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    <title>逃げの一手 </title>
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    <description>逃げの一手 </description>

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    <title>虎の威</title>
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    <description>
      &amp;bold(){『虎の威を読む前に』}
　虎の威は、2ｃｈ（pinkbbs）に存在する『猫耳少女と召使の物語』というスレッドの、
多くの作者が共有するシェアワールドの作品として書かれた作品です。
　それなので、シェアワールドの設定を知らないと、一部意味が分からない部分があるかもしれません。
　もし、他の作者様の書かれた作品や、世界の細かい設定が知りたい方は、
[[こちら&gt;http://www28.atwiki.jp/schwarze-katze/]]からごらんになる事ができます（18禁：2ｃｈ系注意）。

|BGCOLOR(#BEBEBE):話数|BGCOLOR(#BEBEBE):タイトル|BGCOLOR(#BEBEBE):概要|
|[[1&gt;虎の威1]]|&amp;size(12px){落ちモノ拾い}|バラム×チヒロ（未遂）|
|[[2&gt;虎の威2]]|&amp;size(12px){ペットの扱い方}|ペットに家族がいたのを知ってますか？|
|[[3&gt;虎の威3]]|&amp;size(12px){珍獣取り扱い注意}|イシュ×チヒロ（百合）三馬鹿×チヒロ（未遂）|
|[[4&gt;虎の威4]]|&amp;size(12px){ペットは家族}|トラの強さとヒトの弱さ|
|[[5&gt;虎の威5]]|&amp;size(12px){仕事をください}|飼い犬でも保健所につれてかれます|
|[[6&gt;虎の威6]]|&amp;size(12px){お役に立つでしょ？}|千宏はもと経済学部|
|[[7&gt;虎の威7]]|&amp;size(12px){発情期来る}|ペットには構いすぎるとうざがられます|
|[[8&gt;虎の威8]]|&amp;size(12px){エクカフ}|アカブ×チヒロ（フェラのみ）|
|[[9&gt;虎の威9]]|&amp;size(12px){仲直り}|猫は縄張りの中にいれば安心です|
|[[10&gt;虎の威10]]|&amp;size(12px){幸せすぎる}|アカブ×チヒロ|
|[[11&gt;虎の威11]]|&amp;size(12px){箱庭の幸せ}|笑ってないとだめになる|
|[[11-2&gt;虎の威11－2]]|&amp;size(12px){温泉で熱燗}|ずっといっしょにいる|
|[[12&gt;虎の威12]]|&amp;size(12px){箱庭は幸せ}|バラム×チヒロ|
|[[13&gt;虎の威13]]|&amp;size(12px){あたしを食べて}|アカブ×チヒロ|
|[[14&gt;虎の威14]]|&amp;size(12px){エピローグ}|これが私の家族です|
|[[？&gt;虎の威語り]]|&amp;size(12px){あとがき}|読まなくてもこまらない|
|BGCOLOR(#BEBEBE):|BGCOLOR(#BEBEBE):続編|BGCOLOR(#BEBEBE):|
|[[1&gt;続・虎の威1]]|&amp;size(12px){捨てイヌ}|路地裏で雨に濡れた捨てイヌを拾いました|
|[[2&gt;続・虎の威2]]|&amp;size(12px){馬鹿みたい}|努力なんかしてないくせに|
|[[3&gt;続・虎の威3]]|&amp;size(12px){苦笑い}|不安になるのはあたりまえ|
|[[4&gt;続・虎の威4]]|&amp;size(12px){海鮮！　シャコの活けづくり}|シャコ×チヒロ|
|[[5&gt;続・虎の威5]]|&amp;size(12px){遺跡の街}|Gの付く黒い悪魔|
|[[6&gt;続・虎の威6]]|&amp;size(12px){友達の条件}|カエル×チヒロ|
|[[7&gt;続・虎の威7]]|&amp;size(12px){意地と誇り}|カブラとカアシュの中学生日記|
|[[8&gt;続・虎の威8]]|&amp;size(12px){雷雨}|千宏がテペウに連れて行かれる|
|[[9&gt;続・虎の威9]]|&amp;size(12px){テペウという男}|テペウは半女性恐怖症|
|[[10&gt;続・虎の威10]]|&amp;size(12px){お仕事}|テペウ×チヒロ|
|[[11&gt;続・虎の威11]]|&amp;size(12px){カアシュの脚}|ちょいグロ表現あり|
|[[12&gt;続・虎の威12]]|&amp;size(12px){ブラウカッツェ}|港町に到着|
|[[13&gt;続・虎の威13]]|&amp;size(12px){転機}|意地の終わり|
|[[14&gt;続・虎の威14]]|&amp;size(12px){無関係という関係}|がっつりがっぽり|
|[[15&gt;続・虎の威15]]|&amp;size(12px){仕事}|ブルック×千宏|

|BGCOLOR(#BEBEBE):タイトル|BGCOLOR(#BEBEBE):概要|
|[[愛の賛歌（笑）&gt;虎の威外伝1]]|馬鹿エロ祭り参加企画。ギャグエロ&amp;br()パルマ×千宏・アカブ×千宏・バラム×パルマ|
|[[美しくない兄弟愛&gt;虎の威外伝2]]|ホワイトデー。ホモギャグ&amp;br()アカブ×バラム|
|[[媚薬クッキー&gt;虎の威外伝3]]|ギャグエロ&amp;br()アカブ×千宏|    </description>
    <dc:date>2009-10-08T06:05:07+09:00</dc:date>
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    <item rdf:about="http://www7.atwiki.jp/nigenoitte/pages/188.html">
    <title>続・虎の威15</title>
    <link>http://www7.atwiki.jp/nigenoitte/pages/188.html</link>
    <description>
      
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;&lt;br /&gt;&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt; &lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　誰も見ていない。だが誰もが見ている。そういう状況だった。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　店にひしめくネコたちが、まばらに見える雑多な種族の男たちが、女たちが、ありとあらゆる“人間”たちが、ただヒトであるだけの少女を見詰めている。値踏みするような好奇の視線で。押さえられない情欲の表情で。舌なめずりをしながら目を輝かせている。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　ブルックは息を呑んでいた。薄絹一枚を纏って目の前に立つ少女の体に。白く柔らかな身体に痛々しい、赤紫色の痣の数に。加減を忘れた客の仕業なのだろう。細くくびれた足首が、今にも折れそうな手首が特に酷く、痣の上から痣を重ねたような色になっている。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「それが今から女を抱くトラの顔？」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　困ったように千宏が笑った。自分がどんな表情を浮かべているのか、ブルックには想像する事もできない。舞台の上にベッドが一つ。その上に座る少女。少女の首には粗末な首輪。眩暈がしそうだった。どうかしている。全てがどうかしている。&lt;br /&gt;
　先ほどのネコの女の声が、せりの方法を客たちに説明しているのが遠くに聞こえていた。だがこちらの話し声は、舞台の外には漏れないらしい。話し声は遮断されても、純粋な声だけならば通ると言う仕組みがどういうものかは分からないが、ともかく『嬌声』は聞こえても『会話』は聞き取れないという事実が大事だった。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「俺……」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　口元を覆う。ブルックは低く呻いた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「勃たねぇかも……」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　千宏が目を瞬き、自分の体を見下ろして顔を顰めた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「……貧相だって言いたいわけ？」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「ちげぇよ！　だってお前……だってよ……」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「なに……今更怖いの？」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　呆れたような声色で、しかし怒ったように千宏が睨む。違うと答えようとして、しかしブルックは口をつぐんだ。そうとも、自分は怯えているのだ。こんなにも弱々しいくせに、ネズミよりも脆弱なくせに、こんなふうに平然と身体を投げ出す存在にどう接していいのかわからない。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　そして、何よりも吐き気がするのだ。金で千宏を抱いた男たちに対して、おぞましさに近い感情を覚える。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「テペウは抱いてくれたよ」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　思わず、ブルックは千宏を見た。穏やかな表情で、甘い思い出を語るように千宏は目を閉じる。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「すごく優しく抱いてくれた。あたしの身体を見ても、傷を見ても、痣を見ても、何も言わずに抱いてくれた。だって見て分かるでしょう？　かすり傷だもの」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　傷一つ残らないよと千宏は笑う。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　ブルックは鼻の頭に皺を寄せ、ゆっくりと深い溜息を吐いた。随分と昔に、腕のない女や盲目の娼婦を抱いた事がある。どちらの女もはっきりと「気を使われる方がかえって辛い」と言っていたのを思い出し、ブルックは腹を括った。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　自分の役割は分かっている。トラに抱かれても平気なメスヒト。ならば自分でも壊さずに抱けるだろうと、このショーで多くの男に思わせるのが大切なのだ。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　ブルックはそっと伸ばし、傷をつけぬよう気をつけながら千宏の頬を爪でなぞる。その手を千宏が優しく掴み、ふかふかとした体毛を楽しむように強く頬を押し付けた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「トラの手って好きだな」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「そうか……？」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「うん。大きくてもふもふ。ちょっと肉球硬いけど」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　ブルックは千宏を見つけた路地裏を思い出す。千宏は、果たして覚えているだろうか。そんな事を思いながら、そっと柔らかな唇に触れてみる。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「覚えてるかな、ブルック」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　ふと、遠い昔を懐かしむように千宏が唇に笑みを刻んだ。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「ここにきて初めてキスしたのは、あんただった」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　ブルックは息を止めて目を見開く。瞬間、千宏がベッドから腰を浮かせて伸び上がり、ブルックの唇を軽く音を立ててついばんだ。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「あの時の続きをしよう。泣いて震えるあたしを優しくあやして慰めてよ。怖くない、怖くないっていいながら、甘やかすみたいにあたしを抱いて」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　ブルックの首に腕を絡め、千宏がぴたりと体を寄せる。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「やめろよな……」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　ブルックは苦い表情を浮かべ、出来る限りの優しさで細い体を抱き返した。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「自己嫌悪で萎えるだろうが」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　あの時ブルックは、何故千宏が泣くのか分からなかった。何故怯えているのかも理解できなかった。だが今ならば理解できる。この生き物はあまりにも、恐らくはトラの赤子よりも弱いのだ。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　だからこそ、今はぞっとさえする。こんなに大勢の目の前で抱かれる事に、トラの男に抱かれる事に、その結果顔も知らぬ誰かに抱かれる事に、ほんのわずかも怯えた様子を見せないこのヒトに。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　薄絹の上からくすぐるように爪を滑らせ、首筋に鼻面を埋めて臭いをかぐと、不思議な甘い香りのほか何の臭いもかぎ取れなかった。ずっとそばにいるはずなのに、ハンスの移り香さえしない。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「香水だよ。臭いを消してくれるんだって」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　はっとして顔を上げると、千宏のどこか呆れたような表情にぶつかってブルックは目を瞬く。まるで心を読まれているような気分だった。ヒトの中には魔法を扱えるようになる者もいるらしいが、ひょっとしたら千宏はそうなのではないかとさえ思う。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「他の男の臭いがついてると、気持ち悪いでしょ？」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　千宏が子供のように小首をかしげ、ブルックはもう溜息をつくことしか出来なかった。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「……恐れ入ったよ」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　そして、改めて自分の仕事を思い知る。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　処女のように優しく抱くのでは意味がない。千宏という商品を魅せるのだ。これが“欲しい”と思わせるように、性奴隷として、ヒトとして。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　薄絹の胸元を止めるリボンを解くと、柔らかな布は音も立てずに千宏の肌を滑り落ち、細い腕に絡まるようにしてベッドの上に広がった。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　いつもローブを着ているせいか、千宏の肌は濃いミルクのような、淡く甘そうな色合いをしている。舌を伸ばして鎖骨を舐めると、ざらりと音がして皮膚が少し赤みを帯びた。こういう時、トラのヤスリのような舌が少し嫌になる。唾液をたっぷりと乗せた舌で小ぶりな乳房を味わい、舌先を尖らせてその頂をつつくと、千宏の肩が小さく跳ねた。乳房に顔をうずめるようにして肌の柔らかさを堪能しながら、細い腰をそっと撫でる。&lt;br /&gt;
　丁度くびれの位置にも、まだ新しい痣があった。悪戯心に軽く押すと、千宏が小さく呻いて眉を寄せる。咎めるように睨み付けてくるのを平然とした笑顔で受け流すと、千宏は小さく舌打ちをして視線を逸らした。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　ただ、それだけの動作だ。けれどもちらと観客席に視線をやれば、客たちが驚いたように囁き合っているのが見える。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　ヒトである千宏がこんな状況にありがら、まるで人間のように振舞う事がいかに異常なことかを、この場にいる誰もが理解していた。そして、恐らく千宏自身が誰よりもそれを理解しているのだろう。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　本当に――。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「恐れ入るぜ……」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「そりゃどうも」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　憎まれ口を叩く千宏の腕を引き、ベッドの上に四つん這いにさせると、腕に絡みついた薄絹が柔らかな音を立てる。視界に揺れる尻尾がないのが妙な感じだった。きゅっと締まった尻の肉を揉みしだき、本来ならば尻尾の付け根にあたる部分を舌でなぞる。指の腹でそっと下腹部にふれると、じっとりと湿り気を帯びた茂みの奥からとろりと溢れてくる物があった。何度か指を前後に滑らせると、それはブルックの手の平に滑り落ちて糸を引く。指を浅く埋めて身を起こし、小さな体に圧し掛かるように千宏の耳に唇を寄せると、ブルックは低く囁いた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「焦らして欲しいか？　それともすぐに突っ込んで欲しいか？」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　答えようとしてか千宏がわずかに唇を開いた瞬間、ブルックは二本の指を深くまで突き入れた。&lt;br /&gt;
　浅く切るような息を吐き、千宏が声も無く背を反らす。肩を震わせてベッドのシーツをキツく掴み、千宏は悔しそうにブルックを睨み付けた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「博愛主義者が聞いて呆れる……！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「そうか？　これが俺の愛し方だ。おおむね好評だがな」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「ちょっと！　ちょ、あ……ぅあ……指、まって、つめ……が……ぁ」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　きしる程強く歯を食いしばり、千宏が髪を振り乱して喘ぐ。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「爪がどうした？　いてぇのか？」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　間違っても傷をつけぬようにと、爪の先は丸く削ってある。快楽にうるんだ瞳で悔しげに歯軋りする千宏の耳に舌をねじ込み、奥まで突き入れた指をゆるゆると動かすと、千宏はブルックの腕を掴んで逃れようとするように身悶えた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　少し、気分が乗ってきた。ブルックは千宏から指を引き抜くと、千宏を背中から抱え込むようにして胡坐を組んだ。そして、観客に向かって千宏の両足を大きく開かせて見せる。流石に驚いたように目を見開き、千宏が足を閉じようとしながら叫んだ。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「や、やめてよばか！　こんなことまでしなくていい！　こんなサービスいらないって！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「そう言うなよ、ほら客は喜んでるじゃねぇか」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　真っ赤になってきぃきぃ叫ぶ千宏に、観客席を指差して見せると、千宏が困り果てたように視線をさまよわせる。黙り込んで大人しくなった千宏をいい事に、ブルックはズボンの中から自身のものを引きずり出すと、愛液でとろとろに蕩けた千宏の秘部にこすり付けた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　ひゃあん、と子供のような声を出し、千宏がぞくぞくと肩を震わせる。逃げられぬように千宏の両膝裏に腕を回し、そのまま何度も上下に揺すり上げると、千宏が意味を成さない嬌声を上げながら身を捩る。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　それを食い入るように見詰めている観客たちに奇妙な優越感を覚えながら、ブルックは千宏の首筋に歯を立てた。決して噛み切ったりしないよう、だが押さえ切れない興奮をこめて顎に力を込める。その瞬間、千宏が切なげな悲鳴を上げて身体を震わせ、爪先を丸めで脚を大きく跳ねさせた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「……いっちまったか」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　ぐったりと脱力し、ブルックの胸に背を預ける千宏にブルックは低く囁く。先ほどまで噛まれていた首筋へ心配そうに伸ばされた千宏の腕を、ブルックは自身の首に絡らませるように引き上げた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「けどこっからが本番だよな。ええ？　そうだろう？」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「っ……ぁ、は……あぁ……」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　固く立ち上がった乳首を爪の先でなぶりながら、震える白い腿を尻尾でくすぐってやると、千宏がいやいやと首を振る。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　熱い吐息をこぼす小さな唇に半ば誘われるように舌を伸ばし、ブルックは千宏の口腔を犯しながら唾液を注ぎ込んだ。苦しげに喉を上下させる千宏の下腹部をそっとなで、達したばかりの秘部を指でなぞる。逃げるように跳ねる腰を抱きこんで指を浅く埋め、ねっとりとした液体を絡ませる柔肉を左右に広げると透明なしずくが滴り落ち、喉の奥で千宏が呻いた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　限界まで硬くなった己自身を、そっと沈めるようにあてがうと、千宏の指が強くブルックの毛皮を掴む。位置を調整しながらゆっくりと千宏の腰を引き寄せながら、ブルックは背にじっとりと冷や汗が滲むのを感じた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　狭くて締りがいいだとか、そういうのとは性質が違う。引き裂いてしまいそうな恐怖感が首をもたげた。口腔から舌を引き抜き表情を伺うと、千宏が潤んだ瞳で見つめ返してくる。その口角が、ふいについと引き上げられた。唇の動きだけで、しかしはっきりと千宏が言う。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　こわいの？　と。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　かっと、熱の塊が思考を焼くような感覚に捕らわれた。挑発されたのだ。裸の女に、ベッドの上で。それならば乗らなければ、答えなければトラじゃない。だが今腕の中にいる生き物はヒトで――。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　だけど千宏は、トラの男を挑発したらどうなるかなんてとっくの昔に知っているはすではないか。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　次の瞬間、ブルックは千宏の腰を強く掴み、遠慮も気遣いも無く千宏を最奥まで貫いていた。千宏が喉を反らせて悲鳴をあげ、ブルックの首に絡めた腕に力を込める。指がもがくように毛皮を掴んで引きむしり、深く皺の刻まれた眉間に脂汗が滲み出していた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「これでご満足いただけたか……？」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　気がつくと、ブルックの声もかすれていた。ヒトの小娘相手だというのに、こちらにも余裕がない。返事を促すように腰をゆすりあげると、千宏が弱々しく甘い声とともに涙をこぼした。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　そして言うのだ。きっとこの女は言うのだろう。小さな舌を震わせ、カタカタとなる歯の隙間からまるで搾り出すように。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「冗談……こんなんじゃ、ぜんっぜん、満足なんか……」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　千宏が最後まで口にする前に、ブルックは自身を千宏からギリギリまで引き抜き、そして乱暴とも言える強さで再び奥まで突き入れた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　ブルックの首に回されていた千宏の腕がするりと解け、逃れたくてもがくようにブルックの腕に添えられる。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「どうした。まだ全然か？　ほら、どうした答えろよ」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　千宏が歯を食いしばり、鋭くブルックを睨め付ける。まだこんな表情ができるのかと思うと、ひどく楽しかった。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「辛くなったら自分で言えよ……？　なあ、分かってだろ？　トラはその気になりゃあ一晩中だってやり続けてられるってよ。もう限界です、お願いやめて、壊れちゃうって言わなきゃあ、俺が飽きるまで終んねぇからな」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　低く囁き、ブルックは再び千宏をうつ伏せに押し倒す。奥を抉るように浅く腰を動かすたびに、千宏の口から嬌声とも悲鳴ともつかない声がこぼれた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「あ……あ、あぁ、あ……ひぅ……あっ……！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　千宏がシーツを手繰り寄せ、口に含んで声を堪える。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　突き上げるたびにぎゅうぎゅうと締め付けられ、搾り取られるような感覚に腰が震えた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　多くの女を抱いてきた。その女たちと比べてみても、千宏の体が特別勝っているとは思えない。だがこの楽しさを、この娯楽を提供し続けてくれると言うのならば――確かに、少しだけ“欲しかった”。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　赤く上気した身体。熱に浮かされたような頬。だと言うのに立ち上るメスの臭いは薄くて、まるで人形を抱いているような奇妙な背徳感に襲われる。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「チヒロ……」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　名前を呼ぶと小さな肩を震わせ、千宏はシーツに突っ伏していた顔を上げた。間違いなく生きているのだ。意思があり、頭だってブルックよりもいいのだろう。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　千宏が少しだけ唇を開いて舌を出した。体格差のせいでかなり苦しかったが、思い切り背を丸めて応えてやると、千宏が夢中になってブルックの舌を舐める。そのままゆるゆると腰を揺すると、千宏が髪を振り乱して悶えた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「あた、し……もぅ……も……あ、あぁ……！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　限界か。少し惜しいが仕方がなかった。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「じゃあもうちょっとだけ辛抱してくれな。すぐ終らせるからよ」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　唇を引き結び、控えめに千宏が頷く。その千宏の腰を両手で掴み、ブルックは激しく腰を振りたてた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「あぁああぁ！　うあ、あ、あ……や、やぁあ……！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　シーツに深く爪を立て、折れんばかりに背を反らせて千宏が叫ぶ。何度めの絶頂か分からない、だが今までで一番大きい快楽の波に千宏が飲まれるとほぼ同時に、ブルックも低く呻いて腰を深く突き出した。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　弾けるような解放感。直後に、波がするすると引いていくような虚脱感。ぐったりとなった千宏から萎えたものを引き抜くと、ごぼりと音を立てて大量の白濁が溢れ出した。自分の吐き出したものが透明な愛液と混ざり合い、千宏の内腿を伝い落ちて行く様にすぐさま勃起しそうになり、慌ててそこから視線をそらす。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　するすると上から幕が下りてくるのを横目で見て、ブルックは溜息を吐いた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「チヒロ、大丈夫か？」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　加減はしたつもりだが、出来なかったような気も少しする。声をかけると、思い切り不機嫌そうな千宏に睨み付けられてブルックは仰け反った。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「……今まで抱かれたトラの中で一番乱暴だった」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「んな……！　おま、そんな……乱暴になんかしてねぇだろ！　今まで一体どんなトラに抱かれてきたんだよ！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「アカブ。テペウ。その他もろもろ」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　黙るしかないブルックである。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「サディスト！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　鋭く言って、千宏はブルックに背を向ける。謝るべきだろうか、だが謝るのもなんだかシャクだと、ブルックが取るべき態度に迷っていると、千宏がちらと肩で大きく息を吐いた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「けど、おかげでいいショーになったよ……たぶんだけどさ」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「あ……あぁ……」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「ありがとう……あんたに頼んでよかったよ」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　そう言って、ブルックに背を向けたまま立ち上がった千宏に、ハンスが毛布をもって駆け寄ってきた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　そのまま千宏はハンスの胸に頭を押し付け、あれやこれやと注文をつけはじめる。それを黙って復唱するハンスの姿は、護衛と言うよりもまるで従者のようだった。だが不思議と、そんな二人の姿がしっくりくる。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　どこかぼんやりとした気分で二人の姿を眺めていると、はたとハンスと目があった。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「仕事は終わりだ。そこでさっきのネコが待ってる。報酬を受け取れるはずだ」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「あ……あぁ」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　行け、と言外に言われているのを察して立ち上がり、ブルックはふと千宏を見た。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「……じゃあね。ブルック」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　その言葉が、すとんと胸に落ちてくる。随分とあっさりした決別の言葉だった。だが、あまり悪い気分はしない。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　ブルックは笑って、ハンスが嫌な顔をするのも無視して千宏の頭をくしゃりと撫でた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「またな。千宏」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　千宏は顔を上げなかった。&lt;br /&gt;
　舞台を後にして報酬を受け取り、ついでにネコの甘い誘いを断って夜の歓楽街に戻ってくる。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　カブラの意地。カアシュの脚。ハンスの立場。それらを何一つ、どうすることも出来なかった自分。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　それを千宏は。あの、ヒトは――。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　人混みをぬってしばらく歩き、ブルックはふと立ち止まると同時に大声を上げて笑い出していた。&lt;/div&gt;
&lt;a href=&quot;http://www7.atwiki.jp/nigenoitte/pages/187.html&quot;&gt; 前へ&lt;/a&gt;&lt;/div&gt;
&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt; &lt;/div&gt;
    </description>
    <dc:date>2009-10-08T06:03:49+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www7.atwiki.jp/nigenoitte/pages/1.html">
    <title>トップページ</title>
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ちょっと一言
『次こそえろだ』

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|BGCOLOR(#E8E8E8):&amp;size(14px){【更新履歴】&amp;br()10月8日――ＳＳ置き場＞[[虎の威]]＞[[十五話&gt;続・虎の威15]]&amp;br()9月16日――ＳＳ置き場＞[[虎の威]]＞[[十四話&gt;続・虎の威14]]&amp;br()8月21日――ＳＳ置き場＞[[虎の威]]＞[[十三話&gt;続・虎の威13]]&amp;br()6月24日――ＳＳ置き場＞[[生贄の森]]＞[[一章の2&gt;生贄の森3]]&amp;br()6月16日――ＳＳ置き場＞[[生贄の森]]＞[[一章の1&gt;生贄の森2]]&amp;br()6月16日――ＳＳ置き場＞[[生贄の森]]＞[[序章&gt;生贄の森1]]&amp;br()5月31日――ＳＳ置き場＞[[傭兵パン屋物]]＞[[お前の弟だ&gt;傭兵パン屋物16]]&amp;br()5月14日――[[ＳＳ置き場]]に歴代拍手をまとめました&amp;br()5月14日――SS置き場＞[[虎の威]]＞[[十二話&gt;続・虎の威12]]&amp;br()4月10日――SS置き場＞[[虎の威]]＞[[十話&gt;続・虎の威10]]&amp;br()4月10日――SS置き場＞[[虎の威]]＞[[十一話&gt;続・虎の威11]]&amp;br()2月16日――SS置き場＞[[傭兵パン屋物]]＞[[ニーナのバレンタイン&gt;看護師ニーナのバレンタイン]]&amp;br()1月19日――拍手一個入れ替え&amp;br()1月19日――SS置き場＞[[虎の威]]＞[[七話&gt;続・虎の威7]]&amp;br()1月19日――SS置き場＞[[虎の威]]＞[[八話&gt;続・虎の威8]]&amp;br()1月19日――SS置き場＞[[虎の威]]＞[[九話&gt;続・虎の威9]]&amp;br()(07)１０月１9日――サイト設立}|



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.    </description>
    <dc:date>2009-10-04T21:07:02+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www7.atwiki.jp/nigenoitte/pages/187.html">
    <title>続・虎の威14</title>
    <link>http://www7.atwiki.jp/nigenoitte/pages/187.html</link>
    <description>
      
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;&lt;br /&gt;&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt; &lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　港街の夜が騒々しいのは、トラ国もネコ国も変わらない。どちらの種族にも夜型の人間が多く、基本的な性格が享楽的で奔放なのだ。明日には出港を控えた男たちに、大人しくしていろと言う方が無理な相談である。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　だがそんなネコ国の夜の街が、ブルックはあまり好きではなかった。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　闇にひしめく魔洸の光より火の揺らめきの方が落ち着くし、誰もがみなよそよそしく、ひどく冷めた感じが気に食わない。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　何よりネコは自分の快楽にばかり貪欲で、抱いていてもひどく退屈だった。ならば羞恥に頬を染めて縮こまるネズミの方が可愛いし、最後まで快楽に抗う獅子の方が燃え上がる。さすがにテペウより女を抱いたと豪語することはできないが、少なくともカブラやカアシュよりは多くの女を抱いているつもりだった。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　だがネコの身勝手な貪欲さも、時には魅力に感じる事がある。ひたすらに、何もかもが面倒に感じる時だ。トラとしては感情が希薄なブルックにとって、何もせずともこちらの身体を玩具にして楽しんでくれるネコの女はいろいろな意味で楽だった。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　だが今は、恐らくそれさえも面倒くさい。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　濃い潮の香りに様々な臭いが混ざり合って無臭となり、意味のある言葉が絡み合って全て雑音に成り果てる。夜の街の只中で、ブルックはようやく足を止めて周囲を見た。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;text-indent:11.75pt;&quot;&gt;
宿から随分と歩いてきたが、苛立ちは未だにおさまらない。ほぼ無意識に歓楽街へと歩いてきたが、そもそも女を抱くような気分ではなかった。どうしたいかは分かっている。だが、どうすればいいのかが分からない。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　カアシュが下した決断を撤回させる力を、ブルックは持っていないのだ。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「クソ……」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　その力を、なにより千宏が持っているという事実が。それがひどく忌々しく、忌々しく思う自分に腹が立った。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　どうして千宏にできることが。どうしてヒトにできることが。どうしてトラである自分にはできないのだ。自分がヒトに劣っているという事実が、どうしてこんなにも――。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　千宏の申し出を断ったカアシュを、ブルックは責められなかった。馬鹿な奴だと罵る事ができなかった。種族を差別しないと自負してきたのに、博愛主義を気取ってきたというのに、自分は結局“こう”なのだ。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　カアシュの脚は戻らない。カブラはカアシュの代わりを探す事はしないだろうし、自分だってそれを受け入れられはしないだろう。二人でハンターを続ける事は、きっとカブラが望まない。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　もう、結末は見えていた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　自分にはどうすることもできない。だからこそなのだろうか。ひどく理不尽な悪意が芽生えるのを、ブルックは押さえられなかった。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　千宏さえいなければ――あの日、あの路地裏で千宏を見つけさえしなければ。千宏が狩についてきさえしなければ、ハンスを護衛に雇ったりしなければ。カブラとカアシュが仲たがいする事もなく、こんな事にもならなかったはずなのに。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　ブルックは突発的な衝動に逆らえず、拳を握り締めると手近な壁を殴りつけた。積み重ねられた古い煉瓦はひび割れて一部が崩れ、破片がぱらぱらと地面に落ちる。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　酒が必要だった。喉と胃を焼け爛れさせるような強い酒を浴びる程に飲まなければ、煮えたぎる衝動は収まらない。適当な酒場を探して周囲に視線を走らせ、ブルックは見覚えのある後姿を見つけて瞠目した。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　灰色がかった薄青の毛並みに、深く濁った沼色の瞳。小柄なネコや雑多な種族でごった返す歓楽街に、恐ろしく似合わないイヌの男。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「ハンス……」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　ならば、近くに千宏も。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「ハンス！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　怒鳴るように名を呼んで、ブルックは弾かれたように駆け出した。イヌの聴覚と嗅覚でブルックの存在に気付かないわけがないのに、ハンスは振り向こうとすらしない。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　なぎ倒すように人々をかきわけ、ブルックはハンスの肩を掴んで乱暴に振り向かせた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「チヒロはどこだ」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　脅すように唸るブルックに、ハンスは眠そうに目を瞬く。驚いた様子も怯えた様子も見せず、ハンスは小さく溜息を吐いた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「……買うのか？」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　投げかけられた言葉は静かだった。毒気を抜かれて面食らい、ブルックは言葉を詰める。何を、とブルックが問う前に、ハンスは胸倉を掴んでいたブルックの手を振り払い静かに襟を正した。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「そうじゃないなら、今は仕事中だ。個人的に会いたいなら日を置いてからにしてくれ。チヒロは今“忙しい”んだ」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「なん……」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　ハンスはくるりときびすを返し、人混みに紛れてしまおうとする。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　千宏がこのネコの国でまで身体を売り続けていると、ハンスは今そう言ったのだろうか。だがそれがどれ程危険なことか、この世界の住人であるハンスが理解していないわけがない。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「どういうことだ……」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　思わず零したブルックだが、ハンスの背中はもう遠い。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「おい待て、ハンス！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;text-indent:11.75pt;&quot;&gt;
慌てて人混みをかきわけ追いかけると、ハンスがあからさまに面倒そうに舌打ちした。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「仕事の邪魔だ。ついてくるな」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「仕事っておまえ……ここはトラの国とは違うんだぞ！！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「だからこそ、トラ国とは違って効率よく稼げる」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　きっぱりと言い放ち、ハンスは感情を殺した兵士の瞳でおざなりにブルックを見返した。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「それがチヒロの考え方だ。トラは一人の女にじっくりと時間をかけて取り組みたがるが、ネコは移り気で“楽しければなんでもいい”。だからチヒロはやつらに娯楽を提供する。この国には、この町には、“そういう場所”がはいて捨てるほど存在する」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　すぅと、ブルックは背筋が冷えていく感覚を覚えた。まさか、と呟いたつもりが、ただかすれた息だけが雑踏にかき消される。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　先ほどとは違う理由で、ブルックは同じ質問を繰り返した。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「チヒロはどこだ……」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「関係ないだろう」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「ハンス！！　てめぇ――」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　かっとなってハンスを殴りつけようとした瞬間、ブルックは突如手首に激痛を覚えて低く呻いた。だが、ハンスは指先一つ動かしていない。何事かと振り上げた右手を見ると、その手首にガッチリと食らいついている小さな生き物が目に入る。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「……べ、ベアトラ……？」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　黄色の黒の毛皮も鮮やかな、一つ目の害獣である。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　それがブルックの腕に食いついて、あろう事がギリギリと歯をたてているのである。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「……歯なんかあったのか。こいつ」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　感心したようにハンスが呟く。と同時に食いつかれた腕からだらだらと血が滴り始め、ブルックは慌てて食欲の権化を引き剥がしにかかった。だがベアトラはどんなに強く掴んでも、あらん限りの力で引っ張ってもぬいぐるみのようにぐにぐにと伸びるばかりで全くはがれず、そのくせ噛み付く顎の力だけは尋常じゃなく強い。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「追い払うのも面倒だから連れて歩いてたが……役にたつものだな。暴漢対策に」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「アホなこと言ってねぇでこいつを引っぺがせ！　おいまじで腕食いちぎる気だぞこいついてぇいてぇいてぇ！　てめぇのペットなんだろうが、なんとかしろ！！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「いいぞもっとやれ」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「そういうスタンスか……いいだろうこうなりゃ俺の腕ごとてめぇの命も道連れに……！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　おびただしい量の血にまみれた腕で再度襟首を引っつかむと、さすがに命の危機を察したのかハンスがベアトラの頭をぽんぽんと軽く叩く。するとベアトラはあっさりとブルックの腕を開放し、血まみれの口元を長い舌でべろりと拭うとハンスの肩に飛び移った。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「トラは冗談が通じないな」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「てめぇはコレを冗談ですますのか？　え？　イヌってのはそんなに物事に無頓着な生き物だったか！？」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　言いながら、ブルックは見事に歯型のついた腕をハンスの眼前に突きつける。とは言うものの、出血はすでに止まりつつあり、１時間もすれば肉が盛り上がってくるだろう。トラとはそういう生き物だ。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「……トラか」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　ふと、なにか思いついたようにハンスが呟き、相変わらず眠そうな表情でブルックの頭から爪先までをざっと眺める。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「どうだろうな……試してみてもまあ、いいか……」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「あ？」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　怪訝そうに聞き返したブルックを無視し、ハンスは血で汚れてしまった自身の服を見る。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「どうせチヒロには怒鳴られるだろうしな……」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　溜息を吐き、再びきびすを返したハンスをこりもせず呼び止めようとしたブルックに、今度はハンスが先に振り向いた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「仕事を手伝うなら、連れて行ってやる」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　そう言って、ハンスは歓楽街の奥へと顎をしゃくる。ブルックは間抜けに口をあけたまま言葉を失い、さっさと歩いていってしまうハンスを舌打ちと共に追いかけた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt; &lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;＊＊＊&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt; &lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　船の停泊中、一夜の快楽を求めて男達が群がる歓楽街は、多くの種族でごった返し、その嗜好は多岐にわたる。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　ヒトを抱けることを目玉とする店もいくつかあり、そんなうたい文句を見るたびにブルックは腹の底が冷えるような落ち着かない気分を味わっていた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「その店だ。入ってろ」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「なに？」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　突然立ち止まったハンスの背にぶつかりそうになりながら、ブルックはハンスの指差す方にある店を見た。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　赤と紫の入り混じった魔洸の光が毒々しい、それなりの規模を持った店である。売春宿と言うよりは、ショーをメインにしている店のようだが詳しい事はわからない。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「俺はチヒロを連れてくる」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「まてよおい！　いい加減に説明をしろ！　仕事を手伝うって一体……」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「求める結果を得たいなら、沈黙を保ち待て」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　鋭く言って、ハンスはとっとと行けとばかりに店を指差して歩き去る。こうなってしまっては今更引き返すこともできず、ブルックは小さく罵声を吐き捨てて店へと足を踏み入れた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　扉をあけると途端に大音量の音楽が鼓膜を叩き、思わずブルックは顔を顰めた。ほぼ暗闇に近い明るさの店内に、色とりどりの照明がチカチカとまたたいている。どうにも落ち着かない雰囲気にふと近くの壁に貼り付けられた壁紙を見ると、そこには『ヒト世界に実在するクラブの雰囲気をお楽しみください』という旨が綴られていた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「どうかしてる……」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;text-indent:11.75pt;&quot;&gt;
だが、ブルックの感想とは裏腹に客入りはすこぶるよかった。広々とした店内を歩き回る客は種族も性別も様々だが、場末の安酒場に集まるような者とは違う事だけは一目で分かる。それなりに金を持っていて、退屈を持て余し、金の使い道を探して毎晩遊び歩く。そんな裕福なネコ達が集っているのだろう。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;text-indent:11.75pt;&quot;&gt;
地下に向かって床を掘り下げてあるらしく、ブルックは一階から入店したのに下の階を見下ろす形で立っていた。下の階の右手にはカウンターがあり、正面には円が三つせり出した形のステージがある。その三つのステージ上でそれぞれ全裸に近い女たちが妖艶なダンスを披露しており、ブルックは我知らず口笛を吹いた。悪くないなと思ってしまう単純さが、やはりブルックもトラである。よくよく見れば酒を運ぶ女たちもみな薄絹一枚の格好で、飲み物を運ぶついでに尻や胸を触らせては客から金銭を巻き上げているようだった。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「ヒト世界の店はみんなこういうもんなのか」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　貧弱なヒトのイメージとは随分かけ離れた店の雰囲気に奇妙な感心を覚え、ブルックは手すりに寄りかかってショーを眺める。しかしなるほど、この店でならばそれ程危険もなく、効率的に上客を見つける事ができるだろう。だがネコはずる賢く、なにより強力な魔法がある。ハンス一人では少々不安があるため、保険としてトラである自分を護衛に引き入れたのだろうと、ブルックは結論付けた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　そこでようやく、ブルックは自分が千宏に会おうとした理由を思い出した。いやそもそも理由などという大層な物はなく、ただ悪意をぶちまけようとしていただけである。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　ブルックは尻尾でぱたぱたと足を叩き、溜息と共にうな垂れた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「みっともねぇことするとこだった……」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　血が乾いて塊はじめた腕を眺めて、ブルックは目頭を覆う。するところだったどころか、すでにみっともない事をやらかしたのである。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　無自覚に、恐ろしく現状に執着していた。あの二人の存在に依存していた。その気になればいつでも一人に戻れると思っていたのに、いざ奪われそうになるとその原因を無理やり外部に見つけだし、腹いせにぶちのめそうとやっきになっていたのだ。悪いのはなによりも、自分達自身に他ならないと言うのに。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　一人で自己嫌悪に陥っていると、すぐ後ろで店の扉が開いた。ブルックの後からも客は続々とやって来ている。今度もその一人だろうと思って振り向きもしないでいると、聞きなれた声を耳が拾ってブルックは顔を上げた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「うわぁ。ほんっとーにブルックだ」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　驚いたというか、呆れたと言うか、そんな口調で少女の声が溜息を吐く。ふりむくと、フードを目深に被った千宏がハンスの傍らに立っていた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「……久々」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　気まずさもなにもなく、当然のように千宏が笑う。ブルックはそれに「おう」と短く返しただけで、ハンスの方へと視線を投げた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「……で？」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　仕事の内容はすでに察しがついているが、確認のつもりでハンスを促す。するとハンスはふいとブルックから視線を外し、階下へと伸びる階段を見た。誰かが上がってくる足音を聞きつけ、ブルックもそちらへと振り返る。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　きちんとした身なりの、場の雰囲気に似つかわしくない物静かなネコの女性が立っていた。優しげな唇におっとりと笑みをたたえ、ハンスに軽く会釈する。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「準備は整っています。そちらの女性が……？」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　ハンスが無言で頷くと、千宏は静かにフードを脱いだ。すでにつけ耳をつけていない。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「それと、“口きり”はこいつでいいか」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　ハンスがブルックを指差し、ネコの女は笑みを湛えたままブルックを見る。あら、と口元をほころばせ、女は楽しげにハンスを見た。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「とても素敵ですわ。私の方がうずうずしちゃう」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「おい、何の話だ？」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　ブルックになんの説明もないまま勝手に安堵しているハンスに、さすがに語調を強めて訊ねると、千宏が片眉を吊り上げた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「説明してないわけ？」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「チヒロに会わせる代わりに仕事を手伝うって約束で連れてきたんだ。どうせやることになるなら、事前に内容を説明しても二度手間だろう」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「そりゃ、効率主義だこって……」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「褒めたのか？」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「呆れたの」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　ションボリと、ハンスが尻尾と耳を伏せる。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　千宏は一つ溜息を吐くと、ブルックを見上げてもう一度溜息を吐いた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「あたし、ショーに出るんだ」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「……なに？」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「あそこの舞台でね、犯されるの。そういうショー」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　千宏の言葉が右から左に抜けて行った。千宏が余りにも当然のように語るので、トラ女がショーに出るのだと自慢した時と同じように「そいつはすげぇ」と条件反射的に言いかけた程である。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「でね、オークション形式で、あたしを抱きたいお客を先着で五名様募集するの。そのショーでの相手役を、ブルックにやってもらうって、そういう話」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「もちろん、賃金はお支払いします」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　あくまで優しげに微笑みながら、ネコの女がブルックの胸板に指を這わす。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;text-indent:11.75pt;&quot;&gt;
笑い飛ばすべきだろうか、それとも激怒するべき場面なのだろうか。ブルックは固まったまま何も言う事ができなかった。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　千宏を抱くという時点で、現状では少々どころか恐ろしい抵抗を覚える。そのうえこれほど大勢の人前で、ショーとして千宏を抱き、その結果千宏は他の客に買われていく。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「そんなこと……」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「できないとは言わせないぞ。約束だ」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　ハンスが鋭い視線でブルックを睨む。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「まあ別にブルックが断ったところで、代わりを連れてくればいいんだけどね」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　千宏が肩をすくめると、ネコが残念そうな声を出す。ブルックは頭を抱えてよろめいた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「なんで……そんなこと……」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「すごく稼げるんだよね。目玉のショーで人も呼べるから、お給料一杯くれるって言うし」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「いい加減にしろ！　なんだってそんなに金がいる。てめぇはヒトだろう。アカブんとこで大人しくしてりゃ、金なんて一セパタだって必要なかったはずだ！！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「関係ないでしょ」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　静かな表情できっぱりと切り捨てられ、ブルックは声と共に息を飲み込む。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「簡単に考えていいよブルック。あたしはヒトで、あんたはトラだ。抱いてみたくないの？　男になれたヒトメス体」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　励ますように笑う千宏の背後に、店の外へ続く扉が見える。あの扉から出るのは簡単だ。だが、欲望とは違う何かがブルックの足をこの場所に縫い付ける。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「……俺でいいのか」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　ただそれだけ訊ねると、千宏は少しだけ困ったような表情で首をかしげた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「実はね、あんまよくない」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　そして小さく笑い出す。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「でもま、安心だよね。あんたなら」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　ブルックは天井を見上げ、ついでハンスに深く頷いた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「受けよう。約束だ」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「では、控え室にご案内しますわ」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　ネコの女が嬉しそうに手を叩き、即座にブルックの腕に絡み付いて歩くように促した。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　この言葉は、きっと言うべきではないのだろう。自分は気づいていないふりを押し通さなければならない。だがそれでも、ブルックには言わずにはいられない言葉があった。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　恐らく今しか言うチャンスは無いだろうから、少し不自然かもしれないが――。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「チヒロ」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「うん？」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「……ありがとう」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　背後で千宏が立ち止まるのを意識しながら、ブルックは振り返らず、ネコの女に連れられるまま階段を降りた。&lt;/div&gt;
&lt;a href=&quot;http://www7.atwiki.jp/nigenoitte/pages/186.html&quot;&gt; 前へ&lt;/a&gt;&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt; &lt;/div&gt;
    </description>
    <dc:date>2009-09-16T01:51:02+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www7.atwiki.jp/nigenoitte/pages/186.html">
    <title>続・虎の威13</title>
    <link>http://www7.atwiki.jp/nigenoitte/pages/186.html</link>
    <description>
      
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt; &lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　店を飛び出して闇雲に人混みを駈け、気がつくと千宏は人気のない倉庫街に戻ってきていた。息が苦しかった。足を止めて呼吸を整え、ふと顔を上げればはるか彼方に小さくニャトリの工房が見える。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　人混みをすり抜けて走ることに関してはイヌよりヒトの方が優れているようで、ハンスはまだ追いついてきていなかった。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「……くそ」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　小さく罵り声を上げ、千宏は作り物の虎耳を引き剥がす。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「こんなもの……！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　つけていたって、トラになれるわけではない。ただトラの姿を借りて、ヒトである自分を、弱者である自分を、周囲の目から誤魔化しているだけだ。その行為自体がそもそも千宏の目指すトラの信念からかけ離れているというのに、どうしてトラの誇りなどと口にする事が出来るだろう。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　見ないふりをしてきた矛盾が、今になって千宏の背にへばりつく。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　ひどく惨めだった。ヒトである自分が。なにより、ヒトであることを誇れない自分自身が。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「チヒロ！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　ようやく追いついてきたハンスが、千宏の肩を掴んで乱暴に引き寄せた。かなり加減を忘れたその力に、千宏は小さく悲鳴を上げる。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「ちょっと――！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「何を考えてるんだ一体！！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　痛いじゃない、と怒鳴ろうとした千宏より余程鋭くハンスが怒鳴った。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　緑色に濁った沼のような、そんな重たい印象を与える瞳に、あせりとも苛立ちともつかない感情が揺れている。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　思わず黙った千宏の肩を強く掴み、ハンスは震えた声を出す。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「あんたは……自分が大事じゃないのか？　ほんの少しも、自分をかわいいとは思わないのか。人目がある場所であんな事を叫んだら、どうなるかくらい分かってるだろう！？　自分がヒトだと宣伝するようなまねをして、ここは危険な国だとあれ程念を押したはずだ！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　先ほどの店での事だ。千宏がカアシュに向かって怒鳴った言葉に、ハンスは腹を立てているらしい。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「その上……その直後に護衛の俺から離れるなんて……！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　正体の見えない、だが我慢できない苛立ちが喉を這い上がってくる。千宏は唇をゆがめて笑った。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「……だから何？　そんなのあたしの勝手じゃない」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　ハンスがわずかに目を見開く。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「……なに？」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「あたしがどこで、どんな危険なことをやらかそうと、それを守るのがあんたの仕事でしょ？　それともなに？　自分が楽をしたいからって、守りにくくなるようなことをするなとでも言い出すわけ」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「ち……違う……！　俺はただ……！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「ただ、あたしのことを心配してるとでも言うの？　やめてよね。そんなの、守りきる自信のない弱虫の言い訳じゃない！　それとも報酬に見合わない危険をおかすのは御免だって言いたいの？　それとも、ヒトなんかを守るためにそこまで必死になりたくない？」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　わずかに力の緩んだハンスの手を、千宏は乱暴に振り払った。ハンスは狼狽えたような表情で、千宏に延ばしかけた手を下ろす。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　そのハンスを、千宏は鼻先で嗤った。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「大丈夫。ちゃんとわかってるよ。守ってもらいたいなら、言うとおりにしろって言うんでしょ？　当然だよね。あんたがいなきゃ、あたしは一人でまともに外も歩けない。お客だって取れないから稼ぐことだってできない。おまけに新しい護衛だって雇えるかどうかわからないもの。面倒をかけさせるなって、そういうことを言いたいんでしょ？　身の程をわきまえろってさ！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　楽に稼げる仕事だから、気まぐれで“雇われてやっている”。それが現在のハンスの立場だ。カブラ達の庇護がなくなり、テペウの保護下にもなくなった今、ハンスが少しその気になれば千宏は簡単に奴隷に落ち、誰にも救ってはもらえない。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　雇い主と、その護衛。ひどくうすっぺらく、滑稽な関係だった。二人の間に確たる絆など何一つ存在しない。賃金さえ、まともに千宏から受け取るよりも、千宏を売り払った方が余程効率よく大金を得られるだろう。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　ならば千宏はせいぜいハンスに媚を売り、捨てられぬように、売られぬように、殺されぬように振舞わなければならない。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　それこそ、まるでペットか奴隷のように――。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「――あんたは」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　ぐっと、ハンスが腰に下げた剣の柄を握りこみ、低く押し殺した声を出す。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「俺を信じたんじゃないのか……？」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　責めるような、縋るような視線で射竦められ、千宏はわずかにたじろいだ。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「俺が護衛をやり遂げると。ちゃんとあんたに従うと。そう、信じてくれたんじゃなかったのか！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　信頼と愛情さえなくさなければ、イヌは絶対に裏切らないと聞いていた。だから千宏はあの日、あの雨の中、千宏はハンスを拾ったのだ。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　だがそれも、確信があってのことではない。あの時はカブラ達がいたからこそ、無茶とも言えることが出来たのだ。それは、信頼とはだいぶ違う。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「なんだ……今更。俺みたいな犯罪者を側に置いて、あいつらより俺を選んで、あんたに信頼されてると思い込ませておいて、今更なんだ……！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「なんだ……って……」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「俺はあんたをいつだって売り飛ばせる。あんたを殺すことも簡単だし、あんたに首輪をつけて奴隷することだって出来る。そんなのははじめから分かってただろう！　最初からそうだった！　それでもあんたは俺を信じた。俺に自分がヒトだと明かし、無防備な姿を見せて、あんたが俺を信じてると俺に思い込ませた！　だから俺は――だから、あんたを守ると決めたのに……！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　こんどは千宏が目を見開き、言葉を失うばんだった。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　呆然としている千宏から視線を外し、ハンスは静かに地面を睨む。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「……俺は弱い」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　ぽつりと言って、ハンスは静かに目頭を覆う。広い肩が震えていた。まるで怯えるように耳を伏せ、尻尾を脚に巻きつけている。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「命令に従うことだけをひたすら叩き込まれた最下級兵だ。魔法だってろくに使えないし、剣で切りかかっても素手のトラにあっさり負けた。俺には、どんな状況でもあんたを守り通せるような実力がないんだ……」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　だから、とハンスはますます声を小さくする。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「俺があんたを守るためには、あんたの行動を制限しないとだめなんだ。脅威を排除できないから、あんたを隠すしかできない……それでも！　あんたを守るためなら俺は、なんだってすると決めたのに……！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　それなのに、とハンスは奥歯を噛み締める。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「主のように振舞って、俺の主に“成って”おいて、今更奴隷の言葉を吐くのか。絶対的な弱者のくせに、それでも真っ直ぐに前を見るあんただから、俺はついていくと決めたのに。ヒトのくせに、たかが性奴隷のくせに、それでも誇りを持ち続けるあんただから、おれはあんたの信頼を俺の誇りに出来たのに！！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　千宏はぽかんと口を開き、険しい表情のハンスを眺める。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　千宏は思い出していた。あれは、確か初めて客を取った夜だっただろうか。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「でもハンス……確かあんた、『雇われてやってるんだ』って……」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　そう、はっきりと断言したのではなかったか。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　ハンスが間の抜けた表情を浮かべ、慌てたように千宏から視線を反らす。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「あ、あの時と今とでは……！　じょ、状況が違う……だろう……」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「あー……個人的なお楽しみの最中だったもんね……」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「そういう話をしてるんじゃない！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　ハンスが実に犬らしく吼えた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「どうして分からないんだ……！　だから、俺は……だから……くそっ！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　苛立たしげに罵って、ハンスはガシガシと耳の後ろを掻き毟る。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　ふっと、肩から力が抜けて、千宏は思わず微笑んでいた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「……あほくさ……」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　言って、千宏は再び偽物のトラ耳を頭につける。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　少し、目標がぶれてしまっていたようだ。誰が認めてくれないだとか、理想の自分になれないだとか――そんな事は二の次だ。千宏には唯一、決して揺らがない目的が存在する。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　そもそも、現状で認めてもらえないのは当然ではないか。自分はまだ何一つ成していない。何一つ示していない。その状況で自分を認めてくれないからといじけてダダをこねるなど、まったく馬鹿馬鹿しかった。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　なによりこんなにも身近に、自分をただ『ヒト』として――奴隷ではなく、絶対的弱者でもなく、長所も短所も存在する、一つの種族として見てくれる者いるというのに。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「ねえハンス」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「……なんだ」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「あたしあんたを騙してた」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　ハンスが鼻の頭に皺を寄せ、緊張した様子で耳を立てる。その、ふかふかとした毛並みに手を伸ばし、千宏はわしわしとハンスの耳の後ろをかいた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「あたし、あんたの事なんかぜーんぜん信頼してなかった」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「な……！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「でも、今は凄く信頼してる」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　背伸びをして、ハンスの首を抱き寄せる。するとハンスは明らかに全身を緊張させ、半ば反射的に尻尾を掴んだ。尻尾を振ってしまうのが、ハンスとしては我慢できないらしい。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　こうして、ハンスに救われたのは二度目だろうか。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　千宏は護衛を求めていた。そしてハンスは信頼と主を求めていた。利害は完全に一致している。ならばハンスは、決して千宏を裏切らない。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「あんたがいてよかった。ありがとう」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　ハンスの手がおろおろと空中をさまよい、そのあげくぽんぽんと千宏の頭を叩く。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　ようやく、少し頭がすっきりしてきた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　カアシュがトラの誇りを重んじ、千宏の助力を断ると言うならば、それでいい。何も無理に好意を押し付けようとは思わない。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　だが千宏にだって誇りがある。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「行こうハンス――日が暮れるまでに、ちょっとやる事ができた」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　笑って、千宏はハンスから体を離して踵を返した。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt; &lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;＊＊&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt; &lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「よう、戻ったのか」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　宿に戻ったカアシュを出迎えたのは、ソファでつまらなそうに本を捲っているブルックだった。朝早くに出かけていったはずのカブラは、まだ帰っていないのか姿がない。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「カブラは？」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　訊くと、ブルックは肩をすくめてカアシュを見た。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「いつもどおりだ。少し前に帰ってきたが、またすぐに出かけてった。あとニ、三日探してダメだったら街を移動しよう。ここはまだ猫の国の入り口だからな。気長に探せばまぁ、その内見つかるだろう」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　そうか、と答えてカアシュは松葉杖を進める。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　猫の国は物価が高い。今期の狩で手に入れた物をここで売ればそれなりの稼ぎにはなるだろうが、長期間猫の国に滞在するとなると、さすがに経済的に苦しくなってくる。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　いざとなったら適当に仕事を見つけて稼ぐとカブラ達は言うが、片足の無いカアシュにはそれを手伝うこともできない。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「……どうした？」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「え？」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「何かあったんだろ。面に書いてあるぞ」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「書いてねぇよ」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「いや、書いてあるな」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　言って、ブルックは本を閉じた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「どうしたんだよ。チヒロが追いかけてでもきたか？」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　やりかねない雰囲気だったからな、と笑いながら、ブルックがテーブルの酒瓶に口を付ける。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　カアシュは固まったまま動く事すら出来なかった。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　液体を嚥下する音がしばし続き、ブルックは酒瓶をテーブルに戻す。それからだいぶ間を空けて、&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「おい……今のは冗談だぞ」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　と恐る恐る呟いた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「ああ……だよな」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　ようやく答えて、カアシュはベッドに腰を下ろす。そのカアシュに、ブルックは体ごと振り向いた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「どこにいた」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「……港」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　ブルックは頭を抱えて天井を仰いだ。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「なに考えんだあの馬鹿……！　おい、見間違いじゃないのか？　ネコの女なら似た背格好のやつはごろごろしてる」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「間違いようがねぇよ。会って話したんだ……」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「話をしたのか！？」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「海に突き落とされてな」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　その時の千宏を思い出し、カアシュは小さく吹き出した。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「……もう、全部知ってたよ。俺の義足は作れないって……」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「……そうか」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「金、出してくれるってよ……そう言ってきたんだ」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　ブルックは目を見開く。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「それでお前……どうしたんだ」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「断ったよ」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　一瞬口を開きかけ、ブルックは肩を落とす。それが安堵なのか落胆なのか、カアシュには見分ける事が出来なかった。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「なんなんだろうなぁ……あいつ俺達に犯されそうになってよ、声も出ないくらい怯えて泣いてたんだぜ……？　それが身体を売ってまで稼いでよ、そこまでして必要な金だったはずなのに、喧嘩別れした俺のためにそれを使っちまおうって言うんだ」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　簡単に頷く事など、出来るはずがなかった。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　首輪をつけて奴隷を装い、毎晩男に身体を開き、ヒトの千宏が文字通り命がけで稼いだ金を、どうしてトラである自分があてに出来ると言うのだ。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「あいつがトラならよかったのになぁ……」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　言って、カアシュは首の後ろを撫でた。トラでなくてもいい。とにかくヒトでさえなかったら、カアシュは喜んで申し出を受ける事が出来ただろう。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　カアシュは怒りに燃える千宏の瞳と、今にも泣き出しそうに震えた声を思い出し、失ってしまった左足を静かに撫でた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「怒って当然だよな……」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　ヒトである。ただ、それだけの理由だ。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　千宏にはカアシュを救う力があり、救いたいと思う気持ちがある。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;text-indent:11.75pt;&quot;&gt;
だというのにカアシュは、こんな所まで追いかけてきて、笑顔で差し伸べてくれた友人の手を、千宏がヒトであるというだけで跳ね除けたのだ。その行為は、千宏の誇りをどれ程傷つけたことだろう。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;text-indent:11.75pt;&quot;&gt;
千宏の言うとおりだった。自分は、千宏を友達などと思っていない。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;text-indent:11.75pt;&quot;&gt;
ただ自分は、自分よりも弱い存在が欲しかっただけなのだ。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「なあ、ブルック」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「なんだ？」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「俺……ハンターやめるよ……」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　顎を落として、ブルックが振り返る。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「なんだ、突然……」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　冗談にしてもたちが悪いぞと低く唸るブルックに、カアシュは静かに首を振る。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「突然じゃねぇよ。ずっと、ニャトリの奴らに言われた時から分かってたことじゃねぇか。俺みたいな体格のトラがまともな義足を作ろうと思ったら、とんでもねぇ額がいる。そうでなければ、粗悪品の間に合わせを作るしかないってよ」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「だから、それをなんとかするために今頑張ってるんじゃねぇかよ！　専門家だかなんだか知らねぇが、赤の他人に言われた事にはいそうですかって従って、試してもみねぇで諦めるなんてトラのやることじゃねぇ！　そうだろう！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「また、ネコみてぇだって言われるかも知れないけどよ」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　カアシュは溜息を吐いた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「意地や誇りじゃ、どうにもなんねぇことだってあるだろ？」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　今が、まさにその状況なのだと、カアシュは苦い笑いを浮かべて見せた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「それに、俺にはハンターをやめたって出来る仕事がちゃんとあるんだ。それなのに、向いているわけでもねぇハンターを続けるために、お前ら二人を犠牲にするなんて……」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「カアシュ！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　ブルックが立ち上がり、叱り付けるような声を上げる。ソファを乗り越えてカアシュに詰め寄り、ブルックはカアシュの襟元を引っつかんだ。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「“犠牲”だなんて、そんなつまんねぇこと考えるんじゃねぇ。俺達はチームだ。一人でも欠けたらなりたたねぇ。だから必死にやってんだ！　お前がチームを抜けてみろ、カブラの馬鹿は全部のモンスターに全く同じ戦法で突っ込もうとしやがるぞ！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「俺が抜けたら、他の奴をチームに入れればそれですむ！　俺よりハンターに向いてる奴なんていくらでもいるだろう！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「馬鹿野郎！　いったい何処に行きゃあこんなチビのトラにお目にかかれるってんだよ。　チビのクセにハンターやってる大馬鹿野郎に、どこに行けば会えるんだ？　他の種族に馬鹿らしいほど詳しくて、楽して大物を狩るような陰険な作戦を思いつく、弱者の戦い方を知ってるトラが一体何処にいるって言うんだよ！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「だったらトラ以外の種族をチームに入れりゃいいだろう！　ネコやネズミなら俺よりよっぽど上等な知識を持ってて、俺より的確な作戦を考える。死の商場に行けよ。許可証持ちのトラがチームに入れてやるって言やあ、いくらでも優秀な人材が集まってくる！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「そんな奴らをまともに信用できるかよ！　俺達が組んで何年になると思ってる。百年だぞカアシュ。百年だ！　一人欠けたからって別の奴を引き入れることなんざできねぇんだよ。俺達はもう、お互いがいる事に慣れきっちまってる。代打はきかねぇんだ。お前を直せる技師を見つけるしか、方法はねぇんだよ！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「じゃあその技師が見つかるまで、俺はずっとお前らのお荷物を続けなきゃなんねぇのかよ！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　叫び返し、カアシュはブルックの腕を振り払った。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「脚がないんだぞ……俺にはよ。お前らが俺のために駆けずり回ってる間も、俺には座ってることしかできねぇ。技師を探すって言ったって、見つかるって保証もねぇんだ。すぐに見つかる可能性だってあるさ、だが五年十年みつからなけりゃ、俺は確実にハンターとして使い物にならなくなってる。筋力を元に戻すのに、狩の勘を取り戻すのに、森での地形の変化を把握するのにどれくらいかかると思うんだ！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　それでも、カブラは技師を探すのをやめないだろう。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　カアシュの脚を奪ったのは自分だと、カブラは完全に思い込んでいた。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
「今が引き際だ。ブルック。俺が今諦めるって決断しなきゃ、俺だけじゃなくて三人全員がハンターとして終っちまう。ただ座って毎日待ち続けることも、お前らが俺のために縛られ続けるのも、俺にはとても耐えられねぇ。俺はハンターとして生きた。なら引く時も潔く、ハンターとして引きたい。ハンターをやめた百年後も、お前らの仲間だって胸を張って言いたいんだよ！」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　もうこれ以上、自分に失望したくはなかった。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　ハンターとして生きられないからといって、トラとしての誇りまで失ってしまったら、自分はきっと立ち直れない。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　誇りを失ったトラの末路は悲惨だった。トラは強い種族だ。例えカアシュがトラの中では弱くとも、他の種族から見れば十分に脅威になりうる。トラの誇りとは、決して他者に依存しないこと。弱者を支配しない事。例え群れで暮らそうと、一人で生きる力を持ち続けることだ。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　その誇りを失った虎は、容易に暴虐の王者へと堕落する。そして更なる強者に滅ぼされるまで、自身の作り上げた狭い縄張りの中で弱者を嬲り続けるのだ。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;「……カブラが戻ってきたら、ちゃんと話すよ……それで、次の船で帰る」&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;
　ブルックは口を開きかけ、しかし結局何も言わずに上着を羽織る。カアシュは決断したのだ。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　ブルックが部屋を出て、カアシュは一人部屋で過ごす。&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt;　その日の夜、ブルックもカブラも部屋に戻ってはこなかった。&lt;/div&gt;
&lt;a href=&quot;http://www7.atwiki.jp/nigenoitte/pages/172.html&quot;&gt; 前へ&lt;/a&gt;  &lt;a href=&quot;http://www7.atwiki.jp/nigenoitte/pages/187.html&quot;&gt;次へ&lt;/a&gt;&lt;/div&gt;
&lt;div style=&quot;margin:0mm 0mm 0pt;&quot;&gt; &lt;/div&gt;
    </description>
    <dc:date>2009-08-21T00:11:40+09:00</dc:date>
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    <item rdf:about="http://www7.atwiki.jp/nigenoitte/pages/184.html">
    <title>生贄の森</title>
    <link>http://www7.atwiki.jp/nigenoitte/pages/184.html</link>
    <description>
      *&amp;bold(){生贄の森（連載中）}
|BGCOLOR(#E8E8E8):　町長の娘・リーリアは、町の人々を守るため、生贄として森の魔物に捧げられる。&amp;br()　その付添い人として、共に捧げられた村長の娘・レイラは『狼に食い殺されるのだ』と&amp;br()怯えていたが、森の魔物は二人を食い殺そうとはせず、魔物に従う人狼は二人の少女を&amp;br()『花嫁』と呼んで魔物屋敷へと導いた。&amp;br()　二人の少女と森の魔物、狼の森と、その森に囲まれた町や村に住む人々の物語。|

|BGCOLOR(#BEBEBE):話数|BGCOLOR(#BEBEBE):タイトル|BGCOLOR(#BEBEBE):概要|
|[[序章&gt;生贄の森1]]|&amp;size(12px){狼の森}|馬車で森の奥へと連れて逝かれた二人の少女は、&amp;br()森の魔物の館へとたどり着く|
|BGCOLOR(#BEBEBE):話数|BGCOLOR(#BEBEBE):一章|BGCOLOR(#BEBEBE):|
|[[1&gt;生贄の森2]]|&amp;size(12px){人狼}|ある日リーリアが教会で子供たちと遊んでいると、&amp;br()狩人がやって来て人狼が現れたと叫びだす|
|[[2&gt;生贄の森3]]|&amp;size(12px){人狼狩り}|町長は人狼に会った事があると言いって人狼狩り&amp;br()に反対するが、村長達はそれに反発する|



.    </description>
    <dc:date>2009-06-25T00:36:59+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www7.atwiki.jp/nigenoitte/pages/185.html">
    <title>生贄の森3</title>
    <link>http://www7.atwiki.jp/nigenoitte/pages/185.html</link>
    <description>
      
&lt;h3&gt;生贄の森　一章-2&lt;/h3&gt;
&lt;p style=&quot;line-height:160%;&quot;&gt;　 　&lt;br /&gt;
　&lt;br /&gt;
　人狼は普通の銃弾や刃物では死なず、銀の銃弾でのみ傷を受ける。数頭の群れで森の奥に住み、狼を従え、小さな村を襲っては家畜や子供をさらって食らうのだと、書物庫の本はいくつもの実例を上げて述べていた。&lt;br /&gt;
　どういうわけか、父の書物庫には人狼についての本が溢れていた。興味を持って探したことのなかったリーリアは今まで気がつかなかったが、これら全ての本を読めば、人狼について知らぬ事はないと断言できる程だ。&lt;br /&gt;
　リーリアは目に付く限りの本を棚から引き出し、片端から興味のある部分だけ読み散らした。&lt;br /&gt;
　人狼が村を襲った事件。その人狼を殺す人々。人狼の首を高々と掲げている狩人の絵。&lt;br /&gt;
「狩人が人狼の首を落とし、耳と鼻をそぎ落とした頭を見せしめとして掲げると、狼どもは唸り声を上げた……しかしそれは愚かな行為だった。狼どもはそれによって復讐心を激しく燃やし、あろうことか狩人の家族を選んで襲うようになったのだ」&lt;br /&gt;
　声に出して読み上げ、リーリアは息を呑んだ。&lt;br /&gt;
「人狼を狩る事は、人間を殺すよりはるかに困難だ。人狼は人間よりも頑丈で力強く、そして人間と同等の知恵を持つ。中には人間の言葉を……理解する固体も……」&lt;br /&gt;
　リーリアは立ち上がった。&lt;br /&gt;
　なんと恐ろしい事だろう。それほどに賢く、そして強い生き物に、猟師達はこちらから攻撃を加えてしまったのだ。&lt;br /&gt;
　リーリアが燭台を持って地下室の階段を駆け上がると、なにか怒鳴りあうような声が聞こえた。ぎくりとしてドアをそっと押し開けると、どうやら玄関ホールの方かららしい。&lt;br /&gt;
「あんたには失望したよ町長！　馬鹿馬鹿しいにも程がある！」&lt;br /&gt;
「我々の責任だと言うのならばそうだとも！　ならばもういい！　あんたなど頼ろうとは思わん！」&lt;br /&gt;
「自分達で人狼を狩ってみせるさ！　俺達は元々狼を殺して生きてきた！　あんたの指図など受けん！」&lt;br /&gt;
　ついで、扉を叩きつけるように締める音がする。リーリアがそっと顔を覗かせると、階段の中ほどで渋面を父の姿があった。&lt;br /&gt;
「……お父様？」&lt;br /&gt;
　声をかけると、イグナートは静かに顔を上げた。&lt;br /&gt;
「リーリア……どうしたんだ？　埃まみれではないか」&lt;br /&gt;
「はい。地下室で、本を読んでいました」&lt;br /&gt;
「本？」&lt;br /&gt;
「人狼の」&lt;br /&gt;
　イグナートはわずかに目を見開いた。&lt;br /&gt;
「教会に、人狼が出たと駆け込んできた男性がいらっしゃいましたので」&lt;br /&gt;
「そうか……では、もう町中に知れ渡っているのだな」&lt;br /&gt;
「子供達が、きっと親に話すでしょうから……あの、お父様」&lt;br /&gt;
「うん？」&lt;br /&gt;
「人狼狩りを……なさるのですか？」&lt;br /&gt;
　イグナートは顔を顰める。それからリーリアについてくるよう促すと、ゆっくりと階段を上りはじめた。&lt;br /&gt;
　イグナートの書斎は階段を上りきったすぐ左手にある。来客者用に座り心地のよいソファがあり、黒い光沢を持った木製のデスクがある。棚には様々な本や資料が並び、実によく片付けられているが、その部屋の中心で、来客用のテーブルが無残にひっくり返っていた。&lt;br /&gt;
「これは……」&lt;br /&gt;
「人狼狩りのために私兵を送るよう、領主に手紙を書けと言われてな」&lt;br /&gt;
「お断りになったのですね」&lt;br /&gt;
「ああ。話を聞く限り、人狼に非はない。むしろ我々の方が謝罪すべきだ」&lt;br /&gt;
「人狼が、私達の謝罪を受け入れてくださるのですか？」&lt;br /&gt;
「少なくとも、交渉には応じてくれた」&lt;br /&gt;
　事も無げに父が発した言葉に、リーリアもまた、僅かに微笑んだ以外の反応は示さなかった。イグナートの方が意外そうにリーリアを見る。&lt;br /&gt;
「驚かないのか」&lt;br /&gt;
「いいえ、驚いていますわ。少なくとも、半分くらいは」&lt;br /&gt;
「では、もう半分は？」&lt;br /&gt;
「ああ、やっぱり。と。お父様は私が生まれる前、狼の森に一人取り残され、無事に帰って来た事がおありとか」&lt;br /&gt;
「ボリス牧師だな？」&lt;br /&gt;
「はい。実を言いますと、私の予想と言うよりは、ほとんどボリスさんの予想ですの。ただあの方は、お父様は狼と会話が出来るのだと考えていましたけれど」&lt;br /&gt;
　本当の事を言ってしまえば、リーリアでさえ最近まではそうと信じていた。だが地下室にある人狼に関する本の多さは、さすがに少し尋常ではない。&lt;br /&gt;
　そうして人狼の存在を知らされた今も、イグナートは少しも驚いた様子を見せていなかった。どんな時だろうとこの男は冷静を繕っているが、リーリアには父のほんのわずかな動揺を察する事が出来る。&lt;br /&gt;
　亡き母から譲り受けた鋭い勘である。&lt;br /&gt;
「森の中でな……傷ついた狼に出会った。家畜を盗ろうと村に近づき、猟師の罠に捕まったのだ。私たちは当時交易が出来なかったので、食料をほぼ狩猟と家畜に頼っていた。元々森に住んでいた狼達が獲物を失い、飢えて家畜を狙うのは無理もない。私は若い狼を開放したが、彼は私を襲おうとはしなかった」&lt;br /&gt;
「それが、人狼だったのですか？」&lt;br /&gt;
「いや。それはただの狼だった。私よりもはるかに小さい。雪のせいもあり私はその時道を失っていて、見つけた猟師の罠を基点にぐるぐると森を回っていた。どちらが村の方角か分からなかったんだ。完全に日が落ち、ついに何も見えなくなった時、狼の唸り声が聞こえた。明らかに害意をもった狼が、群れを成して私を追いかけ始めたのだ。待て。まずこの惨状をどうにかしよう」&lt;br /&gt;
　イグナートは思い出したように言い、ひっくり返っているテーブルを起こす。リーリアは散らばっているティーカップをとりあえず拾い集め、正しく設置しなおされたテーブルに置いた。&lt;br /&gt;
　イグナートはメイドを呼び寄せてカップの片付けとお茶を頼むと、柔らかなソファに腰掛けた。リーリアもその正面に腰を下ろす。&lt;br /&gt;
「それで、どうなりましたの？　お父様は食べられてしまったんですの？」&lt;br /&gt;
「もしそうなら、今お前の正面に座っている私は誰だ？」&lt;br /&gt;
「……ただの冗談ですわ」&lt;br /&gt;
「冗談？」&lt;br /&gt;
「笑ってくださってもいいんですのよ？」&lt;br /&gt;
　イグナートは眉間の皺を深くする。リーリアは溜息を吐いた。&lt;br /&gt;
「話の続きをお願いしても？」&lt;br /&gt;
「ああ……逃げているうちに、私は丁度雪をしのげそうな木の洞にたどり着いた。気付くとあれ程執拗に追いかけていた狼はもうおらず、私は呆然と立ち尽くした。そこに現れたのが人狼だった。夜の闇の中だ、はっきりと姿を見たわけでは無いが、彼は私に若い狼を救った礼を述べ、村までの帰り道を教えてくれた」&lt;br /&gt;
　それで、とイグナートは続ける。&lt;br /&gt;
「狼に追い掛け回され、私は興奮状態だった。恐怖も何も考えず、馬車を襲わないでくれと叫んでいた」&lt;br /&gt;
「待ってください。その人狼は、人間の言葉を話したんですの？」&lt;br /&gt;
　理解する、という話は確かに本に載っていた。だがまさか、人間と同じように喋るだなんて、とてもじゃないがすんなりとは受け入れられない。&lt;br /&gt;
　しかしイグナートははっきりと頷いた。&lt;br /&gt;
「私も後になって愕然としたが、その時はまるでそれが当然のようにさえ思っていた。人狼は言った。人間を襲わなければ狼たちは飢え死にすると。だがもし交易を始める事が出来れば、我々は食料を狩猟に頼らずに済む。そうすれば狼達の獲物も増えるはずだ」&lt;br /&gt;
「そう、人狼を説得なさったのですか？」&lt;br /&gt;
「馬鹿馬鹿しいかね」&lt;br /&gt;
　リーリアは首を傾げる。そして少しだけ微笑み、&lt;br /&gt;
「ええ。とても。――正気の沙汰とは思えませんわ」&lt;br /&gt;
　イグナートも眉間の皺はそのままに、少しだけ口角を持ち上げる。&lt;br /&gt;
「ああ。私は正気を失っていた」&lt;br /&gt;
　その結果生まれたのが、狼との共存という狂気の沙汰であった。&lt;br /&gt;
　だがそれで上手くいっていた。二十年もの年月を、ヴォルカグラスと近隣の村々は平和に生きてきた。&lt;br /&gt;
　だが、それを喜ぶ者ばかりではかったのだ。&lt;br /&gt;
　狼を狩れない。それは、狼の狩猟を生業としてきた猟師にとっては死活問題であった。狼を狩る猟師達は、珍しいその毛皮を町まで運び、高値で売ってそれなりの生活を送っていた。&lt;br /&gt;
　それが突然、『狼はもう人間を襲わない、狼と共存をしよう』などと言われて、素直に従うわけがない。そもそも彼らは、狼が馬車を襲う事で恩恵を受けていたのだ。狼狩りの報酬、狩った毛皮を売った金、そして馬車への護衛金。狼狩りをする猟師は、誰よりもいい生活を送っていた。&lt;br /&gt;
　だが、狼を主に狩る猟師は少数だ。狼との共存は、それ以外の全ての人間に恩恵をもたらした。隣町まで仕事に行くことが可能になり、猟師たちは少しの狩猟で多くの糧を得られるようになった。狼狩りをする猟師達の言葉は多くの感謝の言葉にかき消され、そして彼らは沈黙した。&lt;br /&gt;
「問題は……村長達の半分が、元々は狼狩りをしていた猟師だということだ」&lt;br /&gt;
　狼狩りを出来る猟師は尊敬を集めた。それは勇気と知恵と強さの証であり、金だって他の猟師とは比べ物にならないほど持っている。いつしか彼らはリーダーとなり、村長の子供達もまた、狼狩りをする猟師となった。&lt;br /&gt;
　町長は村長達の半数に憎まれていると言っても過言ではなく、しかしそれを表立って口に出来ない村長達の鬱憤は溜まる一方だっただろう。&lt;br /&gt;
　そこへこの事件が起こり、町長は人狼狩りに反対した。&lt;br /&gt;
　村長達が怒りを爆発させ、町長であるイグナートを腰抜けだと罵るのは必然であった。&lt;br /&gt;
「自分達で狩ると……そう言っていたのを聞きました」&lt;br /&gt;
「ああ。止めては見たが無駄だった」&lt;br /&gt;
「お父様から、人狼に逃げるようにと伝える事はできませんの？」&lt;br /&gt;
　イグナートは首を振る。&lt;br /&gt;
「今まで何度も人狼に会おうと森に入ったが、この二十年間一度も出会えなかった。今回、恐らく人狼は家畜を襲ったはぐれ狼を粛清しに、村の付近まで出てきたのだろう」&lt;br /&gt;
「それを、猟師が攻撃してしまったのですね」&lt;br /&gt;
「突然人狼に遭遇し、動揺するのは無理もない。発砲してしまった猟師は余りにも不用意だが、問題はその後の対応だ。彼らは人狼への恐怖に捕らわれ、私の話に耳を傾けようとしない。人狼はもう二十年も前からあの森に住み、むしろ我々を守ってくれているというのに、それを傷つけた挙句に狩り立てるなど、許されることではない」&lt;br /&gt;
「ですがもし、今回の事で人狼が腹を立て、人間を襲おうと考えていたら……」&lt;br /&gt;
「無論その可能性も否定はできん。だが人狼は、銃弾を一発食らっただけで誰も殺さずに逃げたと聞く。村長達は怯えて逃げ出したのだと考えているようだが、銀の銃弾でしか死なぬ人狼がその程度で怯えるものか。彼は人間を傷つけまいとして逃げたのだ」&lt;br /&gt;
　イグナートは誰よりも、村長達のことよりも余程人狼を信頼しているようだった。それも当然、人狼は二十年もの間、イグナートとの約束を守り続けてきた。例え言葉を交わさずとも、その信頼は深く強い。&lt;br /&gt;
「だがもし、人狼狩りの者が森に入れば、今度こそ人狼の怒りに触れるやもしれぬ。それは絶対に避けねばならん。私は今からもう一度彼らの説得に向かう」&lt;br /&gt;
「それでもダメだったら……」&lt;br /&gt;
「実力行使もやむ終えん」&lt;br /&gt;
　リーリアは口元を両手でおおい、ボリス牧師に習って祈りの言葉を口にした。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;
次へ&lt;/p&gt;
    </description>
    <dc:date>2009-06-25T00:33:52+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www7.atwiki.jp/nigenoitte/pages/182.html">
    <title>生贄の森1</title>
    <link>http://www7.atwiki.jp/nigenoitte/pages/182.html</link>
    <description>
      
&lt;h3&gt;生贄の森　序章&lt;/h3&gt;
&lt;p style=&quot;line-height:160%;&quot;&gt;　 　&lt;br /&gt;
　&lt;br /&gt;
　針葉樹の森の中を、馬車は雪をかき分けるようにして走っていた。&lt;br /&gt;
　道と呼べる道などとうになく、馬車はがたがたと揺れている。もう、どれくらいの間こうして走っているのだろうか。リーリアは激しく揺れる馬車に疲れを覚え始めていた。&lt;br /&gt;
森の景色はいつまでも変わる事がなく、どれだけの距離を走ったのかもわからない。&lt;br /&gt;
　ふと、木々の合間を何かの影が横切ったように見えた。よくよく目を凝らしてみると、雪を巻き上げて走るその姿がはっきりと見えてくる。&lt;br /&gt;
「狼……」&lt;br /&gt;
　口の中で呟き、リーリアはくるりと身を返して反対側の窓を覗き込んだ。そこにもまた、馬車と並走する狼の姿が見える。&lt;br /&gt;
　まさか。と、リーリアは再び呟いた。&lt;br /&gt;
「狼に先導されてる……」&lt;br /&gt;
馬車を取り囲むようにして、狼の群れが駈けていた。狼たちが進路を変えれば、馬車もそれに合わせて進む。だが、襲ってくるような気配はない。明らかな意思を持って、狼たちはこの馬車をどこかに導こうとしているのだ。&lt;br /&gt;
「森の魔物の手下なのかな……」&lt;br /&gt;
　リーリアの呟きに応じるように、不安げな声が上がる。リーリアの正面に腰を下ろし、同じく窓から外を眺めていた赤毛の少女である。&lt;br /&gt;
　十六歳のリーリアよりも更に幼く見えるこの少女は、この近隣で最も力を持つ村長の家の末娘だった。名をレイラと言う。&lt;br /&gt;
　髪を短く切りそろえ、まるで少年のような装いをしているが、不思議とそれがよく似合う。むしろレイラの少女らしい愛らしさをいっそう引き立てているようで、だからこそ、村長もレイラのこの装いを許したのだろう。&lt;br /&gt;
　対してリーリアは、レースをふんだんに使った瑠璃色のドレスに身を包み、長い銀色の髪をボンネットで包んでいる。大きな花をあしらったボンネットは亡き母の大切な形見で、リーリアの物静かな美しさにどこか冷たい輝きを与えていた。&lt;br /&gt;
「ねえ、リーリアは町長の娘なんでしょ？　何か詳しいこと聞いてないの？」&lt;br /&gt;
ふいに、レイラが大きな瞳を瞬いてリーリアへと振り向いた。&lt;br /&gt;
「魔物ってどんな奴なのかな……どんな顔してると思う？　あたしたち、食べられちゃうのかな？　狼の餌にされるの？」&lt;br /&gt;
　リーリアは静かに首を振る。&lt;br /&gt;
「わからないわ」&lt;br /&gt;
　何一つ分からない。ただ自分は、自分たちは町や村を守るための生贄なのだという事以外、リーリアには何一つ分からなかった。そもそも分かっている人間など、きっとどこにもいないのだろう。リーリアがそれきりうつむくと、レイラは窓から離れそっと膝を抱き寄せた。&lt;br /&gt;
「痛いのはイヤだな……」&lt;br /&gt;
「そうね……」&lt;br /&gt;
「怖いのもイヤだ」&lt;br /&gt;
「うん……」&lt;br /&gt;
「でも、あんたはすごく落ち着いてるんだね」&lt;br /&gt;
　言われて、リーリアはようやくまともにレイラを見た。&lt;br /&gt;
「まさか……落ち着いてなんかないわ。普段は私、もっとたくさん喋るのよ？　不安になるとぐるぐると考えちゃって、口数が凄く減るの」&lt;br /&gt;
　へぇ、と意外そうな声を零し、レイラは膝を抱えたまま軽く前後に身体をゆすり始めた。&lt;br /&gt;
「あたしは逆。不安だと喋ってないと落ち着かないんだ」&lt;br /&gt;
　事実、レイラは町を出発してからずっと、ひっきりなしにずっと何かを喋っている。半ば無意識のうちに発しているのだろう独り言がほとんどだが、おかげでリーリアは知り合って間もないレイラのことを随分とよく知る事ができた。&lt;br /&gt;
「ねえ。何かおしゃべりしてようよ。でないと狼が気になってしょうがないんだもん」&lt;br /&gt;
　言って、レイラはリーリアの隣に席を移し、腰に結わえたバッグをあさって小さな袋を取り出した。&lt;br /&gt;
「それは……飴？」&lt;br /&gt;
「うん。いっぱい持ってきたんだ。小さいし、長持ちするから」&lt;br /&gt;
　言って、レイラはリーリアの手に小さな砂糖菓子を握らせる。自分もそれを頬張ると、またゆらゆらと前後に揺れながら喋りだした。&lt;br /&gt;
「あたしね、父さんに嫌われてるんだ」&lt;br /&gt;
「生贄に選ばれたからそう思うの？」&lt;br /&gt;
　レイラは静かに首を振る。&lt;br /&gt;
「前からわかってた。父さんの再婚に反対して、いたずらばっかりしてたから。父さんの言うことには全部逆らったし、おしとやかにもしなかった。心配させてやろうと思って猟師の真似事した時なんて、父さんもう呆れてさ。ちょっともあたしのこと見なかった」&lt;br /&gt;
　だから、とレイラは続ける。&lt;br /&gt;
「あたしを生贄に差し出すこと、父さんはちっとも迷わなかった。継母も、あたしの姉さん面してるその娘も、『可愛そうなレイラ』って泣きながら厄介払いできて喜んでた」&lt;br /&gt;
　レイラは諦めに彩られた笑みを浮かべていた。ころころと、レイラが口の中で飴玉を転がす音がしばらく続き、リーリアは手の中の飴玉に視線を落とす。&lt;br /&gt;
　ひどく懐かしい食べ物だった。まだ物心がついたばかりの頃、母にねだって買い与えてもらったのを思い出す。とても食べ物とは思えないカラフルな色合いの飴玉が、当時はとても美味しそうに見えたのだ。&lt;br /&gt;
「食べないの？」&lt;br /&gt;
「うん？　そうね……なんだかもったいなくて」&lt;br /&gt;
　レイラはちょっと顔を顰めると、ポケットからハンカチを引っ張り出し、そこにざらざらと飴玉を流し込んだ。&lt;br /&gt;
「半分こ」&lt;br /&gt;
　言って、レイラは飴玉を包んだハンカチをリーリアに差し出した。リーリアは目を瞬き、慌ててそれを押し返す。&lt;br /&gt;
「そんな、いいのよレイラ。そういう意味じゃないの。私は一粒で十分だから」&lt;br /&gt;
「甘いもの嫌いなの？」&lt;br /&gt;
「いいえ。大好きよ。パイやクッキーだってよく作るんだから」&lt;br /&gt;
「料理できるの？　だって、料理人がいるんでしょ？」&lt;br /&gt;
「でも、お菓子作りは楽しみでやるものだもの。レイラはしたことないの？」&lt;br /&gt;
「そりゃ、肉や魚を焼いたりしたことはあるけど……お菓子なんて難しいよ」&lt;br /&gt;
「そんなに難しいものじゃないのよ。ちょっと面倒くさいけど。そうだ、ねえ今度一緒に……」&lt;br /&gt;
　作りましょうよ、と言いかけて、リーリアははっと口を閉ざした。レイラは慌てて、リーリアの手を握る。&lt;br /&gt;
「続けてよ。やめないで。ねえ、今度一緒にお料理しよう。あたしにお菓子作り教えてよ」&lt;br /&gt;
「ええ……そうね」&lt;br /&gt;
　リーリアが困ったような笑みを見せると、馬が大きくいなないた。&lt;br /&gt;
　馬車が激しく揺れて止まり、リーリアとレイラははっとして窓の外を見る。&lt;br /&gt;
　静かな銀世界が広がっていた。&lt;br /&gt;
　森が途切れて空が開け、彼方から夜がやってくるのが見える。長い時が流れた。五分か、恐らくそれ以上は待っただろう。&lt;br /&gt;
　リーリアは息をのみ、毛皮の外套をしっかりと身体に巻きつけた。&lt;br /&gt;
「降りるの？」&lt;br /&gt;
　不安そうに訊ねたレイラに、リーリアは頷く。&lt;br /&gt;
「どうやら御者は、地面に足をつけるのさえ怖いみたいだから」&lt;br /&gt;
「腰抜け」&lt;br /&gt;
　レイラが吐き捨て、リーリアが扉に手をかけようとしたまさにその時、ふいに外側から扉が開かれた。ぐずぐずしていた御者がようやく勇気を振り絞ってきたらしい。&lt;br /&gt;
「よかった。危なく自分たちだけで降りてしまう所だったわ」&lt;br /&gt;
　苦笑いして顔を上げ、次の瞬間リーリアは愕然と顎を落とした。&lt;br /&gt;
　狼が立っていた。白銀の巨大な狼があろうことか二本の足で雪に立ち、馬車の扉を開けてリーリアに手を差し伸べていたのである。&lt;br /&gt;
　あまつさえ、だ。&lt;br /&gt;
「そりゃ悪かった。御者を食うのに忙しくてな」&lt;br /&gt;
　口角を器用に持ち上げて、狼がからかうように声で言う。&lt;br /&gt;
　リーリアは悲鳴を上げて飛びずさり、レイラを背中に庇って馬車の奥へと逃げ込んだ。&lt;br /&gt;
「おいおい。逃げる事はないだろう。ここまで一緒に走っておいて、そりゃ今更ってもんだぜ」&lt;br /&gt;
　その狼は人間のようにわざとらしく空を仰ぎ、無遠慮に馬車へと押し入ってくる。その脇腹に、古い傷跡らしきものが見えた。それが原因か分からないが、左の腕を上げる時の動きが妙にぎこちない。&lt;br /&gt;
「御者を食べたですって……？」&lt;br /&gt;
　青ざめた顔色でようやく言って、リーリアは精一杯の厳しい表情で狼男をねめつけた。&lt;br /&gt;
「なんということを。彼には何の罪もないでしょう？　生贄は私たち二人のはずです！」&lt;br /&gt;
「……ああ。そうだったっけか。悪いな、ちょっと物覚えが悪くてよ」&lt;br /&gt;
　笑って、狼男はいったん頭を引っ込めると、御者台に向かって恐ろしげな唸り声を上げた。&lt;br /&gt;
　そのとたん、若い男の怯え切った叫び声があがる。リーリアは目を見開いた。&lt;br /&gt;
「今思い出した。実は食ってなかったんだった。御者台であんまり小さく丸まってるもんだからよ、よく見えなかったんだな」&lt;br /&gt;
　腰抜け、と。再びレイラが罵り声を上げる。狼男は愉快そうに笑った。&lt;br /&gt;
「同感だな。もっとマシな男はいなかったのか？　ほらこい。そう怯えなくたって、なにも食い殺そうってんじゃねぇんだからよ」&lt;br /&gt;
　どちらにせよ、応じなければ生贄として選ばれた意味がない。&lt;br /&gt;
　リーリアは意を決し、差し伸べられた狼男の手を取った。&lt;br /&gt;
　とたんにひょいと子供のように抱え降ろされ、あっけなく雪の上に開放される。振り返ると、狼男はすでにリーリアを見ておらず、馬車の中でいやいやと叫んで暴れるレイラに手を伸ばしている所だった。&lt;br /&gt;
「やめて！」&lt;br /&gt;
　鋭く言って、リーリアは狼男を押しのけるように馬車の扉の前に立つ。すっかり怯えて震えているレイラに手を差し伸べると、レイラはそれにも嫌々と首を振った。&lt;br /&gt;
「降りたら殺されちゃうよ……！」&lt;br /&gt;
「でもレイラ。ずっと馬車の中にいるつもりなの？　こんなに寒い雪の中で、食べ物だってそこにはないのに」&lt;br /&gt;
「狼に食い殺されるよりましだもの！」&lt;br /&gt;
「どこに閉じこもってようと、食おうと思ったらいつでも食えるがな」&lt;br /&gt;
　何気ない狼男の呟きに、レイラは更に怯えて縮こまる。リーリアは狼男を睨んだ。&lt;br /&gt;
「あなたは誇り高き人狼でしょう。人狼は群れで暮らす、協調性のある頭のいい生き物だと聞いているわ。この状況で、少しは協力しようと思ってはくださらないの？」&lt;br /&gt;
「協力ね。俺に何をお望みで？」&lt;br /&gt;
「ただ、黙っていてください」&lt;br /&gt;
　狼男は両手を掲げ、すいと馬車から離れていく。リーリアはようやく安堵の息を吐いた。&lt;br /&gt;
「……ねえレイラ。こっちに来て。このままじゃ私たち、離れ離れになってしまうわ。ここで友達と言えるのは私とあなたの二人きりなのに。もし殺されるにしても、一人きりでなんてさみしすぎる。そうでしょう？」&lt;br /&gt;
　レイラが膝から顔を上げ、何かを探すように視線を泳がせる。狼男が出てきはしないかと怯えているのだろう。&lt;br /&gt;
「あいつは？」&lt;br /&gt;
「遠くよ。あっちの木の所に立ってるわ」&lt;br /&gt;
　ようやく少し落ち着いたのか、レイラはおずおずとリーリアに手を伸ばす。その手を強く握り、促すように軽く引くと、レイラはリーリアの腕にしがみ付いた。&lt;br /&gt;
「聞いてレイラ。ねえ。私はナイフを持ってるわ。わかる？」&lt;br /&gt;
　レイラが驚いたように顔を上げ、そっとリーリアのスカートの中に手を伸ばす。太腿に括りつけた短剣の存在に気が付いて、レイラは大きく目を見開いた。&lt;br /&gt;
「これでアイツを殺すの？」&lt;br /&gt;
　リーリアは首を振る。&lt;br /&gt;
「狼に食い殺されるくらいなら――ね。そうでしょ？」&lt;br /&gt;
　レイラはくしゃくしゃと表情を歪ませ、泣き笑いのような顔で頷いた。&lt;br /&gt;
　そしてようやく、二人は馬車から降り立った。と同時に、御者が馬に鞭を入れる。雪を撒き散らしてあっという間に走り去っていく馬車をリーリアが呆然と見詰めると、狼男が木の影で、慇懃に拍手をしてみせた。&lt;br /&gt;
「……腰抜け」&lt;br /&gt;
　これは、リーリアが上げた罵り声である。&lt;br /&gt;
　顔を上げればそこには、魔物が住むにはあまりにも美しく、そして静かにたたずむ屋敷があった。門らしきものは見当たらないが、ここはすでに魔物の庭だ。門などで境界を主張する必要など、彼らにはないのだろう。&lt;br /&gt;
　人間の住む屋敷と何一つ変わらない、それどころかリーリアの住む屋敷よりはるかに壮麗なたたずまいに、リーリアはただ圧倒されるばかりだった。&lt;br /&gt;
「……どうして今まで……」&lt;br /&gt;
　誰も、この屋敷の存在に気付かなかったのだ。&lt;br /&gt;
　森の向こうに街ができ、もう五十年近くになると言うのに。&lt;br /&gt;
「ここは森の奥の奥だ。案内がなきゃ、普通はたどりつきゃしねぇ」&lt;br /&gt;
　いつの間にか、狼男がすぐ隣に立っていた。はっとして振り仰ぐと、その瞳が真っ直ぐに何かを見ていることに気がついて、リーリアもそちらに顔を向ける。&lt;br /&gt;
　気がつけば、ほんの数歩の距離に黒い男が立っていた。&lt;br /&gt;
　雪に覆われた森の中にぽつりと影が落ちたように、その男は身じろぎ一つせずにじっとこちらを見詰めている。&lt;br /&gt;
　長い黒髪の、とても背の高い男だった。腰まで伸びた髪を上品に後ろに流し、切れ長の瞼の奥に光る瞳もまた黒い。&lt;br /&gt;
　獰猛な獣を思わせる、しかし優美な貴公子でもあるような。そんなちぐはぐな印象を覚える男だった。&lt;br /&gt;
「――なるほど」&lt;br /&gt;
　しばし興味深げに二人を見詰めていた男は呟くと、憐れむような笑みを浮かべて静かに歩み寄ってきた。&lt;br /&gt;
「これが、おまえたちの支払う代償と言うわけだ。お粗末な物だな。だが、悪くはない」&lt;br /&gt;
　リーリアとレイラを交互に眺め、男は震えているレイラの頬に手を伸ばす。嫌がってしがみ付くレイラを庇おうと身を返したその瞬間、リーリアの腕から温もりがかき消えた。愕然と顔を上げると、すぐ隣に立っていたはずの狼男の背が遠くに見える。&lt;br /&gt;
　そしてその背中の向こう側に、レイラと男が立っていた。位置は馬車の轍のすぐ近く。自分も一瞬前までは、確かにあの場に立っていたはずなのに――。&lt;br /&gt;
「そんな……！」&lt;br /&gt;
　どうして、とかすれた声を上げかけて、リーリアは瞠目した。&lt;br /&gt;
　足がすくんで今にも崩れ落ちそうなレイラの腰を引き寄せて、男がその幼い唇に自らの舌をねじ込んだのだ。&lt;br /&gt;
　寒さで青く染まりかけているレイラの唇に、同じく青白い男の唇が深く、深く重ねられる。&lt;br /&gt;
「レイラ！」&lt;br /&gt;
　叫んで駆け寄ろうとしたリーリアの眼前に、人狼の丸太のように太い腕が突き出された。&lt;br /&gt;
「やめとけよ。他人の情事の邪魔なんざするもんじゃないぜ？」&lt;br /&gt;
「なんですって？」&lt;br /&gt;
　咎めるように聞き返し、リーリアは再び二人に視線を向ける。&lt;br /&gt;
　苦しげにもがき、逃れようとしていたレイラの身体から、すっかりと力が抜けていた。&lt;br /&gt;
　唇の色は艶かしい赤色を取り戻し、瞳はどこかうつろに男を見ている。その腕が、そっと求めるように男の背に回されるのを確認し、リーリアは絶句した。&lt;br /&gt;
「そんな……どうして……！」&lt;br /&gt;
「だから、食い殺したりしねぇって言っただろ？　少なくとも、俺はな。狼の餌になる心配もねぇ」&lt;br /&gt;
　全身から力が抜けていくようだった。恐怖の変わりに圧し掛かってきた感情は、どこまでも重い絶望。&lt;br /&gt;
「ようこそ狼の森へ。歓迎するぜ？　花嫁さんよ」&lt;br /&gt;
　森のはるか向こうから、教会の鐘が夜の訪れを告げていた。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;&lt;a href=&quot;http://www7.atwiki.jp/nigenoitte/pages/183.html&quot;&gt;次へ&lt;/a&gt;&lt;/p&gt;
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    <dc:date>2009-06-15T22:53:42+09:00</dc:date>
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    <title>生贄の森2</title>
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    <description>
      
&lt;h3&gt;生贄の森　一章-1&lt;/h3&gt;
&lt;p style=&quot;line-height:160%;&quot;&gt;　 　&lt;br /&gt;
　&lt;br /&gt;
　リーリアの父は厳しさの象徴のような男だった。&lt;br /&gt;
　冬の寒さが町長の眉間の皺を深くするのだと町の人々は囁きあい、狼の群れでさえ町長に睨まれれば逃げ帰ると噂しては、厳しすぎる町長に尊敬や愛着の視線をおくる。&lt;br /&gt;
　彼は町の人々の愛されていた。&lt;br /&gt;
　だからこそ、慈愛の女神もかくやの優しさを持つ、町一番の美女が彼の元に嫁いだ時も、人々は町を上げて祝福した。&lt;br /&gt;
　町長の眉間の皺は相変わらず深かったが、キスをしろとはやし立てられて真っ赤になっていた姿は今でも語り草である。&lt;br /&gt;
　二人の子供はどんな子だろう。男ならば美男だろうし、女の子ならば絶世の美女になる。そう予言されて生まれてきたのが、二卵性の双子だった。&lt;br /&gt;
　母に似て穏やかな兄と、父に似て厳しい妹。どちらの子供も絵画か人形のように美しく、二人は町の人々の自慢だった。&lt;br /&gt;
「誰もリーリアの心を射止める事などできはしない。あの兄とあの父を見てみろ、あれに敵う男がこの町のどこにいる！」&lt;br /&gt;
　酒場では男たちがそう嘆き、事実リーリアは恋をしたためしがなかった。&lt;br /&gt;
　もちろん、リーリアだって興味がなかったわけではない。だがリーリアを『雪の結晶』と呼んで誰もが距離を置こうとするこの町では、まともに恋などできようはずがなかった。&lt;br /&gt;
ヴォルカグラスは狼の森に囲まれた小さな町だ。&lt;br /&gt;
　主な産業は農業と狩猟だがそのどちらもぱっとせず、裕福な町とは言いがたい。&lt;br /&gt;
　過去には森を切り開いて隣国へと続く街道を作る計画があったがそれも立ち消え、名残のように形ばかり立派な教会が建っているのが、唯一の特色と言えば特色だった。&lt;br /&gt;
　その教会に、ボリスという名の老牧師が住んでいる。&lt;br /&gt;
　七十歳を目前にして実にかくしゃくとしたこの老人は、毎日教会の裏の畑を耕し、それが終ると子供たちを集めて色んな話を聞かせてくれた。&lt;br /&gt;
　長く連れ添った妻に先立たれ、子供に恵まれなかったボリスにとっては、町の子供たち全てが自分の子供だったのだろう。学校の勉強が分からず毎日泣いていた少年がボリスの指導で成績優秀者になってからは、多くの子供がボリスに勉強を教えてくれと押しかけるようになっていた。&lt;br /&gt;
この老牧師の元に、リーリアは周に一度、子供たちと触れ合うために通っている。&lt;br /&gt;
　たまには先生の真似事もするリーリアだが、大体は子供たちに混じってボリスを囲み、さあ話を聞かせてくれとせがむ側だった。&lt;br /&gt;
「過去に私たち人間は、狼の森を切り開き、この町を作りました」&lt;br /&gt;
　細く尖った顎を撫でながら、ボリスは老人らしからぬ豊かな声で静かに話す。&lt;br /&gt;
　礼拝堂の片隅の、暖房のすぐ近くである。ボリスは一人丸椅子に座り、子供たちはそれを囲んで直接床に座っている。もちろんその輪の中に、リーリアもちゃっかりと腰を下ろしていた。&lt;br /&gt;
「そして狼の獲物である動物を奪い、飢えに苦しむ狼さえも駆り立てた。無論狼は怒り狂い、ついには人間を襲って食うようになりました」&lt;br /&gt;
　子供たちは互いに手を握り合い、怯えた目をしてボリスを見る。町といえども、少し道をはずれれば森はすぐそこだ。子供たちはみな、狼の恐ろしさをよく言い聞かせられている。&lt;br /&gt;
「人間と狼は対立していた。しかしその対立を終らせ、共存を生み出した偉大な人物がこの町には住んでいます。イグナート・ドラガノフ。誰だかわかりますか？」&lt;br /&gt;
「町長の名前！」&lt;br /&gt;
　ボリスの質問にいち早く、一人の子供が鋭く答える。ボリスは深く頷いた。&lt;br /&gt;
「その通り。本来ならばこの町は、もっと貧しく飢えに苦しんでいたでしょう。狼の森に囲まれ、森を貫く道はろくに舗装もされていないこの町には、行商人も寄り付かない。しかし町長は狼に獲物を捧げることで、狼の驚異から人々を守る事に成功したのです」&lt;br /&gt;
　町長がどうやって森の狼たちにルールを覚えさせたのかは誰も知らない。だが狼の森の外へと続く街道を通る前の晩に森に獲物を捧げれば、狼は決して人間の馬車を襲わなかった。&lt;br /&gt;
　そのおかげで、町の商人たちは大きな街まで品物を売りにいけるようになり、他の町からも商人がやってくるようになった。&lt;br /&gt;
　狼の森に囲まれた恐ろしい町ヴォルカグラス。それが今や、狼の加護を受ける町と呼ばれるようにさえなっていた。&lt;br /&gt;
「狼は恐ろしい生き物ですが、とても賢く、愛情深い。むやみに森から追い立てようとすれば狼の怒りに触れ、我々は毎夜彼らの遠吠えに怯えなければなりません。町長は決して狼を軽んじず、尊い同居人として扱っている。あなたたちも狼を恐れるだけでなく彼らを愛し、そして尊敬する心を忘れてはいけませんよ」&lt;br /&gt;
「でも、狼を全部殺しちゃえば、そんな面倒くさいことしなくてすむよ」&lt;br /&gt;
　すかさず、鋭い音が礼拝堂に響いた。ボリス牧師が手にした本で、少年の頭を引っぱたいたのである。&lt;br /&gt;
「いってーよこの暴力牧師！」&lt;br /&gt;
「暴力とせっかん全く別の物です！　例え冗談だろうと、そのような事を口にしてはいけません。いいですね？」&lt;br /&gt;
　少年はきぃきぃと甲高い声を上げて文句を言うが、牧師はどこふく風である。その光景があまりにも微笑ましくて、リーリアは思わず小さく吹き出した。&lt;br /&gt;
「町長って、お姉ちゃんのお父さんなんでしょ？」&lt;br /&gt;
　子供たちの中の一人が、思い出したように言ってリーリアを見る。&lt;br /&gt;
「あたし知ってるよ。町長は狼より強いんだって！」&lt;br /&gt;
「じゃあお姉ちゃんも、狼が怖くないの？」&lt;br /&gt;
「うそぉ！　だって一人で森に入ったら食べられちゃうんだよ？　怖いよ狼！」&lt;br /&gt;
「おれ怖くないよ！　銃を持って入ればいいんだもん！」&lt;br /&gt;
　わっと子供たちが騒ぎだし、リーリアはあれよあれよと言う間に子供たちに囲まれてしまう。&lt;br /&gt;
　怖い、いいや怖くないと言い合う子供たちの真ん中で、リーリアは慌てて声を高くした。&lt;br /&gt;
「落ち着いてみんな。お父様だって私だって、当然狼は怖いわよ。ボリスさんが言ってるのはそういうことじゃなくて、ただ狼を怖がるだけじゃダメってこと」&lt;br /&gt;
「どうして怖がるだけじゃダメなの？」&lt;br /&gt;
「あら。だって怖いだけの生き物だったら、そいつをやっつけてやれ！　って思うでしょ？」&lt;br /&gt;
「だって、怖いのは悪いからなんだ！　悪い奴はやっつけていいんだよ！」&lt;br /&gt;
　子供たちは口々に、そうだそうだと声を上げる。リーリアはちょっと笑って、わざと大げさに溜息を吐いてみせる。&lt;br /&gt;
「怖い奴はみんな悪いやつだって言うの？　そんなことはないわ。だってみんな、お父さんやお母さんが怖いでしょ？」&lt;br /&gt;
　この質問には、子供たちの答が割れる。しかし怖くないと答えた子だって、両親に叱られるのが怖くて日暮れ前にはおお慌てて帰っていくのだ。&lt;br /&gt;
「怖いけど、いなくなっちゃえばいいとは思わないわよね？　美味しいご飯を作ってくれるお母さんに、肩車をしてくれるお父さん。いなくなったらさみしいもの」&lt;br /&gt;
「お姉ちゃんもさみしいの？」&lt;br /&gt;
　ふいに子供たちの中から心配そうな声が上がる。&lt;br /&gt;
　リーリアは目を瞬いた。&lt;br /&gt;
　それからようやく、自分の母の死に思い当たる。もう五年も前の話だ。元々病弱だったリーリアの母は、五年前の冬に肺炎で死んだ。町の誰もが嘆き悲しみ、当時産まれていなかった子供でさえその事を知っている。&lt;br /&gt;
「そうね……」&lt;br /&gt;
　呟いて、リーリアは少し考え込んだ。心を根こそぎ持っていかれたような虚無感と喪失感は、もう随分と癒されたように思う。&lt;br /&gt;
　それでも、やはり。&lt;br /&gt;
「さみしい。凄くさみしくて、お姉ちゃん、時々泣いちゃうくらいだもの」&lt;br /&gt;
　隣に座っていた少女が、心配そうにリーリアの手を握る。だけどね、とリーリアはその子を膝に抱き上げた。&lt;br /&gt;
「私には兄さんも、お父様も、ボリスさんも、それにあなたたちみんながいるわ。だから悲しくってもがんばれるの。私やボリスさんも時々あなたたちを怒るけど、みんなはお姉ちゃんのこと嫌いになる？　やっつけてやるって思う？」&lt;br /&gt;
「思わないよ！　だってお姉ちゃんが怒るの、おれたちが悪い事した時だけだもん」&lt;br /&gt;
「そうでしょ？　狼だってそれと一緒。狼の森に入って、彼らのお家を荒らしたりしなければ、狼は人間を襲ったりしないわ。狼は怖いけど、だからって全部やっつけようなんて思うのは、凄く悪い考え方よ。狼のことを考えて、尊敬して、そして愛してあげなきゃいけないの。でもそれは凄く勇気がいることだから、みんなにはできるかしら？」&lt;br /&gt;
「あたしできるよ！」&lt;br /&gt;
「ぼくだって！」&lt;br /&gt;
　子供たちが一斉に立ち上がり、リーリアに折り重なるように突進してくる。その、柔らかな重みに押しつぶされて笑いながら悲鳴を上げ、リーリアはステンドグラスから差し込む光に目を細めた。&lt;br /&gt;
　こらこらと、ボリスが慌ててリーリアの上から子供たちをどかしてくれる。&lt;br /&gt;
　突然、弾けるような音が教会に響き渡った。全員が飛び上がって音の方へ振り返る。&lt;br /&gt;
重たい大扉の横にある古びた木戸の向こう側に、青ざめた顔色の男が立っていた。先ほどの音はどうやら、扉を乱暴に開け放った音らしい。&lt;br /&gt;
「人狼が出た」&lt;br /&gt;
　開口一番、男は低い声でそう言った。&lt;br /&gt;
　突然の言葉に目を瞬き、ボリスはリーリアと顔を見合わせる。&lt;br /&gt;
「……今、なんと？」&lt;br /&gt;
「人狼が出たんだ！　牧師さん、町長と話をさせてくれ！」&lt;br /&gt;
「そう怒鳴らないで、まず落ち着いてください。あなたは……村の猟師の方ですね？」&lt;br /&gt;
　訊ねたボリスに、男は浅く何度も頷きながら教会に入ってくる。&lt;br /&gt;
　ヴォルカグラスを取り囲む六つの村の住民は、町長に用がある時まず牧師のボリスを訊ねる。そしてボリスが自分の手に余る事件だと判断すると、初めて町長が出てくるのだ。&lt;br /&gt;
　それにしても人狼など、今までこの近辺に現れたことは一度もない。人狼による恐ろしい事件はリーリアも本で読んだ事があったが、その驚異が自分たちに降りかかる可能性など考えても見なかった。&lt;br /&gt;
「狼狩りに行ったんだ。家畜を襲うはぐれ狼が出たんで、そいつを追っ払うために。でかくて、特徴のある奴だからすぐ見つけられると思って……」&lt;br /&gt;
「それが、人狼だったというのですか」&lt;br /&gt;
「いや、違う。家畜を襲ったのはただの狼だ。けどそいつを追って森の奥まで入ったら、とんでもなくでっかい……俺達よりでっかい狼が二本の足で立って、はぐれ狼を殺してた！」&lt;br /&gt;
「それで、その人狼は……」&lt;br /&gt;
「びびった猟師の一人が一発打ち込んで……けど逃げられて……」&lt;br /&gt;
「馬鹿な！　何もされていないのに、こちらから危害を加えたと言うのですか！」&lt;br /&gt;
　半ば叫ぶように怒鳴りつけたボリスの声に、猟師が言い訳めいた言葉を連ねる。&lt;br /&gt;
　ボリスは眉間に深く皺を刻んで渋面を作り、自分を落ち着かせるように祈りの言葉を呟いた。&lt;br /&gt;
「リーリア。子供たちを家に送ってあげなさい。私は少し、この方と話があります」&lt;br /&gt;
　リーリアはさっと立ち上がり、不安げに囁き合っている子供たちを呼び集めた。&lt;br /&gt;
　男は明らかに混乱しているし、人狼は狼を餌にしたりしないはずだ。猟師の勘違いと言う可能性もあるし、詳しく話を聞こうと言うのだろう。このただならぬ空気は、ただの勘違いだと笑い飛ばすには少々深刻すぎるようだった。&lt;br /&gt;
　子供たちを全員家まで送り届け、リーリアが帰宅すると、町長である父に来客があるようだった。それとなく使用人に聞いてみると、六つの村の村長たちが全員集まっているのだと言う。&lt;br /&gt;
　ならば、人狼は本当に森にいたのだ。リーリアは緊張で身が竦むような感覚を覚えた。&lt;br /&gt;
「人狼狩り……」&lt;br /&gt;
　そんな言葉がふと頭に浮かぶ。リーリアはくるりと身を返すと、過去に読んだ記憶のある人狼の本を探して、地下の書物庫へと向かった。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;&lt;a href=&quot;http://www7.atwiki.jp/nigenoitte/pages/185.html&quot;&gt;次へ&lt;/a&gt;&lt;/p&gt;
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    <dc:date>2009-06-15T22:53:05+09:00</dc:date>
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    <item rdf:about="http://www7.atwiki.jp/nigenoitte/pages/48.html">
    <title>ＳＳ置き場</title>
    <link>http://www7.atwiki.jp/nigenoitte/pages/48.html</link>
    <description>
      *長編作品
|BGCOLOR(#BEBEBE):タイトル|BGCOLOR(#BEBEBE):概要|
|[[エセ軍人物]]|主人公はボーイッシュで冷めた性格のぼくっこ曹長。&amp;br()上官は親友で熱血筋肉馬鹿の純情可憐な究極サディスト。&amp;br()教官は恋人で沈着冷静驚異的変人の変態昼行灯。&amp;br()繁殖を目的としないセックスはマッサージと同じ。&amp;br()男に抱かれる事に特別な感情は覚えない。&amp;br()だけど特別な感情を思って抱かれる事はあるらしい話。&amp;br()ファンタジー世界を舞台とした逆ハーレム系エロＳＳ。|
|[[傭兵パン屋物]]|エセ軍人物の続編。エセ軍人物の三人組みが、軍を辞めてパン屋を開き、&amp;br()ほのぼの（？）とエロエロする話。エセ軍人よりもエロ度は高め。&amp;br()これは傭兵ですか？　いいえ、パン屋です。|
|[[ロザグラ]]|小さい頃に幼馴染と結婚の約束をしたロザリーは、&amp;br()騎士の修行に出たフィリクスを十年経った今でもずっと待っていて、&amp;br()たとえ他の求婚者が現われても決闘で打ち負かして追い返してしまう。&amp;br()そんなロザリーをなんとか他の男と結婚させようとする父が差し向けたのは&amp;br()戦場帰りの粗野で粗暴な子爵様。果たしてロザリーの運命は？　&amp;br()エロ無し|
|[[虎の威]]|千宏が落ちた異世界は、男は獣人、女はケモミミ、ヒトは高級性奴隷&amp;br()などという、ヒトとしては迷惑極まるふざけた世界だった。&amp;br()そんな世界で、トラの国の偏狭の領主に拾われた千宏。&amp;br()生命と性命の危機濃厚なこの世界で、果たして千宏はどう生きるのか。&amp;br()獣臭濃厚なもふもふケモケモエロＳＳ。&amp;br()&amp;bold(){＊2ｃｈ（pinkbbs）に存在するシェアワールドを舞台にした作品です＊}|
|[[僕らのブリタニア]]|インターネットゲーム『ウルティマ　オンライン』の小説。&amp;br()基本的にはゲーム紹介小説みたいなもの。&amp;br()興味ない人にとってはつまらないと思います。|
|[[生贄の森]]|生贄として差し出された二人の少女と、冷徹な森の魔物の物語&amp;br()女の子同士で友情したり、性格の悪い魔物を憎んだり、魔物の過去を&amp;br()知ったりしながらリーリアは少しずつ魔物に対する態度を変えてゆく。&amp;br()連載終了と同時に削除される期間限定のお話ですよ。エロいよ|


*短編作品
|BGCOLOR(#BEBEBE):タイトル|BGCOLOR(#BEBEBE):概要|
|[[Snow＆Snug]]|動かなくなった雪男に、その雪男が大好きな雪狐。鬱系|
|CENTER:[[ＳＭ]]|変態下僕とツンデレ女王様。女王様を縛る下僕の図|
|[[Confectioner]]|朴念仁ときつめの彼女。&amp;br()仮病を使って男の気を引こうとするのは、使い古されていい感じに&amp;br()チーズです。（エロ無し）|
|[[千博と康介]]|酔っ払いの幼馴染に悪戯をするいけない片思いの青年|
|[[天地人]]|傭兵と娼婦。私は天上人。戦場の悪魔にさらわれて捨てられたの|
|[[魔女と傭兵]]|素直クールな魔女と普通の傭兵。私はお前を好きらしい（エロ無し）|
|[[愛とお菓子と恋愛と]]|ファンタジー世界の子供達の穏やかとも言いがたい日々（エロ無し）|
|[[ブランシェ]]|淫乱曹長の奔放なセックスの日々その1。その2が出るかは気分次第|

*拍手お礼寄せ集め
|BGCOLOR(#BEBEBE):|BGCOLOR(#BEBEBE):タイトル|
|[[拍手1]]|箱庭プリン（虎の威）|
|[[拍手2]]|ある日常の攻防（エセ軍人物）|
|[[拍手3]]|冷血騎士の本性（ロザグラ）|
|[[拍手4]]|初恋は土の味（エセ軍人物）|
|[[拍手5]]|ふるもっふ（虎の威）|
|[[拍手6]]|わりと切実な話（エセ軍人物）|
|[[拍手7]]|夜明けのコーヒー未完遂（エセ軍人物）|
|[[拍手8]]|気まぐれビッチ（エセ軍人物）|

*萌えもエロも無い話
|BGCOLOR(#BEBEBE):タイトル|BGCOLOR(#BEBEBE):概要|
|[[生存者]]|ショートショート。星新一系|
|[[日々子と運動会]]|日々子の日々|
|[[日々子と代本板]]|日々子の日々|
|[[二人の少年の話]]|ショートショート|    </description>
    <dc:date>2009-06-15T22:35:30+09:00</dc:date>
  </item>
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