国籍法改正 > 追加説明


陰謀論系の懸念への見解

今回の立法は総理が米国にいっている間に騙まし討ちで行われた文民クーデターでは?

国籍法改正案の閣議決定は11月4日です。
法務大臣閣議後記者会見の概要(法務省公式サイト)
http://www.moj.go.jp/kaiken/point/sp081104-01.html

11月4日,麻生総理は閣議に出ました。
麻生総理の予定(首相官邸公式サイト)
http://www.kantei.go.jp/jp/asoyotei/kousikiyotei.html

総理が金融・世界経済に関する首脳会合に向けて出発したのは11月13日です。
麻生総理の予定(首相官邸公式サイト)
http://www.kantei.go.jp/jp/asoyotei/kousikiyotei.html

国籍法改正案は内閣提出法案です。
議員立法ではありません。
法律ができるまで(内閣法制局公式サイト)
http://www.clb.go.jp/law/process.html
この画像のように法案を閣議決定するとき,総理大臣はじめ各大臣は,毛筆で花押(サイン)を書いて,自分が賛成した証拠として残し,責任の所在を明らかにします。
麻生総理は中身を見ないでサインするような人ではないでしょう。

※この件に関しては、「一般的には、法案は事前にいくつもの段階のチェックを経て閣議の場に上がるので、閣議決定の場では、秘書官等が問題点を指摘しない限り、総理大臣が内容を吟味する事は殆どありません」というご指摘をいただきました。ソース等あればご紹介下さい。
なお、ご指摘の件が実態であっても、「騙まし討ちではない」という見解の補足材料になりますので、この件に絡んでの揚げ足取り等はご遠慮下さい。

今回の件は自民党議員が選挙区に帰っている間に秘密裏に進められた陰謀では?

国籍法第三条(2008/10/13)
http://www.taro.org/blog/index.php/archives/933
という河野太郎議員のブログに,自民党の手続きを経て法案提出する旨が記載されています。

国籍法改正案に関しては,自民党の部会を通って,かつ閣議決定されています。
そして,法案は議員だけでなく,一般国民でも政府や衆議院の公式サイトで見られます
チャンネル桜でインタビューされていた牧原議員も,知らなかったことについては,だまし討ちではなく「すみません。残念ながら,私としてはこの流れまったく関与していなかった」と言っています。
いずれにしろ衆議院参議院で可決しなければ成立しないのだから,だまし討ちで法案を成立させる事はできません。

(質問)
Q.なぜこの改正案は、国会議員が知らないうちに党内手続きが進められたのか?
A.この法案の審議は、法務部会、政調審議会、総務会というごく普通の党内手続きで行われました。全ての会議の時間と場所、内容は衆議院公報に載っていますので、全ての議員とスタッフが知っています。自民党の会議の時間と議題は、携帯電話でも見ることができます。全ての法案が同じような手続きで審査され、この改正案も例外ではありません。全ての部会は自民党の衆議院議員、参議院議員ならば誰でも出席することができます。
という河野太郎議員のブログでのQ&Aがありますが、わざわざ「誰でも出席できる」と強調しています。しかし、“各議員には、選挙区で選挙活動を行えという指令が党から出ていた”らしいじゃないですか。それでは出席したくてもできないのではありませんか?
国籍法改正の元になった訴訟は2008/06/04に判決が出ていますので、国籍法改正に異議を唱え、各種の修正を行わせるための期間は2008/11/04の閣議決定後からではなく、2008/06/04の違憲判決を受けて設けられた2008/06/11の国籍問題PTの発足後からになります。
国籍法改正へ(2008/06/11)
http://www.taro.org/blog/index.php/archives/885
自民党の国会議員には会議の3日前までに党本部から会議情報のメールが入ってきて、自民党のHPでは会議の情報を2日前から一般人でも見る事ができます。
http://www.jimin.jp/jimin/kaigi/index.html
選挙が近くなれば「当選のために、選挙区活動に重点を置くべき」という指示が出るのは当然の事ですが、国会議員としての仕事をするために党の部会などに出ている議員もいますので、これは強制ではありません。
3日前に重要な部会が行われるという情報が伝えられていた場合、選挙が近くても地元の予定をキャンセルして会議に参加する事は可能だと思います。

(質問)
議案をより多くの意見を得てしっかりしたものにしようとする態度があれば、「当選のために、選挙区活動に重点を置くべき」という指示を出したら議案を審議する部会等は開かない、あるいは部会等がある時期に選挙区活動指示など出さないなどして、本部に議員が多い時期に部会等を開くよう配慮するかと思うのですが、この見解は的外れでしょうか?
質問の事例は、「あるべき自民党の立法プロセス」であって、「クーデターや異常事態かどうか」を判断する際の比較基準となる「いつもの自民党の立法プロセス」とは別のものです。
今国会での議案一覧
http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/kaiji170.htm
これだけの法案が今国会には提出されています。そしてこれは、いつの国会でも同じです。
直接の利害関係者を除けば、「牛海綿状脳症対策特別措置法の一部を改正する法律案」などの法案に関して、法案の趣旨と問題点を把握して適切な見解を述べられる人が何人いるでしょうか?
このように審議する法案の数が多すぎるため、事実上の立法府の機能を果たしている自民党の部会では、専門外で興味の薄い部会の参加者は少ないそうです。

司法と行政と立法と世論が協働する社会をネットが造ろうとしている(2008-11-15)
http://ameblo.jp/gusya-h/entry-10164962493.html
 違憲判決が出されると、その法律を所管する役所がまずその対応を考えなければならない。既存の法制を前提にしながら、最高裁の違憲判決に沿うためにどう現行法を改正したらいいか、と、頭をひねる。様々な制約がある中でいくつかの案を国会議員に提示する。
 さあ、どれがいいか選んで下さい。そんな感じである。問題の所在がよく分からないと、うーん、どれが一番お薦めなの、と聞くことになる。
 立法府に本当の立案能力が備わっていないと、行政府が提示した案がそのまま立法府に回ることになる。議院内閣制の場合は、この場合の立法府は、事実上自民党である。自民党の部会が立法府の機能を果たすことになる。
 部会では、一定の時期までに党として何らかの結論を出さなければならない案件については集中的な審議をするため、プロジェクトチームや小委員会を立ち上げる。
 結局、プロジェクトチームの座長や小委員会の委員長の識見や能力といったものが結論を左右する。勿論こういった部会には自民党の国会議員であれば誰でも出席して自分の意見を述べることが許されているのだが、こういった立法のプロセスを知らない人は部会に出ない。貴方任せ、になっている。
今回の国籍問題PTの座長代理である柴山昌彦議員は、公式サイト内の「国籍法改正への大きな反響」という記事で以下のように言及しています。
 この改正案は、法務省からまず自民党の国籍問題プロジェクトチームに示され、了承を得た後、全自民党国会議員に日時が通知され出席の機会が与えられる法務部会での了承も得て、政策審議会、総務会と了承され、党として正式に審査を受け終えました。「他の議員に隠れて強引に通した」などと批判されますが、通常の法案審査と全く同様の手続です。一般に法務部会の案件は専門性が高く、出席議員はもともと少ないうえ、この法案が審査された時は全く世間の話題にのぼらなかったので多くの議員が意識していなかったのです。
 ただし、この手続の中で「偽装認知への対応はどうするのだ」と質問した議員がおられました。罰則が設けられたのは、法務省がこうした声を反映した結果です。
こういった記述に関連して「立法府の形骸化」という別論点もありますが、今回の件をきっかけに、立法府の一員として部会に参加するように意識改革を起こした自民党議員が増えたため、そちらの方は今後は改善されていくそうです。

左翼思想に毒されている法曹界による国家解体の陰謀ではないのか?

誰を最高裁判事にするかは内閣が決めます。
日本国憲法
第6条2項 天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。
第79条  最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。

1996年の橋本内閣から自民党中心の内閣が続いています。現在いる最高裁の裁判官はみな小泉内閣,安倍内閣,福田内閣で任命された人です。
最高裁判所の裁判官(最高裁公式サイト)
http://www.courts.go.jp/saikosai/about/saibankan/index.html

自民党の大派閥には経世会(Wikipedia),宏池会(Wikipedia),清和会(Wikipedia)などがありますが,憲法改正・自主防衛など比較的タカ派色が強いと言われる「清和会」出身の小泉総理,安倍総理,福田総理がわざわざ左翼を最高裁判事に任命するでしょうか?

司法を無答責機関にしないためには,最高裁裁判官国民審査というものがあります。
国籍法違憲判決に反対なら,多数意見に賛成した裁判官の内まだ退官されていない方に×を付ければいいと思います。

総理大臣が指示された名簿を見て拒否する事はないので、総理に実質的な最高裁の人事権はないのでは?

それは最高裁が指名を拒否されない人を提示するからです。
次期最高裁長官に竹崎博充東京高裁長官が任命されます。
最高裁の裁判官15人の出身は生え抜き裁判官枠6人,弁護士枠4人,検事枠2人,法律学者枠1人,行政官枠1人,外交官枠1人です。行政官枠が最近女性枠として運用されています。この枠はここ30年ほど変わりません。

昔は弁護士出身の最高裁判事が長官になったり,検事出身の最高裁判事が長官になったこともありました。しかし1979年に服部高顕氏が長官になってから,現在まで約30年生え抜き裁判官出身の長官が続いています。
今は違いますが,現在最高裁判事候補になるような世代の裁判官の生え抜き裁判官の人事は,エリートコースとその他大勢が早い段階で分けられていました。エリートコース組は新任判事補から最高裁事務総局付判事補になり,地裁の判事を経て最高裁事務総局の課長,地裁の部総括を経て最高裁事務総局の局長になります。その間高裁事務局長を経験したり,法務省ほか行政官庁に出ることもあります。エリートは地家裁の現場で裁判をやる期間より,事務総局で司法行政をやる期間が長いです。
参考 裁判官検索 新日本法規出版株式会社
http://www.e-hoki.com/judge/index.html

中でも最高裁長官候補のエリート中のエリートが,最高裁事務総局人事局長or経理局長→最高裁事務総長経験者です。局長の中でも人事を握る人事局長と,金を握る経理局長が一番上です。
今の最高裁判事の中で,泉徳治判事,堀籠幸男判事が人事局長,事務総長経験者です。
泉判事は来年1月に70才の定年になり在任3ヶ月で終わってしまうので,平時なら堀籠→竹崎の順番で最高裁長官になるところでした。
しかし,堀籠判事は2010年6月に70才の定年になります。
次の総選挙で民主党が勝てば,民主党内閣が次の最高裁長官を決めることになってしまいます。

政権交代して,民主党が最高裁長官を決めるのを恐れ,70歳の定年まで5年8か月ある竹崎東京高裁長官を,先輩の最高裁長官候補者を泣かして無理矢理持ってきたと思われます。
このように最高裁人事に政府自民党は,形式的人事権だけでなく実質的影響も及ぼしています。

マスコミが偽装認知に絡む問題を指摘して報道しなかったのは、背後に隠された意図があるのでは?

この件について取り上げた産経新聞の記者である阿比留瑠比記者の推測は、以下の通りです。
国籍法改正案をめぐり、議員たちも立ち上がりました(2008/11/14)
http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/795468/
Commented by 阿比留瑠比 さん
 トラックバックありがとうございます。言い訳するつもりはありませんが、マスコミ報道はよく指摘されるような「意図」を持っているために変な報道になる場合もありますが、それよりも多いパターンとして、報道がある「定型」に陥っているため変になる、ということが通例だと思います。ご指摘の経済対策の報じ方にしても、国籍法の件が取り上げられないまも、意図や圧力によってそうしているというのではなく、紙面スペースや放送時間の限定もあるので、ずっと続いた前例(コード)に従って「こういうとき話題はこれだよな」「こういうのが面白いんじゃないか」と無意識にやっている部分が大きいと思います。これはもちろん、読者・視聴者から「もっとこういう点を報じろ」という声がたくさん届けば少しずつでも変わっていく点だと考えます。

Commented by 阿比留瑠比 さん
 こんにちは。マスコミの多くが大きく取り上げないのは、何か目的意図があるのではなく、単に問題意識が欠如しているだけという部分もあると思います。人権擁護法案のときもそうでしたが、「弱者」や「人権」という言葉の前には常に思考停止し、「まあ、いいんじゃないの」「抵抗できないよね」と問題が認識できなくなるパターンがあるように感じています。
産経新聞の福島香織記者は、記事の中で国籍法への他社の興味を以下のように書いています。
【記者ブログ】総理番のお仕事(6)国籍法のゆくえ 福島香織(2008/11/22)
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/081122/stt0811220021000-n1.htm
いいわけになりますが、総理ぶらの質問は、好き勝手にできません。限られた時間になにを質問するかは、その月の幹事社(月ごとに各社が交替でうけもつ世話役みたいなもの)に「こういう質問したい」と申し込んで、みなの意見を聞きながら、質問の順番を調整するのです。ちなみに、「国籍法」や「対馬問題」は各社から「産経ネタ」とよばれ、つまり産経新聞(読者)しか興味をもっていないテーマとみられています。

国籍法第8条の「簡易帰化申請」で国籍取得は可能なのに、簡易帰化をしなかったのは政治的意図があるのでは?

2008/06/04という同日に判決が出たため、マスコミも含めて「退去強制令書発付処分取消等請求事件」の訴訟と、新聞等で有名になったフィリピン人の非嫡出子の子供10人の「国籍確認請求事件」と呼ばれる集団訴訟を混同してしまっています。

退去強制令書発付処分取消等請求事件(最高裁公式サイト/2008/06/04)
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=36415&hanreiKbn=01
国籍確認請求事件(最高裁公式サイト/2008/06/04)
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=36416&hanreiKbn=01

「退去強制令書発付処分取消等請求事件」の原告代理の弁護士は、以下のように述べています。
最高裁判所大法廷体験記(記念かきこ) - いしけりあそび
http://blogs.yahoo.co.jp/isikeriasobi/53018708.html
 私が担当している事件は、後から集団で提訴した訴訟とちがって、もともと国籍を求めて訴訟を起こしたわけではありません。日本人父から認知された非嫡出子に対して、国が強制送還を命じたものだから、その取消を求めて裁判を始めて、その中で「強制送還といっているけど、そもそもこの子が日本国籍じゃないっていうのが憲法違反なんだから、強制送還なんてできるわけないだろ」と反論をするかたちで、国籍の裁判が始まったわけです。その後、国が強制送還をみずから取り消して、国籍の点だけ残ったのです(だから私の事件は、今日も「退去強制令書等取消請求事件」と呼ばれていました。事情を知らない人は不思議でしょうね。)。

だから、裁判で、国はさかんに「そんなに国籍ほしければ帰化すりゃいいだろ」って反論しているわけですけど、少なくとも私の依頼者については、彼らにそんな反論をする資格はないと思いますよ。だって、彼らは、この子に対して、帰化を許可するどころか、そもそも強制送還を命じていたわけですから。
法改正の原因となった元々の裁判に関しては、退去強制令書が発布されて国外に追い出されそうだから在留特別許可(国内残留)を求めて裁判をしていました。
簡易帰化をすれば済む話だったというのは集団訴訟の原告のみに当てはまる話ですので、そちらだけを対象にすれば正しいかもしれませんが、元々の裁判の原告には当てはまりません。

この論点は簡易帰化の実務や届出による国籍取得(権利)との違いなども絡んできますので、詳しくは以下を参照してください。
2008年の国籍法改正の際に問題となった、外国人母の非嫡出子の場合の「簡易帰化」と「届出による国籍取得」はどこが違うのでしょうか?

法律的な懸念(システム面)への回答

渡航の記録請求が出来る期限は限られているので、それ以前の記録は調べられずに認知されてしまうのでは?

(質問)
入管のHPに書いてありますが、渡航の記録請求ができるのは日本人出帰国記録で1973年4月1日まで。つまり、それ以前はどうだったか証明する方法がありません。ということは最初の3年の猶予期間に、現在50代中盤の日本人男性が、「1973年2月頃に20才くらいで10日ほど中国へ旅行して、若気のイタリで多数の女性と関係を持ちました」と主張して、その頃に生まれたとの中国側の証明書もってる中国人を10人くらい認知しようとして、たとえ法務省が「アヤシイ」と思ったとしても調べようがないのでは?
国籍法改正案附則4条に、以下のようなしばりがあります。
平成十五年一月一日から施行日の前日までの間において新法第三条第一項の規定の適用があるとするならば同項に規定する要件に該当するものであったもの

1973年生まれは平成15年=2003年には30歳で,新法3条の20歳未満という要件に該当しません。
だから認知しても日本国籍は取れないので,その手は使えません。

その他の懸念や疑問への回答

国連安保理決議1373では全国連加盟国に移民の監視強化を義務づけているが、そこにはDNA鑑定も義務づけられているのでは?

(質問)
国連安保理決議1373では、全国連加盟国に税関や移民の監視を義務強化を付けていて、入国外国人に対する指紋採取といった生体情報確認が行われるようになったのはこの決議あってのことらしいですね。当然DNA採取もその範囲に入るようです。
国連安保理決議1373は、以下のようになっています。
安保理決議1373(2001年9月28日に採択)は、テロと闘うための金融面を含む包括的な措置を各国が実施することを義務づけています。
同決議では、テロ資金対策としてテロ行為のための資金供与の犯罪化、テロリストの資産凍結、テロリストへの金融資産等の提供禁止、テロ資金供与防止条約等のテロ防止関連条約の締結等が求められています。
テロ資金対策(外務省公式サイト)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/terro/kyoryoku_05.html

指紋やDNAの話は出てきません。
日本で指紋の採取は,国連安保理決議が出る前からやっています。

再入国不許可処分取消等請求控訴事件(東京高裁昭和63年09月29日判決)
在留外国人が出入国管理及び難民認定法26条1項に基づいてした再入国の許可申請に対し,法務大臣が右外国人が外国人登録法所定の指紋押なつを拒否していることを理由としてした再入国不許可処分が,裁量権の範囲を超え又はこれを濫用した違法があるとはいえない
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=36209&hanreiKbn

実際に血縁関係のある子供を、父親が認知しなかった場合はどうなるのでしょうか?

婚姻関係にない父と母の間に出生した子を父が認知しない場合には,子などから父を相手とする家庭裁判所の調停手続を利用することができます。
親子の関係があることを明らかにするために,鑑定を行う場合もあります。
この場合,原則として申立人がこの鑑定に要する費用を負担することになります。
認知調停(最高裁判所公式サイト)
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui/kazi/kazi_07_18.html
認知調停の申立書
http://www.courts.go.jp/saiban/tetuzuki/syosiki/syosiki_01_42.html

調停で合意ができない場合は,父親相手の認知訴訟をおこせます。
民法
(認知の訴え)
第787条  子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができる。
これで原告が○○の子であることを認知するという判決が出ると,戸籍に父○○の子と記載されます。(いわゆる強制認知)

現在は,母が外国人の場合,調停・審判,人事訴訟の結果父子関係が認められても,父母が結婚しない限り子は日本国籍を取れませんでした。
この改正案で,父母が結婚しなくても,調停・審判,人事訴訟の結果日本人と父子関係が認められれば,子は日本国籍を取れるようになります。

ドイツでは偽装認知無効を可能にする法律が制定されたが、日本も見習って厳しくするべきではないのか?

【ドイツ】 偽装父子関係の認知無効を可能にする法律
ドイツでは、1998 年の親子法改革により、父親の認知宣言と母親の同意だけで父子関係 の認知が成立することになった。これにより、生物的な父子関係のみでなく、社会的な父子関係についても法的な認知が可能となった。ところが、この制度を悪用して滞在法上の 資格を得ようとする事例が現れた。例えば、滞在許可の期限が切れて出国義務のある女性が、ドイツ国籍を有するホームレスにお金を払って自分の息子を認知してもらう。この認知によって息子は自動的にドイツ市民となり、その母もドイツに滞在できることになる。
このような制度の悪用を防止するために、2008 年 3 月 13 日「父子関係の認知無効のための権利を補足する法律」が制定された。民法典の改正により、父子間に社会的・家族的関係が存在しないのに認知によって子や親の入国・滞在が認められる条件が整うケースに限って、父子関係の認知無効を求める権利が管轄官庁にも与えられることとなった。
(齋藤 純子・海外立法情報調査室)
http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/legis/23501/02350112.pdf
11月27日参議院法務委員会の参考人奥田中央大学教授の話では,ドイツは認知無効の訴えを起こすことができるのは,本人,すなわち認知された子,認知した父,認知された子の母に限定されていたそうです。
なので,ドイツ国籍目当ての偽装認知の場合でも,本人たちが認知無効の訴えを起こすわけもなく,手が出せなかったそうです。そこで国も認知無効の訴えをできるように改正したとのことです。

日本では認知無効の訴えは,利害関係がある者なら誰でもできます。ドイツのような本人だけという制限は元からありません。
(認知に対する反対の事実の主張)
民法第786条  子その他の利害関係人は、認知に対して反対の事実を主張することができる。

また偽装認知が発覚し,公正証書原本不実記載で有罪が確定した場合は戸籍の記載は抹消されます。
(質問)
認知無効の訴えの性質は判例は形成の訴えとしており(大判大11・3・27)認知を無効とするには認知無効の訴えを提起しなければならないので、検察官が利害関係人として認知無効の訴えを起こせるかどうかが問題となるのではないでしょうか?
血統関係がない事を理由に国籍取得のみをむこうとする行政処分のみを行う事も考えられますが…
11月27日参議院法務委員会の参考人奥田安弘中央大学教授の説明では,
「公正証書原本不実記載などの罪により刑事裁判で有罪判決が確定した場合は、裁判所から本籍地の方に通知がなされまして、本籍地の市町村では職権によって認知の記載を抹消することになっております。今回の国籍法改正が成立した場合は、さらに日本国籍を取得したとして戸籍が作成された子供についてもその戸籍は抹消されることになります。したがって、ドイツの三月の法改正はある意味では日本法では必要のないことであり、またある意味では仮装認知の防止と国籍取得を安易に結び付けるべきではないということを示しております。」とのことです。

検察官による認知無効の人事訴訟を経ずに,刑事裁判で有罪判決が確定すると,裁判所の嘱託で戸籍が抹消されるようです。
参議院法務委員会議事録
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0103/170/17011270003005c.html

「可愛そうな少女」というイメージ作戦を使えば、偽装認知が発覚しても日本国籍剥奪できなくなるのでは?

外国人政策/カルデロン一家問題
http://www7.atwiki.jp/epolitics/pages/237.html
(質問)
 上記のケースのようにマスコミが意図的に「両親は他人のパスポートで不法入国した犯罪者」という事を軽視し、「可愛そうな少女」というイメージ作戦を使えば、政治家や官僚は法律を守らせる事ができずに法運用に絡む様々な事がどんどんなし崩しになっていきます。
 上記のケースの場合、少女が日本人の養子になれば問題は解決するし、少女が単独で在留特別許可を願い出れば、日本生まれの日本育ちの少女さんには在留特別許可は降ります。
 それなのに、両親の不法滞在までも情状酌量させようとするのは、法治国家としておかしいのではないでしょうか?
上記のケースですが,埼玉県のフィリピン人不法滞在容疑者一家は,現在,仮放免されています。
仮放免の期間が来年1月14日まで延びただけの話で日本に堂々と滞在することを許されたわけではありません。

仮放免(出入国管理及び難民認定法54条)とは,刑事被告人の保釈と同じようなものです。

退去強制令書の発付を受けている不法滞在者一家が,保証金を納付させられ、1,2ヶ月程度の短期間釈放されるということです。
住居及び行動範囲は制限されます。入管に呼出されたら直ちに出頭しなければなりません。
その他必要と認める条件を付されます。身分は容疑者です。

埼玉県の不法滞在容疑者一家は在留特別許可を求めていますが,法務大臣は許可していません。
参議院法務委員会で,法務省倉吉民事局長は,偽装認知による不正な国籍取得が刑事裁判で認められ,公正証書原本不実記載で有罪が確定すれば,直ちに戸籍の抹消が行われる旨答弁しました。
不正に得た国籍は消されます。

ただ子供にかわいそうな事情がある場合は,直ちに強制送還されないで住居行動範囲を制限されて容疑者として仮放免されることはあり得ます。

現在の量刑と国民が求める量刑との間に大きな落差がある現状、実際は偽装認知に関しても軽い量刑になってしまうのでは?

(質問)
減少傾向とはいえ現時点で15万人近く外国人不法残留者がいます。その責を負う法務省が『われわれの運用は合法的で合目的的だ、安心しろ』と言われても国民感情として納得しづらいのでしょう。
また、下記のURlにある外国人犯罪者が偽装認知などでこれ程罪を犯しても執行猶予がつく現状です。
現法の量刑と国民が求める量刑との間に大きな落差がある時、国民の側ばかりに譲歩を求めつづけると(そう感じます)、社会の安寧が維持できないのではないでしょうか?
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20060816130428.pdf
大阪地裁平成19年8月9日
弁護士法違反、詐欺、有印私文書偽造、同行使、公正証書原本不実記載、同行使被告事件判決は,偽装認知ではなく,多額の報酬を得て日本人と中国人の偽装結婚を仲介した事件+実在する他の弁護士名を詐称して金を取った詐欺事件です。

詐欺事件の裁判では,被害者に早く金を返さないと実刑になるぞと脅して,裁判で強制的に金を返させるよりも早く被害者に弁償させるようにします。
なので,全額金を返せば執行猶予になるのが業界常識です。
しかし国民の常識で見れば,悪質なのに執行猶予がつくなんておかしいという意見ももっともです。

そこで来年5月から裁判員制度が始まり,裁判官3人裁判員6人計9人の多数決で量刑を決めるようになります。量刑に国民の常識が反映されるようになります。

ただし,まだ故意の犯罪行為で人を死亡させたり,法定刑で死刑・無期懲役が定められている事件だけが対象なので,偽装結婚・偽装認知は裁判員裁判の対象になりません。
徐々に裁判員制度の対象事件は拡大されることになっています。それで量刑に関しても,徐々に国民の常識が反映されるでしょう。

自衛隊のイラク派遣で違憲判決が出たのに撤退しないのだから、最高裁判決が出ても法改正を後回しにしても良いのではないか?


判示事項の要旨
イラクにおいて航空自衛隊が行っている空輸活動は,武力行使を禁止したイラク特措法2条2項,活動地域を非戦闘地域に限定した同条3項に違反し,かつ,憲法9条1項に違反する活動を含むものではあるが,これによる控訴人らの平和的生存権に対する侵害は認められないとして,控訴人らによる自衛隊のイラク派遣に対する違憲確認の訴え及び派遣差止めの訴えを却下し,国家賠償請求を棄却した原判決を維持した事例
自衛隊が違憲だと言われたのは「傍論」で、「判決」ではありません。
法的強制力のない判決理由中の判断で自衛隊イラク派遣は違憲だと判断されましたが,最高裁の判断ではないので,判決理由中の判断には従わなくていいというのが政府の見解だと思います。
国籍法の場合は法的強制力のある判決主文で日本国籍を与えてしまっています。法改正が遅れて,判決で戸籍を作ることが続けば,戸籍事務は大混乱です。
一票の格差は判決理由中の違憲判断だったので,すぐに従わなくても問題は起きませんでした。しかし,最高裁の判断だったので,国会は数年遅れで従いました。

産経新聞が例に出している改正に時間がかかった尊属殺人の場合は,法改正前でも検察は尊属殺人罪で起訴をしませんでした。法改正前に運用で尊属殺人罪を死文化させたので,急いで法改正する必要はありませんでした。

(質問)
「一票の格差」とか「違憲状態にある自衛隊(の正しい認知)」は放置されているのに、今回の国籍法の問題についてのみ素早く行動したのは何故ですか?
まず最高裁が自衛隊を憲法違反と判断したことはありません。
憲法学者が憲法違反といっても,最高裁が違憲判断しないため,憲法違反の疑いがあってもまかり通っているものがあります。
9条違反の自衛隊,7条による衆議院解散,89条違反の私学助成,79条・80条違反の裁判官の報酬引き下げです。
みな最高裁で憲法判断した判決は出ていません。

一票の格差は是正されるまで何年もかかりました。
これは一票の格差を違憲と判断した判決が,違憲と宣言するだけで選挙の効力には影響しない事情判決だからです。単に最高裁が違憲と言ってるだけで,放置しても政府も国会も困らない判決だからです。

国籍法違憲判決は,事情判決でなく,実際に原告に国籍を与えてしまう法的強制力のある判決です。
違憲判決を放置していれば今後も次々に同じ立場の日本人父外国人母の子供から同じ裁判を起こされ,国が連敗して判決で戸籍を作らされ続けます。戸籍事務は大混乱してしまいます。だから早く対応する必要がありました。

過去の違憲判決への対応は、以下の通りになります。
①尊属殺人重罰規定:1973年4月4日
→通達を出し、刑法200条の死文化(条文を削除しなくても死文化で対応可の状況)。
1995年5月12日の刑法全面改正で刑法200条を削除。
②薬事法距離制限規定:1975年4月30日
→同年6月の薬事法改正。
③衆議院議員定数配分規定:1976年4月14日
→1975年の定数20増で格差はすでに解消していたため、改正はなし。
④衆議院議員定数配分規定 その2:1985年7月17日
→1986年に8増7減の定数是正を行う。
⑤森林法共有林分割制限規定:1987年4月22日
→1987年、同規定などを削除する法改正を行う。
⑥郵便法免責規定:2002年9月11日
→2002年に郵便法の改正を行う。
⑦在外邦人の選挙権制限:2005年9月14日
→2006年公職選挙法の改正。2007年6月1日施行。
⑧非嫡出子の国籍取得制限:2008年6月4日
→2008年12月5日に国籍法改正案成立。

未解決の懸念の議論

支払い能力のない男性からは養育費を取れないのでは?

その通りです。
自分名義の収入も預貯金も動産不動産もない人間から養育費を取る方法はありません。差押えるものがありません。
だから自分名義の収入・資産を一切持たず親や妻に衣食住をまかなってもらっている人間からは何も取れません。

また養育費をもらえるのに請求しない場合は,認知した父親は養育費を払わなくてすみます。ただ,養育費を請求できるのに請求しない母親は生活保護を受けられません。

養育費の金額は収入に応じて決められます。
http://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/tetuzuki/youikuhi_santei_hyou.html
収入がない父親の場合は養育費月額が0円以上1万円以下の範囲で決められます。
最終更新:2009年03月31日 01:19
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