そのデブは、見る者に横方向に大きすぎる熊のぬいぐるみを連想させた。
贅肉の弛んだ顔は目じりが垂れ下がり穏やかな顔つきを作っており、肉の奥に隠れた瞳は黒くきらきらと輝いている。
性格は空想の世界の熊のように穏やかで、凶暴なグリズリーとは程遠い。
食べ過ぎる――という点を除いては、彼は人畜無害だった。
そのデブは、何を思ったかある日船旅へと繰り出した。
動物園から輸送される熊さながらに、客船の小さな船室に押し込められ、数日の航海を経て対岸に行くのだと。
そして、突然の嵐に襲われた客船は、大きく航路を外れて沈没した。
恐らく、何名かの乗客はボートを使って脱出し、漂流しながら救助を待っているだろうと、すぐに沿岸警備隊が捜索を開始した。
だが一週間経っても、二週間経っても、海の上に漂うボートは見つからない。
そして一ヶ月が経過し、ようやく無人島に流れ着いている六人乗りのボートが発見された。
島は小さく、湧き水がある他は果物も実らない。
草でも虫でも食べて生き延びていてくれと、祈るような思いで島をしばらく捜索すると、程なく一人の生存者が発見された。
そのデブは――見る者に横方向に肥大しすぎた熊のぬいぐるみを連想させた。
その他に生存者はいなかった。
ただ島でそのデブが、客船が沈没した時と全く同じ体型で、救助を待っていただけだった。
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