歪んだ愛 【投稿日 2006/03/09】
「ん…」
斑目は目を覚ました。カーテンの隙間からは朝の光が差し込んでいる。
今日は日曜日。仕事は休みだ。しばらくボーッと天井を眺めていると、頭に痛みが走った。
(痛っ…二日酔いか?)
そういえば昨夜、酒を飲んだ記憶がある。
(あれ…俺、誰かと一緒だったような…)
一人の時は二日酔いになるまで飲まない。誰が一緒だった?
(…なんだ…? 右腕が重い…)
ふと感じた右腕の重みを確かめるため、斑目は側に置いてあった眼鏡を取り、かける。
(ん~…?)
目を細め、重みの原因を睨む。
「それ」が何か判明した途端、斑目は今まで出した事の無い大声で叫ぶ。
「ぎょわああぁぁぁああぁあぁぁああぁぁああぁッ!!!!!!?」
隣で寝ていたのは、荻上。しかも一糸纏わぬ姿だ。気付けば自分も裸。斑目コンピューターが、今の状況を整理する。
(いや、待て。落ち着け、俺。うん、まずはアレだ。状況を整理しよう。何故に俺と荻上さんが裸なのか。そして俺は何故に荻上さんに腕枕をしているのか。更に、何故に同じベッドで寝ているのか)
ぶつぶつと呟く斑目。酔いなどとうの昔に醒めた。
そして斑目コンピューターが導き出した結論は。
(ヤッちまった…)
左手で顔を覆う斑目。しかも辺りを見回してみると、ここは荻上の部屋だということが分かった。
「ん…」
荻上が声を出したので、ビクッとなる斑目。否が応にも荻上の裸体に目がいく。
(ぅわ…きれーな肌…じゃなくて)
とりあえず右腕が重いので、そーっと引き抜く。
「…斑目さん…?」
斑目は口から心臓が出そうなほど驚く。荻上が目を覚ましたのだ。
「いやっ! あのっ! これはね! 違うんだ! 俺、酔っ払って、記憶がなくて…っ!」
上手く言葉が出てこない。すると荻上が再び目を閉じた。
「いいんです。私から誘ったんですから」
「へ、へー、そうなんだ。って、ええぇぇッ!?」
「しょうがなかったんです」
「しょうがなかったって…?」
《ピンポーン》
玄関のチャイムが鳴った。斑目の心臓は止まりそうになる。あろうことかチャイムを鳴らした人物は勝手に玄関を開け、部屋に入ってきた。
「え!? いや! 入ってきたよ荻上さん!?」
「……」
そして、部屋の戸が開かれた。
そこに立っていたのは。
「さ、笹原…」
笹原だった。笹原は二人を見ると、ゆっくりと近付いてきた。
「いや! 笹原、違うんだ! これには深いワケが…!!」
笹原は斑目の側まで来ると、微笑んだ。
「いいんですよ、斑目さん。全ては僕の計算通りだ…」
「な…!? ま、まさかお前……自分の彼女までも利用して…!?」
「彼女? まさか。それは表向きですよ」
「そ…そんな……荻上さん、こんな…これでいいの…?」
斑目の問いに、荻上は小さく答える。
「仕方ないんです……だって私は笹原さんが好きですから…」
「そんなの…そんなの間違ってるよ荻上さん!」
「…」
「さて、斑目さん。これで貴方は僕の彼女を奪ったということになる。これをみんなにバラされてもいいんですかね?」
「笹原…お前…」
「ふふ…結局貴方は、僕といるしかないんですよ。そう、それこそ一生……ね」
「くっ…」
「もう離しませんよ。斑目さん…」
「やっぱ、笹×斑はいいなぁ」
荻上は一人部室で原稿を描いていた。前々回は高×笹、前回は斑×咲と描いてきたが、やはりこの二人の方がしっくりくる。しかも今回は自分も登場している。
「自分が出るって恥ずかしいなァ…」
ふと、ペンが止まる。
「笹原さん…本当に私のこと愛してくれてるんだろうか…。ひょっとしたらこの作品みたく、遊び…とかだったりして…」
自分の妄想で不安になっていたら世話しない。
と、そこに笹原がやってきた。
「こんにちはー。あれ? 荻上さん一人?」
荻上は笹原の方に振り向くと、涙目で訴えた。
「笹原さんっ、私のこと、本気で愛して下さいね!?」
「へ?」
完
最終更新:2006年03月12日 01:53