笹原 13:00  【投稿日 2006/01/04】

げんしけん24


「なんでいるんだよ・・・。」
「オッス、兄貴~。」
結局大学にいてもすることがなかったので、家に帰ったところ、
恵子が堂々と入り込み、ゲームをしていた。
「また勝手にゲームしやがって・・・。」
「いいじゃん、メモリーカードは自前だしぃ。」
そういって恵子は画面から目を離さずに話す。
やれやれといった顔で自分もテーブルの横に座る。
「お前、学校いってるのかよ。」
「ええ~。いってるよ~。」
「じゃあ何でいるんだよ。」
「今日はたまたま~?」
やっぱりやめるな。
そう思ったものの、かける言葉も見当たらない。
「あ、そうだ、高坂さん部室いた~?」
やはり画面から顔を離さずに。
「俺がいたときはいなかったけど、今頃はいるかもな。
 春日部さんも来てたし。」
「え、本当!?じゃ、あたし行ってくんね!」
そういって、恵子はすぐさまセーブするとゲームを切って外へ飛び出していく。
「ったく、ちゃんと片付けていけ!」
「また今度~!」
その恵子の返事が聞こえたのはすでに玄関から外に出て行こうとしているときだった。
「今の片づけをどうやって今度やるっていうんだよ!全く・・・。」
しかし、いなくなってくれたのは好都合だった。


思い出すのはあの姿、あの顔、あの声。

一人買ってきた昼食をとりながら考え込む。
「はあ・・・。」
なかなか感情の収まりがつかない。
(結局は、どう思ってるんだ?)
荻上が入ってきて、少しずつ話すようになって。
去年の夏コミのときは一生懸命手伝ってくれて。
人を避けてるように見えるけどどこか抜けていて。
「そういえば冬コミのときは・・・。」
思い出をたどるたびに笑みがこぼれる。
サークルの会長として忙しかったし、考える事もなかった。
後輩で、ずっと妹のように思ってきたけど。
「そっか。そういうことか。」
情けない。今頃気付くなんて。
「自分がそういう感情持つようになるなんて思ってなかったからなあ・・・。」
だからオタクは!そう、咲に突っ込まれたような気がした。

だけど、自分はどう思われてるんだろうか。
「嫌われてはいないとは思うんだけど・・・。」
しかし、そういう関係になるほど好かれてるとは思えなかった。
第一、笑った顔なんて見たことがない。
「こういうときどうすればいいんだ?」
いろんな漫画もゲームも体験してきた。
実際なってみるとこうも役に立たないものか。
「主人公にもう文句つけられないな・・・。」
どうすればいいのかなんて見当もつかない。
いままで、体験したことのない未知の領域がそこにあった。
最終更新:2006年01月08日 00:59