国会質疑 > 国籍法 > 06

国会での審議の中継


衆議院・法務委員会(2008/11/18)/滝実議員(無所属)

滝実 - Wikipedia
○滝委員 無所属の滝実でございます。

 これまでのいきさつについて、まず民事局長からお聞きをいたしたいと思います。

国籍法3条1項を設けた経緯

 血統主義という原則を掲げる我が国の国籍法の立場からすれば、今回の最高裁判決の案件というのは、本来的には当然国籍を付与されるという筋合いのものだろうと思うんですね。ところが、一九八四年の現行国籍法においても、あえて三条一項のような条文を設けてきた。そして、今回の事案についても、地裁、高裁、最高裁というすべての訴訟において法務省が現行法の維持を主張してきたということでございますから、その際に法務省として、裁判でなぜ三条一項が必要なのか、こういう主張をされているんだろうと思うんです。

 大体三つぐらいあるようにお聞きをしておりますけれども、どういう内容の主張をしてきたのか、簡単にまず明らかにしていただきたいと思います。

○倉吉政府参考人 現行の国籍法三条でございます。今御指摘のとおり、昭和五十九年の国籍法改正により設けられたものですが、これについて御説明したいと思います。

 この改正というのは、このときに父母両系血統主義が導入されました。その結果、日本国民である母の子供は、父が外国人であっても、子の嫡出性の有無を問わず、出生により日本国籍を取得するということになりました。これに対し、日本国民である父の子は、母が外国人であれば、その出生が父母の婚姻の前であるか後であるかだけの違いによって国籍取得の要件や手続に違いが生じてしまうということから、その不均衡をできる限り是正することを目的として新設されたものでございます。この立法目的自体は正当であるとまず考えてきたところであります。

 また、その結果、日本国民である父親の生後認知を受けた外国人を母親とする子のうち、父母が婚姻した準正子と嫡出でない子との間に国籍取得の要件や手続について差が生じることになりました。

 そういう差が生じることになったわけでありますけれども、準正子、つまり父母が結婚をした子供ということでありますが、その子供は、我が国の家族法制度上、父との関係がより密接なものであることから、準正子についてのみ届け出による国籍取得を認めるということは立法目的と合理的な関連性がある、このように考えていたわけでございます。

 その根拠をということでございましたが、今のようなことが要旨になりますが、今回最高裁判所の大法廷判決において違憲とされましたので、この点については、法務省としては、最高裁判所の判断を尊重して今回の法案を提出させていただいたというところでございます。

○滝委員 今の説明では、これまでどういう格好で訴訟を続けてきたか、なぜ三条一項が必要なのかということの裁判における法務省の主張が必ずしも明らかじゃないんですね。要するに、一つは、仮装認知が出てくるおそれがある、こういうようなことは当然だろうと思うんですけれども、あと、要するに父との結びつきがどうだとか、そういうようなことでずっと争ってきたわけですね。

 そこで、今回改めて最高裁の判決が出てきた以上は、今までの法務省の主張を全く否定して対応するのか、あるいはどこかで生かしていくのかということが今問われているんだろうと思います。

 そこで出てきたのが、要するに偽装認知をどうやって回避するかとか、そういうことだろうと思うんですけれども、問題は、偽装認知だけの問題ではないように思うんです。その他の点については全く取り扱いとしても新たな要素を加味しない、こういうことですか。

偽装認知が生じる恐れがあると主張してきた法務省

○倉吉政府参考人 その他の点というのが何を指しておられるのかちょっと定かではありませんのでお答えしかねますけれども、先ほど申しましたように、確かに、これまでの訴訟の中では、国として法務省は仮装認知が生ずるおそれもあるということは主張して、現行国籍法三条一項は合憲である、こういう主張の支えにしていたことは間違いございません。

 そのほかにも、先ほど私が最初に申し上げたようなことを言っていたわけですけれども、しかし、それが否定されたということで、最高裁の判決で憲法違反とされましたので、それであれば、今度はその仮装認知を防ぐ、偽装認知を防ぐ手段というのをきちっと講じておくことが一番大事だというふうに考えているわけでございます。

DNA鑑定について

○滝委員 仮装認知に関連いたしまして、当局の方からは、例えばDNA鑑定などを求めるのはおかしいとか、そういうような開陳はございました。問題は、当事者の方からそういうものが出てきたときにはどういうふうにされるつもりですか。

○倉吉政府参考人 当事者から積極的にそのような資料が出てきたときは、これを参酌するということになろうかと思います。

 ただし、それが偽造のものではないか、にせものではないか、検体をすりかえたいいかげんなものではないかということは検証することが逆に必要になりますので、その点について、当事者に事情を聞きながら、これはどういう経緯で頼んだのかというようなことを調べながら、おかしなところがないかというのを十分に確認していくということをやっていきたいと思っております。

○滝委員 その場合に、DNA鑑定にしても、いろいろな方法というかやり方があるようですね。だから、今のような一般論でいくと、恐らくは一番安い、一件当たり五万円とか六万円とか、あるいは十万円とか、いろいろ段階があるようですけれども、そういうようなことをやって窓口に来たときに、窓口がどうさばくのでしょうか。

○倉吉政府参考人 先ほど来答弁しているところでございますけれども、要するに、法務局の窓口では、DNA鑑定が本当に正確なものなのか、正しいものなのか、あるいは偽造ではないのかとか検体のすりかえがないのか、そういうことをきちっと判断できるというだけの能力は、もちろんただの行政機関ですのでないわけであります。

 しかしながら、今委員から御指摘がありました非常に安いもの、簡易鑑定めいたものだと思いますが、私の承知をしておりますインターネットなんかで見ると、二、三万ぐらいで簡単に、お手軽にできますというのもあります。そういったものが出てきた場合には、これはどうしてこんな簡略なものにしたのかとか、本当に大丈夫なのか、そして根底に差しかかって、どういう経過で知り合ったのか、どこの国で二人が一緒になったのかとか、いつ子供ができて、そのとき二人はどこにいたのか、今父親は扶養をしてくれているのか、あるいは父親の住所をあなたは知っているのかとか、そういうことを聞きながら、現実には本当の父子関係があるのかという真否を確認していくという作業を続けていくことになると思います。

○滝委員 この辺のところは法務省においても少しガイドラインみたいなものを示しておいた方がよさそうな感じは受けますので、混乱のないように対応されることを望みたいと思います。

二重国籍との関連性

 少しそれるんですけれども、この三条一項のような格好、今回のような格好で国籍を認めるということになってまいりますと、前からそうなんですけれども、当然二重国籍の問題というのは発生するんですね。こういう点については、どうやって解決していくんでしょうか。

○倉吉政府参考人 御指摘のとおり、改正後の国籍法第三条により日本の国籍を取得する者の多くは、それまでに有していた外国の国籍と日本国籍との重国籍者になる、このように考えられます。

 この場合に備えた規定が国籍法の十四条一項でございまして、この国籍法十四条一項は、外国の国籍を有する日本国民は、重国籍となったときが二十未満であるときは二十二歳に達するまでに、そのときが二十に達した後であるときはそのときから二年以内に、いずれかの国籍を選択しなければならないとして、重国籍を回避することとしております。

 そこで、この新法の適用により重国籍者になった方につきましても、これに従って国籍選択をしていただく必要があるということになります。

血統主義の外国での事例

○滝委員 最後になりますけれども、日本の国籍法はフランスあるいはドイツの血統主義を主体とする国籍法をずっと見習ってきた、こういうふうに言われていますね。日本の今回の問題になった三条一項のような条文は、そもそもドイツ法あるいはフランス法にあるのでしょうか。

○倉吉政府参考人 申しわけありません。定かな記憶ではありませんが、ドイツにはたしかあったと思います。

○滝委員 ドイツの場合には、きょうの産経新聞にもありましたように、子供が国籍を取得すると母親までが国籍を取得する、こういうことで不祥事件が起きているように報道されて、これについての法改正が行われる、こういうことですけれども、フランスやドイツ、同じ血統主義をとっている、日本のお手本となった国籍法の世界で、例えば偽装認知とかそういう問題は、仮にあるとすれば、どういう状況になっているんでしょうか。

○倉吉政府参考人 ドイツでは若干そういう偽装認知のケースがふえているというふうな情報は把握しております。

 特に、偽装認知対策としてどういうことを講じているのかということが私どもも関心があるわけですけれども、国籍取得に関する届け出等について虚偽の記載をした場合に罰則が科せられる国としては、イギリス、スウェーデン、カナダ、インド、フランス、ノルウェー等がございます。

○滝委員 ドイツの場合には、子供が国籍を取得した場合には母親が、あるいは父親が自動的に国籍を取得する、そういうことに関する偽装事件じゃないんですか。

○倉吉政府参考人 そのような制度ではないのではないかと思うんですが、詳細は承知しておりません。申しわけございません。

○滝委員 突然お尋ねしましたので、さすがの民事局長さんも概要は、いきなりのことでございますから、御無礼をいたしました。

 いずれにいたしましても、実際のこの法律が成立した場合の後の手続は、やはりもう少し時間をかけて具体的な内容を示していかないと、窓口で混乱する、そういう事態が発生するおそれがあるんじゃないでしょうかね。少し今回の場合には急ぎ過ぎたという感じは否定できないと思うんですね。もう少し後の手続をきちんとするように、ひとつ事務当局として頑張っていただきたい、こういうことを申し上げておきたいと思います。

 それから、時間がまだ多少ありますので、要望だけ申し上げておきます。これは今回の国籍法と何ら関係ありませんが、お許しをいただきたいと思うんです。

 登記手数料の関係を前回も私は鳩山大臣に申し上げたことがあるんですけれども、それとは別に、オンライン化を登記について採用していますね。ところが、このオンライン化のシステムがしょっちゅうダウンするんですよ。オンライン化を奨励するために減免措置を講じているんですけれども、ダウンしたときには遠い法務局まで走らないかぬわけです。

 もともと何のためにオンライン化したかといったら、法務局を統合するためもあって、合理化のためにオンライン化をしたんですけれども、それを奨励するために租特法で登録免許税を減免しているんですね。これがダウンすると、顧客からは安い減免した手数料をいただく、ところが、ほっておけないものですから、法務局へ飛んでいって、今度は文書によって手続をすると、減免の手数料じゃなくて高い本来の登録税を取られる、こういうことがしばしば起こるんです。

 こういうような些細なことは、やはりオンライン化をした以上はオンライン化を中心にして事務手続を進めるのが当然ですから、私は、こんな問題は事務的に財務省と話をして、オンライン化を予定していた手続が後からだめだったという場合には、文書での手続についても当然減免の対象にすべきだろうと思うんです。これは、そんな大きな法律問題とかなんとかというよりも、当然それは取り扱い要領か何かで措置すべき問題だろうと思うんです。

 この種のオンライン化は、国税庁のe―Taxと法務省の登記システムと両方あるわけでございますけれども、当然そのようなことは行政的にきちんとした融通措置を講じておく必要があるのではなかろうか、こういうふうに思います。法律的に租税特別措置法でこれを書くと大変なんですよ。要するに、システムダウンしたときには従来の手続によっても減免するものとみなすなんという、そんなばかな法案は書けませんから、当然これは取り扱いの日常の業務の中でやるように、きちんとした手続をしておいていただきたい。これから予算時期でございますから、あえてこの際に要望だけ申し上げておきます。答弁は結構でございます。

 以上、終わります。

参議院・法務委員会(2008/11/25)/ 千葉恵子議員(民主党所属)

千葉景子 - Wikipedia
○千葉景子君 民主党の千葉景子でございます。
 今日は午後の開会ということになりまして、食事の後、少し何となくぼんやりしている部分もあるかもしれませんけれども、大変重要な中身でございますので、よろしくお願いをしたいというふうに思っております。
 非常に今日は限られた時間でそれぞれの質疑ということになりますので、私も細かいところはなかなかお尋ねすることができるかどうか分かりません。また追って同僚議員がまた別途の機会にお尋ねをするということになろうと思いますので、少し大きな焦点に絞りまして質疑をさせていただきたいというふうに思っております。

子供の権利を保障する最高裁判決

 さて、まずこの国籍法の改正でございますけれども、基本的には最高裁の判決を受けての改正ということになるのだろうというふうに認識をさせていただいております。この最高裁判決は、私は大変大きな意味のある判決だったなという気がいたします。幾つかのポイントがあろうというふうに思いますけれども、やはり今の国際的な潮流といいましょうか動向、こういうものを踏まえ、そしてまた、日本における家族のありようといいましょうか、そういう今の実情ですね、家族関係の変容、こういうところに思いを致し、そして、何よりも子供の権利を保障する、子供の保護というところにも温かい気配りをすると、こういう大変中身のある最高裁判決であったというふうに私は受け止めております。
 それだけに、こういうものを受けて、違憲だというその判断を受けてこの国籍法が改正をされるということについて、私は積極的に賛成の立場でございますし、一刻も早い改正によって子供たちが本当に安心して生活することができるような、そういう環境が整えられればと、こんなことを願っているところでございます。
 私の認識とすれば概略簡単に言うとそういうことになるんですけれども、この国籍法の改正に至る経緯、これについては法務大臣としてもどのように受け止めておられるのでしょうか、まずそこをお聞きをしたいというふうに思います。

○国務大臣(森英介君) 今委員から御指摘がありましたとおり、本年六月四日に、最高裁判所大法廷判決において、国籍法第三条第一項は違憲であるとの判断が示されたところです。この判断を受けまして、国籍法を所管する法務省では、国籍法第三条第一項が憲法に適合する内容となるように改正法案の立案作業を進めてまいりました。
 本法律案は、出生した後に日本国民である父から認知された子について、父母が婚姻をしていない場合にも届出による日本国籍の取得を可能とすること及び必要な法整備をすることを内容とするものとして立案されたものでありまして、平成二十年十一月四日の閣議決定を経て、国籍法の一部を改正する法律案として第百七十回国会に提出されるに至ったものでございます。
 最高裁判所判決の御判断は厳粛に受け止め、最大限尊重しなければならないと考えておりまして、その趣旨を踏まえまして、慎重な御審議を経て、しかし速やかに法改正を要するものと考えております。

○千葉景子君 最高裁判決を受けて法務省におかれましても決断をなさったということは私は了としたいというふうに思いますけれども、やはり国会、私どももそうでございますし、それから法務省におかれましても、いろいろ最高裁判決なりで違憲の判断が出たということを待つのではなくして、いろんな課題につきましてやはり今の国際的な状況やあるいは家族のありよう、そして子供の権利の保護、こういうことも踏まえつつ、いろんな角度から今問題を検討していただくと、こういうことが必要なのではないかというふうに思っておりますので、今回のこの改正はスピーディーに提案をいただいたことに私も歓迎をさせていただくと同時に、今後もいろいろな課題につきましてより一層検討を進めていただくことをお願いをしておきたいというふうに思います。

国籍取得の際の具体的手続き

 そこで、今回の法の内容につきましては今日は詳細にお聞きいたしませんけれども、ちょっと具体的な手続につきまして確認をさせていただきたいというふうに思っております。
 まず、この手続は、市町村の窓口に認知の届出をし、その後法務局に国籍の取得の届けをするという形になるわけでございます。この都道府県の窓口の手続、それから国籍取得の法務局の窓口の手続、これについて、例えばちょっと私が聞くところによりますと、外国人の母親、その母国で証明が出ないような資料を求めたりするケースがないとも限らない、この間の実務で、そういうことが言われておるんですけれども、そういうことがありますと、せっかくこういう子供についても保護を厚くする制度ができましてもこれが十分に機能しないということにもなりかねません。そういう意味で、ちょっとこの窓口の手続の扱いにつきまして御説明をいただいておきたいと思います。

○政府参考人(倉吉敬君) 御質問の趣旨は、外国人の母親であるということで、母国の証明が出ない場合を中心にと思いますが、全体的な手続についてということですので、若干その点を補足して申し上げたいと思います。
 まず、市区町村役場の手続でございますが、任意認知の届出が市区町村役場に出ます。そうすると、市区町村の役場では戸籍の届書、添付書面及び市区町村役場が保管しております戸籍によりまして要件を備えているか否かの審査を行うということになります。その届出が虚偽ではないかと疑うに足りる合理的な理由がある場合、この場合には市区町村から法務局への受理照会をさせまして、法務局においてその届書の添付書類又は関係者等の調査などの実態調査を行いまして、そうした方法により慎重にその受否を決定しているところであります。
 また、本年五月一日から施行された改正戸籍法によりまして、認知届書を市区町村役場に持参した者に対し本人確認を行うこととされました。そして、認知者以外の者が持参した場合又は届出人について本人確認ができなかった場合には通知されるということになりましたので、このことで戸籍の真実性を担保するための方策が講じられているところでございます。
 御質問の日本人男性が外国人女性の嫡出でない子を認知される場合は、嫡出でない子であるということを戸籍によって審査することができないものですから、原則として母の本国の官憲が発行した独身証明書等をもって審査を行っております。外国人母の本国が公的証明が出せない場合についてはもちろん個別の対応となるわけでありまして、例えば母親から独身証明書を出せない理由及び子供が嫡出でない子であるという旨を明らかにした申述書、これを書いてもらうわけですが、そういったものを出してもらうようにお願いをいたしまして、その上で当該認知届の受否を総合的に判断しているところでございます。
 法務局等の手続はよろしいでしょうか。

○千葉景子君 今お聞きをいたしますと、市区町村の窓口におきましては従来と特段の手続の変更はないというふうに受け止めさせていただきますし、それから法務局においても、本国の証明が出ないようなケースにおいては、それによって届けを拒否するのではなくして、他の手法を用いてその確認を行うというふうな取扱いだというふうに受け止めさせていただきたいというふうに思っております。是非スムーズな手続が取れますようにきちっとした共通な条件をつくっていただきたいというふうに思います。

婚外子差別としての相続分

 さて、今回の国籍法というか最高裁判例、これの根底に流れている考え方を見ますと、言わば結婚の有無を問わず子供に認知があることによって国籍を付与するということになるわけで、そういう意味では、いわゆる嫡出、非嫡出、この区別を、差別といいましょうか、取っ払ったと言っても私は過言ではないんだろうというふうに思っております。子供にとっては嫡出かあるいは非嫡かということは責任のないところでもありまして、そういう意味ではこういう形が取れたということは大変私は歓迎すべきところだというふうに思っております。
 ただ、そうなりますと、この間、いわゆる婚外子、非嫡出子に対するいろいろな課題が残されておりまして、そういう意味では、こういう最高裁判例を踏まえたときに、是非、残された課題についてもむしろ積極的に検討する時期が来ているのではないか、こう思います。
 その一つがいわゆる婚外子の相続差別でございます。これは、御承知のとおり、国際的にも、国際機関からも常々厳しくこの差別が指摘をされ、これを解消すべしと、こういう指摘がされているところでもありますし、そしてやはり子供にとって差別を受けているということは責任のないところで不利益を被っていると、こういう状況もあるわけでございます。
 全体として嫡出の問題というのはなかなか難しいところありますけれども、子供に対するこういう相続差別というものは撤廃をするということを検討をするときが来ているのではないかというふうに思いますけれども、大臣としていかがでしょうか。その辺を積極的にお取り組みいただいたらいかがかと思いますが。

○国務大臣(森英介君) ただいまの千葉委員の御指摘は大変重要な御指摘であるというふうに受け止めます。既に様々な御議論があることも承知しておりますが、ではありますが、六月四日の最高裁の判決は、あくまでも国籍法第三条第一項について違憲の判断を示したものであって、嫡出でない子の法定相続分の問題については特に言及しているものではありません。
 相続分の問題については、御承知のとおり、最高裁、平成七年の大法廷判決において、民法第九百条第四号ただし書は、法律上の配偶者との間に出生した嫡出である子の立場を尊重するとともに、嫡出でない子の立場にも配慮して、嫡出でない子に嫡出である子の二分の一の法定相続分を認めることにより法律婚の尊重と嫡出でない子の保護との調整を図ったもので、合理的な根拠があって、特に不合理な差別ではないという趣旨の判断を示しております。判例としてはこの判決が現在でも生きているというふうに認識をしております。したがって、民法第九百条第四号ただし書の規定は、現時点においては憲法第十四条第一項に違反するものではないと考えております。
 さはさりながら、国際的に嫡出である子と嫡出でない子の法律上の取扱いに差を設けない国が多くなってきているところでありますし、また委員のような御意見も大変増えてきております。しかし、この問題が婚姻制度や家族の在り方、特に我が国の家族の在り方と関連する重要な問題であることにかんがみまして、これから国民の御議論が深まっていくのを見守りたいというふうに思っております。

○千葉景子君 お答えは、ずっとそのようなお答えのような気がするんですね、法務省のお考えなのかもしれませんけれども。
 ただ、やはり最高裁判決が出たという状況を考えるときには、今確かに、この相続分差別についての判例というのは確かに合憲、合理的な範囲だということではありますけれども、そこから今回の最高裁判例が出た、この間のやっぱり時代の流れ、あるいは国際的な潮流の動き、そういうことを考えますときには、そこにこだわっていることではなくして、やはり大臣としてここは、そうだな、率直にお考えをいただいて、この問題についての検討なりをしていただく、こういうときではないかというふうに思っております。

離婚後300日問題

 是非それを私は大臣にお願いをさせていただき、次に移りたいと思いますが、もう余りないんですね。それと、これも国籍がない子供の問題でありました。
 それ以外に、今度は戸籍がない子供というのが先般から非常に問題になりまして、これはいわゆる離婚後三百日問題と言われている課題でございます。
 これについては、戸籍をつくれないままいる子供たちが大変存在しているということで、多くの皆さんが本当にその救済に向けて御努力をされておられます。法務省も一定の対応はこの間取られてまいりました。そういう意味では、法務省がどんな対応を取られてきたか。それと、やはりこれもその対応だけではなくして、新しいやはり家族関係の実情等々を踏まえながら、これはあくまでも父子関係をはっきりさせて子供の救済を、保護を図ろうというのが元々の趣旨の法律でございます、規定でございます。だとすれば、それが今父子関係を定めるのにむしろ障害になってしまっているということですから、逆に新しい父子関係を定めるためのルール作りですね、そういうことにも今検討を進めるときがやってきているのではないかというふうにも思います。
 そういう意味で、ちょっとこの間の法務省として、まあ一歩ではありますけれども、対応を取られたということと、根本的な解決に向けての考え方、これについてお聞かせをいただきたいと思います。

○政府参考人(倉吉敬君) 最初に通達の問題でございますが、委員御指摘の通達は、婚姻の解消又は取消し後三百日以内に生まれた子のうち、お医者さんに証明書を出していただきまして、この婚姻の解消又は取消し後の懐胎であるということを証明することができる事案については、戸籍の窓口において、いわゆる民法七百七十二条の推定が及ばないものとして出生届を受理すると、こういう扱いをいたしているところでございます。
 それから、そうすると、離婚後三百日以内に生まれた子のうち、懐胎が離婚後であると、言わば早産で生まれたような子、これは今の通達でいいとして、懐胎の時期が離婚後である事案、これについてはどうするんだということが残っているわけでございます。この点については、失礼しました、離婚前である場合ですね、この通達が適用されない事案ということになるわけですが、婚姻中に懐胎した事案につきましては、現在与党において戸籍の届出及び裁判手続に関してどのような方策があるのか検討を行うものと聞いておりまして、法務省におきましても、子の福祉の観点から協力をしてまいりたいと、こう考えております。
 以上でございます。

○千葉景子君 もう時間がございません。
 今、与党の方でも御検討をいただいているということでございますけれども、私どももしっかり検討をさせていただいておりまして、本来であればこういう問題は政府としても早くに検討、スタートをすることがやっぱり大事だというふうに思っておりますが、我々の考え方を取りまとめますれば、どうぞそれをしっかりと採用していただきまして、やはり子供たちの、戸籍のない子供が生まれるようなことがないように是非していきたいというふうに思っておりますので、どうぞよろしくお願いをしたいというふうに思います。
 時間になりましたので、細かい点につきましては後日にでもまたお聞かせをいただくことにして、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。

参議院・法務委員会(2008/11/25)/ 松村龍二議員(自民党所属)

松村龍二 - Wikipedia
○松村龍二君 自由民主党の松村でございます。
 国籍法についての改正案について御質問申し上げます。
 今回の国籍法の改正案につきましては相当数の国民から心配する声が上がっており、我々国会議員のところにもファクスその他、その意思が届いているところでございます。その心配の多くは、虚偽の父子関係が作為的に形成され、本来日本国民となるべきでない人が日本国民となってしまうというもののようでございます。

最高裁判決についての法務当局の見解

 まず第一問といたしまして、ところで、今回の改正法案は本年六月四日の最高裁判所判決を受けたものとのことであります。そこで、この最高裁判所判決の内容及びその意義をどのように理解しているのか、法務当局に伺います。

○政府参考人(倉吉敬君) 現行の国籍法第三条一項が問題になったわけでありますが、まず現行の国籍法第三条一項という規定は、日本国民である父とそれから日本国民でない母との間に生まれた後に父親から認知された子供のうち、父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した子については一定の条件の下で届出により日本国籍を取得することができるという道を開いたものでございます。他方、日本国民に認知されたにとどまる子供については届出による日本国籍の取得は認められないと、こういうことになります。
 本年六月四日の最高裁判所大法廷判決は、このように、現行の国籍法三条一項が日本国民に認知されたにとどまる子とそれから父母の婚姻により嫡出子たる地位を取得した子供で国籍取得に関する区別を生じさせている、このことは遅くとも平成十五年当時には合理的な理由のない差別として憲法違反であると、こう判断したわけでございます。判決の最初の判文の方には、今日においては違憲であると、こう言っておりまして、最後の方で、その本件の上告人らが届出をした時期が平成十五年であったわけですけれども、この平成十五年当時には遅くとも憲法違反になっていたと、こういう判断をしたものでございます。
 最高裁判所の判決の効力でございますが、これは当該事案についてのみ生じると考えられているわけでございますので、本年六月四日の最高裁判所判決により、一般的にこうした事件の原告の方と同様の立場にある子供も届出によって国籍を取得することができるようになるものではございません。しかしながら、最高裁判所によって判断が示された以上、同様の立場にある者が同様の訴訟を提起した場合には、下級裁判所において今度の最高裁判決に倣って同様の判断が繰り返されることになると、こう考えられるわけでございます。
 そこで、この最高裁判所判決には補足意見やもちろん反対意見も付されているわけでありますが、この判決というのはあくまでも多数意見によって示されるものでありますので、この判断は厳粛に受け止め、最大限尊重しなければならないと考えているところであります。
 この趣旨を踏まえて、国籍法第三条第一項が憲法に適合するよう速やかな法改正を要するということで今回の法案を提出している次第でございます。

法務当局の偽装認知対策

○松村龍二君 最高裁判所の判決を受けて法改正をする必要があるということでありますが、両親が結婚していなくてもよくなることで、うその認知を受けて不正に国籍を取得する者が出てくるのではないかという不安の声が寄せられております。このようなことは断じて許されるべきものではないと考えますが、法務省としてどのような対策を考えているのか、なるべく詳しく法務当局にお答えいただきたいと思います。

○政府参考人(倉吉敬君) 一つには、今回の法案をお示ししたとおりでございますが、これは委員の御質問の趣旨からは外れるかもしれませんが、新たに国籍取得届を提出する場面において罰則を設けました。虚偽の届出があった場合には一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処するという規定を新設したいと、このように考えております。
 こういう趣旨も踏まえまして、窓口でこういう罰則もあるということも分かっていただければ虚偽の認知というのもある程度は、虚偽の認知ではありません、虚偽の国籍取得届、これは防げるのではないかと、このように考えている次第であります。
 その上で、法務局の窓口でどんなことができるかということを今考えているところを御説明したいと思います。
 まず、法務局等では、国籍取得届が法務局等に対して出るわけでございますが、その際、必要な要件が備わっているか否かを確認することになります。その際には届出人が窓口に来て届出をすることが必要でありまして、認知がされたことを証明する戸籍などの書類を提出していただくことになります。その際に併せて、届出人等から、父母が知り合った経緯はどのようなものか、それから父親と同居しているかどうか、していないとすればその理由は何かとか、父親から扶養を受けているかどうか、扶養を受けていないとすればどのような御事情があるのかといったこと、それから、子が生まれてから認知に至るまでの経緯や婚姻等の身分関係の状況等をお尋ねをいたしまして、その子供が認知した男性の子であるかどうかというのを慎重に確認していこうということを予定しております。
 言うまでもございませんけれども、真実の父子関係がないのに虚偽の認知をするということ、これはもちろん防がなければいけないことでありますけれども、少なくとも国籍を取得する目的でそのようなことをされるというのは断じて排除しなければいけないと、このように考えております。
 さらに、子を懐胎した時期に父母が同じ国に滞在していたかどうかということについて疑義が生じた場合、このようなことが起こり得ます。それからさらには、偽装認知ではないかという疑いが生じるということもございます。こういった場合には、関係機関とも連絡を密にいたしまして更なる確認をするというようなことをして不正の防止に努めてまいりたいと思っております。
 なお、市町村において、これは国籍取得届が出る前の場面でございますが、市町村において認知届の受理について疑義が生じたということで管轄法務局に当該認知届についての受理照会がされたような場合、このような場合には、照会を受けた法務局では当該届書の添付書類やそれから関係者の調査等を行うなどして適切に対処していきたいと考えております。

法務当局がDNA鑑定を採用しない理由

○松村龍二君 よく父子関係を立証あるいは母子関係を立証するというときにDNA鑑定というのがあるではないかということがだれの頭にも浮かぶわけでありますが、DNA鑑定が法務省のお考えによってはさほど重要に考えておられないようにお伺いしますが、どうしてでしょうか。

○政府参考人(倉吉敬君) DNA鑑定に関しましては、基本的に父子関係の科学的な証明だけで親子関係を決めるというような誤った風潮になってはいけないということが一つございます。
 何よりも大きいのは、法務局の窓口ではDNA鑑定の正否というのを判断できないということでございます。DNA鑑定というのは、お父さんと言われる人それから子供と言われる人の間違いないその人の血液とか、まあ毛髪なんかもあるみたいですけど、そういったものを採って、そこにすり替えがない、検体に間違いがないという前提でその審査がされるということがないといけません。しかし、法務局では、替え玉が立てられていないかとかすり替えがないかというのが判断ができないという問題がございます。さらに、DNA鑑定も様々な科学水準に従ったものがあるんだと思うんですけれども、そのような科学的な専門的な水準にきちっと達したものが、ちゃんとしたものが出ているのかということも、これは法務局では判断ができないわけでございます。
 そのような事情がございますので、DNA鑑定を採用するということについては、現在、消極の立場を取っております。

○松村龍二君 終わります。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2009年01月09日 06:38
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。