【 禁断の壷 2.5.5.6 】
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げんしけんSSスレ8
- 1 :マロン名無しさん
:2006/05/05(金) 01:55:41 ID:???
- 春───出会いの季節。
新しい出会いへ
踏み出す覚悟はありますか?
全てはげんしけんから始まり、また春が来る。
さあ、あなたも「げんしけんSS」の世界へ───。
げんしけんSSスレ第8弾。
未成年の方や本スレにてスレ違い?と不安の方も安心してご利用下さい。
荒らし・煽りは完全放置のマターリー進行でおながいします。
本編はもちろん、くじアンSSも受付中。
☆講談社月刊誌アフタヌーンにて好評連載中。7月号(5月25日発売)で、フィナーレ!
☆単行本第1〜7巻好評発売中。
☆作中作「くじびきアンバランス」ライトノベルも現在3巻まで絶賛発売中。
【注意】
ネタばれ含んだSSは公式発売日正午12:00以降。 公式発売日正午以前の最新話の話題は↓へ
げんしけん ネタバレスレ9
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1145498528/
前スレ
げんしけんSSスレ7
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1145464882/
げんしけん(現代視覚文化研究会)まとめサイト(過去ログや人物紹介はこちらへ)
http://ime.nu/www.zawax.info/~comic/
げんしけんSSスレまとめサイト(このスレのまとめはこちら)
ttp://www7.atwiki.jp/genshikenss/
げんしけんSSアンソロ製作委員会(SSで同人アンソロ本を出そうという企画・参加者募集中!)
ttp://saaaaaaax.web.fc2.com/gssansoro/top.htm
- 2 :マロン名無しさん
:2006/05/05(金) 01:56:26 ID:???
- エロ話801話などはこちらで
げんしけん@エロパロ板 その3(21禁)
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1144944199/
げんしけん@801板 その4 (21禁)
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/801/1127539512/
前スレ
げんしけんSSスレ6
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1143200874/
げんしけんSSスレ5
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1141591410/
げんしけんSSスレ4
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1139939998/
げんしけんSSスレその3
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1136864438/
げんしけんSSスレその2
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1133609152/
げんしけんSSスレ
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1128831969/
げんしけん本スレ
「げんしけん」 木尾士目 その129
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/comic/1145953585/
- 3 :マロン名無しさん
:2006/05/05(金) 05:14:27 ID:???
- >>1
乙です。
それにしても500レスにも行かぬ内にスレ立てにゃならんとは…
まあ長編の力作が多い証しですな。
- 4 :マロン名無しさん
:2006/05/05(金) 09:20:36 ID:???
- 本スレでレス付いてたので手直しして投下
ベルセルクの夢のかがり火からパクリ
大「本当に写真いらないんですか?」
斑「もう持ってるからそれで十分だし、あれでいい塩梅というかですね」
大「でも・・・」
斑「・・・いや、気にしないで。
ありゃ俺を思ってやってくれた事だし、別にその事で咲さんと
気まずくなってももう卒業なんだし」
大「これで終わりにするおつもりですか?」
斑「・・・そうね、それにあの時は夢中でそれ所じゃなかったけど(汗;」
大「・・・・・・」
斑「それに正直いうと、あの時はこうも思った・・・
みんながやってる事に比べたら俺がやっている事なんて
どうでもいいことなんだって・・・
みんな生きてる事をまるまる賭けられるモノを持ってる。
すごいなって思った、そういうのって・・・
それに比べれば写真がどうとか、そんなの大した事じゃないし。
・・・そう思った」
大「・・・」
斑「いい眺めだよなあ」
大「・・・?」
斑「田中はさ、服装の勉強をしてるけど、最初はそんな熱心だとは
思ってなくて、まあ趣味くらいだろうって・・・
久我山はあんなんだから外回りなんか出来ないだろうって、
咲さんの初対面の印象は・・・最悪だったしw
俺達なんかとは合わないよなって、でも振り返ればげんしけんに
欠かせない人だったし、
高坂君はまあ、笹原も立派になったよなあ」
大「ですねえ・・・」
- 5 :マロン名無しさん
:2006/05/05(金) 09:24:27 ID:???
- 斑「大野さんも荻上さんもすごくよくやってるし、朽木君もね。
げんしけんの一人一人のそんな夢とか思いとかが見えてきてさ。
夢のかがり火・・・・・・・みたいな」
大「うまいこと言いますね」
斑「ははっ」
大「でも、そうですよ」
斑「そうやって小さな火を持ち寄ってみんな集まっているのかなって
・・・その小さな火が集まってげんしけんって
大き・・くはないけど大きな火になってて・・・」
大「・・・」
斑「・・・でもですね、
ここに俺の火はなかった」
大「・・・そんな」
斑「そうじゃなくて、俺はその火のそばでちょっと暖まっていこうって・・・
そのためにフラッと立ち寄ってただけだって気付いたっていうか・・・
最初は・・・萌へさえあれば生きていける自信があったし今だってある。
げんしけんに入る前だってどんな時だってやってこれた。
・・・でもそんなことに大した意味はないんだなって・・・
物心ついた頃には萌へがあったし俺には萌へしかなかったから・・・」
大「・・・」
斑「萌へが嫌になったんじゃない、だけど、ただ萌へているだけで、
萌へしか知らないってだけで、俺は萌へをやってきたのかなって・・・
・・・そして何より、一番肝心な萌へる理由ってやつを俺はいつも
他の何かから与えられてたのかも知れないって・・・」
大「斑目さん・・・」
斑「・・・はは、長々と変な話しちゃったな。
こんな事を人に話すなんて、なっさっけねーw」
大「いえ、そんな事ありませんよ。
それにお互い様です(笑」
- 6 :マロン名無しさん
:2006/05/05(金) 09:27:33 ID:???
- 斑「あのさ、今の話は田中には内緒にしといてね(笑」
大「はい、内緒です」
斑「ははっ」
大「斑目さん、もしかして、げんしけんをやめるおつもりですか?」
斑「追いコンが終わるまでは這ってでも付き合いますよw」
大「その・・・後は?」
斑「その後って事でw」
- 7 :マロン名無しさん
:2006/05/05(金) 11:36:18 ID:???
- >夢のかがり火
読んでて切なくなった。非創作オタの苦悩…?
そーいう熱意に参加できない寂しさがあるのかな…斑目には…
- 8 :マロン名無しさん
:2006/05/05(金) 21:47:46 ID:???
- >>1
遅くなりましたがスレ立て乙です。
スレ消費、早くなりましたねー。
- 9 :マロン名無しさん
:2006/05/06(土) 00:13:27 ID:???
- さて、7レスほどで軽いのをひとつ投下します。
- 10 :まえがき
:2006/05/06(土) 00:14:05 ID:???
- 「トライアングル」
アホな話なんで適当に読み流してください。
- 11 :トライアングル1
:2006/05/06(土) 00:15:01 ID:???
笹原たちが卒業して数ヶ月がたった。
今日は久々に皆が集まる日だ。
前に追い出しコンパをやった居酒屋に、OBと現部員が集まった。
大「でもホント久しぶりですね〜〜〜!」
田「こうして集まれる機会がなかなかないからなぁ」
久「み、皆が予定合わせるとなると、難しいよね」
笹「あ、でも高坂君はどうしても来れないんですよね、残念だなぁ」
田「1ヶ月缶詰め中だったっけ?ゲーム会社も大変だな」
座敷で話に花を咲かせていると、急にパシャッ!とまぶしい光が射した。
皆驚いて、光の出所を見る。
笹「あ〜びっくりした、朽木君か」
荻「…朽木先輩、ちょっと落ち着いて座ってたらどうですか」
朽「にょ〜!せっかくなのでカメラ!カメラ!」
大「朽木君、はしゃぎたい気持ちはわかります。だからせめて一言かけてから写真撮ってください!」
朽「にょ〜、ノリが悪いですぅ!」
荻「場の空気読んでください」
朽「…わかりましたにょ〜」
笹「へえ、朽木君も丸くなったね」
朽「毎日大野先輩と荻上さんに怒られまくって、さすがに懲りたです……」
- 12 :トライアングル2
:2006/05/06(土) 00:15:44 ID:???
- 笹「…ところで、斑目さんはまだ来てないんですね」
笹原はさっきからずっと気になっていたことを口にした。
田「ああ、さっきメールきて、『少し遅れる』ってさ」
笹「そうなんですか」
大「咲さんも遅いですねぇ…電話で、遅れるっていってましたけど」
荻「春日部先輩は卒業以来ですね、楽しみです。」
そのとき、「や〜遅れてゴメン!」と言いながら、2人が同時に到着した。
笹「あ、ども……………」
挨拶しかけて、固まる。その場にいた全員が固まってしまった。
春日部さんが、斑目と腕を組んで入ってきたのだ。
ありえない光景に、皆声も出せずに思考停止していた。
大「…さ、咲さん?あのぅ…………」
ようやく大野さんが口をひらく。
咲「よ、大野、久しぶり!!」
大「…えーと………斑目さん?」
斑「久しぶり、大野さん」
大「………………………………(汗)」
駄目です笹原さん!私には無理です!という顔で、大野さんは笹原にアイコンタクトで訴えた。
- 13 :トライアングル3
:2006/05/06(土) 00:16:21 ID:???
- 笹「…ええーと…、何で腕組んでるんですか?」
笹原が単刀直入に聞く。
皆が冷や汗ダラダラで見守る中、春日部さんはこともなげに言う。
咲「ああ、付き合ってるから、コイツと」
笹「は?え?…えええええ〜〜〜?」
大「えっ、つつつ付き合ってるって…聞いてませんよ!!」
笹「え、こ、高坂君とは…?」
咲「コーサカとも付き合ってるよ」
笹「…えーそれってつまり…」
朽「うう、浮気デスカーーーーー!!??こんな堂々と!!」
とりあえず食いついてきたのは朽木君だった。
咲「浮気じゃないよ、本気半分」
大「は、半分って…」
笹「…斑目さん、どういうことなんですか?」
さっきから妙におとなしい斑目に振った。
斑「いやまぁ、ねえ…こういうことなんだよ」
笹「ああ、そういうことなんですか………って全然分かりませんよ!!」
斑「笹原、しばらく見ない間にノリ突っ込みまで覚えたんだな。成長しちゃって…」
笹「何をもって成長というんですか」
荻「笹原さん、話ずれてますよ(汗)」
笹「荻上さん、軌道修正ありがとう!で、何で春日部さんと付き合ってるんですか!?」
斑「………」
斑目は遠い目をする。
- 14 :トライアングル4
:2006/05/06(土) 00:17:20 ID:???
- 斑「あれは俺が三年生のときだった…」
笹「…あの〜その話、長くなります?」
斑「うん。全部語るとざっと100レスくらい」
笹「はしょって下さい」
斑「ひでぇ!!」
笹「で?何でこんなことになってるんですか?3行くらいで説明してください」
斑「…高坂、仕事が忙しすぎるんだよ」
笹「え?」
斑「スケジュール見ると一年で半分くらい仕事。ほとんど缶詰め」
笹「…あの〜労働基準法いは(ry…」
斑「そこは流せ。長くなる」
笹「はぁ」
斑「…だから、高坂が仕事でいなくなる間、春日部さんは俺と付き合っている。高坂が長期休暇になると、春日部さんは高坂と付き合う。そういう風に3人で同意したわけよ」
笹「………え、高坂君も知ってるんですか?」
斑「うん」
笹「高坂君は何て?」
斑「『別にいいよーそれで皆が納得できるならー』…って」
笹「………えええええ〜〜〜?…ていうか、斑目さんはそれでいーんですか!?」
斑「笹原…俺最近考えたんだけどさ…。一夫一妻制、ってなんなんだろうな…?」
笹「はい?」
斑「色々考えすぎて吹っ切れたんよ。そんな常識、俺達のような若者が覆してやるのだ!!」
笹「…はあ??」
握りこぶしを作り力説する斑目。
- 15 :トライアングル5
:2006/05/06(土) 00:17:56 ID:???
- 咲「まーそんなわけでさ」
笹「いやいや全然分かりませんよ」
咲「自分達が納得してるんだからいいんだよ。ねー斑目!」
斑「なー!」
笑顔で息ピッタリの2人。
笹「…はぁ………」
疲れて言葉が続かない笹原。固まったままの一同。
咲「まぁ、2またかけてるからにはあっちで受けたりこっちで攻めたり、大変だけど。でも楽しいからいいんだ!」
ヤケクソに見えるほど元気に言う春日部さん。
(斑目さん受けなんだ………)
別に知りたくないことを知ってしまいがっくりと肩を落とす一同。
…いや、人知れずエキサイトしている女子が2人。
大(そ、そうだったんですか……!)
荻(…やっぱりそうだったべさ………!(ニヤリ))
特に荻上さんの頭の中は、妄想が暴走してはちきれんばかりになっていた。
(高×斑!高×斑!!高×咲、咲×斑前提の 高×斑!!!)
- 16 :トライアングル6
:2006/05/06(土) 00:18:41 ID:???
- (うわコレヤベーーー総攻め×総受けの夢の競演だべ!
春日部先輩はカモフラージュで!放置プレイで!!(笑)
高「咲ちゃんに近づいたのは…僕に近づくためなんでしょ?」
斑「…そ、そんなこと…………」
高「ふふ、口ではそんなこと言ってても………」
首筋をつーっと撫でる。
斑「くっ…」
高「ほら相変わらず敏感ですよね、こんなだからどこにも行かせられないんですよ………」
おーーー いーいーいー!さすが帝王…いやいや魔王!!
斑「お、俺は本当に春日部さんを………!」
高「いいんですよ、僕はどっちでも…。僕から逃げられると…いや僕を忘れられると思ってるんですか?」
斑「くっ…!」
そんであーなってこーなって………………………)
- 17 :トライアングル7
:2006/05/06(土) 00:19:12 ID:???
- 荻「…はっ!!」
目が覚めると、自分の部屋の天井が見えた。
荻「………………」
(アレ?夢だったべか、さっきの………。)
ふと見ると、隣の部屋から笹原が顔を出した。
笹「荻上さん、大丈夫?ずいぶんうなされてたけど」
荻「ひへっ!?え、う〜〜〜、その…」
実はうなされてたのではなく、「高坂さんと斑目さんでホモネタを想像する夢を見て萌えてました」…なのだが、言えない。
笹「どうしたの?具合悪い?」
荻「いえっ、大丈夫です!すぐ起きます!!」
ベッドから出て服を着替えながら、
(…とりあえず、このネタでしばらくいってみるべか…今日の晩からネーム作って…!!)
…と考える荻上さんだった。
OWARI
- 18 :あとがき
:2006/05/06(土) 00:19:49 ID:???
- とうとう夢オチをつかってしまった…orz
801描写って難しい…自分にはこれが限界でアリマス!
前に他の方が書いた近い内容のSSを読んだ気がするのですが、似通ってたらすいません。
- 19 :マロン名無しさん
:2006/05/06(土) 01:45:21 ID:???
- >トライアングル
あはははw
荻上さんの801妄想落ちは結構ありますねwまとめの現視研の日常あたりにちらほら。
しかしまあ・・・。
こんなことをたくさん妄想してる荻上さんはきっと幸せなんだろうなあ・・・。
- 20 :マロン名無しさん
:2006/05/06(土) 03:17:04 ID:???
- ハイどーも、こんばんは。
どうやら昨日私が前スレに投下してすぐに、
新スレ立ててくださったみたいですね。
>>1さん、手間かけさしたみたいで申し訳ない。
では「GENSIKEN VS
LABUyan」ラスト投下と参ります。
- 21 :GENSIKEN VS LABUyan (17)
:2006/05/06(土) 03:18:29 ID:???
- ――だが、俺も、別に少年まんがの悪役とゆーワケでは無い。お約束になどカマってられっか。
ならば行なう事は、ただ一つ。すなわち『変身中のヒーローへの直接打撃』である。
ゴシカァン。
平たく言うとカズフサがポージング決めてる最中に、手近なパイプ椅子ひっつかんで頭ぶん殴った。
ココが会議室でよかった。手ごろな武器が一杯あって。いやー、イイ音したなぁ、
…………って、いくら相手がギャグマンガキャラだからって、ちょっとやりすぎたか?
ぶっ倒れたうえ、頭からドックドックすごい勢いで流血してるし……
いやー、ウチ(げんしけん)とかのシリアス漫画だったら絶対死んでるなぁ、コレ。
殺しちまっては寝覚めも悪い。警戒しながらも、とりあえずは倒れたカズフサに近づく。
「……あのー、カズフサさん? 大丈夫ですカナ? カナ?」まあ大丈夫な訳ねぇが……って、ヤベェ!!!
カズフサの野郎、片手だけで上体を起こしたかと思うと、倒れたままの姿勢でパイプ椅子投げて来やがっ……ガガガッガッ!!
……クソ、被弾した。なんだよあの動き。テニスかなんかのギャグマンガか! 人間の動きじゃねえだろ!!
椅子は左肩をカスめただけだが、その肩がもー、しばらく使いモンにならんな……バカヂカラめ。
椅子の方は椅子の方で、壁に当たってバラバラになっちまった。あー、壊しちゃった。怒られるかなぁ。
- 22 :GENSIKEN VS LABUyan (18)
:2006/05/06(土) 03:20:30 ID:???
- そして、攻撃が十分効果をあげた事を確認するとカズフサはゆったりと起き上がった。
「クックックックッ……コロスつもりでなげたんダガネ。意外と丈夫アンド素早いじゃないかコゾウ!!」
「いえいえ、それはお互い様ですにょ。あそこから蘇るほどのカズフサさんのタフネス振りには感服するしかございませんナ。
……それに、春日部女史の鉄建制裁を毎日のよーに喰らってるワタクシからすれば、貴方の先ほどの攻撃など
赤子が撫でたほどにも感じませんにょ!!」
強がりでしかないし、実際痛いが……自分で言ったとおりでもある。コイツ、春日部女史よりは多分弱い!!
それに、俺には日頃アキバ巡りで鍛えた足腰がある!
時には十数kgのリュックを背負い、雑居ビルを上り下りし、日に寄っては数十kmを踏破するのだ!!
加えて、コミフェスでの開幕ダッシュの為に短距離走の訓練は欠かしていない!!
こんなビルダー的なお座敷筋肉で膨れ上がったマッチョデブに、素早さで負けるわけが無かろう!!
「クフゥ……ただのキモオタと思って見くびっていたが、意外とやるじゃないか。
オレ様の敵手として十分な実力があると認めてやろう、クッチーよ!!」
……ほう。ようやく俺の事を『クッチー』と呼ぶ気になったか。
ならばオレも男として逃げる訳にも行くまい。全力でこいつに立ち向かい……そして打ち倒さねば!!
「キモオタにキモオタといわれるのは心外ですな、カズフサさん。アナタほどにはキモク無いと思っているんですがにょ!!」
そして俺もそう言いつつ、さっき壊れた椅子の部品を掴むと(足のパイプ部分だ)一気に殴りこむ!!
「鏡を良く見るんだな、コゾウ! 貴様ほどにはキモオタ面などしておらんわ!!」
パイプは腕に当たりはしたモノの、カズフサの分厚い筋肉にとめられてほとんどダメージが入った感触が無い。
そして返す拳でカズフサの豪腕がうなり……俺も何とかかんとかパイプを使ってそれをさばき直撃を避ける。
「そのセリフ、ソックリそのままお返しいたしますにょ。貴方の内面のキモさがそのまま表れたようなキモオタ面ではありませんか!!」
奴の攻撃をかわした勢いで、そのまま一旦間合いを外すため一歩下がる。こっちにゃ得物がある分リーチを取った方が得策だからだ。
- 23 :GENSIKEN VS LABUyan (19)
:2006/05/06(土) 03:22:03 ID:???
- 「だまらっしゃい!! キモオタって言う方がキモオタなんじゃい!!」
そうはさせじと、追撃してくるカズフサ。突進する勢いで田丸先生が大好きな鉄山ナントカを決めてくる!
バカが、そんな大技いきなり出して当たるか……って、俺本体はギリギリかわしたもののパイプを弾かれた! 早ぇえ!!
「なら今アナタはキモオタって二回言いましたよね、このキモオタ!!」
言いつつ、鉄山ナントカの後の隙だらけの背中に肘をぶち込む……が、なんて硬い筋肉だ!! こりゃダメージねーぞ!
「ほ〜らキモオタって言ったネ! 最初に言った方がキモオタなんデスぅ〜〜〜!」
そしてうなるカズフサの豪腕。あわててガードは固めたもののガードの上からでも、重い。固い。痛い。
だからこそ、しかし、それで確信する。やっぱコイツの攻撃、春日部女史よりは弱い!!
なら……近距離の乱打戦で決着つけてやるわ!!
「じゃあ、やっぱりアンタがキモオタだ!! 最初に言ったのそっちじゃありませんかにょ!」
そう言いつつガッチリ構えると、こっちの意図を理解したのか、やはりカズフサも打ち合う姿勢に向き直る。
「いい加減黙れキモオタ!!」
殴り。殴られる。
「キモイんじゃキモオタ!!」
かわし、かわされる。
「往生せいやキモオタ!!」
蹴り、蹴られる。
「うっとしぃんじゃキモオタ!!」
パチキを二人同時に発動し、二人同時に頭を抱える。
「キモオタ!!」
もはや、どっちがどうなってんだか俺にはわからない。
「キモオタ!!」
カズフサだってそうだろう。
「キモオタ!!」
既に二人とも顔はボッコボコで、この後の撮影なんて絶対不可能だろう。
「キモオタ!!」
止めて欲しい、でももうドチラかが倒れるまで止まらない。
「キモオタ!!」
コレもカズフサも同じ思いだろう。
―――そして、幸か不幸か、一人の闖入者によってこの乱戦は止まる事となった。
- 24 :GENSIKEN VS LABUyan (20)
:2006/05/06(土) 03:24:03 ID:???
- カチャリ。
会議室のドアの開く音が聞こえた。
ヤバイ! 誰か入ってきた!! こんな大暴れしてる所見られたら、何の言い訳も出来なさ過ぎる!!
だがドアは俺のちょうど真後ろ。死角になっていて誰が入ってきたんだかサッパリ分からない。
だからって、確認しようと後ろを向いた瞬間、カズフサの超必殺技が俺にヒットし、
リタイア& To Be
Continuedになってしまうこと間違いなし!
そうこう俺が混乱してると、突如、侵入者が口を開き、更なる混乱を巻き起こした。
「ダイジョウブだよ オレ トーチャンの トモダチだから」
「ウソだ! トーチャンのトモダチは ジャンボだけだ!!」
「はいらせてください」
「ダメです」
……は? このセリフは確か……でもなんで今このタイミングで聞こえてくる。後ろから?
見れば、オレの眼前のカズフサはポカンと闖入者の方を見ている。なんだ、どうした?
「アメいる?」
「いる」「あ」
「おじゃましまーす」
うん、やっぱアレだ。ついこないだ5巻が出たアレ。(*注5)
そして「はいんな!!」と、いう声とともに―――
「ギャーーーーッ!!」
―――俺の背中にごっつい衝撃がはしってブッ倒れた。ちなみにギャーって言ったのも俺。
マズイ、起きなきゃカズフサの攻撃が来る……と、思ったが、
当のカズフサは放心したかのように俺の後ろを見つめ、そしてポツリとこう言った。
「スーたんだ」
- 25 :GENSIKEN VS LABUyan (21)
:2006/05/06(土) 03:31:09 ID:???
- は? スー? スーってスージー? ジョセフの嫁さんじゃないほう?
俺もくるりと後ろを向き、確認する。
不機嫌そーな面、ひくいかるいうすいな体つき、そして特徴的なツインテール。
スーだ。うん。確かにスーだ。ウチの。
表情からは分かりにくいがどうやらご機嫌らしく、手にはアレの5巻を持って眺めている。
「はいんな! はいんなー!」
うん、そーゆーことね。スーが朗読してた、と。はいはい理解理解。カタコトさが抜けて日本語上手くなったなぁ。
………………じゃねーよ!! わかんねーよ!! 何でスーがここにいるんだよ!! 今アメリカじゃねーのかよ!!
一方カズフサを見ると、なんかもー、感極まったらしく、今にもスーに飛び掛りそうに
「うわーん、スーたーん!!」あ、飛び掛った。
止めようとも思うが間に合わない。と、言うかもうそんな体力無い。
メゴッ。
しかし、そんなカズフサとスーの間に割って入り、カズフサの顔面に鉄建制裁を食らわしたのは……春日部女史だった。
「あっちゃ〜、バレちゃったかぁ。どうするよ、ササヤン?」
バレるも何も、なに言ってんだかサッパリ分からない。そもそも春日部女史は仕事じゃなかったっけ?
「あー、ホントどうしましょうかねぇ」と、言いつつ笹原先輩までもが室内に入ってくる。
俺だってホントどうしたら良いんだかわかんねーよ。なんだよ、このシチュエーション。
……ふと、横を見ると、春日部女史にブチのされたカズフサが、女性に助け起こされていた。
「Are you all right?
humm...Kazufusa?」
「アア、まったく、ヒドイ目にアッタヨ……って! グボァ!!
う、う、ウブ毛ザラザラの金雌(ブロンダー)が、セッシャの純潔を犯さんと欲して寄ってくるっ?!
そ、その、胸のぶよぶよの二つの脂肪の塊を近づけるなぁーーー……バァァァァァッ!!」
カズフサを助けおこしていたのはアンジェラ。
そして失礼な事を口走ったカズフサは再び春日部女史の鉄拳で眠りに付く事になった。
あー、今の喰らったらしばらく起きねーなー。
- 26 :GENSIKEN VS LABUyan (22)
:2006/05/06(土) 03:33:08 ID:???
- 「最初に聞いた時は冗談かとも思いましたが、本当に朽木センパイ以上のサイテー男ですね、このひと」
笹原先輩の後ろから、なにげにひどい事言ってるコイツは……やっぱオギチンか。
おまえ男できてから態度でけーんだよ。
そして。
「……だよなぁ、荻上。コイツがカズフサか。話には聞いてたけど噂以上だわ、こりゃ。クッチー、お疲れさん」
そうお言葉をくださる春日部女史に「はぁ、実際疲れましたにゃ……」と、しか言えない俺。もうボロボロだし。
「ホントたいしたもんダワ。ウチのカズフサとやりあってコレだけ持つだなんて、ゴクロウサン」
そしてコレまた、いつの間にか俺の隣にいた女性が労いの声をかけてくる。結構美人だ。
……えーと、このヒトはウチの面子じゃ無いな……って「ラブやんさんですかにょ?!」
「アラ、わたしのことをご存知カシラ? フウ、アタイの美貌は作品間を超えて伝わってるってコトね!」
うん、天使と言うだけあって、美人は美人だ、喋らなきゃ千倍良い。口を利いたらむしろ女カズフサ。
続けて「ダメでしょスー! 勝手にうろちょろしちゃ!」とかナントカ言いつつ大野会長までもがこの部屋に来る。
なにやらスーと英語でぽそぽそ話してるが、大まかに内容はわかった。
『この部屋から大声&破壊音が聞こえてきたんで、ついつい興味を惹かれて入ってきた』と。
更には『知ってる人がいたからじゃれ付いてきた』とも。
……ああ俺、一応『知ってる人』に分類されてたんだ。それはちょっと嬉しいかもしれない。
そんで、消えたスーを求めてこのパーティメンバー全員でこのフロアを探し回っていた……と、まあそんなとこだろう。
でも日本にスーがいる理由には全然なってねぇ。
「いやもー、なにがどーなってんですかにょ? ワタクシサッパリわからないの事アルネ?」
しっかし、ナンボ考えてたって判らんもんはわからん。とりあえず、説明を求める事にする。
- 27 :GENSIKEN VS LABUyan (23)
:2006/05/06(土) 03:35:01 ID:???
- ……すると、この場の全員が(日本語わからない2名は除く)、
田丸的擬音で言うと『プイス』って感じで俺から目をそらし始めた。
……なんだ? そんな後ろ暗い話なのか?
しばらく『誰が言うんだ?』的な空気がその場に流れていたが、最初に動いたのは春日部女史だった。
しかし、自分で事実を伝えるつもりはないらしく、「ほら、ササヤン、責任者でしょ?」などと言いつつ
笹原先輩を前に押し出し、ぐいぐい俺のほーへ押し付けてくる。
そして押し付けられた笹原先輩は最初明らかにキョドっていたが、観念したのか重々しく口を開いた。
「えーと、その、朽木君。お疲れさま」
「はぁ、実際疲れましたにゃ……」このセリフ本日二回目だけど、いや実際。
しかし仕事を頼まれた上に、大失敗。オマケにこの部屋の惨状と来たら……まあ、謝るしかないか。
「ところで、笹原先輩。実に申し訳ないことでアリマスが、
椅子は壊れるわ、壁は歪むは床は凹むわ、などなど、ご覧のアリサマでアリマして……」
「あー、良いんだよ朽木君。このくらいの被害ならむしろ想定内だからさ」
……へ? なんだそりゃ?
「あの、その、それはどういう……?」
「うん……実はね、大森さんがワガママ言って暴れだすのは考えられた事だったから……
……まあ、なんて言うか『暴れてもいい部屋』なんだよね、ココってさ」
だからなんでそーゆー部屋を選ぶか。まだ話が見えん。
「ところで話は変わるけど、朽木君『大合作』って知ってる? 実は今日の仕事ってそれだったんだけど」
知ってる。アフタヌーンがたまーにやる企画で(可能な限りの)全掲載作品のクロスオーバーを行なう無茶な企画だ。
最近のは表紙だけとか、PC用の壁紙だけとか、漫画一本作ってた昔に比べりゃしょっぱい仕事なんだが。
「はあ、存じております。まさか、ソレ用のフィルムを作るためにカズフサ氏とワタクシは隠し撮りされていた……と?」
「……あ、いやゴメン違うんだ。実は今回、朽木君の出番ってないんだよ」
「ハァァァ?! なんだとフザケンな!」
……イカン、今日は暴力ワールドに長く浸かり過ぎたせいか素が出た。いや、でも、マジふざけんな。
- 28 :GENSIKEN VS LABUyan (24)
:2006/05/06(土) 03:36:59 ID:???
- 「お、落ち着いて落ち着いて朽木君! 実は俺の出番も無いし大森さんの出番も今回はないんだよ!」
おかしな話だな。一時期空気キャラになってたとは言え、仮にも笹原先輩はアフタの看板『げんしけん』の主人公だろう。
一方カズフサもそこそこ以上に人気のある『ラブやん』の主人公だ、コイツがはずされるってのも、まあ、無い話だ。
「ソリャまた面妖な話でアリマスな。いったいどうしてまたそんな変な事に?」
「うーんとね、今、アフタヌーンがって言うか、講談社全体が萌え傾向なんだよね」
「そーですにゃ、おかげで見るもの読むものにも困らないんでありがたいことですがにょ」
一般読者はどう思ってるかしらんが、少なくとも俺の本音だ。萌え漫画やアニメが増えるのは素直に嬉しい。
「でね? 今年はアフタヌーンコミックスの販促ポスターに、大合作を使おうって話になってるんだ。
……ただし、萌え化のアオリで出演するのは女性キャラ限定って話で……ね」
ありそーな話だ。しっかし、ちょっとそこまで露骨に萌え路線だと、流石の俺でもちょっと引くなぁ。
「と、ゆー事は我等げんしけんの女性陣も出演されるということなのですカナ? カナ?」
「スケジュールの都合も各連載の皆さん方で色々違いがあるから一度に撮影できないんだけど、
とりあえず、今日の撮りの予定はウチ……げんしけんと、ラブやんさん、ガンスミスキャッツさん、
しおんの王さんって、ところかな?」
な、なんですとぉーー?! ヤッベ、紫苑たん大ファンだよ俺!
「し、し、しおんの王の女性キャラって事は紫苑たんがコチラにいらっしゃってると言う訳でアリマすかーーッ?!」
「ガンスミですと?! メイたん! 永遠のロリータにして、セッシャの右手の恋人メイたんドコー?!」
…………そして、自分に都合のいい情報を聞くと一発で蘇生するカズフサ。流石だ。
- 29 :GENSIKEN VS LABUyan (25)
:2006/05/06(土) 03:39:45 ID:???
- 「……あ、いや、今日の分の撮影は全部終って皆さんもう帰られま 」
「バカな!? 帰ったですと?! どーしてそーゆー大事なイベントデーがあることを
事前にワタクシに教えていただけないのでアリマスかにょー!!」
あまりの出来事に笹原センパイが全て喋り終わる前に、怒鳴りつけてしまう。
「ソウダヨ! せっかくミニー・メイたんを眺めたり触ったり舐めたりするチャンスだというノニ!」
そして俺に続けて叫ぶカズフサ。
しかし、ソレを聞いたとたん、笹原先輩は再び黙り込んでしまう。
―――再び沈黙が訪れたが、その沈黙を破ったのは意外にもオギチンだった。
「……だって、教えたら来るじゃないですか。朽木センパイも。そこの大森さんも」
――――――あ、わかった。わかってしまった。
俺と同じ立場の筈のカズフサを見ると、キョトンとした顔をして指をくわえている。ダメだバカだコイツ。
ひっじょーに嫌な話だが、仮説が正しい事を確かめる為、俺もついには口を開く。
「つまり。我々は。ワタクシとカズフサさんは……本日のイベントを円滑に進めるため
問題児同士で『隔離』されていたと言う訳でアリマスな?!!」
この場の誰もが否定しない。つまりそーゆー事だということだ。
「な、なんだってぇ〜〜?!」そして一人驚くカズフサ。いい加減テンポずれてんの戻してくれ。
黙っているのが我慢ならない。俺は思い浮かんだ仮説を次々喋り散らかしていく。
「なるほどなるほど。ワタクシやカズフサさんのよーな人間はハブられてる空気に敏感でアリマスからナ……
こういうイベントがあることを黙っていると、むしろ敏感に察知されてしまう……
よって、イベント情報を嗅ぎ付けられてしまうくらいなら、いっそニセ情報を流して、
一箇所にまとめて管理してしまった方が楽……と、まあこんな所ですカナ? カナ?」
またも沈黙。つまりは肯定だ。
- 30 :GENSIKEN VS LABUyan (26)
:2006/05/06(土) 03:41:51 ID:???
- そして今回沈黙を破ったのは春日部女史だった。
「いやほらクッチー、元気だしなよ。私も撮影は断ったから出番ないし。おんなじおんなじ、ネ☆」
最高にカワイ子ぶったレア表情で言われても、全然フォローになってないです、春日部センパイ。
って言うかアンタ、オタまんが雑誌の広告になんかなりたくないだけだろ?! 興味半分で見に来ただけか!
更にフォローのつもりかラブやんさんが口を開く。
「ちなみに、ガンスミとかげんしけんアメリカチームをココまで連れてきたのはこのアタシ!
ラブ穴通って一発デシテヨ? ドオカシラ、アタシのあまりの有能っぷりに濡れちゃったんじゃなくって?!」
濡れねーよ。ついでに言うと勃たねーよ。
「そのね、朽木君? 隔離って言うか、似たもの同士仲良くしてもらおうと思っただけで……」
そして今更の様にそんな事を言い出す笹原先輩。フォロー遅いなー。コレで編集とか言って大丈夫か?
あと失礼な事抜かすな、誰が誰と似たもの同士だ。
「かみもキンイロになって! アメリカじんになっちゃうの?!」
更には春日部女史に取りすがりつつアレのセリフを棒読みするスーに至っては、もー何がなんだか。
騙されていた事に当然怒りの感情はあるのだが、しかしソレをどうしたら良いのかわからない。
そんな俺の肩にポン、と、手が置かれた。その手は大きく、そして暖かい。カズフサの手だ。
見れば、カズフサの顔には『田丸チックな満面の笑み』が浮かべられている。
オレは今どんな顔をしてるんだろう?
わからない。わからないが……カズフサのおかげで救われた気がする。
- 31 :GENSIKEN VS LABUyan (26)
:2006/05/06(土) 03:44:57 ID:???
- そしてカズフサと目と目が通じ合った。言葉など要らなかった。
拳を交えた漢同士のみに通じる、真の魂の交流がそこにあった。
カズフサは拳を握り締め、親指を立てると、その親指で喉を掻っ切る仕草をし、
そしてその親指を責任をなすりあって、わいわい騒ぎ続ける女性陣(+野郎一名)に向けた。
―――殺っちゃおうぜ、クッチー。こいつら二人で殺っちゃおうぜ。
―――ええ、カズフサさん。キルゼムオール or 鏖
or ジェーノサーイドでアリマスな。
俺が叫び。
「あっはははははは、皆さん! よくもワタクシをココまでコケにしてくれましたねぇ……絶対に許さんぞ虫けら共ーーーッ!」
カズフサも叫ぶ。
「コムスメども! 貴様らには二つの選ぶべき道があるっ!!
レイプしてSATSUGAIか、SATSUGAIしてレイプか好きな方を選べぇい!!」(*注6)
そしてオレ達二人は、勝ち目のない戦いへと突っ込んだ。もはや体力などない。しかしやるだけやるのみだ。
特攻の瞬間、限りない喪失感とともに、俺の心は無となり、空となった。そして俺は全てを失うとともに全てを得た。
もはや、俺の心を縛る者は何も無い。俺は限りなく自由であり、そして―――大暴れを開始した。
<劇終>
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(*注5)アレ:アレと言ったらアレ。横隔膜と言いつつ、みぞおちドツく漫画と作者が同じアレ。
(*注6)SATSUGAI:「SATUGAI」ではない。クラウザーさんには『さん』を付けろ。ジャギ様には「様」付けろ。
この作品はフィクションです。実際の人物・団体とは一切関係ありません。
特に講談社が大合作ポスター作ってるなんてのは妄想以外の何者でも無いので
講談社に問い合わせたりしないよーにしてください。
- 32 :GENSIKEN VS LABUyan 後書き
:2006/05/06(土) 03:54:28 ID:???
- ってなわけで、終了です。
こんなアホ話に長々とお付き合いいただきありがとうございました……
……って言うかちょっとは削る努力をしようぜ俺。特にラストの総ネタバレ部。
コンセプトは「大合作を自分で書いてみよう」だったんですが、
プロット段階ですらとんでもなく長くなったんで、カズフサVSクッチーに焦点を絞りました。
完全決着を望んでいた皆さんには申し訳ないですが、
ラストは「クロスオーバーVSモノ」のお約束で引き分けドローです。
カズフサに染められちゃったクッチーの負けと言う気もしないではないですが。そこは流せ。
なお、需要があるなら、後日談「GENSIKEN
VS LABUyan "Girl's Side"」を書くかもしれませんが
予定は未定で。ではおやすみなさい。
- 33 :マロン名無しさん
:2006/05/06(土) 04:32:24 ID:???
- ぎゃはははははwwww
笑わせていただきました!
特に最後のオチ・・・。クッチーカワイソスw
カズフサは・・・。まあ、歩く犯罪だし。
Girls Side、期待してますw
- 34 :マロン名無しさん
:2006/05/06(土) 04:36:40 ID:???
- おお、最後のクッチーとカズフサの友情(?)が良かったです。意気投合して大暴れ!
クッチー…カズフサには敵わないwでもある意味美味し(ry ていうか安心w
Girl's Sideも楽しみですよ。
- 35 :マロン名無しさん
:2006/05/06(土) 04:41:32 ID:???
- 馬鹿だw最高の馬鹿作品だこれwwwwwwwwwwwwww
最後の最後にDMCネタされたら噴出すしかないよ、書いた人GJ!
- 36 :マロン名無しさん
:2006/05/06(土) 04:44:01 ID:???
- なんでこんな時間に起きてる住人が多いんだ?w
いや俺もだけどさw
殴り合いシーンでちょこっと燃えた俺は間違ってないと思いたい。
あと最後の最後で1秒間に11回レイプ噴いたw
- 37 :マロン名無しさん
:2006/05/06(土) 10:53:49 ID:???
- ガチでシングルで戦った後は友情タッグ結成、これぞプロレスの最強タッグ結成の基本!
あの2人相手だと咲ちゃんでも大変だ。
(あとのメンバーはあんまし戦力にならんし)
お疲れ様です。
- 38 :マロン名無しさん
:2006/05/06(土) 17:33:58 ID:???
- >トライアングル
荻上さん、夢オチは漫画の神様が禁じた最大のタブーだ。
今回はオチたからいいけど、上手くオチなかった時には原監督がやって来るぞ。
気をつけろ!
- 39 :マロン名無しさん
:2006/05/07(日) 00:53:13 ID:???
- >>19>>38
感想ありがとうです。タブーですね…斑目がどーにか救われないかな、と考えていたらいつのまにか、
もういっそ3人で!とか変な方向に考えてしまい、現実的じゃないので荻上さんの妄想オチにしてしまいました。
救われてないのでやっぱ駄目ですね。漫画の神様(手塚治虫)と原監督には気をつけますw
- 40 :マダラメ三世3(感謝)
:2006/05/07(日) 07:43:25 ID:???
- GWの間に新スレですか!
前スレの>>445 >>446 >>447 >>448 >>497さん方
ご感想ありがとうございます!
ルパンと斑目の体型は似てますね。斑目スキーな人にも喜んでもらえて嬉しいデス。“情けないルパン”だけど、アンジェラというメガネフェチの同行者が現れて、マダラメ三世的にはハッピーエンドなのかもしれません。
今回話を作るにあたって「カリ城」は1回通しで見返しましたが、やっぱあの映画面白い。
で、重要なセリフはネットで検索しながら参考にしました。
>次は『くたばれノストラダムス』でw
いえいえ、さすがに1発ネタなんで「ノストラ〜」では書けません(w
でも、もし書くなら「ルパン対複製人間(マモー)」はいかが? いや書けませんけど。
そしてマモー役は、様々な時と場所に現れ、正体不明の「あ の 人」で……。
- 41 :マロン名無しさん
:2006/05/07(日) 11:25:13 ID:???
- マモー=初代か。
すると椎応大の地下には巨大な初代の脳○が……((((((( ;゚Д゚)))))))
- 42 :感想多謝。GENSIKEN VS LABUyan
:2006/05/07(日) 14:40:27 ID:???
- 前スレ 493-494 >読みながら笑ってましたw続きが気になるので次スレを立ててきます!
どうも、わざわざスレまで立てさせちゃったみたいで申し訳ない。
前スレ 495 >クッチーもSSスレ補正かけて餓狼伝化して迎え撃て!
「キモオタ!」「キモオタ!」の部分は確かに餓狼伝(小説の方)を意識したかも知れません。
>デパートか電気屋の人かな?
ヒ・ミ・ツ☆
前スレ 496 >昔あった「マダやん」と同じ人が書いてるのかな?
いや、別人です。つーか、いわゆる「SS」というジャンル書いたのコレが初めてです。
2chの文字ネタ文章ネタ系のスレとか板には昔から生息してるクチですが。
前スレ 509 >なかなかラブやんも細かく読まれてますね!なるほど…
いやー、コレが、ラブやんは単行本持ってなかったり。
ただカズフサの「オタとしての薄さ」は前々から気になってたんで少しそこを掘り下げました。
>>33-36
深夜四時台にコレだけレスがつく件について。
いやまー、あんな時間に投稿する俺もなかなかの夜更かしさんな訳ですが。
……そして、Girl's
Sideを楽しみにしてくださってるお二人には申し訳なく、
DMCで噴出すお二人にはある意味朗報とゆーかなんとゆーか。
今、俺の両手が勝手に動いて「アキハバラ・メタル・シティ」と言う名のプロットが書きあがりました。
……どうしましょう、コレ? ちょっとしんみりした萌え話を書くつもりが、またしょーもないギャグですよ奥さん。
>>37
俺の脳内では「ラブやん女性キャラ」もラブやん以外に来てる設定だったので無問題。
アンコとか『委員長』の、みのりチャンとか。
出すと収拾が付かないと思ったので、出しませんでしたが、田丸キャラに愛があるなら脳内で補完してあげてください。
- 43 :マロン名無しさん
:2006/05/07(日) 21:13:31 ID:???
- >「アキハバラ・メタル・シティ」ちょっとしんみりした萌え話を書くつもりが、またしょーもないギャグですよ奥さん。
え〜…ちょっと見たい…ような?ていうか是非読みたいっす。
- 44 :マロン名無しさん
:2006/05/07(日) 22:52:49 ID:???
- A・M・C! A・M・C!
とかいって煽ってみる。
「今だから言える 1999年7の月 オタクを滅ぼそうか迷った」
- 45 :マロン名無しさん
:2006/05/08(月) 03:02:11 ID:???
- オギウエーさんが0.5ワープ差で勝った!!
- 46 :マロン名無しさん
:2006/05/08(月) 13:09:17 ID:???
- 荻上さん→濡れ場を誤魔化してんじゃないよ!と罵られる
オギウエーさん→斑目に笹原の子を出産させた都市伝説を作る
- 47 :マロン名無しさん
:2006/05/09(火) 01:19:44 ID:???
- 1秒間に11回ワープなんてしたら・・・・オギウエーさんがぶっ壊れるんじゃ・・・
- 48 :マロン名無しさん
:2006/05/09(火) 01:50:55 ID:???
- >>47
地獄から来たオギウエさんをバカにすんなー!
- 49 :マロン名無しさん
:2006/05/09(火) 02:23:46 ID:Gcw5n65y
- うわー、DMC祭りだw
こんな雰囲気の中、こんなの投下して良いのかな…。
>>42さん、是非A・M・Cを公表してください!
それでは現聴研続編書いたので、3レスです。
荻上さんは出ますけど、オギウエーさんは出ません。残念ながら。
- 50 :現聴研第8話(1/3)
:2006/05/09(火) 02:25:07 ID:???
- 夏!照りつける太陽が傾きつつも、なかなか日は沈まない夏の夕方。
ここは夏祭りの音楽フェスティバル会場、中央公園。
特設ステージと、その前の椅子が並んだ野外会場が向こうに見えて
今出ているバンドの演奏が聴こえてくる。
綿菓子や焼きソバ、アメリカンドッグやかき氷などの出店が並んでいる
そこそこの人ごみの中を、斑目を先頭にして、笹原、荻上、大野達、
現聴研のメンバーがぞろぞろ歩いている。
斑目「今聴こえてるの、MOON CILDRENだぜ。渋いな!」
笹原「あー、言われてみれば…。」
斑目「今やってる名曲『日暮と少女』と『微熱帯』のメドレーがわからんのか!
まさか『雪のハレルヤ』やドラマ主題歌の『逃避』も知らないのか!?」
笹原「やー、ちょっと今まで範囲外でしたねぇ。」
斑目「ええい!現会長がこの程度の知識とは嘆かわしい!今度特訓だ、特訓!」
後ろから荻上は話についていけなくて傍観を決め込んでいるし、
大野と一緒に歩いている田中は苦笑して聞き流している。
田中「斑目、テンション高けーなぁ。緊張してんのかな。」
大野「あっ、終わったらアレ食べましょうね!」
そう言ってチョコバナナをチェックする大野には緊張が見られない。
しかし本番前の時間を全員がそわそわと手持ち無沙汰な様子ですごしている。
クッチーは既にステージ最前列で撮影&録音しまくりだ。
田中のカメラバッグも預けてある。高坂は咲に連れ出されて別行動。
ステージ上は、いつの間にか次のバンド、スピッシのコピーバンドになっている。
ボーカルが女の子なので印象がかなり変わっているが、なかなか上手い。
「♪だからもっと遠くまで君を 奪って逃げた〜」
手拍子や拍手、声援など会場もかなり盛り上がっている様子が伝わってくる。
- 51 :現聴研第8話(2/3)
:2006/05/09(火) 02:25:40 ID:???
- 荻上「有名バンドが原曲だと盛り上がってますね…。」
笹原「良い曲だし、俺も聴くしねぇ。それにしてもこの曲、うねってるベースが
特徴だけど、打ち込みでやってるね。」
荻上「これ弾くの面白いけど大変でしょうね、ベース。」
次の曲になって、歌い出しからして観客から歓声が上がる。
「♪遠く 遠く あの光まで――――」
斑目「次の曲は、新曲だな。笹原こないだこれカラオケで自爆してたよな。」
笹原「やー、なんかスピッシ、年々声が高くなってますよ(苦笑)。」
そんな会話をしながら、会場裏へと移動してきた。高坂と春日部も遅れてやってきた。
出演準備の最終チェックを始める。
荻上や高坂はそれぞれエレキギターとベースのチューニングをしている。
久我山は係の人にドラムセットの確認を受けている。
係員「出ているドラムセットの中で、スネアと、バスドラペダルだけ自前で使用ですね?」
久我山「え、は、はい、それで。」
まずは田中の用意したステージ衣装に着替えるが、荻上が抵抗を見せる。
荻上「これ、私には似合いませんから!普段着で良いです!」
大野「まあまあ、可愛いですよー。お祭りなんですし、全員特別の衣装なのに
一人だけ普段着の方が目立っちゃいますよ!」
田中「歌う曲に合わせて作ってきたんだからさ、頼むよ。
これってあのPVの服装を元にして……。」
などと説得を受け、やや強引に更衣室へ引っ張り込まれて行った。
- 52 :現聴研第8話(3/3)
:2006/05/09(火) 02:26:31 ID:???
- 係員「椎応大現聴研の皆さん、ステージ入りして準備してください〜!」
着替えに手間取っているのか退室に荻上が抵抗しているのか、女性陣が
出てこないうちに呼び出しが掛かった。
もう、前のバンドが捌けて、機材入れ替えに取り掛かる。
恥ずかしがっている場合ではない。荻上たちも飛び出してきて楽器を手に、
ステージ袖の階段からステージ内に飛び出していく。
全員初めての事なので、ボランティアの係員さんにかなり誘導されながら準備をした。
といっても弦楽器がチューナーごと楽器を持ち込んで、アンプに繋ぐだけで、
ドラムのセッティングと、笹原の音源のセッティングがやや面倒なぐらいである。
そんな準備の様子まで丸見えで見られているのが、地域イベントらしい感じだろう。
今は少し薄暗くなってきて照明は落とされているので、まだ目立つ感じは無い。
あわただしく準備完了して、舞台脇の司会のお姉さんの紹介が掛かる。
司会「次は、マイナー曲を広める使命を帯びたバンドだそうです。
それでは『げんちょうけん』の皆さん、どうぞー!!」
照明が灯り、白い光に照らされる。夏祭りらしい雰囲気の中、さあ、ライブ本番だ!
- 53 :マロン名無しさん
:2006/05/09(火) 02:27:43 ID:???
- 実は本番で演奏させる曲がまだ決まってなくて、寸前までしかまだ書けませんorz
とりあえず、以上です。
- 54 :マロン名無しさん
:2006/05/09(火) 06:01:09 ID:???
- >現聴研第8話
乙でっす!次が本番ですね!イベントの熱気が伝わってくるようで、ワクワクします。
荻上さんの歌声、どんなんだろう。ハスキーな感じなのかな?
- 55 :マロン名無しさん
:2006/05/09(火) 15:06:35 ID:???
- >現聴研第8話
夏と祭りのワクワクした気分が楽しい。俺もクッチーの隣で見たい聞きたい弾みたい。
「演奏本番に大期待」なんて書いたらプレッシャーかな?
それにしても野外の地方ステージの雰囲気がいいですね!
九州の某高原で、クライズラー&カンパニーの野外ライブに行った時のことを思い出したりして(古ッ!)
あとMOON
CHILDネタありがとうございます。
斑目に語ってもらえるなんて幸せ〜。
>GENSIKEN VS LABUyan
遅くなりましたがオモシレー!
燃える対決、そして、「夢の対談=実は隔離」のからくりに笑いました。
俺もシオンたんを眺めたり触ったり舐めたり……。
- 56 :マロン名無しさん
:2006/05/10(水) 01:19:16 ID:???
- >現聴研
え〜、「バクチク」とか進めてみたり。
すいません!ビジュアル系でスイマセン!
でも「唄」は名曲です・・・。
次回楽しみです!
- 57 :マロン名無しさん
:2006/05/10(水) 01:31:14 ID:???
- いつもの夏休みの宿題を提出しに来ました。
感想レスは前スレに。
またまた25レスほどで投下します。
今回も読んでくださる方々に深く感謝の意を表すと共(長いので省略されました。
- 58 :現聴研 :2006/05/10(水)
01:31:22 ID:???
- 感想ありがとうゴザイマス。
>>54
歌声はきっと、地の部分が少しハスキーっぽいざらつきがあって低音がしっかり出て、
高音もうって変わった感じに伸びるような歌声と予想!
基本的にちょっと低い声だけど歌うと音域広いよ。みたいな。
>>55
このシリーズは下書き無しに気楽に書いてますので、あんまりプレッシャー
ありません。頑張ります。
MOON CHILD聴いたことないのでこんな扱いになってしまいました。
>>56
バクチク…これこそまさに、有名な割に曲が知られてないという、
現聴研にうってつけな題材っぽいんですけど、僕が聴いてなくて書けませんorz
こんな感じで狭い知識で書いてます。ライブ編終わったら皆さんで
他バージョン書いて頂けるとありがたいです。
では次回頑張って取り掛かります。
- 59 :マロン名無しさん
:2006/05/10(水) 01:32:20 ID:???
- あ、焦った(汗)。
夏休みの宿題楽しみです!!wktk
- 60 :801小隊14話『テンプルナイツ』1
:2006/05/10(水) 01:33:07 ID:???
- ゴウン・・・。ゴウン・・・。
宇宙ドッグ『ビッグサイト』の艦船港にて盛大な起動音が鳴り響く。
今まさに、一機の艦船が星の海への航海に乗り出そうとしていた。
「旧式とはいえ、こんなたいそうな代物よく使わせてもらえるよな。」
艦長席の前、言ってみれば副官席のような場所にマダラメは座っていた。
彼の呟きはもっともであった。
宇宙専用とはいえ、MSを6機まで収容可能という連盟でもかなり貴重な艦船だ。
通常、小隊に支給される艦船で3機なのだから、規模の違いを伺えるだろう。
「でもさー、それだけ期待が掛かってるって事じゃん?」
何も考えていないような声を出し、ケーコがそう返す。
彼女は通信席に座り、操作をおさらいしているようである。
「でもな、妹さんよ、我々の任務は上層部からは感知されていないも同然なんだぞ。」
「妹さんって・・・。まあいいけど。でも、私たちはこれに乗ってるじゃん。」
「・・・もっともだわ。あまり考えんようにしとくか。」
そういってふんぞり返るマダラメ。右手は、動く。宇宙について早一週間が経過していた。
その間、MSのテスト、新しいメンバーとのあわせなど、色々と忙しかった。
幻痛にも悩まされていたが、今ではずいぶんと収まった。
「・・・あのオーノさんの昔馴染み、いい腕してるわ・・・。」
テストで模擬戦を行った時に、その腕に感心させられた。
(特にあのアンジェラって方・・・。あの動き、かなりの死線を潜って来たに違いない。
スーって方は・・・。なんか不思議な動きしとったなあ・・・。あの武器、役に立つんかね?)
しかしながら、強力な仲間を得たことに間違いはない。
連盟の主力部隊は行程の半分を終える頃だ。
途中何度かの小規模の戦闘があったようだが、そこはあの第100特別部隊がいるわけだ。
あっさりとはいかずとも、潜り抜けているようだ。
「・・・さーて、そろそろかね?」
「そろそろだね。」
「うわっ!」
気付くと後ろの艦長席に大隊長の姿があった。ケーコもそちらのほうを見ながら目を丸くして驚いていた。
「い、いつの間に・・・。」
「今だよ。・・・皆準備できたみたい。出港だね。」
「・・・分かりました。ふう、宇宙・・・か。」
- 61 :801小隊14話『テンプルナイツ』2
:2006/05/10(水) 01:33:55 ID:???
- 宇宙の海は、何も見えず、何も感じさせない。
そこには、何の感情もなく・・・。善意も悪意さえも感じさせない「無常」が漂っている。
思えば人は、なぜ宇宙に飛び立とうとしたのだろうか。
巣から飛び立つ雛鳥のように・・・。いつかは飛び立たなければならない運命だったのだろうか。
しかし、その飛び立ちが宇宙に住む人々と、地球に住む人々に溝を作り・・・。
いや、人とは溝を作らなければ生きていけないのかもしれない。
実際問題、宇宙に飛び立つ前にも、地球上で戦争はいくらでもあった。
それが・・・。更なる大規模な溝になったに過ぎない。人は、歴史から何も学んでいない。
そんなことをぼんやり考えるにいたり、
宇宙に初めて出た頃のワクワク感はもはやないことをタナカは実感していた。
「・・・クガヤマ・・・。間に合わなかったか・・・。」
この一週間でシャトルの一機でも飛んでくるだろうと思っていたのだが、来なかった。
通信はスパイ傍受される可能性があるため、強力な電波で行うことが出来ない。
そのため、地上・宇宙間の連絡は手紙などに頼らざるを得ない。
「・・・大丈夫・・・だろ。」
心配していても仕方がない。しかし、長い付き合いの三人である。
マダラメも、心配しているんだろうな、と一人整備場で考えつつ。
「タナカさん、一休みされたらどうです?」
「オーノさん・・・。すまんね。」
気付くと隣に立っていたオーノが作業をしている田中に向かって、コーヒーを差し出す。
もちろん、働いている重力は大きくないため、カップではなくチューブである。
「最近、根詰めすぎじゃありませんか?」
「んー?そうでもないよ。いつものことだって。」
そういって受け取ったコーヒーをすすりながら、答えるタナカ。
オーノは、心配そうな表情をしながらその姿を見る。
「ただ、新型機が多くて、やらなければならないことも多くてね。」
「それならいいんですが・・・。」
そういって、タナカの横に座るオーノ。
「・・・なに、もうすぐ終わるさ。それまで、頑張ればいいんだから。」
「・・・そうですね。あともう少し・・・。ですね。」
「戦争ももうすぐ終わる。そうしたら・・・軍を辞めようかと思ってるんだよね。」
- 62 :801小隊14話『テンプルナイツ』3
:2006/05/10(水) 01:34:31 ID:???
- 「えっ・・・!」
「まあ、ずいぶん前から考えてたことではあったんだけど・・・。
戦争が終われば、軍は縮小するだろう。そうなると、自分の好きな仕事が出来るとも限らないしね。」
そういって、タナカは少し寂しそうな顔をして宇宙を眺める。
「そうなんですか・・・。」
「・・・だからさ。一緒に来ない?」
「え・・・?」
驚きを隠せない顔をするオーノの方に顔を向けて、タナカは笑う。
「知り合いの工場が、もう使わなくなるらしくてね。そこで、整備工場でも開こうかなって・・・。」
「わ、私も行っていいんですか?」
「うん・・・。人手は多いほうがいいし・・・。その・・・。」
少し恥ずかしそうに顔を背け、少し黙る。
「・・・俺が来て欲しいってだけだから・・・。」
「タナカさん!」
そう声を上げると、オーノはタナカに抱きつく。
「絶対生きて帰りましょう!私たちだけじゃなく、皆!」
「う・・・、うん。」
オーノの大きな胸に顔をうずめながら、顔を赤らめるタナカ。
宇宙に戻ってきて良かったと思った。これで自分に決着がつけれそうだから。
「はーい、カナコ、ここー?」
そこにやってきたのはアンジェラだった。中の状況を見て、笑う。
「アラ・・・。ごめんなさいね。お楽しみ中だったかしら。」
「・・・いや、そうでもないよ、はは・・・。」
「もう、アンジェラ、何の用?」
手をタナカから離すと、アンジェラのほうに向き直る。
「ん、まあ、話し相手もいないからさ。」
「・・・ああ、そうか、まあそうだよな。」
そういって、椅子に座るよう合図を送るタナカ。
「どう?この小隊は?」
オーノの問いに、アンジェラは楽しそうに話し出した。
「いいね。特にあの隊長さん・・。いい動きしてるよ。」
- 63 :801小隊14話『テンプルナイツ』4
:2006/05/10(水) 01:35:50 ID:???
- アンジェラは心底楽しそうな笑顔を浮かべる。
「あの接近戦での腕前は並じゃないよ。
コーサカやササハラも悪くないけど、腕前じゃダントツだね。」
「そう?てっきりコーサカさんの方がいいんだと思ってた。」
「彼は・・・なんていうか遊びに走りがち。満点は出せるけど平均以下の時もある。
特に宇宙はトリッキーな動きが出来るから、色々試しちゃうんでしょうね。」
「まあ、それがコーサカの強みでもあるし、あのMSの特徴でもあるんだけどな。」
「サシ勝負なら一番強いのは隊長さんだね。うーん、しびれる〜。」
そういいながら興奮した様子で体に腕を巻きつけて体を震わせる。
「ササハラさんはどう?」
「分かりやすいというか、教科書どおり。常にアベレージは出せるけど満点は出せない。
まあ、あのシステムっての?のせいで先読みされちゃうんだけど・・・。」
「それもまたササハラのいいところだ。あいつは自分をわきまえているからな。」
「そうね、だから、隊としてはすごく良いんじゃない?
今まで参加した事のある隊の中じゃ三本の指に入るわ。」
「アンも、スーも、溶け込めてる?」
「それは問題じゃないよ。私たちはあくまで傭兵。
あんたたちのうまいように使ってくれればいいのさ。捨て駒としてでもね。」
その捨て駒、という響きに、顔をしかめるオーノ。
「そんなことしないわよ!」
「でもね、はっきりいえば私たちは部外者だよ。一番切り易いのは私たちでしょ。」
その言葉にタナカは苦笑いする。
「んー・・・。まあ、普通の部隊ならそうだわな。」
「?ここはそうじゃないっていうの?」
アンジェラは不思議そうな顔をする。
「ま・・・実際出撃してみれば分かるさ。」
「ふー・・・ん。ま、別にされても恨みはしないけどね。」
「アン・・・。」
不満そうなオーノの顔を見て、アンジェラは少し笑って言う。
「カナコ、私たちにとってはそれが普通だってこと。
別にね、それでいいって訳じゃないけど、それが仕事なんだよ。」
- 64 :801小隊14話『テンプルナイツ』5
:2006/05/10(水) 01:42:51 ID:???
- ブーブーブーブー・・・・。
警報が鳴る。その音に、一斉に立ち上がる三人。
『敵の強襲だ。すぐにパイロットはMSへ。急げ!』
マダラメの声である。緊迫した空気が流れ出す。
「ラッキーだね。ここならすぐに乗り込める。」
「アン・・・。頑張って。誰も死んで欲しいなんて思ってないんだから。」
「カナコ・・・。OKOK。大丈夫だよ。」
そういって笑顔を作ると、すぐさま自分のMSへと向かう。
「・・・大丈夫さ。マダラメたちもいるんだ。」
「そうです・・・けど。少し、変わったかな・・。アン・・・。」
タナカとオーノはその後姿を見つめるしかなかった。
そこに、走ってきたコーサカと、ササハラ。
「タナカさん、問題ないっすよね!」
「行って来ます。」
口々にそういうと、二人ともそのまま止まらず自分の機体へ。
「おう!頑張れよ〜!」
「・・・ふう、厄介なこった。おう、これから出る。」
現れたマダラメは、なにか不安そうな表情だ。
「・・・どうかしたのか?」
「ん、まあ、こんなところに現れる奴らなんてどんな奴らだよ、と思ってな。
普通、連盟の領地に堂々と侵入してこんだろ。」
「自信の表れってことか?」
「・・・一筋縄じゃいきそうにないのは確かだわな。ま、勘だが。」
そういうと、ゲルググへと向かうマダラメ。
「・・・頑張ってください!」
そのオーノの声に、背中を見せたまま手を上げて振るマダラメ。
「あいつ・・・。珍しく緊張してるな。宇宙・・・だからか。」
「・・・かもしれませんね・・・。ってスーは?」
緊急警報に気付いていないのかと思い、あたりを見渡す。
「・・・もう、座ってるよ。」
スーのMSの方を見やると、その姿はすでにあった。
「・・・いつの間に・・・。不思議な子だね、本当に。」
- 65 :801小隊14話『テンプルナイツ』6
:2006/05/10(水) 01:43:41 ID:???
- 「・・・見られてるでありますな・・・。」
クチキは敵機の様子を大型ディスプレイで確認しながら舵を取っていた。
睨み合いが始まってすでに30分が経過しようとしていた。
「クチキくん、油断はしないでね。」
クチキに向かって、大隊長が言葉をかける。
「分かってるであります!」
油断するなんて考え付くはずもなかった。
実際、ここまでの行程、クチキはしっかりと舵を取ってきた。
「・・・あの艦船のフォルム・・・。どこかで見た気がしたんだけど・・・。」
ケーコが頭を抑えて、考え込む。
「本当、知ってるの?」
隣に座っていたサキが、ケーコに向かって聞く。ケーコは少し考えたあと手を叩く。
「・・・そうだ!え、でもちょっと待ってよ!そんなこと!」
「な、なんなのよ!」
「・・・あれ、第13独立部隊・・・。テンプルナイツだ・・・。」
その言葉に、びくっとするクチキ、そしてサキ。
「ま、まさか・・・。」
「嘘でありますよね・・・?」
「いや・・・。まえ、仕事で・・・。見たことがあるんだ。」
第13独立部隊、通称テンプルナイツ。連盟の優秀な部隊を数多く壊滅させた悪魔の部隊。
連盟の奇跡、第100特殊部隊と数多くの死闘を繰り広げたとして有名な部隊だ。
「見間違うはずもないよ。あの、蛇の尻尾を二本にしたような形、他にあるわけがない。」
確かにディスプレイには二尾の蛇、といってもいいフォルムをした艦船が映っていた。
「・・・当たりだよ。」
そう呟く大隊長に、皆の顔から血の気が引く。ブリッジに、重い空気が流れる。
「何でそんなやつらがこんなところにいるでありますか!」
「・・・大丈夫、彼らなら。きっと切り抜けてくれる。」
いつもの表情は崩さずに、大隊長は言葉を続ける。
「・・・ミノフスキー粒子散布。彼らの邪魔にならないよう、射程からは離れて。」
「「「了解!」」」
- 66 :801小隊14話『テンプルナイツ』7
:2006/05/10(水) 01:44:53 ID:???
- 「よし、全員準備は良いか?」
『OKOK。頑張っていきましょ、隊長さん。』
マダラメの通信に答えて、アンジェラが一番に答える。
すでに全員がノーマルスーツを着込み、準備は万端だ。
『大丈夫です。』
『同じく、です。』
『・・・大丈夫・・・。』
その言葉が出揃ったところで、マダラメはいつもの掛け声を上げた。
「よし、第801小隊出撃するぞ!全員、生きて帰るぞ!」
『生きて・・・?』
その言葉に反応するアンジェラ。
『まあ、私たちの部隊の決まり文句なんですよ。』
「隊長命令だ。守ってもらうぞ、全員な。」
ニヤリとディスプレイに映るアンジェラとスーの方を見るマダラメ。
『・・・OK。』
『・・・了解・・・。』
そう呟くアンジェラ。そしてスー。
「よし、行くぞ!」
ゴウン・・・。ゴウン・・・。
タナカがMS格納庫の外から、MSの誘導を行う。
空気が、流れ出す。宇宙への道が開けた証拠だ。
「よし、マダラメ、ゲルググ、出る!」
バシューン!!
景気のいい音と共に発射台がMSを外に押し出す。
次々と出撃するMSたち。宇宙は、彼らを包み込む。
「・・・来るぞ。気をつけろ!すでに、向こうはMSを・・・。
いや、ありゃなんだ!!?」
マダラメが声を上げたのも仕方がない。
向こうに佇んでいたのは、まるで大きなカニの化け物・・・。
「MAってやつか!!厄介なこったぜ!」
それが二機。青いカラーと、赤いカラー。
そしてその真ん中には、騎士を思わせるフォルムをしたMS・・・ギャンがいた。
- 67 :801小隊14話『テンプルナイツ』8
:2006/05/10(水) 01:47:52 ID:???
- 「ちぃ、ギャンかよ・・・しかも普通のとまた違うじゃねえか・・・。」
その三機が動く。早い。急速にこちら側に接近してくる。
「くそ!ギャンはコーサカ、任せた!アンジェラ、スー、俺と一緒に青いのをまずやるぞ!
ササハラ、こっちが済むまで、赤いの牽制しとけ!」
『『『『了解!!』』』』
五機のMSはみな、自分の役目のために移動していく。
まず、スーが牽制のためにバックパックから小さなボールを・・・それでも直径2Mはあるが・・・
射出し、宇宙に浮かせる。それはまるで意思があるかのように敵に向かって突き進む。
十数個あるそのボールは、青いそのMAに向かい、ぶつかっていく。
スーの機体は、ジムをベースとしており、白を基調にピンクで彩られている。
また、体に似合わない大きなバックパックを背負っており、
そこに、多くのビットと呼ばれる小型サイコミュ(脳波制御)兵器が搭載されている。
これはNT専用試験機であり、ジャグラーと呼ばれた機体の発展機なのである。
しかし、そのビットは脳波制御システムを搭載するのが限界であった。
つまりは、ボールを投げつけてるだけのような兵器になってしまったのだ。
盛大にぶつかるボールに、少々戸惑ったのか、青いのの動きが滞る。
そこに、大きなビームが打ち込まれていく。
アンジェラだ。ある程度の距離から、ビームバズーカを撃ち込んでいる。
うまく避けた青いのだが、ボールの衝突がやはり足かせとなっているのか動けない。
アンジェラの機体は、青をベースに黄色のカラーリングをしたジム。
肩部に大きなバズーカ砲二門装備しているのが特徴で、
ジム・バズーカと呼んで過言ではなく、基本この兵装しかない。
なぜなら、ビームサーベル用であるバックパックのエネルギー射出部を、
バズーカ用に転用してしまっているからだ。接近戦では頭部バルカン以外に兵装はないのである。
「よし、いいぞ!」
そういいながら、マダラメはゲルググを駆り、青いMAへと向かう。
両手のビームナギナタを回転させ、接近する。しかし、大きなそのアームで弾かれる。
「うおっと!」
- 68 :801小隊14話『テンプルナイツ』9
:2006/05/10(水) 01:49:10 ID:???
- マダラメのゲルググもまた、極端な兵装をしていた。
両手のナギナタ以外に兵装がないのである。
遠距離をあまり良しとしないマダラメ用に、ライフル等の兵装はカットされていた。
その代わり、そのエネルギーをブースタ出力などに転用しているのだが。
- 69 :801小隊14話『テンプルナイツ』10
:2006/05/10(水) 01:54:20 ID:???
- 一方、コーサカは、ギャンと五分五分の勝負をしていた。
「・・・中々やるな!」
そういいながら右手にしまっていた鎖を射出し、敵に向かって巻きつけるように動かす。
しかし、宇宙では上下の移動がたやすく、あっさり抜け出されてしまう。
「面白いな・・・。」
コーサカの駆るガンダムは、前大破されたガンダム・クラフトをベースに、
そのMk−2ともいえる機体である。宇宙用にチューンアップされている。
黒い機体のそこかしこにギミックが仕掛けられているのである。
ギャンが下方から接近してくる。ガンダムはそれに対し、右膝から白い目潰しを射出する。
ミノフスキー粒子の広がる宇宙空間では、視界が大きなファクターとなっている。
それを潰し、狙いを定め、ビームサーベルを振るうガンダムであったが、かわされてしまう。
かわしたギャンはそのまま突進し、ガンダムと切りを結ぶ。
ビームの弾けあう音が響いたように思える。実際は宇宙で音は伝わらないが。
そして、ばっとお互い距離を開ける。
「・・・中々・・・一筋縄じゃいきそうにない相手ですよ、隊長!」
そういって、高坂は少し笑みを浮かべた。
ササハラはひたすらに逃げるように動いていた。
彼のジム・コマンドは、平均的に能力が高い汎用機である。
この赤いMAを倒そうとするのならば、おそらく無理。
しかし、ただ引きつけておくだけ・・・。というのならば難しくはない。
「・・・相手が意外と単調で良かった・・・。」
相手のパイロットが直情的なのか、単調な攻撃が繰り返されている。
メガ粒子砲を放ったかと思うと、避けたところへアームで攻撃。
それをただひたすらに繰り返しているのであるが。
『・・・油断はしないほうが良いですよ?』
そういった会長の声に、少々気を引き締める。その矢先。
辺り一体を電磁波の渦が襲う。間一髪そこから逃れる。
やはり音は聞こえていないのだが、振動が伝わってくる。
「こいつは・・・。プラズマ!!なんていうもん隠してるんだよ・・。」
『やはり油断大敵でしたね・・・。』
その会長の言葉に苦笑いし、ササハラは再び牽制を開始した。
- 70 :801小隊14話『テンプルナイツ』11
:2006/05/10(水) 01:55:11 ID:???
- 青いMAは、中々隙を見せてくれなかった。
遠距離からアンジェラとスーが牽制しながら動きを規制し、
そこにマダラメが攻撃を仕掛けるというパターンを徐々に読み始めていた。
実際、スーの攻撃は破壊力に乏しく、MAの装甲をへこますに留まっている。
また、アンジェラの攻撃も当たればダメージは免れないだろうが、そこはしっかり避けてくる。
なんとも冷静に判断を下しているのである。
「敵ながら・・・。感心するぜ・・・。」
仲間の援護も期待できず、囲まれた状況でありながらもしっかりとした判断が出来る。
戦いとは、腕や火力だけでなく、こういう精神が大きな要素なのである。
『・・・隊長さん、私が囮になるわ。うまく狙って。』
アンジェラがそう、マダラメに伝えてきた。
「ちょっとまて!そんなこと・・・!」
言うが早く、アンジェラは青いMAの接近する。
MAも、これが好機とみなしたのか、足並みが乱れた部隊へ攻撃を仕掛ける。
アンジェラのジムを、MAの両のアームが狙う。
それをかわし損ね、アンジェラは敵のアームの虜となる。
『くぅ!いまだよ、隊長さん!』
敵の接近武器はアームのみであり、ここで接近すればおそらく仕留められる。しかし。
「それではお前がやられるだろうが!」
例え、攻撃がうまくいってもMAが機能停止するよりも早くジムのコクピットは粉砕されるだろう。
『いいのさ。さっさとやっちゃってよ。』
「くっ!!」
接近するゲルググ。MAは、アームをはずすことが出来ず、そのまま動く。
しかし、二体分の重量を動かすにはパワーが足りず、接近を許す。
「うおりゃ!」
マダラメのナギナタは、アームを見事に切り落としていた。
そこに、MAがメガ粒子砲が放射しようとする。
『何を!!これじゃ共倒れだよ!』
アンジェラの悲鳴が響く。
しかし、放射される前に、MAの方向が変わる。あさっての方向へ放出されるメガ粒子砲。
スーのビットが、MAに衝撃を与え向きを変えたのだ。
「・・・生きて帰ってもらわにゃ、寝覚めが悪いからな。」
- 71 :801小隊14話『テンプルナイツ』12
:2006/05/10(水) 01:57:01 ID:???
- そこで、均衡していた戦いに終焉が来た。
相手の三機が急に戦闘宙域を離脱し、艦船へと帰っていく。
「何だ・・・?」
『さあ・・・。』
『・・・深追いは・・・やめときますか。』
「だな。艦船も去っていくようだし・・・。よし、帰還するぞ!」
ふぅ、と大きな溜息をついた隊長は、久々の宇宙戦が無事終わり、ほっとした。
「・・・なんであそこでMA本体を狙わなかったの?」
「だから何度も言ってるだろう。死んでもらっちゃ寝覚めが悪いってな。」
帰還したあとのMS格納庫のすぐ外、整備室にて、口論が起こっていた。
詰め寄るアンジェラに苦笑いを浮かべながらマダラメは何度も繰り返した言葉をまた述べる。
「あのままじゃ共倒れだったじゃない。」
「・・・それでも助けられそうな仲間をほっとくことは出来ねえよ。
生きていることが一番大事だ。・・・そうだろ?」
そういって、俯くとすぐに顔を上げ、廊下の方へと向かう。
「ちょっと手が痛んできた。カスカベさんに見てもらうわぁ。」
右手を回しながら、ゆっくりと歩いていく。その姿が消えた後。
「・・・変わってるだろ?あいつ。」
タナカが、アンジェラのほうを見ながら、苦笑いする。
「変わってるというか・・・。あんな人もいるんだね、連盟軍には。」
「まあ、色々あったんだよ。情けないとか言わないでやってくれ。」
遠い目をするタナカ。しかし、アンジェラは体を震わしながら。
「最高!あんな隊長今まで会った事ないわ!気に入ったわ!」
笑顔を振りまきながら、スキップをして廊下の方へと向かう。
「・・・なんなんですか、あの人。」
「・・・・・・でも、昔はああいう感じだったんですよ。色々、アンにもあったんだろうなあ・・・。」
ササハラの苦笑い交じりの言葉に、オーノも笑顔を見せる。
「・・・みんな、生きて帰れた。よかった。」
スーの言葉に、コーサカが笑う。
「そうだね。やっぱり、生きているのが一番いい。隊長の言うとおりだ。」
少しの間のあと、皆で声を出して笑った。
- 72 :801小隊14話『テンプルナイツ』13
:2006/05/10(水) 01:58:38 ID:???
- 「あっはっはっは。やってくれるよあの部隊。久々に楽しめた。」
一方、テンプルナイツの艦船内では、少年のような男の笑い声が響く。
「・・・アレックス大佐、笑いすぎです。」
「まあ、そういうなよホシノ。俺は今機嫌がいいんだ。
ガンダムタイプにああいうのもいたとはね。非常に面白かった。」
そして再びクックックッと笑う。
「仲間を犠牲にしない戦い方は好感持てましたけどね。」
「おい、アーム直すの面倒じゃねえか、全く。」
「・・・すまん、ツカハラ。」
ホシノと呼ばれた青年は作業員風の眼鏡をかけた青年に声をかけた。
「でもさ、私もしかして遊ばれてた!?相手全く攻撃してこなかったんだけど!」
「・・・今気付いたのか?ネギシ。だから俺とホシノは安心して専念できたんだが。」
「ネギシさん、いくらなんでも気付くの遅すぎです。」
「・・・!!うるさい!」
バシィ!盛大なビンタがホシノを襲う。
「おいおい、ネギシ。」
「うー・・・。ならあいつ無視して二人の加勢すればよかった!」
「いや、そうしたら後ろからあのジムに狙われてましたよ。・・・気付かなくてよかったです。」
「・・・ま、本気で倒すつもりはなかったんでしょ、大佐〜?」
そうネギシにいわれ、アレックスはニヤリと笑う。
「まあな。俺達はあくまでテンプルナイツ。軍の命令に従うのが目的じゃない。
あくまで、王家の護衛。まあ、今じゃその守るべき相手もいないわけだがな。
ちょっと恩を売るつもりで動いたが、思わぬ収穫だったよ。楽しめた。」
『大佐。『茸』、やっぱり『サン・シャ・イン』に向かってるらしいね。』
アレックスはそこに入ってきた連絡にニヤリと口の端を上げる。
「さっきの通信どおりか!ご苦労、メグロ。それが我らの最優先事項だからな。」
「ヨーコちゃーん、それじゃこのままそっちに向かうって事?」
『そうなるんじゃない?あ、それと『無敵の零式』さんが加勢にきてくれるって。』
「え、姉さんがですか!」
驚きの表情を浮かべるホシノに、アレックスの笑いは止まらない。
「よし、全速転回!最短距離を通って敵の真正面へと向かうぞ!
これで最後だ!あの白いのとケリをつけなきゃなあ!!」
- 73 :801小隊14話『テンプルナイツ』14
:2006/05/10(水) 02:00:03 ID:???
- 「・・・そうですか・・・。わかりました。申し訳ありませんでしたな。
いや。ああ。頑張ってください。ああ・・・。」
通信が切れる。荒野の鬼の顔はさえない。
「まさか・・・。テンプルナイツですら退けるとは・・・。」
思ってもなかった事態。あともう一つ仕掛けているとはいえ・・・。
「どうした?じい、顔色がさえないぞ。」
横にはニヤリと口の端をゆがめたナカジマが立っていた。
「・・・なんでもありません。どうかなさいましたか?」
「フフフ・・・。心強いパートナーの誕生だ。」
ナカジマの見つめるほうに目を向けると。
そこには。
氷のように冷たい目をしたオギウエが立っていた。
- 74 :第801小隊『次回予告』
:2006/05/10(水) 02:06:05 ID:???
- 後の記録に記されない噂話がある。
地球圏において、皇国軍の一個大隊が、一日にして壊滅したというのである。
なぜそこに大隊があったのか、そして、誰が壊滅させたのか。
流れる噂、黒い悪魔の存在。
連盟がその脅威性を恐れ、隠した一つの戦いがあった。
次回、「贖罪」
お楽しみに。
- 75 :幕間〜逆襲のヤナ(?)〜
:2006/05/10(水) 02:08:30 ID:???
- 「またベタな次回予告だな。
だが、それがいい。
あと四話だっけ?まとまるんか?まあ、いいけどさ〜。
そうそう、ラジオ更新されてるって言ってたっけ。
最近の曜湖さんのテンションおかしすぎるよな〜。すげえ楽しそう。
今日もいい壊れっぷり聞けるのかな?」
- 76 :ラジヲのお時間『長月』1/11
:2006/05/10(水) 02:09:56 ID:???
- 〜BGM・『曜湖・鳴雪のげんしけんラジヲ!』テーマソング〜
〜FO〜
「どうも〜、いつ誰が聞いてるか分からないげんしけんのネットラジオをお聞きの方、
今日も私、神無月曜湖と!」
「於木野鳴雪でお送りします。」
「まだ暑さも残ってて、なかなか涼しくなりませんねえ。」
「地球温暖化ってやつですかね。正直、東北生まれの私には堪えます。」
「そういえばそうでしたね!わたしも、西海岸はこんなにむしむしはしてなかったですから〜。」
「やっぱり、暑いのはあまり好きじゃないですね。」
「・・・でも、色々とお熱いことになってるんじゃありませんか〜?」
「ブッ!・・・何を言うんですか!」
「ここ数日の地球温暖化の原因は、もしかして、と思いまして・・・。」
「そんなわけないじゃないですか!!」
「・・・何がそんなわけないんですか?姉さまにも分かりやすく説明してくださらない?」
「スールの関係を結んだ覚えはありませんよ!」
「くふう、いい突込みですねえ。それでこそ於木野さんです。」
「何を言ってるんですか・・・。全く・・・。」
〜BGM・完全にFO〜
「まあ、まあ、それはともかく。」
「何がともかくですか。」
「えっと〜、やっぱり言うべきだと思うんですよ。」
「・・・何をですか。」
「先月否定したことを、そのままにして誤解を生んだらいけないかなと。」
「ま、まさか!」
「たぶん、そのまさかで当たってるんじゃないですか〜。」
「言う必要ないですよ、全く、そうやって人を話の種にして楽しもうとして・・・。」
「いえいえ、そんなつもりは全くないんですけど。でも、先月読んだメールをくれた方を始め、
ラジオ放送をお聞きの方に事実は伝えるべきでしょう。今後、その方々が妙な勘繰りをしてくるその前に・・・。」
- 77 :ラジヲのお時間『長月』2/11
:2006/05/10(水) 02:10:59 ID:???
- 「や、でも・・・。」
「恥ずかしいなら、私から発表しても構いませんよ〜?」
「それは一番嫌です!」
「なら、ベンジャミンさんに入場していただいて・・・。」
「それはそれで嫌です!」
「全く・・・。ならどうしたらいいんですか?」
「いや、言わなければいいじゃないですか。」
「なんですか!?もしかしていえないようなハヅカシイ関係とでも・・・。」
「恥かしい関係なんかじゃありません!」
「まあ、この辺で勘のいいリスナーの方は気付いてるとは思いますけど・・・。」
「う゛・・・。」
「覚悟のススメ!」
「覚・悟・完・了!・・・ってなに言わせるんですか!」
「や〜、最近の於木野さんはノリがよくていいですね〜。
そんな於木野さんに、しびれるぅ!あこがれるぅ!」
「いい加減ウザイです。」
「うう!ウザイですか!私ウザイですか!
絶望した!於木野さんの言葉に絶望した!」
「そういうところがウザイって言ってるんです。」
「最近、きついですよ〜・・・。於木野さ〜ん・・・。」
「そうでもしなきゃこっちがやっていけません。」
「なるほど!それは於木野さんが心を保つための手段だったわけですね!
・・・なんて可愛い子。」
「ぶっ!なにを言い出すんですか!」
「もう〜、かわいくて仕方ありませんね、最近の於木野さんは。
・・・食べちゃいたいくらい。」
「・・・なんかリアルに怖いです。」
「ははは〜、ぢょうだんですよ、冗談。」
「・・・涎・・・。」
「はっ!二人でやるコスプレ考えてたらついつい・・・。」
「まだ諦めてなかったんですか!」
- 78 :ラジヲのお時間『長月』3/11
:2006/05/10(水) 02:12:47 ID:???
- 「もちろんです!・・・まあその話はまた後で。とりあえず、お手紙〜。
於木野さん、よろしゅ〜お願いしますだ。」
「・・・はあ。RN『MISA』さんから頂きました。ありがとうございます。」
「ありがとうございます〜。」
「『どうもはじめまして!曜湖さん、於木野さん!
友達に紹介されて過去放送分も全て聞かさせていただきました!
とても面白いです〜。新しい更新もぜひ、聞かさせていただきます!
そうそう、於木野さんはハレガンが好きだそうですが、(私も好きです。)
最近の飛翔系でいえばどれがお好みですか?やっぱり乙女の嗜みとして外せませんよね。
曜湖さんも、一緒にお答えください!それでは、また〜!!』」
「今日はこのテーマで語れというわけですね〜。」
「乙女の嗜み・・・。なんでしょうか?」
「そこは突っ込んじゃイヤーン。」
「・・・はい。えーと。私としては・・・。」
「そこは突っ込まなきゃ駄目じゃないですか〜。」
「・・・モウダレカタスケテ・・・。」
〜『ウィーアー!』CI〜
「さてここで音楽です!
アニメ『ツーピース』より。第一期OPテーマ『ウィーアー!』」
〜『ウィーアー!』FO〜
「ツーピースはなんだかんだいっても面白いですね〜。」
「ですね。多分魚人海賊団のあたりがピークだとは思うんですけど・・・。」
「アラバスタ編で大きな山越えて、今はなんかまあ・・・。」
「コミックスでまとめて読むと面白いんですけどね。話がとっ散らかってて連載では・・・。」
「まあ、週刊連載ならではといいますか。」
「同人のネタとしても・・・。一流です・・・ね。」
「キャラ多いですしね〜。」
- 79 :ラジヲのお時間『長月』4/11
:2006/05/10(水) 02:18:41 ID:???
- 「私としてはゾロ×サンで・・・。」
「ほほう!やはり素敵マユゲ受けですか!メガネ掛けてますもんねー。」
「まあ・・・。王道といえば王道のカップリングですしね・・・。」
「サン×ゾロかで悩む所ですが・・・。」
「サンジが受けです。これは譲れません。」
「・・・私としては・・・。」
「あまり聞きたくないんですが。」
「え〜、そんな〜、聞いてくださいよ〜。」
「はいはい・・・。」
「ゼブ×サン・・・。」
「う!それはちょっとおいしいかも・・・。」
「でしょでしょ!師弟であり親子のような関係の二人にはそれ以上の感情が生まれて・・・。」
「うわ・・・。おいしいシチュですね・・・。」
「ふふふ〜、於木野さんも、ちょっとかじって見たらどうです?こっちの道を・・・。」
「うう・・・。オススメ今度貸してください・・・。」
「はい〜。」
「・・・まあ、ツーピースはおいしいところが多いですが、一昔前といえば前なんですよね。」
「ですね〜。ブームとしてはそれこそアラバスタあたりで終わってる感はありますね。」
「安定しているとも言えますけどね。それでは、一旦CMです。」
〜ジングル・『曜湖・鳴雪のげんしけんラジヲ!』〜
〜CM〜
「私の横に大きな影」
「あなたはだあれ?」
「仲良くなって見えてきた」
「その人の姿」
「となりのクガピ」
「DVD好評発売中!」
「この大柄な男は どこかにいるんです きっと。」
〜ジングル・『曜湖・鳴雪のげんしけんラジヲ!』〜
- 80 :ラジヲのお時間『長月』5/11
:2006/05/10(水) 02:19:54 ID:???
- 「いいお話でしたよね〜。」
「少女と一人の青年との交流ですね。最後の終わり方がなんとも。」
「未来の情景を想像して嬉しくなっちゃいますね。」
「少女はもちろん、青年もしっかり成長する・・・。うまいお話でした。」
「さて、ここで話題を戻していきますが・・・。」
「・・・えー。最近の流行といえば・・・。」
「そっちではなくて!」
「・・・何の話でしょうか?私には全く見えてきませんが・・・。」
「くう!自然に流そうとしている!」
「最近といえばやっぱり『鰤一』でしょうか。」
「・・・そうですね〜。」
「私としては、イチ×ウリですか。」
「やっぱそこ突いてきそうですね〜。・・・アイゼン隊長は?」
「あ〜、死んでたと思わせてた時まではギン×アイゼンだったんですけど・・・。」
「確かに・・・。復活してからキャラが全然違うというか・・・。」
「まあ、それは作者の旨さでしたけどね。
どこかのファンサイトで、『アイゼンが死ぬ時のシチュで色々考えてたのに〜。』という
叫びを見たときは思わず共感してしまいましたが・・・。」
「あはは〜。想像させるにぴったりの情報の少なさですからね。
その当たりも旨かったというか。でも、最近はキャラが多すぎで。」
「その分楽しめるカップリングも増えましたけど。」
「そうですね〜、可哀想なぐらいスポットの当たってないキャラもいますけど。」
「その辺りはアニメでフォローするんじゃないですか?」
「アニメ製作者にとってはおいしい素材ですからね〜。」
「飛翔系のアニメはすぐ追いついちゃいますからね。『鳴戸』とか、最近オリジナルですし。」
「まあ、確かに・・・。え?『もっとオリヒメを出せ!オリヒメを!』・・・。
ベンジャミンさん、あんな事言ってますけど、いいんですか?」
「まあ、いいんじゃないっすか。・・・後で・・・覚え・・・。」
「え?何か言いました?」
「いえ?」
「・・・そうですか?」
- 81 :ラジヲのお時間『長月』6/11
:2006/05/10(水) 02:20:45 ID:???
- 「マムシさんとしては・・・。『ウルルを出せといっとるだろうがぁ!』・・・。
・・・相変わらずなお二人です。」
「まあ・・・。キャラが多いって言うのも大変そうですね。」
「だって・・・。隊長格が学校に来るって言うのも・・・。」
「・・・あの選考、どうやって決めたんですかね・・・。」
「さあ・・・。人気順って訳でも・・・まあ、比較的良心的なメンバーってことでしょうか?」
「マユリ様が来なかっただけでもよかったですかね?」
「あの人が来るのはありえませんね・・・。地上壊滅しますよ?」
「え・・・。そこまでは・・・。」
「まあ・・・。マユリ×ウリって言うのも・・・。」
「わあ、陵辱系!」
「・・・やりすぎっすかね?」
「・・・もし描いたら見せて下さいね・・・。」
「・・・はい・・・。」
〜『D-tecnoLife』・CI〜
「では音楽です〜。アニメ『鰤一』より、OPテーマ『D-tecnoLife』。」
〜『D-tecnoLife』・FO〜
「アニメ版ってどうですか?」
「さすがといいますか。まあ、しっかり作ってるんじゃないですか?」
「だけど、だいぶ追いついてきちゃいましたね〜。」
「ですね。もうすぐオリスト展開になるかもしれませんね。」
「そうかもしれませんね。そうなったらたくさんのキャラをうまく使えるか・・・。」
「楽しみでもありますけど、大概オリストは評判悪いっすよね・・・。」
「まあ・・・。『ツーピ』も、『鳴戸』も・・・。」
「期待したいところですけどね。」
「アニメといえば。『ぎんたま』、アニメ化決定!」
- 82 :ラジヲのお時間『長月』7/11
:2006/05/10(水) 02:21:29 ID:???
- 「ようやく来たかって感じですけど、あれ、アニメでも人気でますかね・・・。」
「意外と、低年齢層を掴みそう。」
「あー、あのマッタリした馬鹿加減、子供好きかも。」
「『ぼーぼぼ』とはまた違うギャグですけど、子供ギャグ好きですし。」
「大人向けでもありますけど、バトルでもギャグを失わない姿勢は好きですね。」
「『ジャプン』は、ギャグのセンスはいいと思いますけどねー。」
「ですね。まあ・・・。『たいぞう』はきっついですけどね。」
「あれは・・・え?『オタク濃度の高い人ほど楽しめるのは『改造』や『糸色望先生』と一緒だよ。』
なるほどー。絵柄とか、シモネタで回避するのはもったいないと。」
「確かに・・・。『好きなものは好きだからしょうがない』は吹きましたけど・・・。」
「パロディは加減具合で批判・アンチの対象にもなりますからねー。」
「その辺りは自粛したりで大変かもしれませんね。」
「そうですね・・・。え、『作者はコミフェスにも出てたんだぜ』
へーそうなんですか!マムシさん。」
「もともとパロディを描きまくってた人なんですね。」
「今度もう少ししっかり読んでみようかな。」
「同感です。」
「まあ、『ぎんたま』といえば・・・。」
「ああ・・・。『アニメ化なんて知るかぁぁぁぁぁぁぁ!!』ですね。」
「大爆笑しちゃったんですけど!」
「『しんぱち』は、なんか色々やらかしてくれるんで好きですね。」
「台詞が一つ一つ面白いんですよねー。」
「決して正義の味方なんかじゃなくて、どこか皆歪んでるというか・・・。」
「それがいいんですよね。それでもどこか互いを信用してるというか・・・。」
「切ない話もしっかり織り交ぜて、『人情ドタバタドラマ』って感じですよね。」
「まあ・・・。仮にあの辺りを描写してもしっかりアニメ化した前例がありますけどね。」
「『いちご』ですね。その辺りは『ぎんたま』の中でも『ふわふわっとした描写でごまかして・・・』」
「あれも笑いましたねー。」
「『いちご』も終わって沈静化した頃に・・・。『いちご』好きなんでしょうね・・・。」
「それでは一旦CMです!」
〜ジングル・『曜湖・鳴雪のげんしけんラジヲ!』〜
- 83 :ラジヲのお時間『長月』8/11
:2006/05/10(水) 02:22:23 ID:???
- 「押入れの奥に見知らぬ箱」
「おいおい・・・。何の冗談だ?」
「突如現れた自称天使に振り回される男」
「私に全部まっかせなさ〜い!!」
「・・・ごめん、無理」
「マダやん」
「アフタコミックス絶賛発売中!」
「続編『大魔王あらわる』も本誌で好評連載中!・・・マジか。」
〜ジングル・『曜湖・鳴雪のげんしけんラジヲ!』〜
「ギャグ話で花を咲かせてたところでこれです。」
「これは・・・。かなり面白いとは思うのですが・・・。」
「いかんせんシモネタが多すぎますね。」
「それが人気の要因だとは思いますが。」
「その辺りをもう少し抑えると・・・。」
「中途半端になるんじゃないですか?」
「そうかもしれませんね〜。まあ、青年誌ですし、OK?」
「ですかね。」
「・・・さて。」
「ああ、コーナーですね。」
「・・・また逃げようとしてる。」
「何の話でしょうか。」
「いいですよ、いいですよ。・・・ニヤリ。」
「・・・嫌な予感がする。」
「さていきましょうか!
二回目のCMが終わったらいつものこれです!
『漫画・恥ずかしい台詞を大声で言ってみよう』のコーナー!」
「今回は、『ブソウレンキン』です。」
「『ブソウレンキン』、終わっちゃいましたねえ。」
- 84 :ラジヲのお時間『長月』9/11
:2006/05/10(水) 02:27:41 ID:???
- 「アンケートの結果が悪かったんですよね。」
「でも、ネット上では大人気だったのに・・・。」
「そういう人たちって大概アンケ葉書出しませんからね・・・。」
「あらー。となると終わるのに納得いってない方々もいるのでは?」
「そうでしょうね。だから、赤丸で補完すると。」
「しかも、この前のでは完結してないという。」
「冬の赤丸ですかね。完結編が載るのは。」
「きっちり伏線が全部拾われればいいんですけど。」
「まあ・・・。何とかやってくれるんじゃないですか?」
「ですね。」
「では一緒に行きますよ〜!」
「え、一緒に言うんですか。」
「はい〜。それでは、せーの!」
「「『臓物(ハラワタ)をブチ撒けろ!』」」
〜ほお〜 という嘆息の声〜
「これ、思うんですけど恥ずかしい台詞じゃなくないですか?」
「でも、道端でこれ言えます?」
「・・・スイマセン、無理っす。」
「というわけでトキコさんの決め台詞でした〜。」
「この人、ジャプンヒロインにしては中々激しいっすよね。」
「まあ、ここまで敵に容赦ないヒロインはいないと思いますけど・・・。」
「その辺りが人気の秘訣と。」
「ですね〜。キャラが色々と立っていた漫画だったと思うんですけどね〜。」
「カズキ、シュウスイ、ブラボー、ゴウタ・・・そしてなんといってもパピヨンですね。」
「特にパピヨンは一部に熱狂的な人気がありますからね。」
「悪役のはずなのにどこか憎めない。そういう系ですね。」
「カズキとケリをつけるためには方法をいとわない・・・。
そして認めたはずの『人間』が人間をやめてしまいそうになる・・・。」
- 85 :ラジヲのお時間『長月』9/11
:2006/05/10(水) 02:28:18 ID:???
- 「シチュエーション的にはかなりうまいといいますか・・・。」
「や〜、ライバルという関係には何かそそるものがありますねえ〜。」
「何ででしょうかね・・・。」
「そこに友情とは違う、相手を求める何かを見てしまうのかもしれません・・・。」
「なるほど・・・。」
「さて、三曲目がそろそろ入るタイミングなのですが、今日は無しで、
於木野さんから発表があります〜。」
「はあ!!?」
「ささ、どうぞどうぞ。」
「や、だから言う必要ないって・・・。」
「あら・・・。じゃあ私の口から・・・。」
「ちょ、やめてください!」
〜ドタバタ 喧騒の音 息を荒くする音〜
「はぁ、はぁ、まだ言わないつもりですか。」
「ふぅ、ふぅ、なんでそこまでして言わせたいんですか。」
「・・・隠し事はいけないとおもいます!」
「・・・・・・まほろさん?」
「おお、流石!」
「・・・・・・流石じゃねくって・・・。」
「だって〜、先月あんな力いっぱい否定しといて本当はそうなのかよ!
って思われてもいいんですか?いやらしいと思われますよ。」
「そんなことはないでしょう!」
「・・・世の中色々な方がいますからねえ・・・。分かりませんよぅ・・・。」
「うう・・・。言えばいいんでしょ、言えば・・・。」
「そうです、言えばいいんです。」
「まあ・・・。別に悪いことしてるわけでもないですしね。」
「ですよ!ですよ!」
「えー・・・、私、於木野鳴雪は、先月時点では確かにお付き合いしてなかったのですが、
この一ヶ月色々ありまして、ベンジャミン武世さんとお付き合いしてます。」
「・・・ふう、こう改めて言われると恥ずかしいものがありますね・・・。」
- 86 :ラジヲのお時間『長月』11/11
:2006/05/10(水) 02:29:06 ID:???
- 「いや、言えって言ったの曜湖さんでしょう!?」
「まあまあ、そこで!」
「そこで?」
「新コーナー!『鳴雪さんに聞いてみよう!命短し恋せよ乙女!恋愛相談始めました。』!」
〜BGM・『ゲキテイ』(そう、あれっす。)CI〜
〜BGM・『ゲキテイ』FO〜
「ちょっとちょっとちょっと!!」
「この幸せいっぱいの於木野さんに、あなたの悲しい胸のうちを相談してみませんか?
幸せ分けるぐらいなんでもないって感じですので、多少深刻でも大丈夫!」
「いやいやいやいやいや!!」
「性別は問いません。あなたのご相談を親身になって・・・。」
「なんか某CMっぽいっすね!って突っ込んでる場合じゃない!」
「悲しいけど、これも企画なのよね・・・。」
「・・・そんな相談されても何言えばいいか・・・。」
「於木野さんの思うがままに答えればいいんですよ。」
「うう・・・。そんな・・・。」
「正直、私たちは責任は持てません!相談の答えをどうするかは投稿者自らです。」
「まあ、そうなんでしょうけど・・・。」
「・・・於木野さんの一言で救われる人がいるかもしれないじゃないですか〜。」
「そう・・・かもしれないっすけど・・・。」
「まあ、どっちにしろ言っちゃったからには来ちゃうでしょうし〜。」
「む、無責任な!!」
〜BGM・FI〜
「というわけで、今日はお別れですね。メインパーソナリティは神無月曜湖と!」
「於木野鳴雪でした・・・。あまり深刻のなのは・・・。やめてください・・・。」
〜BGM・CO〜
- 87 :幕後〜今月のヤナマダ
:2006/05/10(水) 02:30:37 ID:???
- 「言ったとおりだったじゃないか〜。」
「まあな・・・。」
「本当に気付かなかったのか?」
「・・・うるせえなあ。」
「お前、どこかそういうところ抜けてるっていうか・・・。」
「しょうがねえだろ、わからねえもんは。」
「鈍感だよなあ。もしかして、自分に好意を持ってる相手にも気づいてなかったりな。」
「はあ?そんな奴いるわけねえだろ。」
「わからないぞ〜?世の中広いからな。」
「・・・俺、於木野さんに相談したほうがいいのかな・・・。」
「・・・・・・それは痛いからやめとけ?」
- 88 :後書 :2006/05/10(水)
02:35:45 ID:???
- え〜今回は補足など。
テンプルナイツの面々はアレックスを除いて
「みかん」で有名な『ラブロマ』からゲスト出演してもらいました。
面白い漫画なので、未見の方はぜひ。
まあ、『無敵の零式』ネタが使いたかっただけという。
第100特別部隊の正体が、なんとなく見えてきたと思います。
あと、ラジヲ。
「アイゼンの死んだ時のシチュで〜」云々は小学六年生女子児童(当時)の言葉です。
私が世も末だな〜と思ったときでした。
ジャンプは今「タカヤ」が熱い!とか嘘をついてみる。
長らく占拠して済みませんでした。楽しんでいただけると幸いです。
- 89 :マロン名無しさん
:2006/05/10(水) 05:00:03 ID:???
- >801小隊とラジヲ
乙です!えーマダラメとアンジェラのやりとりに自分も震えました。「生きて帰れ!」かっこええ〜…。
ラブロマ出てきたのも噴きました。さて、読むか!!
ラジヲではぎんたまネタがwジャンプネタいいですね。
次も楽しみにしてます〜w
- 90 :マロン名無しさん
:2006/05/11(木) 00:14:54 ID:???
- >>801小隊テンプルナイツ
まさかラブロマだったとは!!あれも突然終わった感がありました。。。
それにしても斑アンにフラグ立ちそうですかね?
>>ラジヲ
ついに笹荻成立後キタ!!
なんだかはじけた感がありますね〜〜〜。
恋愛相談ですか…。
うわー思わずリアルに相談送りそうになったかもwww
- 91 :マロン名無しさん
:2006/05/11(木) 00:30:07 ID:???
- さて、今から投下しても大丈夫かな…?
18レスで投下予告。
- 92 :マロン名無しさん
:2006/05/11(木) 00:35:20 ID:???
- >>91
オールグリーンのようです!ヨロw
- 93 :「空の下、大切な場所」(前編)1
:2006/05/11(木) 00:35:42 ID:???
- 「空の下、大切な場所」(前編)
(斑目のSS「さくら」の続編。斑目の話。)
***
5月の初め。空は青く青く透き通り、辺りは爽やかな春の日差しに包まれている。
…痛いほどに、明るい日光が自分の心にまで差し込んでくる。
そのためだろうか。見ないようにしていた生傷まで鮮明に見えてくるのは。
もう幾度めかのため息をつく。
どうしたら、この痛みから抜け出せるのか。
何故これほどまでに痛みから解放されないのか。
あれからもう1ヶ月はたっているのに。
…いや、4年という月日を忘れるのには、1ヶ月では全然足りないということか。
卒業式の日から、あの思い出から抜け出せない。
あの花のような笑顔を忘れられない。
思い出すたびに、息苦しくなる。
なぜだろう?昔は、あの人の顔を思い出すだけで楽しい気分になれたのに。
- 94 :「空の下、大切な場所」(前編)2
:2006/05/11(木) 00:36:52 ID:???
- 今の感情を一言で言うと、不完全燃焼、だった。
終われなかった思いがくすぶって、黒い煙をいつまでも吐きつづけている。
まっすぐ刺すようだった悲しみが、いつの間にか鈍い痛みを残し続けている。
暗く深い水の中で、息ができない。ぎりぎりまで息ができない。
ふっ、と苦しみが和らいだかと思うと、またすぐに引き戻される。
ただ、そんな日々。
いつの間にこんなものを背負い込んでいたのだろう。
大学の校門をくぐる。
…そう、俺は未だにここに通い続けている。
階段のすみに、向こうのベンチの影に、あの人の幻影を探す自分がいる。
こんな所にいるはずがないのに。
覚悟はしていたはずだった。もう、「安心」を得られない覚悟を。
この体中の力がなくなっていくような喪失感を、頭ではイメージできていたはずだった。
少し、覚悟が足りなかっただけの話だ。
- 95 :「空の下、大切な場所」(前編)3
:2006/05/11(木) 00:37:37 ID:???
- 斑目は部室のドアを叩いた。
奥から、少し低い女性の声で「どうぞ」と聞こえた。
ドアを開ける。そこには荻上さんがいた。
荻「あ、ども…」
斑「こんちは」
斑目はいつもの笑顔で答える。
(…大丈夫、ちゃんと笑えてるはずだ)
荻「あ、すいません片付けますね」
部室のテーブルには、ベタ入れした原稿が散乱している。乾かしていたのだろう。独特の墨の匂い。
斑「悪いね」
荻上さんが原稿をまとめるのを見ていた。手伝おうと思うのに、体が動かない。力が入らない。
荻「どうぞ」
斑「ん、アリガト」
斑目はようやく席に座る。
最近荻上さんと部室で会うことが多い。荻上さんはたいてい原稿をかいているか、ネーム作業をしている。
斑「また新しいやつ?」
荻「ええ、今回は投稿用なので、801ではないんですけど」
斑「フーン、できたら見せてくれな」
荻「ま、まだ駄目です!もう少し自信がついてから…」
荻上さんは慌てて言う。少し顔が赤くなる。
斑「ん、またいつでも、荻上さんのタイミングで」
- 96 :「空の下、大切な場所」(前編)4
:2006/05/11(木) 00:38:25 ID:???
- 荻上さんは乾いた原稿をまとめると、またすぐ描きかけの原稿に向かった。
よく飽きないなと感心する。
たまに、話しかけても答えないときがある。ものすごく集中しているときだ。
…どうしようかなと思ったが、話しかけることにした。
斑「今描いてるのって、801じゃないんだよね?どんな内容?」
801のときは、内容まで聞かない。原作は何かだけ聞いたりはするが。
荻「あ…少女漫画です」
斑目はコンビニで買ってきた昼飯を広げた。今日はサンドイッチだ。
斑「へえ、荻上さん少女漫画描くんかー」
荻「一度描いてみようと思って。笹原さんに、私の絵は少女漫画向きじゃないかって言われたんで」
斑「笹原、元気?最近忙しいって言ってたけど」
荻「ちょっと疲れ気味ですね…ストレスたまってるみたいです。最近イライラしてて」
斑「そうなん?」
荻「…ええ。今まではこっちが甘えてる状態だったのに、最近は逆です」
荻上さんは少し苦笑した。
付き合い始めのころは、恥ずかしがってこんな話しなかったのに、今ではすごく自然に笹原との話をする。
(可愛くなったよなー荻上さん…。入部したときとはえらい違いだ…。)
『オタクが嫌いな荻上です!』
最初の挨拶を思い出す。あのときの周り全てが敵という感じの、挑むようなあの目つき。
- 97 :「空の下、大切な場所」(前編)5
:2006/05/11(木) 00:39:01 ID:???
- (…そういえば、春日部さんもある意味そんな感じだったな)
初めて部室に春日部さんが来たときのことを思い出した。
高坂が初めて部室見学に来たときに、一緒についてきたのだ。
………………
高「こんにちは。僕、高坂といいます。こちらのサークル見学したいんですけど、いいですか?」
高坂ははきはきと喋った。
そのとき初代会長は席をはずしていた。
斑「お、見学!?ようやく来たな!」
田「はは。このまま来ないかと思ったよ」
久「ぜ、ぜんぜん勧誘してなかったからなー。やる気なかったからなー」
斑「お前もな!」
田「…ん?そっちの人は?その人も見学?」
高坂の後ろから、仏頂面でくっついてきた女がいた。
高坂の服装と似ていた。黒いジャケットに赤いネクタイをしている。化粧が濃い。
その女が開口一番にいった言葉。
咲「オタクはだまってろ」
すごむような目つきでそう言った。まるでヤンキーだ。
- 98 :「空の下、大切な場所」(前編)6
:2006/05/11(木) 00:39:46 ID:???
- 思わず固まる一同をよそに、その女は高坂に甘えるようにこう言った。
咲「ねーコーサカぁ、天文研にしとこうよ!あそこ、夏は合宿あるらしいよ」
高「うーん、そうだね…。でも今はこのサークル見学してからね」
咲「じゃ、このサークル見学したら、あとで行こうよ。」
高「そうだねー…。あの、すいません。ここはどんな活動されてるんですか?」
高坂はその女の提案をやんわり流し、自分の聞きたいことを聞き始めた。
斑「そーね。うちは現代視覚文化研究会つって、漫画からアニメから、果ては同人誌から、なんでも研究するサークルなのです!!」
田「ま、なんでもありってことだ」
斑「研究内容は、その都度積極的に会議で話し合われ、不定期に「メバエタメ」という雑誌に編集されマス!
あ、今は俺が編集してんだけど」
田「ま、てきとーにくっちゃべって、気がむいたら本にしてるんだ、こいつが」
斑「おーーーい田中、さっきからツッコミがキビしいぞーー?」
田「ああ、気にすんな。こいつ、演説好きなんだ。俺の言ったことでだいたい合ってるから。」
高「あはははは」
高坂は楽しそうに笑った。
咲「…なに、その内容。ただの雑談?サークルでする必要あんの?」
その女はずばりと言った。再び固まる空気。
(…この女、痛いところを…)
最近、アニ研の近藤にも似たようなこと言われた。
その時は口八丁で煙に巻いてきたが、本当はちょっと、気にしていた。
(………でもなあ。田中も久我山も、あんまりやる気ないしなあ…。)
それを、いきなりさっき見学についてきたばかりの女に指摘され、ちょっとムッときた。
- 99 :「空の下、大切な場所」(前編)7
:2006/05/11(木) 00:40:30 ID:???
- 斑「あのさー君、さっきから何なの?興味ないなら帰れば?」
田「おーい、そういうこと言うな」
斑「こっちの『コーサカ』君は興味あるんだし。君、オタクじゃないんでしょ?
君とサークルの内容について話し合いする必要はないと思いますがネ?」
咲「ああん?喧嘩売ってんのか」
再び睨まれ、ちょっと怯むが、ここで引いたらオタクがすたる。
斑「そっちが先に売ってんだろ。こっちは別に迷惑かけてないんだから、一般人は口出し無用!自分の星にカエレ!」
田「おい…」
田中が制した。ちょっと言い過ぎたかと思ったが、生意気な一般人には、こんくらい言っといたほうがいいのだ。
棲み分けのために。これでこの女も来なくなるだろう。
するとその女はつかつかとこっちに向かってきた。
お、やるのか、と身構える前にいきなり右ストレートが自分の顔面に炸裂した。
「!!」
思わずよろける。一瞬だけ頭が真っ白になる。
そんなに思ったほど痛くなかったが、ついよろけてしまったのがショックだった。
斑「…ってーな、何しやがる!」
咲「だからオタクは駄目なんだよ」
春日部さんは毅然とした態度で言った。
…そのときは、春日部さんの言葉の意味がよく分かってなかった。そのときは。
(あ、「親父にもぶたれたこと(ryって、言うの忘れた………)とか思っていた。
- 100 :「空の下、大切な場所」(前編)8
:2006/05/11(木) 00:41:08 ID:???
- ………………………
今となっては、懐かしい。自分の未熟さとか、春日部さんの攻撃性とか、そういうイタい面も含めて。
思い出して、少し可笑しくなる。同時に、心がちくりとする。
そんな時代もあったのだ。
斑「そう言えば、笹原には漫画見せてるの?」
荻「ええ。…やっぱり、編集者ですから、自信がないのでも見てもらったほうがいいかなって。
というか、笹原さんがしょっちゅう見せろって急かすので…。」
荻上さんは笑う。
斑「フーン、でもどうなん?あいつちゃんと評価してくれる?」
荻「ええ、笹原さんけっこう厳しいんですよ」
斑「へー、あいつ意外と言うからね」
荻「前は褒めてくれたんですけど、最近は仕事疲れでイライラするせいか、酷評されますね。
あんまりストレートなんで、腹立つこともあります」
斑「腹立つ?荻上さんが?」
最近の穏やかな荻上さんを見ていると、腹を立てているところが想像できない。
荻「ええ。あんまり腹立ったんで、こう言ってしまったんです。『笹原さんって見る目あるんですか?』…って。」
斑「………………(汗)」
荻「そうしたら笹原さんにこう言われました。
『荻上さんこそ、本当にこの漫画面白いと思って描いてるの?だとしたらすごいね!』」
斑「………………………………………(激汗)」
- 101 :「空の下、大切な場所」(前編)9
:2006/05/11(木) 00:41:51 ID:???
- 荻「さすがにそう言われたときはショックでしたけど。
でも、ストレートに言ってくれたほうが自分のためになるってわかったんです。
笹原さんも、あとで何度も謝ってくれましたし」
斑「………なんか壮絶だね、君タチ」
荻「私、けっこうキツいこと言ってしまうタイプだし、笹原さんも思ったことそのまま出ちゃう人ですから。
だから、その方がかえって楽なんですよ」
荻上さんは相変わらず笑っている。心からそう思っているのだろう。
(…そういえば、春日部さんとよく喧嘩したな。春日部さんもやたらムキになって…。
本当なら、ウザがられて無視されるとこだよな。たいていはさ………。)
初対面のときから、何かと口喧嘩しまくっていた。
今思えば、本当に言いたい放題言ったのだが、春日部さんが部室に来なくなることはなかった。
もちろん、高坂のために来ていたんだが。
どんなにこっちの言いたいことを言いまくって、その後ちょっとだけ後悔しても、春日部さんは再び,、こりずにオタクに対する自分の疑問(喧嘩のネタ)を持ってやってくる。
面白くなった。根性ある一般人だな、と。
だから、とことんからかってやろうと思ったのだ。
(あれも、ある意味コミュニケーションだったんだなーー…。)
- 102 :「空の下、大切な場所」10
:2006/05/11(木) 00:43:25 ID:???
- いつからだろう、口喧嘩しなくなったのは。
…あれは俺が4年のときか。なんだか急に、春日部さんを強く意識し始めて、それからは言えなくなった。
そのころ、春日部さんも丸くなって、あまり喧嘩越しの態度に出てこなくなった。
親しくなったからか。少なくとも春日部さんは、そう思ってくれていたんだろうか。
(憧れだったんだろうな………春日部さんの存在が…。
すごくしっかりしてるとことか、実は情に厚いとことか、面倒見がいいとことか。
もちろん美人なとことか、そのわりに気取ってないとことか。意外と内面が繊細だったりとか………。)
また、心が疼き始める。『いい思い出』のはずなのに、苦しみと表裏一体になっている。
荻「斑目先輩?」
斑「…ん?」
荻「どうしたんですか?」
荻上さんは心配そうな顔で、こちらを見ている。…そんなにひどい顔をしていたんだろうか。
荻「疲れてる、とかですか?」
斑「あ、いや!大丈夫。」
荻上さんは心配そうな顔でこっちを見る。…そんなに心配されると、なんだか照れくさい。
斑「いや、本当に平気よ?ちょっとボーッとしただけ!」
荻「…そう、ですか。」
荻上さんは言葉を止めた。
- 103 :「空の下、大切な場所」11
:2006/05/11(木) 00:44:05 ID:???
- 荻「…寂しいですね。」
斑「え?」
荻「いえ、新入生が、4月は入ってこなかったんで…大野先輩は就職活動だし、朽木先輩も何だか忙しいようですし」
斑「あれ、じゃ朽木君、最近来てないの?」
荻「いえ、夕方になったら来るんですけど。1,2年生のとき遊びすぎたらしくて、3年になってから単位取るために授業たくさん取るハメになったらしいです。自業自得ですね」
荻上さんは呆れたように言った。
斑「あーそう…じゃ、朽木君が会長に、って話はなくなったのかね?」
…だいぶ前に大野さんから、そんな話が出ていると聞いたとき、正直驚いた。
大野さん自身不安そうにしていたが、それでも前向きに考えているようだった。その大野さんの変化にも驚いたものだ。
(…それにまあ、あの朽木君に任せて大丈夫なんか?という不安もある。やっぱり。)
荻「いえ、今は朽木先輩が会長ですけど」
斑「え…マジで!?いや、こういう言い方はアレかも知れんけど、あの朽木く…」
荻「全然頼りになりませんよ、はっきり言って。」
荻上さんはズバッと言ってのけた。
斑「…あ、やっぱり?」
荻「書類の提出期限は破るわ、会議は脱線するわ、遅刻するわムダ口が多いわ、会長としては最悪ですね」
斑「………………」
どんな状態かはっきりとイメージできてしまう。
では何故、朽木くんに任せてるんだろう。どう見ても荻上さんのほうが向いている。
- 104 :「空の下、大切な場所」12
:2006/05/11(木) 00:44:43 ID:???
- 荻「…でもですね。最近朽木先輩変わったんですよ」
荻上さんの口調が、少し柔らかくなった。
荻「あの変な挙動は相変わらずなんですけど、少しずつ人に気を遣えるようになってきたみたいなんです。
あと、場を寒くするような言葉が大分減りました」
斑「ほー!あの朽木君が!」
荻「自分がまとめる立場になって、ようやく他人の苦労が分かったんじゃないですかね。
だから良かったと思います。あと、こっちも我慢強くなりました。些細なことで怒っても仕方ないって思うようになって」
荻上さんは少し皮肉まじりに言い、笑った。
斑「会長になったら、みんなすごく成長するんだなあ…」
荻「でも斑目さんは元々会長向きだったんじゃないですか?」
斑「いやいや、俺も例外じゃないよ」
荻「そうなんですか?」
荻上さんは意外そうな顔をした。荻上さんは自分と春日部さんがさんざん口喧嘩していた頃を知らない。
斑「春日部さんがなぁ…」
荻「え?」
(………ん?)
妙な沈黙。
荻「春日部先輩が…何ですか?」
斑「…え?あ、あーいや、最近寂しいっていってたからさ!
笹原もだけど、春日部さんも高坂も卒業したから寂しいのかなーーーって!」
慌てて取り繕う。
荻「え、ええ…そうですね…」
(うわ、ヤベーヤベー!思わず口から出てたよ…最近こんなことばっか考えてっから…)
- 105 :「空の下、大切な場所」13
:2006/05/11(木) 00:45:21 ID:???
- 荻「…そう言えば、春日部先輩、昨日来てましたよ」
斑「え、昨日?部室に?」
荻「ええ、久しぶりに顔見に来た、って」
斑「…へー!そうなんだ」
荻「ちょうど斑目先輩と入れ替わりで…昨日は大野先輩もいましたし」
斑「へえ、それは会いたかったなー」
(…ここで「会いたい」って言っても不自然じゃあるまい)
荻「ええ、春日部先輩も、会えなくて残念って言ってましたよ、斑目先輩に」
斑「え、春日部さんが?そんなこと言ったの?」
荻「ええ」
斑「フーーーン………………」
(…あれ、何か、スゲー嬉しいような………)
急に、体が熱くなるのを感じる。
(会えなくて残念…………………春日部さんが?本当に?)
荻「あの…」
斑「ん?」
荻「春日部先輩と、何かあったんですか?」
- 106 :「空の下、大切な場所」14
:2006/05/11(木) 00:45:58 ID:???
- 斑「…へ!?」
荻上さんはじっとこちらを見てくる。
斑「え、いや別に………な、何で!?」
荻「いえ、先輩最近元気ないから……………」
斑「え、そ、そうかな!?」
(バ、バレてる!?えーーー、どこまでバレてんだ!?)
焦ってしまい、頭が回らない。冷や汗がダラダラ出てくる。
斑「えーとその、そーいうアレじゃ…」
荻「えっ?」
斑「別に春日部さん意識してたとかじゃなくて、ただの仲間というかそんなんだから!!」
荻「…え?あの、春日部先輩と喧嘩でもしたのかな、と思っただけなんスけど………………」
斑「へっ!?」
荻「…いえ、それで気にしてるのかな、って…………………………」
目を見開いていた荻上さんの顔が、見る間に赤くなる。
(………アレ?なんか今いらん事言っちゃった??
えーと、『墓まで持っていく』つもりで『墓穴を掘った』みたいな。
あ、今うまいこと言ったな。
………………………って、全然うまくねーーーーー!!!!!)
- 107 :「空の下、大切な場所」15
:2006/05/11(木) 00:46:31 ID:???
- 荻「………………………………(汗)」
斑「………………………………(激汗)」
沈黙。嫌な汗が出てくる。
(………荻上さんにバレた?今ので…………バレたよな。
ていうか何言っちゃってんの俺……?アレ?え、どーすんだコレ………)
荻「え、春日部先輩のこと…?」
斑「………いやその………………」
しばらく固まっていたが、次第に、急激に体中の力が抜けていくのがわかった。
胸の奥が締め付けられる。
見ないようにしていた苦しみが、一気に襲ってくる。
自分でも驚くほど、狼狽している。がっくりと肩を落とした。
(………何で………何でこんなに、落ちてるんだろう……………。
というか、今まで誰にも言わなかったのに………言わないつもりだったのに………………)
正直、誰にも言わずにいるのは辛かった。でも、誰かに言っても状況が変わることがない以上、その人にまで秘密を背負わせるのはどうかと思った。第一こういう話をすること自体苦手だし。
…なのに。
- 108 :「空の下、大切な場所」16
:2006/05/11(木) 00:47:11 ID:???
- (…とりあえず、荻上さんには黙っていてもらおう。それしかない………)
斑「………荻上さん」
荻「は、はい」
斑「その…。誰にも言わないでくれるかな………。頼む!!か…春日部さんにも言ってねーし………………」
言いながら、自分の声が震えるのが分かる。
荻「…言いません」
少し低い声で答えが帰ってくる。斑目は顔を上げた。
荻「言いません。絶対、誰にも言いません。」
荻上さんは真剣な目でこっちを見ていた。それを見てほっとする。同時に色々な思いが込み上げてくる。
斑「…ちょ、ちょっと頭冷やしてくるわ………」
そう言って席を立つ。部室の扉を開けて出て行った。
トイレで顔を洗う。…いつから自分はこんなに弱くなったのだろう。
冷たい水に、少しだけ冷静さを取り戻す。同時にひどく空しくなった。
戻ってくると、荻上さんも動揺していた。心配そうな目でこちらを見上げる。
荻「あ、先輩………」
斑「…変なこと言ってスマンね」
荻「いえ!そんな………」
そう言いかけて荻上さんは視線を泳がせる。
- 109 :「空の下、大切な場所」17
:2006/05/11(木) 00:47:54 ID:???
- 斑「アハハ……墓の中まで持っていこうと思ってたのになー…」
そう言いながら思った。
(重いって、そんな言葉…荻上さんにこれ以上気を遣わすなって………!)
荻「…それが先輩の秘密なんですか?」
斑「え?ああ、そうね………」
荻「最近元気ないの、それが原因ですか?」
斑「…情けねーよなー俺…たかがそんなことでさ………」
荻「そんな風に言わないで下さい」
斑「え?」
荻「私も、人に自分の秘密が言えなくて、心を閉ざしてました…このサークルに来るまで。
人は何かしら心に傷を抱えてると思います。傷一つない人間なんていないと…私も………」
そこまで言って荻上さんは口を閉じた。少しためらい、再び話し始めた。
荻「…私も、斑目先輩に秘密にしていることがあります。」
斑「え?」
荻「………じゃあ、今度は私がそれを打ち明けたいと思います。明日の昼、また部室に来てもらえますか?」
斑「あ、明日?いいけど………?」
荻「明日、私の秘密を見せたいと思います。」
- 110 :「空の下、大切な場所」18
:2006/05/11(木) 00:48:30 ID:???
- ………………………
会社に戻りながら、考えていた。
(…『私の秘密を見せたい』って、何だろ?
ていうか、それなんてエロゲ…いやいや、ゲームのやり過ぎだっての。
…しかし、つい言っちまったなぁ……)
言ってしまったことが、やはりショックだった。だが、今は明日のことに気をとられている。
(何を見せられるんだろう…?)
次の日、斑目はある意味「エロい」ものを見ることになるのだが、それはまた次のお話。
前編 END 続く。
- 111 :あとがき
:2006/05/11(木) 00:49:28 ID:???
- えーまず、6月号の時点ではまだ皆には「斑→咲」がバレてない、という前提で書いてます。
(大野さんと春日部さんは別ですが)
意見が分かれるところだと思いますが、そこは大目に見てください。すんません。
後編もだいたいできてるので、近日中に投下します。
- 112 :マロン名無しさん
:2006/05/11(木) 00:52:41 ID:???
- >「空の下、大切な場所」
朽木君が会長とか、笹荻の今とか、色々面白かったのですが・・・。
何より。
み、見せるのか?あれ見せちゃうんですか?
わー、わー、わー。
どうなることか・・・。後編が楽しみであります。
- 113 :マロン名無しさん
:2006/05/11(木) 02:04:39 ID:???
- >>空の下、大切な場所
斑目、誰が上手いこと言えと(ry かなり笑いましたwww
笹原と荻上さんの口論がリアルだったり、斑目にすごく感情移入し易かったり
GJですね!続編期待です。
- 114 :マロン名無しさん
:2006/05/11(木) 02:10:58 ID:uKFr+uUp
- くはー、久々の斑目の長編ですね。やっぱいいですねー斑目物は。
荻上も好きなんで、斑×荻の組み合わせが最高です(誰か、斑×荻の恋愛系SS書かないかな・・・)
後編楽しみっす。
- 115 :マロン名無しさん
:2006/05/11(木) 02:11:47 ID:???
- >801小隊&ラジヲ
おお〜、ついに本格的な宇宙(そら)の戦闘ですね。
また、他作品からの参戦とは……!
アンジェラ&スーのMSがまた個性的でグー!
そしてそして、ラジヲで「おつきあい」がバレるとは!
恋愛相談激期待!
あ、あとCMネタありがとうございます!
>空の下、大切な場所
あ、アレ見せるんですか、斑目に?
斑目の想いがバレる展開はナカナカ。(激汗)にワロタ。
それにしても、春日部さん初登場のくだりは読んでるこちらが汗がでそうなくらいの価値観の違いが生み出す悲劇ですね。
ここからよくまあ恋愛対称にまで昇華されたもんだ(片方だけですが)。
- 116 :マロン名無しさん
:2006/05/11(木) 02:16:19 ID:???
- ああっ…!
言うの?言っちゃうの?
見せちゃうの?
「これ斑目さんカワイソスギ
絶対 本人見せらんない」
やつを?
こっちがドキドキシマスネ!
いやマジで!早く早くプリーズ!
- 117 :マロン名無しさん
:2006/05/11(木) 05:38:19 ID:???
- 荻上さんの見せたがりキングデビルっ!!
- 118 :マロン名無しさん
:2006/05/11(木) 12:04:46 ID:???
- >現聴研
何か細かいところのリアルさが臨場感出してるね。
こういうイベントの経験者かな?
音楽雑誌の記事か何かを頼りに書いてるなら、それはそれで凄いが。
>801小隊
また今回のは細かいね、いろいろ。
マダラメとアンジェラのモビルスーツの装備の対比が何か面白い。
ラブロマは分からんかったな、読んでたけど。
>ラジヲのお時間
すんません、最近ジャンプ読んでないんで、大半のネタ分かりませんでした。
でも大荻コンビのノリは楽しめた。
大野さんまで絶望先生化し始めてるとは、恐るべし糸色望。
それにしても荻上さんに恋愛相談か…
好きな女の子に801絵のモデルにされちゃいました、てなのはやめた方がいいかな?
>空の下、大切な場所
斑咲初対面シーンキター!
でもこういう風に並べてみると、意外と第一印象は似てるんだな、春日部さんと荻上さん。
ついにあれを見せるのか、荻上さん。
次の日から斑目が部室に来なくなるってな鬱展開の無いことを祈る。
(まあ本来は毎日のように来てる方が問題なのだが)
あと大野会長就任で誰の目にも消えたと思われていた、クッチー会長就任はワロタ。
4年生で会長を任せられるぐらいだから、少なくとも5ヶ年計画は確定なんだろうな。
荻上さん、安心しなさい。
あなたが卒業した後も、彼がげんしけんを守って行くから。
- 119 :空の下、大切な場所
:2006/05/11(木) 20:26:43 ID:???
- 「前編」に感想を書いてくれた方、読んでくれた方、ありがとうございました。
さて、連投になってしまい申し訳ないのですが、後編もできたので投下しちまいます。19レスです。
- 120 :空の下、大切な場所(後編)1
:2006/05/11(木) 20:27:46 ID:???
- 「空の下、大切な場所」(後編)
***
「明日、私の秘密を見せたいと思います。」
………………今日の昼、荻上さんにそう言われた。
その夜、斑目はベッドの中で、なかなか寝付けないでいた。
暗がりでじっと考えていると、昼間よりもさらに気持ちが急降下していくのが分かる。
(…ずっと「底」だ、と思っていたのに…。まだ底があるんだな………………)
こんな形で本音が出てしまうなんて。しかも言う相手を間違えている。
過去の幻影にすがっても、得られたものは苦しみしかない。
…本当はずっと分かっていた。でも、忘れることもできず、振り切ることもできず、打ち明けることも出来ない。
ただじっと身をかがめてやりすごす方法しか、自分は知らない。
だから耐えるしかないと思っていた。それなのに。
明日、本当は部室に行きたくない。
これ以上格好悪いところを見られたくない。…でも。
(荻上さん…すごく真剣な目だったな………。
行かなかったら、あの目を裏切ることになるんだな………。)
(どうしようか…)
頭が少しずつ思考停止してゆく。考えすぎて疲れた。
ゆっくりと浅い眠りの中に落ちていった。
- 121 :空の下、大切な場所(後編)2
:2006/05/11(木) 20:28:27 ID:???
- ………………………
次の日の昼休み。直前まで悩んだが、やっぱり部室に行くことにした。
行かなかったら、荻上さんと気まずくなってしまう気がする。それは避けたかった。
斑「………………」
部室のドアの前で固まる。一度深呼吸して、決意を固める。ゆっくり2回ノックする。
荻「はい」
いつものように荻上さんの声が聞こえ、斑目はドアを開けた。
荻「あ、ども…」
斑「や〜どうも。今日は暑いね、特に」
荻「そうですね、5月だっていうのに夏みたいな気温ですね。」
荻上さんが右に座っている。自分はドアに一番近いところの椅子を引いた。
最初は当たり障りのない話から入った。斑目は笑顔を作る。
斑「今年は気候が極端だよな〜」
荻「きっと地球温暖化ですよ」
斑「ああ…温暖化ネ…」
荻「………………」
荻「で、これが例のモノなんですが!!」
斑「は、ハイ!?」
荻上さんは急に大声で言った。びっくりする斑目。
荻上さんは手に大きめの茶封筒を持っている。
- 122 :空の下、大切な場所(後編)3
:2006/05/11(木) 20:29:15 ID:???
- 斑「え〜それが”私の秘密”??」
荻「…そうデス」
荻上さんが封筒を差し出したので受け取る。
斑「見ていいの?」
荻「…どうぞ」
茶封筒を開けて中の紙束を取り出しかける。その間荻上さんは体を硬くして縮まっていた。
何かをこらえるようにぎゅっと目をつぶる。
斑「お、荻上さん?大丈夫?」
荻「大丈夫です…とりあえずそっちを見てください」
大丈夫に見えないのだが、ひとまず言われたとおりにする。封筒から紙束を取り出す。
(…あ、やっぱ801漫画か………)
一応予想はしていた。荻上さんは今までちゃんと見せようとしなかったのだが、ようやく見せてくれる気になったのだろう。
最初に見たのは2人の男の顔のアップだった。
(?…何の漫画のキャラなんだろ?麦男?でもこっちのメガネは千尋っぽくないな…)
紙をめくると、その2人が裸で抱き合ってるところだった。
めくるごとに表現が直接的になる。
…ただ、今まであらゆる成人向けの同人誌を読んできたので、それほど驚くような内容でもない。
(…フーン、こんなんなのか…絵がきつくないから見れなくはない、かな…ん?)
コマ割りで漫画になっている表現の絵が出てきた。
そのページを見て、固まる。
- 123 :空の下、大切な場所(後編)4
:2006/05/11(木) 20:29:55 ID:???
- 『ネクタイの正しい使い方を教えてあげますよ…斑目さん』
『さ、笹原…何を……』
『お仕置き…ですよ』
そこにはちょっと眉毛がつり上がり気味の笹原と、妙に線の細い女の子みたいな自分(?)の姿が。
(………………………ていうかこのメガネ、俺!!!???)
他の絵も同じキャラのようなので、…この絵は全部、笹原と自分を描いたモノらしい。
(…はーーー!!そういや801って実在の人物もネタに描くらしーけど…まさか自分が描かれてたとは…。
うわーこれは…いや、内容はともかく…………………………。)
(俺が受けなんだ…orz)
(えーそうなんだ…組みしかれてる絵が多いけど…俺ってそんな弱そうに見えるのかね?うーむ…)
荻「言っていいですよ、気持ち悪いって」
荻上さんが言った。
斑「え、いや、その…」
荻「言ってください、正直に」
荻上さんは真剣な目でこっちを見ている。この絵を見せるのに、そうとうの覚悟をしていたらしい。
斑「………正直言うと…俺、『受け』なのかー、って」
荻「…ああ、それですか…」
斑「え?」
荻「試しに笹原さんが受けの漫画を描いて、笹原さん本人に見せたことがあります。そしたら、やっぱりそこで引っかかってました。
攻めのほうがいいかな、って」
斑「………………」
- 124 :空の下、大切な場所(後編)5
:2006/05/11(木) 20:30:42 ID:???
- 荻「もし描かれるなら、攻めで描かれてたほうがいいんですかね…?」
斑「…まあ、人によると思うけど…。」
荻「私…中学生のとき、クラスの男の子の『総受け本』を描いた事があります。それは私と仲間の周りだけで見せ合うだけの本だったのに、その男の子本人の手にそれが渡ってしまったんです。
…その男の子は、不登校になって…転校してしまいました。私のせいで。」
斑「………………」
荻「もしかしたら『総攻め』だったら結果は違ってたのかも。…いえ、801自体が受け付けなかったのかもしれませんが…。
…今となってはもう、分かりません。聞くこともできないですし。」
荻上さんの瞳に、少し翳りが見えた。
荻「私はその時からずっと、自分の趣味が男の人に激しく嫌悪されるもので、恥ずかしいものだと思ってました。でも…。
もっと深く考えてみる必要があったんじゃないか、と思ったんです。
なぜ『嫌悪される』のか、それでもなぜ自分がこんなに801を描きたくなるのか。
801好きの人がなぜこんなにいるのか、って。…だから、男の人の意見を聞きたかったんです。」
荻上さんはそう言うと、ひとつ息をついた。青ざめて、額に汗をかいている。
荻「…でも、すみません。気持ち悪いもの見せて…」
斑「うーん、でもさ、例えば女の人で、男性向け同人誌見て拒否反応示す人いるし…。それに似てるんじゃないか?
単に個人の趣味とか、許容範囲の問題じゃないのかね。
…まー確かに、中学生の時に自分のそういうの見たらショック大きいかも知れんけど。今は801がどーいうモンか知ってるしなぁ。
笹原も俺も、前知識があるからそんなに気持ち悪いとは思わんよ。
…ま、俺の意見は参考程度にしといてな。他の感じ方もあるだろうし。」
- 125 :空の下、大切な場所(後編)6
:2006/05/11(木) 20:31:19 ID:???
- 荻「そうですか…。そう言ってもらえると…。
でも…中学のときに私がしたことは、悪気がなかったからといって許されることではないです。それはわかっています。
だからこそ男の人の率直な意見を聞きたかったんです。過去と向き合うために。
でも、コレ最初に笹原さんに見せたとき、何ていったと思います?」
斑「…?何だろ。『攻め』で良かった、とか?」
荻「…えーと、その………一瞬だけど『反応した』って言うんです」
斑「反応?」
荻「ええ、その、アレが……………(///////)」
斑「………………」
斑(ささはら………………………………………orz)
荻「直接的な表現が多くて、絵柄がキツくないからって言ってました。別にホモなワケじゃないけど、『エロいから』ってことでした」
斑「なんかあまりにストレートで…つーかそういうこと言うかフツー?好きな女の子の前で!」
…自分が昔、春日部さんに「正月休みに冬コミ新刊がないとヒマでしょーがない!」とか言ったことは忘れている斑目であった。
荻「ええ、でもそのストレートっていうか、『見当違いな答え』なのが良かったんです」
斑「?」
荻「ああ、この人嘘つかないな、って。その上で気持ち悪がられなかったんです。だからすごくホッとしました…」
斑「ナルホド、フツーだったらもっと気を使って発言しそうなトコだもんな。全くあいつは…」
荻「そうですねー」
荻上さんは思わず苦笑する。それを見て自分もホッとして笑う。
- 126 :空の下、大切な場所(後編)7
:2006/05/11(木) 20:31:56 ID:???
- 斑「…しかし俺、受けなのかー…」
荻「受けです。というかですね、私が『メガネ受け』萌えだからです」
斑「そーなん?」
荻「その人を低く見てるとか、弱そうに見えるとか、そういうことじゃないんです。そのメガネキャラに萌えたから、受けさせたいんです!
というかこの配役も、メガネキャラを受けさせたいがために笹原さんを強攻めにしたんです!」
荻上さんは熱く語る。
荻「…あ、でも、あくまでキャラとしてなので…」
斑「ほほう…ま、荻上さんが実際付き合ってるのは、メガネキャラじゃないしな、笹原。」
荻「そうです…そーいうモノなんですよ」
斑「ふーん、なるほどねー…」
属性と、実際好きになる人が違う。…それは自分もそうだから分かる気がする。
荻「ま、『カワイソスギ』なのはさすがに…そこに入れてませんし…ブツブツ…」
斑「へ?」
荻「い、いえ何でも!!…あっそうだ、大野先輩は『斑目先輩はへタレ攻めのほうがしっくり来る』って言ってましたよ」
斑「………君らいつもそんな話してんの?(汗)」
荻「いっ、いつもじゃないスよ!…いやでもスミマセン(汗)」
斑「まぁ複雑な気持ちにはなるわな」
荻「スミマセン………」
斑「…例えば、例えばだよ?俺が笹原や他の男どもと、百合モノで『大野さん×荻上さん』について語り合うよーなモンかね?」
荻「え!?」
斑「いや例えばの話。そんな話はしたこと無いけど」
荻「…それは…複雑ですね………。」
斑「でしょ?きっとその違和感と同じよーなモンなんだよ。」
荻「わたすが受けなんですか………orz」
斑「そっちかい!!!」