綿アメ屋台/フィーブル藩国
「はい、いらっしゃい! いらっしゃい 甘くてふわふわな綿アメだよ!」
今日の刻生・F・悠也はいつもと違い、ねじり鉢巻にハッピという姿である。目の保護の為のサングラスも、夜では意味が無いので外している。
「おっちゃん、綿アメ一つ頂戴!」
「ちょおだい!」
兄弟だろうか? 二人の幼児のうちの一人が刻生に向かい、硬貨を差し出す。
「おいおい、おっちゃんはよしてくれよ」
苦笑いしつつも、その両手は素早く動き、割り箸にアメを撒きつける。差し出す綿アメは二つ。
「はいよ」
「え、頼んだのはひと」
「今日は祭りだ。細かいことは気にすんな」
言葉を遮り、困惑する二人にニカッと笑ってみせる。二重のありがとうに手を振り、ザラメの在庫を確認する。
「儲けにならないじゃないですか、刻生さん」
掛けられた声に顔を上げると、見慣れた顔が三つ。フィーブル、久織えにる、へぽGSがやれやれ、と言った顔でこちらを見ていた。
「お、来てたんだ」
「いや、黒曜のカラーリングコンテストと聞きましてね」
「そうです、ロボ好きには堪りません!」
「いいですよね。ああ、私の萌牙」
いやはや、フィーブル藩国ロボ部ここにありか、と思いつつ笑う。日常のよくある会話と、非日常のお祭りの雰囲気が重なる、こそばゆい感覚が気持ちいい。
「コウタロー、綿アメ食べたい!」
「あまり食べると太るぞ」
「ぶー、コウタローの意地悪!」
「お客さんだ。はい、これ持って廻ってきなよ」
藩王たちに作り置きの綿アメを渡し、屋台前から追い払う。
やれやれカップルか。そう思いつつも、顔は営業スマイルを浮かべる。お客はお客。それに、嫉妬は醜いよなぁ。
「はいはい。兄ちゃん、綿アメ二つおくれ」
「はいよっと。どうぞ」
楽しそうに笑い合う二人の背中を見送りつつ、刻生は根源種族も祭りを楽しむなんてこと、あるのかな?と、思い人の顔を思い浮かべた。
いつか、自分達も彼らのように並べる日を願って。
注・・・冒険の結果で刻生・F・悠也は敵のパイロットと恋に落ちています。
最終更新:2007年05月23日 23:45