わりだ、と言う。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「は、はい…ありがとうございますっ」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
一気に緊張がほどけた僕は上擦った声で礼を述べ、一生懸命掃除しますと答えて職員室を後にした。&lt;br /&gt;
中央階段の踊場にしつらえられた掃除用具箱を開け、オーソドックスに箒とちりとりを取り出すと階段を上り下りしながら僕は埃の溜まった場所を掃いてちりとりに集めてゆく。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
掃除を始めて15分後くらいだろうか。次に埃が溜まっている場所を探して階段を上った僕は自分の目が信じられなかった。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「!!」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
階段を上った先は、「上の階」ではなかった。&lt;br /&gt;
そこには広い広い大広間が広がっていて、四方の壁には、扉がびっしりと並んでいた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「なっ…」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
振り返ると、後ろには階段が遙か下の方まで伸び続けている。無限に伸びているのか、階段を降りた先が見えない…。&lt;br /&gt;
何なんだ、この空間は。確かに僕はこの中央階段で掃除をしていたはずだ…。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
無我夢中で目の前に広がる正方形の大広間に駆け込み、居並ぶ扉のうち一つを開ける。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
その先は、三方向に分かれた通路があった。真ん中の道を歩いて進んでみるとその先にはあろうことか…さん、し、ご…九方向もの通路が放射状に分かれていた。&lt;br /&gt;
…まるで迷路じゃないか。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
立ち尽くす僕の耳に、囁くような声が聞こえてきた。見れば、目の前の分岐のうち左から四番目の通路に人影が現れている。長い髪を一つで束ねていて…見覚えがあるような気がする。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「私と遊びましょう？この学校はとても広いのね。かくれんぼはどう？」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「誰だよ君は！僕をここから出してよ！」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
震えながら僕はその人影に叫ぶ。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「フフフフ…見つけてごらんなさい」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
嘲笑うように通路の奥に消えていく人影。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「待て！」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
僕は思わずその人影を追いかけるように左から四番目の通路を駆け出した。かくれんぼなんて興味などない。早くここから出してくれないと帰れないじゃないか。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
いくつ角を曲がり、いくつ階段を上り下りしたことだろう。&lt;br /&gt;
ひどく長い廊下を走り抜いた先が行き止まりだったという場所もあれば、真っ暗闇の空間を手探りで進んだ場所もあった。&lt;br /&gt;
とある扉を抜けたところにあった小部屋で、僕は思わず座り込む。&lt;br /&gt;
疲労と絶望は限界まで来ていた。&lt;br /&gt;
頬を生暖かい液体が伝うのを感じる。&lt;br /&gt;
そうか、泣いてるんだな、僕…。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
ミクお姉ちゃん、Meiko姉ちゃん、Kaito兄ちゃん、リン、ごめんね…。&lt;br /&gt;
もう僕は、札幌に帰れないかもしれない。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「ずっと待っていたのに、なかなか見つけてくれないから出てきちゃった…また遊びましょうね」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
意識が遠のいてゆく中、そんな声を聞いた気がした。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
気が付くと、僕の視界には天井があった。腹と背中には柔らかい感触が加わっている。ベッドに横たえられているらしい。&lt;br /&gt;
僕が身を起こすと、ひとりの女性が丸椅子から立ち上がり、笑いかけてきた。彼女の纏っている白衣を見て初めて僕は自分が保健室に居ることを知る。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「よく眠っていたわね。もう夜よ？」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
彼女の笑みが目に入った瞬間、心臓が波打ち始める。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
なんて綺麗な人なんだろう。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
この学校の女性の職員の中で一、二を争う容姿ではないだろうか。いや、望華蕗の女子生徒でも彼女のルックスに匹敵するほどの子は見た記憶がない…。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
恍惚としている僕を見て、その校医の先生は話し始める。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「中央階段の踊場で倒れていたの。通りかかった先生方やがっしりした男の子たちが運んできてくれたのよ。うわごとも言っていたから無理に起こそうとしなかったけど、大丈夫?」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「大丈夫、だと思います」&lt;br /&gt;
僕はそう答える。どうせさっきまでのことを話しても悪夢と思われてしまうだろう。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「そう、何事もなかったらいいのだけれど、かがみねくん、ね…」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
制服の上着を着直した僕の名札を見て微笑む。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「私は隣音サイ。保健室に来たことのない人は知らないかもね。スクールカウンセラーもしているから、困ったことがあったら私に聞かせてね…んっ…」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「先生!?」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
困り事も悩み事もあるんですけどね、と心の中で返事した瞬間、丸椅子に腰を下ろしていた彼女…隣音先生の体がぐらりと傾いだ。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「大丈夫…ちょっとね、鏡音くんが保健室に運び込まれてから目眩が続いているだけ。心配しないでいいのよ」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
隣音先生はこめかみを押さえながら椅子に腰掛け直して僕に向き直ると、安心させるように笑顔で答えた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「それより鏡音くん大丈夫?ひとりでお家に帰れる？」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
顔色が悪いのにも関わらず心配そうに問いかけてくる隣音先生。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「僕は大丈夫です。隣音先生こそ寝ててください、ありがとうございました」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
元気そうな声をあえて作り、隣音先生に頭を下げて鞄を背負い辞去を告げる。&lt;br /&gt;
気をつけてね、と手を振る彼女に頷きながら保健室のドアを閉めた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
隣音先生と一緒にいるととても優しい気持ちになれるのはどうしてだろう。&lt;br /&gt;
校門を抜けた僕は、隣音先生の顔や声を思い返してはそんなことを考えつつ夜道を重音家に向かって歩いていた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
TO BE CONTINUED&lt;/div&gt;
&lt;/div&gt;
&lt;/div&gt;
    </description>
    <dc:date>2009-03-12T22:53:44+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/197.html">
    <title>幻影　闇の学校　第4話　夢の中で</title>
    <link>http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/197.html</link>
    <description>
      
&lt;div class=&quot;box_nvl_out&quot; id=&quot;div_box_nvl_out&quot; style=&quot;height:2077px;&quot;&gt;
&lt;div class=&quot;box_nvl_in&quot; id=&quot;div_box_nvl_in&quot; style=&quot;height:2040px;&quot;&gt;
&lt;div class=&quot;wordbreak&quot; id=&quot;div_txt_data&quot; style=&quot;margin-top:0px;&quot;&gt;
夜の学校で理科のドリルを手にした後、僕は後ろを振り返る余裕もなく重音家に全速力で走っていた。僕はただ帰るために走ったというより、僕を呼ぶ声の主から逃げていたんだ。最上階から僕を呼ぶ声は校門を出てからも頭の中に直接響くようにはっきりと聞こえていた。その恐怖は、来るときに感じた夜道を歩く恐怖すら打ち消していた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
…痛む脇腹を押さえ汗ばんだ肌着が寒さを感じても足を緩められなかった。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「お帰りなさい。とても心配していたのよ」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
視界に日本家屋の屋根が入ると、僕は力が抜けるようにスピードを落とした。街灯の光が一人の女性の姿を鮮明に映し出す。その顔がこの寒風の中外で待ってくれていたテトさんのものであることがわかると目頭が熱くなるのを感じつつ駆け寄る。心配は伺えても責める感じを受けないその声を聞いて、か細くごめんなさい、と答えると一気に涙が溢れ出した。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「レンくんどうしたのっ!?」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「夜道にひとりぼっちだったから怖かったんですっ」&lt;br /&gt;
体を震わせているのを見たテトさんの優しくも不安そうに尋ねる声を聞いて、僕は涙混じりの笑顔で首を振り、まんざら嘘ではないが、事実にしては不十分な答えを述べる。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
―心に誓った。この人にだけは僕のことで心配を掛けたくない。たとえどれだけ常識で考えられないようなことが僕の身に起きても…&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
ふふふ、レンくんったら甘えんぼさんのままなのね、と頭を撫でてくれるテトさんの言葉に頷き袖で涙を拭った。&lt;br /&gt;
鞄の中に入ったまますっかり忘れていた肉まんはテトさんが暖めなおしてホットココアと一緒に出してくれた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
シャワーを浴びて浴衣姿で出てくるやいなや今日は一緒のお布団で寝る？と悪戯めいた笑みを浮かべてくるテトさんの申し出に、頬を真っ赤に染めた僕ははいともいいえとも答えないまま、二階の自室に戻った。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
デスクチェアに腰を下ろし、申し訳程度に理科のドリルを開いたけど、シャーペンを走らせた問題はおそらく片手の指で数えられる数だっただろう。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
日付が変わってからもしばらく起きていた分の眠気が押し寄せてくる。&lt;br /&gt;
家に帰り落ち着いたのか、必死で走った疲労感を今になって足にえつつあった。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
ドリルにある問題で手を着けたのは片手の指に収まる数だろう。いつのまにベッドに倒れ込み眠りに落ちたのかは知る由もない。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
その夜僕は二つの夢を見た。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
一つ目。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
呟くような物悲しい言葉が聞こえた。&lt;br /&gt;
「転入してきてごめんね。みんなさよなら」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
夜の学校。校舎の最上階の窓から、長い髪を後ろでひとつに束ねた一人の女生徒が落ちてゆく。&lt;br /&gt;
月明かりに照らされた彼女の制服は、望華蕗中学のもののようにも見えるが、僕が学校で見るものより幾分デザインが質素なもののように見える。袖や襟の形状も変わっているようだ。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「!?」&lt;br /&gt;
僕は思わず目を覚ます。言いようのない寒気が全身を駆け抜ける。&lt;br /&gt;
夢だったことに肩から力が抜けていくが、そのリアルさのためだろうか。高鳴る心臓の鼓動が静まるのを待ってからもう一度布団に潜る。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
二つ目。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
闇の中、気の弱そうな少女が地面に座り込み泣いている。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
突如、あたりに響き渡る啖呵。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「お姉ちゃんに触るな！」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
見れば彼女の前には肩口によくわからないマークを付けたひとりの少年が立ちはだかり、目の前にいる何者かと闘っている、ようだ。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
あれはなんだったんだろう。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
翌日、朝のホームルームの前のこと。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
僕は件のドリルを開いて苦悩していた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「おっはよー鏡音。どうしたんだ頭抱えて…なになに?…こりゃやばいだろ」&lt;br /&gt;
よく通る声を掛けられた。見れば亞北ネルさんが僕の顔とドリルを見比べている。一瞬で状況を察したらしい彼女は、にやりと笑うと自分の学生鞄を探り、自分の理科のドリルをポンと机の上に置いた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「貸してやるよ。提出は明日だし一日あればできるだろ?あたしはいいんだよ、とっくにできてるしさ」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
いいの?と言う僕に彼女はいいから使え、と肩を叩く。&lt;br /&gt;
実のところ、昨日の夜の体験の恐怖感は今も消えていなかった。お言葉に甘えておこう。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「さすが」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
亞北さんのドリルを開いて僕は嘆息する。&lt;br /&gt;
学年屈指の優等生らしい彼女のドリルは今回提出する範囲はおろか最後のページまですべての欄がとうに文字や数字や記号で埋められていた。記述式の問題や応用的な計算問題のひとつひとつの回答が簡潔で丁寧に書かれている。解答が生徒に渡されていないこのドリルだが、今彼女に貸してもらったものは模範解答に匹敵する仕上がりに違いないだろう。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
その日の夕食後僕は彼女に借りたドリルをありがたく写させてもらい、床に着くことにする。&lt;br /&gt;
亞北さんにお礼を言ってしっかり礼をおかなきゃな。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
―その夜、床についた僕は再びこんな夢を二回続けて見ることになる。&lt;br /&gt;
ふたつの夢はほとんど同じといってよいほど似通っていた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「!?…なにするの!!やめて！だれか、だれか助けてーー!!」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「やめて、お願い!!こんなとこからじゃ死んじゃうっ…誰かいませんか!!」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
場所はふたつとも真夜中の学校。内容はそれぞれひとりの私服姿（夜だからだろう）の女の子が―かろうじて人間らしき姿を持った存在―に、両手両足を何かに縛られたまま叫んでいる。悲痛に響く助けを呼ぶ声も空しく、やがてその女の子は窓の外に投げ出され、学校の最上階から落ちていく…というもの。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
そしてこの夜の二度目の夢を見た後、恐怖で目を覚ました僕は高鳴る胸を押さえていた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
自分で飛び降りた、何者かに突き落とされた、という違いはあるとはいえ、ここまでリアルにここまで似たような夢を二日で三回も見ることはあるだろうか。そしてどの夢もただの悪夢よりも胸をえぐるような恐怖を感じる。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「いったい…」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
僕が見たこれらの夢は望華蕗中学に何か関係があるのだろうか。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
TO BE CONTINUED&lt;/div&gt;
&lt;/div&gt;
&lt;/div&gt;
    </description>
    <dc:date>2009-03-12T22:51:26+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/196.html">
    <title>幻影　闇の学校　第3話　声</title>
    <link>http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/196.html</link>
    <description>
      
&lt;p&gt;僕が望華蕗中学に来てから2週間。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
僕はひとまずクラスメイトとも少しずつ打ち解けてこれたんだろうか。&lt;br /&gt;
転入してきた日の亞北ネルさんの言葉どおり、転校生の僕に嫌がらせをしてくるような人間は今のところこの学校にはいないようだった。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
僕は休み時間もグラウンドで男女一緒にサッカーやバレーボールをやったり雨が降っても誰かが持ってきたトランプや百人一首かるたに興じたりしている。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
どこの中学でもあるような暖かい関係に思えるけど、転校生の僕が寂しくないように心配してくれているのだろうか。&lt;br /&gt;
何かゲームを始めようとすれば真っ先に僕を誘いに来てくれたり、何のゲームをするのか決める時真っ先に僕の希望を聞きに来てくれる。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
僕は、それがただ寂しかった。&lt;br /&gt;
人に声を掛けたりするのが苦手な性分もあるんだろうけど、やっぱりこの村はよその人間に気を許さなかった時代の名残があるのだろうか。&lt;br /&gt;
僕は一本の太い絆が欲しかった。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「…しまった」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
鞄の中を探り、机の引き出しを探り、そしてまた鞄の中を探り、僕は大きな溜息を吐いた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「提出期限は明後日とする」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
今日の理科の授業の最後地響きのような声色で担当の教師がドリルの提出を命じた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
闇音アク先生。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
女性ながらこの学校でもかなり厳しい教師らしい。授業中喋る者、寝る者に遠慮なく雷を落とすし、宿題を忘れたクラスメイトが胸倉を掴まれている光景も目にした。指導方針が正しいのかどうかはともかく、意気地無しの僕は身の安全のためにも提出日の二日前の今日中に仕上げておこうと、今日の放課後も教室に残り科書を開けていたんだけど…机の中にドリルを入れたまま帰ってきてしまったらしい…。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
夕食の後テトさんに学校までドリルを取りに行くことをおずおずと切り出すと、外は寒いからと、熱いお茶に入れた肉まんを持たせてくれた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
うう、優しい家主さん。僕はこんな気配りができる大人になりたいと思った。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
寒村望華蕗村。道を照らす電灯は少なく夜道ははっきり言って怖い。&lt;br /&gt;
畑の脇に朽ち果てた案山子が折り重なるように捨てられているのを見たり、カラスの群れが突然けたたましく鳴きながら飛び立つのを見たり…。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
自分の上げた悲鳴に耳が痛くなるのを覚えつつ、僕は望華蕗中学の敷地に入る。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
石の階段を登り、僕はまず正門に向かう。もちろん厳重に施錠されているだろうが、インターフォンでガードマンの人を呼ぶつもりだった。朝登校の時にいつも校門の前で笑顔で立って僕を含む生徒たちに挨拶をしてくれる例のおじさんなら、きっと開けてくれる。それに教室の鍵がしまっているから取りに行きなさい、と職員室の鍵を先に渡してくれるだろうと思って…&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「…」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
鼻歌を口ずさみながら正門の前に辿りついた僕は驚いて声を漏らす。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
校門が開いていた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
学校の安全性が叫ばれている今、夜中に開けっ放しというのは許されるのだろうか。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
その疑問も束の間。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
ガードマンさんは学校の中と外を見回っていて、行き来がしやすいように校門を開けたままにしているんだ。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
僕は自分自身に出任せを吹き込む。考えていても仕方ない。怖い夜道を往復する苦労とテトさんの愛情がいっぱい詰まった（と考えるのが礼儀だと思う）肉まんを思えば、開いたままの校門に構わず目的のドリルを持って帰らなければならないだろう。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
『サンニンメネ』&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
え、今人の声が聞こえなかったかな。&lt;br /&gt;
周囲を見回すが、人影はない。&lt;br /&gt;
心臓の鼓動が速くなるのを感じながら、僕は校門の中に足を踏み出した。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
夜の道も怖いが、夜の学校はある意味それ以上に怖い。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
静まりかえった廊下にこつこつという靴の音（上履きだが）が響く。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
いつの時代にか卒業記念として制作されただろう人の顔の並んだ木のレリーフに月の光が当たり浮かび上がる様子。作った方々には失礼だが、闇の中では不気味というほか感想が見つからない。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
なにより今、僕は無断で夜の学校に入っている。いくら僕たち生徒に普段優しいガードマンさんとはいっても夜中の不法侵入者を構内に見かけたら血相を変えて飛んでくるに違いない。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「なんなんだよ…」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
廊下を歩きながらガードマンさんに誰何されたときどう釈明するか考えているうちに僕はある事実に気が付いた。一般の教室も授業に使う教室も、施錠されていない。いや、教室の扉が開け放たれている。偶然にしては多すぎる程に。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
…それに、校門をくぐってからこうも気付いた。いくら注意深く周りを見渡しても、ガードマンばかりか校内に自分以外の人影そのものが見あたらない。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「っ…!!」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
僕は自分の教室に急ぐ。どうせどこの扉も開いたままだったら職員室に鍵を取りに行く必要もないだろう。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
冷や汗がこめかみを伝う。一刻も早く用を済ませて重音家に帰りたかった。&lt;br /&gt;
いささか乱暴に教室の扉を開け、一直線に自分の机に向かい、引き出しを探る。&lt;br /&gt;
目当ての物…理科のドリルはすぐに見つかった。&lt;br /&gt;
念のため、氏名の欄に鏡音レンと書いているのを確認してふぅと息を吐きつつ僕は鞄にドリルをしまう。そして足早に教室の出口に向かい、下駄箱の方へ通じる中央階段の方へ歩を進めようとして…&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
その時だった。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
僕が立つ自分の教室よりひとつ上のフロア…西側の最上階からか細く物悲しい声&lt;br /&gt;
が耳に届いてきたのは…&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
『オイデ』&lt;br /&gt;
『オイデ』&lt;br /&gt;
『オイデ』&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
TO BE CONTINUED&lt;/p&gt;
    </description>
    <dc:date>2009-03-12T22:49:24+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/195.html">
    <title>幻影　闇の学校　第2話　ネギの夕方</title>
    <link>http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/195.html</link>
    <description>
      
&lt;p&gt;ドアノブを捻る。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
カーテンを引き窓を開けてから学習机の上に鞄を置き、手早く制服からジャージに着替えると、僕はテトさんの言葉通りこたつ付の座卓の上に置かれていた小包のラベルに目を通す。届け先に僕の名前が、差出人にミクお姉ちゃんの名前がちんまりした文字で書かれていることを確認するが、内容物に「食料品」とあるのを見ると箱を開けないまま両手に抱きかかえる。居候をさせてもらっている僕。僕宛ての家族からの届け物とはいえ中に入れられているのがお菓子やインスタント食品だったら、とりあえず家主のテトさんに預けるのが道理だろう。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
そのまま階段を下り、テトさんと幼い兄弟が待つ茶の間に入る。座卓を囲む子供たちの手にはすでに大福餅が握られていた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「レンくんごめんなさいね。この子たちに待っているように言っておいたのに、どうしても早く食べたい言って聞かなかったの。レンくんの大福はこの子たちが食べないようにしまってるから、今お茶と一緒に出すわね」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
冷蔵庫から大福が載っているだろう皿を出しながらテトさんが申し訳なそうに告げる。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「いいんですよ、僕こそ待たせてしまいましたから…そうだ、実家からの差し入れは食べ物だそうですし、お菓子でも入っていたら一緒に食べませんか？」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
座卓の上にことりと小包を乗せると、ちびっ子二人も歓声を挙げる。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「そう?ありがとうねレンくん。この子たちも喜ぶわ。じゃ、開けてくれる?」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
テトさんが微笑んで鋏を僕に渡す。頷いた僕は中の物まで切ってしまわないように慎重にガムテープに刃を入れる…&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「うえ」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
箱いっぱいにネギが詰められていた。不純物は一切含まれてないらしい。&lt;br /&gt;
幼い兄弟がぽかんと口を開けていた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「あらぁ～新鮮で太く長いのがいっぱいじゃないの」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
いいんですよテトさん、そんな棒読みのフォローを入れてくれなくても。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「…電話貸してください。姉にお礼を言っておきます…」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
電波状況が悪いらしい山奥の望華蕗村。&lt;br /&gt;
ダイヤルではないが結構古い形のプッシュホン式の電話でミクお姉ちゃんの携帯に掛けることにする。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
『もしもし』&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「もしもしミクお姉ちゃん、僕だけど」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
『あ、レンくん!?』&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「うん、お姉ちゃんからの小包を受け取ったよ、ありがとう。いや、気持ちはありがたいんだけどさ…」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
僕の言葉は続かなかった。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
『ふぇ、えぐっ、レンくん…』&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「お姉ちゃん?!」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
スピーカーから聞こえるのはミクお姉ちゃんの泣き声。え、僕の言い方で傷ついたのかな。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
『レンくんいつ帰ってくるの?ミク寂しくて泣いちゃう…』&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
すでに泣いてる気がするが。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「ま、待ってよお姉ちゃん。いつかなんて解んないって!今日転入したばっかりなんだし、札幌から何百キロもあるんだしさ」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
湯呑みに口を付けていたテトさんが振り向く。なんでもありませんよ…。&lt;br /&gt;
『う、うん…レンくんが帰ってくるまで我慢するっ。ミクがレンくんのために買った大好きなネギ、たくさん食べて頑張って、ねっ…ふえええん！！レンくん！ミクの胸に早く帰ってきてぇ』&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
ネギが好きなのは僕じゃなくてミクお姉ちゃんの方だと思うんだけど…それよりミクお姉ちゃん、こっちの電話口の先２メートルの位置にいるテトさんにはっきり聞こえてるから泣かないで。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
『レンくん、泣かないからミクのこと大好きって言って!!』&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
どこの国の何という映画のどういうシーンだよ。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「はいはい…ミクお姉ちゃん、大好き…」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
僕の言葉を聞いたテトさんが思わず口元を押さえる。お茶を吹き出しそうになったらしい。頬を真っ赤に染めてごめんね、と囁いたように聞こえた。そんな目で見ないでください。ミクお姉ちゃん、僕も確かにお姉ちゃんは好きだけど実弾をぶっぱなすのはやめてほしい…&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
『ふぇああああああああん』&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
お姉ちゃん、泣かないと言っておきながらなんで泣くの。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
『ミクもレンくんのことが世界中のだ…』&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
『もしもし、レン!!』&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
突然ミクお姉ちゃんの声が途絶え、代わりに苛立ったような女の子の声がスピーカーから聞こえてきた。この声色は一人しかいないな。暴走するミクお姉ちゃんから白いリボンの女の子が大慌てで携帯をひったくる光景が実に鮮やかに浮かんでくるよ。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「…リン」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
『お姉ちゃんには気付け薬かトランキライザーでも飲ませとくわ』&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
それはまずいだろ…。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
『いいのよ。あんたがうちの家出てってからお姉ちゃんどんどんエスカレートしていってるし。それより学校はどう?友達は出来た?』&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
ぶっきらぼうだけどこいつもやっぱり心配してくれてるんだな。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「自然も綺麗な所だし、いい学校だと思うよ。友達もこれからできるんじゃないかな。今日もクラスの女の子と喋ったし」&lt;br /&gt;
『ちょっとレン!!調子に乗らないで!!』&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「ただの話相手だって。なんで怒鳴るんだよ?」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
『あ、ごめん…なんでもない』&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
姉妹そろって訳が分からない。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
『レン…ありがとう』&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「リン?」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
『お礼遅くなったけどさ、その…あんたのおかげでさ、あたし寂しい思いをしなくて済んだよね』&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「いいんだよ。僕も家を離れて新しい生活とか始めてみたかったしさ。良かったな、リンも元気で友達と仲良くな」&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
『レン…』&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
「まさかリンまで僕が居ないからって泣くなよ」&lt;br /&gt;
『バカ!!あんたのためになんか泣いてやるわけないでしょっ!!じゃあね!!』&lt;br /&gt;
露骨な音捨て台詞で切られる電話。&lt;br /&gt;
これはこれで傷つくな…。&lt;br /&gt;
言い方は違うけど、二人は僕のことを応援してくれている。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
それだけは忘れないようにしないとな。&lt;br /&gt;
大福を食べながら僕は実家にいるリンとミクお姉ちゃんの言葉を思い返していた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
TO BE CONTINUED&lt;/p&gt;
    </description>
    <dc:date>2009-03-12T22:47:00+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/194.html">
    <title>幻影　闇の学校　第1話　転校生な僕</title>
    <link>http://www7.atwiki.jp/vocaloidss/pages/194.html</link>
    <description>
      「札幌の栗布団学園から転入してきた鏡音レンです。勉強は苦手だけど歌が好きで音楽も得意な方です。よろしくお願いします」

暗記していた自己紹介をなんとか言い終え、控えめに笑顔を浮かべると頭を下げる。
今日から僕は山々に囲まれたここ望華蕗村にある望華蕗中学の生徒として卒業まで過ごすことになる。
数か月前Kaito兄ちゃんがリストラに遭った我が家は水道やガス、食料品にいたるまであらゆる面まで極限な生活を強いられることになった。
Meiko姉ちゃんがなんとか生活費を稼いではくれているものの、やはりひとりで5人兄弟を養えるには限度がある。うちで私立の学校に通っている者は公立に転入させる、という結論に達したんだ。

そして大自然に囲まれた新天地での生活に期待を膨らませながらすがすがしく新しい学校の門をくぐり、朝のホームルームの最後に担任の欲音ルコ先生に促されて手短な挨拶を終えた僕は、教室に響く拍手を浴びながら書類やらファイルやら封筒が山積みされた自分の席についたところでチャイムが鳴り…

「ねえねえ鏡音くん、札幌ってどんなとこ？」
「旭川の下だっけ？あたし地理の成績最悪だからなぁ」
「アイヌ語も喋れるの？」
「み、みんな落ち着いて！順番に答えてあげるから！」

転入後最初の授業を数時間受けた後の昼休み。僕は机を同級生に囲まれて質問攻めを受けていた。
「大変だな、あんたも」
耳に届く憐れみを込めた声。

質問攻めが終わる頃には昼休みも残り数分になっていた。弁当をろくに咀嚼もせず必死にかき込んでいる僕に長い髪をサイドに垂らしている女の子が机の脇に立っていた。

「ごめん、無視する訳じゃないんだけど、訊きたいことは放課後にでもしてくれないかな」

「そうじゃないよ、大変だろ？みんな悪気はないんだけどクラス代表として一言謝っとかないとな…特にこの学校で転校生といえば…あ、ごめん。な、なんでもないんだ！あたしは亞北ネルだ。よろしくな」

一瞬何か自分がまずいことを口走り焦ったような表情を浮かべた様に見えたが…まあ、気にしないでおこう。なんとか少女はごまかし気味ににやっと笑い襟元に光る委員長のピンを指差す。勝気そうな彼女はきっと勉強も運動もできるんだろう。

「いいんだよ、僕人と話すのは好きだし、興味を持ってくれて仲良くなれたら嬉しいしさ」

僕は箸を止めて自然な笑みを作り亞北さんの言葉に首を振った。
「どこのガッコでも転校生ならではの扱いってもんはあるだろうけどさすがにここは裏山に狸も狐も当たり前に居るド田舎だからな…都会の学校からの転入生となると10年ぶりだそうし、みんなが目の色を変えるのも無理ないよ」

亞北さんは窓の外に広がる高く険しい山並みを見回すと、再び僕に視線を戻す。

「10年もか…そうだね、村の道もクルマは走ってないらしいし…」

この村に足を踏み入れた日…最寄りの駅からバスに乗り、終点からさらに林道をコンパスと地図を頼りに2時間歩き通した日を思い返しながら僕はそう答える。

「この村昔と比べたらだいぶまともになったんだよな。この村、何百年も昔は炭鉱街だったんだけどな…明治の中頃に炭鉱が閉鎖してからどんどん廃れていったんだ。都会から住み着いていた労働者が去ってからこの村はどんどん貧しくなっていった。金がないから橋も作れない。畑があっても機械で草も刈れない。若い人間は都会に出て行き、老人が取り残されていく…住む人間が都会に排他的になっていくのも無理はないな。この学校でも、数十年前までは都会からの転校生に執拗に嫌がらせをする習慣があったくらいだからな」

亞北さんの言葉に、僕は息を飲む。思わず取り落とした箸が甲高い音を立てて木の床に転がった。「へ？」

強張る僕の顔を見た亞北さんは一瞬目を丸くすると２、３度瞬きをし…思わず大声で笑い出した。

「あっはははははは！！大丈夫だって！！言っただろ？昔ほどこの学校の連中はよそ者に冷たくなんかないんだ。少なくともあたしは鏡音の友達だからな！嫌がらせなんかする奴がいたら遠慮なく病院に送ってやるから安心しな！」

ファイティングポーズを見せつける亞北さんの笑い声を聞きながら、僕は道路も整備されていないこの村で骨折でもしたらどうやって病院に運ばれていくのだろう、なんてことをぼんやり考えていた。

放課後、僕はこの村の印象などを聞いてきた数人の同級生の質問に答えた後、鞄を背負い校内を早速探検（徘徊とも言う）していた。

「早く慣れないとな」

図書室や音楽室などの位置を覚えて一階に下りた僕が足を止めたのは中庭を通りかった時のこと。中庭の西側にこじんまりとした黒い影を見めにする。
近づいてみると、屋根と壁はある。ただ、それは「建物」ではない。人が入れる大きさがないから。

「祠、か…」

両開きの扉が閉められているので、中の様子はわからない。ただ、屋根などがあまり痛んでいないことを見ると、それほど古い時代に作られたものではないらしい、20年か、そのあたり前というところだろう。

仏教系の学校でならともかくとして何で普通の公立中学校の構内に神が祭られているのだろうか。不思議に思ったが、考えても仕方のないことだし、もう一回りしてそろそろ帰ることにしよう。

そういえば最上階の西側に延びる廊下を歩いていた時、数年ぶりに空耳が聞こえたような気がした。

古きよき日本家屋の前の路地でボール遊びをしている幼い兄弟。最初の授業を終えて望華蕗中学から帰ってきた僕の姿を見ると、「ママ～、レン兄ちゃんが帰ってきたよ～」ととてとてと玄関の引き戸を開けて中に入っていく年上の方の男の子。次に年下の方の男の子も中に入っていくが、すぐに戸から顔を覗かせて門の外に立つ僕に手招きをしてくる。
僕は門柱を丁寧に閉めてから後に続いて玄関に入っていった。


今、望華蕗村にある母方の親戚、重音家に下宿しているのは僕ひとり。ミクお姉ちゃんはもともと公立の高校に通っていたし、双子のリンは友達と離れ離れになることがわかった時、気丈に振る舞いながらも悲しそうな顔をしていたのを見て僕がひとりで行くことを決めた。
家族と離れて暮らすことは不安だけど、家主のテトさんや幼い兄弟もとても親切に迎えてくれたがら、大丈夫、だよね…。

「お帰りレンくん、友達できた？お茶とお菓子出してあげるから着替えていらっしゃい。そうそう、ミクちゃんから小包が届いてたわよ、レンくんの部屋に置いているからお礼を言っておきなさいね」

「はい、ありがとうございます」

玄関で迎えてくれたテトさんに礼を言うと僕は足取り軽く階段をのぼってゆく。

TO BE CONTINUED    </description>
    <dc:date>2009-03-12T22:44:23+09:00</dc:date>
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