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げんしけんSSスレ4
- 1 :マロン名無しさん
:2006/02/15(水) 02:59:58 ID:???
- 「それに、妄想は誰にも止められないし。」
「荻上さんのSSみたければ」
「そういうのも全部受け入れなきゃいけないってことだよね。」
「み ら れ る」
どんなSSを書いてきたのか荻上。
げんしけんSSスレ第4弾。
未成年の方や本スレにてスレ違い?と不安の方も安心してご利用下さい。
荒らし・煽りは完全放置のマターリー進行でおながいします。
本編はもちろん、くじアンSSも受付中。名前欄にキャラ(カプ)記載を忘れずに。
☆講談社月刊誌アフタヌーンにて好評連載中。
☆単行本第1〜7巻好評発売中。
☆作中作「くじびきアンバランス」ライトノベルも現在3巻まで絶賛発売中。
【注意】
ネタばれ含んだSSは公式発売日正午12:00以降。 公式発売日正午以前の最新話の話題は↓へ
げんしけん ネタバレスレ6
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1138030943/
げんしけん(現代視覚文化研究会)まとめサイト(過去ログや人物紹介はこちらへ)
http://ime.nu/www.zawax.info/~comic/
げんしけんSSスレまとめサイト(このスレのまとめはこちら)
ttp://www7.atwiki.jp/genshikenss/
- 2 :マロン名無しさん
:2006/02/15(水) 03:00:50 ID:???
- エロ話801話などはこちらで
【椎応大】げんしけん@エロパロ板 その2【くじあん】 (21禁)
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1122566287/
げんしけん@801板 その4 (21禁)
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/801/1127539512/
前スレ
げんしけんSSスレその3
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1136864438/
二代目スレ
げんしけんSSスレその2
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1133609152/
初代スレ
げんしけんSSスレ
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1128831969/
げんしけん本スレ
「げんしけん」 木尾士目 その121
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/comic/1139863196/
- 3 :マロン名無しさん
:2006/02/15(水) 04:50:51 ID:???
- >>1
早々と乙。
次回投下は多分こっちだな。
今書いてる分は、多分前スレには収まらないから。
- 4 :前スレ729
:2006/02/15(水) 06:16:28 ID:???
- 第801小隊です。
続き物だったので、早めに上げようと頑張りました。
だんだんとガンダム色が強くなって来ていますが、
知らない方は戦争物と思うようお願いしますw
13レスで投下します。
今回も、読んでくださる方々におぎおぎ。
- 5 :801小隊第7話密林の戦い(後編)1
:2006/02/15(水) 06:20:54 ID:???
- 前回のあらすじ。
「敵新型兵器の行方を捜索せよ!」
指令を受けた第801小隊は、
すでに皇国軍が撤退したはずの密林を突き進む。
川のほとりで食事をし、束の間の休息を楽しむ面々。
しかし、そのとき敵の接近を告げる警報が・・・。
ゲリラ戦法を得意とする敵軍は、密林へと小隊を誘う。
先走ったササハラが一人密林へと突撃し、
システムを起動させ二機までは撃破するが、
三機目に攻撃を仕掛けたところで罠にはまる。
動かなくなった機体。迫る敵機。
「う、動け!動けーーーーーーーーーーーーーー!!」
密林に、ササハラの叫びがこだました。
- 6 :801小隊第7話密林の戦い(後編)2
:2006/02/15(水) 06:25:10 ID:???
- ザクのヒートホークがコクピットに狙いを定める。
「うわーーーーーーーーーーー!!」
動かない機体をそれでも必死に動かそうとするササハラ。
叫び声が悲痛なものになっていた。
振り下ろされるヒートホーク。
ジャラララララララララ・・・・・。
その刹那、鎖のようなものが伸びる音がした。
ブヅン!
何かが千切れるような音がした後、
ササハラは機体の右手だけが自由になったのが分かる。
「うわああああああ!!」
元々振りかぶっていた右手が、そのままヒートホークの軌道に移動する。
グシャ!
右手が切り落とされたのがわかる。しかし、機体そのものは大きな損傷は無い。
「はあ、はあ。」
しかし、いまだ動けないのに変わりは無い。
他の三肢は固定されたままなのだから。
目の前のザクは何かが起こったことをわかっているようだが、
当面はササハラを撃墜することにしたようで、
再びヒートホークを構え、攻撃を仕掛けてくる。
ドゥン!
ビームライフルの射撃音が響くと、ザクの上半身を貫いていた。
両肩を損傷したようで、腕が機能不能になったようだ。
『大丈夫?ササハラ君!』
「はぁ、はぁ、うん・・・。今のコーサカ君が?」
『うん。ちょっとしたギミックでね。』
ジャララララ・・・・。
鎖が引きずられるような音がする。
- 7 :801小隊第7話密林の戦い(後編)3
:2006/02/15(水) 06:30:21 ID:???
- ササハラの両端にいた二機のザクは、敵増援に気付き、
まず手負いのジムにマシンガンを構え、挟撃の形をとる。
「くっ!」
ザクの両手からワイヤーが離れたため、自由に動けるようになる。
しかし、多勢に無勢。しかも右腕は損傷している。
ドダダダダダダダダダダダ・・・。
ザクのマシンガンをかわそうとするも頭部センサーが破壊される。
ディスプレイから周囲の映像が途絶える。
「しまった!」
『もう少し耐えて!もうちょっとで到着する!
混戦になってるからライフルじゃ狙えない!』
コーサカの声に、逃げ回るしかないと判断したササハラ。
しかし、センサーは利かない。
「くそ!」
ベキキッ!
コクピット前のハッチをはがし、ササハラは肉眼で周囲を把握しようとする。
二機のマシンガンは相変わらずジムを周到に狙う。
「くそ、くそ!」
情けない!
そんな感情を抱きつつも、必死に逃げ回るササハラ。
そこに、黒い影が一機のザクに接近していた。
『待たせたね!』
ビームサーベルを構えたコーサカのガンダム。
頭部を破壊し、武器を破壊。ザクはあっさりと沈黙した。
- 8 :801小隊第7話密林の戦い(後編)4
:2006/02/15(水) 06:35:37 ID:???
- 「コーサカ君!」
そのままコーサカのガンダムはもう一機のザクに狙いを定める。
腕を前方に伸ばすと、腕の上部からチェーンのようなものが飛び出す。
ジャララララララララ・・・。
チェーンは高速でザクの体を貫く。そのままチェーンを手繰るガンダム。
チェーンの先が広がり、抜けずに固定される。
そのまま引っ張られた15t以上あるはずのザクの機体が浮く。
ズシン・・・。
そのまま、動かなくなるザク。パイロットが気絶してしまったようだ。
『・・・大丈夫?』
「・・・うん。すごいね。そんな武器持ってたんだ。」
とりあえず周囲に敵がいなくなったようで、一息つく二人。
チェーンをザクから抜いて、巻き戻すコーサカのガンダム。
この間もジムのプレジデント・システムはスイッチオンのままだった。
あまりに必死で、情報が入ってたのかどうかもササハラは覚えてはいなかったが。
『・・・大丈夫ですか?』
心配そうな会長の声が響く。
「・・・はい。またよろしくお願いしますね・・・。」
『・・・はい。ではまた。』
そういいながらスイッチを切ったササハラは少し自嘲めいた笑みを浮かべる。
『これ、実は僕が設計したんだ。工作用MSを参考にしてね。』
「・・・へぇ・・・。」
『だから、他にもいろいろ仕込んでるんだ。
どこに何があるかは多分僕しか把握し切れてない。』
コーサカが自機の説明をはじめるも、ササハラは気もそぞろ。
『そういう意味で、僕はこいつをガンダム・クラフトって名づけたけどね。』
「ふーん・・・。あ、そうだ、他の皆は?」
『大丈夫、無事だよ。ササハラ君のおかげで敵の統率が乱れたようだから。』
- 9 :801小隊第7話密林の戦い(後編)5
:2006/02/15(水) 06:40:20 ID:???
- 「うおら!」
マダラメのザクがヒートホークを振り下ろす。
しかし、敵ザクには避けられてしまう。
「なにぃ!?接近戦で俺と戦おうってかぁ!?」
かち合うヒートホーク。鍔迫り合いの様になる。
「ヒヒヒ・・・。やるじゃねえか。」
思いのほか得意の接近戦で均衡しているため、軽い口を叩かないと気が紛れない。
「く、こいつ・・・、本当にやるな!」
力の均衡が続く。少し静けさが広がる・・・。
ガサッ!
そこに現れたのは敵増援のザク。
「ま、マジか?」
マダラメがあせったため、力の均衡が破れる。
「うおっつ!」
間一髪振り下ろされたヒートホークをかわすが、かすり傷を負う。
「二人の戦いに水をさすのは野暮ってもんじゃねえかぁ?」
とは言いつつも、戦場では数が強力な武器であることも理解している。
地面に突き刺さる敵のヒートホーク。
もう一機のザクは見た目が両方ともザクのため、
その上暗い夜の密林のためにどちらが友軍機なのかを見分けられない様子だ。
「うおら!」
その隙を見逃さず、腕を切り落とすマダラメ。
両腕をもがれたザクは、体を持ち上げ、体をぶつけてこようとする。
その間に、もう一体のザクは、識別信号で敵を判断したようだ。
マダラメに向けてマシンガンを向けるザク。
ズダダダダダダダダダダ・・・!
「うお・・・!」
かわすマダラメ。その銃撃が腕なしザクに当たる・・・!
「・・・馬鹿野郎!味方に誤爆覚悟で撃つんじゃねえ!!」
マシンガンに蜂の巣にされたザクは、沈黙した。
- 10 :801小隊第7話密林の戦い(後編)6
:2006/02/15(水) 06:44:29 ID:???
- 言い知れぬ怒りを込めてマダラメは残ったザクに襲い掛かる。
「・・・味方殺してどうすんだよ!」
ヒートホークを振りかざし、マシンガンをかいくぐる。
ズダダダダダダダダダダ・・・!
むこうも必死なのだろう。ひたすらマシンガンを連射してくる。
「おらあ!」
接近し、ヒートホークが当たる距離まで来ると、
マダラメはまず拳で相手のバランスを崩す。
動きが鈍る。相手パイロットに直接のダメージを与えたのだ。
そのまま、敵機を抱え投げ飛ばす。
ズシン・・・。
生えていた木に背中からぶつかるザク。
パイロットの意識が飛んだようだ。ザクが機能を停止する。
「・・・はあ・・・。」
気分が悪くなる。味方殺し。
「うう・・・。」
吐き気がこみ上げる。ザクのコクピットのハッチをすぐに開ける。
周囲に敵がいないことを確認してから、コクピットから出るマダラメ。
「う、うげえええ・・・。」
思いっきり先ほど食べたものを吐き出すマダラメ。
「はあ、はあ・・・。いまだに・・・。ダメだな・・・。」
そういいながら口を拭い、空を見上げる。
高い木がうっそうと茂っているため、空は見えない。
まるで、自分には見せてくれないかのように。
「・・・宇宙は・・・遠いな・・・。」
- 11 :801小隊第7話密林の戦い(後編)7
:2006/02/15(水) 06:49:00 ID:???
- 「ほおおおおおおお!」
奇声を発しながらクチキがジムキャノンの砲を敵に向けながら発射する。
ドオン!ドオン!
240mmの砲弾が敵ザクに襲い掛かる。が、見事にかわされる。
「な、なんですと!」
クチキはあせりながら次の攻撃を準備する。
しかし、その間も敵はクチキに向かってマシンガンを放ってくる。
「ひょおおおおおお!!!」
再び奇声を発しながらかわすクチキ。
まるで軟体生物のような動きでかわしまくる。
これによって逆にあせったのは敵機のほう。
マシンガンを捨てて、ヒートホークを持ち、接近戦を仕掛けてくる。
「ひほ!?」
接近武器を通常装備していないジムキャノンは、
接近されると頭部バルカン以外に武器は無い。
クチキもそれは理解しているので、接近してくるザクに対して240mm砲を放つ。
ドオン!ドオン!
一発がザクの腕に命中するも、武器を持っているほうではない。
「ひゃあああああああ!!!」
接近され、頭部バルカンを放つも、相手の頭部センサーを破壊するにとどまる。
そのまま振り下ろされるヒートホーク。
ドオーン!
響く大きな砲弾の音。
その砲弾は見事にザクに命中していた。
『だ、大丈夫か、クッチー・・・。』
「は、は、助かったであります!」
クチキがその音の元を見ると、クガヤマのガンタンクUが、
少しはなれたところでその砲身をこちらに向けてたたずんでいた。
- 12 :801小隊第7話密林の戦い(後編)8
:2006/02/15(水) 06:55:01 ID:???
- 「あ、後二機かな・・・。」
今までの連絡の内容を聞いている限り、残り敵機数は2。
『そうでありますね・・・。』
その瞬間。二機のザクがクガヤマの上方から落下してきた。
木によじ登って好機を狙っていたのだろう。それほど太い木がここにはある。
「な、なんだって!」
『ひいいい!!!!』
驚愕するクガヤマ、叫ぶクチキ。
接近戦能力の皆無なガンタンクUには、この距離は危険だ。
叫びながらもクチキは援護のために砲身をザクに向ける。
クガヤマもキャタピラを動かし牽制をしようとするが、
場所が密林なだけに、うまく動けない。
キュルルルルルル!メキメキメキ!
木を踏むキャタピラの音が響く。
ザクはその間もクガヤマ機に向かいヒートホークで襲い掛かる。
ドオン!ドオン!クチキの砲弾が一機のザクに命中する。
うまく急所に当たったのか、機能が停止される。
しかし、もう一方のザクはヒートホークを振り下ろした。
「う、うわ・・・。」
衝撃がクガヤマに伝わる。どうやら右腕を破壊されたようだ。
「く、くっ・・・。」
なんとか距離をとり、ミサイルランチャーを飛ばせる射程に持ってくる。
残った左腕から発射されるミサイル。三連装だ。
ドンドドン!
命中するミサイル。しかし、機能を停止するには至らない。
ボロボロになった機体で接近してくるザク。
「ぐ、せ、せめて両手あったら・・・。や、やばい!」
ズガシ!衝撃音が聞こえたかと思うと、停止しているザク。
『ふう・・・、間に合ったようだな。』
そこにはヒートホークを構えた赤いカラーリングのザク。
すなわちマダラメが到着していた。
- 13 :801小隊第7話密林の戦い(後編)9
:2006/02/15(水) 07:00:09 ID:???
- 「よ〜し、生き残った敵兵はこれで全員だな。」
翌朝。後ろ手を縛った敵兵を集め、河原に集める隊員たち。
「・・・こ、今回もここで放置?」
「まあな。あと二時間もしたらほどけるようにしたからな。
後は自分らで何とかしてもらわにゃ。」
ふふん、とマダラメが笑う。
「いつもこんなことしてんだ。大変だね。」
「でもま、殺すわけにもいかんでしょ、ほっとくわけにもいかんし。」
「まあね。かなり見直したよ、あんたらのこと。」
サキがにこりと笑って、マダラメに言う。
「・・・あはは。今まではダメだったわけね・・・。」
「いままで接してきた軍人が軍人だったからねえ。」
そこに、相手MSの回収をしていたタナカがやってくる。
「回収、終了したぞ。今回は大漁だな。」
「へへ。使えそうなパーツはありそうか?」
「まあ、今回の修理分にはなるだろう。
特にササハラのがひどいからな。ジム用に調整せんとね。」
そのササハラはというと、回収作業を手伝いながら、
どこか気が抜けたような顔をしていた。
「・・・そうだな。あと、ガンタンクUの腕は?」
「あれは、元がほとんど残ってるからすぐ治る。
すぐ直らんのはジムだけだ。」
そういいながら苦笑いするタナカ。
「まあ、よほどの戦いだったんだな。」
「・・・ササハラがつっこまにゃ、劣勢だったとは思うがな。
しかし、アレじゃ死ににいくようなもんだ。」
すこし顔を強張らせてマダラメはササハラのほうへ向かった。
- 14 :801小隊第7話密林の戦い(後編)10
:2006/02/15(水) 07:03:37 ID:???
- 「・・・ササハラ。」
「・・・あ、はい!」
マダラメの声がかかるまで、接近に気がつかなかったササハラ。
先日の疲労もあるのだろう。ものすごく眠そうである。
「・・・わかってるな?」
「・・・覚悟は出来ています。」
そういいながら河原のほうへ出てくる二人。
その雰囲気に周りの注目が集まる。
「な、何が始まるんですか?」
心配そうな声を上げ、オーノに質問するオギウエ。
「・・・軍隊式のけじめですよ。」
そういって、少し怒った表情を見せるオーノ。
その表情に緊張するオギウエ。
「修正だ!いくぞ!」
「はい!」
バキッ!
二人の叫び声の後、マダラメは思いっきりササハラの顔を殴った。
「えっ・・・!」
その光景に両手で口を覆い顔を強張らせるオギウエ。
「な、なんで!」
「・・・命令違反ですから。
それに、命を捨てに行くような戦い方はマダラメさんの一番嫌いな事なんです。」
そういって真剣な面持ちでオーノは二人を見つめる。
「ササハラさんも、覚悟はしてたみたいですね。」
オーノの表情が少し緩む。
- 15 :801小隊第7話密林の戦い(後編)11
:2006/02/15(水) 07:06:05 ID:???
- 「・・・軍隊ってまったく・・・。殴りゃいいってもんじゃないでしょうに・・・。」
サキがあきれたような表情でその光景を見る。
「サキちゃん、アレは重要なことなんだよ。」
「・・・なんで?」
コーサカの言葉に不思議そうな表情をするサキ。
「軍隊って言うのはね、統率が乱れることが一番危険なんだ。
ササハラ君の行動は結果的にはOKだったけど、
命令違反は命令違反だ。そこはケジメつけないとね。
隊、ってものに纏まりがなくなっちゃうから。」
「ふー・・・ん。」
「へー、やっぱりコーサカさんは物知りですねーv」
「だあ、離れろ!」
「あいた!」
ここぞとばかりにコーサカに接近するケーコにサキはチョップを加えた。
「ありがとうございました!」
完全にはれた顔で、ササハラはマダラメに敬礼をする。
「・・・マジで勘弁しろよ。あまり好きじゃねえの知ってるだろ?修正。
まあ、結果オーライだったけどよ。死にに行くような真似はするんじゃねえ。
それに・・・。お前一人で戦ってるわけじゃねえんだからよ。」
そういって強張っていた顔を緩ませ、にやりと笑うマダラメ。
「・・・はい!」
ササハラはその言葉に思う。
(何を思い上がってたんだろう。一人でやらなきゃって思い込んでたけど・・・。
俺にはまだそんな力は無い。システムに頼り切って強くなった気分でいたけど・・・。
頼り切ったらダメなんだ。俺自身が強くならなきゃ。
それに・・・。皆もいる。そうだ・・・。皆で戦ってるんだ!)
- 16 :801小隊第7話密林の戦い(後編)12
:2006/02/15(水) 07:08:05 ID:???
- 「だ、大丈夫ですか・・・?」
オギウエが早速ぬれたタオルを持ってきてササハラに渡す。
「あはは・・・。ありがとう。まあ、自業自得なんだけどね・・・。」
それを受け取って、頬に当てるササハラ。
「で、でも・・・。頑張ったのに・・・。」
「んー・・・。それでも、ここはひとつの隊だからさ。
それを乱したらいけないんだよ。」
「そうですね・・・。それに、絶対に死なないで下さい。」
その言葉に、ドキッとするササハラ。
「え・・・?」
「私を守るっていってくれましたけど、死んでしまったらダメです。
それだけは・・・。私、許しませんから。」
先ほどオーノから聞いた話からササハラの行動がどんなものかを知り、
泣きそうな表情で話すオギウエに、自分の愚かさを知る。
(そっか。俺が死んだら悲しむ人達がいる。
・・・考えたことが無かった。俺も、昔悲しんだ一人なのに。)
「ありがとう・・・。」
「・・・いえ・・・。」
二人に優しい風が吹く。
「おーい、そろそろ行くぞー。」
タナカが叫ぶ。
「あ、はーい。いこうか、オギウエさん。」
「・・・はい!」
二人は母船に向かって駆け出した。
- 17 :第801小隊(次回予告)
:2006/02/15(水) 07:09:28 ID:???
- タナカ達がジムの修理に追われる中、
オギウエは洗濯物の中から、ロケットタイプのペンダントを見つける。
一方、ササハラもそれをなくしたことに気付き、探し始める。
次回、「ペンダント」
お楽しみに。
- 18 :4 :2006/02/15(水) 07:10:37 ID:???
- 今日びっくりしたこと
私、初めてスレ立てしました。
- 19 :マロン名無しさん
:2006/02/15(水) 07:52:47 ID:???
- >>4
あんただったのか〜〜〜!!スレ立て担当!
まあそれはともかく、本格的になってきましたねバトル展開。
これホント、マジでアニメ化したい勢いだな。
多分サンライズの許可下りないけど…
- 20 :マロン名無しさん
:2006/02/15(水) 09:34:17 ID:???
- ガンガルでいいじゃない。
- 21 :マロン名無しさん
:2006/02/15(水) 14:09:24 ID:XVA9ZhN2
- >>4
スレ立て乙!801小隊新作乙!
うおおお!戦闘シーンは燃える…!!!
目に浮かぶようですよ。
今回の見所は斑目ですね。
ていうかもう…もう…斑目スキーのワシとしては斑目のあんな活躍やこんな表情が全部…!
うおおお!!!斑目シーンは萌える…!!!
ワシが笹原に代わって修正された(ry
…はっっ!いかん取り乱したっ…ゴホゴホ。
すいません。次回も期待してます。
- 22 :マロン名無しさん
:2006/02/15(水) 14:53:51 ID:XVA9ZhN2
- 連投すいません。
「卒業式前日 前編」の感想くれた人ありがとうございます。後編も早めに投下します。
>>723
原作読みかえしてると、「高坂、わざと言ってんのかな?」と思うような、気になる台詞が多い。
それを、今回のSSの中で自分なりに解釈して示したつもりです。
(深読みしすぎかも知れませんが)
また、高坂なしに斑目と咲の関係を考えることはできないので、高坂もからませたほうが話がまとまるかと思ったのです。
「斑目が好きな咲が好きな高坂」という一文、いいですね。
>>724
卑怯モンです。すいませんwww
「餓狼伝」を知らないのですが、興味深いです。
「自分を認めさせるため」に必死になるのは咲ちゃんもですね。
必死のときは恐いし辛いですが、それが人間的成長につながると。
>>725
ご期待にそえるかどうか…どきどき
>>728
告白できない話がやはり多いですよね。
斑目がへタレすぎるから…wそこが魅力でもありますが
まとめサイトのSSで「告白した話」もありましたね。
あの話読んで、ワシも頑張って考えようと思いましたよ。
- 23 :マロン名無しさん
:2006/02/15(水) 21:09:10 ID:???
- 色々ありましたが、こうしてSSスレもその4まで迎えたんですねー。
前スレの消費、けっこう早かったですねー。改めて>>1乙
投下作は、後でゆっくり拝見します。
- 24 :マロン名無しさん
:2006/02/16(木) 00:16:14 ID:???
- >>801小隊第7話
いつもありがとうございます!早めに作成頑張られたようで、感謝です。
いいところで終わってたので気になってました(苦笑)。
- 25 :卒業式前日 後編
:2006/02/16(木) 04:52:21 ID:FPS0vi9j
- SSスレその3で投下した話の後編です。
最後まで一気に投下いっきまーす!
- 26 :卒業式前日14
:2006/02/16(木) 04:53:32 ID:FPS0vi9j
- コン、コン。
「入るよー」
春日部さんの声だ。
ガチャリ。ドアが開き、笑顔で春日部さんが入ってくる。
「高坂待ったー?あれ、斑目?久しぶり。アンタまだ部室来てたの?」
「あ…ああ、うん」
動揺を隠せない斑目。
(何じゃ、このご都合主義な展開は!?)
驚いている横で、高坂はすっと席を立ち春日部さんに向かって言う。
「咲ちゃん、僕トイレ行ってくるね。ここで待っててくれる?」
「ん?わかった。待ってる」
春日部さんと入れ替わりに部室を出る高坂。
机の上にカバンを置き、斑目の左の椅子に座る。
その間ずっと心臓バクバクの斑目。
- 27 :卒業式前日15
:2006/02/16(木) 04:54:04 ID:FPS0vi9j
- 「はー、明日で終わりだと思うと、この部屋に来れなくなるのも名残惜しい気がするね」
「………へーーー!春日部さんの口からそんな言葉が出るとはね!」
「何よ。似合わないって?何だかんだ言っても4年も出入りしてたわけだし、情が沸くのも当然じゃない?」
「ま、そうだな」
「だからあんたも未だにココ来るんでしょ?」
「あ、ああ、まあな」
…それだけじゃねーけど。
「でも春日部さん、高坂がいなかったらこんなに通わなかったっしょ?」
「そりゃ、そうだけどさ」
- 28 :卒業式前日16
:2006/02/16(木) 04:54:35 ID:FPS0vi9j
- 「…卒業しても高坂と仲良くやれよ」
「え?あんたらしくない言葉。どうしたの?」
「いやハハ…明日から会えなくなるし、感傷的になってんのかなー…」
「大げさねえ、一生会えなくなるわけじゃないし」
「…でももうあんまり来ねーだろ?」
「当たり前じゃん。誰かと違って忙しくなるからね」
「………」
「…? どうしたの。本当に変だよ」
「いや俺…春日部さんに言いたいことが」
「は?何、改まって。前フリ?ツッコんでやるから言ってみな」
「……………謝ろうと思って」
「え?」
- 29 :卒業式前日17
:2006/02/16(木) 04:55:06 ID:FPS0vi9j
- 謝る?斑目は自分で言った言葉に驚いていた。
「俺、口悪いから色々嫌なこと言ったかなーって…特にあの、活動停止で、部室使用禁止になった時とか」
「うっ…思い出させんなよ」
「いやあの、あの時俺ちょっと言い過ぎたからさ」
「はぁ?何よ今さら。そんなこと気にしてたの?」
あの時。
泣かせておいてただオロオロしていた自分と、フォローしてみせた高坂。
自分のふがいなさに改めてヘコんだ。
「俺、春日部さん好きだったのに、あんな言い方して…」
「え?」
「だから、その…悪かったなーと……」
最後の方は声が出なかった。
- 30 :卒業式前日18
:2006/02/16(木) 05:07:31 ID:FPS0vi9j
- ………言っちまった!!!
うわ、顔が上げられねえ…
「………へっ?え!?」
驚く声。春日部さんの顔がまともに見れない。
「え?あ、ああー…そんな気にしないでよ…ってそうじゃないか。え?
あんた私のこと好きだったの?」
「……………」
「……………」
沈黙に耐え切れなくなり、斑目は勢いで喋りだした。
「………やーーーその、ねえ!それはいいんですよ!別に俺二人の邪魔したいとか思ってないし!
ただ単に、その…もう会えんからね…」
「………」
「…………いや、スマン…」
- 31 :卒業式前日19
:2006/02/16(木) 05:08:20 ID:FPS0vi9j
- 言わなきゃ良かったかな…春日部さんを困らせるぐらいなら…
「…そんな、謝らないでよ。それにこっちも謝りたいことあるし」
「…へ?何を」
思わず顔を上げる。
「よく口ゲンカしたじゃん、オタクがどうこうって。…アレ、八つ当たりだったんだよね」
「…八つ当たり?」
「コーサカにはぶつけられない疑問とか苛立ちとか、全部アンタらにぶつけてたからさ。
…昨日、コーサカと初めて喧嘩したんだ。その時コーサカに言われたんだ。
やっと僕に向かって不満を言ってくれたね、って。
そう言われて、初めてそのことに気がついたんだ。
でもこれからもコーサカとやってく以上、それじゃいけないなあって。
…だからまぁ、アンタには迷惑かけたかな、って」
「いや別に迷惑じゃねーし。口ゲンカもある意味楽しかったしな」
「アハハ、そうだね」
- 32 :卒業式前日20
:2006/02/16(木) 05:09:01 ID:FPS0vi9j
- 「まーお互い様ってことで、気にすんな」
「………その、気づかなくて悪かったね…」
「へっ!?いや、それもまあ、気にすんな!!」
「…悪い気はしないかな?アンタに言われるなら」
「え!?いや、は、ハハハハ…」
「あははは…」
二人して照れ笑い。
「……まぁ俺、良かったよ。春日部さん好きになって」
さらっと言ったつもりだったが、ふと見た春日部さんの顔がみるみる赤くなっていく。
「…へ?」
うつむいてしまった春日部さんを見て何事かととまどう。
- 33 :卒業式前日21
:2006/02/16(木) 05:09:39 ID:FPS0vi9j
- その時、ポン、と春日部さんの手が斑目の左肩に乗る。
思わずビクッとする。
「……こんな風にしか言えないけどさ。ゴメン」
下を向きながら申し訳なさそうに笑う。
肩に乗った手はすぐに離れた。
一瞬の温もり。余韻。
触れたい…
唐突にそう思った。
抑えていた感情が一気に膨れ上がる。
- 34 :卒業式前日22
:2006/02/16(木) 05:10:45 ID:FPS0vi9j
- ブルルルルルッ ブルルルルルッ
突然くぐもった音が響き、二人はビクッとする。
「……あ」
春日部さんは、机の上に置いたカバンの中から携帯を取り出す。
「コーサカからメール…」
「あ?あーー、そう」
『コーサカ』の名前に、一瞬後ろめたいものを感じる。
しかしさっきから、何でこんなにタイミング良く…
「そういや、トイレ行くって出て行ったきり戻ってきてないな」
「あっ…そだね」
「………高坂、何て?」
「校門で待ってるから、話が終わったら降りてきてね、って」
- 35 :卒業式前日23
:2006/02/16(木) 05:22:21 ID:FPS0vi9j
- 春日部さんは慌てて立ち上がる。
「じゃ、ゴメン、私行くわ」
「ん」
「今日、話できて良かったよ。…明日の卒業式には顔出すんでしょ?」
「おう、そのつもりだけど」
「…じゃ!また明日!」
「ん、じゃあな」
バタン。ドアが閉まる。早足で遠ざかる足音。
しばらくの間呆けていた。
さっき一瞬だけ、肩に手を置かれたときの感触を思い出す。
俺あの時なんて思った?思い出して赤面する。体中が熱くなる。
(…引かれなかったな。高坂の言うとおり)
深い安堵のため息をつく。
そして気づいた。心がすごく軽くなっていることを。
- 36 :卒業式前日24
:2006/02/16(木) 05:23:19 ID:FPS0vi9j
- 校門の外にいるコーサカを見つけ、早足で歩いていた咲は走り出した。
「おかえり」
「へ?」
おかえり?コーサカの言葉の真意がわからずとまどう。
二人はゆっくりと歩き出した。
「…あの、さっきのメール…話が終わったらってあったけど、ドアの外で聞いてたの?」
「うん、というか知ってたんだ。斑目さんの気持ち」
「えっ、そうなの!?………あれ?…今日呼び出したのって…」
何やら考え始めた咲が気づく前に、コーサカは答える。
「僕ね、斑目さんにきっぱり諦めてもらおうと思ったんだ」
「え…」
「咲ちゃんのことを」
- 37 :卒業式前日25
:2006/02/16(木) 05:24:12 ID:FPS0vi9j
- 「………なんかコーサカらしくないね」
「そう?僕は僕だよ。自分のしたいように行動しただけ」
「だからって、なんで斑目に告白…?」
「そしたら、咲ちゃんがスッパリ振ってくれると思ったから!」
「…………………」
「ん?」
「…コーサカも、ヤキモチ焼くこととかあんの?」
「あるよ」
コーサカはいつもの笑顔で即答する。
「…へえ、コーサカがねえ…」
ふだん分かりにくいコーサカの感情を垣間見れたことに、喜びがこみあげてくる。
「コーサカ」
「ん?」
「私のこと好き?」
「好きだよ、咲ちゃん」
自然に手をつなぐ二人。
それ以上何も言わず、二人はゆっくりと歩いていった。
- 38 :卒業式前日後編あとがき
:2006/02/16(木) 05:26:10 ID:FPS0vi9j
- 以上です。
くはー!!!長かった!!!
書き上げるのに2週間もかかってしまった!!!
最近こればっかやってたなあ…
「こんなの(斑・咲・高坂)じゃない!!」
と思った人すいません。ワシの中ではこんななんです。
ジオングとエルメスとギャンの性質をワシなりに考慮したつもりです。
(詳しくはオフィシャル&ガンダム占いで。)
しかし難しかった!斑目の告白
どんなシチュ妄想してもなかなか告ってくれないんだも…
てか色々盛り込みすぎ…?
さて。この話は続編も考えております。「卒業式当日」
次はコメディーでいこうと思います。
頑張るぞー!おー!
- 39 :マロン名無しさん
:2006/02/16(木) 05:49:15 ID:???
- >卒業式前日後編
高坂鬼やなー!
でも決着を付けておくことは、斑目にとっても高坂にとっても(そしてひょっとしたら咲ちゃんにとっても)必要なことだったのかもしれない。
それに高坂の「本気の恋愛感情」を1度ハッキリさせることは、咲ちゃんにとっては必要だったと思う。
斑目もこれで、好きな気持ちに決着付けて明日へ進んでいけるんじゃないかな。
また唐突な連想でスマンが、昔アニマル浜口がジャンボ鶴田とシングルでやった時、負けた浜さんがコーナーポストに登って「負けたー!」って絶叫してたシーンを思い出した。
斑目、気合だ!
- 40 :マロン名無しさん
:2006/02/16(木) 07:40:37 ID:???
- >卒業式前日後編
高坂がメールをしたのは不安だったからかな・・・と想像してみたり。
私は高×咲という関係性が好きで、高坂の奥にある感情をいつも憶測してみたり。
うん。いい。
うまくまとまってて、とても心地よくなった。
斑目はこれからっしょ。と、マジで考えてしまうのだなあ。
- 41 :マロン名無しさん
:2006/02/16(木) 08:13:46 ID:???
- >>卒業式前日
それなんて木尾クオリティ?(最大級のホメ言葉です)
斑目せつないよ斑目〜
- 42 :マロン名無しさん
:2006/02/16(木) 11:35:26 ID:???
- >>25-38
うんうん、斑×春はこーいう決着が清々しい・・・・
斑目さんもこれで新しい第一歩を踏み出す事になるんですよね〜
その先にたとえ地獄があったとしても。でも何かのきっかけで
よい縁が来る事を望んでやまない自分がココにいます・・・・斑目たん強くイキロ゚(゚´Д`゚)゚。
- 43 :木尾 :2006/02/16(木)
13:14:53 ID:???
- よし! 斑目・咲ネタは貰った!
メモメモ
- 44 :マロン名無しさん
:2006/02/16(木) 14:13:37 ID:???
- 今日の木尾先生は何号だろう?
- 45 :木尾 :2006/02/16(木)
14:24:06 ID:???
- ばかもーんその木尾がルパンだー!
- 46 :木尾 :2006/02/16(木)
15:11:34 ID:???
- >>43 >>45
何度言ったら解るのかね?この私を語るんじゃぁない!!
当然そのネタも わ た し の も の だ !
カツカツカツ...シャシャシャシャシャー
- 47 :マロン名無しさん
:2006/02/16(木) 18:59:34 ID:???
- 先生たちまたキター!
- 48 :マロン名無しさん
:2006/02/16(木) 19:16:48 ID:???
- これはある意味、名物みたいなものかな……?
- 49 :マロン名無しさん
:2006/02/16(木) 20:00:55 ID:???
- SSスレのマスコットアイドル「たち」です。
- 50 :マロン名無しさん
:2006/02/16(木) 23:34:42 ID:???
- >第801小隊 第七話 密林の戦い(後編)
一気に読みました。臨場感あるね。ガンダムが見たくなった。
最近のシリーズはよく知らないんだけど、戦争のリアリティーや内面の葛藤とかは
やっぱりファーストでしか描かれてないのかな。
>卒業式前日
これも前編後編一気に読みました。俺、告白ですべったその後を描いてみた
ことあるんだけど、(告白ですべる以外の光景が浮かばなかったから)これは
しっくりくる。けじめのある内容だ。斑咲の友愛を感じさせる。高坂が
人間らしい。最後くらいは人間らしさ見せてほしいな、確かに。
- 51 :マロン名無しさん
:2006/02/17(金) 01:17:34 ID:???
- >>卒業式前日
なるほど!!よく考えられてて納得しました!
僕もだいぶ前に斑目告白SS(咲爆笑→気付く→二人とも気付かないフリ)書きましたけど、
斑咲ふたりだけよりも高坂が必須というのは…GJですね。
- 52 :卒業式前日
:2006/02/17(金) 02:02:36 ID:XSi5blLm
- 読んでくださった方、感想書いてくれた方アリガトウゴザイマス。
>>39
高坂は、ああみえてすごく周りが見えてるんです。
でも自分に関係あるとき以外は手を出さない。咲ちゃんのフォローはする。
ただ、今回は自分だけしか斑目の気持ちに気づいてないようなので、助けるつもりで悪役をやった。
…と、いう自分設定です。ワシの思い込みでもあります(汗)
>>40
ワシも高×咲の関係は大好きです。…でも斑目のことを思うと…くぅ…複雑な気持ちです。
>>41
あわわ、そんな、もったいないお言葉。なんかすいません…(^^;)
>>42
原作で、いつか書かれたらいいなあ、斑目の春。外伝とかであればいいなあー
>>43-46
木尾さんたちにそう言ってもらえて嬉しいですwww…二番目の木尾さんは銭形w
>>50-51
「斑目の告白・告白その後」SSをまとめサイトで読んで、もともと頭でくすぶってた妄想に引火して今回の話をかくきっかけになりました。
この話と、「げんしけんの秘密」が大好きです。本当にありがとうございました。
長文長々とすいませんでした。
- 53 :マロン名無しさん
:2006/02/17(金) 06:16:50 ID:???
- 木村カエレのように、グルグル回りながら次々人格を変えて書き込みを続ける木尾先生…
- 54 :ヘロ ◆OhNcWDVyfU
:2006/02/18(土) 00:37:10 ID:???
- 間違えて前スレの投稿したんですけどまたこのスレで投稿したほうがいいでしょうか。
迷惑をおかけしてすいません
- 55 :マロン名無しさん
:2006/02/18(土) 01:17:44 ID:E+17OG4y
- >>54
SSスレその3で読んできました。ふむ…
前スレで読めるので、このままでいいかと思います。
初投稿の時は色々わかんなくて苦労しますよね。私もそうでした。
文としては、オチというか、起承転結の結が欲しいな、と思いました。
私も斑目の話考えるの好きなんで、これからも頑張って書いてみて下さいね。
- 56 :マロン名無しさん
:2006/02/18(土) 03:13:45 ID:???
- >>54
今読んできた。
まあまずは書いてみることが第一だから、思いつくままに書いていけばいいと思う。
ただ書く前に(あるいは書きながら)次のことは考えた方がいい。
・自分は何をテーマに書きたいのか
・どういうストーリー展開にするのか
・オチをどうするか
・あとオリジナルのキャラを出すなら、何の為に出すか、そのキャラに何をさせるかを考える
(一般に名前のあるキャラには、何らかのストーリーの主軸に絡む役割が与えられている。その場限りの機能のみを求めらめるキャラなら、役名はいらない)
- 57 :マロン名無しさん
:2006/02/18(土) 14:02:50 ID:???
- さて、10分ぐらいしたら12レス分で書き込みます。
荻上の現視研直前の話を書いてみたくて書きました(そのまんまやんけ)。
- 58 :夜明けの1秒前(1/12)
:2006/02/18(土) 14:13:13 ID:???
- とある東北の女子高では、今日が卒業式のようだ。
和装や礼服の父兄、父母の姿も見えるが、やはり主役は卒業生。
別れを惜しみ涙をハンカチで押さえる女子高生たち。
あるいは最後の楽しみとばかりに談笑しながら
連れ立って打ち上げに向かう集団。
皆、高校生活を謳歌し、新生活に向けて晴れやかな顔をしている。
その中でも浪人した者や受験が終わっていない者はスッキリしていない。
その構内に、誰とも連れ添わず挨拶もせずに一人で歩く、背の低い
厚い眼鏡の卒業生が居る。荻上千佳その人だ。
この子も卒業式だというのにその顔は暗く疲れが浮かんでいる。
談笑している友人達の方に目をやると、一瞬寂しそうな色が浮かんだ
かに見えたが、黒目がちな鋭い目のまなじりは吊り上がり、
怒っているような様子になった。
彼女もまた浪人決定なのだろうか。
歩いていく前方に卒業生を送る担任教師の姿を見つけると
別れの寂しさでも感謝の笑顔でもなく、無表情になった。
「あ、先生、とりあえず3年間担任ありがとうございまシタ」
「そうね、卒業おめでとう。東京での学生生活頑張ってね。大学合格もおめでとう」
祝福の台詞とはうらはらに、その表情は卒業生を送り出す
達成感は無く、いかにもぎこちない。
そして別れた後に、肩の荷が下りたといった仕草をして、溜息をついた。
ベテランの女教師らしからぬことだ。
同じ時、荻上の方も、(ああ、清々した……)といった
様子だったのでお互い様だが…。
- 59 :夜明けの1秒前(2/12)
:2006/02/18(土) 14:14:01 ID:???
- 部活の先輩を見送る後輩たちと別れを惜しむ一群の横を
無表情に通り抜ける荻上。
3年間を過ごした高校だというのに、別れを惜しむ人、
祝福を述べられる人など、只の一人も居ないのだろうか?
その背の低い眼鏡の少女は、一人で校門から出て行きかけると
目つきが険しくなった。
背中ごしにヒソヒソと、いや、聞こえるように会話しているのが聞こえてくる。
卒業生のグループのようだ。
「……見てよ…れ……」
「……ホモ上じゃ……」
「なんか椎応…行く………」
「東京……良いな……」
「やっぱり………だから………」
「……友達居ない…」
「無理無理……」
「………秋葉原………オタク……」
アハハハハと、そのグループから笑い声が上がる。
荻上の背中に受ける、とぎれとぎれの言葉。
一人で歩く小さな体から怒の熱が滲み出て、怒気が目からほとばしる。
「馬鹿はほっとけ……!!どうせ二度と会わね」
自分に言い聞かせるように呟くと、荻上は高校を振り返りもせず
躊躇うことなく門を出た。
その足どりは早くなり、さっきまでの疲れたような陰と重さを
校門の内側に置き去って、少し身軽になったように見えた。
- 60 :夜明けの1秒前(3/12)
:2006/02/18(土) 14:14:39 ID:???
- 一月余り経って、ここは東京、椎応大学の入学式終了後。
初日の履修手続き説明会などが終わると、新入生たちはさっそく
同じ学科の者、気の合いそうな者と新しい友達を手探りで作り
数人で連れ立っては歩いている。
高校時代一人で居たあの少女、荻上千佳はその輪に入っているのだろうか。
いや、地味な眼鏡と髪型はイメチェンしているものの、
今日、自分から人に話しかけた様子も無い。
「授業、何を取るの?これから学食行って俺らと相談しない?」
などと誘ってくる同級生の男子グループも無視してしまった。
「ねえ、一緒にシーズンスポーツ同好会見に行かない?」
などと誘ってくる女子学生も居たが、曖昧な返事で断ってしまっている。
新入生らしき女子大生が一人で歩いていると、軽いノリで上級生が
サークルに誘って来たりもしているが、馬鹿にしたような視線を送り
「興味有りません!」
と、きっぱり断っている。
しつこい勧誘には
「ちゃらちゃら遊んでる、あなたみたいな軽い人たちは嫌いなんです」
と、厳しい言葉を投げつけている。大丈夫だろうか……。
結局、大学に来てもまた一人になっている。
その状況に自嘲的な笑みを浮かべながら歩く荻上。
- 61 :夜明けの1秒前(4/12)
:2006/02/18(土) 14:15:39 ID:???
- やがて、ひとつのテーブルの前で足を停めた。
ノートに1枚物のイラストを描いて、台詞を入れて遊んでいる眼鏡の男。
ここは漫画研究会のブースだ。
「ん?漫画に興味有るの?読むだけでも良いんだけど」
「いえ、一応描けます」
「それはすごい、有望な新人だねぇ。じゃココに名前書いてね」
そう言ってさっきまでイラストを描いていたノートを差し出す。
どうやら新入会員募集用のノートだったようだ。
絵の隅に書いてあるサインは「ヤナ」とある。
「サークル室の場所と活動時間はこのチラシを見てね」
と、コピー用紙を1枚渡された。それに目を落とす荻上。
「あ、僕は会長の高柳って言うんだ。よろしく」
「……なんかこの絵、オタくさいだけじゃなくてホモくさいんですけど」
「え?いやウチの女子会員さんたちの合作でね、女性向けというか」
見ると、新勧用のチラシは男女用2種類作られている。
「ホモ好きに見えましたか?オタクっぽかったですか!?」
言葉こそ初対面で丁寧だが、急に不愉快そうになった荻上に
高柳は少し焦る。
が、有る意味で女性慣れしているのですぐにフォローする。
「いやそんな、全然そんな風に見えないよ?
この絵もそういう意味じゃないから…ね?
うちでは普通の範囲内だし……」
「……そーですか」
「ま、まあ漫研でも、いかにもオタクっぽい奴も、一般人っぽいのも居るし
ともかく、また是非サークル棟に来てみてよ」
会釈をしてその場を去る荻上を見送った高柳は、冷や汗をぬぐう仕草をした。
- 62 :夜明けの1秒前(5/12)
:2006/02/18(土) 14:16:23 ID:???
- 「荻上千佳と言います。漫研は初めてですが、絵を描くのは好きでした」
新会員が数名揃ったところで、部室での自己紹介となった。
今日のところは、男子3名に女子2名といったところだ。
さっそく先輩会員たちの雑談に加わるほかの新入会員たち。
「最近読んでる雑誌ってなんなの?」
「いや、こないだまで受験であんまり読めなかったんで」
「ジャプンとマガヅンどっち派?」
「私はジャプンよ、愚問ね」
「拙者はチャンピョンが今一番アツイと思うんだが」
「なんか絵が重いのよね」
「しかもREDが最高!!」
「すんません読んでません」
「むしろビームズとかガソガソじゃないのか」
荻上は、その様子を眺めている。
『げっ…オタくさい会話……でも漫研だし漫画の話で当然だし』
隣の高柳は少し心配そうにチラッと見たが、緊張こそしているものの
今日は少し楽しそうで安心した。
『でも、大勢で……なんかこの感じ、良いナァ…』
中学の文芸部時代を思い出すのだろうか。
しかし荻上の思考はそこまで具体的には思い出さない。
いや、思い出せないとも言える。
しかし楽しい雰囲気に加わる感覚は懐かしいものだった。
机の上の共用ラクガキ帳に手を伸ばすとパラパラと見てみる。
『上手い人も何人か居るみたい…流石……しっかし、オリジナルなんだか、
元ネタ知らないだけか分からないのも多いなぁ』
- 63 :夜明けの1秒前(6/12)
:2006/02/18(土) 14:17:18 ID:???
- 「…あ、机の上の鉛筆立て使って良いよ」
高柳に促されて鉛筆を1本抜き取る。
「…ん、んん」
軽く咳払いをして、適当にオリジナルで女の子の胸像画を描いてみる。
「ん?描くの早いね」
「へーーー上手わね」
「どれどれ……へーーー」
「即戦力!即戦力!」
ノートに人が集まってくる。
荻上は照れくさくも嬉しいようで、笑顔の上に無表情を重ねている。
『絵を描いて、やっていける場所なんだな………嬉しい』
高柳も荻上に話しかけてくる。
「えーと、はぎ…いや、荻上…さん。夏コミの原稿もたぶん有るから宜しくね」
「がんばります」
『よし、実家じゃおおっぴらに買えなかったけど、画材や道具を揃えよう!』
「あの、画材ってどこで買ってるんですか?」
「あー、それはね―――」
これからの学生生活に、東京生活に。いや、荻上自身の日常に光が差した。
かに見えたが………。
- 64 :夜明けの1秒前(7/12)
:2006/02/18(土) 14:18:03 ID:???
- 翌日、部室に行って見るとまだそんなに人は来ていなかった。
高柳と、先輩の女子会員が3人。
「ども………」
「ちわ〜〜〜」
「いらっしゃい」
高柳は一人で今日発売のウェンズデーを読んでいる。
女子会員はどうやらジャプンで連載だった「ヒカリの棋」について論争中だ。
幽霊の指導の下、ヒカリ少年がライバル達と競いながら将棋に励み成長していく。
「ヒカリってザイに対しては強気で受ける感じに――」
「それよりも攻めが少ないわね、あの漫画―――」
『うっわー堂々とヤオイ話……恥ずかしくないべっか』
話には加わらずに、何の気なしにヒカリの棋のイラストを描き始める。
ヒカリが駒を盤面に置くカットだ。
「ねえ、荻上さんはヒカリの棋ではどのカップリング?」
「………いえ、そういう話は、あんまり」
「ふ―――ん」
高柳がウェンズデーを読み終わったので、女性陣に手渡す。
そして荻上の描いたイラストを見て話しかけてくる。
「ふーん、線の感じが女の子っぽいけど、けっこう少年誌読んでる?」
「ええ、まぁ弟も居ますし」
「ちょっと俺も描いてみるかな」
荻上の描いた横に、高柳も描き始める。
線の太い絵柄で、昔から描いてたらしくちょっと古い感じもする。
「炎燃って知ってる?」
「ええ、燃えペンは面白いですね」
同じ構図だが、指にパースがかかっているし背中に炎を背負っている。
その差した駒が焦げて煙が上がっている。
高柳の絵を見てクスリと笑う荻上。
- 65 :夜明けの1秒前(8/12)
:2006/02/18(土) 14:18:38 ID:???
- その頃、女子会員達はウェンズデー連載の「いせじゅう」について会話している。
柔道部を基本設定としたギャグ漫画なのだが。。。
「亀次郎って毎回さー、菊千世にヤられちゃって記憶飛ぶの笑えるよね」
「堂々とホモネタ描いちゃっても良いのかな、少年誌で」
「むしろウェルカムじゃん、あたしら」
「会長もそうでしょー。どう?」
「ん、まあね…認知されてる……のかな(汗)?」
『あっけらかんとホモ話なんかしやがって、許せないわ』
内心ご立腹の荻上だが、容赦なく話かけられる。
「荻上さんもこっちに来て話しようよ」
「どーしてそんなにホモが好きなんですか!?」
「え……?何言ってるの?自分も読むんでしょ」
「まーまー、荻上さん抑えて抑えて、ね?」
高柳の額から嫌な汗が吹き出る。
「私は読んでません!オタク扱いしないで下さい!」
中3から高校3年間にかけての条件反射か、反発してしまう荻上。
『なんでそんなに堂々として居られるのよ!しかも人に押し付けて!』
まだ押し付けるという程では無かったのだが……。
荻上の脳裏に中学時代の記憶が具体的に戻りはしなかったが
不快感が胸の奥に込み上げる。
『……苦しい……苦しい……憎い…………何が?自分が?ホモ趣味が?』
胃が痛い気がするし、呼吸が苦しくなってきた。
見た目、青ざめて具合が悪そうな顔色になってきた。
「は?漫研に入っておきながらオタクじゃない?」
「漫画は読むし描きますけど、ホモは嫌いです!」
- 66 :夜明けの1秒前(9/12)
:2006/02/18(土) 14:19:15 ID:???
- 「えー、怪しいなぁ………」
「そうね、怪しいわね」
そのうちの一人がロッカーからヤオイ同人誌を取り出した。
「ほらほら、それなら試しに1冊読んでごらん、楽しいよ」
「けっこうです!恥ずかしくないんですか!?そんなの鞄から取り出して」
「何言ってるの、漫研女子としては必須科目よ(笑)」
「だからっ、だからオタクは嫌いなんですよ!迷惑なんですよ!」
女子会員達も笑っては居られなくなってきた。
「ちょっとー、さっきから自分の事を棚に上げすぎなんじゃないの」
「まっまあそれは、〈心に棚を作れッ〉っていう名言が有ってね――」
「会長は黙ってて下さい!!」
「読みなさいよ!早くそれを」
テーブルに置いたヤオイ同人誌、ヒカリの棋アンソロものを指差す先輩女子会員。
かなりの厚みのあるものだ。
「読みませんったら!」
ガシャーーーーーン
テーブルごと付き返す荻上。椅子がなぎ倒され、ロッカーなどにも色々と当たる。
その表情は具合の悪そうな様子を覆い潰して、手負いの獣といった雰囲気だ。
「何するのよ!」
がしゃーーー
押されたテーブルは押し返される。
「ホモ趣味なんて、オタクなんて、女オタクなんて―――死ねば良いんですよ!!」
荻上の小さな体の、どこからこんな大きな声が出るのだろう。
そしてその台詞が責めているのは、相手なのか自分自身なのか。
「あなたが死ねば良いのよ!カッコつけちゃって、自分がそうなんでしょ!?」
すると荻上は冷淡な笑みを浮かべて、左手の窓辺に手を掛けた。
- 67 :夜明けの1秒前(10/12)
:2006/02/18(土) 14:20:00 ID:???
- 「簡単に死ねばって言っちゃって…確かにこんな高さじゃ全然死なないですけどね」
「何言ってるの?馬鹿じゃないのアンタ!」
窓枠に後ろ向きに上る荻上。
「こういう事を言ってるんですよ!あと馬鹿はそっちでしょ!」
言うなり、そのまま落ちていく荻上。
高柳は部室内をテーブルで遮られ、近寄るのが一歩遅れた。
窓から下を見て落ちた荻上を見る女子会員達。
「な、何なの、あの子って一体―――」
高柳は部室を飛び出すと急いで荻上の所へと下りていった。
『2階なんて低いもんだな……足とか大丈夫っぽいけど、左手が駄目かも』
飛び降りてそのまま、荻上は痛いとも言わずに黙って座り込んでいた。
『せっかく、楽しく絵を描いていける居場所が見つかったはずだったのに―――
何やってるんだろ、あたし。何がしたいんだ………自分でもわかんね』
周りでは少し遠巻きに人が集まり始めている。
そこへ高柳が駆けつける。
『ああ、会長、すみません、私もう―――』
「大丈夫?荻上さん?」
急いでやってきた自治会への説明をしたりしてから、荻上を
すぐ近くの総合病院の救急窓口まで付き添ってくれた。
- 68 :夜明けの1秒前(11/12)
:2006/02/18(土) 14:20:55 ID:???
- 「こんな時間まで、長い時間お待たせしましてすみません」
「や〜、頭打ってないと思っても、一応CTとか脳血管撮っといた方が良いからね」
病院のロビーから見える外の景色はもう暗くなっている。
付き添いは高柳一人だけだ。
「でもまさか、飛び降りちゃうとはねぇ」
「ご迷惑、お掛けしました」
「入院はしなくても良いの?ご両親に連絡は?」
「あ、いえ入院もしませんし、家にも連絡しません」
「まあ足より手で助かったのかな。左手だし」
苦笑しながら高柳は荻上のギプスに目をやる。
「そうですね、大丈夫です」
荻上は申し訳なくて、高柳の方を見ることが出来ない。
「誰か道連れにして落ちてたら〈暗黒流れ星〉だったんだけどね〜」
「?? 何ですかソレ」
「あ、いや冗談。古い漫画の話でね………」
「そーですか」
そして、しばらくの、沈黙。
高柳から話を切り出す。
「待ってる間に他の会員とも話したんだけど………」
「―――はい」
「やっぱりね、3年生や4年生も、お互い気まずいというか」
「ええ、もう辞めます………」
「………すまないねぇ」
「いえ、こちらこそスミマセンでした」
そうは言ったものの、明らかにさっきより落ち込んでいる荻上。
重い空気が辺りにのしかかる。
- 69 :夜明けの1秒前(12/12)
:2006/02/18(土) 14:21:58 ID:???
- 「他にも、この手のサークル有るけど、紹介しようか?」
「え?」
「いくつか懇意にしてるサークルがあってね。どう?」
「でも、私……」
「あんなに絵を描くのが好きそうだったじゃないの」
「…………はい」
「じゃ、さっそく明日行ってみようか」
「お願いしマス」
そうして翌日、現視研のドアの外に立つ荻上の姿があった。
『なんか漠然とし過ぎてない?このサークル』
高柳は今、部室に入って説明というか交渉をしている。
『でも、もう同じ失敗はしない。最初から言ってやるんだ、オタクが嫌いって!』
このドアが開く時、荻上の本当の学生生活が始まる。
- 70 :マロン名無しさん
:2006/02/18(土) 14:25:23 ID:???
- 異常…じゃない、以上です。
まあ、またこんなところを掘るのか!異常者め!って言われそうですが…中学時代に続き…。
しかし高校時代はSSでは難しくて僕には無理です。
- 71 :マロン名無しさん
:2006/02/18(土) 14:55:50 ID:E+17OG4y
- >>夜明けの一秒前
リアルタイム乙!
すごくうまくまとまってて良かったです。
高校時代(卒業式)の荻上の様子を、淡々と第三者的に綴る手腕に脱帽。
中学時代の悪夢のような出来事、高校時代の停滞。
それがあるから初登場時のあの暴言があるのだ、と改めて認識しました。
そして漫研の飛び降り事件。
そこにいたるまでの経緯がすごく納得できる展開でした。
荻上の今までの苦しみを、今読めてよかったです。
きっと今後は、そこから荻上がいい方向に変わっていく話が読めるのでしょうから。
GJ!!
- 72 :マロン名無しさん
:2006/02/18(土) 17:32:59 ID:???
- >夜明けの一秒前
荻ダイブエピソード1キタ〜〜!
と思ったら、あんただったのか東條監督!
いやー相変わらずの掘り下げっぷりに感服しました。
それにしても、具体的に書くとやっぱりイタいね、初登場時の荻上さん。
でも荻過去知ったら、漫研女子との間の38度線は解消されて、腐女子の友情が芽生えるかも。
そういう明るい未来を望みたいものです。
- 73 :マロン名無しさん
:2006/02/18(土) 18:36:57 ID:???
- >>58-69
乙。 もしあそこで荻が暴走したりしなかったら
高柳とフラグが立ってたかもしれんな・・・面倒見いいし、
漫研女子から荻をフォローしてあげたりして、色々相談に乗ってあげてるうちにそのまま・・・
- 74 :いつか見た夢の続きを
:2006/02/18(土) 21:26:39 ID:???
- それは一枚の葉書から始まった。
『現代視覚文化研究会OB会のお知らせ』
(誰が出したのだろう?)
笹原の疑問に答える人はいない。
就職後改めて借りたアパートの一室、酷く雑然としたその部屋に、たばこの煙が立ち昇る。
「もう5年か…」
つぶやきと共に記憶を遡る。
あれはまさに人生の転機だった。あの時間が無ければ、自分の趣味を隠しながら、一消費者として生きていただろう。時に無責任な批評をしながら。
それは酷く気楽で、仕事に疲れた今の笹原には魅力的に見えた。
編集という仕事を選んだ事には後悔はない。自分で作り出す事は出来なくとも、『共に』作りだす事はできる。作家の気まぐれに振り回されながらも、一つの作品を作り上げた時の喜びは決して嘘ではない。
とはいえ、この五年でろくな成果をあげていない事実は笹原を苦しめる。
上司の小野寺は「運が悪いな、お前」と一刀両断してくれた。自分の才能について質問した時は、「才能より成果を示せ」というつれない返事が返ってきた。それが小野寺流の慰めだと知っていても、堪えた。
たばこをもみ消し、葉書を睨む。
何の変哲も無い往復はがき。印刷された特徴のない文字。あて先は少し悩んだが、現視研の部室だと思い当たった。
笹原は何かを期待して、出席にマルをつけた。
- 75 :いつか見た夢の続きを
:2006/02/18(土) 21:31:28 ID:???
- 「変わらないねえ、高坂くんは」
互いの近況を話しながら部室へ向かう。高坂の説明によると、高坂と咲の二人は卒業後半年で結婚したそうだ。お互いに酷く忙しくて、式も何も無く、婚姻届を出しただけ、との事だが。実際今でもあまり一緒にいられないのだそうだ。
それでも大丈夫なのか、という問いに高坂は、「大丈夫。ちゃんと愛し合ってるから」と満面の笑みで返してくれた。
(はいはい、ごちそうさま)
心の中でつぶやいて、サークル棟の入り口をくぐった。相変わらず雑然としているが、改装されたのか壁も床も天井もきれいになり、張り紙もほとんど無くなっている。少々寂しく思いながら歩く。
「そういえば春日部さんは来るの?」
「電話したら、表が明るいうちに店を空けられるか〜!って怒られたよ。でも、どうせ飲み会になるだろうから、その時は顔くらい出すって」
そんな事を話すうちに現視研の前にたどり着く。扉もきれいに塗り替えられ、小さ目のネームプレートに「現代視覚文化研究会」とある。少々緊張しながらドアをノックして、開けた。
- 76 :いつか見た夢の続きを
:2006/02/18(土) 21:32:19 ID:???
- そこには良く知った顔と、見知らぬ顔があった。
「お久しぶりです。斑目さん…と」
「お、おい。いくら久しぶりでも、そ、それはないだろ」
「あっはっは、やっぱわかんねーよ、普通。変わりすぎだって」
「お、おまえが変わらな過ぎなだけだろ」
見知らぬ顔は久我山だった。何でも一念発起してダイエットしたそうだ。体だけでなく顔つきまで変わっているとは…。
再び互いの近況報告。斑目は今も同じ会社に勤めているそうだ。さすがに部室に昼飯を食べに来る事はなくなったが。久我山は二度ほど転職して、現在は某社の事務をしている、との事。ちなみにダイエットの理由は、彼女に言われたから、らしい。
「田中さんと大野さんは?」
「さっきまでいたんだが…辺りを見てくるってさ。それに今や田中夫妻だしな」
「へえ、そうだったんだ」
「こ、高坂くん知らなかったの?結婚式の招待状、行った筈だけど…」
「いつ頃?…ああ、その時期は忙しくて会社に泊まりこんでたから…」
そんなやり取りを聞きながら部屋を見渡す。ポスターや並んでいる本は変わっても、基本的な配置は同じだった。並んでいる本の中に、自分が担当した作者の本を見つけ、軽くあわてる。
「どうした?笹原」
斑目の問いに何か答えようとした時、ドアが開き。
「「「ただいま〜」」」
と三つの声が響いた。二つはよく知った声。もう一つ、聞きなれない子供の声は、二人に手を引かれた幼女のものだった。
挨拶を交わし、三度近況報告。田中と旧姓大野とその娘については、全く知らなかったわけではない。田中は今ではコスプレ業界のカリスマwとして結構有名になっている。おまけに妻と娘がこの間のコミフェスで親子でコスプレして話題になっていた。
「こーにゃにゃーちわー!」
能天気な声と共に朽木登場。異常にハイテンション。無駄に騒いで、すべって、転ぶ。沈黙が痛い。視線が痛い。特に田中の娘の視線は絶対零度。でもくじけない。
「どうでしたか〜!最近芸人を目指して猪突猛進してるであります!」
部屋に皆のため息が満ちる。
結局、高坂の「普通に喋れば?」の一言で常態にもどった。
そして。
「…こんにちは」
聞きたくて、聞きたくなかった声が聞こえた。
- 77 :いつか見た夢の続きを
:2006/02/18(土) 21:33:25 ID:???
- 一通り挨拶をかわす。
「それで今何をやってるんです?」
「普通に会社勤めしてます」
「ところで漫画の方は?」
「やめました」
「全くやめちゃったの?」
「はい」
旧姓大野と会話する荻上から目を逸らし。別の事を考えようとする。思い出す。思い出してしまった。
あれは卒業式の日。
「別れましょう」
荻上の唐突な言葉に、声が出ない。
「就職したら笹原さんも忙しくなるでしょうから…邪魔になりたくないんです」
そんなことはない、と何度も訴えた。けれど返ってきたのは、
「もう決めましたから」
という言葉だった。
その後は良く覚えていない。多分酷い言葉で彼女をなじったと思う。ただ、彼女は決して涙を見せなかった。そして、去り際に浮かべた寂しげな微笑を、覚えている。
その後一年は忙しくて思い出す暇さえなかった。二年で苦痛になり、三年で稀になり、四年で忘れた。忘れたと思いたかった。
ちらりと視線を向けると、あの頃のままの少し不機嫌そうな顔で話す彼女がいる。
さらに視線をめぐらすと、何か言いたげな斑目に気付く。
「何か?」「いや」
短く言葉を交わす。短い沈黙の後、思い出と近況を話し合う。彼女の思い出に触れないように。
- 78 :いつか見た夢の続きを
:2006/02/18(土) 21:34:04 ID:???
- 「やあ、だいたい揃っているようだね」
外が薄暗くなってきた頃、ドアを開ける気配すら見せずに初代会長が現れる。全然変わっていない。容姿もその態度も。
「今回皆を集めたのは、最後を見届けて欲しかったからなんだ」
「うん、今年で終わりなんだ。部員がいなくなってね」
「ああ、それはいいんだ。この部屋はそのまま倉庫になるだけだから」
「どうやって?本当に知りたい?」
皆の矢継ぎ早の質問に淡々と答えを返す初代。
「じゃあ、そろそろ行こうか?」
一通り質問が終わると、唐突に切り出した。飲み会をセッティングしているらしい。
皆が部屋を出る。閉じたドアに初代が鍵をかけ、ネームプレートを取り外す。それらをポケットに入れ、初代は歩き出す。(返さなくていいんですか?)と皆が思ったが、聞いた人はいなかった。
- 79 :いつか見た夢の続きを
:2006/02/18(土) 21:34:57 ID:???
- 「じゃあ、そろそろ行こうか?」
一通り質問が終わると、唐突に切り出した。飲み会をセッティングしているらしい。
皆が部屋を出る。閉じたドアに初代が鍵をかけ、ネームプレートを取り外す。それらをポケットに入れ、初代は歩き出す。(返さなくていいんですか?)と皆が思ったが、聞いた人はいなかった。
会場はごく普通の居酒屋だった。少しほっとする一同。そして皆が席につく頃には初代の姿は無かった。「会計は済んでます」という伝言を残して。
飲み会はしめやかに始まった。何かを思い出していたのかも知れない。それが変わったのは、朽木の空気を読まないギャグのおかげだった。
「「こんばんわ」」
宴がそこそこ盛り上がっている中、咲と恵子が現れた。ちなみに恵子は、学生時代の借金のカタに咲の店で働いている。実際には普通に給料をもらって、それから借金分を天引きされているのだが。返した側から借りるため、完済はいつになるのかわからないそうだ。
二人を加えて宴はさらに盛り上がる。そんな中、荻上の笑い声を聞くたびに、笹原は傷ついたような気がした。
- 80 :いつか見た夢の続きを
:2006/02/18(土) 21:35:36 ID:???
- 宴は、眠り込んだ娘を抱いて田中夫妻が退席すると、それを皮切りに咲と恵子が、高坂が、久我山が帰っていった。3人で静かに飲む。
「よし、じゃあお開きにするか!」
斑目の提案に賛成する。そして店を出たところで物陰に引きずりこまれた。
「なんなんですか、いったい」
「笹原…言いたい事があるならちゃんと言っておけ」
「斑目さんに言う事なんてないですよ」
「違う。荻上の事だ。…何があったかは知らんし、知りたくも無い。でも、言いたい事があるなら彼女にちゃんと言え」
「斑目さんには関係ないでしょう!」
怒鳴る。苛立つ。抑えてきた、忘れたはずの感情が蘇る。それが怒りなのか、悲しみなのか、後悔なのか、思慕なのかはわからない。ただ、それは笹原を責めたてた。これでいいのか、と。
「関係はないさ…ただ、言いたい事をいえなかった人間がどうなるか、を知ってるだけだ」
それだけ言い残して斑目は去っていった。
- 81 :いつか見た夢の続きを
:2006/02/18(土) 21:37:14 ID:???
- 店の前には荻上が一人立っていた。
「えーと、荻上さん?」
声を掛けたはいいが、次の言葉が見つからない。頭の中がぐるぐる回りだす。何か言おうと思った時、
「ようやく話し掛けてくれましたね」
そう言って彼女は軽く微笑んだ。
その後、彼女に誘われ、一緒にタクシーに乗り、彼女の部屋へ行った。机に載ったトレス台に気付く。
「あれ、漫画やめたんじゃ…」
「嘘です。でも…誰にも見せない漫画なんて、意味ないですよ」
「どうして…」
「…わからなくなったんです。自分が何を描きたいのか。何をしたいのか」
「あれから何回か本を出しました。売れた時も、売れなかった時もありました。買ってもらえることが嬉しくて、皆が好きそうな物を描いて、それで本が売れて…」
「皆が私を受け入れてくれた気がして…嬉しくなってもっともっと描きました…でも気付いたんです。自分が、好きでもない作品の、好きでもないキャラを、好きでもないシチュエーションで描いてることに」
「ずっと私の本を買ってくれた人がいるんです…コミケの外でも会って、いろんな話をしました…でも、この前言われたんです。『荻上さん、嘘が上手くなったね』って」
「ショックでした…それで、本当に自分が描きたいものを描こうとしたら…何も思いつかなかったんです…」
「描いても、描いても、そこにあるのはいつか見たようなシーンと台詞しかなくて…」
告白を続ける彼女。その顔にはいつか見た寂しげな微笑。
- 82 :いつか見た夢の続きを
:2006/02/18(土) 21:37:58 ID:???
- (ああ、俺は馬鹿だ。彼女は泣いていたんだ。悲しくて、苦しくて、でも俺に迷惑を掛けたくなくて、必死に堪えていたんだ。)
彼女を強く抱きしめる。彼女が暴れる。
「同情なら止めてください!」
「同情なんかじゃない!」
彼女の肩をつかんで顔を覗き込む。
「俺はまだ荻上さんが好きだ。だから力になりたいし、一緒にいたいんだ!」
「嘘ですね」「嘘じゃない!」
頑なに拒む荻上に業を煮やし、むりやり唇を奪う。そしてきつく、きつく抱きしめた。
やがて唇が離れ、彼女は笹原に呟いた。
「痛かったです」
「ゴメン」
「ひどいです」
「ゴメン」
「…もう二度と離さないでくれますか?」
荻上は顔を赤らめて尋ねる。
「誓うよ」
笹原の言葉に、彼女は、泣きながら、笑った。
それからも笹原の忙しい日々は続く。相変わらず担当作品の評価は伸びない。加えて家にはもう一人の担当作家がいる。それでも頑張る。売れるだけでも、作者の自己満足だけでもない面白いものを目指して。
「ずいぶん張り切ってるな。なんかあったか?」
「いえ、目標を再確認しただけですよ…ねえ、小野寺さん。」
「なんだ」
「誰かに必要とされることって嬉しいですね」
小野寺は呆気にとられた顔をすると、処置なし、と言わんばかりに肩をすくめ、自分の仕事に帰った。
- 83 :マロン名無しさん
:2006/02/18(土) 21:46:21 ID:???
- OB会で完璧に無視されるハラグーロ&過去のげんしけんOB達
- 84 :いつか見た夢の続きを
:2006/02/18(土) 21:49:26 ID:???
- 疲れました。やっぱりフルメンバーなんて出来ません。後半に出てくる人物は台詞も
ろくにないし。
おまけに読み返したら、欠損と重複が。欠けた方は無くても大差ない部分でしたが、重複分は
脳内で削除してください。
- 85 :いつか見た夢の続きを
:2006/02/18(土) 21:51:46 ID:???
- ついでに、後半はほとんど「それ何てエロゲ」ですね。
一応言われる前に。
- 86 :マロン名無しさん
:2006/02/19(日) 01:26:58 ID:???
- >いつか見た夢の続きを
内容はいいんだから、後でいろいろ言い訳するのはやめれ。
俺はあの重複した分は、何かの演出効果かなと思った。
- 87 :マロン名無しさん
:2006/02/19(日) 02:56:24 ID:???
- >>84>>86
>>78-79の間にアイキャッチ
- 88 :斑恵物語-1-
:2006/02/19(日) 05:20:13 ID:2MycS4rc
- はじめて書いてみました。
恥ずかしながら投稿させていただきます。
お手柔らかに。
- 89 :& ◆3eNs7crgZ.
:2006/02/19(日) 05:21:26 ID:2MycS4rc
- 斑目は疲労の染み込んだ体で帰路についていた。
合宿から帰って早半月。
笹原と荻上は案の定くっつき、今は宜しくやっている。
一方、社会人で彼女もいない斑目は、合宿以来、仕事仕事の単調な毎日の繰り返しであった。
斑目の職種は事務職。現場で汗を流している社員からは楽そうだと羨ましがられるのだが、
一日中椅子に座ってディスプレイを眺めているのも、結構疲れるものだ。
(ふぅ〜、あー、学生にもどりてー…。てもしゃーないか…。)
今日は土曜日。ようやく一週間の仕事を終えて、明日のアキバ巡回に思いを馳せた。
しかし…、少し空しい。
(あんあ〜、笹原はアキバも荻上さんと一緒にいくんだろうな〜。
俺も春日部さんと同人ショップ巡りしたいよ…、ってそりゃぜってームリだな…)
もう9月も終わりが近づき、風は徐々にその熱を失ってきていた。
今日は特に時折ゾクリとするような寒い風が吹く。日が沈むのもだいぶ早まった。
(そろそろ冬物のスーツ、クリーニングに出しとこ…)
そう心の中で呟きながら、斑目は通いなれたスーパーの買い物カゴを手に取った。
昼はコンビニ、夜はスーパーのお惣菜というのが、最近の斑目の定番になっていた。
「あれ、斑目さんじゃんっ!」
甲高い声に斑目は顔を上げた。
- 90 :斑恵物語-1-
:2006/02/19(日) 05:22:12 ID:2MycS4rc
- 「ん? ぁあ〜、笹原妹…じゃなかった、恵子ちゃんか…。何してんの?」
くたびれた斑目とは対照的に髪型からアクセサリーから靴までバッチリにキメた恵子が、
オシャレっぽい紙袋と買い物カゴを片手にそこに立っていた。加えて、いつも以上に濃い化粧で…。
「あー、今は買い物。これからアニキんとこに行くとこだからね。ま、買出し。」
ふ〜ん、と斑目は相槌を打つ。
恵子が笹原宅をホテル代わりに使っていることは、未だに現視研部室に出入りしている彼はよく知っていた。
恵子が部室にいることも度々である。が。
(あ〜、やべ。笹原妹ってあんま話ことねぇーぞ…。どうすっかな……。つか名前で呼んだのも初めてかも…。)
疲れた体に更に疲労がのしかかる…。
一方、恵子も。
(う。会話途切れたよ…。マジで話しことあんまねぇし。まあ、無視するわけにもいかんからねー。
声かけたのは正解…だよなぁ…。)
二人の間に微妙な空気が流れた。
「あ〜、斑目さん、今日仕事だったんだぁー!」
無理からに声を張る恵子。
「うん、そ…。んで、飯買いにきたの…。何かそっちは酒ばっかデスネ。」
恵子の買い物カゴにはビール、チューハイ、ワインなどなど…。あとは菓子のみ。
「あー、いやねー、今日ホントはさ、友達と遊び行って、そのまま友達んちに泊まるはずだったんだけどぉ、
何かイキナリそいつのオトコが来ちゃってさー。マジむかついたんだけど、仕方ねーから追い出されてやったのよ!
もう急遽よ、急遽!
やってらんねーよ。」
「あ、じゃあ、それ。笹原への手土産なわけだ…。」
「まま、楽しく呑もうと思ってね。アニキも彼女できたし、こういうのも必要ってことを教えてあげないとさっ。」
ふ〜んと斑目。
(あ、だめだ。続かない。くそ、このオタクめ。ちっとは気ぇー使えよ! アニメの話なら何時間でも続けるくせにっ!
仕方ねーな…、て、まあ好都合だったかな?)
「斑目さんも来る? つーか行こうよ! 明日休みなんでしょ?」
- 91 :& ◆3eNs7crgZ.
:2006/02/19(日) 05:23:03 ID:2MycS4rc
- 「え?」
急な誘いに、斑目は急に背筋が伸びた。
「あ〜、ま〜、でも邪魔じゃない?
荻上さんとかいないのかな?」
「だからじゃ〜ん。アニキ達二人のとこにアタシ一人乗り込むのはヤなのよ。ほら、はいはい行くのけってぇ〜!」
「うわ、決定されちゃったよ…。」
しかし、まんざわ悪い気もしない。というか、むしろ嬉しい。あー、久しぶりに楽しく酒が呑める。そんで笹原と荻上を冷やかしたり、
からかったり、イジリ倒せるじゃないか!
疲労の奥からムクムクとテンションが上がっていくのを斑目は感じた!
「んじゃ、行くかあ!」
「おお、元気でたじゃん。」
「よし、呑む! そして笹原を冷やかす、いじる!」
「じゃ、これの代金、割り勘で頼むね。」
「えぇぇーー、つーかそれが狙いかいっ!」
「いーじゃん、お金ないんだもん。斑目さん、社会人でしょ!
一応割り勘って言ってんじゃんよー。奢りじゃないだけいいじゃん!」
「まま、いいのデスケドネ。そのくらいは。」
(ま、先輩だしな、こんくらいはね…。)
と納得する斑目。
「んじゃ、もう会計行こーか。」
「あ、ちょっとまって。こっちの惣菜も買ってく。俺、飯食ってねーから。」
「あ、そっちは別会計で頼むね。斑目さんのだから。」
「うわ…。」
(マジカヨ…。)
やはり現実の妹は恐ろしいなと斑目は思った。
- 92 :斑恵物語-1-
:2006/02/19(日) 05:23:42 ID:2MycS4rc
- 「おい…。」
恵子のオシャレ紙袋を含めて全ての荷物を持たされた斑目が後ろから声をかける。
「笹原んちの電気…。消えてんですけど。」
「あ、ホントだ。」
「鍵もってんの?」
「ん、もってないよ。コンビニでも行ってるんでしょ。ちょっと電話してみる…。」
携帯を取り出して開くと、画面にメールの着信が表示された。
件名は、『悪いんですけど』。
悪いんですけど
さっき来ていいといったが、ち
ょっと用事でこれから出る。明
日帰る
鍵はポストの下にガムテで張っ
とくから、勝手に入れ
散らかすなよ
あと、男をつれこんだら、コロ
ス
「どーしよー、殺すってさ!」
恵子はいつものように大口を開けて笑っている。
「ははは…。」
斑目は苦笑を返した。
- 93 :斑恵物語-1-
:2006/02/19(日) 05:27:48 ID:2MycS4rc
- 「あー、じゃー、いーや、今回は。帰ってこれ食うよ。」
「えー、つまんねー! いいじゃん、呑んでこーよ、斑目!」
帰り道の会話で馴染んだのか、今や完全にタメ口、アンド呼び捨て。
「でもコロスみたいデスシ…。」
「え、なに?
マジちょっと意識してんの? うわ、やらしー、ムッツリだよこの人。」
「ちょ、チゲーヨ! してないっつーの! 後輩の妹ごとき!」
「あ、ショー失礼じゃなーい? ソレ! じゃあーいいじゃんか。入ろ入ろ。」
う〜んと斑目は眉毛を歪ませた。
(あー、まー、いーか。別にそんなんじゃないしねぇ。期待もしてないし…。)
「ま、そういうことならお邪魔しマスヨ。」
恵子は電気を点けると、ガムテープの切れ端をグニグニと丸めてゴミ箱に投げた。
「おお、これが片付けてないリアル笹原ルームか!」
意気込んで見渡したもの、あんがい片付いてやんの。
「なんだよ、こざっぱりしてんじゃねぇーか。」
「まあ〜ね〜、最近はこんな感じ。オギーも来るようになったかんね。」
むむ、っと斑目の眼鏡が光った。
「あ、何、マジでもう来てんの?」
「来てるよー。チョー来てる。飯とか作ってもらったりしてるみてー。今日だってぜってーオギーのとこでしょ。」
「ふぇ〜、なんだよ〜…。」
ややヘコむ斑目。まあ、そうだとは思っていたが、あの笹原がラブラブしてるのはやはりちょっとショックだ。ていうかムカつく。
「その辺、適当に座ってよ。あ、レンジそこね。」
「あいあい…。」
斑目は適当に買い物袋をおいて、惣菜をレンジに突っ込む。
恵子はバックと上着を放って、座布団を引っ張り出すと、いそいそと酒盛りの準備した。
- 94 :斑恵物語-1-
:2006/02/19(日) 05:29:06 ID:2MycS4rc
- 「んじゃ、乾杯しますか? んじゃま、サルの幸せを祝して! かんぱ〜い!」
「かんぱ〜い…!」
恵子は勢いよくビールを飲み干す。
斑目も釣られるように一気にグラスを空けた。
「お、いいね、呑めんじゃん。」
「はは、まね。」
正直、さっさと酔っ払いたいのです。生涯をオタクとして過ごしてきたのであるからして、女の子と二人っきりというのは、
何だかもうそれだけでツライ。後輩の妹であっても。マジで耐え難い。油断すると変な汗が出そうになる。
酔うしかない。酔って場を和ますのみ!
惣菜を摘みつつ、斑目はちょっとオーバーペース気味に酒をあおった。
「おお、いくね〜、こりゃ負けてらんねー!」
置いていかれまいというわけでもないのだろうが、恵子も未成年とは思えぬ呑みっぷりでグビグビと飲み干していく。
しばらく呑むと、もう何か変なテンションが場を支配していた。
「あ゛あ゛〜、何か飯もういいわっ、呑も!」
「あ、じゃーこれちょーだーい、イカ刺し好きなんだよねー!」
「何だよ、食ぅーんじゃん、結局!」
「あははは、まーねー、ごちになりやすっ、先輩(はぁと)!」
「良い良いー。くえい、くらえい!」
(あー、けっこー酔ってなーオレ。疲れてたからなー。まーいーかー楽しいし。)
眼鏡を外して斑目は眉間の辺りを軽くマッサージした。
「あ、ちょっとストップ!」
イカ刺しをごっそりすくいならだ恵子が叫ぶ。
「うん? 何?」
「斑目の眼鏡外したとこ初めて見たよー。ちょっとそのままストップ、よく見せてよ!」
「あん?」
目を細めた恵子の顔が近づいてくる。
- 95 :斑恵物語-1-
:2006/02/19(日) 05:31:16 ID:2MycS4rc
- 眼鏡が無いので良く見えいないが、ちょっとドキッとした。至近距離の女子には免疫が無い。
(うわ、香水の匂いキツー…。)。
「ん〜ん。」
「…何だよっ!」
誤魔化すように大声を出したのだ。
(少し顔が火照ってるような気がする。いや、これは酒のせいか?)
「どーすか…?」
ぼやけた恵子の顔をまともに見れない…。
「…何か眼鏡ないと、顔、変だね。あははは!!」
「うわ、それはないデショ!」
力が抜けた。焦った分だけ、余計に恥ずかしい…。
「もう眼鏡だよ、斑目は。顔と一体化してるもーん!」
「あー、それ、前に春日部さんにも笑われた気がする…。」
「あ、そうなん?」
「いっぺん眼鏡を違うのにしたことあんだけどね…。…おもっきり笑われた。」
「だよー。」
「いや、一応眼鏡だったんだけどねぇ。」
「じゃあ、丸メガネ限定だあ。丸メガネ限定顔!」
恵子は自分のセリフにハマってさらにバカ笑い。
「俺の顔は丸メガネありきかよ!」
「あひひゃひゃはははは、だって変なんだもん。もう一生丸メガネけってーだよ、斑目は!」
「まーね…。(自分でも感じてないでもないですケドネ…。)」
「あ、怒った?」
ニヤニヤしながら恵子が尋ねる。
「いや、いーですよー。丸メガネ好きっすから!」
「まあーまあー、機嫌直して、呑みましょうよ、先輩(はぁと)。」
「へいへい。」
「ビールやめてこっちにしようよ。焼酎。最近ハマってんだよねー。」
恵子は斑目のコップに仰々しく焼酎を注いだ
- 96 :斑恵物語-1-
:2006/02/19(日) 05:32:23 ID:2MycS4rc
- 3時間後。
もう呑みっぱなし、菓子食いっぱなしで、斑目も恵子もベロベロになってきた。
「あのさー、ちょっと着替えていい?」
「えっ!」
ブバッと酒を吹く斑目。一瞬、酔いが醒めた。
「このカッコ疲れたあ。化粧も落としてーしぃ。」
恵子は酔っ払っていて、座っていてもなんだかフラフラしている。
「ああ、いいんじゃね…。俺あっちいってよっか?」
(何、焦ってんだか…。つくづくオタクだな…俺。)
「あーいい。アタシがあっちいく。斑目も着替えたら、Yシャツしんどいっしょ?」
「ああまあ、でも着替えねーし。」
「アニキの着りゃいいじゃん。ジャージか何かあるでしょ。テキトーに探して。」
ドタドタ足音を立てて、恵子は荷物とともトイレの方へ歩いていく。
斑目もフラフラと立ち上がる。
(ふわー、ひっさしぶりに酔ったなあー、ちょっとやべーかも。)
壁を支えにしながら歩くと、押入れの中のタンスを物色し始めた。
(おんや?)
着替えの中に斑目の琴線に触れるもの発見。斑目はスーツのベルトを外して、その服に着替え始めた。
「うす、お待たせー。」
ネズミ色のスエットに着替えた恵子が出てきた。靴下を脱いだ足で、ペタペタと歩いてくる。
視線が部屋の斑目の姿を捉えた。
「どう、これ!」
「……んんん、ぶはははーーーー、何だよそれーーー!!!」
- 97 :斑恵物語-1-
:2006/02/19(日) 05:33:25 ID:2MycS4rc
- 斑目が着ていたのは、笹原の高校時代の体操着だった。
「いやー、やっぱ高校のジャージは落ち着くよな!」
(キマッタ!)
狙い通りのボケがハマッて改心の笑みの斑目!
「うおー、アニキそんなん持って来てたのかよー!
オタクっつーか、ダセーっついうか、いや、最高っすよ、先輩!」
「いやー、喜んでいただけて嬉しいデス!」
「うわー、名札はってあるよ。『3-1
笹原完士』だよ。しかも、丈短くてツンツルテンだー、くわはははーーーー!」
何だか気持ちよくウケたのとスーツから開放されたのとで、また妙に斑目のテンションもあがってしまった。
「よっしゃー。呑み直すかぁあ。今日はもう朝まで呑んだらー!」
再び天井知らずの酒盛り大会が再開された。
「そういやさー、ぶっちゃけて、笹原と荻上さんのアレって、恵子ちゃんどのへんで気づいたの?」
「ん〜?」
裂きイカをかじりつつ恵子は答える。
「もう、とっく! 冬頃には感じてたよ。」
「それはウソだー。冬って俺まだいたよー現視研、って今もいるけど。それはウソだ。」
「いんや、マジで。ウッスラ出てたのよ。そんな空気。」
「え、笹原から?」
「ちがうちがう、オギー。」
「え、荻上さん? マジデスカ?」
かぁーっと唸りつつ、焼酎を呑む斑目。
「じゃあ何? むしろ笹原が惚れられてたわけ? あの笹原君が?」
そう言うとまた一口あおる。
「あの笹原君だよぉ?
ワタクシがアキバの歩き方を手取り足取り教えてあげた笹原君ですよ?」
「そーなんだよねー。」
恵子の手にあるのはワインだ。
- 98 :斑恵物語-1-
:2006/02/19(日) 05:34:44 ID:2MycS4rc
- 「あのサルに惚れる女もいたんだよねー。やー、人生に希望が持てるね、ある意味。」
ふははは、恵子は大口を開けて笑う。
「斑目はどうよ〜? どのへんで気づいてたー?」
「え、俺?」
う、っと言葉に詰まった。ちょっと冷や汗。
「あ、あああ、う〜ん、ま、俺、昼休みしかいないからね…。」
「えええ?
もしかして全然気づいてなかったのー!」
「……春日部さんから教えてもらいましたよ…。」
「ワァー、マジ? チョーウケるんですけどお!
さっすがオタ師匠だよねー! うわははは、いや、マジでウケるわ!」
「はは、あっはっはははは…。」
斑目は照れ笑い返すしかない。顔も少し赤くなっている。
「でもなんか『らしい』わ。斑目らしい! そういうの苦手っぽいもんねー、恋愛つーの?
男と女つーの? もうぜんぜんって感じだよね。」
「悪かったデスネ…。もーこっちは筋金入りのオタク星人デスカラ!」
(あーもー、言い返せねー!)
「笹原も地球に帰っちゃたしなー…。」
斑目はチーズおかきをチーズとおかきに分離させている…。
「ん〜ん…。」
恵子はクイっとワインを呑むと、ジト目で斑目を見据えた。今までと少し表情が違う。
真面目顔を装いつつ、その実、ワルーイ顔になっている。
「でも、斑目も好きな人ぐらいいるっしょ?」
「ぶっ! ええ?」
「いや、それはいるっしょ? それは! マジで! そこはぶっちゃけようよ先輩。」
「あ〜。」
腕組みしつつ考える。どう答えたもんかな…?
- 99 :斑恵物語-1-
:2006/02/19(日) 05:41:48 ID:2MycS4rc
- (まあ、いいか、名前言うわけじゃねーし。)
「…まあ、いるわな…。そんくらいは…。」
「えー、いんのー? ダレよダレダレ?」
(あ、やべ、この展開…。しくじった。)
「そりゃー、秘密だよ、君ィ。言うわけねーじゃん。」
軽く焦っているので、斑目はあえて余裕のある態度に出る。しかし、視線は虚空を漂うのであった。
一方、恵子はジト目でしっかり斑目の表情を観察している。
「あー、こりゃ、現視研の誰かだね! じゃなきゃ、別にゆったってヘーキだもん。」
うっ…。
「まー、想像に負けせマスヨ。妄想は止めれませんからね…。ンン〜、名言だな、これは。」
(うー、やばやば、ここで引いたらいかん! あえて強気強気でいかんと…。社会人としての成長を今こそ発揮セネバ!)
恵子は酒のせいか、座りきった目で斑目を睨む。
内心ドキドキだが、斑目はポーカーフェースをきどっている。
「ん〜、大野さん?」
「………。」
「ん〜、春日部ねーさんか?」
「………(平常心、平常心)。」
「もしや、オギー?」
「………。」
「あー、アタシか。
「それだけはない!」
「くはー、シツレーだなあー、オタ師匠!」
グラスのワインを一気に空ける恵子。
「 ぐはー、ダメだ。酒回って頭まわんねー!」
(ふー、乗り切ったか。)
斑目は小さくため息をついた。
- 100 :斑恵物語-1-
:2006/02/19(日) 05:49:36 ID:2MycS4rc
- 「あー、ぜんぜん、手ェー止まってんじゃんよ、斑目ぇー。もう、お前もワインの呑めよ。こっちの呑め、こっちの白呑め。」
だんだんと絡みっぽくなってきた恵子に圧されて、再び酒に手を伸ばす。
しかし、やられてばかりでは形勢の悪化を招くばかり。
両肘をテーブルに付くと、今度は斑目がジト目で恵子を睨んだ。
「んじゃよ、お前さんはどうなんよ。高坂は。まだ諦めてないわけ?」
「あい?」
「春日部さん、強敵だよー。手強いよー。」
「わかってんよ、うんなの。」
ちょっと不機嫌そうな恵子。視線を外してあさっての方向に目をやる。
「実際、もう正味のとこ半年もないぜ、卒業までさ。」
(ま、それは俺もだけどな…。)
微かに自嘲の笑いが漏れる。
「まーね。もー、じゃー、ここだけの話、ぶっちゃけるけど。」
「おうおう。」
「もう諦めてんのよ。とっくに。」
「へ、そうなの?」
意外な言葉に斑目は驚いた。斑目の中の恵子は、とにかく高坂LOVEでグイグイ突っ走る恋愛マシーンのイメージがあったからだ。
脈があろうがなかろうが諦めない、どこまでも追いかける恋愛ターミネーター。
合宿でもウザがる咲をよそにしつこく二人のあとをついて回っていたし。部室でも高坂がいるといないとでは露骨に態度が違うのも見ていた。
それがとっくに諦めた?
「え、そうなんだ…。ふーん、…またどうして?」
「だってさー。もうこっちはこんだけラブラブ光線だしまっくてるわけじゃん? 気持ち伝わってるわけじゃん? アタシの。」
「ああ…。」
恵子の言葉に少し心が痛い斑目。
「でも、二人は相変わらずでさー、もうヨユーなんだよね、なんか。春日部ねーさんの態度も。敵じゃねーみたいな?
ま、実際その通りだと思うし。高坂さんも優しいのか、アニキに気ィー使ってんのか、ハッキリ言わないけどさ。
わかるつーの。こっちも場数踏んでんだから。『もう無理?』って空気〜?」
- 101 :斑恵物語-1-
:2006/02/19(日) 05:55:37 ID:2MycS4rc
- 「まあ、ねー…。」
(それは、当初からじゃないですか?)
ジト汗の斑目。
「そんなら、引くしかねーわけよ。女としてね。」
そういうと恵子はテーブルに突っ伏してふぁ〜とため息をついた。
斑目がぼそりと呟く。
「まあ、お似合いだしね。あの二人。」
「そうだよ。似合ってんだ。これがまたムカつくんだな〜。ま、そういうわけすよ…。」「そっか…。」
少し悲しくなったような気がした。
あれだけ猛アピールをしてる恵子をしてコレである…。絶望的な状況はわかってるし、自分もとうに希望は捨てているとはいえ、
やっぱりちょっとショックだった。
「まあ、斑目はがんばんなよ。」
「いや、無理だって。恵子ちゃんがどうにもならないんじゃ、俺に春日部さん落とせるわけないっしょ?」
…。
…。
………………。
………………………。
「えっ???!」
「あ。」
斑目は固まった。ピキッという音がした。ような気がした…。
恵子は軽く引いてる…。
「あ……、ねーさんだったの…。斑目の好きな人って…。」
ジト汗を流してつつ、恐る恐る尋ねる。
「……あ、ま、言っちゃいましたね…、ワタクシ…。」
「………うん…。言っちゃったよねー…。………マジなんだあ…。」
- 102 :斑恵物語-1-
:2006/02/19(日) 05:56:24 ID:2MycS4rc
- 「ははは。……言わないでね………ダレにも……。」
(あー…、……言っちゃったなー…。ついねー…、ポロッとねー…。言っちゃいましたー、いつのまにかー…。)
がっくりとうな垂れてる斑目を恵子が苦笑いで見つめている。
「へー…、いつから…、とか…聞いていいっすかね?」
「…ま、けっこう前から…。」
「告ったりとかは…、してないよねー、その様子だと…。」
「………してない、し、デキマセン………。」
恵子の額にイヤな汗が滲んだ。
(う、苦手だよ、こういうの。マジでオタクの絶望的片思いだよ…。人のこと言えないけど。しっかし隠し続けた分だけ、イタイな…。)
突然、ガバッと斑目が顔を上げた!
「あー、いーや。もういいわ。もう呑もうよ。気にすんな気にすんな。気にしねぇから気にすんなよ。」
そう言ってグラスをむんずと掴むと、グビグビっと酒をあおった。
苦々しい笑いを浮かべていた恵子も、ここは流石に空気を読んだ。
「そーだよ、呑も! 呑んで忘れなよ、斑目! てゆーか、いっそ、アタシがねーさんのこと忘れさせてあげよっか?」
恵子は大口を開けて笑った。
斑目は思いっきり吹いてしまった。
「ぶっ、え? やめてよ、もー!」
「え、なになにその反応? なに童貞捨てるチャンスとか思った?」
「ちげーっつーの! 単なるツッコミだッ!」
斑目は照れ隠しにグラスにワインをドクドクと注いだ。
ふふふ、と恵子は不敵な笑みを浮かべる。
「かわいいな〜、斑目は〜。純情さが萌えるよね〜。ねーさんにはわかんないか〜、萌えは!」」
「なっ!」
「うふふ、顔真っ赤んなちゃってカワイー!」
テーブルに腕を組み、その上に顔のせてしどけない表情を作ってみせる。
斑目は心臓の鼓動が少しだけ早まった気がした。
- 103 :斑恵物語-1-
:2006/02/19(日) 06:00:13 ID:2MycS4rc
- 「ちょ、純なオタクをからかわないでくれませんかのう…。」
「ふふ、高坂さんは諦めたしー。次は斑目先輩に乗り換えよーかなー、ふふふ。」
「あー、だ、ダメダメ。あ、ありえねーって、さ。」
「うーん? なんでー?」
じりじりと恵子がにじり寄ってくる。
(わーたー、マジで? いや冗談だろうけどさ。くそ、この小娘め!
社会人をおちょくりおって! な、なんか、いい反撃はないもんか?
答え@オタク斑目は突如反撃のアイデアがひらめく
答えA仲間がきて助けてくれる
答えB言われっぱなし。現実は非情である。
ってジョジョネタ考えてどうする!)
「ねぇ〜ねぇ〜どうなのよ。は・る・の・ぶ。」
ニヤニヤ顔の恵子がふぅ〜と息を吹きかける。
いよいよ進退窮まった斑目に、神が降りた。
「ううううう〜、いや、もうだって、…顔が……笹原にそっくりだもんよ…。」
「ぐわっ!」
ドサドサっと恵子はカーペットに崩れ落ちた。
「きっつー! そうくるかー!」
「いやあはははは、でも、ほんと、似てるよね…。」
斑目は心の中で呟いた…。
(ふー、答え@、答え@、答え@。)
「いやまーね…。化粧しないと、マジで似ちゃうんだよねーコレガー…。」
恵子は少ししょんぼりとしたように、斑目には見えた。
(あ、少しヘコんじゃったかな?春日部さんの名前出しちまった気まずさをフォローしてもらったのに悪かったな…。)
「でも…、…あんま濃くないほうがいいんじゃない…? 化粧はさ…。オタクは化粧濃いのは苦手じゃないかな、…たぶん。」
「え、なになに?
それは斑目の好みぃ〜? やらしー!」
(うわっ、トラップはまった!!)
その後も二人は、そんなこんなで朝まで呑み明かした。
- 104 :斑恵物語-1-
:2006/02/19(日) 06:17:31 ID:2MycS4rc
- 目覚まし時計の音がする。それも一つじゃない。幾つかの目覚まし時計が同時に鳴っている。
(なんだ〜。)
眼鏡をかけたままテーブルに突っ伏していた斑目は、ゆるゆると立ち上がった。
「笹原のやつ〜〜、目覚ましかけたまま出かけやがって〜〜。」
ベット横の目覚ましを止めようとフラつきならがらも歩いていく。
途中で、床に寝転がっている恵子を軽く踏んづけてしまった…。
「がっ。」
「あ。悪い、踏んじゃったよ…。大丈夫?」
「あ……、あ〜〜〜………、寝ちゃってたー…。」
斑目は漸く目覚ましまで辿りつき、一つ止めた。もう一つ鳴っている。それは台所の方からだ。
「いまなんじ〜〜。」
「あ〜、んと……、7時ちょっと前…。」
もう一つの目覚ましも、やっと止めた。
「わ〜、はや〜、ちょーねみ〜よ…。」
「俺もだよ…、5時過ぎぐらいまで呑んでたか〜? …だめだ、わかんね…。」
斑目は台所にきたついでに水を飲んだ。少し頭が痛いような…。それよりもまた酔いが残っているせいで、体がフワフワしている感覚があった。
「あ、水飲む?」
「ん…、いー…。ちょっとトイレいくわー…。」
恵子は寝起きのむっつりとした顔でふらつきながらトイレに入っていった。
斑目は入れ違いでテーブルについた。
(ん〜、マジで朝まで呑んじまったなー…。あー、でも恵子ちゃんって意外に話しやすくてよかった…。
ぜんぜん話合わねぇかと思ったけど、結構会話弾んでたよな…。まー、同じサークルだし、分かり易い共通の話題があったかんねぇ…。
本人も思ってたよりいい子だったってことかな? じっさい、楽しかったしなぁ…。はじめて見たときは異次元生物みたいでしたけどね……。
ほんとねー、何であんな厚化粧してたのかね? 別にブサイクってわけじゃないのに、むしろカワイイ系っつーか…、ってアハハ…、
なんだ…、まだ酔ってんな俺…。)
- 105 :斑恵物語-1-
:2006/02/19(日) 06:21:23 ID:2MycS4rc
- 「ういーす。」
トイレから恵子が戻ってきた。
斑目は恵子から視線を逸らして、食べ残した菓子を摘んだ。
「目覚ましってさ〜、斑目がセットしといたの〜?」
口調はまだハッキリしてない。目も半開きで見るからに眠そうだ。
「違うよ。たぶん笹原。あいつこんな早い時間に…、ってそうか今日日曜か…。ちょっとゴメン、テレビつけていい?」
恵子の返事を待たず、斑目はリモコンを手に取った。
「おーセーフ。まだ始まってなかった…。」
「あ〜、何、アニメ〜?」
「…そー……。」
「こんな朝っぱらからよく観る気になるね〜。…そんな面白いの〜?」
「あー…、どうだろ?
けっこう評判良いよ。俺も今やってるので一番好きだし。」
「ふ〜ん…。」
寝ぼけているせいで、恵子の真意が読めない。
「あ、何、だめ?
…寝たいっすか?」
「ん〜…、いんや…、ちょっと観たいかな〜って。面白いんでしょ?」
「まあ…、俺はね…。……じゃあ、ちょっとテーブルを片付けマスカ…。」
斑目は近くに転がっていたレジ袋にゴミを放り込む。
恵子も空き缶と空き瓶をそれぞれレジ袋にまとめている。
「うわっ!」
突然、恵子が大声を出して驚く。
「これ中身入ってんじゃんよー! うわ、全部こぼれちった…。」
「あー、かかっちゃった?」
「や、それはヘーキ。ちょっ、ティッシュ取って。」
箱ごと渡すと、バババッっとティッシュを抜き出してカーペットを拭く。
「色ない酒だったから、これでいいや。アニキんちだし。」
「うわ、テキトー。」
- 106 :斑恵物語-1-
:2006/02/19(日) 06:25:07 ID:2MycS4rc
- そーこーしてるうちにアニメのオープニングテーマが聞こえてきた。
「お〜、始まった始まった。」
恵子は酒の染み込んだティッシュをぐるぐるに丸めてゴミ箱に投げた。
ティッシュはものの見事に外れた。
しかし恵子は気にしない。
斑目も画面前のベストポジションに移動した。
「あ、ちょっとそっち詰めて、詰めて…。」
恵子が手をヒラヒラさせて斑目を追い払う。
「こっち酒こぼしたせいで冷たいし、観にくい。」
「あいあい。」
画面を凝視したまま、横移動する斑目。
そのすぐ脇に恵子が座った。恵子の二の腕が斑目の腕に当たった。
(わ、何か柔らかい…。)
「あ、なんかこの歌、あんまアニメっぱくないね〜。」
「ああ…、最近けっこうそういうの多いのよ…。」
「そうなんだ〜。」
(うー、なんか照れるな…。そっちは気にしてないみたいだけど…。)
斑目は壁に寄りかかって、恵子の二の腕が当たらないように体をズラした。
背中を丸めて、恵子は画面を見つめている。
その後ろから、斑目は恵子の姿を眺めていた。
髪はボサボサで表情もまだ眠たそうだったが、時折ぐっと目を見開いて真剣にテレビ画面を見てる恵子。
その一瞬のいつもと違う恵子の横顔に、斑目は何故か目を離せないでいた。
「これってさ〜…。」
不意に恵子が画面を指差しながらこっちを向いた。
斑目は瞬時に視線を画面に向ける。
- 107 :斑恵物語-1-
:2006/02/19(日) 06:26:58 ID:2MycS4rc
- 「なんで空でサーフィンしてんの?」
「あ、あ〜、ま、そういう設定…。説明すると長くなる…。」
「ふ〜ん…。」
ふぅ〜。斑目は恵子に気づかれないように息を吐いた。
(なんだろ、オカシイナ…。酔ってるか…? 眠いし…。調子狂う…。
というか、一晩一緒にいて何もなかったのに、今更何が起こるんだって話で…、
ってそういうことじゃないでしょ!)
集中、集中!と念じる斑目。
気を取り直して画面に目をやる斑目。アニメの内容に意識を向ける。
しかしそれが良くなかった。
集中しようとすればするほど、今度は瞼が重くなるのである。
日も差してきて暖かくなってきたのに加え、少ない睡眠時間、体に残るアルコール、
一週間の仕事と徹夜の疲労が猛烈な眠気となって襲い掛かってきた。
もう壁に寄りかかった体を起こすのも億劫である。
(あー、寝みー………、でも見なきゃ…。うう〜……………。)
一方恵子も、最初こそ興味を持ってアニメを見ていたが、まったく分からない設定と登場人物のせいで即効で眠気がぶり返してきた。
斑目に話を振って目を覚まそうとするが、なんだが返答が素っ気無い…。
(つまんない…。斑目もかまってくんないし…。眠い…。眠ちゃいたい…。てか……寝る………………。)
ガチャリとアパートのドアが開いた。
- 108 :斑恵物語-1-
:2006/02/19(日) 06:29:08 ID:2MycS4rc
- 鍵をポケットに仕舞いながら、この部屋の主である笹原と彼女の荻上が部屋に入る。
時刻は10時を回ったあたりだ。
「ただいまー。上がって、荻上さん。」
「……失礼します…。」
付き合って半月ほど経つのだが、荻上は未だに慣れないようでやや緊張の面持ちである。
「おーい、恵子〜。来てんのか〜?」
部屋からテレビの音がしている。それに部屋が何だか酒臭い…。
靴もあるし。あれ、俺の革靴ってこんなだっけ?
「お〜い。……おかしいな?」
「寝てるんじゃないですか?」
スニーカーを脱いで、二人は部屋に上がった。
玄関からはテーブルとテレビ画面は見えるが、恵子の姿はない。
テーブルの上には酒のボトルが乗っていた。
「あ〜、そうみたいだね。酒の呑んで寝てるみたい…。」
荻上は玄関で脱いだ靴を揃えてる。
笹原はちょっと不機嫌そうにドタドタと歩いていった。
「おいっ。泊まってもいいけど散らかすなってメールしといただろうよ。」
兄の威厳の見せるべく強気に出ていた笹原だが、室内の光景に一瞬で凍りついた。
「ん、ん…ん。」
(あ、また寝ちまったか…。あー、もうアニメ終わってる…。)
眼鏡の隙間から目をこする。と、視界の端に気配を感じてふと顔を向けた。
「あ、ども、お邪魔してマス。」
笹原は無言だ。
(あれ? なんだろノーリアクション? 勝手に来たから怒ってんのかな?)
「いやあ、あのさ、昨日仕事終わりでスーパーよってたらさ。お前の妹…。」
「斑目さん…。」
笹原はスッと斑目の太腿の辺りを指差した。
- 109 :斑恵物語-1-
:2006/02/19(日) 06:40:34 ID:2MycS4rc
- 「なにしてんですか?」
「え?」
指先をなぞって視線を落とす斑目。
そこには自分の太腿に突っ伏して眠っている恵子がいた。
(あー、なるほどねー。そーいや、なんか重いなーって気がしてたんだよねー…………。
って、やべええええええええええーーーーー!!!!!!!!!!!)
一気に目が覚めた。
「いやっ、これっ、ちがうってっ、マジで!!!。」
斑目は慌てて立ち上がった。
「いや、ちょっと眠っちゃっただけっ!
それだけですからっ! ほんとですっ!」
何故か敬語になっていた。
「斑目さん…。」
「はい?」
斑目ははじめて、笹原の視線が怖いと感じた。
「何を着ているんですか?」
斑目は『3-1 笹原完士』ジャージを着用していた。
「いいあーこれはだねー、まー、ノリといいますか、勢いといいますかー…。あ、勢いってのはそういう意味ではないからねっ!!!」
(不思議だ…。自分の言葉が…すごく遠くに感じる。)
イヤな汗が止まらねぇ…。
ふと笹原が視線を逸らした。
その隙に斑目は笹原に歩み寄った。
「ちょっと、そんな、なんもないデスカラ! なあ、ササハラ! 俺がそういうことするわけが…。」
笹原の視線の先にあるものを知って、斑目は震撼した。
- 110 :斑恵物語-1-
:2006/02/19(日) 06:42:46 ID:2MycS4rc
- ゴミ箱の横に落ちている、丸まったティッシュのボール…。
(うわっ、何か…、すげーそれっぽい…。)
「いやっ、ちがうよそれササハラ君っ! それはただのゴミ以外の何物でもないよっ!」
(言ってるそばから震えが止まらねええええぇーーーーーー!)
笹原は怒りとも悲しみともつかない表情で、丸まったティッシュのボールを見ている。
斑目は滝のような汗を流しながら笹原にすがり付いてる。
恵子は寝ている。
そして荻上さんは…。
斑「笹原、ちっ、ちがうんだこれは!」
笹「ふふふ、いいんですよ、言い訳しなくても。むしろ僕は嬉しいんですから。僕の計画通りに事が運んでくれて…。」
斑「なっ、それはどういう…?
お前…、まさか実の妹をつかって?!」
笹「ふふふ、言ったじゃないですか、斑目さん。『僕から逃げられると思っているんですか?』って…。これで貴方は僕の家族だ…。ふふふ。」
斑「そ、そんな…!!。」
笹「もう貴方は、一生僕といるしかないんですよ。まあ、実の妹とはいえ、他の誰かがこの体に触れるのは耐え難いですが、
でもそれも二人の為ですからね…。あとでたっぷりと僕の感触を思い出させてあげますから…。」
斑「な、なんてことを…、お前は…。妹を利用してまで…。彼女の気持ちを考えたことが…。」
笹「貴方はどうなんです?
正直に言ってくださいよ。恵子を抱きながら、心の中では僕のことを考えていたんじゃないですか?
ほら…、この僕にそっくりな顔を見ながらね…。」
斑「くっ、そんなことは…。」
笹「嘘をついても無駄ですよ。ほら、体は正直に反応している…。」
斑「や、やめ、やめてくれ…。笹原…。彼女が、彼女が起きてしま…。あぁっ! ふぁああっ!!!」
その夜、荻上さんは徹夜で原稿に向かったのでした。
おしまい
- 111 :マロン名無しさん
:2006/02/19(日) 07:00:00 ID:???
- >斑恵物語
リアルタイムで読んだ。
久々に大爆笑もののオチに吹いた。
ラブコメ展開のオチが荻ワープとは…
やはり腐女子脳内は宇宙だ。
でもよかったね、荻上さん。
ちゃんと立ち直ったんだね。
(これは立ち直ったと言うのか?)
- 112 :マロン名無しさん
:2006/02/19(日) 07:01:58 ID:???
- ぶはははははは。
面白かったす。最高。
オギー帰ってきて
帰ってきてオギー
- 113 :マロン名無しさん
:2006/02/19(日) 11:13:35 ID:???
- 恵子と斑目のその後が気になる。
笹原と斑目のその後も気になる。
荻上の傑作のその後も気になる。
- 114 :マロン名無しさん
:2006/02/19(日) 14:25:40 ID:C3mkO4cs
- >>斑恵物語
とりあえず一言。
ちくしょおおおおおおーーーーーー!!!!!!面白い!!!
さて、叫んだらスッキリしました。
まさか最後が801オチだとは誰が予測できたろうか。
斑目の台詞&心の声が等身大でイイ!ぜひ見習いたいものです。
笹原の体操服ではっちゃけるトコは絶品。しかもずっとそのカッコだったのね…笹原帰って来るまで…
それでこそ斑目!!
斑目スキーとしては泣くほど美味しい話でした。
…恵子に手を出さなくて、少しホッとしましたよ。
- 115 :マロン名無しさん
:2006/02/19(日) 14:32:49 ID:C3mkO4cs
- 連投すいません。
斑恵物語、初投稿なんですか…?ホントに?アワワ
最新のSS書きは化け物か…
- 116 :斑恵物語-1-あとがき
:2006/02/19(日) 17:40:08 ID:WUPi0v13
- 読んで頂いて感謝です。
ボロクソに言われはしないかとビクビクだったのですが、
好意的に読んで頂けてホッとしました…。
よかった…。
他の人のSS読んで、妄想が膨らんで書いてしました…。
けっこうインスパイヤされてる部分も・・・。
思いのほか長くなってしまって反省してます。
続きも考えてはいるので、そのうちまた出せればと思います。
ありがとうございました。
- 117 :マロン名無しさん
:2006/02/19(日) 19:28:52 ID:???
- >夜明けの一秒前
俺も内面を掘り下げるの好きだけど、ますます荻上の内面が深まってくるエピソードだね。
すごい。ヤナが燃ペンのファンとは!暗黒流れ星ww受けるー。
>いつか見た夢の続きを
バットエンドの続きからのスタートなわけですね。少し、きついと思いましたが、
読み進んでいくうちに解消されてきましたね。タバコ吸い始めた笹原が、社会人の
憂いと哀愁を背負って業界の慣習にすすけた気がしましたが、二人の人間的成長が
見られた気がします。
>斑惠物語
初めてとは思えないですね!自然な流れ、惠子とのぎこちない会話からのスタート、
コーサカとの事、ジャージに着替えた斑目、迫られた時の切り替えし、そして
ティッシュの伏線、笹原に見つかったときの様子や、最後のオチへ突入するまでの
構成など巧みとしか言えません。
- 118 : ◆suTtoKok..
:2006/02/19(日) 20:28:59 ID:???
- >>116
自分でも書いてるけど、導入部〜中盤の展開が
俺が前スレで書いたSSそっくりなんだよね
初SS書きのとっかかりにされる分には光栄だけど、
なにごともほどほどがよろしいかと
次回作に期待します
- 119 :マロン名無しさん
:2006/02/19(日) 22:02:44 ID:???
- 遂に完成しました、笹原卒業後の荻上会長編。
物凄く長いので、先に投下したい方、もう少しで書き上がるって方、もしいらしたら15分待ちますのでレスなり投下なりして下さい。
その間待ちますので。
無ければ15分後、24レスで爆撃開始します。
SSスレを石器時代に戻してやるぜ!
- 120 :マロン名無しさん
:2006/02/19(日) 22:13:00 ID:???
- >>118
ああ…、すいません…。
もっと斑目と恵子が親密なるシチュエーションについて練るべきでした…。
反省です・・・、猛省。
単なるパクリにならないように、頑張りたいと思います。
- 121 :マロン名無しさん
:2006/02/19(日) 22:15:24 ID:???
- 夜明けの一秒前、感想ありがとうございます!
投下直前に急いでお礼を〜
>>71
次号で成立でオギーが幸せになると信じているからこそ、頑張って急いで書きました!
>>72
最初の痛さも、徐々に本誌連載で理由が明らかになってきたので、妄想が。。。
>>73
あとはヤナがビジュアル的に範囲内か…あとオギーはスローペースなので
ヤナ卒業までに成立が間に合わない気がしますけど、どうだったでしょうね(苦笑)。
>>117
どうしても暗黒流れ星をコメントさせたかったので(笑)。
- 122 :11人いる! その1
:2006/02/19(日) 22:24:16 ID:???
- 西暦2006年4月。
結論から先に言うと、荻上新会長率いる現視研新体制下の新人勧誘は、男子5人女子6人の計11人という例年にない大漁で終わった。
後でサークル自治会の役員の人に聞いた話によれば、これは現視研創立以来最高記録であり、今年の新人勧誘では体育会系も含めて全サークル中トップだそうだ。
今年の新人勧誘が大成功した理由は、大きく分けて三つあった。
一つ目は、例のアキバ系小説原作のドラマと映画の大ヒットでオタクがちょっとしたブームになり、全国レベルでニワカオタや新人オタが増えたことだ。
椎応大学にもそんな新米オタが何人か入学していた。
普通こういった人が目指すのは、漫研かアニ研だ。
だがこの両会は、初心者オタには敷居が高過ぎた。
高校ならともかく、大学にもなって絵心のない人には漫研は入りづらい。
椎応に限って言えば、アニ研も事情は似ていた。
筋金入りの創作系オタにとっては魅力的な、年に何回か短編アニメを作っているという実績は、初心者にとっては逆に引いてしまうマイナス材料になった。
こうして消去法による消極的な選択ながら、ぬるい初心者オタたちが現視研に集った。
二つ目は、切迫感あふれる積極的な勧誘活動だ。
何しろ今年新入生がいなければ、冗談抜きに会の存続は厳しい。
今回の勧誘ばかりは、OBまでも巻き込んでの総力戦となった。
荻上新会長は、前回の失敗に懲りて今回はみんなの助言を聞きながら慎重にことを進めた。
前回クッチーをハブにして失敗したことへの反省から、今回はクッチーに裏方仕事や力仕事の大半を担当してもらった。
「あいつには仕事をたくさん与えてガンガンこき使ってやれば、喜んで真面目に働くよ」という咲ちゃんの忠告もあっての措置だった。
さらに新入生歓迎祭にて、大野さん発案で大野&クッチーのコスプレどつき漫才(もちろんクッチーがどつかれ役)を敢行、これがウケた。
荻上さんも露出少な目な代わりにロリロリなコスで、自ら勧誘のビラを配った。
しかもそのビラとは荻上さん作のミニ四コマ集で、最近の漫画やアニメをネタにしたパロディ四コマと、四コマ形式の現視研の案内が収録されていた。
- 123 :11人いる! その2
:2006/02/19(日) 22:25:55 ID:???
- OBたちも時間を作って顔を出してくれた。
斑目などは本業をサボってビラ配りをやってくれた。
「ここ潰れたらメシ食う場所なくなるからなあ」
…まあ理由はともかく、斑目もがんばった。
さらに笹原のアドバイスにより、ずっとコス一色で押さずに途中で着替えて、私服でも勧誘するようにした。
あまりにもコスを前面に出し過ぎると、内気な初心者オタが引いてしまうからだ。
コスはこんなのもありますよ的な扱いに留め、今回は広く浅く人を集めることに専念した。
その結果、初心者オタ5人(男子4人女子1人)と創作系オタ2人(男子1人女子1人)が入会した。
(残り4人については、三つ目の理由で触れる)
三つ目の理由は、荻上さんの漫画家デビューだった。
合宿の後、荻上さんは笹原と付き合い始めた。
笹原は彼女のトラウマを知って、当初は2人で巻田君の所へ謝りに行こうと主張した。
だが転校後引っ越したので巻田君の居所が分からないと聞いて、このトラウマになった出
来事を漫画にしてみてはどうかと提案した。
それを彼がどこかで見てくれたら、許す許さないは別にして、荻上さんに悪意が無かったという事情が分かって少しは救われるかもしれない。
そして作品として昇華することで荻上さん自身も救われるかもしれない。
そう考えた上での提案だった。
荻上さんは自身初の長編であるその作品に、夭逝した某ロック歌手の歌のタイトルから取って「傷つけた人々へ」と題した。
ちなみにペンネームは、同人ネームより本名に近付けて「荻野小雪」とした。
笹原の薦めで巷談社の主催する春夏秋冬賞に出したところ、その作品は審査員特別賞を受賞し、月刊デイアフターに掲載された。
そしてこれがきっかけになって、デイアフター編集部から新連載の執筆依頼が来た。
当初真面目な荻上さんは、学業と会長業の2足のわらじ状態では連載は難しいと断った。
だが編集の人は熱心で「うちは作品の完成度優先主義で、1回や2回休載するのは珍しいことじゃない。2〜3ヶ月で1本なら学業と両立出来るよ」と粘った。
結局秋頃から新連載開始することになり、今はその構想を練っている状態だ。
- 124 :11人いる! その3
:2006/02/19(日) 22:27:49 ID:???
- 「傷つけた人々へ」に対する評価は、読む人によって好き嫌いが両極端に分かれた。
春夏秋冬賞の審査員は15人いたが、支持したのは3人だけだった。
だがその3人の支持ぶりは熱烈で、「この作品に何の賞もやらないのなら、今年で審査員を降りる」とまで言うほどだった。
以下はその3人のコメントである。
1人目 多少ヤオイがかった作風の少女漫画家
「古傷をえぐられるような痛さだが、目をそらすことが出来なかった。腐女子ならこの痛み分かるはず」
2人目 戦前生まれのベテラン漫画家
「田舎に疎開してた少年時代を思い出した。田舎の中学校の閉塞感がよく描けている。自
分も疎開先でいじめられてた漫画少年だったから、他人事とは思えない」
3人目 特撮が専門だが、アニメや漫画にも詳しいオタクライター
「この話は21世紀の『怪獣使いと少年』だ!中学高校の先生は生徒に読ませるべき!」
(注釈)「怪獣使いと少年」は「帰ってきたウルトラマン」のエピソードで、民族差別問題を宇宙人に置き換えて正面から描いた問題作。(脚本を書いた上原正三先生は沖縄出身)
特撮オタなら誰もが名作と認める一方で、好き嫌いとなると真っ二つに評価が分かれる。十年ほど前に聞いた話なので今でもやってるかは分からんが、ある中学の先生は社会科の教材として生徒にこの話を見せていたという
読者アンケートでは、ベストでもワーストでも上位にランキングされた。
荻上さんの中学時代のトラウマを基にしたこの作品には、ヤオイ系のイタい過去のある腐女子の読者の琴線に触れるものがあったようだ。
その一方でアンチ腐女子の読者は、露骨な拒否反応を示した。
2ちゃんねるにも崇拝スレとアンチスレが早くも立った。
そして残りの新会員の女子4人とは、崇拝スレ住人でもあるガチガチの腐女子だった。
彼女たちは受験前にも関わらず、たびたびオフ会を開いて情報の収集と交換を続けた。
そして志望校決定直前、遂に作者の荻上さんが椎応の学生であることを突き止め、椎応を受験したのだ。
ついでに言うと、彼女たちは調査の過程で荻同人誌をゲット、全員よりリアルなヤオイ描写を目指す写実派ヤオイなので、よけいに荻崇拝熱が高まった。
- 125 :11人いる! その4
:2006/02/19(日) 22:30:27 ID:???
- そんな4月のある日のこと。
荻上さんは部室を出てトイレに行った後、サークル棟の屋上に向かっていた。
ちょっと独りになっていろいろ考えたかったからだ。
今の部室は、それをやるには賑やか過ぎる。
階段から屋上が見えてくると、荻上さんは最後まで登り切らずに立ち止まり、屋上を見渡した。
サークル棟の屋上は誰でも自由に出入り出来るが、柵や金網等は無い。
幅はあるけど高さは膝ぐらいまでしかない、コンクリートの淵があるだけだ。
ちょっとした事故で、簡単に転落しかねない。
4階建てだから、下手すれば命に関わる大事故になる。
同じぐらいの高さの校舎の屋上から一度飛び降りた身の荻上さんにとっては、他人事ではない。
トラウマを克服したからこそ、逆に恐怖感と警戒心が強かった。
『いつも思うことだけど、ここの屋上危ねえな。笹原さんたち、よくこんな危ないとこでガンプラ作ってたなあ』
さらに荻上さんの思索は続いた。
『だけどもし「あの計画」を実行するなら、スペース的にはここが最適だな。でもやっぱ危ねえな。先に鉄柵か何か作んねえとな』
不意に背後に人の気配を感じ、荻上さんは残りの階段を登り切って振り返る。
階段の後ろのスペースに先客が居たのだ。
サイドに黒のラインの入った黄色いジャージの上下を身に着けた長身痩躯のその先客は、こちらに背を向けて不思議な動きを繰り返していた。
空間に向かってパンチやキックを放ち、その合間に手をあらぬ方向に振ったり押したり、ガードするかのように腕や膝を持ち上げたり、上体を左右に振ったりする。
どうやら具体的に仮想敵の動きを想定したイメージトレーニング、ボクシングでいうシャドー・ボクシングらしい。
しばしそれを不思議そうに見つめる荻上さん。
やがて一段落したのか、その先客は動きを止めて空手式の息吹きで呼吸を整えた。
そして背後の人の気配に反応して振り返った。
- 126 :11人いる! その5
:2006/02/19(日) 22:32:40 ID:???
- 先客はクッチーだった。
朽木「おう荻チンじゃないの、こんなとこで何してんの?」
荻上「朽木先輩こそ何やってんですか?」
朽木「ちと空手の稽古をね」
荻上「そんなことは見れば分かります」
売り言葉に買い言葉でそう言ったものの、格闘技に詳しくない荻上さんには、クッチーの動きが典型的な空手の動きなのかどうかは判断が付きかねた。
昨今の空手は、素人目にはキックとあまり区別が付かない。
ましてやクッチーのそれは、新興の流派にありがちな様々な流派や他の格闘技の技をミックスした動きなので、玄人でもひと目では分かりにくい。
荻上「私が聞きたいのはそういうことじゃなくて、何で屋上でわざわざやってるのかってことですよ」
朽木「いやー最近の部室、賑やかで本読んでられないから、ついつい僕チンも参加して目いっぱい騒ぎたくなるんだけど、そしたらお師匠様の教えに背くことになるからね」
クッチーの言うお師匠様とは、彼が掛け持ちで所属している児童文学研究会(以下児文研)
の会長(以下児会長)のことだ。
児会長は彼に2つのことを命じ、彼もまた日々その言いつけを守っていた。
(児会長はあくまでもアドバイスの積もりなのだが、クッチーはそう受け取った)
1つ目は非日常的なイベント以外では静かにしてること、2つ目は児会長の薦める本を読むことだ。
(この辺の経緯は「あやしい2人」とリレーSS参照)
クッチーはストレッチをしつつ、以下のような事情を説明し始めた。
日々児会長の言いつけを守り、普段は大人しくしているクッチーだったが、彼のウザオタエナジーは年に何回かのイベントぐらいでは消費し切れないぐらい膨大だった。
まずは体を動かして発散しようと考え、家で体力トレーニングを始めた。
だが彼の肉体の適応力は、本人の想像を超えていた。
明日に多少疲れが残る程度の練習量を目安にトレーニングしてきたが、すぐに慣れてしまうのでドンドン回数を増やしていき、その結果夏頃には以下のメニューが日課になった。
(ちなみに夏合宿で妙に大人しく疲れ気味なのは、合宿中はトレーニングできないと思って前日に多目にやっておいた為だ)
腕立て伏せ200回 腹筋100回 背筋100回 ヒンズースクワット500回