国会質疑 > 児童ポルノ法 > 2008-02

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衆議院・青少年問題に関する特別委員会(2008/04/10)/吉田泉議員(民主党所属)

○吉田(泉)委員 民主党の吉田泉です。
 私の方からは、最近、議論が始まりました児童買春、児童ポルノ禁止法、これに関連してお伺いをいたします。
 この法律は、制定されたのが平成の十一年、その後、平成十六年に改正をされました。それからもう四年が経過しましたので、いわゆる予定された見直しの時期に来ているという段階であります。
 そうしたところ、去る一月三十日、アメリカのシーファー駐日大使が、読売新聞でしたが、この件で投稿をされました。そして、そこで、日本の児童ポルノ法の所有を非合法化する方向で法改正をすべきだと。ここで大使が言っている所有というのはいわゆる単純所持ということだと思いますが、そういう方向で日本の法律を改正すべきだ、こういう主張をされたわけであります。それが一つのきっかけになったと思いますが、法改正の検討が始まっているという段階だと思います。
 私は、これは大変異例の展開だ、外国の大使から指摘を受けて法改正というのは異例の展開だなと思っているわけでございます。本格的な法改正論議はいずれされるわけですが、きょうはその前段ということで、いわゆる現状認識、特に日本はいまだに児童買春、児童ポルノ大国であるのか、もしそうだとしたら、我々は今すぐ何をやらなければならないのか、そういう問題意識から質疑をしていきたいというふうに思います。
 まず、全体の状況ですけれども、この問題に関して国際的な動きを振り返りますと、平成十二年、いわゆる議定書というものがニューヨークで策定されました。これは児童の売買、買春、ポルノに関する児童の権利条約の選択議定書という議定書であります。それによって、各国の法整備に関する共通の目標ができたということだと思います。それから八年たったわけでありますが、各国ともこの法整備に、そしてそれに基づく取り締まりに努力をしてまいりました。
 そこで、まず、八年たって、その間、児童の売買、買春、ポルノに関して、国内、海外ともにこの状況というのがどういうふうに改善されてきたのでしょうか。特に、日本はかつては、法の制定時には、児童ポルノ製造、販売の輸出国である、もしくは児童買春ツアーをアジアに送り出している加害国である、さらには、世界に出回っている児童ポルノの八〇%が日本製だ、そういう指摘を受けておりました。また、国内でも援助交際というのが大変大きな社会問題になっていた時期でありますが、十年近くたって、それらの状況は今全体としてどうなっているのか、お伺いいたします。

○井上政府参考人 お答えいたします。
 平成十一年十一月の児童買春、児童ポルノ禁止法施行後、平成十九年末までに検挙いたしました児童買春事件の検挙件数及び検挙人員は、一万二千二百三十五件、八千百三十七人、児童ポルノ事件の検挙件数及び検挙人員は、二千五百五十五件、千八百二十五人となっております。
 特に、児童ポルノ事件につきましては、平成十七年から検挙件数、検挙人員とも大幅に増加をし、現在まで高水準で推移をしております。この増加につきましては、平成十六年の同法の改正による取り締まりの強化などが要因の一つとして挙げられるものと認識をしております。
 また、国外犯の検挙状況につきましては、これまで、タイ、カンボジア、フィリピンでの日本人による児童買春、児童ポルノ禁止法違反事件で十件、十六名を検挙しております。その内訳は、児童買春事件が六件、六名、児童ポルノ事件が四件、十名となっております。

○吉田(泉)委員 できたら、世界全体の児童売買、買春の状況もお聞きしたかったんですが、手元のデータがないということであります。ことしはブラジルでまたこの国際会議があるということですから、何か世界全体の被害状況というのはあるんじゃないかとは思うんですが、きょうは残念ながらいただけませんでした。全体として世界の状況はよくわからない、日本については、取り締まりの強化もあって児童ポルノの検挙件数が高水準にある、そういうお話でした。
 次の質問ですけれども、この申し上げた選択議定書を日本は四年前に締結したわけであります。締結したということは、この議定書が要求している法整備を完了したという意味であります。よく議論になります日本のアニメーションについても、現行の法律では「その他の物」ということで、一応法の対象にした。そこまで日本は法整備をしたわけであります。
 一方、世界全体を見ますと、児童の権利条約に参加している国というのは百九十四カ国あるわけですが、この選択議定書を締結している国というのは今のところ百二十六カ国だそうであります。ということは、全体で六五%ぐらいの国しかまだこの法整備が済んでいないということだと思います。特に、G8の中でも、ドイツ、イギリス、こういう国がまだ締結をしていない、ロシアに至ってはまだその議定書に署名もしていない、こういう状況であります。
 外務省は、よその国のことですけれども、何か事情があると思うんですが、そういう事情をどう見ておられるのか、お伺いします。

○秋元政府参考人 委員御指摘の選択議定書は、児童の売買、児童買春及び児童ポルノに係る一定の行為の犯罪化、それから裁判権の設定をすること等を規定しているわけでございます。
 委員御指摘のとおり、現在百二十六カ国が締結しておりますけれども、この議定書をより多くの国が締結することは、議定書の実効性を高めていくという観点から大変望ましいことだというふうに考えております。
 ただ、個々の国がこれを締結するかどうかにつきましては、この議定書の意義と国内実施の可能性につきそれぞれの国が判断するということになっておりますために、委員がおっしゃいましたドイツそれから英国、ロシア、こういう国がこの議定書をなぜこれまで締結してこなかったのか、そういう具体的な理由は承知しておりません。

○吉田(泉)委員 事情はわからないということですね。
 各国いろいろな事情があるということしかわかりませんが、例えばアメリカも、この議定書の親条約というんですか、上位の条約である児童の権利条約、こちらに実はまだ参加していない。その中で、G8の中で日本とロシアだけが単純所持を禁じていない、大変この二つの国が法整備がおくれている、こういう印象を世界から持たれているんじゃないかということを、私、客観的に見て、日本はそれなりにきちんとやっておるんだというところをもう少しはっきりさせる必要があるんじゃないか、そんなふうに思っているところです。
 さらに、私の手元にある幾つかのデータを挙げてみたいんですが、各国の比較の数字ですね。一つは強姦数であります。これは児童も含めた、十八歳以上の人も含めた数字ではございますけれども、国連の犯罪統計によると、十万人当たりの強姦認知件数、一番多いのがカナダ七十八人、次がアメリカ三十二人。一方、日本は二人弱だというわけですね。G8の中で一番低い。しかも、日本の場合は四十年前と比べて十分の一ぐらいに減っているという数字が一つあります。
 それから、二つ目の数字は、児童ポルノの利用度。これの各国比較ですが、これはイタリアの児童保護団体の数字ですが、アメリカが全体の二三%を占める、ドイツが一五%、ロシアは八%。それに対して、日本は二%弱。これもまたG8で一番低い、児童ポルノの利用度ですね。
 三番目の数字は、今度は児童ポルノの発信度です。これは、英国のインターネット監視財団という半官半民の財団、これの数字によると、アメリカが全体の五四%、ロシアが二八%、ヨーロッパが八%、アジアが七%。日本はそのアジアの中に入っているわけですから、これも日本はせいぜい数%というデータがあります。
 何かこういう数字を見ますと、私は、日本は、性犯罪、そして児童ポルノの利用さらには発信、いずれもG8の中では一番低いレベルにあるんじゃないかというふうに推測したわけであります。ところが、シーファー大使の御発言に戻りますけれども、この新聞の投稿文の中で大使は、日本とアメリカが児童ポルノの二大消費国である、こういうふうに言っているわけであります。
 外務省に、これをどう見たらいいのか、一体、大使はどういう事実に基づいてこういうことを言っておられると推測されるのか、お伺いします。

○秋元政府参考人 委員御指摘のとおり、いろいろなNGOが出しています統計というのはありますけれども、国際的に認知された公的な統計というのは、残念ながらない。したがいまして、正確な国別の比較を行うことは難しいんだろうと思います。そういうことで、シーファー大使がいかなる統計に基づいて日米は児童ポルノの二大消費国だと述べているかということは、わかりません。
 他方、児童ポルノというのは、今日、インターネットの普及によりまして、国境に制約されることなく発信、流通されております。したがいまして、多くの国が協力して取り組むべきだということは言うまでもないことなんだと思います。
 シーファー大使の発言を私どもが解釈する立場にはございませんけれども、恐らくこの問題は、供給の側のみならず、需要の面からも取り組む必要があり、したがいまして、児童ポルノの国内での消費という問題を抱える日米両国が協力して取り組むべきだという考え方を述べたものだと理解しております。

○吉田(泉)委員 共通で取り組むべき課題であることは間違いないんですが、世界で二大消費国だ、こう言われたからには、やはりこちら側も、もし反論が必要なら反論する必要があるんじゃないか、そこだけ申し上げたいと思います。
 それから、シーファー大使の投稿文の中で、こういうことも言っているんですね。成人ポルノと違って、子供は自発的に当事者となったのではない、報酬も得ていない、児童ポルノの多くの被害者は十二歳未満である、小学生である、こう言っているんです。
 ただ、日本で一番問題になっているのは、中学校、高校生の援助交際ですよね。そういう意味では、この大使の指摘、大半が十二歳以下だという指摘は、日本ではちょっと事実と言えないのではないかと思うんですが、これは警察庁の方に国内の事情を伺います。

○井上政府参考人 平成十九年中に検挙いたしました児童ポルノ事件で保護した児童は三百四名であります。被害児童の年齢別の統計はとっておりませんが、学職別では、未就学が六名、小学生二十七名、中学生百七名、高校生百四十六名、有職少年六名、無職少年十二名となっております。
 お尋ねの十二歳未満の被害児童数は、最大限で、未就学に小学生を加えた三十三名、一〇・九%というふうな数字になっております。
 以上であります。

○吉田(泉)委員 そうしますと、日本の国内の状況には大使のこの発言はそぐわないんじゃないかと思うんですが、なぜこうなるかというと、やはり大使が考えている児童ポルノというものと我々が法律で考えている児童ポルノの何か定義の食い違いというようなものが背景にあるんじゃないか、そこをこれからの法改正論議の中でもう少しはっきりさせる必要があるんじゃないか、こんなふうに思うところであります。
 最後になりますけれども、上川大臣に最後に御所見をちょうだいしたいんですが、このシーファー大使の御発言の中にこういう言い方があるんですね。児童ポルノを見ることと子供への性的虐待というのは大きく関係しているんだと。見ること自体が虐待につながりやすいんだ、こういう発言があります。いわば、大使の主張である単純所持というのを禁止すれば性的虐待というのも減るはずだ、こういう大使の持論でありますが、実は、その両方の関係、根拠というのは、余り科学的に明らかにされていない、統計学的に明らかにされていないという指摘もございます。それから、先ほどから申し上げている国際的な議定書でも、この単純所持というのを禁止しなくちゃいけないということにはなっていないと私は思います。
 今後、この単純所持というものをどう扱うか、大きな議論になっていくと思いますが、上川大臣、青少年の健全育成担当大臣として、この児童買春、児童ポルノの問題に関して、今まで出たような被害の状況等を踏まえて、御所見をお伺いしたいと思います。

○上川国務大臣 児童買春そして児童ポルノにつきましては、児童の心身の健やかな成長を阻害するという意味で、極めて重大な問題であるというふうに思っております。大人が児童に対し性的な搾取やまた性的な虐待を行うという意味で、断じて許しがたいものであるというふうに認識をいたしております。
 児童買春や児童ポルノの被害の現状につきましては先ほど報告がありましたが、私は、数ということ、量ということではなくて、やはり質的な意味で、このことが起きているということ自体は大変許しがたいというふうに思っております。
 また同時に、海外からインターネットで情報が流通していくグローバルなネット社会でありまして、そういう中で、子供たちがその意味での犠牲になっていくということについては、やはり国際的な連携の中でしっかりと取り組んでいくべきことではないかというふうに思っております。
 この問題につきましては、先ほど委員からの御指摘のとおり、児童ポルノの単純所持の規制等につきまして、議員立法によっての改正ということで議論がされていると承知しておりまして、こうした議論の動向をしっかりと見守りたいというふうに思っております。
 また、児童買春、児童ポルノ法、この法律を所管する各関係の省庁が力を合わせて取り締まりや保護等の取り組みが行われている、このことがやはり青少年の健全な育成ということについて大変大事なことでございますので、こうした取り組みについての一層の連携をとって子供を守っていきたいというふうに思っております。
 世界的な子供をめぐる問題につきましては、最悪の状態の児童労働ということの中の一つとしてこの問題を取り上げられ、また、人身取引の一つの大きな消費というか、人身取引の目的がこの児童ポルノの問題にもかかわってくるということであります。そういう意味では、それにかかわる需要側のところを取り締まることによって供給のところの根をとめることができる、こういう相互の連関があるというふうに考えておりますので、そういった点もまず議論をしっかりとしていただきたいと思いますし、また、そういう中で、子供たちをしっかりと育てていく環境整備ということについてはさらに心を尽くしていきたいというふうに思っております。

○吉田(泉)委員 終わります。
 ありがとうございました。

衆議院・青少年問題に関する特別委員会(2008/11/18)/吉田泉議員(民主党所属)

○吉田(泉)委員 民主党、吉田泉です。

 小渕大臣初め皆さん、よろしくお願いいたします。

 私の方からは、最初に、青少年インターネット環境整備法、この間の六月に成立して、六月に公布されました。通称、有害サイト規制法とも呼ばれておりますが、それについてお伺いしたいと思います。

 先ほどの大臣所信の中でも、この法律を引用されて、強調されておられました。来年施行の予定が四月一日と聞いておりますが、今、官民、関係機関が鋭意準備に取り組んでいる真っ最中だという時期だと思います。

 例えば、その有害性の判断、これについては、民間のEMA、さらにはI―ROI、こういう第三者機関が基準をつくって、それに基づいて審査をする、これが現在進行中であります。

 一方で、今度は携帯電話の各社においては、フィルタリングの推進を今やってもらっております。既に、新規分については、ことしの初めごろだったと思いますが、携帯各社、自主ルールをつくって、保護者の同意がない限りはフィルタリングを設定する、こういう仕事をやっているわけであります。さらに、今度は既存の分についても、現在、同じような手続を進めているという段階だと聞いております。

 そこで、この既存の分についての進行状況、これをお伺いいたします。

○武内政府参考人 お答え申し上げます。

 インターネット上の有害情報から青少年を守ることは非常に重要な課題と認識しておりまして、これまで、携帯電話事業者等に対しまして、フィルタリングの導入促進ですとか改善等に関して、総務大臣から三度にわたりまして要請を行い、取り組み強化を促してきたところでございます。

 これを受けまして、携帯電話事業者等は、本年九月十二日に、御指摘の十八歳未満の既存の契約者に対するフィルタリングの設定等に関します発表を行ったところでございまして、この中で、スケジュールといたしましては、十月以降、順次ダイレクトメールなどによりフィルタリングサービスの利用を原則とした意思確認を保護者に対して行うこととし、不要の申し出がなかった利用者につきましては、各携帯事業者とも、平成二十一年、来年の一月下旬以降、順次フィルタリングを設定していく予定となっております。

○吉田(泉)委員 そうしますと、来年の一月末ごろをめどに、そのころを締め切り日として、保護者の意思表示がなければフィルタリングが既存の分についても設定される、こういう進行が今なされているわけであります。そうしますと、来年一月末の締め切りを過ぎると、このフィルタリングの普及率というのが急増するんじゃないかというふうに思えます。

 そこで、小渕大臣にお伺いしたいと思いますけれども、このフィルタリングというのが有害サイトを規制するための最大の武器だと我々考えておるんですが、来年の四月一日が施行予定日ですが、大体、そのころまでにこのフィルタリングの普及率というのはどのぐらいに見込まれるものなのか、現状を踏まえて、大臣の決意も含めて、お伺いしたいと思います。

○小渕国務大臣 委員がおっしゃいますように、フィルタリングについては、子供の有害な情報を閲覧させないための大変効率的なツールであると認識をしています。

 一層、フィルタリングの普及促進に向けて、関係省庁としっかり連携をとっていかなければならないと考えているんですけれども、まず、子供に対しては、小中学校において情報モラル教育をしっかり実施していく。そして、保護者が一番問題と言えば問題なんですけれども、きちんとフィルタリングが必要なんだよと、やはり幼くなれば幼くなるほど保護者の存在というのは大変大きなものになっていきますから、保護者自身がしっかりフィルタリングの大切さというものを認識していただくために、啓発講座などを使ってしっかり御理解をいただく。そして、民間事業者に対しては、法に基づくフィルタリング提供義務の確実な実施を徹底していくということで、それぞれの立場からフィルタリングを利用できる環境をしっかり整備するようにやっていきたい。

 数字ということでありますけれども、皆さんがフィルタリングをしっかり利用していただくように全力を尽くしていきたいと考えております。

○松田政府参考人 携帯電話のフィルタリングサービスの利用者数、今後爆発的に伸びるのではないかという委員の御指摘でございます。

 二十年の九月時点で、フィルタリングの利用者数が四百五十五万人でございまして、これは既に昨年の二・二倍に増加しておりまして、来年どうなるかというところはちょっと申し上げがたいんですけれども、そうした勢いで、先生おっしゃるような形でさらに伸びるものと期待しておるところでございます。

○吉田(泉)委員 九月末現在で、四百五十五万人がフィルタリングをかけているということで、青少年の利用者が七百五十万人と聞いておりますので、大体六割ぐらいの普及率がもう既に達成されていると。昨年は、今二・二倍とおっしゃいましたけれども、三割ぐらいだったと思いますよ。それが、携帯各社が新規について随分徹底した事業を行ってここまで来た。三割が六割になって、来年の四月まで、どうですかね、八割、九割ぐらいいってもいいんじゃないかなというふうに思われます。ひとつ関係者の努力を改めてお願いしたいと思います。

 さて、このフィルタリングについては、高校生と小学生が同じフィルタリングというのはちょっとおかしいんじゃないかという根強い声があります。そこで、年齢別のフィルタリングを使うとか、それから保護者がサイトを選択できるような仕組みにする、つまり、利用者の選択の幅を広げるフィルタリングの提供ができれば一番いいわけですけれども、その辺の開発そして提供の状況についてお伺いします。

○武内政府参考人 ことしの、平成二十年四月の総務大臣からのフィルタリングサービスの改善等に関する要請の中で、各携帯事業者に利用者の選択肢をふやすようなフィルタリングサービスの提供に向けた検討をお願いしているところでございます。

 NTTドコモにつきましては、親権者が許可したサイトあるいはカテゴリーについて個別に閲覧を可能とする、いわゆるカスタマイズ機能と言っていますけれども、こういう機能を平成二十一年、来年の一月に提供を開始する予定と聞いております。また、KDDIについても、同様のカスタマイズ機能を提供できるよう検討を行っているところと聞いております。そのほか、ソフトバンクモバイルにつきましては、青少年の年齢等に応じたフィルタリングを可能とするために、ブラックリストの多様化、複数のブラックリストを用意するというふうなことに取り組んでおると聞いておるところでございます。

○吉田(泉)委員 ありがとうございました。

 この法律では、国というのはあくまで後押し役といいますか、そういう立場ですが、全体がうまくいくためには、来年の四月までもう半年弱でございますが、ここがやはり勝負どころだというふうに思います。関係者の御奮闘をお願いしたいと思います。

 次に、児童買春・ポルノ禁止法、これについて、残り時間、お伺いしたいと思います。

 この法律は、前回、平成十五年の改正のときはここの青少年特別委員会で審議されたわけですが、今回の改正案については法務委員会の方に付託されているということであります。具体的な法案審議は近々そちらの方で始まるというふうに思いますが、きょうは、その前段というようなことで、現行法のもとでの法の執行状況について確認していきたいと思います。

 この法律は、もう施行後九年たちました。児童買春とポルノと両方を禁止する法律ですが、児童ポルノだけでも検挙数は累計で二千五百を超えた、判例も積み重ねられた、おのずとこの法律が対象にしている事案というのがだんだんはっきりしてきたということだと思います。

 最初に、児童ポルノの媒体物についてお伺いしたいと思います。

 現行法では、児童ポルノの媒体物というのは三つある。写真と電磁的記録とその他、電磁的記録というのはDVDとかインターネットということでございますが、この三つが媒体物である。この三番目のその他というものの中に、漫画とかアニメとか、いわゆる表現物といいますか、創作物といいますか、そういうものも入り得るのではないかという法解釈もあったと思いますが、この九年間法律を執行してきて、そういう表現物の検挙というのは実はなかったんだというお話を伺いました。それを取り締まらなかった理由を改めてお伺いしたいと思います。

 それから、この問題については、取り締まるべきではないかという意見もあるわけなんですが、もし、今後、漫画、アニメまで取り締まろうとすると、現行法が考えている保護法益というものが、今は個人法益を保護するということになっていますが、社会法益にまで拡大するような相当大幅な法律の目的の変更につながるんじゃないかというふうに法理論上は思いますが、いかがでしょうか。

 その二つ、お願いします。

○三浦政府参考人 児童買春・児童ポルノ禁止法におきまして児童ポルノを規制の対象としておりますのは、このような児童ポルノがその描写された児童の心身に長期にわたって有害な影響を与え続けるということ、そして、このような行為が社会に広がるときには、児童を性欲の対象とする風潮を助長するとともに、身体的、精神的に未熟である児童一般の心身の成長に重要な影響を与えるというふうに考えたものと理解されるところでございます。

 ここに言います児童ポルノにつきましては、十八歳未満の実在する児童を描写したものでありまして、漫画、アニメ等実在しない児童を描写したポルノにつきましては、この児童ポルノには該当しないというふうにされているところでございます。

 今後、実在しない児童を対象とするポルノを規制の対象とするということにつきまして考える場合には、その処罰の根拠等をどのように考えるかということが問題になるわけでありますが、それによりまして、現行法における保護法益の考え方に一定の影響があり得るのではないかというふうに考えられるところでございます。

○井上政府参考人 漫画等につきましては、検挙事例はございません。

○吉田(泉)委員 あくまで現行法では実在する児童の法益を保護するという法律になっているということだと思います。

 それから、今度は児童ポルノの定義の問題をちょっとお伺いしたいと思います。

 現行法の二条三項、ここに三つほどポルノとは何ぞやということが書いてあります。一つは性交等の描写、二つ目は性器等に触れる行為等の描写、そして三つ目が、衣服をつけない児童の姿態であって、性欲を興奮させ、または刺激するもの、この三つが児童ポルノとして定義されているわけでございます。

 この三つ目の、衣服をつけない児童、要するにヌード、全ヌード、半ヌードの場合ですが、ここの定義に例えば小さい子供の入浴や水着の写真が入るのかどうか、もしくは女性アイドルの水着写真または男性アイドルの上半身裸の写真、こういうものが三号ポルノに入るのかどうかという議論もなされるわけなんですが、この九年間、実際の検挙の状況はどうだったんでしょうか。

○井上政府参考人 最近の検挙事例について申し上げます。

 昨年十月、警視庁において、当時十七歳の水着姿の女子高生をモデルにDVDを製造したとして、DVD販売会社編集長等を児童買春・児童ポルノ禁止法違反で検挙した事例があるという報告を受けております。

○吉田(泉)委員 昨年、一件検挙されたということですが、最終的には児童福祉法の違反になったという事案だと思います。

 今、一つ例を挙げられましたけれども、現実問題、一号ポルノ、二号ポルノというのが圧倒的で、なかなか三号ポルノの摘発というのは極めて困難だったんだろうというふうに思っております。

 それから、今度は年齢の問題なんですが、現行法は十八歳未満を児童として扱っているわけなんですが、中には非常に大人びた児童、つまり児童に見えない児童という人もいるわけです。もしくは、要するに年齢がわからない、年齢不詳、児童ではあるが見た目では年齢がよくわからない、こういうケースもあると思うんですが、そういうときに、そういう人を対象としたポルノというのは検挙されてきたんでしょうか。

○井上政府参考人 十八歳未満ということの認識がなければ検挙できませんし、実務的にはその辺の認識をとった上で検挙しているというふうに承知をしております。

○吉田(泉)委員 認識がなければ検挙されるということはないということです。

 結局、児童という大変弱い立場の人間を食い物にしているのが児童ポルノでございまして、極めて憎むべき犯罪だ。我々も、取り締まりはもっと強化すべきだという立場で改正案をまとめたわけでございます。

 ただ、一方で、取り締まりを強化するならもう少し児童ポルノの定義をはっきりさせるべきではなかろうか、こういう指摘があります。

 児童ポルノというのは、単なるヌードではございません、それから単なるわいせつ描写でもありません。今おっしゃったように、特定の児童への性的搾取、性的虐待、それに関連した描写というのが本来の趣旨だと思いますので、そこに的を絞って根絶していくという姿勢が必要じゃなかろうかと思っております。

 もう最後になりますけれども、最近の十一月十六日付読売新聞、児童ポルノがインターネット上で、ファイル交換ソフトというソフトの悪用によって日本の二十カ所から世界に発信されている、実はこれはブラジルの捜査当局の情報であるという報道がなされました。そして、それに基づいて半年間各県警で捜査をした結果、最近、埼玉県警の方で三人を逮捕したという事件がありました。

 インターネットによって児童ポルノが国際的に、世界的に拡散されるということが極めて憂慮されるわけなんですが、一体、日本の二十カ所から発信されているということは実態としてどうなのか。警察の方の今までの対応、今後の対応についてお伺いしたいと思います。

○井上政府参考人 御指摘の事件は、警察庁がブラジル連邦警察から提供を受けた情報に基づきまして埼玉県警察が検挙した児童ポルノ事件と承知をしております。

 事案の概要でございますが、本年十一月十二日までに、ファイル共有ソフト、イーミュールというものを使用して、インターネット上に構築された児童ポルノファイルを共有するためのネットワークに接続し、同ネットワークに接続する不特定多数の者に対し児童ポルノを提供する目的で所持したとして被疑者三名を検挙しておるものでございます。

 事件の詳細については、まだ現在捜査中ということでございますので、埼玉県警を中心に関係府県において鋭意捜査を継続していくものと承知をしております。

○吉田(泉)委員 時間ですので、終わります。

 ありがとうございました。

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最終更新:2008年12月03日 17:29
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