今日は、なんの日?

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vocaloidss

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 この作品は、2008年度の初音ミクの誕生日企画「ボカロSS投稿所PS企画”Miku Hatsune”」に投稿された作品です。

 作者名は、人気作品アンケートが終了するまで非公開とさせて頂いております。


ガガガ、ガガガガ・・・・。 
  
(五月蝿いなぁ) 
 
今日は何故だか、やけに朝っぱらから工事の音が喧しい。 
--と思ったら、もう昼を過ぎていた。 
  
夜更かししてのニコニコは、ちょっと自重するべきだと思う。 
  
(でも、2時まではエコノミーだしなぁ) 
  
・・・・え、プレミアム?なにそれ、美味しい? 
そんなものは知らん。オレは清く正しいニコ厨でありたいと、常々そう思っている。 
言ってみれば『課金したら負けだと思う(26)』--うん、だいたいこんな感じ。 
  
しっかし、年度末が近くなると、無駄に辻褄合わせみたいな工事が増えて困るよね。 
眠い目をこすりつつ、あくび交じりに伸びをして、洗面所へと向かう。 
  
ん・・・・?何か、足りないような。 
  
パッと見、いつも通りの日常のような気がするのだが。 
でも、ちょっと違和感。なんだろう? 
  
まあいいか。そのうち思い当たるだろう。 
とりあえず冷水で顔を洗ったら、サッパリした。 
  
「やあ、おはよう主殿--ぉぉぉ!?」 
  
「だからお前、なんでまた勝手に上がりこんでんだよ!」 
  
「お、お館様ぁぁぁっ!?」 
  
なんか居間で当然のように茶をすすってた、変な浪人崩れに蹴りを入れて叩き出す。 
よくわからんが、面倒なので取り巻き連中も一緒に。 
  
これまた、いつもの風景。 
 
な、ハズなのだが。 
・・・・やっぱり、何か?が足りない。 
  
(あ、そうか) 
  
はた、と気がついた。 
  
そうだ。 
 
何故だか今日に限って『奴ら』がいないのだ。 
  
いつもなら一番喧しいはずの、黄色い『奴ら』が、いない。 
カイトが空気なのはいつものコトだから置いとくとして、ついでに言うとミクの姿もない。 
  
(あいつら、また何かやらかしてるんじゃないだろうな・・・・) 
  
まったく、連中のフリーダムっぷりを考えるだけで頭が痛くなる。仮にも居候なんだから、 
もう少し家主であるオレを敬うべきじゃないのか?そしてオレには『もっと敬われるべき』 
タグが与えられて然るべきだ、と小一時間--。 
  
・・・・ん?なんだコレ。 
  
どこからともなく、ぷ~んと甘ったるい、妙な臭いが漂ってきた。 
何となく胸騒ぎを覚えながら、臭いの元を辿っていく。 
  
着いた先は、台所。 
  
あ、なんかモーレツに嫌な予感がしてきたぞ。 
 
・・・・そーっと、開けてみる。 
嫌な予感に限って、よく当たるものだ。 
同時に、今日が何の日だったかを思い出した。 
  
(あーなるほど。そういうこと) 
  
海よりも深く納得したオレは、脱兎の如く逃げ出す--が、しかし。 
  
まわりこまれて しまった! 
  
「どうしたんです?マスター」 
  
時、既に遅し。 
満面の笑みを浮かべて、ミクがにじり寄ってくる。ちょ、怖いんですけど。 
それにしても、この凄まじい旋回性能・・・・クリプトンのボーカロイドは化物か!? 
  
「あら、おはよう」 
  
--うっ、メイコ姐さんまで遊びに来てたのか。まずい、まずいぞコレは。 
なんという赤いキツネと緑のタヌk・・・・もとい前門の虎、後門の狼。 
  
「いや、悪いな!オレちょっ・・・と用事、を・・・・」 
  
「マースーターぁ?」 
  
はい。ごめんなさいゴメンナサイすいません。 
  
むかし『諦めたらそこで試合終了だよ』って、誰かが言ってたけど。 
満面の笑顔で凄まれると、流石に心が砕けます。 
  
「完成まで、ゆっくりしていってね!」 
  
ぴしゃり、と閉じられた台所への扉は、まるで固く閉ざされた天岩戸もかくや、と言わん 
ばかりに無言の威圧感っつーか、オーラ的な何かを醸し出しているわけで。 
そして、オレは刑の執行を待つ罪人のように、ただ怯えて待つしかないわけで--。 
  
・・・・あ、姐さんが出てきた。 
  
え?もう少しで完成だって?あーそうなんだー、ふーん。そぉかぁ。 
でも、あんまり嬉しくないのは何故だろう!ふしぎ!! 
  
昼間だっていうのに、死兆星が見えてきそうだから困る。いやマジな話。 
  
「あ、あのぉ・・・・そういえばカイトとレンは?」 
  
恐る恐る、姿の見えない他の男性陣のコトを聞いてみた。 
  
「それがねー、あの二人ってば朝から姿が見えないのよねぇ・・・・」 
  
な ん で す と ! ? 
  
あ、あ、あ、あーいーつーらぁぁぁぁぁぁ!! 
 
ひ--卑怯なッ!主人を見捨てて逃げるとは、何たる不忠かッ!許すまじ!! 
  
「でも大丈夫、安心して」 
  
憤るオレを尻目に、物騒な笑みを浮かべ、姐さんは言った。 
  
「あの二人ならリンがぶっ殺・・・・もとい、探しに行ってるから」 
  
ちょま・・・・おk、把握した。 
  
朝っぱらからヤケに工事の音がうるさいなぁとか思ってたんだが、そういうコトか。 
・・・・いいか、お前ら。ボカロマスターの先輩として、重要なことをお前らに伝えておく。 
  
リンは、キレるとマジでヤバイ。 
  
ぱっと見の可憐(笑)な外見に騙されてはならない。重機を操らせたら、どこぞの豆腐屋も 
肝を冷やす、ボカロ界隈でも一騎当千のツワモノである。 
 
その戦闘力は推して知るべし。なにせフリーザの第三形態すらデコピンの一発で粉砕する 
と、まことしやかに囁かれているくらいで--え?なに?冗談こくのも大概にしろ? 
いやいやコレはホントの話。つか、パネェんですって、マジでマジで。試しに腕組みして 
ロードローラーの上へ仁王立ちしたリンに、 
  
「おい貴様、轢き殺すぞ」 
  
とか、真顔で言われてごらんなさい。泣いちゃうよ?つーか、むしろオレは泣いた。 
・・・・冗談だと思われるかもしれないが諸君、これは全て紛れもない事実だ。 
多分、WRYYYYYY!って言い始める辺りが分水嶺。ここはテストに出るトコだから、 
よく覚えておくように。ドゥーユー、アンダスタン? 
  
おk--で、だ。 
  
ちなみに、それに輪をかけて酷いのが、まさに今オレの目の前に立っている--、 
  
「・・・・何か、言った?」 
  
いえっ!?いえいえいえいえ滅相もございません。サー!イエッサー! 
誰だ!メイコ姐さんの悪口を言おうとした、けしからんヤツはッ!親衛隊隊員の風上にも 
置けん奴だ!許さんぞッ!! 
  
「まあいいわ。とりあえず死なない程度にギッタギ・・・・いちおう、五体満足で連れてくる 
ようにね、とは言っておいたから大丈夫だと思うけど」 
  
ちょっとちょっと!今なんか言い直しましたよこの人!? 
それにしても、アレだ・・・・何でアンタはそんな嬉しそうなのか。 
  
「聞きたいの?」 
  
は。聞かないほうが幸せな気がするので、謹んで辞退させて頂きます。 
  
嗚呼、それにしても。 
 
逃げても死、残っても死--ならば死中に活を求める。 
そんな彼らの生き様は、実に天晴れだと思う。 
  
--そして、実に愚かだと言わざるを得ない。 
  
2倍の苦しみを味わうことになると知りながらも、その労苦を厭わないのだから。 
  
・・・・しかしウチのレンが一向に上達しないのは、別にオレの力不足ではなくパラメーター 
を全部逃げ足に振ってるからだ、といま確信した。変なところばかり兄に似やがって。 
  
(あんにゃろう、後でヤキ入れたる・・・・) 
  
まあ、それもお互いに生き残ったらの話だがな--とか、そんな暗い情念を燃やしながら 
居間でゴロリと横になる--と言うか、むしろ転がると言った方が正しいかもしれないが。 
  
なんかね?逃げられないようにって、ご丁寧にも簀巻きにまでしてくれちゃって。もうね。 
  
これじゃあ、ゆっくりも何もあったモンじゃないワケですよ、正直。 
いやぁ、つくづくウチのミクは気が利くなぁ、としみじ・・・み・・・・。 
  
・・・・あれ?おかしくね? 
  
(オレ、ここんちの家主だよな?確か) 
  
色々とおかしくね?っつーか酷くね?この扱いとか。 
なんだろう、目から変な汗が出てきたわ、マジで。 
 
これは、もしかしてアレか--恋!?いや違う! 
きっと目の前に、ネギ色の物体が置いてあるからだ--!って。 
 
  
待て。 
  
「ちょ、ちょっとちょっとミクさん、何ですか!?コレは」 
  
「え、チョコだよ?」 
  
いやいや、ご冗談を--って、マジで? 
 
・・・・まあいい。百歩譲って仮に『この物体』をチョコだと仮定しよう。 
 
しかし、しかしだよワトソン君。 
 
君の推理には大きな『穴』があると言わざるを得ない。 
  
・・・・・・・・。 
  
なんで みどり いろを してるの かな? かな? 
  
「え、美味しいよ?」 
  
そんな可愛らしく、小首を傾げないで頂きたい。 
実にけしかる・・・・げふん、けしからん。 
  
「・・・・美味しいよ?」 
  
ふーん、そうかそうかおいしそうだなぁハハハ凄まないでねちょっと怖いから。 
仕方ない。困った顔で傍らの姐さんに助けを求め--、 
  
「あの、メイコさん?」 
  
「なぁに?」 
  
いやね、つかぬコトをお伺いしますが。 
その・・・・なんだ、アレだ。 
  
このウィスキーボンボンのお化けみたいなの、ナニ? 
  
「ああコレ?ほら、ウチのマスター、コレぐらいじゃないと効き目ないのよね」 
  
あー・・・・そう。 
  
そうですか!そうですね! 
  
そうでした!!把握しました!!! 
 
  
色々と待て。 
  
酒で作られた生物専用の食べ物を、ホイホイ一般人に与えないで頂きたい。 
ウホッ、いいアル中--いやマジで、ね?コロっと逝っちゃうから。ね? 
  
「というコトで、良かったらおひとつどうぞ」 
  
「おお!これはかたじけない」 
  
ちっとも良くねぇぇ!ってか、がくぽお前いつの間に戻ってk・・・・食べちゃらめえええ! 
  
「おおお、お館様が火を噴かれたっ!?」 
  
「だ、誰ぞ水っ!水を持てぇぇい!!」 
  
どたばた、どたばた。 
  
ああああああああ。もうね、何がなんだか。 
見てらんない。なにこの大惨事。 
  
「・・・・なあミク」 
  
「なぁに?マスター」 
  
いやその、なんだ。 
満点のニコニコ笑顔を向けられると、ちょっと困る。 
  
「やっぱり、食べなきゃ・・・・駄目?」 
  
こくこく。 
  
あ、そう・・・・ですか。そうよね。 
 
よしきた!オレも漢だ!浪人くずれなんぞにゃ負けてられん! 
漢にはァァァ!やらねばならぬ時がある!ですね!!わかりますッ!! 
  
ひょい、ぱくっ。 
  
・・・・。 
  
・・・・・・・・。 
  
・・・・・・・・・・・・! 
  
「・・・・■△◆※□!!◆△■※■○▲□●~ッ!?」 
  
  
・・・か、かゆ・・・うま・・・・。 
                                      END? 
  
  
  
  
  
追記 
 
その後『ロードローラーで市中引き回しの刑』に処された二人がオレと同じ末路を辿った 
のは、言うまでもないことである--合掌。 
                                      END 
 
 

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