蟲:2006/06/26(月) 17:01:59
今から書くのは、7~8年前の大学時代、ある熱帯夜の出来事。
文中に登場する中田は、修羅場スレに投稿した長文にも登場する、Nの事です。
↓蟲の若き日の冒険
深夜12時、PHSの着信音が鳴り響く。
6畳半の暗い部屋で、突如 俺は 眠りの世界から引き戻された。
(誰からだ?)と考えるまでもなく、電話主の正体は分かっている。
眠い目をこすりながらPHSを手に取ると、ディスプレイには「中田」と表示されている。・・・・やはりか。
イラつきながら電話に出る。
俺「・・・・もしもし。」
中田「よぉぉ~、蟲! 寝てたか?」
俺「寝てるに決まってんだろ。 今何時だと思ってんだバカ。」
中田「12時だな。 で、今からドライブ行くんだけど、お前も来いよ。」
俺「行く訳ねーだろ。 今日はこのまま寝させてくれ。」
中田「あっはっは~。 つーか今、お前のマンションの下で待ってんだよ。」
俺「マジか orz」
中田「こうでもしなきゃ、お前は絶対来ないからな。5分以内に下りてこいよ。」
5分後マンションのエレベーターから出ると、目の前に 黒いスカイラインが停まっている。
後に ある洪水の晩、エンジンがブッ壊れる車。
ウンザリしながら助手席に乗り込む。
半分寝ている俺を乗せて、スカイラインは 夜の国道を発進した。
名古屋には海が無い。
厳密に言えば 無くもないが、まともな海水浴場に行こうとすれば、2時間は かかる。
その日俺達が向かったのは、内海と呼ばれる海水浴場。
前述の通り 片道2時間かかるし、汚ない海だし、何より真夜中。
(何で こんな時間に、あんな場所向かってんだ?)
最初はふてくされてたものの、徐々に楽しくなってくる。
そう。実は 俺は、ドライブが大好き。親友との深夜のドライブも、まぁ悪くない。
深夜2時、内海に到着。
到着後は岩屋観音という神霊スポットを探索したり、
砂浜で 地元のヤンキーと一緒に花火したりと、大いに盛りあがった。
散々遊び倒した末、深夜4時、内海からの帰路につく。
帰りの車中、疲労や眠気や充実感からか、俺等のテンションは最高潮だった。
ラジオから流れてくるビーチボーイズのリズムに併せて、二人で合唱する。
「世界中の女の子が、カリフォルニア・ガールだったら良いのにね♪」
車窓から流れ込む夜風が、心地よかった。
現在時刻は5時。 真夏とはいえ、未だ辺りは真っ暗闇に包まれている。
広い国道を、スカイラインでビュンビュン飛ばす。
まだ名古屋に入ってないせいか、俺等以外の車は全く見えない。
ラジオの音楽が、カリフォルニア・ガールからサーファー・ガールへ変わる。
その時だった。
助手席に座ってた俺の目に、異様な光景が飛び込んできたのは。
反射的に俺は叫んだ。「中田! 止まれ!!!!」
「キキィーーーッ!!!」
けたたましい急ブレーキの音が、深夜の国道に鳴り響いた。
その光景を見た瞬間、真っ先に俺の脳裏を過ぎったのは、「くじら」という単語。
広い真っ暗な国道に、巨大なくじらが横たわっている・・・・俺には 本当にそう見えた。
よくよく見ると、それは くじらではなく、裏返った車だった。
それは あまりにも非現実的な光景だった。
日頃見慣れた車が、道のど真ん中に、腹を見せて ひっくり返っているのである。
先程までのテンションが嘘の様に、二人とも固まっている。
静かな車中で、言葉を発しようとする者は居ない。
ただただ俺達は、茫然と その光景を眺めていた。
さっきまでの眠気も吹き飛び、急激に頭が冴えてくる。
頭をフル回転させ、とにかく状況を把握しようと試みる。
車種はクラウンのホワイト。
道路に目をやると、ブレーキの跡が10メートルほど続いている。
どうやら運転手は、猛スピードを出しながら 居眠り運転してしまい、
中央分離帯に乗り上げ、そのまま横転してしまったようだ。
辺りには人っ子一人居ない。
俺達が完全な「第一発見者」である。
運転席を見ると、グシャグシャのペチャンコに潰れている。
確認するまでもなく、運転手は 恐らく・・・もう・・・・。
運転席の惨状を想像するだけで、身体が震えてくる。
事故直後だからか、モクモクと白い煙が立ち上っている。
ここは冷静にならなければならない。
ここから先の一挙手一投足が、今後の人生を左右しかねない。
(落ち着け・・・落ち着け・・・!)
頭の中で つぶやいてると、我に返った中田が叫んだ。
「おい 蟲、助けに行くぞ!!」
この言葉を合図に 中田はドアを開けると、スカイラインから飛び降りた。
事故車に向かって、勢いよく駆け寄っていく。
「中田 待て!! 一歩も行くな!! 今すぐ戻れ!!!」
俺の絶叫が、真夏の国道に響き渡った。
中田が足を止め、俺の方に振り返る。
中田「何だよ、何で止めるんだよ! 急がなきゃヤバいだろ!」
俺「急いでも、もう手遅れだよ。 あの運転席を見ろよ。」
中田「でも・・・・だからって、放っとく訳にいかないだろ!?」
俺「いいや。このまま 何事も無かったように、家に帰るんだ。」
中田「お前何言ってんだ!? ホントお前は薄情だな!」
俺「薄情で言ってるんじゃねぇよ、自分のことを真っ先に考えろよ!」
中田「自分のこと?」
俺「まだ煙が出てるだろ!? 下手に近付いて、ガソリンに引火したら どうすんだ!?」
中田「・・・・。」
俺「なぁ、俺等が第一発見者って事は、警察から事情聴取受けなきゃならんぞ?」
中田「・・・・。」
俺「それに運転席を見ろ! あれ見て、まだ生きてると思うか?
血まみれの死体見て、お前トラウマになんねーのか!?
お前 ソレ見た後、家に帰って ぐっすり眠れるか!?」
中田「・・・・・。」
辺りが静寂に包まれる。 深夜の田舎道だからか、未だに後続車は来ない。
俺「なぁ、今なら まだ間に合うよ。 このまま帰ろう。」
中田「・・・お前やっぱ薄情だわ。 前から思ってたけど、お前って冷血すぎるわ。」
俺「なんだと!? お前が 考え無しなだけだろうが!
俺は冷血で こんな事言ってんじゃねぇよ! 『冷静』だから言ってんだよ!」
中田「うるせーよ 冷血漢が!」
俺「取り消せ! お前がバカなだけだろうが! 事故車に近づいて、何の得があるんだ!」
言い争いをしてると、いつの間にか 道路脇に、一人のオッサンが立っている。
近所の人だろうか? 携帯を片手に持っている。 110番通報をしているのだろう。
俺「ほら、お前がトロトロしてっから、俺等が第一発見者になっちまったろうが!」
中田「お前が『見て見ぬフリしろ』とか言うのが悪いんだろうが!」
俺「ああ、そうか。 そんなに助けたいなら、助けに行けよ!」
中田「・・・・。」
俺「血まみれの運転手拝んでこいよ! 車爆発しないように、せいぜい気を付けろよ!!」
中田「・・・・。」
俺「オラ行けよ! お前は熱血漢だから、助けに行くんだろ!? ほら!!」
中田「テメーいい加減にしろよコラァ!」
俺「やんのかコラァ!」
二人で胸ぐらを掴み合い、事故車の前でプッツン寸前。
中田「てめー殺すぞ!」
俺「やってみろよ!!」
すると 先程の電話してたオッサンが、俺等の方に走り寄ってくる。
オッサン「ど、どうしたんですか!?」
中田「どうしたもこうしたもねーよ! コイツが 見て見ぬフリしろとか言うんだよ!」
俺「いや、どう見ても運転手死んでるだろ! こんなの即死に決まってんだろが!!」
オッサン「あの~・・・・」
二人「なに!?」
オッサン「運転手は、『私』なんですけど・・・・。」
二人「・・・・お前かい!!!!!!!」
オッサンの話によると、グシャグシャになった運転席に ちょうどポッカリと空間ができ、
そこに うまくハマッたのだと言う。 なんと奇跡の「無傷」。
オッサンはその後 自力で運転席から脱出し、警察に電話を掛けた。
電話を終えると、目の前で二人の若者が喧嘩をしているではないか。
そこで止めに来たという訳だ。(なんじゃそりゃ)
その後 やってきたカップルと、俺・中田・オッサンで、車を 道路脇に押した。
恐らく ひっくり返った車を押すという経験は、俺の人生で、これが最初で最後になるだろう。
警察の事情聴取が嫌だったけど、オッサンが
「全然無事だし、帰っていいよ^^」と言ってくれたので、
お言葉に甘えて、そのまま俺達は事故現場を去った。
帰りに中田とファミレスに寄り、その日の出来事で 大いに盛りあがったのは言うまでもない。
俺は神とか奇跡なんて信じないけれど、あの夜 あの国道で起きた事は、
まさしく『奇跡』と呼ぶに相応しい出来事だった。
~fin~
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