国会質疑 > 国籍法 > 03

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衆議院・法務委員会(2008/11/18)/細川律夫議員(民主党所属)

細川律夫 - Wikipedia
○細川委員 民主党の細川でございます。

 国籍というものは、個人と国家を結びつけるという大変重要な法的ないわばきずなになっている、こういうふうに言われております。国際法上は、まず外交的な保護の前提でもありますし、刑事の管轄権なども国籍が前提となります。また、国内法上も、出入国の場合、日本人と外国人では当然に権利義務が違いますし、また参政権あるいは公務につく公務就任権などの権利も当然異なってまいります。

 つまり国籍法は、国際法、国内法上、その人の権利利益に大変重大な影響がございます。国籍法の規定は、個々の個人にとって権利利益に直結する大変重要な、大切なものであります。

国籍法改正提案の理由

 そこで、もう既に聞かれたところもありますけれども、まずは大臣にお尋ねをいたしますけれども、今回の改正案の提案をした理由、その経過を説明してください。

○森国務大臣 ちょっと今までの御答弁と重複いたしますけれども、本年六月四日、日本国民である父と日本国民でない母との間に出生し、後に父から認知された子について、父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した場合に限り、届け出による日本国籍の取得を認めている国籍法第三条の規定が違憲であるとの最高裁判所大法廷判決が言い渡されました。

 そこで、国籍法を所管する法務省では、我が国の三権の一つであります最高裁判所判決を受けて、国籍法第三条第一項が憲法に適合するものとなるよう、もとより補足意見についても十分な検討を加えた上で、最高裁判所判決の趣旨を踏まえた改正法案を立案いたしまして、速やかな法改正を行うべくこれを国会へ提出したものでございます。

○細川委員 私としましても、今回の最高裁判決で過半数の裁判官が違憲としたこの判断は妥当なものだと考えておりますし、我が国が父母の両系の血統主義ということを採用している、このことの当然の帰結であるというふうに考えているところでございます。

 しかし、最高裁の判決の中では少数の反対意見がありまして、やはり婚姻を条件とする国籍の付与というのは十分合理性がある、こういうことで、この意見を支持するというような意見もあるようであります。

 そこで、今回の最高裁判決についてどう考えるか、もちろんそれは、先ほど答弁されましたように、行政府の責任者として、三権の一つである最高裁判所の判決、その判断を尊重する、こういう立場は十分わかるわけでありますけれども、しかし、国籍とは一体何かといった、そういう踏み込んだ大臣のお考えを少しお聞きしたいというふうに思います。

 そういう意味で、最高裁の判決というのは大臣自身はどういうふうにお考えなのか、お聞きをしたいと思います。

○森国務大臣 私は、我が国は、出生による日本国籍の取得については血統主義を原則としつつ、補充的に生地主義を採用しているところでございまして、これは我が国の伝統や意識に基づくものであって、現時点でも基本的に維持されるべきであると考えております。

○細川委員 日本人の子が日本の国籍を取得するということは、これは私も当然だというふうに考えております。

 そこで、この法案について、いろいろ反対の人たちもおられるようであります。その中で一番心配をされておるのが、これまでの質問にも出てきましたように、偽装の認知が多数出てくるのではないかという点でございます。あるいは、罰則が非常に甘いのではないか。私もこの点については、大いに心配をしているわけでございます。

 そこで、いろいろな罰則の適用について、重複になるかもわかりませんけれども、まずお聞きをいたします。

 認知あるいは国籍取得の届け出にはいろいろ段階がありまして、先ほど法務省の方からの答弁では、三段階になる、こういうことでございます。そこで、まず認知をする人が市町村役場に届けます。この役場に届けたときのものが虚偽の場合、これについての罰則をまず聞きます。

○倉吉政府参考人 まず、第一の段階の市町村役場に虚偽の認知届けをした場合でございますが、この場合は、刑法百五十七条の公正証書原本不実記載罪が成立いたしまして、五年以下の懲役または五十万円以下の罰金が科されるということになります。

○細川委員 次に、そうしますと、認知をします、その後、法務大臣に届け出をする、こういうことになりますが、法務局に国籍取得届を今度は母親か十五歳以上の子供が出すわけですけれども、そのときに虚偽の場合はどうですか。

○倉吉政府参考人 法務局に虚偽の国籍取得届けをした場合、これは国籍法に基づくものですが、改正後の国籍法第二十条により、一年以下の懲役または二十万円以下の罰金が科されることになります。

○細川委員 次に、今度は、母あるいはその子供が国籍を取得したということで市町村役場に国籍取得の届けを出して、そこでその子供の戸籍がつくられるわけですけれども、この場合はどういうふうになりますか。

○倉吉政府参考人 市町村役場に戸籍法百二条に関する虚偽の国籍取得届けをした場合、最初と同じでございます。刑法百五十七条により公正証書原本不実記載罪が成立し、五年以下の懲役または五十万円以下の罰金が科されます。

○細川委員 これまでは一人一人についての犯罪を聞いてまいりましたけれども、それでは、父親、母親、相談をして提出した場合はどうなりますか。

○倉吉政府参考人 認知者である父親と、それから法務局に国籍取得届けをすることとなる母または子供が共謀して虚偽の届け出をした場合というお尋ねでございますが、もちろん共犯となり得るということから、併合罪としてそれぞれの刑罰が科されるということになると思います。(細川委員「幾つもじゃなくて、相談して」と呼ぶ)その場合には共犯となります。共謀共同正犯の場合が多いのではないかと思います。

○細川委員 それでは、暴力団などが仲介をして、そして虚偽の届け出をさせる場合、その暴力団に対する処罰はどうなりますか。

○倉吉政府参考人 ただいまと同様に、共謀共同正犯になる場合が多いのではないかと思います。

○細川委員 そうしますと、三つの段階でそれぞれ同じ者が虚偽の届け出に加わった場合、本人の場合もあるでしょうし、他人が関与した場合もあるでしょうし、共謀の場合、それから先ほどの暴力団などがこれに加わって仲介などをした場合はどうなりますか。

○倉吉政府参考人 一つ一つの犯罪について、それぞれ共犯として成立することになります。それは、二つないし三つやったということになれば、それぞれについて併合罪としてその刑罰が併科されるということになろうかと思います。

○細川委員 併科されますと、最高刑はどうなりますか。

○倉吉政府参考人 懲役刑については、一番長いものの一・五倍というのが上限という規定がございますので、三つ全部いけば七年六月。そして、罰金刑については、併科されるということになりますので、五十万足す二十万足す五十万で百二十万、こういうことになろうかと思います。

○細川委員 そうしますと、虚偽の届け出をした場合にはそういうように処罰される、こういう答弁でございます。

 最高刑では併合の場合は七年六月、こういうことになるわけなんですけれども、これで抑止力といいますか、虚偽の届け出を抑止することが十分だというふうにお考えでしょうか。

○倉吉政府参考人 刑罰法規による抑止力としては、これで十分であろうと思います。もちろん、一般的抑止ということを考えれば、こういうことが処罰の対象になるということは広く広報、周知に努めるということが必要であろうと考えております。

○細川委員 大臣にちょっとお聞きしますが、今民事局長の方から刑罰についての法定刑などの説明をいただきました。しかし、一般には刑罰が軽い、こういうことで、偽装認知が行われるのではないかということで非常に心配をしておる方たちがたくさんおられます。大臣としては、このような刑罰で大丈夫だというふうにお考えでしょうか。

○森国務大臣 私も、今までの御質疑を通じまして、もとより偽装認知の防止ということは法務省にとっても極めて大きな課題であるというふうに認識を共有しております。

 刑罰が軽いか重いかについては、ちょっと私からコメントするようなことでなくて、大丈夫だというふうに申し上げるほかないわけでございますけれども、今民事局長から御答弁しましたように、やはりそういう刑罰があるということをわかりやすく広く広報することも極めて重要でありますので、その点についても十分に督励をしてまいりたいと存じます。

○細川委員 今、これまで聞いてまいりましたのは、偽装の認知が行われた場合の刑罰法規について尋ねてまいりました。しかし、刑罰で処罰をするということももちろん必要ではありますけれども、しかし、そういう偽装の認知を防止するためには、法務省あるいは市町村に届け出がなされるときに、そういう偽装の届け出がないようにしっかりした対応をしなければいけないというふうに思います。

偽装の届出が出ないようにするための法務局の対応

 そのことをどういうふうにやっていくのか、これが偽装の届け出を防止するために非常に大事だというふうに考えておりまして、その点、どういうふうな方法で偽装の認知届あるいは国籍取得届などの防止をすることが考えられているか、詳しく御説明をお願いします。

○倉吉政府参考人 国籍取得届を受理する立場になります法務局におきましては、まず、これは当然のことでありますが、届け出人もしくは関係者から子の出生に至る事情等を聴取いたしまして、その子供が認知したとされている男性の子であるかどうかということを確認するとともに、必要があれば、届け出人もしくは関係者等のお宅にも足を運んで、赴いて、事情を聴取するということをしようと思っております。

 それからまた、父親が届け出人になっていない場合でありましても、父親に対して、法務局における調査について協力を求めるということを強く進めていきたいと思っております。

 あわせて、認知の事実の有無について疑義が生じた場合には、関係機関と連絡を密にいたします。これはちょっとおかしいな、もうちょっと調べてもらった方がいいというときには、警察に情報を提供するということをいたします。さらにおかしいということになれば、届け書きまたはその添付書類及び届け出人等の供述についてさらなる確認を行う。

 この間においては、入管当局それから警察当局との連携も密にしてやってまいりたいと思いますし、あらかじめ、事前にさまざまなおかしい動きがあるというような、あるいは先ほど来指摘のあります組織的な犯罪の動きがあるかというようなことについては、もちろん、それぞれの関係当局からも情報をいただきながら、こちらも怪しい戸籍の関係があるんだというのはすぐ情報を提供する、こういう体制を整えていきたいと思っております。

○細川委員 これまで、刑事的な処罰の関係、刑法の関係で偽装認知を防止するということ、それから届け出のときにいろいろな工夫をしながら偽装認知はさせない、こういう御説明がありました。刑事、民事、その両面でしっかり偽装認知がなされないようにやっていかなければならないと私も思いますし、そのことはしっかりお願いをしたいと思います。

 ただ、それでも法の網をくぐるというか、悪いやからが偽装認知をする、こういうようなことが現実問題として起こってくるというようなことがあれば、これはまたそこで厳しくそのときに対処していかなければいけないと私は思うんですけれども、その点についてはどのようにお考えでしょうか。

○倉吉政府参考人 ただいまの御指摘は、今のような方法をとってもさらに具体的な犯罪が起こって、その抑止的効果がないと認められる場合ということをおっしゃっているんだと思います。

 私どもは、万全の体制を整えて、今回の改正のために法務局が全力を挙げてこれに当たろうとしておりますので、そのような事態は起こらないという強い決意で臨んでいるところでございます。

○細川委員 それでは、大臣、その点はどのようにお考えでしょうか。

○森国務大臣 私も、今のさまざまな方策を通じて、偽装認知という問題が起こらないように最大限の努力をさせるように督励をいたします。

○細川委員 本当にこの改正案についてはさまざまな観点から議論がなされておりまして、とりわけ偽装認知については非常に心配もあります。ぜひ大臣が先頭に立って、決して偽装認知がされないように督励をしていただいて、この国籍法の改正案の趣旨が全うされるようにお願いをしたいというふうに思いますから、よろしくお願いをいたします。

 そこで、ちょっと改正案とは離れますけれども、国籍の一般についてお伺いをいたします。

 国籍を決めるには、国際人権法上の制約はありますけれども、それぞれの国の権限、こういうことになっております。国籍の定め方には、これまでにもいろいろ議論にありましたように、血統主義あるいは生地主義というのがありまして、我が国は血統主義をとっております。ただ、アメリカあるいはカナダ、ブラジルなどは生地主義をとっております。元来、移民を多く受け入れるような国は多民族国家でありますので生地主義が一般に多い、我が国のように移民による混血が少ないところは血統主義が多いというふうにされております。

国際化の進展と血統主義

 そこで、国際化が急速に進みまして、国境の垣根がますます低くなってきているのが現在でありまして、純粋な血統主義だけで本当にいいのかどうかということも、これもまた議論をしていかなければならない問題ではないかというふうに思います。

 例えばイギリスでは、親が永住許可を得ていれば生まれた子供は国籍を取得できる、こういうことになっております。例えば、日本で生まれ日本で育った外国人の夫婦の子供が、ずっと日本で暮らしたい、こういうような場合には、帰化以外にも国籍を取得できるような枠組みがあってもいいのではないかというようなことも議論されているところでございます。今すぐどうのこうのということではないのですけれども、この辺も今後議論をすべきではないかというふうに私は考えるんですけれども、大臣はどのようにこの点についてはお考えでしょうか。

○森国務大臣 今細川委員から、帰化以外の届け出のそういった枠組みがあってもいいのじゃないかという御指摘があったわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、血統主義を原則として補充的に生地主義を採用しているという現状でございまして、これは我が国の伝統や意識に基づくもので、現時点でも基本的に維持されるべきものと考えておりますが、もっとも、出生後に日本国籍を取得する方法として、届け出と帰化によるものが設けられております。

 このうち、届け出による国籍取得は、ある者が我が国と特別な関係にある場合に、法務大臣への意思表示のみによって簡易に日本国籍を取得することを認めようとするものでございます。一方、帰化については、法務大臣の許可により国籍を与える制度で、血統主義と直接的な関係はございません。

 委員の御質問は、例えば日本国民の配偶者や日本国民の子など、我が国と特別な血縁または地縁関係を有する外国人については、純粋な血統主義によることなく、帰化以外の方法で国籍を取得できる余地はないかという御趣旨ではないかと思いますが、これらの方々については、一般的な外国人に必要とされる国籍法第五条の最低限の条件を一部緩和または免除した簡易帰化によって国籍を取得することができることとなっております。

 したがって、そのような方について、特にこれ以上の、帰化以外の届け出の枠組みが必要とは現状では考えておりません。

○細川委員 こういう問題はやはり、今直ちにというようなことではないんですけれども、私は検討していくべき問題ではないかというふうに思っております。

 そこで、さらにお聞きをしますが、一方では、国籍法十二条というところに国籍留保制度が規定をされております。それによりますと、出生によって日本の国籍を持ちながら外国でも国籍を取得したそういう日本の子供、こういうのは三カ月以内に、日本国籍を留保する、こういう届け出をしない限り、出生時にさかのぼって日本国籍を失う、こういうことに国籍法十二条ではなっております。そうすると、この十二条は生地主義的な扱いをしているというふうにも言えるわけでございます。

 そこで御質問いたしますけれども、今回の法改正では、生後認知であっても国籍を取得できるということにしたのに対して、一方で、三カ月以内に留保しないと日本国籍を失う、こういうのは私はちょっとアンバランスではないか、バランスを欠くのではないかというふうに思います。

 この点、血統主義を貫くということならば、とりあえず届け出なんかはしなくても留保の状態にするような配慮もやはり考えなければいけないと思いますけれども、この点はいかがでしょうか。

○森国務大臣 ただいまの御指摘でございますけれども、御承知のとおり、今もお話がありましたが、国籍法第十二条の規定により日本の国籍を失った者で二十未満のものは、日本に住所を有するときは、国籍法第十七条第一項の規定により、法務大臣に届け出ることによって、日本の国籍を取得することができます。

 つまり、日本に住所を有するときということが要件になっておりますけれども、この国籍法第十七条第一項による国籍の再取得の制度は、留保の届け出をしなかったことにより日本国籍を喪失した子が、未成年のうちに我が国に住所を定め、我が国との結合関係があることが明らかとなった場合には、簡易に国籍を再取得できるものとすることが合理的であるとの趣旨で設けられたものであります。

 これに対して、今回の国籍法第三条による国籍取得の制度は、出生後に日本国民である父親から認知されたことによって初めて日本国民との親子関係が生じた子について、親子関係の発生によって我が国との結合関係があることが明らかとなったとして、日本国籍の取得を欲する場合には、届け出による国籍取得を認めるというものでございます。

 したがって、私も、委員のおっしゃる、若干そこのところの整合性が欠けるんじゃないかということは、正直申し上げて認識を共有するところもあるわけでございますけれども、しかしながら、今回の法案は、国籍留保制度を前提とした国籍法第十七条第一項による国籍再取得とは制度趣旨が異なっているものですので、国籍法第十二条の国籍留保制度と比べてそごが生じているということではないというふうに受けとめております。

○細川委員 この点はぜひ検討もしていただきたいと思います。

 時間が来ましたので、私の質問はこれで終わりたいと思いますけれども、今回の国籍法の改正におきましては、先ほども申し上げましたように、偽装認知などが絶対に起こらないように、ぜひ大臣が強力に御指導いただいて、この法律の改正の趣旨が全うできるように、ぜひよろしくお願い申し上げて、私の質問は終わります。

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最終更新:2009年01月09日 06:34
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