荻上 11:00  【投稿日 2005/12/22】

げんしけん24


荻上が学食で、ランチを注文しテーブルに運ぶと、笹原に声をかけられた。
(こんな時間にめずらしい・・・)
そう思いながらも、勧められるままに一緒に食事をとった。

荻「いつもあの教授は勝手なんです!」
笹原は笑いながら荻上のグチを静かに聞いている。
(この人は怒るという事無いのか・・・いや一度だけあったな・・・)
いつもニコニコして、自分のように感情を荒げる事の無い笹原に対し、
自分の意志が無いのかと思ってた時期もあったが、色々と行動を共にする
につれ、次第にこの目の前の男を理解するようになっていた。今では安心し
てグチや不平を口にするようになっている。そんな自分に少し驚いてはいた。

笹「午後からは部室に顔出すの?俺もヤボ用片付けてから、顔出すつもりだ
けど・・・」
荻「ええ、そうですね、あいかわらず、大野先輩はコスプレの事しか頭にあ
りませんけどね!そう、わたし・・・」

言いかけて、荻上は口を閉ざした。

笹「どうしたの?何か相談したいことでも?大野さんの件は俺からも少し釘
をさしとくけど・・・」
荻「いえ、別に・・・」

(この人に相談したところでどうなるだろう・・・。理解できる訳が無いの
だ・・・)
コミフェス当選の相談をしようとして、相談相手として相応しくない人間に
相談しようとした自分に内心で苦笑した。
(そう・・・分かるわけが無いのだ、この人に・・・男の人に・・・。でも
大野先輩なら・・・でもあの人も読みはしても描いた事がある訳では無い・・
それに大野先輩に相談するのって何かなー、あの人に弱み見せるのって何か
やだしなー)
そんな事を考えて、ボーとしている荻上を笹原は不思議そうな表情で見つめ
ている。

荻上は、背後に視線に気付き、嘲笑のささやき声を聞いて、ビクッとした。
昔、トラブルを起こした漫研女子の連中だ。突然不安感が荻上を襲った。一
人でいるときには感じない。あんな相手はいつも通り無視するか、侮蔑の表
情を返してやればいい。別に自分がどう思われようと知った事では無い。で
も何かいやな感じだ。自分でも何か分からない。何か大事なものを傷つけ、
失う喪失感と絶望感に囚われそうになる。急に笹原から離れたくなった。

荻「わたしこれで失礼します!」
笹「じゃあ、また後で・・・」
荻上は立ち去った。

(また、変な行動を取ってしまった。逃げた。逃げた?何から?)
自分でも分からない感情を抱きながら、荻上は学食を後にした。
最終更新:2005年12月31日 23:47