「名探偵の掟」だの「めぞん一刻」だのいろいろ候補はあったが、丁度ノベルス落ちしたばかりのこの作品を取りあげる事にした。端正な本格で、きっちりと「読者への挑戦までついていて、しかもカバー折り返しには作者自ら「ミスリーディングへの仕掛がある」と明言している期待感あふれる構成。
いや、霧者巧よ何処に行く、と探偵学園シリーズを始めたときにはどうなるかと思ったが、基本的には数少ないロジックを楽しませてくれる作家の一人だ。だがしかし、そういう「本格」に対して感想を語るというのは非常に難しい。感想内に書かれた地の文は基本的に真実となってしまい、余計な推理要素を持ち込むことになってしまうのだ。だからといって内容に全く触れないというのも味気ない。
いったいどうしたものか、と思いつつ結論だけ書くと、ある一点の伏線以外は導けたのでテストだったらまあ及第点なのだが……実は作者の言う「ある一点」というミスリーディングがどれを指しているのか再読を経た今でも未だに見当がつかない。いや、候補は挙げられるのだが、絞り込めないと言った方が近いか。
肝心の真相についての感想であるが、パズルとして解くには妥当なラインだとは思うが、新味は感じないといったところか。かといってそれが「つまらない」というわけでもない。いわゆるミステリ読みならそこそこ満足できるかな、というところだろうが、あとは趣味の問題が絡む要素もあるなあ。ああ、この辺は微妙なので書きにくい。いや、何せ登場人物表すらページだけあって「自分で作れ」って構成だし。
しまりのない終わり方であるが、広義のシリーズ続編にあたる「名探偵はどこにいる」も楽しみだ、というところでお茶を濁そう。
うーん、3日遅れでこれか、とは思うけれど次はifさん、「い」でお願い。