「大誘拐」(天童真)が紹介できるなあ、とも考えたのですが、「傑作なのでとりあえず読め」しか浮かばなかったので却下していろいろ考えた。例えばささきさんに対抗して「ダブ(エ)ストン街道」(浅暮三文、再読する気にならず)とか「大熱血。」(火浦巧、好きだけど未来放浪ガルディーンってつけたらアウトだし古いしなー)とかいろいろ考えた結果、シリーズものの中間、とも言えるこの作品をあえて選択しました。
タイトルとしては独立しているけれど、「羊男の冒険」とははっきり連続していて、「1970年のピンボール」とも重なると言って良いのだけれど、今読み返したところ大変面白かったのと、これは「ダンス・ダンス・ダンス」から読んでも問題ないと判断したので採用に踏み切った次第であり、了承願いたい。
いや、やはり私にとっての文学ってのは村上春樹なんだなあ、というのが再読して思ったことであり、そして主人公である「僕」の年齢は、今の私は「羊をめぐる冒険」の頃と同であり、また「僕」の立場や考え方にあらためてシンパシィを感じてしまったのだ。
駄目な自分語りはやめて内容を軽く紹介するが、こういう文学にとってあらすじというのはあってないようなものであり、なかなか難しいとあらかじめ言い訳をしておきながら。
らくだならぬいるかホテルで羊男と出会って4年後、「僕」は再びいるかホテルに向かうこととなるが、ホテルはすっかり様変わりし、近代的な「ドルフィン・ホテル」となっていた。ただし、やはりそこはいずれとしてりっぱないるかホテルであり、羊男との再会、ホテルのフロントのお姉さん、五反田君、ユキなどといった数少ないキーワードをたよりにして、おぼつかないながらも主人公はステップを踏み続ける、とまあ、書いていて本当に訳わかんねえや、というあらすじになってしまったわけで、結局この文章って読んだ人にしか通じないよなあ、いやそれもどうだろう、という話であってなかなか難しい。
言えることは結局ほとんどないのだが、学生の頃読んだきり、といった人には是非28を過ぎたあたりで再読することを強くお勧めする次第であり、今新しく読んでも色あせていない世界がそこには間違いなく広がっていると言うことだ。
ダンスのファーストステップにもならない感想で恐縮であるが、結局「再読すると面白い!」としか言うことはないまま次はifさん、「す」でお願いします。